特開2015-231619(P2015-231619A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2015-231619フィルター及び当該フィルターを用いた芳香族ポリカーボネートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231619(P2015-231619A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】フィルター及び当該フィルターを用いた芳香族ポリカーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/02 20060101AFI20151201BHJP
   C08G 64/40 20060101ALI20151201BHJP
   C08G 64/04 20060101ALI20151201BHJP
   B01D 39/10 20060101ALI20151201BHJP
   B01D 29/39 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   B01D35/02 L
   C08G64/40
   C08G64/04
   B01D39/10
   B01D29/34 520C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-96732(P2015-96732)
(22)【出願日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-99968(P2014-99968)
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安達 孝
【テーマコード(参考)】
4D019
4D064
4J029
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA02
4D019BB01
4D019BD01
4D019CA05
4D019CB04
4D064AA27
4D064BP02
4D064BP03
4J029AA10
4J029AB05
4J029AC01
4J029AE01
4J029AE03
4J029AE04
4J029AE05
4J029BB13A
4J029HA01
4J029HC05A
4J029HC05B
4J029KE05
4J029KH03
4J029LB04
4J029LB05
4J029LB10
(57)【要約】
【課題】着色が少なく、表面におけるフィッシュアイの発生を効果的に低減化した成形体を製造可能なフィルターを提供し、前記フィルターを用いることにより、着色が少なく、成形体表面のフィッシュアイの発生を効果的に低減化可能な芳香族ポリカーボネートを製造する。
【解決手段】芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出される芳香族ポリカーボネートを固化する押出成形工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法において用いられるフィルターであって、
空隙率が、40%以上70%以下であり、
絶対濾過精度が、5μm以上55μm以下であり、
ステンレス繊維からなるリーフディスク型である、
フィルター。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出される芳香族ポリカーボネートを固化する押出成形工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法において用いられるフィルターであって、
空隙率が、40%以上70%以下であり、
絶対濾過精度が、5μm以上55μm以下であり、
ステンレス繊維からなるリーフディスク型である、
フィルター。
【請求項2】
前記空隙率が、60%以上68%以下である、請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
前記絶対濾過精度が、25μm以上35μm以下である、請求項1又は2に記載のフィルター。
【請求項4】
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出された芳香族ポリカーボネートを固化する押出工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法であって、
前記フィルターが請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルターであり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの単位濾過面積当たりの処理量が、50kg/h/m2以上350kg/h/m2以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、255℃以上350℃以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量が、20000g/mol以上40000g/mol以下である、
芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記単位濾過面積当たりの処理量が、100kg/h/m2以上320kg/h/m2以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、260℃以上340℃以下である、
請求項4に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【請求項6】
