(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231401(P2015-231401A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】揮散器
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20151201BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20151201BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
A61L9/12
B65D83/00 F
B65D85/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-118342(P2014-118342)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】村田 知哉
【テーマコード(参考)】
3E068
4C002
【Fターム(参考)】
3E068AA40
3E068AB10
3E068AC10
3E068CC16
3E068CD02
3E068CE03
3E068DD08
3E068DD13
3E068DD31
3E068DE12
3E068EE40
4C002AA01
4C002BB01
4C002BB08
4C002DD02
4C002DD12
4C002EE05
4C002FF06
4C002KK10
(57)【要約】
【課題】 必要に応じてワンアクションの操作で定量の液体を含浸体に供給できる揮散器を提供する。
【解決手段】
液体を収容する容器10は、下端の閉塞部17に液体を流下させるための流出穴17bと弁座17cを有する。弁20は、圧縮コイルバネ60の力で弁座17cに着座して流出穴17bを閉じる。外キャップ30が容器10に相対的に上下移動可能に取り付けられている。外キャップ30にはシャフト40が固定されており、このシャフト40には弁20と受け容器50が固定されている。受け容器50は上端開口50aを有し、流出穴17bの下方に配置されている。受け容器50には含浸体70が収容されている。外キャップ30が容器10に対して相対的に上方移動して弁20を開いた時に、受け容器50の上端縁が容器10の閉塞部17に当たることにより、外キャップ30の上方移動が規制され、受け容器50の上端開口50aが容器10の閉塞部17で塞がれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容し、下端の閉塞部に前記液体を流下させるための流出穴を有し、前記閉塞部の上面に弁座を有する容器と、
前記弁座に着座して前記流出穴を閉じる閉じ位置と、前記弁座から離れて前記流出穴を開く開き位置との間で、上下移動可能な弁と、
前記弁を前記閉じ位置に向かって付勢する付勢手段と、
前記容器に相対的に上下移動可能に取り付けられた支持部材と、
前記支持部材に固定され、前記支持部材の前記容器に対する相対的な上方移動に伴い前記付勢手段に抗して前記弁を開き位置まで移動させる弁作動部材と、
前記支持部材に固定されるとともに前記流出穴の下方に配置され、上端に開口を有する受け容器と、
前記受け容器に収容され、前記流出穴から流下した液体を含浸させ、この含浸された液体を外部雰囲気中に揮散させる含浸体と、
を備え、
前記支持部材が前記容器に対して相対的に上方移動して前記弁を開いた時に、前記受け容器が前記支持部材に追随して上方へ移動し、その上端縁が前記容器の閉塞部に当たることにより、前記支持部材の上方移動を規制するとともに、前記受け容器の上端開口を前記容器の閉塞部で塞ぐことを特徴とする揮散器。
【請求項2】
前記受け容器の少なくとも上端縁およびその近傍部が弾性材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の揮散器。
【請求項3】
前記弁作動部材が、前記容器の前記閉塞部の中央を貫通するシャフトを有し、このシャフトは、その下端部が前記支持部材に固定され、その上端部が前記弁に固定され、その中間部が前記受け容器の中央を貫通して固定され、
前記付勢手段は圧縮コイルバネからなり、この圧縮コイルバネは、前記シャフトに巻かれ、前記容器の閉塞部と前記受け容器の底部との間に介在されていることを特徴とする請求項1または2に記載の揮散器。
【請求項4】
前記容器は、口部を下にして倒立状態をなす容器本体と、この容器本体の口部に装着された内キャップとを有し、この内キャップの底壁が前記閉塞部として提供され、
