特開2015-231349(P2015-231349A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧
<>
  • 特開2015231349-培養システム 図000003
  • 特開2015231349-培養システム 図000004
  • 特開2015231349-培養システム 図000005
  • 特開2015231349-培養システム 図000006
  • 特開2015231349-培養システム 図000007
  • 特開2015231349-培養システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231349(P2015-231349A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   C12M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-119495(P2014-119495)
(22)【出願日】2014年6月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業(次世代技術開発)」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏明
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DA10
(57)【要約】
【課題】培養液から光合成微生物を効率よく分離可能な培養システムを提供する。
【解決手段】複数の培養槽10a,10b,103c,10d,10e(10)が多段に接続され、培養槽10a,10b,103c,10d,10e(10)のうちのそれぞれの培養槽10内の培養液Mが下段の培養槽10に通流するようになっており、複数の培養槽10a,10b,103c,10d,10eのうちのそれぞれの培養槽10内の培養液Mの水深が、培養液Mの通流方向の下流に向かうにつれて、徐々に浅くなって構成されている培養システム100とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の培養槽が多段に接続され、前記複数の培養槽のうちのそれぞれの培養槽内の培養液が下段の培養槽に通流するようになっており、
前記複数の培養槽のうちのそれぞれの培養槽内の培養液の水深が、培養液の通流方向の下流に向かうにつれて、徐々に浅くなって構成されていることを特徴とする、培養システム。
【請求項2】
前記複数の培養槽は、隣接する培養槽の壁面同士が対向して配置され、
前記壁面には、前記培養槽の内外を連通するように、前記壁面の少なくとも一部が切除されてなる培養液流路が形成され、
前記隣接する培養槽のうちの上流側の培養槽内の培養液は、前記培養液流路を通って、下流側の培養槽に供給されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の培養システム。
【請求項3】
前記培養液流路は、前記複数の培養槽を構成するそれぞれの培養槽の壁面のうちの一部が上方から切り込まれて切り込みが設けられることで形成され、
前記複数の培養槽を構成するそれぞれの培養槽に形成される前記切り込みの深さは、前記培養液の通流方向の下流に向かう培養槽毎に、徐々に深くなっており、
前記隣接する培養槽のうちの上流側の培養槽内の培養液は、前記切り込みが形成された部分の前記壁面を越流して、下流側の培養槽に供給されるようになっていることを特徴とする、請求項2に記載の培養システム。
【請求項4】
前記複数の培養槽を構成する培養槽は、レースウェイ式の培養槽であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化の問題がクローズアップされており、温室効果ガスの一種と考えられる二酸化炭素排出量の抑制が大きな課題になっている。化石燃料は燃焼させると固定されていた二酸化炭素が大気中に放出されることになり、二酸化炭素濃度は上昇してしまう。環境問題の観点や、それに加えて資源枯渇の観点からも、化石燃料の使用量を低減することが好ましい。
【0003】
このような背景のもと、自動車ではバッテリーを搭載し、電気を代替動力源として駆動する電気自動車がある。しかしながら、航空機分野ではエネルギー密度の観点から、電気での駆動は難しく、依然として液体の化石燃料であるジェット燃料は依然有用な資源である。従って、ジェット燃料の燃焼による二酸化炭素の放出は、ある程度は避けられない。そこで、ジェット燃料の代替燃料を製造可能な光合成微生物に注目が集まっている。このような光合成微生物は、大気中の二酸化炭素を光合成により固定し、ジェット燃料へと変換可能な油脂を生産することができる。このように光合成微生物により作られた代替ジェット燃料は燃焼しても大気中の二酸化炭素濃度が上昇することが無いため、カーボンニュートラルと考えられる。
