【課題】原水の水質に変動が生じた場合に、回収率の設定を変更したり、スケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量の設定を変更したりすることについて、複数の逆浸透膜分離装置を遠隔制御することにより、複数の逆浸透膜分離装置を総合的に管理する。
【解決手段】同一水源4から導入される原水W1から透過水を処理水W2として分離する複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを備え、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを遠隔制御する遠隔制御部51は、逆浸透膜モジュール22a〜22cの膜に関する仕様情報と、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、回収率、原水W1に添加するスケール分散剤の添加量、及び原水W1に添加するpH調整剤の添加量のいずれか1つを遠隔制御により設定変更する。
前記複数の逆浸透膜分離装置に組み込まれた前記逆浸透膜モジュールの膜エレメントに関する仕様情報に対応する前記回収率のデータテーブルを前記複数の逆浸透膜分離装置ごとに記憶する記憶部を更に備え、
前記遠隔制御部は、前記逆浸透膜モジュールの前記回収率の設定を変更する場合において、前記分析データ格納部に格納された原水のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つの経時変動幅が所定の範囲外の場合に、前記複数の逆浸透膜分離装置それぞれに対し、予め設定された前記回収率が前記データテーブルから選択された新たな回収率に更新されるように遠隔制御により設定変更する、
請求項1に記載の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の全体構成図である。
図2は、本実施形態の水質検出装置9の構成を示すブロック図である。
図3は、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の制御に係る機能ブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1は、ネットワーク3を介して、遠隔地から通信により複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを遠隔制御する。ネットワーク3は、有線通信又は無線通信による広域の通信網である。
【0016】
逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1は、水源4と、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cと、遠隔制御装置5と、複数の原水ラインL1a〜L1cと、複数の処理水ラインL2a〜L2cと、複数の濃縮水導出ラインL3a〜L3cと、複数の濃縮水リターンラインL31a〜L31cと、複数の濃縮水排出ラインL32a〜L32cと、複数の比例制御弁10a〜10cと、複数のスケール分散剤添加手段としてのスケール分散剤添加装置6a〜6cと、複数のpH調整剤添加手段としてのpH調整剤添加装置7a〜7cと、複数のシリカ濃度センサ8a〜8cと、複数の水質検出装置9a〜9cと、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0017】
複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、同一の水源4の地域内に設置される。同一の水源4の地域内とは、同一の水源4からの原水W1を供給可能な地域内をいう。同一の水源4の地域内に設置される複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cには、例えば、同一会社における地理的に離間した異なる事業所や離間した敷地内に設置される複数の逆浸透膜分離装置や、地理的に離間した地域において複数のユーザに使用される複数の逆浸透膜分離装置や、別会社における地理的に離間した地域に設置される複数の逆浸透膜分離装置が含まれる。なお、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、全てが離間して設置されていなくてもよく、一部又は全部が近くに設置されていてもよい。
【0018】
逆浸透膜分離装置2aは、例えば、ユーザXの使用する逆浸透膜分離装置である。逆浸透膜分離装置2bは、例えば、ユーザYの使用する逆浸透膜分離装置である。逆浸透膜分離装置2cは、例えば、ユーザZの使用する逆浸透膜分離装置である。なお、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを使用するユーザは、これに限定されず、例えば、逆浸透膜分離装置2a及び2bがユーザXの使用する逆浸透膜分離装置であってもよく、逆浸透膜分離装置2cがユーザYの使用する逆浸透膜分離装置であってもよい。この場合において、例えば、ユーザXの使用する逆浸透膜分離装置2a及び2bが近接した位置に設置され、ユーザYの使用する逆浸透膜分離装置2cがユーザXの使用する逆浸透膜分離装置2a及び2bから地理的に離間した位置に設置されてもよい。
【0019】
複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、それぞれ、加圧ポンプ21a〜21cと、逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール22a〜22cと、RO制御部23a〜23cと、記憶部としてのRO記憶部24a〜24cと、を備える。複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれには、原水ラインL1a〜L1cを介して、同一水源4(例えば、井戸,河川,貯水池等)から、原水W1が供給される。一般的な原水ラインL1a〜L1cは、地方自治体や地方公共団体等が敷設・管理する水道管網(例えば、工業用水道や上水道等)と、各ユーザが敷設・管理する給水管路とから構成されている。原水ラインL1a〜L1cは、上流側において水源4に接続されており、下流側において複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに接続されている。複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの詳細については後述する。
【0020】
原水ラインL1a〜L1cの途中には、上流側から下流側に向けて、シリカ濃度センサ8a〜8c、水質検出装置9a〜9c、スケール分散剤添加装置6a〜6c、pH調整剤添加装置7a〜7cが順に接続されている。スケール分散剤添加装置6a〜6cそれぞれは、原水ラインL1a〜L1cの途中の接続部J1a〜J1cに接続されている。pH調整剤添加装置7a〜7cそれぞれは、原水ラインL1a〜L1cの途中の接続部J2a〜J2cに接続されている。シリカ濃度センサ8a〜8cそれぞれは、原水ラインL1a〜L1cの途中の接続部J3a〜J3cに接続されている。水質検出装置9a〜9cそれぞれは、原水ラインL1a〜L1cの途中の接続部J4a〜J4cに接続されている。
【0021】
スケール分散剤添加装置6a〜6cは、逆浸透膜分離装置2a〜2cのRO膜モジュール22a〜22cに供給される原水W1にスケール分散剤を添加する装置である。スケール分散剤添加装置6a〜6cは、原水W1のシリカ濃度が上昇した場合や、原水W1のランゲリア指数(後述)やリズナー指数(後述)がスケールを生成する傾向にある場合には、スケール分散剤を添加することにより、濃縮水W3a〜W3c(後述)中での炭酸カルシウム系スケール及びシリカ系スケールの析出を抑制する。例えば、スケール分散剤添加装置6a〜6cは、ポリカルボン酸塩やリン酸塩等のスケール分散剤を、原水ラインL1a〜L1cを流通する原水W1に添加するように構成されている。スケール分散剤添加装置6a〜6cは、ネットワーク3を介して、遠隔制御装置5に接続されており、遠隔制御部51により遠隔制御される。
【0022】
pH調整剤添加装置7a〜7cは、逆浸透膜分離装置2a〜2cのRO膜モジュール22a〜22cに供給される原水W1にpH調整剤を添加する装置である。例えば、pH調整剤添加装置7a〜7cは、pH調整剤として、所定のアルカリ性薬剤(例えば、水酸化ナトリウム)、又は、所定の酸性薬剤(例えば、塩酸)を、原水ラインL1a〜L1cを流通する原水W1に添加するように構成されている。
【0023】
pH調整剤添加装置7a〜7cは、原水W1のシリカ濃度が上昇した場合には、アルカリ性薬剤を原水W1に添加することにより、濃縮水W3a〜W3c(後述)中でのシリカ系スケールの析出を抑制する。pH調整剤添加装置7a〜7cは、原水W1のランゲリア指数(後述)やリズナー指数(後述)がスケールを生成するスケール生成傾向の範囲内(炭酸カルシウムが溶解度を超えて析出しやすい水質バランス)にある場合には、酸性薬剤を原水W1に添加することにより、濃縮水W3a〜W3c(後述)中での炭酸カルシウム系スケールの析出を抑制する。pH調整剤添加装置7a〜7cは、ネットワーク3を介して、遠隔制御装置5に接続されており、遠隔制御部51により遠隔制御される。
【0024】
pH調整剤添加装置7a〜7cにおけるpH調整剤を添加する制御方法としては、例えば、逆浸透膜分離装置2a〜2cに供給される原水W1の流量に比例して、pH調整剤を定率で添加する制御方法がある。
また、pH調整剤を添加する制御方法として、例えば、所定間隔毎にpH調整剤を添加する制御方法を用いることができる。この制御方法において、添加間隔を変えずに添加量を添加毎に変える制御方法や、添加量を添加毎には変えずに添加間隔を変える制御方法を採用することができる。
【0025】
シリカ濃度センサ8a〜8cは、原水ラインL1a〜L1cを流通する原水W1(スケール分散剤又はpH調整剤が添加される前の原水)のシリカ濃度を検出するセンサである。シリカ濃度センサ8a〜8cとしては、例えば、七モリブデン酸六アンモニウムを含む試薬を添加したときの発色により、濃度を検出する比色式センサが用いられる。比色式センサは、所定量の試料水を収容した透明容器へ試薬を添加し、シリカと七モリブデン酸六アンモニウムとの反応による試料水の発色度合を、特定波長の光を照射したときの吸光度から測定する。そして、比色式センサは、測定された吸光度に基づいて、試料水中のシリカ濃度を測定(検出)する。シリカ濃度センサ8a〜8cそれぞれは、逆浸透膜分離装置2a〜2cに電気的に接続されている。シリカ濃度センサ8a〜8cに検出されたシリカ濃度の検出値は、逆浸透膜分離装置2a〜2cへ入力される。なお、シリカ濃度センサ8a〜8cそれぞれは、ネットワーク3を介して、遠隔制御装置5に接続されもよい。シリカ濃度センサ8a〜8cが遠隔制御装置5に接続される場合には、シリカ濃度センサ8a〜8cに検出されたシリカ濃度の検出値は遠隔制御装置5に入力され、遠隔制御装置5の不図示のメモリに保存される。
【0026】
水質検出装置9a〜9cは、原水ラインL1a〜L1cを流通する原水W1(スケール分散剤又はpH調整剤が添加される前の原水)の水質を検出する。水質検出装置9a〜9cは、ランゲリア指数又はリズナー指数を算出する際に用いられる水質に関する情報を検出する。水質検出装置9a〜9cにより検出された水質の検出値は、逆浸透膜分離装置2a〜2cへ入力される。
【0027】
水質検出装置9a〜9cは、
図2に示すように、pH値センサ91と、温度センサ92と、電気伝導率センサ93と、カルシウム硬度センサ94と、総アルカリ度センサ95とを有する。pH値センサ91、温度センサ92、電気伝導率センサ93、カルシウム硬度センサ94、総アルカリ度センサ95それぞれにより検出される検出値は、逆浸透膜分離装置2a〜2cへ入力される。pH値センサ91、温度センサ92、電気伝導率センサ93、カルシウム硬度センサ94、総アルカリ度センサ95それぞれにより検出される検出値は、逆浸透膜分離装置2a〜2cのランゲリア指数算出部232(
図3参照、後述)がランゲリア指数を算出する際に用いられ、又は、逆浸透膜分離装置2a〜2cのリズナー指数算出部233(
図3参照、後述)がリズナー指数を算出する際に用いられる。なお、水質検出装置9a〜9cそれぞれは、ネットワーク3を介して、遠隔制御装置5に接続されもよい。水質検出装置9a〜9cが遠隔制御装置5に接続される場合には、水質検出装置9a〜9cに検出されたH値センサ91、温度センサ92、電気伝導率センサ93、カルシウム硬度センサ94、及び総アルカリ度センサ95の検出値は遠隔制御装置5に入力され、ランゲリア指数の算出値又はリズナー指数の算出値が遠隔制御装置5の不図示のメモリに保存される。