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出された芳香族ポリカーボネートを固化する押出工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法であって、
前記フィルターが請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルターであり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの単位濾過面積当たりの処理量が、50kg/h/m2以上350kg/h/m2以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、255℃以上350℃以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量が、20000g/mol以上40000g/mol以下であり、
前記フィルターで濾過処理される前と濾過処理された後における前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、長径200μm以上のフィッシュアイ削減率が70%以上である、
芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記単位濾過面積当たりの処理量が、100kg/h/m2以上320kg/h/m2以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、260℃以上340℃以下であり、
前記フィルターで濾過処理される前と濾過処理された後における前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、前記長径200μm以上のフィッシュアイ削減率が90%以上である、請求項6に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記フィルターにより濾過処理された前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、長径500μm以上のフィッシュアイが2個/g以下であり、
前記フィルターにより濾過処理された前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、長径200〜500μmのフィッシュアイが10個/g以下である、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【請求項9】
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出される芳香族ポリカーボネートを固化する押出成形工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する
芳香族ポリカーボネートの製造における
空隙率が、40%以上70%以下であり、
絶対濾過精度が、5μm以上55μm以下であり、
ステンレス繊維からなるリーフディスク型である、
フィルターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター及び当該フィルターを用いた芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、透明性等に優れたエンジニアリングプラスチックとして、多くの分野において幅広く用いられている。
芳香族ポリカーボネートの代表的な用途としては、例えば、薄物フィルム、波板及び平板シート、飲料用ボトル等が挙げられる。
【0003】
上記各種用途においては、着色や異物が少ない等、外観の良好な芳香族ポリカーボネートが望まれる。
そこで、従来から、外観不良の原因となる原料中に含まれる異物や、得られた芳香族ポリカーボネート中に含まれる異物やゲルを除去する方法が提案されている。
例えば、(1)芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応させた後、ステンレス製フィルターで濾過することによって異物の少ない芳香族ポリカーボネートを製造する方法や、(2)芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの溶融混合物の微小異物を除去するため、フッ素系樹脂製のフィルターを用いる方法が提案されている。
しかしながら、前記(1)の方法は、フィルター目詰まりが頻繁に発生するという問題があり、前記(2)の方法は、溶融混合物の温度を、工業的生産規模の一般的な製造条件である170℃以上に上げられないという欠点や、微量の酸性物質がフィルターから溶出するため、その後の重合反応に悪影響を与えてしまう等の欠点を有している。
さらに、これらの方法においては、得られた芳香族ポリカーボネート中の異物やゲルを完全に除去することはできず、薄物フィルム、波板及び平板シート、飲料用ボトルといった用途において、異物やゲルがそれらを核としたフィッシュアイとして表面に観測されるため、これらの外観の改善が求められている。
【0004】
上記要求に鑑み、従来から、得られた芳香族ポリカーボネート中の異物やゲルを除去する各種方法が提案されている。
例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを触媒の存在下でエステル交換反応させた後、添加剤を添加し、その後フィルターで濾過して異物を除去する方法(例えば、特許文献1参照。)や、捕集効率95%以上の粒子径が20μm以下である濾過精度のフィルターを用い、20kg/cm2以上の差圧、50kg/h/m2以上の処理量で芳香族ポリカーボネートを溶融状態で濾過する方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
