(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231348(P2015-231348A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】二酸化炭素施用装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/18 20060101AFI20151201BHJP
A01G 7/02 20060101ALI20151201BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20151201BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20151201BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20151201BHJP
C01B 31/20 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
A01G9/18ZAB
A01G7/02
B01D53/34 135Z
B01D53/34 123B
C01B31/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-119388(P2014-119388)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100123641
【弁理士】
【氏名又は名称】茜ヶ久保 公二
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 祐治
(72)【発明者】
【氏名】弓達 昌樹
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
4D002
4G146
【Fターム(参考)】
2B022DA15
2B029JA04
2B029JA05
4D002AA02
4D002AA08
4D002AA09
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA04
4D002BA05
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4D002BA13
4D002CA06
4D002CA13
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4D002DA25
4D002DA41
4D002DA45
4D002EA02
4D002FA01
4D002FA02
4D002HA08
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC25
4G146JC27
(57)【要約】
【課題】重油の燃焼によって燃焼排ガスを発生させながらも、硫黄被毒を生じることなく二酸化炭素の回収及び供給が可能な二酸化炭素施用装置を提供する。
【解決手段】加温機10における重油の燃焼により発生する燃焼排ガスの供給を受け、該燃焼排ガスを冷却する熱交換器20の高温側流路20Hと、燃焼排ガスの相対湿度を低下させる熱交換器20の低温側流路20Cと、燃焼排ガスに含まれている硫黄酸化物を除去するフィルタ40と、燃焼排ガスに含まれている一酸化炭素を酸化する酸化触媒50と、燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を吸着する二酸化炭素吸着装置70と、を備え、熱交換器20の低温側流路20Cは、加温機10から供給される燃焼排ガスの熱を利用して、熱交換器20の高温側流路20Hによって冷却された燃焼排ガスを加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を回収し、該二酸化炭素を農業用ハウス内に供給する二酸化炭素施用装置であって、
燃焼部における重油の燃焼により発生した燃焼排ガスの供給を受け、該燃焼排ガスを冷却する冷却部と、
前記冷却部によって冷却された燃焼排ガスの相対湿度を低下させる除湿部と、
前記除湿部によって相対湿度が低下した燃焼排ガスに含まれている硫黄酸化物を除去する硫黄酸化物除去部と、
前記硫黄酸化物除去部から供給される燃焼排ガスに含まれている一酸化炭素を酸化する酸化触媒と、
