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特開2015-231613剥離塗料塗布用ノズル、建材及び剥離塗料の塗布方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231613(P2015-231613A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】剥離塗料塗布用ノズル、建材及び剥離塗料の塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/005 20060101AFI20151201BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20151201BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   B05C17/005
   B05D1/26 Z
   B05D5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-120032(P2014-120032)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】598151599
【氏名又は名称】太洋塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179534
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 かおる
(72)【発明者】
【氏名】神山 麻子
【テーマコード(参考)】
4D075
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AD16
4D075AD20
4D075BB20Z
4D075DA06
4D075DB11
4D075DC03
4D075EA06
4D075EA13
4D075EB12
4D075EB14
4D075EB22
4D075EB38
4D075EB42
4D075EC13
4F042AA17
4F042FA22
4F042FA30
4F042FA35
(57)【要約】
【課題】剥離用塗料を被塗布部材の所定の位置に簡単に塗布できる、特に被塗布部材としての建材の表面の端部に簡単に塗布することができる、剥離塗料塗布用ノズル、建材及び剥離塗料の塗布方法を提供する。
【解決手段】吐出部4aの吐出口4a2から吐出される剥離塗料5を被塗布部材1の塗布面に塗布する剥離塗料塗布用ノズルであって、前記吐出部4aよりも前記剥離塗料5が吐出される方向に延び、当該剥離塗料塗布用ノズル4の移動をガイドするトレースガイド片4cを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出部の吐出口から吐出される剥離塗料を被塗布部材の塗布面に塗布する剥離塗料塗布用ノズルであって、
前記吐出部よりも前記剥離塗料が吐出される方向に延び、当該剥離塗料塗布用ノズルの移動をガイドするトレースガイド片を備えたことを特徴とする剥離塗料塗布用ノズル。
【請求項2】
前記トレースガイド片はその側部に凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の剥離塗料塗布用ノズル。
【請求項3】
前記トレースガイド片はカットして長さを調整するための切り込みを有することを特徴とする請求項1または2に記載の剥離塗料塗布用ノズル。
【請求項4】
前記剥離塗料が吐出される方向に対し傾斜して延び、前記吐出口から吐出された前記剥離塗料の膨出を規制する傾斜部を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の剥離塗料塗布用ノズル。
【請求項5】
前記傾斜部に連なるとともに前記剥離塗料が吐出される方向に延び、前記剥離塗料の漏れを規制するシール部を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の剥離塗料塗布用ノズル。
【請求項6】
前記剥離塗料が吐出される方向に伸び、その先端部により当該剥離塗料塗布用ノズルの移動をガイドする高さガイド片を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の剥離塗料塗布用ノズル。