【0028】
pH値センサ91は、原水ラインL1を流通する原水W1のpH値を検出するセンサである。温度センサ92は、原水ラインL1を流通する原水W1の水温を検出するセンサである。電気伝導率センサ93は、原水ラインL1を流通する原水W1の電気伝導率を検出するセンサである。
【0029】
カルシウム硬度センサ94は、原水ラインL1を流通する原水W1のカルシウム硬度を検出するセンサである。カルシウム硬度センサ94としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−(2’−ヒドロキシ−4’−スルホ−1’−ナフチルアゾ)−3−ナフトエ酸(略称:HSNN)を含む試薬を添加したときの発色により、カルシウム硬度を検出する比色式センサが用いられる。比色式センサは、所定量の試料水を収容した透明容器へ試薬を添加し、カルシウムイオンとHSNNとの反応による試料水の色相変化を、特定波長の光を照射したときの吸光度から測定する。そして、比色式センサは、測定された吸光度に基づいて、試料水中のカルシウム硬度を測定(検出)する。
【0030】
総アルカリ度センサ95は、原水ラインL1を流通する原水W1の総アルカリ度を検出するセンサである。総アルカリ度とは、水中に含まれる炭酸水素塩、炭酸塩、水酸化物等のアルカリ成分の量を炭酸カルシウム(CaCO
3)の量に換算して表わしたものであり、JIS規格では、酸消費量(pH4.8)と称される。総アルカリ度センサ95としては、例えば、メチルオレンジを含む試薬を添加したときの発色により、総アルカリ度を検出する比色式センサが用いられる。比色式センサは、所定量の試料水を収容した透明容器へ試薬を添加し、アルカリ成分とメチルオレンジの反応による試料水の発色度合を、特定波長の光を照射したときの吸光度から測定する。そして、比色式センサは、測定された吸光度に基づいて、試料水中の総アルカリ度を測定(検出)する。
【0031】
複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれは、同一水源4から原水W1をRO膜モジュール22a〜22cに導入することで、原水W1から透過水(処理水)W2a〜W2cと、濃縮水W3a〜W3cとに分離する。複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれは、製造された処理水W2a〜W2cを、処理水ラインL2a〜L2cを介して、需要箇所へ供給する。処理水ラインL2a〜L2cは、上流側において複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに接続されており、下流側において需要箇所に接続されている。
【0032】
なお、以下の説明において、複数又は単数を区別する必要がない場合には、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2c、複数の加圧ポンプ21a〜21c、複数のRO膜モジュール22a〜22c、複数のRO制御部23a〜23c、複数のRO記憶部24a〜24c、処理水W2a〜2c、濃縮水W3a〜W3c、スケール分散剤添加装置6a〜6c、pH調整剤添加装置7a〜7c、シリカ濃度センサ8a〜8c、水質検出装置9a〜9cの識別記号である「a」、「b」、「c」については省略して、単に「逆浸透膜分離装置2」、「加圧ポンプ21」、「RO膜モジュール22」、「RO制御部23」、「処理水W2」、「スケール分散剤添加装置6」、「pH調整剤添加装置7」、「シリカ濃度センサ8」、「水質検出装置9」と記載する。また、後述する「濃縮水W3の一部W31」、「濃縮水W3の残部W32」等についても、同様に記載する。
【0033】
逆浸透膜分離装置2a〜2cは、前述の通り、それぞれ、上流側に設けられる加圧ポンプ21a〜21cと、下流側に設けられる逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール22a〜22cとにより構成される。
【0034】
RO膜モジュール22は、加圧ポンプ21により圧送された原水W1を、溶存塩類が除去された透過水(処理水)W2と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W3と、に分離する。RO膜モジュール22は、単一又は複数のスパイラル型RO膜エレメント(図示せず)を圧力容器(ベッセル)に収容して構成される。当該RO膜エレメントに使用されるRO膜としては、架橋芳香族ポリアミド系複合膜等が例示される。架橋芳香族ポリアミド系複合膜からなるRO膜エレメントとしては、東レ社製:型式名「TMG20−400」、ウンジン・ケミカル社製:型式名「RE8040−BLF」、日東電工社製:型式名「ESPA1」等が市販されており、これらのエレメントを好適に用いることができる。
RO膜は、分子量が数十程度のものを濾過可能な膜である。このRO膜には、ナノ濾過膜(NF膜)も含まれる。ナノ濾過膜は、2nm程度よりも小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度の物質)の透過を阻止可能な液体分離膜である。なお、ナノ濾過膜は、ルーズRO膜と呼ばれることもある。
【0035】
加圧ポンプ21は、水源4から供給される原水W1を加圧し、RO膜モジュール22に送出する。ここで、RO膜モジュール22からの透過水W2の流量を検出する流量センサ(図示せず)と、加圧ポンプ21の回転数を駆動周波数に応じて可変させるインバータ(図示せず)と、流量センサからの流量検知信号に基づいて、インバータへ指令信号を出力する流量制御部231(
図3参照、後述)とを備えることが好ましい。この構成によれば、流量センサにより検出される透過水W2の流量に基づくフィードバック制御により、透過水W2の流量を一定に維持するように制御を行うことができる。
【0036】
これにより、水温の変動などで処理流量が変化するような場合であっても、加圧ポンプ21の回転数が流量制御部231により自動的に調整されて、透過水W2の流量を一定に制御することができる。
【0037】
この逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1によれば、同一水源4から供給された原水W1は、原水ラインL1を介して逆浸透膜分離装置2に送出される。逆浸透膜分離装置2に流入した原水W1は、逆浸透膜分離装置2により最終的に浄化された透過水としての処理水W2となる。処理水(透過水)W2は、処理水ラインL2を介して需要箇所へ供給される。逆浸透膜分離装置2によって濃縮された濃縮水W3については、一部W31が濃縮水リターンラインL31を介して、原水ラインL1に戻されると共に、残部W32が濃縮水排出ラインL32を介して系外に排出される。
【0038】
逆浸透膜分離装置2の周辺には、透過水(処理水)W2が流通可能な処理水ラインL2と、濃縮水W3が流通可能な濃縮水導出ラインL3と、濃縮水W3の一部W31を原水ラインL1へ返送する濃縮水リターンラインL31と、濃縮水W3の残部W32を系外へ排出する濃縮水排出ラインL32と、が設けられている。
【0039】
処理水ラインL2は、RO膜を透過した透過水W2を装置外へ導出するラインである。処理水ラインL2は、RO膜モジュール2に接続され、RO膜モジュール22により製造された透過水(処理水)W2を需要箇所へ供給(導出)する。
【0040】
濃縮水導出ラインL3は、RO膜を透過しない濃縮水W3が流通するラインである。濃縮水導出ラインL3は、RO膜モジュール22に接続され、RO膜モジュール22により製造された濃縮水W3を導出する。
【0041】
濃縮水リターンラインL31は、RO膜モジュール22で分離された濃縮水W3の一部W31を、濃縮水導出ラインL3を介して、原水ラインL1へ返送するラインである。濃縮水リターンラインL31の上流側の端部は、濃縮水導出ラインL3の下流側の端部J6に接続されている。RO濃縮水リターンラインL31の下流側の端部は、接続部J5において原水ラインL1に接続されている。
【0042】
濃縮水排出ラインL32は、RO膜モジュール22で分離された濃縮水W3の残部W32を、濃縮水導出ラインL3を介して、装置外へ排出するラインである。濃縮水排出ラインL32の上流側の端部は、濃縮水導出ラインL3の下流側の端部J6に接続されている。
【0043】
濃縮水排出ラインL32の途中には、逆浸透膜分離装置2の回収率を変更可能な濃縮水排水バルブ10が設けられている。逆浸透膜分離装置2の回収率は、一般的に、下記式により求められる。
回収率[%]=透過水流量/給水流量×100=透過水流量/(透過水流量+排水流量)×100
本実施形態においては、回収率の式において、排水流量は、装置外へ排出される濃縮水の残部W32の流量に相当する。給水流量は、原水W1(濃縮水W3の一部W31が混合される前の原水W1)の流量に相当する。透過水流量は、処理水(透過水)W2の流量に相当する。すなわち、本実施形態においては、回収率は、RO膜モジュール22に供給される原水W1(濃縮水W3の一部W31が混合される前の原水W1)の流量Q1に対する処理水(透過水)W2の流量Q2の割合(すなわち、Q2/Q1×100)(%)である。
【0044】
逆浸透膜分離装置2は、一般的に、このような回収率を設定して運転される。濃縮水W3のシリカ濃度がシリカの溶解度を超えると膜面にシリカが析出しやすいため、回収率は、シリカが析出しない範囲で設定される。
【0045】
濃縮水排水バルブ10は、濃縮水排出ラインL32を開閉することにより逆浸透膜分離装置2の回収率を調整する。詳細には、透過水流量が一定の条件の下、濃縮水排水バルブ10は、濃縮水W3が排出される流量を調整することにより、逆浸透膜分離装置2の回収率を調整する。濃縮水排水バルブ10の開度が大きい場合には、濃縮水W3が排出される流量が多いため、回収率は低くなる。濃縮水排水バルブ10の開度が小さい場合には、濃縮水W3が排出される流量が少ないため、回収率は高くなる。
【0046】
濃縮水排水バルブ10は、例えば、比例制御弁からなり、遠隔制御部51の制御により、排水流量を無段階に調整するように構成されている。なお、濃縮水排水バルブ10は、濃縮水排出ラインL32に並列配置した複数個の電磁弁等の開閉弁により排水流量を段階的に調整するように構成することもできる。
【0047】
RO制御部23は、
図3に示すように、流量制御部231と、ランゲリア指数算出部232と、リズナー指数算出部233と、を有する。
流量制御部231は、加圧ポンプ21の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)をインバータ(不図示)に出力する。流量制御部231では、流量センサからの流量検知信号をフィードバック値として、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより、加圧ポンプ21の駆動周波数を演算する。
【0048】
ランゲリア指数算出部232は、水質検出装置9a〜9cにより検出された水質の検出値に基づいて、原水W1のランゲリア指数(Langeliar Saturation Index;以下「LSI」ともいう)を算出する。なお、ランゲリア指数は、飽和指数とも呼ばれる。ランゲリア指数は、水の腐食傾向およびスケール生成傾向を評価する指標として用いられる。ランゲリア指数(LSI)は、下記(1)式により求められる。
LSI=pH−pHs・・・(1)
ここで、pHは、水の実際のpH値である。また、pHsは、水中に炭酸カルシウムが溶解も析出もしない平衡状態にあるときの理論上のpH値である。
【0049】
pHsは、下記(2)式により求められる。
pHs=9.3+A値+B値−C値−D値・・・(2)
ここで、A値は、蒸発残留物濃度により定まる補正値である。蒸発残留物濃度は、電気伝導率と相関があるため、所定の換算式を用いて電気伝導率から蒸発残留物濃度を求めることができる。B値は、水温により定まる補正値である。C値は、カルシウム硬度により定まる補正値である。D値は、総アルカリ度により定まる補正値である。A〜D値は、前述の水質検出装置9の検出値から関係式を用いて、或いは数値テーブルを参照して求めることができる。
【0050】
ランゲリア指数は、正(プラス)の値で絶対値が大きいほど炭酸カルシウムの析出が促進される。そのため、ランゲリア指数が正(プラス)の値で数値が大きいほど、配管等の金属材料の腐食が抑制される。一方、ランゲリア指数は、負(マイナス)の値で絶対値が小さいほど炭酸カルシウムの析出が抑制される。そのため、ランゲリア指数が負(マイナス)の値で数値が小さいほど、配管等の金属材料の腐食が促進される。また、ランゲリア指数が0(ゼロ)の場合には、炭酸カルシウムが析出も溶解もしない平衡状態にある。
【0051】