前記酸化触媒から供給される燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を吸着する吸着材と、を備え、
前記除湿部は、前記燃焼部あるいは前記冷却部が運転時に放出する熱を利用して、前記冷却部によって冷却された燃焼排ガスを加熱することを特徴とする二酸化炭素施用装置。
【請求項2】
前記除湿部は、前記燃焼部から前記冷却部に供給される燃焼排ガスが有する熱を利用して、前記冷却部によって冷却された燃焼排ガスを加熱することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素施用装置。
【請求項3】
内部に水を貯留する貯水タンクを備え、
前記貯水タンクは、前記冷却部から供給される燃焼排ガスを気泡状にして内部の水を通過させた後に前記除湿部に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素施用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を回収し、該二酸化炭素を農業用ハウス内に供給する二酸化炭素施用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、農業用ハウスでは、夜間に気温が下がり過ぎて園芸植物の生育が阻害されることがないように、加温機を用いて農業用ハウス内の空気を加温している。この加温機は、燃料を燃焼させることで発生した燃焼熱によって空気を加熱し、温風として農業用ハウス内に供給するものである。
【0003】
また、加温機から排出された燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を回収し、園芸植物の生育促進に利用する二酸化炭素施用装置の普及も進んでいる(例えば下記特許文献1)。二酸化炭素施用装置では、夜間、燃料を燃焼させて農業用ハウス内に温風を供給する一方、昼間は、夜間の燃焼の際に回収・貯留しておいた二酸化炭素を農業用ハウス内に供給(施用)することで、園芸植物の光合成を活性化させ、園芸植物の収率および品質の向上を図っている。
【0004】
このような二酸化炭素施用装置の一態様を
図2に示す。
図2は、従来の二酸化炭素施用装置200の燃焼排ガスの流れを示すブロック図である。二酸化炭素施用装置200は、加温機101に取り付けて使用され、酸化触媒102と、熱交換器103と、中和タンク104と、ブロア105と、フィルタ106と、二酸化炭素吸着装置107と、を備えている。二酸化炭素施用装置200は、加温機101から供給される燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を、二酸化炭素吸着装置107の活性炭やゼオライト等で吸着して回収し、園芸植物への施用に用いるものである。
【0005】
加温機101における燃料の燃焼によって発生する燃焼排ガスは、300℃程度と高温であり、また、多量の水蒸気を含んでいる。このため、この燃焼排ガスをそのまま二酸化炭素吸着装置107に供給すると、二酸化炭素吸着装置107の活性炭等が熱で損傷したり、凝縮水が発生したりして、二酸化炭素の吸着を適切に行えなくなるおそれがある。このため、二酸化炭素施用装置200は、燃焼排ガスに複数の処理を行った後に、二酸化炭素吸着装置107に供給するように構成されている。以下、この燃焼排ガスの処理について説明する。
【0006】
加温機101において発生した燃焼排ガスは、まず、酸化触媒102に供給される。酸化触媒102は、安全性を高め、環境負荷を軽減するために、燃焼排ガスに含まれている一酸化炭素及び一酸化窒素の酸化を行う金属触媒である。
【0007】
酸化触媒102を通過した燃焼排ガスは、次に熱交換器103に供給される。熱交換器103では、その内部を流れる冷媒との熱交換を行わせることで、燃焼排ガスの温度を30℃程度まで低下させる。燃焼排ガスは、温度が低下することによって飽和水蒸気圧も低下し、相対湿度が高まって白煙状の水蒸気を含む高湿度ガスとなる。
【0008】
熱交換器103を通過した燃焼排ガスは、次に中和タンク104に供給される。中和タンク104は、その内部に水が貯留されている容器である。中和タンク104に供給された燃焼排ガスは、気泡状となってその水の中を通過する。この通過により、燃焼排ガスから白煙状の水蒸気が除去される。
【0009】
中和タンク104を通過した燃焼排ガスは、ブロア105によって吸引され、さらに下流側のフィルタ106に向けて圧送される。フィルタ106では、園芸植物の生育に悪影響を及ぼす窒素酸化物が燃焼排ガスから除去される。