【請求項7】
前記高さガイド片とは前記吐出部を介して反対側に設けられる部位を有し、前記部位と前記高さガイド片と前記吐出部とによりブリッジ状の空間を形成することを特徴とする請求項6に記載の剥離塗料塗布用ノズル。
【請求項8】
前記吐出部から前記剥離塗料が吐出される方向とは交差する方向に延び、前記吐出された剥離塗料の厚さをならす後部ならし片が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の剥離塗料塗布用ノズル。
【請求項9】
前記請求項1ないし8のいずれかに記載の剥離塗料塗布用ノズルを使用してその表面の端部に剥離塗料を塗布した建材。
【請求項10】
前記請求項1ないし8のいずれかに記載の剥離塗料塗布用ノズルを使用して、剥離塗料を被塗布部材の塗布面に塗布する剥離塗料の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離塗料塗布用ノズル、建材及び剥離塗料の塗布方法に関し、特にタイル等の建材にマスキングに剥離塗料を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、剥離塗料塗布用ノズルとしては、略円錐形状の軸方向中央に貫通孔を設け、貫通孔の一方の開口から剥離塗料を導入し、他方の開口から剥離塗料を吐出させる構造のものがあった。
【0003】
また、剥離塗料を用いるマスキングではないが、タイル等の目地を施工する際にタイル等に目地材が付着しないようにするために、タイル等にマスキングテープを貼着し、タイル等の間に目地材を注入し、最後にマスキングテープを剥がすものがあった。
(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、剥離塗料ではないが、プリント基板において絶縁性を確保するためにマスキング剤を塗布するものとして、吐出口を有する平板状部材とプリント基板との間に所定の間隔を設け、吐出口からマスキング剤をこの隙間に注入し毛細管作用を利用して塗布するものがあった。また、隙間を安定して得るためにプリント基板の表面に当接する突起を設けるものであった。
(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3027793号公報(段落0027、図6
【特許文献2】特開2003−10763号公報(段落0009、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は、剥離塗料を塗布する場合、作業者が所望の位置にノズルをあわせ塗布を行っていた。このため、塗布する位置の調節、特に被塗布部材の表面の端部に塗布する場合に、塗布する位置の調節に手間がかかり塗布作業が煩雑であった。
【0007】
また、特許文献1にあっては、剥離材料としてマスキングにテープを用いるため、テープを貼る手間がかかるばかりか、その位置決めが困難であり、特に、被貼着部材の表面の端部やテープが重なる部位に隙間が生じやすく、さらに、凹凸を有するタイル等の建材には密着させることが難しく、隙間が生じやすいという問題があった。
【0008】
また、特許文献2にあっては、絶縁を目的とするものであり、塗布材料を剥離することは考慮されていなかった。さらに、プリント基板に関するものであり被塗布部材の表面の端部に塗布することは意図されておらず、建材などの表面に凹凸を有するものへの適用は意図されていなかった。仮に、特許文献2に記載の突起を用いて塗布材料を被塗布部材の表面の端部に塗布するものに適用しようとしても、突起のエッジと被塗布部材の表面の端部のエッジの位置決めが必要となるから、被塗布部材の端部の塗布の作業は困難である。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、剥離用塗料を被塗布部材の所定の位置に簡単に塗布できる、特に被塗布部材としての建材の表面の端部に簡単に塗布することができる剥離塗料塗布用ノズル、当該ノズルを使用して剥離塗料を塗布した建材及び剥離塗料の塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は吐出部の吐出口から吐出される剥離塗料を被塗布部材の塗布面に塗布する剥離塗料塗布用ノズルであって、前記吐出部よりも前記剥離塗料が吐出される方向に延び、当該剥離塗料塗布用ノズルの移動をガイドするトレースガイド片を備えたことを特徴としている。