特許文献1には、粘度平均分子量が10000〜18000g/molの芳香族ポリカーボネートを、絶対濾過精度が好ましくは0.5μm〜50μm、より好ましくは0.5μm〜20μmであるリーフディスク型ポリマーフィルターで濾過し、異物除去する方法が記載されている。
特許文献2には、捕集効率95%以上の粒子径が5μm又は20μmのフィルターを用いて、粘度平均分子量15200g/molの芳香族ポリカーボネートから異物を除去する方法が記載されている。
【0005】
特許文献1又は2に記載の粘度平均分子量が18000g/mol以下の芳香族ポリカーボネートは、いずれも、一般的にCD−R、DVD等の光学記録媒体に用いられる、いわゆる光学用途向けグレードの芳香族ポリカーボネートである。
これらの特許文献1、2には、前記光学用途向けグレードにおける芳香族ポリカーボネート中の異物及び/又はゲルの除去方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−240667号公報
【特許文献2】特開2000−219737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、薄物フィルム、波板及び平板シート、飲料用ボトル用途向けの芳香族ポリカーボネートは、上述したような光学用途向けグレードにおける芳香族ポリカーボネートと比較して、分子量が2倍以上のものが用いられているため、光学用途向けグレードにおける芳香族ポリカーボネートに対応した異物及び/又はゲルの除去方法では、必ずしも充分な効果が得られないという問題がある。これは、一般的に、同一溶融温度、同一処理量において、分子量が高くなれば、溶融状態における粘度も高くなり、フィルターの差圧も高くなるためである。
例えば、特許文献1には、ポリマーフィルターの不活性ガス処理により透明異物数を低減させるためには、ポリカーボネートの粘度平均分子量が18000以下、好ましくは17000以下であることが最も好ましいと記載されており、さらには、この範囲を超える分子量域では、溶融重合に特有の架橋化反応が関与し始め、透明異物数は桁違いに増加することになる、と記載されている。
特許文献2には、フィルター差圧の上限は150〜200kg/cm2との記載がなされている。また、特許文献2の実施例には、光学用途向けグレードの芳香族ポリカーボネートにおいて、フィルターの差圧が145kg/cm2となっている例もあり、光学用途向けグレードにおける芳香族ポリカーボネートに対応した異物及び/又はゲルの除去方法は、薄物フィルムや波板及び平板シートや飲料用ボトル用途の芳香族ポリカーボネートの異物及び/又はゲルの除去方法として、十分な効果が得られていないのが現状である。
【0008】
薄物フィルム、波板及び平板シート、飲料用ボトルといった成形体に特有の異物として、フィッシュアイが挙げられる。
前記フィッシュアイとは、数十μm〜数mmの大きさを有する、成形体の表面に存在する魚の目状の異物である。
芳香族ポリカーボネートの架橋物であるゲルが、架橋構造を有しない大部分の芳香族ポリカーボネートと混然一体となることができず、成形体表面に残ってしまうことによりフィッシュアイが生成する。
ゲルを核としたフィッシュアイが成形体に数多く存在すると、その成形体は外観不良となり市場に受け入れられない可能性が高い。
上述したように、薄物フィルム、波板及び平板シート、飲料用ボトルといった、各種薄物成形体向けの芳香族ポリカーボネートにおいては、製造系内発生異物であるゲルや成形体表面異物であるゲルを核としたフィッシュアイを効果的に除去する方法は、未だ存在していないのが現状である。
【0009】
そこで、本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、着色が少なく、表面におけるゲルを核としたフィッシュアイを効果的に低減化した成形体を製造可能なフィルター、及び当該フィルターを用いた芳香族ポリカーボネートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したような薄物成形体表面のフィッシュアイを低減化するためには、その核となっているゲルを除去することが必要である。
本発明者らが検討を重ねたところ、外観不良となるフィッシュアイは、長径200μm以上の大きさを有しており、特に長径500μm以上のフィッシュアイが数個観測されると、殆どの場合において外観不良と判断されること、また、これら長径200μm以上のフィッシュアイの核となっているゲルは、長径100μm以上の大きさを有していることを見出した。
また、特許文献2に記載されているように、ゲルは芳香族ポリカーボネートの良溶媒である塩化メチレンに溶解しないが、本発明者らの検討によると、ゲルは剛性が非常に低いため、前記特許文献1又は2に記載されているようなフィルターでは確実な分離捕集をすることができず、形状を変えてフィルターをすり抜け、溶融状態の芳香族ポリカーボネート中に残留し続けてしまうことが分かった。
そして更なる検討により、特定のフィルターを用いた場合には、フィルターを通過したゲルがより小さいゲルに磨り潰され細分化されることも見出した。
【0011】
本発明者は、フィッシュアイが成形体の外観上の不良であることに着目し、ポリマー中にゲルが存在し、成形時にフィッシュアイとなったとしても、前記フィッシュアイの大きさが小さく、目視で認識されなければ外観不良にはならないことに想到した。
