【課題】原水の水質に変動が生じた場合に、逆洗浄モードの実施頻度を調整することや順洗浄モードの実施頻度を調整することについて、複数の膜濾過装置を遠隔制御することにより、複数の膜濾過装置を総合的に管理する。
【解決手段】同一水源4から導入される原水W1から透過水を処理水W2として分離する複数の膜濾過装置2a〜2cを備え、遠隔制御部51は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度の増加に伴って複数の膜濾過装置2a〜2cの水透過係数が低下傾向にある場合に、管理対象となる複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれにおける水透過係数と、汚濁物質濃度に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれに対し、逆洗浄モードの実施頻度を増加させるように、及び/又は、順洗浄モードの実施頻度を増加させるように、遠隔制御により設定変更する。
前記遠隔制御部は、前記分析データ格納部に格納された汚濁物質濃度の増加に伴って前記複数の膜濾過装置のうちの一群の膜濾過装置のみの前記水透過係数が低下傾向にある場合に、前記低下傾向にある前記膜濾過装置に係る異常を報知するように制御する、
請求項1に記載の膜濾過装置の遠隔管理制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の全体構成図である。
図2は、本実施形態の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の制御に係る機能ブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1は、ネットワーク3を介して、遠隔地から通信により複数の膜濾過装置2a〜2cを遠隔制御する。ネットワーク3は、有線通信又は無線通信による広域の通信網である。
【0013】
膜濾過装置の遠隔管理制御システム1は、水源4と、複数の膜濾過装置2a〜2cと、遠隔制御装置5と、複数の原水ラインL1a〜L1cと、複数の処理水ラインL2a〜L2cと、複数の濃縮水導出ラインL3a〜L3cと、複数の濃縮水リターンラインL31a〜L31cと、複数の濃縮水排出ラインL32a〜L32cと、複数の比例制御弁10a〜10cと、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0014】
複数の膜濾過装置2a〜2cは、同一の水源4の地域内に設置される。同一の水源4の地域内とは、同一の水源4からの原水W1を供給可能な地域内をいう。同一の水源4の地域内に設置される複数の膜濾過装置2a〜2cには、例えば、同一会社における地理的に離間した異なる事業所や離間した敷地内に設置される複数の膜濾過装置や、地理的に離間した地域において複数のユーザに使用される複数の膜濾過装置や、別会社における地理的に離間した地域に設置される複数の膜濾過装置が含まれる。なお、複数の膜濾過装置2a〜2cは、全てが離間して設置されていなくてもよく、一部又は全部が近くに設置されていてもよい。
【0015】
膜濾過装置2aは、例えば、ユーザXの使用する膜濾過装置である。膜濾過装置2bは、例えば、ユーザYの使用する膜濾過装置である。膜濾過装置2cは、例えば、ユーザZの使用する膜濾過装置である。なお、複数の膜濾過装置2a〜2cを使用するユーザは、これに限定されず、例えば、膜濾過装置2a及び2bがユーザXの使用する膜濾過装置であってもよく、膜濾過装置2cがユーザYの使用する膜濾過装置であってもよい。この場合において、例えば、ユーザXの使用する膜濾過装置2a及び2bが近接した位置に設置され、ユーザYの使用する膜濾過装置2cがユーザXの使用する膜濾過装置2a及び2bから地理的に離間した位置に設置されてもよい。
【0016】
複数の膜濾過装置2a〜2cは、それぞれ、加圧ポンプ21a〜21cと、膜モジュール22a〜22cと、膜濾過制御部23a〜23cと、不図示のコントロールバルブ(流路切替弁)と、を備える。複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれには、原水ラインL1a〜L1cを介して、同一水源4(例えば、井戸,河川,貯水池等)から、原水W1が供給される。一般的な原水ラインL1a〜L1cは、地方自治体や地方公共団体等が敷設・管理する水道管網(例えば、工業用水道や上水道等)と、各ユーザが敷設・管理する給水管路とから構成されている。原水ラインL1a〜L1cは、上流側において水源4に接続されており、下流側において複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれに接続されている。
【0017】
複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれは、同一水源4から原水W1を膜モジュール22a〜22cに導入することで、原水W1に含まれる汚濁物質を除去して、原水W1から透過水を処理水W2a〜W2cとして分離する。複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれは、製造された処理水W2a〜W2cを、処理水ラインL2a〜L2cを介して、需要箇所へ供給する。処理水ラインL2a〜L2cは、上流側において複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれに接続されており、下流側において需要箇所に接続されている。汚濁物質としては、濁質(例えば、微粒子、溶存鉄の酸化析出物等の懸濁物質)や、全有機物炭素(以下「TOC」ともいう)として把握される有機物が挙げられる。
【0018】
なお、以下の説明において、複数又は単数を区別する必要がない場合には、複数の膜濾過装置2a〜2c、複数の加圧ポンプ21a〜21c、複数の膜モジュール22a〜22c、複数の膜濾過制御部23a〜23c、処理水W2a〜2c、洗浄排水W3a〜W3cの識別記号である「a」、「b」、「c」については省略して、単に「膜濾過装置2」、「加圧ポンプ21」、「膜モジュール22」及び「膜濾過制御部23」及び「処理水W2」、「洗浄排水W3」と記載する。