この特徴によれば、剥離用塗料を被塗布部材の所定の位置に簡単に塗布できる。
【0011】
さらに、前記トレースガイド片はその側部に凸部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、トレースを円滑に実現ができる。
【0012】
さらに、トレースガイド片は、該トレースガイド片の一部をカットして長さを調整するための切り込みを有することを特徴としている。
この特徴によれば、種々の厚さの被塗布部材に対応して用いることができる。
【0013】
さらに、前記剥離塗料が吐出される方向に対し傾斜して延び、前記吐出口から吐出された前記剥離塗料の膨出を規制する傾斜部を備えたことを特徴としている。
この特徴によれば、塗布した後に他の部材と干渉することを抑制しやすい。
【0014】
さらに、前記傾斜部に連なるとともに前記剥離塗料が吐出される方向に延び、前記剥離塗料の漏れを規制するシール部を備えたことを特徴としている。
この特徴によれば、被塗布部材の塗布領域外への剥離塗料の漏れを抑制することができる。
【0015】
さらに、前記剥離塗料が吐出される方向に伸び、その先端部により当該剥離塗料塗布用ノズルの移動をガイドする高さガイド片を有することを特徴としている。
この特徴によれば、塗布する剥離塗料の厚さの調節が容易である。
【0016】
さらに、前記高さガイド片とは前記吐出部を介して反対側に設けられる部位を有し、前記部位と前記高さガイド片と前記吐出部とによりブリッジ状の空間を形成することを特徴としている。
この特徴によれば、塗布する剥離塗料の厚さの調節がさらに容易である。
【0017】
さらに、前記吐出部から前記剥離塗料が吐出される方向とは交差する方向に延び、前記吐出された剥離塗料の厚さをならす後部ならし片が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、塗布した剥離塗料の厚さ調節がより確実になされる。
【0018】
さらに、建材は、前記剥離塗料塗布用ノズルを使用してその表面の端部に剥離塗料を塗布したことを特徴としている。
この特徴によれば、剥離用塗料が所定の位置に塗布された建材を提供することができる。
【0019】
さらに、剥離塗料の塗布方法は、剥離塗料塗布用ノズルを使用して、剥離塗料を被塗布部材の塗布面に塗布することを特徴としている。
この特徴によれば、剥離用塗料を所定の位置に簡単に塗布することができる。
【0020】
ここで、本発明における「剥離塗料」とは、塗布し乾燥後に、外力を加えることで剥がすことができる塗料を意味する。また「片」とは、ある部位から一方の方向に延びるもの例えばリブや突起を含むものである。また、「吐出」とは、剥離塗料を吐き出すものを意味し、その流量や流速の程度は問わない。また、「ガイド」とは、剥離塗料を塗布するときに剥離塗料塗布用ノズルを被塗布部材の特定の部位を基準として移動させることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は、実施例1における剥離塗料塗布具によりタイルに剥離塗料を塗布する状態を示す正面図であり、(b)は、同じく平面図である。
図2図1の剥離塗料塗布具の剥離塗料塗布用ノズルを示す斜視図である。
図3】(a)は、図1の剥離塗料塗布具の剥離塗料塗布用ノズルの正面図であり、(b)は、同じく底面図である。
図4図1の剥離塗料塗布具によりタイルに剥離塗料を塗布した状態を示す斜視図である。
図5図4におけるタイルのV−V線断面図である。
図6】実施例2における剥離塗料塗布用ノズルの高さガイド片を拡大して示す正面図である。
図7】(a)は、実施例3における剥離塗料塗布用ノズルの正面図であり、(b)は、同じく底面図である。
図8】(a)は、実施例4における剥離塗料塗布具によりタイルに剥離塗料を塗布する状態を示す正面図であり、(b)は、同じく平面図である。
図9】実施例4における剥離塗料塗布用ノズルの底面図である。
図10】実施例5における建材間への目地の施工説明する説明図である。
図11】実施例6における建材を積層した建材スタックの平面図である。