【0004】
このような光合成微生物として、微細藻類に期待が集まっている。微細藻類は、栄養飢餓条件下で光合成を行うことで、油脂や油脂の原料となる炭水化物を細胞内に蓄積することが知られている。そのため、微細藻類の細胞内に蓄積される油脂は、従来の化石燃料に代わるバイオ燃料として注目されている。そして、このようなバイオ燃料により、大気中の二酸化炭素濃度低下と、化石燃料の使用量の削減とが期待される。
【0005】
微細藻類から効率よくバイオ燃料を取得するためには、大量の微細藻類が良好に光合成をすることが好ましい。そこで、このような技術に関連して、特許文献1には、いずれも開放型レースウェイ槽である第一の培養槽と第二培養槽とが接続された藻類の培養システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−090598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
培養液中の微細藻類が有するバイオ燃料を回収するためには、まず、培養液を緩く遠心して微細藻類と培養液とに分離することが考えられる。そして、分離された微細藻類について、高速でさらに遠心することで、微細藻類中の油脂が回収される。
【0008】
ここで、特許文献1に記載の技術では、複数の培養槽が接続されている。そのため、最終的に得られる培養液(油脂を有する微細藻類を含む)の量が大量になる。これにより、最終的な培養液から微細藻類を分離する際、大量の培養液が遠心されることになり、遠心する手間がかかる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、培養液から光合成微生物を効率よく分離可能な培養システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前記課題を解決するため、鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、複数の培養槽を、それらの培養槽間で培養液が通流可能になるように多段に接続し、それぞれ培養槽内の培養液の水深を、培養液の通流方向の下流側に向かって徐々に浅くするようにすることで、前記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、培養液から光合成微生物を効率よく分離可能な培養システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の培養システムの斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】(a)は従来の培養システムにおいて培養される微生物の増殖速度と時間とを示すグラフであり、(b)は従来の培養システムの培養液における密度と時間とを示すグラフであり、(c)は本実施形態の培養システムにおける各培養槽での培養液の水深、面積あたりの密度、及び、容積あたりの密度の関係を示すグラフである。
図4】本実施形態の培養システムについての変形例を示す図である。
図5】本実施形態の培養システムについての変形例を示す図であり、(a)はその全体斜視図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図6】本実施形態の培養システムについての変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の培養システム100の斜視図である。培養システム100では、本実施形態では、微細藻類の一種であるユーグレナ(後記する)が培養される。培養システム100は、5つの培養槽10a,10b,10c,10d,10e(10)を多段に接続して構成される。具体的には、本実施形態の培養システム100では、5つの培養槽10が同一方向に並んで配置されている。なお、培養槽10は、レースウェイ式の培養槽である。これにより、培養に十分に時間をかけることができ、また、受光面積が大きいので培養量を増加させやすくなる。
【0015】
なお、ここでいう「多段に接続された培養槽」とは、独立した培養が可能な培養槽が、複数接続されていることをいう。従って、詳細は後記するが、本実施形態の培養システム100では、培養槽10aにおいて培養が行われ、また、それとは独立して培養槽10bにおいても培養が行われ、さらに、それらとは独立して培養槽10c,10d,10eにおいても培養が行われる。