【0010】
二酸化炭素施用装置200は、以上のような処理を行った後に、燃焼排ガスを二酸化炭素吸着装置107に供給する。これにより、二酸化炭素吸着装置107に用いられる活性炭等を、熱や凝縮水から保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−074887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、農業用ハウス内の空気の加温に使用されている加温機の多くは、用途が農業用に限定された重油(A重油)を燃料として用いるものである。重油は灯油に比べて硫黄成分を多分に含んでいるため、その燃焼によって発生する燃焼排ガスも、硫黄酸化物を多分に含むものとなる。
【0013】
このため、
図2に示す二酸化炭素施用装置200では、加温機101の燃料として重油が用いられている場合、その下流の酸化触媒102の硫黄被毒が生じ、一酸化炭素等の酸化を適切に行えなくなるおそれがある。今後、二酸化炭素施用装置の更なる普及を図る上で、このように重油を燃料とする加温機への対応が強く望まれていた。
【0014】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、重油の燃焼によって燃焼排ガスを発生させながらも、硫黄被毒を生じることなく二酸化炭素の回収及び供給が可能な二酸化炭素施用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る二酸化炭素施用装置は、燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を回収し、該二酸化炭素を農業用ハウス内に供給する二酸化炭素施用装置であって、燃焼部における重油の燃焼により発生した燃焼排ガスの供給を受け、該燃焼排ガスを冷却する冷却部と、前記冷却部によって冷却された燃焼排ガスの相対湿度を低下させる除湿部と、前記除湿部によって相対湿度が低下した燃焼排ガスに含まれている硫黄酸化物を除去する硫黄酸化物除去部と、前記硫黄酸化物除去部から供給される燃焼排ガスに含まれている一酸化炭素を酸化する酸化触媒と、前記酸化触媒から供給される燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を吸着する吸着材と、を備え、前記除湿部は、前記ガス発生源あるいは前記冷却部が運転時に放出する熱を利用して、前記冷却部によって冷却された燃焼排ガスを加熱することを特徴としている。
【0016】
本発明に係る二酸化炭素施用装置によれば、燃焼部は重油を燃焼させることから、発生する燃焼排ガスは硫黄酸化物を多分に含むものとなるが、この硫黄酸化物は、酸化触媒に供給される前に硫黄酸化物除去部によって除去されるため、酸化触媒の硫黄被毒を抑制することができる。また、燃焼部から供給される燃焼排ガスは、冷却部によって冷却されるとともに、除湿部によって相対湿度を低下させた状態で硫黄酸化物除去部に供給されるため、燃焼排ガスが有する熱による硫黄酸化物除去部の損傷や、凝縮水の発生を抑制することができる。
【0017】
さらに、この除湿部は、燃焼部あるいは冷却部が運転時に放出する熱を利用して、冷却部によって冷却された燃焼排ガスを加熱して相対湿度を低下させるものである。したがって、電力により発熱する電気ヒータ等の、別途のエネルギーを要する機器を使用することなく、燃焼排ガスの相対湿度を低下させ、硫黄酸化物除去部や吸着材を凝縮水から保護することができる。
【0018】
ここで、燃焼部あるいは冷却部が運転時に放出する熱としては、例えば、燃料を燃焼させる加温機等から排出される燃焼排ガスが有する熱や、当該加温機等によって加熱され農業用ハウス内に供給される空気が有する熱や、冷却部において高温のガスと熱交換を行って高温となった冷媒が有する熱等が挙げられる。
【0019】
また本発明に係る二酸化炭素施用装置では、前記除湿部は、前記燃焼部から前記冷却部に供給される燃焼排ガスが有する熱を利用して、前記冷却部によって冷却された燃焼排ガスを加熱することも好ましい。
【0020】
燃焼部における燃料の燃焼によって発生する燃焼排ガスは、極めて高い温度となる。この好ましい態様では、燃焼部から冷却部に供給されるこの高温の燃焼排ガスにより、冷却部によって冷却された燃焼排ガスを加熱して確実に相対湿度を低下させることが可能となるため、硫黄酸化物除去部や吸着材を凝縮水から保護することができる。