つまり、ランゲリア指数が0(ゼロ)以下の場合には、水系が腐食性の傾向にあることを示す。ランゲリア指数を0(ゼロ)以下とすることにより、炭酸カルシウムの析出を抑制することができる。また、ランゲリア指数が0(ゼロ)以上の場合には、水系がスケール性の傾向にあることを示す。ランゲリア指数を0(ゼロ)以上とすることにより、金属材料の腐食を抑制することができる。このように、ランゲリア指数は、炭酸カルシウムの析出についての指標として用いることができる。
【0052】
リズナー指数算出部233は、水質検出装置9a〜9cにより検出された水質の検出値に基づいて、原水W1のリズナー指数(Ryzner Index;以下「RI」ともいう)を算出する。なお、リズナー指数は、安定度指数とも呼ばれる。リズナー指数は、水の腐食傾向およびスケール生成傾向を評価する指標として用いられる。リズナー指数(RI)は、下記(3)式により求められる。
RI=2pHs−pH・・・(3)
【0053】
ここで、pHは、上述のランゲリア指数の(1)式の説明と同様に、水の実際のpH値である。また、pHsは、水中に炭酸カルシウムが溶解も析出もしない平衡状態にあるときの理論上のpH値である。pHsは、上述のランゲリア指数を求めるのと同様に、上記(2)式により求められる。
【0054】
リズナー指数が7以上の場合には、水系が腐食性の傾向にあることを示す。リズナー指数を7以上とすることにより、炭酸カルシウムの析出を抑制することができる。また、リズナー指数が6以下の場合には、水系がスケール性の傾向にあることを示す。リズナー指数を6以下とすることにより、金属材料の腐食を抑制することができる。
【0055】
RO記憶部24は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに組み込まれたRO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントに関する仕様情報に対応する回収率のデータテーブルを、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cごとに記憶する。例えば、データテーブルには、RO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントのスペック(後述)に応じて、シリカ濃度の範囲ごとの回収率や、ランゲリア指数の範囲ごとの回収率や、リズナー指数の範囲ごとの回収率がテーブル化して記憶されている。また、これらの回収率は、データテーブルにおいて、原水W1の温度ごとにテーブル化されている。
【0056】
また、RO記憶部24は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに組み込まれたRO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントに関する仕様情報に対応するスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量のデータテーブルを、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cごとに記憶する。例えば、データテーブルには、RO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントのスペック(後述)に応じて、シリカ濃度の範囲ごとのスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量や、ランゲリア指数の範囲ごとのスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量や、リズナー指数の範囲ごとのスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量がテーブル化して記憶されている。また、これらのスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量は、データテーブルにおいて、原水W1の温度ごとにテーブル化されている。
【0057】
なお、本実施形態においては、RO記憶部24は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに備えられているが、これに制限されず、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれの不図示のマイコンのメモリや、遠隔制御装置5の不図示のデータベースなどにより構成されていてもよい。
【0058】
遠隔制御装置5は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを遠隔制御する。遠隔制御装置5は、遠隔制御部51と、分析データ格納部52と、を有する。
【0059】
分析データ格納部52は、取得された複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに導入される原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上の分析データを格納する。例えば、取得された分析データとしては、逆浸透膜分離装置2に導入される原水W1をサンプル水として採水し、その採水したサンプル水を分析センター(不図示)で分析した分析データや、逆浸透膜分離装置2に導入される原水W1に含まれるシリカのシリカ濃度をシリカ濃度センサ8により現場測定した分析データや、逆浸透膜分離装置2に導入される原水W1の水質を水質検出装置9により現場測定してランゲリア指数又はリズナー指数を算出して分析した分析データなどがある。
【0060】
分析センターは、サンプル水の手動分析を採水現場以外で行うものであり、送付されたサンプル水を所要の分析機器を使用して分析する施設である。サンプル水の採水と送付は、例えば、各ユーザX〜Zと逆浸透膜分離装置2のメンテナンス契約を締結している管理会社のサービスエンジニアが定期的に客先を訪問して行う。分析センターで得られた分析データは、分析センターに備え付けの専用端末を介して遠隔制御装置5に送信され、分析データ格納部52に記録される。
一方、シリカ濃度センサ8及び水質検出装置9は、サンプル水の自動分析を採水現場で行うものであり、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの据付現場、具体的には原水ラインL1a〜L1cに設けられる機器である。
【0061】
シリカ濃度センサ8で測定された分析データは、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに入力され、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cからネットワーク3を介して遠隔制御装置5に送信され、分析データ格納部52に記録される。水質検出装置9で検出された水質の検出値は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに入力され、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cにおいてランゲリア指数又はリズナー指数が算出され、算出されたランゲリア指数又はリズナー指数が複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cからネットワーク3を介して遠隔制御装置5に送信され、分析データ格納部52に記録される。
【0062】
遠隔制御部51は、遠隔地から通信により複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを遠隔制御する。
遠隔制御部51は、管理対象となる複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cのRO膜モジュール22a〜22cの膜に関する仕様情報と、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、回収率(RO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1の流量に対する処理水W2の流量の比率)、RO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1に添加するスケール分散剤の添加量、及びRO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1に添加するpH調整剤の添加量のいずれか1つを遠隔制御により設定変更する。
【0063】
RO膜モジュール22a〜22cの膜に関する仕様情報とは、膜面での溶存塩類の過濃縮の起こりやすさを示すスペック(例えば、水透過係数の初期値等)や、膜面での有機物ファウリングの起こりやすさを示すスペック(例えば、スキン層の改質の有無等)などである。以下は、その例示を列挙する。
【0064】
<例示1>
水透過係数の初期値が相対的に高い膜(高フラックス膜)は、低圧膜や超低圧膜とも呼ばれ、低い操作圧力でより多くの透過水量が得られる。そのため、高フラックス膜で透過水を製造中には、膜の一次側において、水の取られすぎによる濃度分極によって溶存塩類の過濃縮が進行しやすい。よって、RO膜モジュール22a〜22cに高フラックス膜が組み込まれている場合には、低フラックス膜が組み込まれている場合に比べて、回収率を相対的に低く設定したり、スケール分散剤やpH調整剤の添加量を相対的に多く設定したりすることが好ましい。
【0065】
高フラックス膜としては、膜のスペックが、例えば、濃度500mg/L、pH7.0、温度25℃の塩化ナトリウム水溶液を、操作圧力0.7MPa、回収率15%で供給したときの水透過係数が、1.5×10
−11m
3・m
−2・s
−1・Pa
−1以上、且つ塩除去率が99%以上となるものである。
【0066】
<例示2>
膜表面の電荷特性の調整等によりスキン層を改質し、有機物やコロイド粒子の付着が抑制されるようにした膜(低ファウリング膜)は、表面改質のない通常膜に比べると、炭酸カルシウムやシリカの結晶核の付着が起こりにくい傾向にある。そのため、低ファウリング膜で透過水を製造中には、膜の一次側において、スケールの成長が抑制されやすい。よって、RO膜モジュール22a〜22cに低ファウリング膜が組み込まれている場合には、通常膜が組み込まれている場合に比べて、回収率を相対的に高く設定したり、スケール分散剤やpH調整剤の添加量を相対的に少なく設定したりすることが好ましい。
【0067】
低ファウリング膜としては、膜のスペックが、例えば、ファウリング状態において、塩化ナトリウム濃度1500mg/L、pH7.0、温度25℃の塩化ナトリウム水溶液を、操作圧力1MPa、回収率15%で供給したときの水透過係数が、8.2×10
−12m
3・m
−2・s
−1・Pa
−1以上、且つ塩除去率が99%以上となるものである。
【0068】
ファウリング状態とは、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの水溶液に非イオン性界面活性剤を添加したものを被処理水として用い、透過水量一定で運転を行った場合の膜差圧が、運転開始時点の膜差圧に対して65%から70%増加した状態をいう。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルが用いられる。また、非イオン性界面活性剤の濃度は、被処理水のファウリング・インデックス(FI)値が0.3から0.5となる範囲で調整される。
【0069】
ここで、操作圧力とは、JIS K3802−1995「膜用語」で定義される平均操作圧力である。操作圧力は、RO膜モジュール22の一次側の入口圧力と一次側の出口圧力との平均値を指す。
【0070】
回収率とは、前述の通り、RO膜モジュール22へ供給される原水W1の流量Q1に対する透過水W2の流量Q2の割合(すなわち、Q2/Q1×100)をいう。
【0071】
水透過係数は、透過水量[m
3/s]を膜面積[m
2]及び有効圧力[Pa]で除した値であり、逆浸透膜の水の透過性能を示す指標である。すなわち、水透過係数は、単位有効圧力を作用させたときに単位時間に膜の単位面積を透過する水の量を意味する。有効圧力は、JIS K3802−1995「膜用語」で定義され、操作圧力(平均操作圧力)から浸透圧差及び二次側圧力を差し引いた圧力である。
【0072】
塩除去率は、膜を透過する前後の特定の塩類の濃度(ここでは塩化ナトリウム濃度)から計算される値であり、逆浸透膜の溶質の阻止性能を示す指標である。塩除去率は、RO膜モジュール22への入口濃度C1及び透過水の濃度C2から、(1−C2/C1)×100により求められる。
【0073】