【0016】
これらの培養槽10では、上流側(前段)である培養槽10aから、下流側(後段)である培養槽10eに向かって、培養液Mが通流可能になっている。これらのうち、最も上流にある培養槽10aには、配管21を通じて、栄養塩タンク及び水タンク(いずれも図示しない)が接続されている。これらのタンクからの栄養塩及び水が培養槽10a内で撹拌混合されることで、ユーグレナの培養液Mが培養槽10a内を循環することになる。そして、培養槽10a内の培養液Mは、前記した通り、下流側の培養槽10bに供給されることになる。
【0017】
ここで、本実施形態の培養システム100において培養されるユーグレナについて説明する。
ユーグレナ(Euglena)は、光合成微生物の一種である。ユーグレナは、鞭毛虫の一群で、運動性のある藻類として有名なミドリムシを含む。大部分のユーグレナは、葉緑体を有しており、光合成を行って独立栄養生活を行うが、捕食性のものや吸収栄養性のものもある。
【0018】
ユーグレナを培養するための培養液Mとしては、例えば、窒素源、リン源、ミネラル等の栄養塩類を添加した培養液、例えば、改変Cramer−Myers培地((NHHPO 1.0g/L、KHPO 1.0g/L、MgSO・7HO 0.2g/L、CaCl・2HO 0.02g/L、Fe(SO・7HO 3mg/L、MnCl・4HO 1.8mg/L、CoSO・7HO 1.5mg/L、ZnSO・7HO 0.4mg/L、NaMoO・2HO 0.2mg/L、CuSO・5HO 0.02mg/L、チアミン塩酸塩(ビタミンB) 0.1mg/L、シアノコバラミン(ビタミンB12)、(pH3.5))を用いることができる。なお、(NHHPOは、(NHSOやNHaqに変換することも可能である。
【0019】
栄養塩を含む培養液Mを用いてユーグレナの培養を行う場合、培養液M中の栄養塩が豊富なときは、栄養塩を消費して、ユーグレナの増殖が優先的に行われる。しかし、培養液M中の栄養塩が少なくなると、代謝が変化しユーグレナは細胞内に油脂の原料となる炭水化物(パラミロン)を蓄え始める。
【0020】
従って、培養システム100においては、栄養塩濃度が高い上流側の培養槽10(例えば培養槽10a)では、炭水化物の蓄積よりもユーグレナの増殖が優先的に行われる。しかし、増殖に伴って栄養塩が消費された結果、下流側の培養槽10(例えば培養槽10e)において培養液M中の栄養塩濃度が低下してくると、ユーグレナは炭水化物を細胞内に蓄え始めることになる。このように、本実施形態の培養システム100では、培養が多段の培養槽によって行われることで、特別な処理を行わなくても、下流側から取り出されるユーグレナには、大量の炭水化物が含まれており、後段のプロセスにより効率よく油脂の生産ができることになる。
【0021】
また、ユーグレナは、培養槽10a〜10eのそれぞれにおいて培養される。従って、例えば培養槽10aにおいて培養されたユーグレナは、培養液Mとともに、下流側の培養槽10bに供給される。そして、培養槽10bにおいて、再び培養が行われることになる。このような培養が培養槽10c〜10eにおいても行われ、最終的に、培養槽10eから炭水化物を有するユーグレナが取得される。
【0022】
このような多段の培養槽10により培養が行われることで、培養を制御し易いという利点がある。即ち、例えば気温が低い等の理由により増殖速度が遅い場合には、最上流の培養槽10aに供給される栄養塩及び水の量を減らすことで、各培養槽10に培養液Mが留まる時間を長くして、十分に増殖時間を確保することができる。また、ユーグレナの培養に適した気温等の理由により増殖速度が速い場合には、増殖速度が遅い場合とは逆にして各培養槽10での滞留時間を短くし、これによっても十分な量のユーグレナを得ることができる。これらにより、油脂の生産性が高められる。
【0023】
図1に戻って、培養システム100の装置構成について説明する。
培養槽10aは、培養液Mが通流する最上流の培養槽である。培養槽10aには、その中央近傍に仕切り11a(11)が設けられ、また、流路の途中には、撹拌翼20a(20)が設けられている。そして、撹拌翼20aが回転することで、培養液Mに流速が与えられ、培養液Mが循環するようになっている。また、仕切り11aが設けられていることで、培養液の流れを一様にすることができる。撹拌翼20a及び仕切り11aにより培養槽10aにおいて培養液を循環することで配管21を通じて供給された栄養塩及び水等が培養に十分に用いられることなく培養槽10bに直接供給されることが防止される。また、図示しないが、仕切りの他にもコーナ部分等に整流板を設置することで培養液の流れを整流する。