【0021】
また本発明に係る二酸化炭素施用装置では、内部に水を貯留する貯水タンクを備え、前記貯水タンクは、前記冷却部から供給される燃焼排ガスを気泡状にして内部の水を通過させた後に前記除湿部に供給することも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、冷却部によって冷却された燃焼排ガスに凝縮水が発生した場合であっても、その凝縮水は燃焼排ガスが貯水タンク内の水を通過する際に除去されるため、凝縮水が除湿部によって加熱されて気化することを抑制することができる。したがって、そのように気化した水分が、硫黄酸化物除去部や吸着材において再度凝縮水となる事態を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、重油の燃焼によって燃焼排ガスを発生させながらも、硫黄被毒を生じることなく二酸化炭素の回収及び供給が可能な二酸化炭素施用装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素施用装置のガスの流れを示すブロック図である。
【
図2】従来の二酸化炭素施用装置のガスの流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る二酸化炭素施用装置の概要を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素施用装置100のガスの流れを示すブロック図である。
【0026】
図1に示されるように、二酸化炭素施用装置100は、加温機10に取り付けて使用され、熱交換器20と、中和タンク30と、フィルタ40と、酸化触媒50と、ブロア60と、二酸化炭素吸着装置70と、を有している。
【0027】
加温機10は、燃料としてA重油を燃焼させる燃焼装置である。加温機10は、夜間に農業用ハウス(不図示)内の気温が下がり過ぎて園芸植物の生育が阻害されることのないように、農業用ハウス内の空気を加熱して温風を供給する。加温機10には配管2が接続されており、A重油の燃焼により発生した燃焼排ガスが、この配管2内を流れて二酸化炭素施用装置100に供給されるように構成されている。配管2は高温の燃焼排ガスの流通にも耐え得るように、ステンレス等の耐熱性に優れた金属材料で形成されている。
【0028】
熱交換器20は、外部から供給される2つの流体をその内部に通過させ、両流体間で熱交換を行わせる熱交換器である。詳細には、熱交換器20は、その内部に高温側流路20H及び低温側流路20Cの2つの独立した流路が形成されており、比較的温度が高い流体を高温側流路20Hに流し、比較的温度が低い流体を低温側流路20Cに流すように構成されている。高温側流路20Hは、その上流側が配管2に連結されている。また、高温側流路20Hの下流側には、配管3が連結されている。
【0029】
中和タンク30は、その内部にアルカリ性水溶液を貯留する中空の容器である。詳細には、中和タンク30の内部では複数の牡蠣殻(不図示)が水に浸されており、この牡蠣殻に含まれているカルシウム成分が溶出することで、貯留されている水がカルシウム成分を含有するアルカリ性水溶液となっている。中和タンク30は、配管3及び配管4に連結されている。
【0030】
フィルタ40は、通過するガスに含まれている硫黄酸化物及び窒素酸化物を除去するフィルタであり、熱交換器20及び中和タンク30の下流側に設けられている。詳細には、フィルタ40は、表面に微細な細孔構造を有し、吸着特性が優れた粒状活性炭からなり、ガスに含まれている硫黄酸化物及び窒素酸化物を吸着することで除去する。
【0031】
尚、本実施形態では、フィルタ40は、活性炭の吸着特性により硫黄酸化物及び窒素酸化物の除去を行うものとしているが、除去の方法はこれに限られるものではなく、ガスに含まれている硫黄酸化物及び窒素酸化物を吸着以外の方法で除去するものを採用することも可能である。
【0032】
酸化触媒50は、フィルタ40の下流側に設けられ、ガスに含まれている一酸化炭素の酸化を行う触媒である。酸化触媒50は、セラミック等の担体の表面に貴金属粒子を担持させることで形成されている。
【0033】
ブロア60は、酸化触媒50の下流側に設けられ、電力の供給を受けてモータ(不図示)を駆動させ、ファン(不図示)を回転させることで、配管7を介して酸化触媒50側からガスを吸引するファンモータである。ブロア60によって吸引されたガスは、配管8を介して下流側に圧送される。
【0034】