遠隔制御部51は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、RO膜モジュール22a〜22cの回収率の設定を変更する場合において、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つの経時変動幅が所定の範囲外の場合に、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、予め設定された回収率が、RO記憶部24のデータテーブルから選択された新たな回収率に更新されるように遠隔制御により設定変更する。
【0074】
ここで、経時変動幅が所定の範囲外とは、例えば、毎日午前0時に最新(又は直近N個)の原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る水質データを抽出し、前回の回収率の設定変更時の水質データに対して±10%超過の変動がある場合が該当する。この場合には、遠隔制御部51は、回収率を見直す設定変更を実行する。具体的には、経時変動幅が所定の範囲外であるか否かは、例えば、以下のように、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報を判断することにより求められる。
【0075】
分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報とは、最新データだけに限定されず、ある程度日付の古いデータ(例えば、直近N個分のデータ)も含む概念である。分析データの近時情報は、例えばサンプル水の分析センター(不図示)への送付に日数を要する場合もあることから、後述する分析データ格納部52に格納された順序ではなく、サンプル水の採水日の順序に基づいて判断される。なお、サンプル水の分析データと、原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上の検出値の分析データとが混在して分析データ格納部52に格納されている場合においても、原水W1の検出日及びサンプル水の採水日の順序に基づいて判断される。
【0076】
例えば、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度について、サンプル水の採水日と格納日との順序が異なる場合において、直近の2個分の分析データを近時情報として利用する場合について説明する。ここで、前回の回収率の設定時には、原水のシリカ濃度が、30gSiO
2/m
3であったとする。
【0077】
下記の2月8日時点において格納されている分析データのように、例えば2月8日の時点では、分析データ格納部52に格納された分析データの格納日の順序は、日付が新しい順に、分析データN1、分析データN3である。採水日の順序は、日付が新しい順に、分析データN3、分析データN1である。
【0078】
◎2月8日時点において格納されている分析データ
N1:採水日(1月5日)、シリカ濃度30gSiO
2/m
3、格納日(1月10日)
N3:採水日(2月2日)、シリカ濃度32gSiO
2/m
3、格納日(2月7日)
【0079】
2月10日には、下記の2月10日時点において格納されている分析データのように、分析データ格納部52には、新たに2月10日に分析データN2が格納された。これにより、分析データ格納部52に格納された分析データの格納日の順序は、日付が新しい順に、分析データN2、分析データN3、分析データN1である。採水日の順序は、格納日の順序とは異なっており、日付が新しい順に、分析データN3、分析データN2、分析データN1である。
【0080】
◎2月10日時点において格納されている分析データ
N1:採水日(1月5日)、シリカ濃度30gSiO
2/m
3、格納日(1月10日)
N2:採水日(1月20日)、シリカ濃度34gSiO
2/m
3、格納日(2月10日)
N3:採水日(2月2日)、シリカ濃度32gSiO
2/m
3、格納日(2月7日)
【0081】
ここで、例えば2月8日の時点では、直近の2個の分析データN1(経時変動幅0%:〔(30−30)/30〕×100=0%)、分析データN3(経時変動幅7%:〔(32−30)/30〕×100=7%)が近時情報となる。2月8日の時点では、分析データN1(経時変動幅0%)及びN3(経時変動幅7%)の経時変動幅は、前回の回収率の設定時のシリカ濃度30gSiO
2/m
3に対して、±10%の範囲内である。
一方、例えば2月10日の時点では、直近の2個の分析データN2(経時変動幅13%:〔(34−30)/30〕×100=13%)、分析データN3(経時変動幅7%:〔(32−30)/30〕×100=7%)が近時情報となる。2月10日の時点では、分析データN2(経時変動幅13%)の経時変動幅は、前回の回収率の設定時のシリカ濃度30gSiO
2/m
3に対して、±10%の範囲外である。
このように、近時情報を判断するタイミングによって、サンプル水の採水日と格納日との順序が異なる場合があるが、サンプル水の採水日の順序に基づいて、サンプル水の分析データの近時情報とする。
【0082】
また、分析データの近時情報は、例えば、分析データ格納部52に格納されたランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上について、サンプル水の採水日と格納日との順序が異なる場合においても、前述の原水W1のシリカ濃度と同様に、最新データだけに限定されず、ある程度日付の古いデータ(例えば、直近N個分のデータ)も含む。
分析データ格納部52に格納された原水W1のランゲリア指数及びリズナー指数における分析データの近時情報の説明は、前述の原水W1のシリカ濃度の説明とランゲリア指数及びリズナー指数の具体的な数値が異なるのみでその他の内容は同様であるため、前述の原水W1のシリカ濃度の説明を援用して、その説明を省略する。
【0083】
また、遠隔制御部51は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、RO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1に添加するスケール分散剤の添加量の設定を変更する場合において、原水W1のシリカ濃度が上昇した場合、又は、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つがスケールを生成するスケール生成傾向の範囲内(スケール生成傾向範囲内)にある場合に、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、スケール分散剤添加装置6a〜6cによりスケール分散剤を添加するように遠隔制御により設定変更する。
【0084】
ここで、「原水W1のシリカ濃度が上昇した場合」とは、前述した分析データの近時情報の説明のように、例えば、原水W1のシリカ濃度の直近2個分の分析データ(分析データの近時情報)の平均値が、前回のスケール分散剤を添加した時の原水W1のシリカ濃度よりも所定割合上昇した場合が該当する。
【0085】
また、「ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つがスケール生成傾向範囲内にある場合」とは、前述した分析データの近時情報の説明のように、例えば、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つの直近2個分の分析データ(分析データの近時情報)の平均値が、スケール生成傾向範囲内にある場合が該当する。
【0086】
分析データの近時情報は、前述の説明と同様に、近時情報を判断するタイミングによって、サンプル水の採水日と格納日との順序が異なる場合があるが、サンプル水の採水日の順序に基づいて、サンプル水の分析データの近時情報とする。
【0087】
ランゲリア指数におけるスケール生成傾向範囲内とは、ランゲリア指数が0(ゼロ)以上の場合には、水系がスケール性の傾向にあることから、ランゲリア指数が0(ゼロ)以上の範囲をいう。また、リズナー指数におけるスケール生成傾向範囲内とは、リズナー指数が6以下の場合には、水系がスケール性の傾向にあることから、リズナー指数が6以下の範囲をいう。
【0088】
また、スケール分散剤添加装置6a〜6cによりスケール分散剤を添加することには、スケール分散剤の添加を開始すること、スケール分散剤の添加量を増加すること、が含まれる。
【0089】
遠隔制御部51は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、RO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1に添加するpH調整剤の添加量の設定を変更する場合において、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、原水W1のシリカ濃度が上昇した場合にpH調整剤添加装置7a〜7cによりアルカリ性薬剤を添加するように遠隔制御により設定変更し、又は、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つがスケール生成傾向範囲内にある場合にpH調整剤添加装置7a〜7cにより酸性薬剤を添加するように遠隔制御により設定変更する。
【0090】
ここで、pH調整剤の添加量の設定を変更する場合において、「原水W1のシリカ濃度が上昇した場合」及び「ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つがスケール生成傾向範囲内にある場合」については、前述のスケール分散剤を添加の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0091】
また、pH調整剤添加装置7a〜7cによりアルカリ性薬剤又は酸性薬剤を添加することには、アルカリ性薬剤又は酸性薬剤の添加を開始すること、アルカリ性薬剤又は酸性薬剤の添加量を増加すること、が含まれる。
【0092】
以上のように構成される逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1は、ユーザX〜Zごとに、次の第1遠隔制御例〜第3遠隔制御例の処理を、選択的に、実行可能である。第1遠隔制御例〜第3遠隔制御例の処理について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0093】
第1遠隔制御例は、逆浸透膜分離装置2a〜2cについて、回収率を遠隔制御により設定変更する例である。
図4〜
図6において、第1遠隔制御例の第1動作例〜第3動作例について説明する。
第2遠隔制御例は、逆浸透膜分離装置2a〜2cについて、スケール分散剤の添加量を遠隔制御により設定変更する例である。
図7〜
図9において、第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例について説明する。
第3遠隔制御例は、逆浸透膜分離装置2a〜2cについて、pH調整剤の添加量を遠隔制御により設定変更する例である。
図10〜
図12において、第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例について説明する。
なお、各フローチャートにおけるステップS番号の3桁の数字については、ステップS番号の百の位の数字を、動作例の番号の数字と対応した数字としている。例えば、ステップS番号において、第1動作例〜第9動作例では、百の位を「1」〜「9」としている。
【0094】
まず、回収率を遠隔制御により設定変更する第1遠隔制御例における第1動作例〜第3動作例について説明する。
逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第1遠隔制御例の第1動作例について説明する。
図4は、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第1動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図4に示すフローチャートによる制御においては、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、原水W1を透過水(処理水)W2及び濃縮水W3に分離する動作を実行している。
【0095】
図4に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS121において、逆浸透膜分離装置2aに導入される原水W1のシリカ濃度をシリカ濃度センサ8aにより検出し、水質検出装置9aにより検出された原水W1の水質の検出値からランゲリア指数を算出し、及び/又は、水質検出装置9aにより検出された原水W1の水質の検出値からリズナー指数を算出する。検出されたシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0096】