【0019】
膜濾過装置2a〜2cは、前述の通り、それぞれ、上流側に設けられる加圧ポンプ21a〜21cと、下流側に設けられる膜モジュール22a〜22cとにより構成される。
【0020】
膜モジュール22は、加圧ポンプ21により圧送された原水W1から、汚濁物質が除去された処理水W2を製造する。膜モジュール22は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の中空糸膜の束をベッセル内に収容し、ベッセル両端部においてベッセル内周面と中空糸膜外周面との間に封止剤を充填して形成される。膜モジュール22は、外圧式又は内圧式のいずれでも使用できるが、中空糸内部が閉塞しにくい外圧式が好ましい。また、濾過方式としては、全量濾過方式又はクロスフロー濾過方式のいずれでもよい。一般に、全量濾過方式は、濾過操作時のエネルギー消費量が少ないが、ケーキ層の成長が速いため、逆洗浄の実施間隔や順洗浄(フラッシング)の実施間隔を短くする必要がある。これに対し、クロスフロー濾過方式は、濾過操作時の水循環のためにエネルギー消費量が多いが、ケーキ層の成長が緩やかなため、逆洗浄の実施間隔や順洗浄の実施間隔を延ばすことができる。
【0021】
膜モジュール22に組み込まれる中空糸膜には、逆浸透膜(「RO膜」ともいう)よりも細孔が粗い膜が用いられる。除濁膜モジュールとして、限外濾過膜を有するUF膜モジュールや、精密濾過膜を有するMF膜モジュール等を適用することができる。前者としては、東レ社製のHFUシリーズ、後者としては、東レ社製のHFSシリーズ等の市販品を好適に用いることができる。なお、本実施形態においては、膜モジュール22を全量濾過方式の外圧式UF膜モジュールとして、以降の装置構成や動作等を説明する。
【0022】
加圧ポンプ21は、水源4から供給される原水W1を加圧し、膜モジュール22に送出する。ここで、膜モジュール22からの処理水W2の流量を検出する流量センサ(図示せず)と、加圧ポンプ21の回転数を駆動周波数に応じて可変させるインバータ(図示せず)と、流量センサからの流量検知信号に基づいて、インバータへ指令信号を出力する流量制御部232(
図2参照、後述)とを備えることが好ましい。この構成によれば、流量センサにより検出される処理水W2の流量に基づくフィードバック制御により、処理水W2の流量を一定に維持するように制御を行うことができる。
【0023】
これにより、膜表面でのケーキ層の成長と共に、膜間の通水抵抗が増加しても、加圧ポンプ21の回転数が流量制御部232により自動的に調整されて、処理水W2の流量を一定に制御することができる。
【0024】
この膜濾過装置の遠隔管理制御システム1によれば、同一水源4から供給された原水W1は、原水ラインL1を介して膜濾過装置2に送出される。膜濾過装置2に流入した原水W1は、膜濾過装置2により最終的に浄化された処理水W2となる。処理水W2は、処理水ラインL2を介して需要箇所へ供給される。濾過操作の継続により膜表面で成長したケーキ層(汚濁物質の堆積層)は、逆洗浄モードの実施、或いは順洗浄モードの実施により剥離され、洗浄排水W3と共に排水ラインL3を介して系外に排出される。
【0025】
膜濾過装置2の周辺には、処理水W2が流通可能な処理水ラインL2と、洗浄排水W3を系外へ排出する排水ラインL3と、逆洗水W4(処理水W2)を膜モジュール22に供給する逆洗水ラインL4と、が設けられている。
【0026】
処理水ラインL2は、UF膜を透過した処理水W2を装置外へ導出するラインである。処理水ラインL2は、膜モジュール22に接続され、膜モジュール22により製造された処理水W2を需要箇所へ供給(導出)する。なお、処理水W2の一部は、逆洗水タンク(不図示)に貯留されるようになっており、この貯留された処理水W2が逆洗水W4(後述)として利用される。
【0027】
逆洗水ラインL4は、逆洗浄モードにおいて、逆洗水W4としての処理水W2を膜モジュール22の二次側へ供給するラインである。逆洗水ラインL4の下流側の端部は、接続部J5において処理水ラインL2に接続されている。なお、逆洗水ラインL4には、逆洗水タンク(不図示)から逆洗水W4(処理水W2)を圧送するための逆洗用ポンプ20が設けられている。
【0028】
排水ラインL3は、逆洗浄モード及び順洗浄モードで発生した洗浄排水W3が流通するラインである。排水ラインL3は、膜モジュール22の一次側に接続され、懸濁物質を含む洗浄排水W3を系外に排出する。排水ラインL3の途中には、排水バルブ10が設けられている。排水バルブ10は、例えば電動弁からなり、遠隔制御部51の制御により、排水ラインL3を開閉するように構成されている。
【0029】
複数の膜濾過装置2a〜2cは、それぞれ、コントロールバルブ(不図示)を切り替えることで、同一水源4から原水W1を膜モジュール22a〜22cに導入することで原水W1に含まれる汚濁物質を除去して処理水W2a〜W2cを製造する水処理プロセスと、内部の膜モジュール22a〜22cの一次側を洗浄する洗浄プロセス(逆洗浄モード及び/又は順洗浄モード)と、を実行可能である。
【0030】
洗浄プロセスの逆洗浄モードにおいては、逆洗水W4(処理水W2)が膜モジュール22に組み込まれた中空糸膜の内側から外側に向かって通過するように流される。具体的には、原水ラインL1及び接続部J5の下流側の処理水ラインL2に設けられた所定のバルブ機構が閉鎖されると共に、排水バルブ10が開放され、逆洗用ポンプ20が逆洗水W4(処理水W2)を圧送するように操作される。これにより、中空糸膜の外側表面で成長したケーキ層が剥離される。洗浄後の洗浄排水W3は、排水ラインL3を介して、系外に排出される。中空糸膜の逆洗浄の後は、除濁膜モジュール22の一次側内に残留する洗浄排水W3が放水され、原水W1が導入される。逆洗浄モードは、原水W1の水質に応じて、例えば、30分から1時間に1回の頻度で実行される。
【0031】