図12図11におけるXII−XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る剥離塗料塗布用ノズル、建材及び剥離塗料の塗布方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0023】
実施例1について、図1から図5を参照して説明する。
剥離塗料塗布具2は、剥離塗料5を内部に収容し、外力により変形して剥離塗料5を吐出可能な塗料容器3と、この塗料容器3に螺合により着脱可能に取り付けられる剥離塗料塗布用ノズル4(以下単にノズル4とも称す。)とから構成される。
【0024】
タイル1に剥離塗料5を塗布するには、後述するトレースガイド片4cをタイル1の側面1Bに当てた状態で、剥離塗料塗布具2を図1(b)の矢印Aの方向に移動させる。この移動の際に、塗料容器3を把持する力を加減することにより、塗料容器3から吐出された剥離塗料5がタイル1の表面1Aの端部1A1に塗布される。図4は、タイル1の表面1Aの4つの端部1A1に剥離塗料5が塗布されたものを示し、中央部1A2には剥離塗料が塗布されていない。
【0025】
図2図3を参照し、ノズル4について説明する。ノズル4は装着部4Aと塗布部4Bとが樹脂により一体成形により形成されたものである。装着部4Aの内周には、雌ネジが設けられ、塗料容器3の先端の雄ネジと螺合する。装着部4Aの内部は空洞であり、塗布部4Bの内部の空洞と連通しており、この空洞(図3の破線を参照。)は剥離塗料5の流路となる。
【0026】
塗布部4Bは、剥離塗料5を吐出口4a1から吐出する吐出部4a、コーナー膨張防止傾斜面4b(以下単に傾斜面4bとも称す。)、タイル等に当接してガイドするためのトレースガイド片4c、ならし片4g,4g、高さガイド片4hなどが一体に形成されたものである。
【0027】
本実施例の吐出口4a1は略矩形であり、その周りに「ロ」字状の平端面4a2が形成されている。傾斜面4bは平端面4a2から傾斜して連なっており、ならし片4g,4gは吐出口4a1を挟んで剥離塗料塗布具2の移動方向の前後に設けられ、各ならし片4gの吐出側面4g1は平端面4a2と同じ平面をなすように連なっている。さらに、高さガイド片4hの内側の面は平端面4a2に直交して連なっている。また、垂直面シール部4dが傾斜面4bから平端面4a2に直交する方向に延びて連なっている。
【0028】
トレースガイド片4cは、下方に延びる脚形状とされ、タイル1の側面1Bに当接して矢印A(図1(b))方向の移動をガイドするものであり、上部に垂直面シール部4dを有し、この垂直面シール部4dはタイル1の側面1Bに当接して剥離塗料5の側面1B側への漏れをシールする。
【0029】
また、トレースガイド片4cの中央部及び下部に接点ガイド凸部4e,4eが設けられている。各接点ガイド凸部4e,4eの頂部と垂直面シール部4dの垂直面とは、図3に示すように、剥離塗料5が吐出される方向に平行な仮想の面E上に位置する。
【0030】
トレースガイド片4cの中央部及び下部には高さ調整切り込み部4f,4f‥が複数設けられている。
【0031】
ならし片4g,4gは、吐出部4aの上部で塗布部4Bの主面から直交する二方向(図1(a)における紙面に直交する二方向)に延びるように形成されている。
【0032】
図2、3を参照し、吐出部1aを挟んで傾斜面4bとは反対側に、剥離塗料5が吐出される方向に延び、吐出部1aからの長さがHの高さガイド片4hが設けられている。
【0033】
次いで、剥離塗料5について説明する。
剥離塗料5は、水系エマルション樹脂塗料がハンドリング性から好ましい。その一例として、水系エマルション樹脂が75〜90wt%、レベリング剤が4.0wt%、消泡剤が0.2wt%、増粘剤が1.0wt%、顔料を主成分とする材料が4.8〜19.8wt%からなるものを表1に示す。なお、wt%は重量%を意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
水系エマルション樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン酢ビ共重合体、アクリル酸エステル、アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンワックス類、シリコーン、ウレタン、アクリル、アクリルウレタン等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。レベリング剤、消泡剤、増粘剤については特に限定されないが公知のものを用いることができる。