前記支持部材は外キャップからなり、この外キャップは前記内キャップに対して相対的に上下動可能に取付けられ、その底壁に前記シャフトが固定され、その周壁に通気口が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤等の液体を揮散させる揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香剤等を揮散させる揮散器は、容器に収容された芳香剤等の液体を吸液性の含浸体に供給し、この含浸体に含浸させた芳香剤を外部雰囲気に微量ずつ揮散させるようになっている。
【0003】
前記揮散器には、前記容器からの液体を前記含浸体に少量ずつ常時供給するタイプのものがあるが、望まない時にも揮散されてしまう欠点がある。
そのため、特許文献1に示すように、通常は前記容器から前記含浸体への液体の供給を行わず、必要に応じてユーザーのワンアクションの操作で供給を行うタイプのものも開発されている。
【0004】
特許文献1の揮散器では、液体を収容する容器が、含浸体を収容する受け容器に上下動可能に支持されている。この容器の下端には閉塞部が設けられ、この閉塞部には流出穴が形成されるとともに弁座が形成されている。この弁座には圧縮コイルバネの力で弁が常時着座しており、前記流出穴が閉じられている。前記受け容器の底壁中央には起立状態の弁作動部材が固定されている。
【0005】
前記容器を前記受け容器に対して押し下げると、前記受け容器に固定された前記弁作動部材が前記圧縮コイルバネの力に抗して前記弁を突き上げ前記弁座から離す。これにより前記流出穴が開いて液体が流下し、前記受け容器の含浸体に吸収される。前記容器への押圧を解除すると、前記弁が前記圧縮コイルバネの力で前記弁座に着座した位置に戻り前記流出穴を閉じる。前記含浸体に吸収された液体は微量ずつ外部雰囲気中に揮散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57―51534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の揮散器では、前記弁を開いた時に前記流出穴からの液体を前記含浸体に適量供給することが難しかった。その理由を説明する。前記容器を押し下げると、前述したように弁が開いて液体の供給が始まるが、前記容器の下端閉塞部が前記弁作動部材の鍔部に当たり、その下方への移動が規制された時に、前記流出穴が前記鍔部により塞がれて液体の供給が停止する。このように、液体の供給は前記容器の下方への移動の過程でしかなされず、ユーザーが適量の液体を供給すべく、容器の押し下げを制御することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決したもので、
液体を収容し、下端の閉塞部に前記液体を流下させるための流出穴を有し、前記閉塞部の上面に弁座を有する容器と、
前記弁座に着座して前記流出穴を閉じる閉じ位置と、前記弁座から離れて前記流出穴を開く開き位置との間で、上下移動可能な弁と、
前記弁を前記閉じ位置に向かって付勢する付勢手段と、
前記容器に相対的に上下移動可能に取り付けられた支持部材と、
前記支持部材に固定され、前記支持部材の前記容器に対する相対的な上方移動に伴い前記付勢手段に抗して前記弁を開き位置まで移動させる弁作動部材と、
前記支持部材に固定されるとともに前記流出穴の下方に配置され、上端に開口を有する受け容器と、
前記受け容器に収容され、前記流出穴から流下した液体を含浸させ、この含浸された液体を外部雰囲気中に揮散させる含浸体と、
を備え、
前記支持部材が前記容器に対して相対的に上方移動して前記弁を開いた時に、前記受け容器が前記支持部材に追随して上方へ移動し、その上端縁が前記容器の閉塞部に当たることにより、前記支持部材の上方移動を規制するとともに、前記受け容器の上端開口を前記容器の閉塞部で塞ぐことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、前記流出穴から前記受け容器への液体供給は、前記弁が開いた時から始まるが、その終了時点は、前記受け容器の上端縁が前記容器の閉塞部に当たり前記支持部材の相対的な上方移動を規制された時ではなく、前記容器の閉塞部によって塞がれた前記受け容器に液体が満たされた時である。その結果、定量の液体を前記受け容器に供給することができる。
【0010】
好ましくは、前記受け容器の少なくとも上端縁およびその近傍部が弾性材料により形成されている。
この構成によれば、前記受け容器の上端縁と前記容器の閉塞部との間のシール性を向上させることができ、液体の定量供給をより確実にすることができる。
【0011】
好ましくは、前記弁作動部材が、前記容器の前記閉塞部の中央を貫通するシャフトを有し、このシャフトは、その下端部が前記支持部材に固定され、その上端部が前記弁に固定され、その中間部が前記受け容器の中央を貫通して固定され、前記付勢手段は圧縮コイルバネからなり、この圧縮コイルバネは、前記シャフトに巻かれ、前記容器の閉塞部と前記受け容器の底部との間に介在されている。