二酸化炭素吸着装置70は、ブロア60の下流側に設けられ、その内部には、図示しない活性炭(吸着材)が収容されている。活性炭は、その表面に多数設けられる細孔において、ガスに含まれている二酸化炭素を吸着して回収することで、二酸化炭素を内部に貯留する。二酸化炭素吸着装置70内の活性炭によって二酸化炭素の一部又は全部を除去されたガスは、その外部へと排出される。
【0035】
尚、本実施形態では、吸着材として活性炭を用いているが、ガスに含まれている二酸化炭素を吸着・貯留する機能を有するものであれば他の材料を用いることも可能であり、例えばゼオライト等の親水性多孔質材料を用いてもよい。
【0036】
上記構成を備える二酸化炭素施用装置100は、農業用ハウス内の気温が低下する夜間は、二酸化炭素吸着装置70の活性炭において、重油を燃焼させることで発生した燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素の吸着を行う。
【0037】
以下、二酸化炭素施用装置100における燃焼排ガスの流れについて説明する。二酸化炭素施用装置100の各要素を流れる燃焼排ガスの温度や湿度の値を、その名称の後方に括弧書きで示すが、これらの値は発明の理解のために目安として示すものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
加温機10におけるA重油の燃焼により、高温の燃焼排ガス(300℃程度)が加温機10から排出される。A重油を燃料として用いていることから、この燃焼排ガス(300℃程度)は、硫黄酸化物を多分に含むものとなる。排出された燃焼排ガスは、配管2を介して二酸化炭素施用装置100の熱交換器20に供給される。
【0039】
加温機10から燃焼排ガス(300℃程度)の供給を受けた熱交換器20は、その高温側流路20Hに燃焼排ガス(300℃程度)を流し、低温側流路20Cに後述する低温ガス(20℃程度)を流す。これにより、当該燃焼排ガス(300℃程度)と、低温ガス(20℃程度)との間で熱交換が行われ、燃焼排ガス(300℃程度)は、低温ガス(25℃程度)によって熱を奪われることで冷却される。このため、加温機10から配管2を介して供給された燃焼排ガス(300℃程度)は、熱交換器20を通過することで、その温度が30℃程度まで低下する。
【0040】
熱交換器20の高温側流路20Hを通過した燃焼排ガス(30℃程度)は、配管3を介して中和タンク30に供給される。燃焼排ガス(30℃程度)は、中和タンク30内に貯留されている水の中に供給され、気泡状となる。気泡状となった燃焼排ガスは、浮力によって水中を上昇し、水面から出る。このように燃焼排ガスを気泡状にして水中を通過させることにより、燃焼排ガスに含まれていた炭酸ガスが水中のカルシウムと結合し、炭酸カルシウムが析出する。この炭酸カルシウムは、園芸植物に供給する肥料として利用することができる。
【0041】
中和タンク30に供給された燃焼排ガス(30℃程度)は、中和タンク30を通過することで、その温度が20℃程度まで低下する。中和タンク30を通過した燃焼排ガス(20℃程度)は、発生時(300℃程度)からその温度が大きく低下したことによって飽和水蒸気圧も低下し、相対湿度が99%程度の多湿のガスとなる。この燃焼排ガス(20℃、99%程度)は、配管4内を熱交換器20に向けて流れる。
【0042】
配管4内を流れて熱交換器20に供給された燃焼排ガス(20℃、99%程度)は、熱交換器20の低温側流路20Cを流れる。すなわち、熱交換器20を一度通過した燃焼排ガス(30℃程度)が、中和タンク30を経て熱交換器20に帰還し、上述した低温ガス(20℃程度)として機能する。
【0043】
したがって、熱交換器20において、加温機10から供給されて高温側流路20Hを流れる燃焼排ガス(300℃程度)と、上述したように帰還して低温側流路20Cを流れる燃焼排ガス(20℃、99%程度)との間で熱交換が行われる。低温側流路20Cを流れる燃焼排ガス(20℃、99%程度)は、高温側流路20Hを流れる燃焼排ガス(300℃程度)から熱を奪うことで加熱される。このため、熱交換器20に帰還した燃焼排ガス(20℃、99%程度)は、熱交換器20を通過することで、その温度が40℃程度まで上昇する一方、それに伴う飽和水蒸気圧の上昇により、相対湿度が30%程度まで低下する。
【0044】