遠隔制御装置5におけるステップS111において、逆浸透膜分離装置2aのステップS121で検出された原水W1のシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0097】
逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS131において、逆浸透膜分離装置2bに導入される原水W1のシリカ濃度をシリカ濃度センサ8bにより検出し、水質検出装置9bにより検出された原水W1の水質の検出値からランゲリア指数を算出し、及び/又は、水質検出装置9bにより検出された原水W1の水質の検出値からリズナー指数を算出する。検出されたシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0098】
遠隔制御装置5におけるステップS112において、逆浸透膜分離装置2bのステップS131で検出された原水W1のシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0099】
逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS141において、逆浸透膜分離装置2cに導入される原水W1のシリカ濃度をシリカ濃度センサ8cにより検出し、水質検出装置9cにより検出された原水W1の水質の検出値からランゲリア指数を算出し、及び/又は、水質検出装置9cにより検出された原水W1の水質の検出値からリズナー指数を算出する。検出されたシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0100】
遠隔制御装置5におけるステップS113において、逆浸透膜分離装置2cのステップS141で検出された原水W1のシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0101】
遠隔制御装置5におけるステップS114において、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納されたシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅が所定の範囲外であるか否かを判定する。ここで、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納されたシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データにおいて、分析データ格納部52に格納された順序ではなく、逆浸透膜分離装置2a〜2cにおける原水W1の検出日の時系列の分析データによる近時情報に基づいて、シリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅を算出する。例えば、近時情報として、直近の2個の分析データが使用される。具体的には、直近の2個の分析データとして、逆浸透膜分離装置2cにおいてステップS141で検出されたサンプル水の分析データと、逆浸透膜分離装置2bにおいてステップS131で検出されたサンプル水の分析データと、について、シリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅を算出する。遠隔制御装置5により経時変動幅が所定の範囲外であると判定された場合(YES)には、処理は、ステップS115に移行する。一方、遠隔制御装置5により経時変動幅が所定の範囲外でないと判定された場合(NO)には、処理は終了する。
【0102】
遠隔制御装置5におけるステップS115において、遠隔制御装置5は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれで新たな回収率をRO記憶部24のデータテーブルから選択する。具体的には、RO記憶部24には、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに組み込まれたRO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントに関する仕様情報に対応する回収率のデータテーブルが、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cごとに記憶されている。データテーブルには、RO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントのスペックに応じて、シリカ濃度の範囲ごとの回収率や、ランゲリア指数の範囲ごとの回収率や、リズナー指数の範囲ごとの回収率がテーブル化して記憶されている。また、これらの回収率は、データテーブルにおいて、原水W1の温度ごとにテーブル化されている。これにより、遠隔制御装置5は、管理対象となる複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの膜に関する仕様情報と、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、回収率を選択することができる。
【0103】
遠隔制御装置5におけるステップS116において、遠隔制御装置5は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対して、予め設定された回収率がデータテーブルから選択された新たな回収率に更新されるように遠隔制御により設定変更を行う。ステップS116の処理の後に、遠隔制御装置5の処理は終了する(ステップS111へリターンする)。
【0104】
逆浸透膜分離装置2a,2b,2cにおけるステップS122,S132,S142において、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cの回収率は、予め設定された回収率が新たな回収率に更新されるように、遠隔制御装置5の遠隔制御により設定変更される。ステップS122,S132,S142の処理の後に、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cの処理は終了する(ステップS121,S131,S141へリターンする)。
【0105】
次に、逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第1遠隔制御例の第2動作例について説明する。
図5は、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第2動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図5に示す第2動作例は、分析データの取得方法について、
図4に示す第1動作例において原水W1に含まれるシリカ濃度をシリカ濃度センサ8a〜8cにより検出し、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数を水質検出装置9により原水W1の水質を検出してから算出して得るのに対して、採水された原水W1のサンプル水から分析センター(不図示)においてシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データとして分析されて得る点において主に異なる。第2動作例は、その他の点において、第1動作例と同様である。
【0106】
図5に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS221において、逆浸透膜分離装置2aに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点におけるシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データとして分析される。
【0107】
遠隔制御装置5におけるステップS211において、逆浸透膜分離装置2aのステップS221で採水された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0108】
逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS231において、逆浸透膜分離装置2bに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点におけるシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データとして分析される。
【0109】
遠隔制御装置5におけるステップS212において、逆浸透膜分離装置2bのステップS231で採水された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0110】
逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS241において、逆浸透膜分離装置2cに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点におけるシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データとして分析される。
【0111】
遠隔制御装置5におけるステップS213において、逆浸透膜分離装置2cのステップS241で採水された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0112】
遠隔制御装置5におけるステップS214において、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納されたシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅が所定の範囲外であるか否かを判定する。ここで、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納されたシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データにおいて、分析データ格納部52に格納された順序ではなく、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cにおける原水W1の採水日の時系列の分析データによる近時情報に基づいて、シリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅を算出する。例えば、近時情報として、直近の2個の分析データが使用される。具体的には、直近の2個の分析データとして、逆浸透膜分離装置2cにおいてステップS241で採水されたサンプル水の分析データと、逆浸透膜分離装置2bにおいてステップS231で採水されたサンプル水の分析データと、について、シリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅を算出する。遠隔制御装置5により経時変動幅が所定の範囲外であると判定された場合(YES)には、処理は、ステップS215に移行する。一方、遠隔制御装置5により経時変動幅が所定の範囲外でないと判定された場合(NO)には、処理は終了する。
【0113】
遠隔制御装置5におけるステップS215及びS216、逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS222、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS232、逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS242の動作は、第1動作例の遠隔制御装置5におけるステップS115及びS116、逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS122、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS132、逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS142の動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
次に、逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第1遠隔制御例の第3動作例について説明する。