【0036】
顔料を主成分とする材料は、公知のものを用いることができる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ウレタン、アクリル、アクリルウレタン等を用いることができる。黒色顔料としては、例えば酸化鉄、カーボンブラック等を用いることができる。そして、顔料を主成分とする材料は、黒色顔料を用いる場合にはその割合は下限4.8wt%程度、白色顔料を用いる場合にはその割合は上限19.8wt%程度、その他の色の顔料はこれらの中間の割合とするとよい。
【0037】
以上のとおり、タイル1の表面1Aの端部1A1に剥離塗料5を塗布しマスキングとして使用するものであるから、マスキングテープを貼るという煩雑な作業が不要である。
【0038】
また、トレースガイド片4cを設けたから、タイル1の側面1Bにトレースさせてガイドすることで、タイル1の表面1Aの端部1A1に剥離塗料を簡単に塗布することができる。
【0039】
また、タイル1の側面1Bに接触させる凸部4e,4eは、その形状が凸であるから、矢印A方向(図1(b))へのトレースが円滑となる。
【0040】
また、トレースガイド片4cを、複数のうち適宜選択した切り込み部4fで切断することで、その長さを調整することができるので、タイル1の厚さが異なる場合にも対応することができる。
【0041】
また、高さガイド片4hの先端面4h1をタイル1の表面1Aに当接させて塗布するから、被塗布面に塗布された剥離塗料5の厚さを高さガイド片4hの厚さ(長さH)に簡単に形成することができる。
【0042】
さらに、高さガイド片4hによる高さ方向のガイドに加え、吐出部4aと、傾斜面4bと、高さガイド片4hとにより、ブリッジ状の空間である塗布量調整空間4i(図3(a))を形成するから、塗布される剥離塗料5の厚さを簡単に調整できる。また、傾斜面4bの上下方向の長さはHであるから、塗布された剥離塗料5の断面(剥離塗料塗布具2の移動方向に直交する断面)は、図5(a)で示すようになる。
【0043】
また、図3(a)における垂直面シール部4dを少し高くし、吐出部4aと、傾斜面4aと、高さガイド片4hと垂直面シール部4dの一部とにより、ブリッジ状の空間を形成してよい。この変形例では、塗布された剥離塗料5の断面は、図5(b)で示すようになる。
【0044】
また、傾斜面4bの更なる変形例として、その形状を曲面としてもよい。図5(c)は、傾斜面が曲面により形成された場合の、塗布された剥離塗料5の断面である。
【0045】
また、タイル1に設けられた剥離塗料5は、その厚さに関し外側が中央側よりも薄くなるテーパ(図5(a)〜(c))を形成した。このことから、目地材を注入する目地材注入具等が接触する可能性が少なく作業性がよく、また接触してもマスキング材が剥がれにくい。
【0046】
また、図5(a)で示す断面形状の剥離塗料5は、上述した作用効果に優れるとともに、タイル1の端面1B側への剥離塗料5の漏れることが少ないという点から好ましい。一方、図5(b)、(c)で示す断面形状の剥離塗料5は、図5(a)の剥離塗料5に比較して、端部に厚さがあるから、塗布の作業が容易である。また、図5(c)の剥離塗料5は、断面が曲面の外表面であるから、剥離時に応力が集中する点がなく剥離塗料5のテーパ部分の構造強度が比較的高く一体性を保持できるため剥離性に優れる。
【0047】
また、塗布方向の後方に位置するならし片4bにより、吐出された剥離塗料5のはみ出しを抑制することができる。なお、ならし片4g,4gを二方向に設けたから、塗布方向をいずれの方向(図1(b)における矢印Aとその反対方向)としてもはみ出し抑制の作用を奏する。
【0048】
また、剥離塗料5は塗料であるから、特に水系エマルションを主成分とする塗料であるから、塗布によりマスキングを形成することができ、マスキングテープに比較し、マスキングの作業が簡単であり、かつ、タイル1の表面1Aの端部1A1に隙間なく簡単に塗布することができる。また、塗布する際にはタイル表面に凹凸があっても隙間なく覆うことができ、マスキングテープに比較し、表面1Aに凹凸が存在するものであっても隙間が生じることが少ない。