熱交換器20の低温側流路20Cから排出された燃焼排ガス(40℃、30%程度)は、配管5を介してフィルタ40に供給される。このフィルタ40への燃焼排ガス(40℃、30%程度)の供給は、フィルタ40の下流側に配置されているブロア60が運転し、配管6側を負圧にして燃焼排ガス(40℃、30%程度)を吸引することにより行われる。燃焼排ガス(40℃、30%程度)は、フィルタ40を通過することにより、園芸植物に供給されても支障のない程度まで硫黄酸化物及び窒素酸化物が除去される。
【0045】
フィルタ40を通過した燃焼排ガスは、配管6を介して酸化触媒50に供給される。この酸化触媒50において、燃焼排ガスに含まれている一酸化炭素が酸化され、燃焼排ガスは二酸化炭素を多分に含むガスとなる。
【0046】
酸化触媒50を通過した燃焼排ガスは、配管7を介してブロア60によって吸引される。配管7を流れる燃焼排ガスは、フィルタ40を及び酸化触媒50を通過した際に、それらによって熱を奪われることで温度が若干低下しており、相対湿度が上昇している。しかしながら、燃焼排ガスは、ブロア60を通過する際に、ブロア60の電動モータが発生するジュール熱を奪うことにより、その温度が再び40℃程度まで上昇し、相対湿度は30%程度まで低下する。
【0047】
ブロア60を通過した燃焼排ガス(40℃、30%程度)は、配管8を介して二酸化炭素吸着装置70に供給される。二酸化炭素吸着装置70の内部に収容された活性炭を燃焼排ガス(40℃、30%程度)が通過することで、そこに含まれている二酸化炭素が活性炭に吸着され、貯留される。二酸化炭素吸着装置70に貯留された二酸化炭素は、農業用ハウス内の園芸植物の光合成を促進するため、昼間に園芸植物へと供給される。
【0048】
尚、二酸化炭素吸着装置70の内部に収容された活性炭の耐熱性能が低い場合には、二酸化炭素吸着装置70に供給される燃焼排ガスの温度を低下させるために、ブロア60と二酸化炭素吸着装置70との間に新たな熱交換器(不図示)を設けてもよい。
【0049】
以上のように構成された二酸化炭素施用装置100によれば、加温機10から供給される燃焼排ガスは硫黄酸化物を多分に含むものであるが、この硫黄酸化物は、酸化触媒50に供給される前にフィルタ40によって除去されるため、酸化触媒50の硫黄被毒を抑制することができる。また、加温機10から供給される燃焼排ガスは、熱交換器20の高温側流路20Hによって冷却されるとともに、熱交換器20の低温側流路20Cによって相対湿度を低下させた状態でフィルタ40に供給されるため、燃焼排ガスが有する熱によるフィルタ40の損傷や、凝縮水の発生を抑制することができる。
【0050】
さらに、この熱交換器20の低温側流路20Cは、加温機10から排出される燃焼排ガスが有する熱を利用して、高温側流路20Hによって冷却された燃焼排ガスを加熱して相対湿度を低下させている。したがって、電力により発熱する電気ヒータ等の、別途のエネルギーを要する機器を使用することなく、燃焼排ガスの相対湿度を低下させ、フィルタ40や70を凝縮水から保護することができる。
【0051】
この他、高温側流路20Hによって冷却された燃焼排ガスを加熱する加熱源として、例えば、加温機10によって加熱され農業用ハウス内に供給される空気が有する熱等を利用してもよい。
【0052】
また、燃焼排ガスを、中和タンク30の内部の水を通過させた後に熱交換器20の低温側流路20Cに供給している。これにより、熱交換器20の高温側流路20Hによって冷却された燃焼排ガスに凝縮水が発生した場合であっても、その凝縮水は燃焼排ガスが中和タンク内の水を通過する際に除去される。このため、凝縮水が熱交換器20の低温側流路20Cによって加熱されて気化することを抑制することができる。したがって、そのように気化した水分が、フィルタ40や二酸化炭素吸着装置70において再度凝縮水となる事態を抑制することが可能となる。
【0053】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0054】
例えば、上記実施形態では、ブロア60を酸化触媒50の下流側に配置しているが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、ブロア60を酸化触媒50の上流側に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 :加温機(燃焼部)
20 :熱交換器
20H:高温側流路(冷却部)
20C:低温側流路(除湿部)
40 :フィルタ(硫黄酸化物除去部)
50 :酸化触媒
70 :二酸化炭素吸着装置(吸着材)
100:二酸化炭素施用装置