図6は、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第3動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図6に示すフローチャートによる制御においては、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、原水W1を透過水(処理水)W2及び濃縮水W3に分離する動作を実行している。
図6における第3動作例は、
図4及び
図5における第1動作例及び第2動作例と比べて、分析データの取得方法や取得時期や取得回数が異なる。
【0115】
図6に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS321において、逆浸透膜分離装置2aに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点におけるシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データとして分析される。
【0116】
遠隔制御装置5におけるステップS312において、逆浸透膜分離装置2aのステップS321で採水された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、例えばサンプル水の採水日から数日遅れて、分析データ格納部52に格納される。
【0117】
逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS322において、逆浸透膜分離装置2aに導入される原水W1のシリカ濃度をシリカ濃度センサ8aにより検出し、水質検出装置9aにより検出された原水W1の水質の検出値からランゲリア指数を算出し、及び/又は、水質検出装置9aにより検出された原水W1の水質の検出値からリズナー指数を算出する。検出されたシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0118】
遠隔制御装置5におけるステップS311において、例えばステップS312よりも早い時期に、逆浸透膜分離装置2aのステップS322で検出された原水W1のシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0119】
逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS331において、逆浸透膜分離装置2bに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点におけるシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データとして分析される。
【0120】
遠隔制御装置5におけるステップS314において、逆浸透膜分離装置2bのステップS331で採水された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、例えばサンプル水の採水日から数日遅れて、分析データ格納部52に格納される。
【0121】
逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS332において、逆浸透膜分離装置2bに導入される原水W1のシリカ濃度をシリカ濃度センサ8bにより検出し、水質検出装置9bにより検出された原水W1の水質の検出値からランゲリア指数を算出し、及び/又は、水質検出装置9bにより検出された原水W1の水質の検出値からリズナー指数を算出する。検出されたシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数は、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0122】
遠隔制御装置5におけるステップS313において、例えばステップS314よりも早い時期に、逆浸透膜分離装置2bのステップS332で検出された原水W1のシリカ濃度、算出されたランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0123】
遠隔制御装置5におけるステップS315において、
図4に示す動作例1におけるステップS114と同様に、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納されたシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅が所定の範囲外であるか否かを判定する。ここで、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納されたシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データにおいて、分析データ格納部52に格納された順序ではなく、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cにおける原水W1の採水日又は検出日の時系列の分析データによる近時情報に基づいて、シリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅を算出する。例えば、近時情報として、直近の2個の分析データが使用される。具体的には、直近の2個の分析データとして、逆浸透膜分離装置2bにおいてステップS332で検出されたシリカ濃度の検出値又はランゲリア指数及び/又はリズナー指数の算出値の分析データと、逆浸透膜分離装置2bにおいてステップS331で取得されたサンプル水の分析データと、について、シリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の経時変動幅を算出する。遠隔制御装置5により経時変動幅が所定の範囲外であると判定された場合(YES)には、処理は、ステップS316に移行する。一方、遠隔制御装置5により経時変動幅が所定の範囲外でないと判定された場合(NO)には、処理は終了する。
【0124】
遠隔制御装置5におけるステップS316において、
図4に示す動作例1におけるステップS115と同様に、遠隔制御装置5は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれで新たな回収率をRO記憶部24のデータテーブルから選択する。具体的には、RO記憶部24には、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに組み込まれたRO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントに関する仕様情報に対応する回収率のデータテーブルが、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cごとに記憶されている。これにより、遠隔制御装置5は、管理対象となる複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの膜に関する仕様情報と、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、回収率を選択することができる。
【0125】
遠隔制御装置5におけるステップS317において、
図4に示す動作例1におけるステップS116と同様に、遠隔制御装置5は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対して、予め設定された回収率がデータテーブルから選択された新たな回収率に更新されるように遠隔制御により設定変更を行う。ステップS317の処理の後に、遠隔制御装置5の処理は終了する(ステップS311へリターンする)。
【0126】
逆浸透膜分離装置2a,2b,2cにおけるステップS323,S333,S341において、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cの回収率は、予め設定された回収率が新たな回収率に更新されるように、遠隔制御装置5の遠隔制御により設定変更される。ステップS323,S333,S341の処理の後に、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cの処理は終了する(ステップS321,S331,S341へリターンする)。
【0127】
ここで、逆浸透膜分離装置2cにおいては、ステップS341よりも前の時点で、原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データが個別には取得されていない。しかし、逆浸透膜分離装置2cは、予め設定された回収率が新たな回収率に更新されるように、遠隔制御装置5の遠隔制御により設定変更される。ここでは、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cのいずれにおいても、同一水源から原水W1が導入されている。そのため、個別の分析データが取得されていない逆浸透膜分離装置2cにおいても、遠隔制御により新たな回収率に更新されるように設定を変更する。これにより、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを、一群の逆浸透膜分離装置として、総合的に管理することができる。
【0128】
次に、スケール分散剤の添加量を遠隔制御により設定変更する第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例、及び、pH調整剤の添加量を遠隔制御により設定変更する第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例について説明する。
第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例(
図7〜
図9)及び第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例(
図10〜
図12)は、前述の第1遠隔制御例における第1動作例〜第3動作例(
図4〜6)が回数率を遠隔制御により設定変更するのに対して、スケール分散剤の添加量又はpH調整剤の添加量を遠隔制御により設定変更する点について主に異なる。分析データ格納部52に格納するタイミングや、サンプル水を取得するタイミングについては、第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例(
図7〜
図9)及び第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例(
図10〜
図12)は、それぞれ、第1遠隔制御例の第1動作例〜第3動作例(
図4〜
図6)に対応しており、第1遠隔制御例の第1動作例〜第3動作例(
図4〜
図6)のタイミングと同様である。
【0129】
そのため、第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例、及び、第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例については、第1遠隔制御例の第1動作例〜第3動作例におけるステップS114、S214及びS315における「経時変動幅>所定範囲」を、第4動作例〜第6動作例のステップS414、S514、S615、ステップS714、S814、S915において「シリカ濃度が上昇、又は、スケール生成傾向範囲内」と置き換え、第1動作例〜第3動作例のステップS115、S215、S316における「新たな回収率を選択」を、第4動作例〜第6動作例のステップS415、S515、S616において「スケール分散剤の添加量を選択」又は第7動作例〜第9動作例のステップS715、S815、S916において「pH調整剤の添加量を選択」と置き換えた上で、主に異なる点について説明する。
【0130】
逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第2遠隔制御例の第4動作例について説明する。
図7は、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第4動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図7に示すフローチャートによる制御においては、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、原水W1を透過水(処理水)W2及び濃縮水W3に分離する動作を実行している。
【0131】