具体的には、長径100μm以上のゲルをフィルター濾過処理により長径100μm未満の大きさに磨り潰し細分化すれば、ゲルが分離捕集されずにポリマー中に多数残留しても、長径200μm以上のフィッシュアイが発生しないため、外観不良にならないと発想するに至り、本発明の端緒とした。
さらに検討を重ねたところ、このようなゲル粉砕効果を発現させるには、フィルターの空隙率が重要であることを見出した。
さらにまた、フィルターの絶対濾過精度や材質、フィルター形状も重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0012】
〔1〕
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出される芳香族ポリカーボネートを固化する押出成形工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法において用いられるフィルターであって、
空隙率が、40%以上70%以下であり、
絶対濾過精度が、5μm以上55μm以下であり、
ステンレス繊維からなるリーフディスク型である、
フィルター。
〔2〕
前記空隙率が、60%以上68%以下である、前記〔1〕に記載のフィルター。
〔3〕
前記絶対濾過精度が、25μm以上35μm以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のフィルター。
〔4〕
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出された芳香族ポリカーボネートを固化する押出工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法であって、
前記フィルターが請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルターであり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの単位濾過面積当たりの処理量が、50kg/h/m2以上350kg/h/m2以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、255℃以上350℃以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量が、20000g/mol以上40000g/mol以下である、
芳香族ポリカーボネートの製造方法。
〔5〕
前記単位濾過面積当たりの処理量が、100kg/h/m2以上320kg/h/m2以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、260℃以上340℃以下である、
前記〔4〕に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
〔6〕
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出された芳香族ポリカーボネートを固化する押出工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法であって、
前記フィルターが前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のフィルターであり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの単位濾過面積当たりの処理量が、50kg/h/m2以上350kg/h/m2以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、255℃以上350℃以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量が、20000g/mol以上40000g/mol以下であり、
前記フィルターで濾過処理される前と濾過処理された後における前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、長径200μm以上のフィッシュアイ削減率が70%以上である、
芳香族ポリカーボネートの製造方法。
〔7〕
前記単位濾過面積当たりの処理量が、100kg/h/m2以上320kg/h/m2以下であり、
前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、260℃以上340℃以下であり、
前記フィルターで濾過処理される前と濾過処理された後における前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、前記長径200μm以上のフィッシュアイ削減率が90%以上である、前記〔6〕に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
〔8〕
前記フィルターにより濾過処理された前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、長径500μm以上のフィッシュアイが2個/g以下であり、
前記フィルターにより濾過処理された前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、長径200〜500μmのフィッシュアイが10個/g以下である、前記〔4〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
〔9〕
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出される芳香族ポリカーボネートを固化する押出成形工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する