洗浄プロセスの順洗浄モードにおいては、原水W1が膜モジュール22に組み込まれた中空糸膜の外側表面を高流速で流通するように流される。具体的には、逆洗水ラインL4及び接続部J5の下流側の処理水ラインL2に設けられた所定のバルブ機構が閉鎖されると共に、排水バルブ10が開放され、加圧ポンプ21が原水W1を水処理プロセスよりも高い流量で圧送するように操作される。これにより、中空糸膜の外側表面で成長したケーキ層が洗い流される。洗浄後の洗浄排水W3は、排水ラインL3を介して、系外に排出される。順洗浄モードは、原水W1の水質に応じて、例えば、5分から10分に1回の頻度で実行される。
【0032】
なお、複数の膜濾過装置2a〜2cにおいて、逆洗浄モード及び順洗浄モードの実行は、いずれか一方のみが実行されるように設定されていてもよいし、両方が実行されるように設定されていてもよい。逆洗浄モード及び順洗浄モードの両方を実行する場合には、順洗浄モードの実行が所定回数(例えば、2〜5回)に達するごとに、逆洗浄モードを1回実行させるように操作する。
【0033】
膜濾過制御部23は、
図2に示すように、プロセス実行部231と、流量制御部232と、を有する。
プロセス実行部231は、膜濾過装置2に設けられる不図示のコントロールバルブの開閉を制御することにより、水処理プロセス並びに洗浄プロセス(逆洗浄モード及び/又は順洗浄モード)を実行する。
【0034】
プロセス実行部231は、洗浄プロセスの実施タイミング制御に関し、流量洗浄、時間洗浄又は周期洗浄を実行可能である。プロセス実行部231の洗浄プロセスにおいて実行される流量洗浄は、膜濾過装置2に流入する原水W1の積算通水流量が予め設定された上限通水量に達した場合に、実行される。プロセス実行部231の洗浄プロセスにおいて実行される時間洗浄は、膜濾過装置2に流入する原水W1の積算通水時間が予め設定された上限通水時間に達した場合に、実行される。プロセス実行部231の洗浄プロセスにおいて実行される周期洗浄は、不図示のタイマー部により計時された経過日数が予め設定された周期日数になった場合に、実行される。
洗浄プロセスの実施頻度(すなわち、流量洗浄における上限通水量、時間洗浄における上限通水時間及び周期洗浄における周期日数)の頻度は、予め設定されており、原水W1の水質や膜濾過装置2の水透過係数に応じて、後述する遠隔制御装置5の遠隔制御部51により設定変更される。
【0035】
流量制御部232は、加圧ポンプ21の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)をインバータ(不図示)に出力する。
【0036】
遠隔制御装置5は、複数の膜濾過装置2a〜2cを遠隔制御する。遠隔制御装置5は、遠隔制御部51と、分析データ格納部52と、を有する。
分析データ格納部52は、取得された複数の膜濾過装置2a〜2cに導入される原水W1の汚濁物質濃度の分析データを格納する。例えば、取得された分析データとしては、膜濾過装置2に導入される原水W1をサンプル水として採水し、その採水したサンプル水を分析センター(不図示)で分析した分析データや、膜濾過装置2に導入される原水W1に含まれる汚濁物質濃度を濃度検出センサ(不図示)により現場測定した分析データなどがある。
【0037】
分析センターは、サンプル水の手動分析を採水現場以外で行うものであり、送付されたサンプル水を所要の分析機器を使用して分析する施設である。サンプル水の採水と送付は、例えば、各ユーザX〜Zと膜濾過装置2のメンテナンス契約を締結している管理会社のサービスエンジニアが定期的に客先を訪問して行う。分析センターで得られた分析データは、分析センターに備え付けの専用端末を介して遠隔制御装置5に送信され、分析データ格納部52に記録される。
一方、濃度検出センサは、サンプル水の自動分析を採水現場で行うものであり、複数の膜濾過装置2a〜2cの据付現場、具体的には原水ラインL1a〜L1cに設けられる機器である。濃度検出センサで測定された分析データは、ネットワーク3を介して遠隔制御装置5に送信され、分析データ格納部52に記録される。
【0038】
汚濁物質濃度とは、濁度や、全有機炭素濃度(以下「TOC濃度」ともいう)を含むものである。
濁度は、JIS K0101「工業用水試験方法」において、「濁度とは水の濁りの程度を表すもので、視覚濁度、透過光濁度、散乱光濁度及び積分球濁度に区分し表示する」とされている。採水したサンプル水の濁度を分析する濁度センサ及び膜濾過装置2a〜2cにおいて濁度を検出する濁度センサとしては、例えば、JIS K0101に示されているような、試料水の濁り度合を透過光強度から判定する透過光式センサや、散乱光強度から判定する散乱光式光センサや、散乱光強度と透過光強度との比から判定する積分球式センサなどを用いることができる。
TOC濃度は、水中に存在する有機物中の全量を炭素量で示したものである。採水したサンプル水のTOC濃度及び膜濾過装置2a〜2cにおいて検出されるTOC濃度は、全有機炭素センサ(不図示)(「TOCセンサ」ともいう)により分析又は検出される。TOCセンサは、水中の有機物中の炭素量を検出する機器である。
なお、全有機炭素濃度は、適当な換算係数を用いて基準物質(例えば、濁度の基準物質であるカオリンやホルマジン等)の濃度(単位:g/m
3)に換算するのが望ましい。基準物質の濃度に換算することにより、汚濁物質濃度として統一的に表示したり、所定の計算式に適用したりすることが可能になる。
【0039】
遠隔制御部51は、遠隔地から通信により複数の膜濾過装置2a〜2cを遠隔制御する。遠隔制御部51は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度の増加に伴って複数の膜濾過装置2a〜2cの水透過係数が低下傾向にある場合に、管理対象となる複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれの水透過係数と、汚濁物質濃度に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれに対し、膜モジュール22a〜22cの一次側を逆洗浄する逆洗浄モードの実施頻度を増加させるように、及び/又は、膜モジュール22a〜22cの一次側を順洗浄する順洗浄モードの実施頻度を増加させるように、遠隔制御により設定を変更する。