図7に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS421、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS431、逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS441、遠隔制御装置5におけるステップS411〜S413の処理は、
図4に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS121、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS131、逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS141、遠隔制御装置5におけるステップS111〜S113にそれぞれ対応し、それぞれの処理と同様である。そのため、逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS421、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS431、逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS441、遠隔制御装置5におけるステップS411〜S413の説明を省略する。
【0132】
遠隔制御装置5におけるステップS414において、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納されたシリカ濃度が上昇しているか否か、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数がスケール生成傾向範囲内であるか否かを判定する。ここで、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納されたシリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の分析データにおいて、分析データ格納部52に格納された順序ではなく、逆浸透膜分離装置2a〜2cにおける原水W1の検出日の時系列の分析データによる近時情報に基づいて、シリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数を利用する。例えば、近時情報として、直近の2個の分析データが使用される。
【0133】
具体的には、直近の2個の分析データとして、逆浸透膜分離装置2cにおいてステップS141で検出されたサンプル水の分析データと、逆浸透膜分離装置2bにおいてステップS131で検出されたサンプル水の分析データと、について、シリカ濃度、ランゲリア指数及び/又はリズナー指数の平均値を算出する。遠隔制御装置5により原水W1のシリカ濃度の平均値が前回設定時のシリカ濃度値よりも上昇していると判定された場合(YES)、又は、遠隔制御装置5により原水W1のランゲリア指数及び/又はリズナー指数の平均値がスケール生成傾向範囲内であると判定された場合(YES)には、処理は、ステップS115に移行する。一方、遠隔制御装置5により原水W1のシリカ濃度の平均値が前回設定時のシリカ濃度値よりも上昇していないと判定された場合(NO)、又は、遠隔制御装置5により原水W1のランゲリア指数及び/又はリズナー指数の平均値がスケール生成傾向範囲内でないと判定された場合(NO)には、処理は終了する。
【0134】
遠隔制御装置5におけるステップS415において、遠隔制御装置5は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれでスケール分散剤の添加量をRO記憶部24のデータテーブルから選択する。具体的には、RO記憶部24には、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに組み込まれたRO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントに関する仕様情報に対応するスケール分散剤の添加量のデータテーブルが、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cごとに記憶されている。例えば、データテーブルには、RO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントのスペックに応じて、シリカ濃度の範囲ごとのスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量や、ランゲリア指数の範囲ごとのスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量や、リズナー指数の範囲ごとのスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量がテーブル化して記憶されている。また、これらのスケール分散剤の添加量やpH調整剤の添加量は、データテーブルにおいて、原水W1の温度ごとにテーブル化されている。これにより、遠隔制御装置5は、管理対象となる複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの膜に関する仕様情報と、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、スケール分散剤の添加量を選択することができる。
【0135】
遠隔制御装置5におけるステップS416において、遠隔制御装置5は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対して、予め設定されたスケール分散剤の添加量がデータテーブルから選択された新たなスケール分散剤の添加量に更新されるように遠隔制御により設定変更を行う。ステップS416の処理の後に、遠隔制御装置5の処理は終了する(ステップS411へリターンする)。
【0136】
逆浸透膜分離装置2a,2b,2cにおけるステップS422,S432,S442において、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cのスケール分散剤の添加量は、予め設定されたスケール分散剤の添加量が新たなスケール分散剤の添加量に更新されるように、遠隔制御装置5の遠隔制御により設定変更される。ステップS422,S432,S442の処理の後に、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cの処理は終了する(ステップS421,S431,S441へリターンする)。
【0137】
逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第2遠隔制御例の第5動作例について説明する。
図8は、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第5動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図8に示すフローチャートによる制御においては、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、原水W1を透過水(処理水)W2及び濃縮水W3に分離する動作を実行している。
【0138】
図8に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS521、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS531、逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS541、遠隔制御装置5におけるステップS511〜S513の処理は、
図4に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS121、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS131、逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS141、遠隔制御装置5におけるステップS111〜S113にそれぞれ対応し、それぞれの処理と同様である。そのため、逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS521、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS531、逆浸透膜分離装置2cにおけるステップS541、遠隔制御装置5におけるステップS511〜S513の説明を省略する。
【0139】
遠隔制御装置5におけるステップS514〜S516の処理は、
図7に示す遠隔制御装置5におけるステップS414〜S416の処理と同様であるため、遠隔制御装置5におけるステップS514〜S516の説明を省略する。
【0140】
逆浸透膜分離装置2a,2b,2cにおけるステップS522,S532,S542において、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cのスケール分散剤の添加量は、予め設定されたスケール分散剤の添加量が新たなスケール分散剤の添加量に更新されるように、遠隔制御装置5の遠隔制御により設定変更される。ステップS522,S532,S542の処理の後に、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cの処理は終了する(ステップS521,S531,S541へリターンする)。
【0141】
逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第2遠隔制御例の第6動作例について説明する。
図9は、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第6動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図9に示すフローチャートによる制御においては、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、原水W1を透過水(処理水)W2及び濃縮水W3に分離する動作を実行している。
【0142】
図9に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS621及びS622、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS631及びS632、遠隔制御装置5におけるステップS611〜S614の処理は、
図6に示す逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS321及びS322、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS331及びS332、遠隔制御装置5におけるステップS311〜S314にそれぞれ対応し、それぞれの処理と同様である。そのため、逆浸透膜分離装置2aにおけるステップS621及びS622、逆浸透膜分離装置2bにおけるステップS631及びS632、遠隔制御装置5におけるステップS611〜S614の説明を省略する。
【0143】
遠隔制御装置5におけるステップS615〜S617の処理は、
図7に示す遠隔制御装置5におけるステップS414〜S416の処理と同様であるため、遠隔制御装置5におけるステップS615〜S617の説明を省略する。
【0144】
逆浸透膜分離装置2a,2b,2cにおけるステップS623,S633,S641において、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cのスケール分散剤の添加量は、予め設定されたスケール分散剤の添加量が新たなスケール分散剤の添加量に更新されるように、遠隔制御装置5の遠隔制御により設定変更される。ステップS623,S633,S641の処理の後に、逆浸透膜分離装置2a,2b,2cの処理は終了する(ステップS621,S631,S641へリターンする)。
【0145】
次に、逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例について説明する。
図10〜
図12は、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第7動作例〜第9動作例の処理手順を示すフローチャートである。
逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1の第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例は、