この構成によれば、付勢手段としての圧縮コイルバネを前記容器の外部に配置することができる。
【0012】
好ましくは、前記容器は、口部を下にして倒立状態をなす容器本体と、この容器本体の口部に装着された内キャップとを有し、この内キャップの底壁が前記閉塞部として提供され、前記支持部材は外キャップからなり、この外キャップは前記内キャップに対して相対的に上下動可能に取付けられ、その底壁に前記シャフトが固定され、その周壁に通気口が形成されている。
この構成によれば、構成を簡略化できるとともに、前記外キャップにより前記含浸体を収容した前記受け容器を保護することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、必要に応じてワンアクションの操作で定量の液体を含浸体に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態をなす揮散器を示す縦断面図であり、(A)は弁閉じ状態、(B)は弁開き状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態をなす揮散器について、
図1を参照しながら説明する。
揮散器は芳香剤等の液体を収容した容器10を備えている。この容器10は、容器本体11と内キャップ15とを有している。容器本体11は、PET,PP等の樹脂をダイレクトブロー成形又は二軸延伸ブロー成形することにより得られ、底壁(図示しない)を上に口部12を下にした倒立状態で、例えば自動車の空調装置の吹き出し口に設置されたルーバに、取り付け具(図示しない)を介して取り付けられる。
【0016】
内キャップ15は、PP等の樹脂からなり、容器本体11の口部12の外周に溶着または接着により固定された周壁16と、底壁17(容器10の閉塞部)とを有している。なお、内キャップ15は口部12に螺合されていてもよい。
底壁17には、その中央穴17aと、この中央穴17aの周りに周方向に間隔をおいて形成された複数の流出穴17bが形成されている。更に底壁17の上面には、中央穴17aの周りの領域に、凹球面(凹面)からなる弁座17cが形成されている。この弁座17cに流出穴17bの上端が開口している。
【0017】
容器10の口部12には弁20が収容されている。この弁20の下面は弁座17cの凹球面に対応する凸球面(凸面)をなしている。この弁20は、ゴム等の弾性材料からなり、弁座17cに着座して流出穴17bを塞ぐ閉じ位置と、弁座17cから離れて流出穴17bを開く開き位置との間で上下移動するようになっている。
【0018】
容器10の内キャップ15には、上下動スライド可能に外キャップ30(支持部材)が取り付けられている。この外キャップ30はPP等の樹脂からなり、周壁31と底壁32とを有している。この周壁31には多数の通気口31aが形成されている。周壁31の内径はその上端部を除いて内キャップ15の周壁16の外径とほぼ等しく、内キャップ15に対して安定してスライドできるようになっている。
【0019】
外キャップ30の周壁31の上端部は他の部位より内径が大きく、両者の境には環状の段差31bが形成されている。さらに、この周壁31の上端部の内周には環状の係止爪31cが形成されている。
【0020】
他方、内キャップ15の周壁16の外周にも係止爪16aが形成されている。外キャップ30を内キャップ15に向けて軸方向に押し込むと、外キャップ30の係止爪31cが内キャップ15の係止爪16aを乗り越えることにより、両者の組み付けがなされる。この組み付け状態で、内キャップ15の係止爪16aが外キャップ30の段差31bと係止爪31cとの間に位置している。
【0021】
外キャップ30の底壁32の中央には、PP等の樹脂からなるシャフト40(弁作動部材)の下端が固定されている。このシャフト40は起立した状態、内キャップ15の底壁17の中央穴17aを貫通し、その上端部が容器本体11の口部12内に入り込んでいる。弁20はその中央をシャフト40の上端部が貫通した状態で、シャフト40に固定されている。
【0022】
外キャップ30内には受け容器50が収容されている。この受け容器50はゴム等の弾性材料からなり、その中央をシャフト40が液密に貫通した状態で、シャフト40に固定されている。
受け容器50は上端開口50aを有しており、この上端開口50aは、内キャップ15の底壁17の流出穴17bの真下に位置している。
【0023】
シャフト40には圧縮コイルバネ60(付勢手段)が巻かれている。この圧縮コイルバネ60は、容器10の内キャップ12の底壁17と受け容器50の底壁との間に介在されている。
受け容器50には、液体を含浸するための不織布等からなる含浸体70が収容されている。
【0024】
構成をなす揮散器において、容器本体11と内キャップ15からなる容器10が固定系を構成し、外キャップ30、シャフト40、弁20、受け容器50が、一体に上下移動する移動系を構成している。