【0024】
さらに、培養槽10aには、培養液M中でユーグレナが効率よく光合成するように、培養液Mに二酸化炭素を溶解させる二酸化炭素溶解装置(図示しない)が設けられている。
【0025】
ここで、培養槽10aと、それに隣接する培養槽10b(後記する)とは、長手方向の壁面同士が対向して配置されている。そして、培養槽10aの下流側の壁面には、培養槽10aの壁の高さよりも低い高さの切り込み10a1が形成されている。この切り込み10a1は、培養槽10aの壁面の一部が上方から切り込まれて(切除されて)なるものである。さらに、詳細は後記するが、培養槽10aの下流にある培養槽10bにも、前記の切り込み10a1と同じ深さで切り込まれてなる切り込み10b2が形成されている。
【0026】
そして、培養槽10aの切り込み10a1と、培養槽10bの切り込み10b2とが接続されることで、培養液流路12が形成される。より具体的には、培養槽10aの壁面は、培養液流路12の部分で低くなっている。そのため、培養槽10a内の培養液Mは、この部分を通って(切り込み10a1,10b2が形成された部分の壁面を越流して)、培養槽10bに供給されることになる。従って、培養槽10aにおいて切り込み10a1が形成された壁面の部分は、いわゆる擁壁構造になっている。
【0027】
培養液流路12がこのような構造になっていることで、栄養塩及び水が供給されて培養槽10a内の液面が上昇したときに、その上昇分の培養液Mがこの擁壁を越流し、下流の培養槽10bに供給されることになる。そのため、培養液Mを下流の培養槽に供給するためのポンプや自動制御弁、制御装置等が不要になる。また、作業員による手動操作も不要になるため、コスト削減が図られる。
この点は、図2を参照しながらさらに後記する。
【0028】
培養槽10bは、培養槽10aからの培養液Mが培養液流路12を通じて供給されるものである。培養槽10bには、培養槽10aと同様に、仕切り11b(11)及び撹拌翼20b(20)が設けられ、これらにより、培養槽10b内で培養液Mが循環するようになっている。
【0029】
また、培養槽10bには、槽内の培養液Mの栄養塩の濃度を測定する塩濃度センサ30が設けられている。最上流の培養槽10a内の培養液Mの塩濃度は、比較的高濃度である。しかし、ユーグレナの成長に伴って培養液M中の塩は消費される。そのため、下流側になるにつれて、培養液Mの塩濃度は低くなる。ここで、ユーグレナの成長速度が遅いと、塩濃度の低下量も小さくなる。そこで、塩濃度センサ30を用いて培養液Mの塩濃度を測定することで、塩濃度の低下量を算出して、ユーグレナの成長の状況が把握される。これにより、栄養塩及び水の供給速度を変えて、適切な培養が行われる。
【0030】
培養槽10bの上流側の壁面には前記のように切り込み10b2が形成されているが、培養槽10bには、さらに、下流側の壁面に切り込み10b1が形成されている。そして、この切り込み10b1と、その下流側の培養槽10c(後記する)の上流側壁面に形成された切り込み10c2とが接続されることで、培養液流路13が形成される。この培養液流路13は、前記の培養液流路12と同様に、培養槽10bから培養槽10cへの培養液Mの供給に用いられる。
【0031】
培養槽10bにおいて、下流側の切り込み10b1の深さは、上流側の切り込み10b2の深さよりも深くなっている。即ち、下流側の培養液流路13の部分の壁面の高さは、上流側の培養液流路12の部分の壁面の高さよりも、低くなっている。従って、培養槽10b内の培養液Mは、前段の培養槽10aに戻らずに、培養液流路13を通って、下流の培養槽10cに供給されることになる。
この点も、図2を参照しながらさらに後記する。
【0032】
培養槽10c(10)は、培養槽10bからの培養液Mが培養液流路13を通じて供給されるものである。培養槽10cにも、培養槽10a,10bと同様に、仕切り11c(11)、撹拌翼20c(20)、切り込み10c1及び培養液流路14が形成されている。
【0033】
培養槽10d(10)は、培養槽10cからの培養液Mが培養液流路14を通じて供給されるものである。培養槽10dにも、培養槽10a〜10cと同様に、仕切り11d(11)、撹拌翼20d(20)、切り込み10d1及び培養液流路15が形成されている。また、培養槽10dには、培養槽10bと同様に、塩濃度センサ30が設けられている。
【0034】