図10〜
図12に示すように、ステップ番号の百の位の数字について、
図7〜
図9に示す第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例における「4」、「5」、「6」を、「7」、「8」、「9」に置き換えると共に、
図7〜
図9に示す第4動作例〜第6動作例のステップS415、S515、S616における「スケール分散剤の添加量を選択」を、
図10〜
図12に示す第7動作例〜第9動作例のステップS715、S815、S916において「pH調整剤の添加量を選択」に置き換えたものである。また、
図10〜
図12に示す第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例のステップS715、S815、S916の処理の説明が、第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例のステップS415、S515、S616の処理の説明と異なる点以外は、
図7〜
図9に示す第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例の説明における「スケール分散剤」を、「pH調整剤」と置き換えたものと同様である。
そのため、
図10〜
図12に示す第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例の説明においては、ステップS715、S815、S916の処理の説明を主体に行い、その他の処理については、
図7〜
図9に示す第2遠隔制御例の第4動作例〜第6動作例の説明を援用して、その説明を省略する。
【0146】
図10〜
図12に示す第3遠隔制御例の第7動作例〜第9動作例におけるステップS715、S815、S916において、遠隔制御装置5は、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれにおいてpH調整剤の添加量をRO記憶部24のデータテーブルから選択する。具体的には、RO記憶部24には、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cに組み込まれたRO膜モジュール22a〜22cの膜エレメントに関する仕様情報に対応するpH調整剤の添加量のデータテーブルが、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cごとに記憶されている。これにより、遠隔制御装置5は、管理対象となる複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの膜に関する仕様情報と、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、pH調整剤の添加量を選択することができる。本実施形態においては、原水W1のシリカ濃度が上昇したと判定された場合には、原水W1に添加するアルカリ性薬剤の添加量を選択する。原水W1のランゲリア指数又はリズナー指数がスケール生成傾向範囲内にある場合には、原水W1に添加する酸性薬剤の添加量を選択する。
【0147】
本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1によれば、例えば、以下に示す効果が奏される。
本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1は、同一水源4から原水W1をRO膜モジュール22a〜22cに導入することで原水W1から透過水を処理水W2として分離する複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cと、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを遠隔制御する遠隔制御部51と、取得された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上の分析データを格納する分析データ格納部52と、を備え、遠隔制御部51は、RO膜モジュール22a〜22cの膜に関する仕様情報と、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、回収率、原水W1に添加するスケール分散剤の添加量、及び原水W1に添加するpH調整剤の添加量のいずれか1つを遠隔制御により設定変更する。
【0148】
そのため、同一水源4の原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つ以上が変動した場合に、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの回収率、原水に添加するスケール分散剤の添加量、及び原水に添加するpH調整剤の添加量のいずれか1つの設定を、遠隔制御により変更して、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cを、一群の逆浸透膜分離装置として、総合的に管理することができる。この結果、複数の逆浸透膜分離装置の全てにおいて、最適な回収率となり、処理水W2の水量を十分に確保することができると共に、処理水W2の品質が維持される。また、複数の逆浸透膜分離装置の全てにおいて、最適な原水W1に添加するスケール分散剤の添加量、及び最適な原水W1に添加するpH調整剤の添加量となり、スケール分散剤及びpH調整剤の無駄な消費が抑制されると共に、処理水W2の品質が維持される。
【0149】
また、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1においては、遠隔制御部51は、RO膜モジュール22a〜22cの回収率の設定を変更する場合において、分析データ格納部52に格納された原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つの経時変動幅が所定の範囲外の場合に、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、予め設定された回収率がRO記憶部24のデータテーブルから選択された新たな回収率に更新されるように遠隔制御により設定変更する。
【0150】
そのため、RO膜モジュール22a〜22cの回収率の設定を変更する場合において、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cは、原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つに応じて、回収率が最適値になるように更新される。この結果、逆浸透膜分離装置の全てにおいて、最適な回収率で常に実行されることになり、処理水W2の水量を十分に確保することができると共に、処理水W2の品質が維持される。
【0151】
また、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1においては、遠隔制御部51は、RO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1に添加するスケール分散剤の添加量の設定を変更する場合において、原水W1のシリカ濃度が上昇した場合、又は、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つがスケール生成傾向範囲内にある場合に、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、スケール分散剤添加装置6a〜6cによりスケール分散剤を添加するように遠隔制御により設定変更する。
【0152】
そのため、RO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1に添加するスケール分散剤の添加量の設定を変更する場合において、原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つに応じて、原水W1の炭酸カルシウム成分やシリカ成分等を分散させてスケールの析出を抑制するような最適なスケール分散剤の添加量となり、スケール分散剤の無駄な消費が抑制されると共に、処理水W2の品質が維持される。
【0153】
また、本実施形態の逆浸透膜分離装置の遠隔管理制御システム1においては、遠隔制御部51は、RO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1に添加するpH調整剤の添加量の設定を変更する場合において、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cそれぞれに対し、原水W1のシリカ濃度が上昇した場合にpH調整剤添加装置7a〜7cによりアルカリ性薬剤を添加するように遠隔制御により設定変更し、又は、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つがスケール生成傾向範囲内にある場合にpH調整剤添加装置7a〜7cにより酸性薬剤を添加するように遠隔制御により設定変更する。
【0154】
そのため、RO膜モジュール22a〜22cへ導入される原水W1に添加するpH調整剤の添加量の設定を変更する場合において、原水W1のシリカ濃度、ランゲリア指数及びリズナー指数のいずれか1つに応じて、スケールの析出を抑制するような最適なpH調整剤の添加量となり、pH調整剤の無駄な消費が抑制されると共に、処理水W2の品質が維持される。
【0155】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前述の実施形態においては、複数の逆浸透膜分離装置として、3台の逆浸透膜分離装置について説明したが、これに制限されない。本発明は、同一水源からの原水が導入される逆浸透膜分離装置群の遠隔制御を対象にしているので、数十台から数百台規模の逆浸透膜分離装置群に対しても適用することが可能となっている。
【0156】
また、前述の実施形態においては、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの全てに対して同一項目(回収率、スケール分散剤の添加量、又はpH調整剤の添加量)の設定変更を行う場合について説明したが、これに制限されない。複数の逆浸透膜分離装置2a〜2c毎に異なる項目の設定変更を行ってもよい。例えば、逆浸透膜分離装置2aについては、回収率を遠隔制御により設定変更するようにし、逆浸透膜分離装置2bについては、スケール分散剤の添加量を遠隔制御により設定変更するようにし、逆浸透膜分離装置2cについては、pH調整剤の添加量を遠隔制御により設定変更するように、スケール防止の方法を装置毎に異ならせることができる。
【0157】
また、前述の実施形態においては、複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの全ての装置の回収率、スケール分散剤の添加量又はpH調整剤の添加量を遠隔制御により設定変更したが、これに制限されない。複数の逆浸透膜分離装置2a〜2cの一部の装置の回収率、スケール分散剤の添加量又はpH調整剤の添加量を遠隔制御により設定変更してもよい。
【0158】
また、前述の実施形態においては、近時情報として、直近の2個の分析データを使用する例について説明したが、これに制限されず、例えば、直近の3個以上の分析データを使用してもよい。
【0159】
また、前述の実施形態において、第1動作例(第4動作例及び第7動作例)においては、原水のシリカ濃度の検出の回数(ランゲリア指数の算出の回数又はリズナー指数の算出の回数)が装置毎に各1回であって、分析データを取得して分析データ格納部52に格納する回数は、計3回であった。第2動作例(第5動作例及び第8動作例)においては、サンプル水の採水の回数が装置毎に各1回であって、分析データを取得して分析データ格納部52に格納する回数は、計3回であった。第3動作例(第6動作例及び第9動作例)においては、逆浸透膜分離装置2aにおいてサンプル水の採水の回数及び原水のシリカ濃度の検出の回数(ランゲリア指数の算出の回数又はリズナー指数の算出の回数)が各1回であり、逆浸透膜分離装置2bにおいてサンプル水の採水の回数及び原水のシリカ濃度の検出の回数(ランゲリア指数の算出の回数又はリズナー指数の算出の回数)が各1回であって、分析データを取得して分析データ格納部52に格納する回数は、計4回であった。しかし、分析データを分析データ格納部52に格納する回数は、これに制限されない。本発明は、複数の逆浸透膜分離装置における分析データが得られたときには、分析データの取得の回数に制限はなく、複数の逆浸透膜分離装置における分析データを、逐次、分析データ格納部52に格納する。