【0025】
図1(A)に示すように揮散器が自然状態にある時、圧縮コイルバネ60により、受け容器50が内キャップ15から離れる方向すなわち下方への力を受け、この受け容器50に固定されたシャフト40を介して弁20が下方への力を受けて弁座17cに着座し、流出穴17bを閉じている。これにより、容器10の液体が流出穴17bから流下するのを禁じている。
【0026】
自然状態において、外キャップ30も下方位置にあり、その係止爪31cが内キャップ15の係止爪16aに係止するかこれより若干上の位置にある。外キャップ30に下方への意図しない外力が働いてもこれら係止爪31c、16aの係止により、外キャップ30のさらなる下方への移動が禁じられ、弁20に過剰な力が付与されることはない。
【0027】
ユーザーが芳香剤の揮散を必要とする場合には、外キャップ30を手指で上方へ押す。すると、
図1(B)に示すように、シャフト40が圧縮コイルバネ60に抗して上方へ移動し、このシャフト40に固定された弁20が上方に移動して弁座17cから離れる。その結果、流出穴17bが開き、容器10内の液体が流出穴17bから受け容器50へと流下する。
【0028】
外キャップ30、シャフト40、弁20,受け容器50の上方への移動は、受け容器50の上端縁が内キャップ15の底壁17に当たることにより規制される。受け容器50は弾性材料からなるので、押圧力により上端縁が弾性変形(圧縮変形)され、受け容器50と底壁17との間が良好にシールされる。このようにして受け容器50の内部空間が外部と遮断されるので、流出穴17bから流下した液体は受け容器50を満たした後、流下しなくなる。その結果、受け容器50への液体供給量を定量にすることができる。
【0029】
受け容器50が若干の弾性変形を伴って内キャップ15の底壁17に当たった状態で、外キャップ30の段差31bが内キャップ15の係止爪16aに係止されるので、それ以上の上方移動が禁じられ、受け容器50に過剰な力が付与されない。
【0030】
外キャップ30の押圧を解除すると、圧縮コイルバネ60の力により、外キャップ30、シャフト40、弁20,受け容器50が
図1(A)の状態に戻る。弁20が弁座17cに着座して流出穴17bを閉じるので、液体の流下が禁じられる。
【0031】
なお、弁20の戻り動作の際に、凹球面をなす弁座17cに溜まっている液体の一部が、弁20からの圧力を受けて流出穴17bから排出される。この機能は特に、流出穴17b内の液体の粘性が高まりその表面張力に起因して液体が出にくくなっている状況で有効である。
【0032】
図1(A)の状態では、受け容器50の上端開口50aは開放されており、含浸体70に含浸された液体が微量ずつ時間をかけて揮散され、この揮散された芳香剤は、外キャップの周壁31に形成された通気口31cから外部雰囲気へと供給される。
【0033】
本発明は、実施形態に制約されず、種々の態様を採用することができる。実施形態では、内キャップ15の底壁17の中央穴17aはシャフト40と略同径であり中央穴17aからの液体の流下は生じないが、シャフト40より径を大きくすることにより流出穴として提供してもよい。
【0034】
実施形態では、圧縮コイルバネが容器の外に配置されているが、容器の口部内に配置してもよい。この場合、容器の口部内周にバネ受け用の鍔部を設け、この鍔部と弁20との間に圧縮コイルバネを介在させる。
【0035】
前記のように圧縮コイルバネを容器の口部内に設けた場合、シャフト(弁作動部材)を弁に固定せず、外キャップ(支持部材)の上昇時に弁を突き上げるようにしてもよい。この構成を採用する場合、内キャップの底壁(閉塞部)の中央穴にシャフトを挿入するようにしてよいし、弁から下方に延びる軸部を中央穴に挿入しこの軸部にシャフトを当てるようにしてもよい。
【0036】
前記実施形態では、受け容器はシャフト(弁作動部材)に固定されず外キャップ(支持部材)に直接固定してもよい。
前記実施形態とは逆に、支持部材を固定し、容器を下方に押し下げて液体を受け容器に供給してもよい。
容器または支持部材を固定する場所は、自動車の空調装置のルーバに限定されない。
容器に収容される液体は芳香剤に限定されず、薬剤その他の揮散可能な液体であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、芳香剤等を揮散させる揮散器に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 容器
11 容器本体
12 口部
15 内キャップ
17 底壁(閉塞部)
17b 流出穴
17c 弁座
20 弁
30 外キャップ(支持部材)
40 シャフト(弁作動部材)
50 受け容器
50a 上端開口
60 圧縮コイルバネ(付勢手段)
70 含浸体