【実施例1】
【0023】
実施例1について、
図1から
図5を参照して説明する。
剥離塗料塗布具2は、剥離塗料5を内部に収容し、外力により変形して剥離塗料5を吐出可能な塗料容器3と、この塗料容器3に螺合により着脱可能に取り付けられる剥離塗料塗布用ノズル4(以下単にノズル4とも称す。)とから構成される。
【0024】
タイル1に剥離塗料5を塗布するには、後述するトレースガイド片4cをタイル1の側面1Bに当てた状態で、剥離塗料塗布具2を
図1(b)の矢印Aの方向に移動させる。この移動の際に、塗料容器3を把持する力を加減することにより、塗料容器3から吐出された剥離塗料5がタイル1の表面1Aの端部1A1に塗布される。
図4は、タイル1の表面1Aの4つの端部1A1に剥離塗料5が塗布されたものを示し、中央部1A2には剥離塗料が塗布されていない。
【0025】
図2、
図3を参照し、ノズル4について説明する。ノズル4は装着部4Aと塗布部4Bとが樹脂により一体成形により形成されたものである。装着部4Aの内周には、雌ネジが設けられ、塗料容器3の先端の雄ネジと螺合する。装着部4Aの内部は空洞であり、塗布部4Bの内部の空洞と連通しており、この空洞(
図3の破線を参照。)は剥離塗料5の流路となる。
【0026】
塗布部4Bは、剥離塗料5を吐出口4a1から吐出する吐出部4a、コーナー膨張防止傾斜面4b(以下単に傾斜面4bとも称す。)、タイル等に当接してガイドするためのトレースガイド片4c、ならし片4g,4g、高さガイド片4hなどが一体に形成されたものである。
【0027】
本実施例の吐出口4a1は略矩形であり、その周りに「ロ」字状の平端面4a2が形成されている。傾斜面4bは平端面4a2から傾斜して連なっており、ならし片4g,4gは吐出口4a1を挟んで剥離塗料塗布具2の移動方向の前後に設けられ、各ならし片4gの吐出側面4g1は平端面4a2と同じ平面をなすように連なっている。さらに、高さガイド片4hの内側の面は平端面4a2に直交して連なっている。また、垂直面シール部4dが傾斜面4bから平端面4a2に直交する方向に延びて連なっている。
【0028】
トレースガイド片4cは、下方に延びる脚形状とされ、タイル1の側面1Bに当接して矢印A(
図1(b))方向の移動をガイドするものであり、上部に垂直面シール部4dを有し、この垂直面シール部4dはタイル1の側面1Bに当接して剥離塗料5の側面1B側への漏れをシールする。
【0029】
また、トレースガイド片4cの中央部及び下部に接点ガイド凸部4e,4eが設けられている。各接点ガイド凸部4e,4eの頂部と垂直面シール部4dの垂直面とは、
図3に示すように、剥離塗料5が吐出される方向に平行な仮想の面E上に位置する。
【0030】
トレースガイド片4cの中央部及び下部には高さ調整切り込み部4f,4f‥が複数設けられている。
【0031】
ならし片4g,4gは、吐出部4aの上部で塗布部4Bの主面から直交する二方向(
図1(a)における紙面に直交する二方向)に延びるように形成されている。
【0032】
図2、3を参照し、吐出部1aを挟んで傾斜面4bとは反対側に、剥離塗料5が吐出される方向に延び、吐出部1aからの長さがHの高さガイド片4hが設けられている。
【0033】
次いで、剥離塗料5について説明する。
剥離塗料5は、水系エマルション樹脂塗料がハンドリング性から好ましい。その一例として、水系エマルション樹脂が75〜90wt%、レベリング剤が4.0wt%、消泡剤が0.2wt%、増粘剤が1.0wt%、顔料を主成分とする材料が4.8〜19.8wt%からなるものを表1に示す。なお、wt%は重量%を意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
水系エマルション樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン酢ビ共重合体、アクリル酸エステル、アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンワックス類、シリコーン、ウレタン、アクリル、アクリルウレタン等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。レベリング剤、消泡剤、増粘剤については特に限定されないが公知のものを用いることができる。