芳香族ポリカーボネートの製造における
空隙率が、40%以上70%以下であり、
絶対濾過精度が、5μm以上55μm以下であり、
ステンレス繊維からなるリーフディスク型である、
フィルターの使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、着色が少なく、表面におけるフィッシュアイの発生を効果的に低減化した成形体を製造可能なフィルターを提供でき、前記フィルターを用いることにより、着色が少なく、成形体表面のフィッシュアイの発生を効果的に低減化可能な芳香族ポリカーボネートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0015】
〔フィルター〕
本実施形態のフィルターは、
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出される芳香族ポリカーボネートを固化する押出成形工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法において用いられるフィルターである。
本実施形態のフィルターは、下記(1)〜(3)の条件を満たしている。
(1)空隙率が、40%以上70%以下である。
(2)絶対濾過精度が、5μm以上55μm以下である。
(3)ステンレス繊維からなるリーフディスク型である。
【0016】
本実施形態のフィルターは、芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、前記重合反応工程から溶融状態で送り出される芳香族ポリカーボネートを固化する押出成形工程との間に行われる、濾過処理を行う押出濾過工程で使用されるフィルターである。
【0017】
〔芳香族ポリカーボネートの製造方法〕
本実施形態における芳香族ポリカーボネートの製造方法においては、上記本実施形態のフィルターを用いて前記押出濾過工程を実施する。
すなわち、本実施形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法は、
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程と、
前記重合反応工程から溶融状態で送り出された芳香族ポリカーボネートを固化する押出工程との間に、
少なくとも1つのフィルターにより濾過処理する押出濾過工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法であり、
前記フィルターとして、本実施形態のフィルターを用いる。
また、下記(I)〜(IV)の条件を満たすものとする。
(I)前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの単位濾過面積当たりの処理量が、50kg/h/m2以上350kg/h/m2以下である。
(II)前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度が、255℃以上350℃以下である。
(III)前記フィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量が、20000g/mol以上40000g/mol以下である。
本実施形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法によれば、前記フィルターで濾過処理される前と濾過処理された後における前記芳香族ポリカーボネートの成形体表面における、長径200μm以上のフィッシュアイ削減率を70%以上とすることが可能である。
【0018】
(重合反応工程)
芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する重合反応工程においては、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネートとを、所定の重合反応装置を用いて、エステル交換反応させることにより重合する。
【0019】
<芳香族ジヒドロキシ化合物>
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、従来公知のものが用いられ、特に限定されるものではなく、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、代表的なものとしてビスフェノールAが挙げられる。
また、これら芳香族ジヒドロキシ化合物を用いた芳香族ポリカーボネートを製造する装置の腐食防止等の観点、及び、製造された芳香族ポリカーボネートを最終製品形態とする際に用いられる装置の腐食防止等の観点から、前記芳香族ジヒドロキシ化合物は、塩素原子とアルカリ又はアルカリ土類金属の含有量が少ない方が好ましく、実質的に含有していない(10ppb以下)ことが好ましい。
【0020】
<ジアリールカーボネート>
ジアリールカーボネートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、非置換のジフェニルカーボネート、並びに、ジトリルカーボネート及びジ−t−ブチルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェニルカーボネート等の対象型ジアリールカーボネートが好ましく用いられる。
これらのジアリールカーボネート類は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、これらジアリールカーボネートを用いた芳香族ポリカーボネートを製造する装置の腐食防止等の観点、及び製造された芳香族ポリカーボネートを最終製品形態とする際に用いられる装置の腐食防止等の観点から、前記ジアリールカーボネートは、塩素原子とアルカリ又はアルカリ土類金属の含有量が少ない方が好ましく、実質的に含有していない(10ppb以下)ことが好ましい。