【0049】
ここで、タイル1などの建材は、意匠性を高めるために表面に凹凸を施すこともあるが凹凸の高さは多くのものが0.1mm未満であり、ほとんどが0.5mm以上である。一方、塗布した塗料を乾燥した後に剥離するには、塗布時の厚さ(乾燥前の厚さ)が0.5mm以上、好ましくは1mm以上であると、剥離をするときに千切れたりすることが少なく剥離性が良好である。
【0050】
また、塗布時の厚さが厚すぎると均一に塗布することが難しく特に鉛直方向の塗布面に塗布すると垂れが発生しやすく、乾燥に時間がかかり、かつ、剥離塗料の無駄が多くなる。以上のことから塗布時の厚さは0.5mm以上3.0mm以下とするとよい。本発明の剥離塗料5は、材料や温度などにもよるが、塗布後、数分〜数時間で乾燥する。
【0051】
また、剥離塗料5を表1に示す割合とすると、様々な色、例えば黒、黄、赤、緑、青、白の色、若しくはこれらの中間色、または半透明のものを提供することができる。
【実施例2】
【0052】
実施例2について、図6を参照して説明する。実施例1とは高さガイド片4hの先端の形状が異なっている。なお、その他の構成は実施例1と同様であるからその説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、高さガイド片4hは、吐出部4a側の内面4h1、内面4h1から連なる先端の曲面4h2、曲面4h2から連なる斜面4h3、斜面4h3から連なる外面4h4を有する。
【0054】
高さガイド片4hを先細り形状としその先端を曲面4h2としたので、剥離塗料塗布具2により剥離塗料5を塗布する際に、タイル1の表面1Aを円滑に摺動させることができる。
【実施例3】
【0055】
実施例3について、図7を参照して説明する。実施例1において一方のならし片4gに替えて、第2の高さガイド片4jを追加したものである。なお、その他の構成は実施例1と同様であるからその説明を省略する。
【0056】
図7に示すように、後部ならし片4gとは反対側で、傾斜面4bの近傍に第2の高さガイド片4jを設けた。第2の高さガイド片4jの高さHは高さガイド片4hの高さHと同じである。また、第2の高さガイド片4jは先端が曲面4j1で形成されている。
【0057】
このように、吐出部4aを挟んで一対の高さガイド片4hと第2の高さガイド片4jとにより、高さ方向が規制されるから、剥離塗料5を塗布する際の厚さの調整が容易となる。
【0058】
なお、高さをガイドする部材は少なくとも1つあればよいから、高さガイド片4hに代えて、第2の高さガイド片4jのみとしてもよい。
【実施例4】
【0059】
実施例4について、図8、9を参照して説明する。実施例1とは異なり、トレースガイドを行う治具6を用いるものである。なお、同じ符号を付したものの構成は実施例1と同様であるからその説明を省略する。
【0060】
図8、9を参照し、ノズル4の平面及び底面から見た外形は塗料容器3よりも大きく構成されている。斜面部4bの上方でかつ塗料容器3の軸方向に直交し、かつ開口4a1と直交する方向に延びるトレースガイド片4kが形成されている。ガイド治具6は、把持部6aとガイド部6bとから構成されている。
【0061】
剥離塗料5を塗布するには、タイル1の側面1Bにガイド部6bのガイド面6cを当接させる。その後、ガイド面6cにトレースガイド片4kのガイド面4mを当接させる。この状態で、剥離塗料塗布具2をタイル1の側面1Bに沿った方向(図1(b)の矢印Aの方向)に移動させて剥離塗料5を塗布することができる。
【実施例5】
【0062】
実施例5について、図10を参照して説明する。実施例5は、実施例1の剥離塗料塗布具2により剥離塗料5が塗布されたタイル1,1の間に目地を施す状態を説明するものである。なお、同じ符号を付したものの構成は実施例1と同様であるからその説明を省略する。
【0063】
図10を参照し、目地材注入具7の本体底部のピストンを押すことにより、ノズル先端から目地材8が吐出され、タイル1,1間の隙間に目地材8が注入される。
【0064】
ここで、剥離塗料5の組成を表1に示すものとしたから顔料の種類、割合を変えることで、種々の色の剥離塗料5を用意することができる。なお、乾燥前後において剥離塗料5の色はほぼ同じである。