【0036】
顔料を主成分とする材料は、公知のものを用いることができる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ウレタン、アクリル、アクリルウレタン等を用いることができる。黒色顔料としては、例えば酸化鉄、カーボンブラック等を用いることができる。そして、顔料を主成分とする材料は、黒色顔料を用いる場合にはその割合は下限4.8wt%程度、白色顔料を用いる場合にはその割合は上限19.8wt%程度、その他の色の顔料はこれらの中間の割合とするとよい。
【0037】
以上のとおり、タイル1の表面1Aの端部1A1に剥離塗料5を塗布しマスキングとして使用するものであるから、マスキングテープを貼るという煩雑な作業が不要である。
【0038】
また、トレースガイド片4cを設けたから、タイル1の側面1Bにトレースさせてガイドすることで、タイル1の表面1Aの端部1A1に剥離塗料を簡単に塗布することができる。
【0039】
また、タイル1の側面1Bに接触させる凸部4e,4eは、その形状が凸であるから、矢印A方向(
図1(b))へのトレースが円滑となる。
【0040】
また、トレースガイド片4cを、複数のうち適宜選択した切り込み部4fで切断することで、その長さを調整することができるので、タイル1の厚さが異なる場合にも対応することができる。
【0041】
また、高さガイド片4hの先端面4h1をタイル1の表面1Aに当接させて塗布するから、被塗布面に塗布された剥離塗料5の厚さを高さガイド片4hの厚さ(長さH)に簡単に形成することができる。
【0042】
さらに、高さガイド片4hによる高さ方向のガイドに加え、吐出部4aと、傾斜面4bと、高さガイド片4hとにより、ブリッジ状の空間である塗布量調整空間4i(
図3(a))を形成するから、塗布される剥離塗料5の厚さを簡単に調整できる。また、傾斜面4bの上下方向の長さはHであるから、塗布された剥離塗料5の断面(剥離塗料塗布具2の移動方向に直交する断面)は、
図5(a)で示すようになる。
【0043】
また、
図3(a)における垂直面シール部4dを少し高くし、吐出部4aと、傾斜面4aと、高さガイド片4hと垂直面シール部4dの一部とにより、ブリッジ状の空間を形成してよい。この変形例では、塗布された剥離塗料5の断面は、
図5(b)で示すようになる。
【0044】
また、傾斜面4bの更なる変形例として、その形状を曲面としてもよい。
図5(c)は、傾斜面が曲面により形成された場合の、塗布された剥離塗料5の断面である。
【0045】
また、タイル1に設けられた剥離塗料5は、その厚さに関し外側が中央側よりも薄くなるテーパ(
図5(a)〜(c))を形成した。このことから、目地材を注入する目地材注入具等が接触する可能性が少なく作業性がよく、また接触してもマスキング材が剥がれにくい。
【0046】
また、
図5(a)で示す断面形状の剥離塗料5は、上述した作用効果に優れるとともに、タイル1の端面1B側への剥離塗料5の漏れることが少ないという点から好ましい。一方、
図5(b)、(c)で示す断面形状の剥離塗料5は、
図5(a)の剥離塗料5に比較して、端部に厚さがあるから、塗布の作業が容易である。また、
図5(c)の剥離塗料5は、断面が曲面の外表面であるから、剥離時に応力が集中する点がなく剥離塗料5のテーパ部分の構造強度が比較的高く一体性を保持できるため剥離性に優れる。
【0047】
また、塗布方向の後方に位置するならし片4bにより、吐出された剥離塗料5のはみ出しを抑制することができる。なお、ならし片4g,4gを二方向に設けたから、塗布方向をいずれの方向(
図1(b)における矢印Aとその反対方向)としてもはみ出し抑制の作用を奏する。
【0048】