【0021】
<使用割合>
前記芳香族ジヒドロキシ化合物と前記ジアリールカーボネートとの使用割合(重合反応工程における仕込比率)は、用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートの種類や、目標とする芳香族ポリカーボネートの分子量や水酸基末端比率、重合条件等によって異なり、特に限定されない。
前記ジアリールカーボネートは、前記芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、熱安定性の良い芳香族ポリカーボネートを高重合反応性で製造する観点から、好ましくは0.9〜2.5モル、より好ましくは0.95〜2.0モル、さらに好ましくは0.98〜1.5モルの割合で用いられる。
【0022】
<多官能化合物>
芳香族ポリカーボネートの重合反応工程においては、芳香族ポリカーボネートに分岐構造を導入するために、多官能化合物を併用してもよい。
多官能化合物としては、例えば、3価の芳香族トリヒドロキシ化合物等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネートの分岐ポリマーを製造する場合、前記3価の芳香族トリヒドロキシ化合物等の多官能化合物の使用量は、成形体に要求される強度と流動性とを共に良好なものとする観点から、前記芳香族ジヒドロキシ化合物100モル%に対して、0.2〜1.0モル%が好ましく、0.2〜0.9モル%がより好ましく、0.3〜0.8モル%がさらに好ましい。
【0023】
<重合触媒>
エステル交換反応による芳香族ポリカーボネートの重合は、重合触媒を加えずに実施することができるが、重合速度を高めるため、必要に応じて重合触媒の存在下で行ってもよい。
重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、国際公開2005−121213号公報の第0068段落に提示されている化合物が挙げられる。
これらの重合触媒は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱安定性が良く着色の少ない芳香族ポリカーボネートを高重合反応性で製造する観点から、重合触媒としては、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩類、アンモニウムヒドロオキシド類等の含窒素化合物、ホウ素化合物が好ましく用いられる。
芳香族ポリカーボネートを製造する場合の重合触媒の使用量は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物100質量部に対して、10-8〜1質量部が好ましく、より好ましくは10-7〜10-1質量部である。
【0024】
<重合反応器>
芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとをエステル交換反応させて芳香族ポリカーボネートを重合する際に用いられる重合反応器としては、芳香族ポリカーボネートを溶融状態で重合する際に用いられる重合反応器として一般的に用いられているものを何れも用いることができ、特に限定されるものではない。
例えば、撹拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型撹拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付多孔板型反応器等が挙げられる。
これらの重合反応器の材質は、特に限定されるものではないが、鉄を20%以上含む材質が好ましく、特にSUS304、SUS316、SUS316Lが好ましく用いられる。
また、芳香族ポリカーボネートの着色を防止する観点から、鉄含有量が20%以下の材質を用いてもよく、ニッケルやチタン等の非鉄材料を用いてもよい。
重合反応器が複数ある場合、フィルター処理によるゲルの削減及び磨り潰しの効果を最大限に得る観点から、最も下流にある重合反応器より下流、かつ後述する重合反応工程から溶融状態で送り出された芳香族ポリカーボネートを固化する押出成形工程の上流に、後述するフィルターを用いた押出濾過工程を設ける形態とすることが好ましい。
重合反応工程のプロセスは、バッチ式、連続式いずれの方法でもよく、後述するフィルターによる濾過工程に移行することができれば、いずれの方式であってもよい。
【0025】
<反応温度、反応圧力、反応時間>
重合反応工程での反応温度は、100〜350℃の範囲とすることが好ましく、芳香族ポリカーボネートの着色を防ぐ観点から、より好ましくは150〜290℃の範囲とし、さらに好ましくは180〜280℃の範囲とする。
重合反応工程においては、重合反応の進行に伴って、芳香族モノヒドロキシ化合物が副生する。
芳香族ジヒドロキシ化合物にビスフェノールAを、ジアリールカーボネートにジフェニルカーボネートを用いた場合は、芳香族モノヒドロキシ化合物として、フェノールが生成する。
前記芳香族モノヒドロキシ化合物を重合反応系外へ除去することによって、重合反応速度が高められる。
従って、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガス等、反応に悪影響を及ぼさない不活性ガスを導入して、生成してくる芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらのガスに同伴させて除去する方法や、減圧下で反応を行う方法等が好ましく用いられる。