培養槽10e(10)は、培養槽10dからの培養液Mが培養液流路15を通じて供給されるものである。培養槽10eにも、培養槽10a〜10dと同様に、仕切り11e(11)及び撹拌翼20ed(20)が形成されている。ただし、培養槽10eには、切り込み及び培養液流路は形成されておらず、培養槽10e内の培養液Mは、配管22を通じて、図示しない分離装置に供給されるようになっている。そして、分離装置において、培養液Mからユーグレナが分離された後、分離されたユーグレナから油脂が回収されるようになっている。
【0035】
図2は、図1のA−A線断面図である。図1を参照しながら説明したように、培養槽10aの下流側には、培養液流路12が形成されている。この培養液流路12は、培養槽10aの壁面の高さよりも低いところに形成されている。そのため、培養槽10a内の培養液Mは、培養液流路12の高さと同じ高さの水深L0になるまで、培養槽10bに培養液Mを供給することになる。
【0036】
また、配管21を通じて栄養塩及び水が培養槽10aに供給されたときには、供給された量と等量の培養槽10a内の培養液Mが、培養槽10bに供給されることになる。なお、培養槽10bに供給される培養液Mには、培養槽10a内で培養されたユーグレナも含まれる。
【0037】
他の培養槽10b〜10eについても同様であり、例えば培養槽10b内の培養液の水深L1は、培養槽10bの上流側に形成された培養液流路12と、培養槽10bの下流側に形成された培養液流路13とのうちの低い方(培養液流路13)の高さと一致する。
また、培養槽10c内の培養液の水深L2は、培養槽10cの上流側に形成された培養液流路13と、培養槽10cの下流側に形成された培養液流路14とのうちの低い方(培養液流路14)の高さと一致する。
さらに、培養槽10d内の培養液の水深L3は、培養槽10dの上流側に形成された培養液流路14と、培養槽10dの下流側に形成された培養液流路15とのうちの低い方(培養液流路15)の高さと一致する。
ただし、培養槽10eでは、培養槽10e内の培養液Mの水深がL4で一定になるように、配管22を通じて培養液Mのくみ上げが行われる。
【0038】
このように、培養槽10a〜10eのそれぞれの培養槽10において、培養液Mの通流方向の下流に向かうにつれて、培養液Mの水深が徐々に浅くなっている。これは、隣接する培養槽10間に形成された培養液流路(即ち、切り込みの深さ)が、下流側の培養槽に向かうにつれて、徐々に浅くなっているためである。そして、これにより、培養液Mの量を少なくしつつ、培養液M中のユーグレナの量を十分にすることができ、ユーグレナの分離効率を上昇することができる。この点を、図3を参照しながら説明する。
【0039】
図3は、(a)は従来の培養システムにおいて培養される微生物の増殖速度と時間とを示すグラフであり、(b)は従来の培養システムの培養液における密度と時間とを示すグラフであり、(c)は本実施形態の培養システム100における培養槽10での培養液の水深、面積あたりの密度、及び、容積あたりの密度の関係を示すグラフである。なお、これらのグラフはいずれも模式的なものであり、実際のグラフの形状とは一致しないことがある。
【0040】
例えばバッチ方式での培養した場合、ユーグレナの増殖速度は、図3(a)に示すように、徐々に速くなるものの、増殖に適した密度において増殖速度V0をピークにして、その後は低下する。このとき、槽内でのユーグレナの密度(「細胞濃度」や「藻体濃度」ともいう)は、図3(b)に示すように、徐々に大きくなるが、最大密度d0に達し定常状態になる。従って、通常は、培養液は、増殖速度が最大となる密度付近において培養され、その後分離装置に供給されてユーグレナが分離された後、分離されたユーグレナから油脂が回収される。
【0041】
これらのような傾向は、例えば特許文献1に記載のようなフロー方式での培養でも同様である。また、フロー方式の場合、培養液の量が多くなるため、前記のように培養液からのユーグレナの分離が煩雑である。そこで、これらの課題を解決できる技術が望まれている。
【0042】
ユーグレナを、太陽光で培養した場合、ユーグレナは、光合成を行って二酸化炭素を固定し増殖する。従って、太陽光を受光可能な面積(受光面積)と受光量により、ユーグレナの増殖可能な培養液M中の面積あたりの密度(g/m)の上限値が決定される。例えば、培養液Mの水深が浅くなれば、面積あたりの培養液量は少なくなる(即ち面積当たりの密度が小さくなる)ため、容積あたりの密度(g/L)の上限値は比較的大きくなる。一方で、培養液Mの水深が深くなれば、面積あたりの培養液量が多くなる(即ち面積当たりの密度が大きくなる)ため、容積あたりの密度(g/L)の上限値は比較的小さくなる。そして、培養液Mにおけるユーグレナの密度が、その上限値まで十分に余裕があれば、ユーグレナは比較的早い速度で増殖することになる。一方で、培養液Mにおけるユーグレナの密度が、密度の上限値に近づくにつれて、その増殖速度は低下することになる。