【0065】
乾燥後の剥離塗料5の色をタイル1の表面1Aの色と異なるものとすると、マスキング材となる剥離塗料5とタイル1の表面1Aとの境界が明瞭となる。その結果、目地材8を注入する作業者は、タイル1の表面1Aに目地材8が付着することを抑制することが容易となる。加えて、剥離塗料5と目地材8との色も異なるものとすると、目地材8の注入時に剥離塗料5側への目地材8の漏れ量の把握が容易となり、タイル1の表面1Aに目地材8が付着することを抑制することが容易となる。
【0066】
なお、「異なる色」については、作業者が容易に異なると判断できる程度の色であればよく、マンセル表色系における色相、明度、彩度の少なくとも一つが所定値以上異なる値であればよい。
【実施例6】
【0067】
実施例6について、図11、12を参照して説明する。実施例6は、実施例1の剥離塗料塗布具2により剥離塗料5が塗布されたタイル1を積み重ねたスタックを説明するものである。なお、同じ符号を付したものの構成は実施例1と同様であるからその説明を省略する。
【0068】
図11、12を参照して、剥離塗料5が塗布されたタイル1の表面1Aの端部1A1には、剥離塗料5が塗布されており、また、剥離塗料5が塗布されていない中央部1A2には厚さt9のスペーサ9が設けられている。スペーサ9の厚さt9は剥離塗料5の厚さt5よりも厚い(t9>t5)。
【0069】
このことから、タイル1を積層しても剥離塗料5が上方のタイル1の裏面などに接触することがない。したがって、タイル1に剥離塗料5を塗った後に重ねて乾燥させることができ、作業空間を有効に活用できる。また、重ねた状態で輸送しても、剥離塗料5が傷付くことや剥離することを防止できる。なお、スペーサ9は、剥離塗料が5塗布されない箇所に設ければよく、必ずしもその位置は中央部1A2に限られるものではない。
【0070】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0071】
例えば、前記実施例では、被塗布部材としてタイルである場合について説明したが、例えば床材などの建材、車両のドアなどに適用することが可能であり、被塗布部材の対象は問わない。また、剥離塗料をマスキングに用いる例について説明したが必ずしもマスキングに用いるものに限らない。
【0072】
また、吐出口4a1を矩形としたので、ノズル4の幅方向に均等に剥離塗料5を吐出させることが可能となり、膜厚を均一に調整しやすくなる。なお、幅方向に均等に剥離塗料5を吐出させるために、複数の吐出口を列に沿って並べて配置するものであってもよい。
【0073】
また、傾斜面4bが吐出部4aの平端面4a2から連なって形成される例について説明したが、傾斜面4bは、最終的に塗布された剥離塗料5の外側の厚さが薄くできればよい(図5)から、傾斜面4bを設ける位置は平端面4a2に連なる以外の位置、例えば、後部ならし片4gに連なる位置としてもよい。
【0074】
また、塗料容器3にノズル4を着脱可能に取り付けた例について説明したが、塗料容器3とノズル4とが一体成形されたものであってもよい。この場合は、塗料容器3の底部に剥離塗料の挿入口を設けるとよい。
【0075】
また、ノズル4を取り付けた剥離塗料塗布具2を作業者が使用する例について説明したが、ノズル4を塗料塗布装置に組み込んで使用することも可能である。
【0076】
また、実施例1〜3では、トレースガイド片4cは脚形状のものについて説明したが、垂直面シール部4dから下方の部位を省略してもよい。この場合、垂直面シール部4dのみがトレース用のガイドである。
【符号の説明】
【0077】
1 タイル(被塗布部材)
1A 表面
1A1 端部
1A2 中央部
2 剥離塗料塗布具
3 塗料容器
4 剥離塗料塗布用ノズル
4a 吐出部
4a1 吐出口
4a2 平坦面
4b 傾斜面(傾斜部)
4c トレースガイド片
4d 垂直面シール部(トレースガイド片、シール部)
4e 接点ガイド凸部(凸部)
4f 高さ調整切り込み部(切り込み)
4g ならし片
4h 高さガイド片
4i 塗布量調整空間(ブリッジ状の空間)
4j 第2の高さガイド片
4k トレースガイド片
5 剥離塗料
6 ガイド治具
8 目地材
9 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12