【0040】
原水W1の汚濁物質濃度は、膜モジュール22のファウリングの原因物質に係る水質項目の一つである。ファウリングとは、原水W1に含まれる汚濁物質(例えば、微粒子、溶存鉄の酸化析出物等の懸濁物質)が膜モジュール22の膜の表面や細孔内に沈着する現象である。原水W1の汚濁物質濃度が増加すると、ファウリングが発生しやすくなる。ファウリングが発生すると、膜の細孔が閉塞されるため、水透過係数の低下が進行する。
【0041】
遠隔制御部51における汚濁物質濃度の増加の判定には、濁度のみを対象にする場合と、濁度及びTOCを対象にする場合とがある。
濁度のみを対象とする場合には、汚濁物質濃度を原水濁度として、原水濁度が増加したか否かの判定を行う。通常、濁度1度は、基準物質(カオリン又はホルマジン)1g/m
3に相当する。
濁度及びTOCを対象にする場合には、「汚濁物質濃度」を次の式を用いて「換算原水濁度」に置き換えることにより、換算原水濁度が増加したか否かの判定を行う。
換算原水濁度〔g/m
3〕=原水濁度〔g/m
3〕+原水TOC〔gC/m
3〕×換算係数
【0042】
膜濾過装置2の水透過係数は、膜濾過装置2a〜2cそれぞれにおいて、膜濾過制御部23により、次の計算により求められる。膜濾過制御部23は、予め設定されたサンプリング周期毎に、それぞれの膜濾過装置2a〜2cについて水透過係数を算出する。膜濾過制御部23a〜23cにより算出された膜濾過装置2a〜2cの水透過係数に関するデータは、複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれの不図示のマイコンのメモリや、遠隔制御装置5の不図示のデータベースなどに記憶される。
【0043】
膜濾過制御部23は、膜濾過装置2の膜モジュール22に導入される原水W1の温度を検出する温度センサ(不図示)の検出温度値T、膜濾過装置2の膜モジュール22から導出される処理水W2の流量を検出する流量センサ(不図示)の検出流量値Q
p、及び膜濾過装置2の膜モジュール22に導入される原水W1の圧力を検出する圧力センサ(不図示)の検出圧力値P
dに基づいて、膜モジュールの水透過係数を算出する。
【0044】
ここで、水透過係数の算出手法について説明する。
水透過係数は、処理水W2の流量Q
p[m
3/s]を膜面積A[m
2]及び有効圧力[Pa]P
eで除した値である(後述の式(1)を参照)。水透過係数は、膜モジュール22の透水性能を示す指標である。すなわち、水透過係数は、単位有効圧力を作用させたときに単位時間に膜の単位面積を透過する水の量を意味する。有効圧力は、操作圧力(平均操作圧力)から浸透圧差及び二次側圧力(背圧)を差し引いた圧力である(後述の式(2)を参照)。換言すると、水透過係数は、単位有効圧力当たりの透過流束でもある。透過流束は、単位時間に膜の単位面積を透過する水の量である。
【0045】
基準温度(例えば、25℃)における水透過係数L
p[m
3・m
−2・s
−1・Pa
−1]の演算値は、下記の式(1)及び(2)に基づいて求めることができる。
L
p=Q
p/(K・A・P
e) (1)
(但し、K:温度補正係数、A:膜モジュールの膜面積、P
e:有効圧力)
P
e=P
d−(ΔP
1/2)−P
2−Δπ+P
s (2)
(但し、P
d:加圧ポンプ21の吐出圧力、ΔP
1:膜モジュール22の一次側における差圧、P
2:膜モジュール22の二次側における背圧、Δπ:膜モジュール22の浸透圧差、P
s:加圧ポンプ21の吸入側における圧力)
【0046】
式(1)において、温度補正係数Kは、検出温度値Tの関数であり、検出温度値Tが基準温度に等しいときに1となる。膜面積Aは、膜エレメントの使用本数により定まるので、予め設定した値を使用することができる。式(2)による有効圧力P
eの計算において、ΔP
1、P
2、Δπ、及びP
sの各値は、定常運転中は、ほぼ一定と看做せるため、予め設定した値を使用することができる。従って、膜モジュールの運転中に、温度センサ(不図示)の検出温度値T、流量センサ(不図示)の検出流量値Q
p、及び圧力センサ(不図示)の検出圧力値P
dからなる少なくとも3つのパラメータを取得すれば、基準温度における水透過係数L
pを演算することができる。なお、ΔP
1は、膜濾過装置2a〜2cがクロスフロー濾過方式の場合には所定の値を取るが、全量濾過方式の場合にはゼロとなる。
【0047】
分析データの近時情報とは、最新データだけに限定されず、ある程度日付の古いデータ(例えば、直近N個分のデータ)も含む概念である。分析データの近時情報は、例えばサンプル水の分析センター(不図示)への送付に日数を要する場合もあることから、後述する分析データ格納部52に格納された順序ではなく、サンプル水の採水日の順序に基づいて判断される。なお、サンプル水の分析データと、原水W1に含まれる汚濁物質濃度の検出値の分析データとが混在して分析データ格納部52に格納されている場合においても、原水W1の検出日及びサンプル水の採水日の順序に基づいて判断される。
【0048】
例えば、サンプル水の採水日と格納日との順序が異なる場合において、直近の2個分の分析データの平均値を近時情報として利用する場合について説明する。ここで、前回の逆洗浄モードの実施頻度の設定時又は順洗浄モードの実施頻度の設定時には、原水の汚濁物質濃度が、30g/m
3であったとする。
【0049】
下記の2月8日時点において格納されている分析データのように、例えば2月8日の時点では、分析データ格納部52に格納された分析データの格納日の順序は、日付が新しい順に、分析データN1、分析データN3である。採水日の順序は、日付が新しい順に、分析データN3、分析データN1である。
【0050】
◎2月8日時点において格納されている分析データ
N1:採水日(1月5日)、汚濁物質濃度30g/m
3、格納日(1月10日)
N3:採水日(2月2日)、汚濁物質濃度28g/m
3、格納日(2月7日)
【0051】