好ましい反応圧力は、目的とする芳香族ポリカーボネートの分子量によっても異なり、重合初期には、10Torr〜常圧の範囲が好ましい。重合後期には、20Torr以下が好ましく、10Torr以下がより好ましく、2Torr以下がさらに好ましい。
重合反応工程における反応温度や反応圧力(減圧度)、反応時間(重合反応器内の滞留時間)等を変更することにより、分子量が異なる芳香族ポリカーボネートを製造できる。
【0026】
<末端調節剤>
また、重合反応工程に、前述の芳香族ジヒドロキシ化合物や、水酸基末端の芳香族ポリカーボネートプレポリマー(低重合度芳香族ポリカーボネート)、前述のジアリールカーボネート類や、アリールカーボネート末端の芳香族ポリカーボネートプレポリマー、t−ブチルフェノールやt−オクチルフェノール等の単官能置換フェノール類等、公知の末端調節剤を添加することで、水酸基末端比率や末端構造の異なる芳香族ポリカーボネートを製造することができる。
【0027】
<触媒失活剤>
芳香族ポリカーボネートには、触媒失活剤を添加してもよい。
触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤をいずれも用いることができるが、特に、熱安定性が良く、着色の少ない芳香族ポリカーボネートを製造する観点から、スルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の上記塩類がより好ましい。
また、触媒失活剤として、スルホン酸のエステルも用いることができ、当該スルホン酸のエステルとしては、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が挙げられる。特に、熱安定性が良く、着色の少ない芳香族ポリカーボネートを製造する観点から、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が、好ましく用いられる。
前記重合触媒にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を用いた場合、触媒失活剤の量は、前記重合触媒1モルあたり0.5〜50モルの割合とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜10モルの割合とし、さらに好ましくは0.8〜5モルの割合とする。
【0028】
<添加剤>
前記芳香族ポリカーボネートには、ABSやPET等の、芳香族ポリカーボネート以外の樹脂や、各種安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、染顔料、難燃剤等の添加剤等を添加することができる。これにより、さまざまな用途に適合させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。
さらに、これらを組み合わせることで、多様な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造できる。
当該添加剤としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、染料及び顔料の他、金属不活性化剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤等が挙げられる。
耐熱安定剤や酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、燐化合物、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等が挙げられる。
光安定剤や紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いることができ、以下に限定されるものではないが、例えば、パラフィン類などの炭化水素系離型剤、ステアリン酸等の脂肪族酸系離型剤、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド系離型剤、ステアリルアルコール、ペンタエリスリトール等のアルコール系離型剤、グリセンモノステアレート等の脂肪族エステル系離型剤、シリコーンオイル等のシリコーン系離型剤が挙げられる。
染料及び顔料としては、有機系や無機系の公知の染料及び顔料を用いることができる。その他にも、金属不活性化剤、帯電防止剤、滑剤、造滑剤等については、目的に応じて、これらの特性を発揮する公知の材料を用いることができる。これらは、いずれも1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
<触媒失活剤、添加剤の添加位置>
前記触媒失活剤及び/又は添加剤は、重合反応工程で添加してもよく、後述する重合反応工程から溶融状態で送り出される芳香族ポリカーボネートを押し出し濾過処理する押出濾過工程で添加してもよい。
【0030】
(押出濾過工程)
本実施形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法においては、上述した芳香族ポリカーボネートを重合する重合反応工程から、溶融状態で送り出された芳香族ポリカーボネートを、溶融状態で押し出し濾過処理する押出濾過工程を実施する。
当該押出濾過工程においては、重合された芳香族ポリカーボネートを後述する混練装置を用いて混練するものとし、必要に応じて所定の混練装置を用いて触媒失活剤及び/又は添加剤を添加し混練した後、本実施形態のフィルターで濾過処理する。
【0031】
<混練装置>