また、剥離塗料5は塗料であるから、特に水系エマルションを主成分とする塗料であるから、塗布によりマスキングを形成することができ、マスキングテープに比較し、マスキングの作業が簡単であり、かつ、タイル1の表面1Aの端部1A1に隙間なく簡単に塗布することができる。また、塗布する際にはタイル表面に凹凸があっても隙間なく覆うことができ、マスキングテープに比較し、表面1Aに凹凸が存在するものであっても隙間が生じることが少ない。
【0049】
ここで、タイル1などの建材は、意匠性を高めるために表面に凹凸を施すこともあるが凹凸の高さは多くのものが0.1mm未満であり、ほとんどが0.5mm以上である。一方、塗布した塗料を乾燥した後に剥離するには、塗布時の厚さ(乾燥前の厚さ)が0.5mm以上、好ましくは1mm以上であると、剥離をするときに千切れたりすることが少なく剥離性が良好である。
【0050】
また、塗布時の厚さが厚すぎると均一に塗布することが難しく特に鉛直方向の塗布面に塗布すると垂れが発生しやすく、乾燥に時間がかかり、かつ、剥離塗料の無駄が多くなる。以上のことから塗布時の厚さは0.5mm以上3.0mm以下とするとよい。本発明の剥離塗料5は、材料や温度などにもよるが、塗布後、数分〜数時間で乾燥する。
【0051】
また、剥離塗料5を表1に示す割合とすると、様々な色、例えば黒、黄、赤、緑、青、白の色、若しくはこれらの中間色、または半透明のものを提供することができる。
【実施例6】
【0067】
実施例6について、
図11、12を参照して説明する。実施例6は、実施例1の剥離塗料塗布具2により剥離塗料5が塗布されたタイル1を積み重ねたスタックを説明するものである。なお、同じ符号を付したものの構成は実施例1と同様であるからその説明を省略する。
【0068】
図11、12を参照して、剥離塗料5が塗布されたタイル1の表面1Aの端部1A1には、剥離塗料5が塗布されており、また、剥離塗料5が塗布されていない中央部1A2には厚さt9のスペーサ9が設けられている。スペーサ9の厚さt9は剥離塗料5の厚さt5よりも厚い(t9>t5)。
【0069】
このことから、タイル1を積層しても剥離塗料5が上方のタイル1の裏面などに接触することがない。したがって、タイル1に剥離塗料5を塗った後に重ねて乾燥させることができ、作業空間を有効に活用できる。また、重ねた状態で輸送しても、剥離塗料5が傷付くことや剥離することを防止できる。なお、スペーサ9は、剥離塗料が5塗布されない箇所に設ければよく、必ずしもその位置は中央部1A2に限られるものではない。
【0070】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0071】
例えば、前記実施例では、被塗布部材としてタイルである場合について説明したが、例えば床材などの建材、車両のドアなどに適用することが可能であり、被塗布部材の対象は問わない。また、剥離塗料をマスキングに用いる例について説明したが必ずしもマスキングに用いるものに限らない。
【0072】
また、吐出口4a1を矩形としたので、ノズル4の幅方向に均等に剥離塗料5を吐出させることが可能となり、膜厚を均一に調整しやすくなる。なお、幅方向に均等に剥離塗料5を吐出させるために、複数の吐出口を列に沿って並べて配置するものであってもよい。
【0073】
また、傾斜面4bが吐出部4aの平端面4a2から連なって形成される例について説明したが、傾斜面4bは、最終的に塗布された剥離塗料5の外側の厚さが薄くできればよい(
図5)から、傾斜面4bを設ける位置は平端面4a2に連なる以外の位置、例えば、後部ならし片4gに連なる位置としてもよい。
【0074】
また、塗料容器3にノズル4を着脱可能に取り付けた例について説明したが、塗料容器3とノズル4とが一体成形されたものであってもよい。この場合は、塗料容器3の底部に剥離塗料の挿入口を設けるとよい。
【0075】
また、ノズル4を取り付けた剥離塗料塗布具2を作業者が使用する例について説明したが、ノズル4を塗料塗布装置に組み込んで使用することも可能である。
【0076】
また、実施例1〜3では、トレースガイド片4cは脚形状のものについて説明したが、垂直面シール部4dから下方の部位を省略してもよい。この場合、垂直面シール部4dのみがトレース用のガイドである。