2月10日には、下記の2月10日時点において格納されている分析データのように、分析データ格納部52には、新たに2月10日に分析データN2が格納された。これにより、分析データ格納部52に格納された分析データの格納日の順序は、日付が新しい順に、分析データN2、分析データN3、分析データN1である。採水日の順序は、格納日の順序とは異なっており、日付が新しい順に、分析データN3、分析データN2、分析データN1である。
【0052】
◎2月10日時点において格納されている分析データ
N1:採水日(1月5日)、汚濁物質濃度30g/m
3、格納日(1月10日)
N2:採水日(1月20日)、汚濁物質濃度34g/m
3、格納日(2月10日)
N3:採水日(2月2日)、汚濁物質濃度28g/m
3、格納日(2月7日)
【0053】
ここで、例えば2月8日の時点では、直近の2個の分析データN1及び分析データN3の平均値((30+28)/2=29)が近時情報となる。2月8日の時点では、分析データN1及びN3の平均値は、前回の逆洗浄プロセスの頻度の設定時又はフラッシング運転の頻度の設更時の汚濁物質濃度30g/m
3から減少している。一方、例えば2月10日の時点では、直近の2個の分析データN2及びN3が近時情報となる。2月10日の時点では、分析データN2及びN3の平均値((34+28)/2=31.5)は、前回の逆洗浄モードの実施頻度の設定変更時又は順洗浄の実施頻度の設定変更時の汚濁物質濃度30g/m
3にから増加している。
このように、近時情報を判断するタイミングによって、サンプル水の採水日と格納日との順序が異なる場合があるが、サンプル水の採水日の順序に基づいて、サンプル水の分析データの近時情報とする。
【0054】
遠隔制御部51は、複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれに対し、膜モジュール22の一次側を逆洗浄する逆洗浄モードの実施頻度を増加させるように、及び/又は、膜モジュール22の一次側を順洗浄する順洗浄モードの実施頻度を増加させるように、遠隔制御により設定変更する。これにより、各洗浄モードの実施頻度を増加させる前よりも、中空糸膜の外側表面で成長したケーキ層(汚濁物質の堆積層)を効果的に洗い流すことができる。
【0055】
ここで、逆洗浄モード及び/又は順洗浄モードの実施頻度は、いずれか一方の頻度について増加させるように設定を変更してもよいし、両方の頻度について増加させるように設定を変更してもよい。例えば、原水W1の汚濁物質濃度が急激に増え、かつ詰まりの進行も速い場合には、逆洗浄モードの実施頻度及び順洗浄モードの実施頻度の両方の頻度を共に増加させることもできる。
【0056】
遠隔制御部51により設定変更される逆洗浄モード及び/又は順洗浄モードの実施頻度の増加の程度は、例えば、原水W1の汚濁物質濃度の上昇度合や膜濾過装置2の水透過係数の低下の度合に応じて、適宜決定される。即ち、原水W1の汚濁物質濃度の上昇度合が大きい場合や膜濾過装置2の水透過係数の低下の度合が大きい場合には、遠隔制御部51は、各洗浄モードの実施頻度の増加の程度を大きくするように設定の変更を行う。なお、遠隔制御装置5のマイコンのメモリ等において、原水W1の汚濁物質濃度の上昇度合や膜濾過装置2の水透過係数の低下の度合に対応した、各洗浄モードの実施頻度に関するデータテーブルを有していてもよい。
【0057】
また、遠隔制御部51により設定変更される逆洗浄モード及び/又は順洗浄モードの実施頻度の増加の程度は、汚濁物質の種類を考慮することもできる。例えば、汚濁物質濃度の増加の判定として濁度及びTOCを対象にする場合には、濁度及びTOCの両方が上昇していれば、濁度の上昇がTOCの上昇によるものと考えられる。そのため、粘着性のある有機物による詰まりの進行を抑制するため、各洗浄モードの実施頻度を、濁度のみが上昇(無機系の固形物濃度が上昇)している場合よりも多く設定する。
【0058】
また、遠隔制御部51は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度の増加に伴って複数の膜濾過装置2a〜2cのうちの単一のユーザが使用する一群の膜濾過装置のみの水透過係数が低下傾向にある場合に、低下傾向にある膜濾過装置に係る異常を報知するように制御する。低下傾向にある膜濾過装置に係る異常の報知は、不図示の報知部により行われる。報知部(不図示)は、遠隔制御部51と電気的に接続されている。報知は、例えば、表示、音声、発光などのうちの一つ以上である。
【0059】
ここで、一群の膜濾過装置とは、単一のユーザが使用する1台又は複数台の膜濾過装置を意味する。そのため、一群の膜濾過装置は、膜濾過装置が1台であってもよいし、複数台であってもよい。単一のユーザが使用する一群の膜濾過装置のみの水透過係数が低下傾向にある場合には、膜の閉塞の原因が、原水W1の水質ではなく、この一群の膜濾過装置の設備にある可能性が高いため、一群の膜濾過装置のみの異常を報知して、当該設備の点検が必要である旨の異常が報知される。
【0060】
次に、膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の第1動作例について説明する。
図3は、本実施形態の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の第1動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートの処理は、膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の運転中において、繰り返し実行される。また、複数の膜濾過装置2a〜2cは、水処理プロセス並びに洗浄プロセス(逆洗浄モード及び/又は順洗浄モード)を実行している。
【0061】
図3に示す膜濾過装置2aにおけるステップS121において、膜濾過装置2aに導入される原水W1に含まれる汚濁物質濃度を濃度検出センサ(不図示)により検出する。検出された汚濁物質濃度のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0062】
遠隔制御装置5におけるステップS111において、膜濾過装置2aのステップS121で検出された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0063】