【0043】
この点を、図3(c)を参照しながら具体的に説明する。
【0044】
最上段の培養槽10aにおいて、培養を続けると、ユーグレナの面積あたりの密度は徐々に増加し、ある程度の時点で密度は頭打ちになる。これは、太陽光が照射される面において、光合成微生物であるユーグレナの増殖が頭打ちになることを意味する。そこで、頭打ちになる前に、培養槽10a内の培養液Mは、水深が浅くなる隣の培養槽10bに移動される。そうすると、前記のように、培養槽10bにおける面積あたりの密度は、培養槽10aにおける面積あたりの密度と比べて、低下することになる。
【0045】
また、前記のように、培養槽10bにおいて、容積あたりの密度の上限値が大きくなる。そのため、培養槽10b内の培養液Mの容積あたりの密度は、その上限値まで余裕ができることになり、培養槽10bにおいて、ユーグレナの増殖が再び活発になる。そのため、培養槽10bでの面積あたりのユーグレナの密度は、再び上昇する。そして、培養槽10bにおいても、面積あたりの密度は再び頭打ちになるので、前記の場合と同様、培養槽10b内の培養液Mは、水深が浅くなる隣の培養槽10cに移動される。
【0046】
これらのように、各培養槽10間で培養液Mの移動が繰り返されることで、ユーグレナが増殖し続けるため、ユーグレナの増殖速度を良好に維持し続けることができる。そのため、ユーグレナを効率的に培養することができる。また、培養液Mの水深が徐々に浅くなるようになっているため、全て同じ水深の培養槽を用いた場合と比べて、培養液Mの量を減らすことができる。これにより、培養液Mの高密度化を図ることができる。
【0047】
図4は、本実施形態の培養システム100についての変形例を示す図である。前記の図2に示した部材と同じものについては同じ符号を付すものとし、その詳細な説明は省略する。前記の培養システム100では、栄養塩及び水等が培養槽10aに供給されると、培養液流路12〜15による高低の差、即ち培養槽10a〜10eでの培養液Mの水深の差により、下流側の培養槽10に培養液Mが供給されるようにした。しかし、図4に示す培養システム101では、水位の差を設けず、栄養塩及び水を培養槽10aに供給することで生じる培養液Mの流れを発生させて、下流側の培養槽10に培養液Mが供給されるようにしている。
【0048】
即ち、最上流の培養槽10aに栄養塩及び水が供給されると、培養槽10a内の培養液Mは溢れることになる。そして、その溢れた培養液Mは、下流側の培養槽10bに供給されるようになっている。培養槽10bに培養液Mが供給されると、培養槽10bの培養液Mが過剰となり、培養槽10bの培養液Mが溢れることになる。そのため、培養槽10bから溢れた培養液Mは、さらに下流側の培養槽10cに供給されることになる。培養槽10d,10eにおいても、同様にしてユーグレナの培養が行われる。培養システム101のように構成しても、前記の培養システム100と同様の効果が得られる。
【0049】
図5は、本実施形態の培養システム100についての変形例を示す図であり、(a)はその全体斜視図、(b)は(a)のB−B線断面図である。前記の図1及び図2に示した部材と同じものについては同じ符号を付すものとし、その詳細な説明は省略する。
【0050】
前記の培養システム100では、培養槽10の壁面に上方から切り込まれてなる切り込みにより、培養液流路12〜15が形成されていた。しかし、図5に示す培養システム102では、培養槽10の側面に、培養液流路12〜15としての貫通口が形成されている。この貫通口は、壁面の一部が切除されてなるものである。
【0051】
具体的には貫通口の形成位置として、図5(a)に示すように、培養槽10aと培養槽10bとを連通させるように、培養液流路12が形成されている。また、培養槽10bと培養槽10cとを連通させるように、培養液流路13が形成されている。さらに、培養槽10cと培養槽10dとを連通させるように、培養液流路14が形成されている。そして、培養槽10dと培養槽10eとを連通させるように、培養液流路15が形成されている。
【0052】
培養液流路12〜15は、前記の培養システム100と同様、図5(b)に示すように、培養槽10の培養液Mの水深が徐々に浅くなるような位置に形成されている。従って、培養槽10aからの培養液は、壁面に形成された培養液流路12(貫通口)を通って、下流側の培養槽10bに供給されることになる。他の培養槽10においても同様である。本実施形態の培養システムを図5に示すように構成しても、前記の培養システム100と同様の効果が得られる。