膜濾過装置2bにおけるステップS131において、膜濾過装置2bに導入される原水W1に含まれる汚濁物質濃度を濃度検出センサ(不図示)により検出する。検出された汚濁物質濃度のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0064】
遠隔制御装置5におけるステップS112において、膜濾過装置2bのステップS131で検出された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0065】
膜濾過装置2cにおけるステップS141において、膜濾過装置2cに導入される原水W1に含まれる汚濁物質濃度を濃度検出センサ(不図示)により検出する。検出された汚濁物質濃度のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0066】
遠隔制御装置5におけるステップS113において、膜濾過装置2cのステップS141で検出された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0067】
遠隔制御装置5におけるステップS114において、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度が増加しているか否かを判定する。ここで、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度の分析データにおいて、分析データ格納部52に格納された順序ではなく、膜濾過装置2a〜2cにおける原水W1の検出日の時系列の分析データによる近時情報に基づいて、汚濁物質濃度の平均値を算出する。例えば、近時情報として、直近の2個の分析データが使用される。具体的には、直近の2個の分析データとして、膜濾過装置2cにおいてステップS141で検出されたサンプル水の分析データと、膜濾過装置2bにおいてステップS131で検出されたサンプル水の分析データと、について、汚濁物質濃度の平均値を算出する。遠隔制御装置5により汚濁物質濃度の平均値が増加していると判定された場合(YES)には、処理は、ステップS115に移行する。一方、遠隔制御装置5により汚濁物質濃度の平均値が増加していないと判定された場合(NO)には、処理は終了する(ステップS111へリターンする)。
【0068】
遠隔制御装置5におけるステップS115において、遠隔制御装置5は、複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれで水透過係数が低下傾向にあるか否かを判定する。遠隔制御装置5により水透過係数が低下傾向にあると判定された場合(YES)には、処理は、ステップS116に移行する。一方、遠隔制御装置5により水透過係数が低下傾向にないと判定された場合(NO)には、処理は終了する(ステップS111へリターンする)。
【0069】
遠隔制御装置5におけるステップS116において、遠隔制御装置5は、複数の膜濾過装置2a〜2cのうちの一群の濾過装置のみの水透過係数が低下傾向にあるか否かを判定する。遠隔制御装置5により一群の濾過装置のみの水透過係数が低下傾向にあると判定された場合(YES)には、処理は、ステップS118に移行して、当該設備の点検が必要である旨の異常を報知して、処理は終了する(ステップS111へリターンする)。一方、遠隔制御装置5により一群の濾過装置のみの水透過係数が低下傾向にないと判定された場合(NO)には、処理は、ステップS117に移行する。
【0070】
遠隔制御装置5におけるステップS117において、遠隔制御装置5は、複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれに対して、逆洗浄モードの実施頻度を増加させる操作、及び/又は、順洗浄モードの実施頻度を増加させる操作を実行する。
遠隔制御部51により設定変更される各洗浄モードの実施頻度の増加の程度は、例えば、原水W1の汚濁物質濃度の上昇度合や膜濾過装置2の水透過係数の低下の度合に応じて、適宜決定される。
【0071】
また、遠隔制御部51により設定変更される逆洗浄モード及び/又は順洗浄モードの実施頻度の増加の程度は、汚濁物質の種類を考慮することもできる。例えば、汚濁物質濃度の増加の判定として濁度及びTOCを対象にする場合には、濁度及びTOCの両方が上昇していれば、濁度の上昇がTOCの上昇によるものと考えられる。そのため、粘着性のある有機物による詰まりの進行を抑制するため、各洗浄モードの実施頻度を、濁度のみが上昇(無機系の固形物濃度が上昇)している場合よりも多く設定する。
【0072】
これにより、各洗浄モードの実施頻度を増加させる前よりも、膜モジュール22の膜に付着した汚濁物質を効果的に洗い流すことができる。ステップS117の処理の後に、遠隔制御装置5の処理は終了する(ステップS111へリターンする)。
【0073】
膜濾過装置2a,2b,2cにおけるステップS122,S132,S142において、膜濾過装置2a,2b,2cの逆洗浄モードの実施頻度及び/又は順洗浄モードの実施頻度は、遠隔制御装置5の遠隔制御により設定変更される。ステップS122,S132,S142の処理の後に、膜濾過装置2a,2b,2cの処理は終了する(ステップS121,S131,S141へリターンする)。
【0074】
次に、膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の第2動作例について説明する。
図4は、本実施形態の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の第2動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示す第2動作例は、分析データの取得方法について、
図3に示す第1動作例において原水W1に含まれる汚濁物質濃度を濃度検出センサ(不図示)により検出して得るのに対して、採水された原水W1のサンプル水から分析センター(不図示)において汚濁物質濃度の分析データとして分析されて得る点において主に異なる。第2動作例は、その他の点において、第1動作例と同様である。
【0075】
図4に示す膜濾過装置2aにおけるステップS221において、膜濾過装置2aに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点における汚濁物質濃度の分析データとして分析される。
【0076】
遠隔制御装置5におけるステップS211において、膜濾過装置2aのステップS221で採水された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0077】
膜濾過装置2bにおけるステップS231において、膜濾過装置2bに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点における汚濁物質濃度の分析データとして分析される。
【0078】
遠隔制御装置5におけるステップS212において、膜濾過装置2bのステップS231で採水された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0079】
膜濾過装置2cにおけるステップS241において、膜濾過装置2cに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点における汚濁物質濃度の分析データとして分析される。
【0080】
遠隔制御装置5におけるステップS213において、膜濾過装置2cのステップS241で採水された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0081】
遠隔制御装置5におけるステップS214において、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度の平均値が増加したか否かを判定する。ここで、遠隔制御装置5は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度の分析データにおいて、分析データ格納部52に格納された順序ではなく、複数の膜濾過装置2a〜2cにおける原水W1の採水日の時系列の分析データによる近時情報に基づいて、汚濁物質濃度の平均値を算出する。例えば、近時情報として、直近の2個の分析データが使用される。具体的には、直近の2個の分析データとして、膜濾過装置2cにおいてステップS241で採水されたサンプル水の分析データと、膜濾過装置2bにおいてステップS231で採水されたサンプル水の分析データと、について、汚濁物質濃度の平均値を算出する。遠隔制御装置5により汚濁物質濃度の平均値が増加したと判定された場合(YES)には、処理は、ステップS215に移行する。一方、遠隔制御装置5により汚濁物質濃度の平均値が増加していないと判定された場合(NO)には、処理は終了する。
【0082】
遠隔制御装置5におけるステップS215〜S218、膜濾過装置2aにおけるステップS222、膜濾過装置2bにおけるステップS232、膜濾過装置2cにおけるステップS242の動作は、第1動作例の遠隔制御装置5におけるステップS115〜S118、膜濾過装置2aにおけるステップS122、膜濾過装置2bにおけるステップS132、膜濾過装置2cにおけるステップS142の動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0083】
次に、膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の第3動作例について説明する。
図5は、本実施形態の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の第3動作例の処理手順を示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートの処理は、膜濾過装置の遠隔管理制御システム1の運転中において、繰り返し実行される。また、複数の膜濾過装置2a〜2cは、水処理プロセス及び逆洗浄プロセスを実行している。
図5における第3動作例は、
図3及び
図4における第1動作例及び第2動作例と比べて、分析データの取得方法や取得時期や取得回数が異なる。
【0084】
図5に示す膜濾過装置2aにおけるステップS321において、膜濾過装置2aに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点における汚濁物質濃度の分析データとして分析される。
【0085】
遠隔制御装置5におけるステップS312において、膜濾過装置2aのステップS321で採水された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、例えばサンプル水の採水日から数日遅れて、分析データ格納部52に格納される。
【0086】
膜濾過装置2aにおけるステップS322において、膜濾過装置2aに導入される原水W1に含まれる汚濁物質濃度を濃度検出センサ(不図示)により検出する。検出された汚濁物質濃度のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0087】
遠隔制御装置5におけるステップS311において、例えばステップS312よりも早い時期に、膜濾過装置2aのステップS322で検出された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0088】
膜濾過装置2bにおけるステップS331において、膜濾過装置2bに導入される原水W1のサンプル水を採水する。採水された原水W1のサンプル水は、分析センター(不図示)に送付され、原水W1の採水時点における汚濁物質濃度の分析データとして分析される。
【0089】
遠隔制御装置5におけるステップS314において、膜濾過装置2bのステップS331で採水された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、例えばサンプル水の採水日から数日遅れて、分析データ格納部52に格納される。
【0090】