【0053】
図6は、本実施形態の培養システム100についての変形例を示す図である。前記の図2に示した部材と同じものについては同じ符号を付すものとし、その詳細な説明は省略する。前記の培養システム100では、レースウェイ式の培養槽10が5つ接続されていたが、図6に示す培養システム103では、箱型の培養槽30が5つ接続されている。培養槽30には、槽内の培養液Mを撹拌する撹拌翼40が備えられている。
【0054】
前記の培養システム100における培養槽10aが、図6の培養システム103における培養槽30aに相当する。同様に、培養槽10bが培養槽30bに、培養槽10cが培養槽30cに、培養槽10dが培養槽30dに、培養槽10eが培養槽30eに相当する。従って、培養槽30aに栄養塩及び水が供給されると、培養槽30a内でこれらは培養液Mになる。そして、この培養液Mは、前記の培養システム100と同様に形成された培養液流路12〜15を通って、下流側の培養槽30に供給されるようになっている。本実施形態の培養システムを図6に示すように構成しても、前記の培養システム100と同様の効果が得られる。
【0055】
以上、本発明を、具体的な実施形態及びその変形例を挙げて説明したが、本発明は前記の内容に何ら制限されるものではない。
【0056】
例えば、前記の例では、別体の培養槽10を多段に接続したが、これらは予め一体に設けられていてもよい。即ち、複数の培養槽が予め多段に接続された一体型の培養槽を用いて、培養システム100を構築してもよい。また、別体の培養槽10は前記のように接続されることが好ましいものの、例えば、複数のレースウェイ型の培養槽が、配管等を用いて接続されるようにしてもよい。培養槽の材質は本培養システムの特徴をなんら制限するものではない。即ち、培養槽10は、FRP(樹脂強化ガラス繊維)、プラスチック、コンクリート、粘土、砂利、砂等のいずれの材料で製作されても良い。
【0057】
また、前記の例では、水平方向に培養槽10に配置したが、培養槽10は、培養槽は鉛直方向に配置されてもよく、また、適宜鉛直方向から適宜ずらして設けられてもよい。そして、これらのように配置された培養槽10について、前記の例と同様に培養槽10同士を接続すればよい。
【0058】
さらに、培養槽10同士をつなぐ培養液流路12〜15の構成も、培養槽10内の培養液Mの水深が下流側に向かうにつれて徐々に浅くなれば、どのようにしてもよい。例えば、培養システム100が設置される場所によってユーグレナの増殖速度が変わることが考えられるため、それに応じて、培養液流路12〜15の上下方向の位置や幅等を適宜変更することができる。
【0059】
また、培養槽10の大きさや、培養槽10の数、培養槽10の深さ、培養液Mの量、培養槽10内での培養液Mの滞留時間等も、特に制限はない。従って、図示の例では、同じ大きさの培養槽10を用いたが、異なる大きさの培養槽10を適宜組み合わせて培養システム100を構成してもよい。
【0060】
さらに、本実施形態の培養システム100によって培養される光合成微生物の好適例としてユーグレナを挙げたが、培養システム100により培養可能な光合成微生物はユーグレナに限られず、また、微細藻類に限られるものではない。従って、本実施形態の培養システム100は、バイオ燃料やバイオ燃料の原料となりうる成分を光合成によって生成し、細胞内に蓄積することができるユーグレナに適用することが好ましいものの、他の微細藻類や光合成微生物に対しても好適である。
【0061】
また、塩濃度センサで計測する塩濃度は、低下することにより微細藻類の細胞が栄養飢餓状態になり、細胞内に油脂や油脂の原料となる炭水化物を蓄積するようになる成分の塩であればよく、塩の種類を限定するものではない。
【0062】
培養槽10へ栄養塩及び水等を供給する配管21及び培養槽10から培養液を引き抜く配管22は、所謂管状のものであることが好ましいが、例えば開水路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10,10a,10b,10c,10d,10e レースウェイ式の培養槽(培養槽)
10a1,10b1,10b2,10c1,10c2,10d1,10d2,10e2 切り込み
12,13,14,15 培養液流路
30,30a,30b,30c,30d,30e 箱型の培養槽(培養槽)
100,101,102,103 培養システム
M 培養液
図1
図2
図3
図4
図5
図6