膜濾過装置2bにおけるステップS332において、膜濾過装置2bに導入される原水W1に含まれる汚濁物質濃度を濃度検出センサ(不図示)により検出する。検出された汚濁物質濃度のデータは、分析データとして、遠隔制御装置5へ送信される。
【0091】
遠隔制御装置5におけるステップS313において、例えばステップS314よりも早い時期に、膜濾過装置2bのステップS332で検出された原水W1の汚濁物質濃度の分析データは、分析データ格納部52に格納される。
【0092】
遠隔制御装置5におけるステップS315〜S319、膜濾過装置2aにおけるステップS323、膜濾過装置2bにおけるステップS333、膜濾過装置2cにおけるステップS341の動作は、第1動作例の遠隔制御装置5におけるステップS114〜S118、膜濾過装置2aにおけるステップS122、膜濾過装置2bにおけるステップS132、膜濾過装置2cにおけるステップS142の動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
ここで、膜濾過装置2cにおいては、ステップS341よりも前の時点で、原水W1の汚濁物質濃度の分析データが個別には取得されていない。しかし、膜濾過装置2cは、予め設定された洗浄タイミングが水質変動に対応した最適な洗浄タイミングとなるように、遠隔制御装置5の遠隔制御により設定変更される。ここでは、複数の膜濾過装置2a〜2cのいずれにおいても、同一水源から原水W1が導入されている。そのため、個別の分析データが取得されていない膜濾過装置2cにおいても、遠隔制御により洗浄タイミングの設定を変更する。これにより、複数の膜濾過装置2a〜2cを、一群の膜濾過装置として、総合的に管理することができる。
【0094】
本実施形態の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1によれば、例えば、以下に示す効果が奏される。
本実施形態の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1は、同一水源4から原水を膜モジュール22に導入することで原水から透過水を処理水として分離する複数の膜濾過装置2a〜2cと、複数の膜濾過装置2a〜2cを遠隔制御する遠隔制御部51と、取得された原水W1の汚濁物質濃度の分析データを格納する分析データ格納部52と、を備え、遠隔制御部51は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度の増加に伴って複数の膜濾過装置2a〜2cの水透過係数が低下傾向にある場合に、管理対象となる複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれにおける水透過係数と、汚濁物質濃度に係る分析データの近時情報とに基づいて、複数の膜濾過装置2a〜2cそれぞれに対し、膜モジュール22の一次側を逆洗浄する逆洗浄モードの実施頻度を増加させるように、及び/又は、膜モジュール22の一次側を順洗浄する順洗浄モードの実施頻度を増加させるように、遠隔制御により設定変更する。
【0095】
そのため、同一水源4の原水水質が変動した場合に、複数の膜濾過装置2a〜2cにおいて、逆洗浄モードの実施頻度を増加させ及び/又は順洗浄モードの実施頻度を増加させて、複数の膜濾過装置2a〜2cを、一群の膜濾過装置として、総合的に管理することができる。この結果、複数の膜濾過装置の全てにおいて、最適な頻度での膜洗浄が常に行われることになり、膜モジュール22の透過流束の低下を抑制して、所定範囲に維持することができる。
【0096】
また、本実施形態の膜濾過装置の遠隔管理制御システム1においては、遠隔制御部51は、分析データ格納部52に格納された汚濁物質濃度の増加に伴って複数の膜濾過装置2a〜2cのうちの一群の膜濾過装置のみの水透過係数が低下傾向にある場合に、低下傾向にある膜濾過装置に係る異常を報知するように制御する。
【0097】
そのため、一群の膜濾過装置のみの水透過係数が低下傾向にある場合に、一群の膜濾過装置のみの異常を報知して、当該設備の点検が必要である旨の異常を報知することができる。
【0098】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前述の実施形態においては、複数の膜濾過装置として、3台の膜濾過装置について説明したが、これに制限されない。本発明は、同一水源からの原水が導入される膜濾過装置群の遠隔制御を対象にしているので、数十台から数百台規模の膜濾過装置群に対しても適用することが可能となっている。
【0099】
また、前述の実施形態においては、複数の膜濾過装置2a〜2cの全ての装置の逆洗浄モードの実施頻度の増加、及び/又は、順洗浄モードの実施頻度の増加を遠隔制御により設定変更したが、これに制限されない。複数の膜濾過装置2a〜2cの一部の装置の逆洗浄モードの実施頻度の増加、及び/又は、順洗浄モードの実施頻度の増加を遠隔制御により設定変更してもよい。
【0100】
また、前述の実施形態においては、近時情報として、直近の2個の分析データを使用する例について説明したが、これに制限されず、例えば、直近の3個以上の分析データを使用してもよい。
【0101】
また、前述の実施形態において、第1動作例においては、原水の汚濁物質濃度の検出の回数が装置毎に各1回であって、分析データを取得して分析データ格納部52に格納する回数は、計3回であった。第2動作例においては、サンプル水の採水の回数が装置毎に各1回であって、分析データを取得して分析データ格納部52に格納する回数は、計3回であった。第3動作例においては、膜濾過装置2aにおいてサンプル水の採水の回数及び原水の汚濁物質濃度の検出の回数が各1回であり、膜濾過装置2bにおいてサンプル水の採水の回数及び原水の汚濁物質濃度の検出の回数が各1回であって、分析データを取得して分析データ格納部52に格納する回数は、計4回であった。しかし、分析データを分析データ格納部52に格納する回数は、これに制限されない。本発明は、複数の膜濾過装置における分析データが得られたときには、分析データの取得の回数に制限はなく、複数の膜濾過装置における分析データを、逐次、分析データ格納部52に格納する。