必要に応じて触媒失活剤及び/又は添加剤と溶融状態の芳香族ポリカーボネートを混練する装置は、以下に限定されるものではないが、例えば、静的ミキサー(スタティックミキサー)、攪拌機を有する動的ミキサー、単軸及び/又は二軸押出機が挙げられる。
熱安定性が良く、着色の少ない芳香族ポリカーボネートを製造する観点から、滞留時間の短い単軸押出機が好ましく、異物の少ない芳香族ポリカーボネートを製造する観点から、滞留部のない攪拌機を有する動的ミキサーが好ましく、さらにセルフクリーニング性を有している二軸押出機がより好ましい。
【0032】
<添加状態と添加方法>
触媒失活剤及び/又は添加剤の添加方法は、以下に限定されるものではないが、例えば、溶融状態の芳香族ポリカーボネートに常温時の状態で直接添加する方法、常温固体のものを融点以上に加熱し溶融状態で添加する方法、所定の溶剤を用いて溶液状態で添加する方法、マスターバッチペレットとして添加する方法等が挙げられる。
【0033】
触媒失活剤及び/又は添加剤を、溶融状態又は溶液状態で添加する場合、混練装置への供給装置として、プランジャーポンプ等の定量ポンプが好ましく用いられる。
触媒失活剤及び/又は添加剤を供給する配管に、前記混練装置から溶融状態の芳香族ポリカーボネートが逆流することを防止するため、混練装置における触媒失活剤及び/又は添加剤供給部は、逆止機能を有する注入弁が設置されているのが一般的であるが、複数の供給部が合流し注入弁に繋げられている場合、前記定量ポンプと混練装置との間の配管中に逆止弁を設置することが好ましい。
また、定量ポンプと混練装置の間に、ベーンポンプなどの強制注入装置を設置してもよい。
触媒失活剤及び/又は添加剤を供給する配管は、保温されている状態とすることが好ましい。
触媒失活剤及び/又は添加剤を溶融状態で供給する場合は、それらの融点或いは融点以上かつそれらが変質しない温度以下に制御することが好ましく、触媒失活剤及び/又は添加剤を所定の溶剤を用いて溶液状態で供給する場合は、溶液の融点或いは融点以上、又は触媒失活剤及び/又は添加剤が析出しない温度以上かつそれらが変質しない温度以下に制御することが好ましい。
溶融状態の芳香族ポリカーボネートの軟化温度が前記温度範囲内に入っている場合は、供給配管に溶融状態の芳香族ポリカーボネートが逆流しても溶融状態が維持され、芳香族ポリカーボネートの固化が防止される。
これら供給配管は、混練装置に向かって下り勾配で設けられていることが好ましい。
触媒失活剤及び/又は添加剤を固体状態或いはマスターバッチペレットで混練装置に供給する場合は、サイドフィーダー等が一般に用いられる。
触媒失活剤及び/又は添加剤を溶液状態で供給する場合は、ベント付二軸押出機が特に好ましく用いられる。
【0034】
<触媒失活剤及び/又は添加剤の混練装置への供給位置>
触媒失活剤及び/又は添加剤の混練装置への供給位置は、混練装置が二軸押出機であった場合、スクリュー混練部又はそれより上流側であることが好ましい。
溶融状態の芳香族ポリカーボネートが、二軸押出機に過充填された場合、溶融状態の芳香族ポリカーボネートが二軸押出機のスクリューモーター側に逆流し、そこで滞留し、異物発生源となるおそれがあるため、溶融状態の芳香族ポリカーボネート供給配管の二軸押出機入口に圧力計を設置し、供給圧力が過剰にならないよう注意する運転管理が有効である。供給圧力は、大気圧以上かつ0.2MPaゲージ圧以下が好ましい。
【0035】
<フィルターの設置位置>
押出濾過工程においては、本実施形態のフィルターを用いて溶融状態の芳香族ポリカーボネートの濾過処理を行う。
本実施形態のフィルターは、本発明の目的以外にも、剛性を有する固形異物を分離捕集するというフィルター本来の機能も有しているため、前記混練装置の下流に設置することが好ましく、さらには、後述する押出成形工程の上流にも設置することが好ましい。
フィルター自身の圧力損失、及び後述する押出成形工程において用いられる配管や装置の圧力損失に打ち勝って溶融状態の芳香族ポリカーボネートを下流へと移送する観点から、混練装置とフィルターとの間には、必要に応じてギアポンプなどの強制移送装置を設置してもよい。
【0036】
<フィルターの空隙率>
本実施形態のフィルターは、空隙率が40%以上70%以下である。
「空隙率」とは、フィルター濾過層の全体積に占める、濾過層中の空間体積の割合を意味する。
本実施形態のフィルターの空隙率は、溶融状態の芳香族ポリカーボネート中のゲルを磨り潰して細分化し、芳香族ポリカーボネートを成形体とした際に表面に観測される長径200μm以上のフィッシュアイの数を低減化する観点から、40%以上70%以下であるものとし、60%以上68%以下であることが好ましく、62%以上66%以下であることがより好ましい。
【0037】
空隙率が70%以下のフィルターを用いることにより、成形体の表面に観測される長径200μm以上のフィッシュアイ、すなわち、その核となっている長径100μm以上のゲルを飛躍的に低減化できる。フィッシュアイ及びゲルは、空隙率60%以上68%以下のフィルターを用いると、より顕著に減少する。
空隙率が40%以上のフィルターであれば製造可能であり、工業的規模の生産量を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法への適用に好適である。
【0038】
<フィルターの絶対濾過精度>
本実施形態のフィルターの絶対濾過精度は、溶融状態の芳香族ポリカーボネート中のゲルを磨り潰して細分化し、成形体とした際に表面に観測される長径200μm以上のフィッシュアイの数を十分に低減化する観点から、5μm以上55μm以下であるものとし、25μm以上35μm以下が好ましく、27μm以上32μm以下がより好ましい。
絶対濾過精度が5μmより大きいフィルターであれば、製造が可能であり、工業的規模の生産量を有する芳香族ポリカーボネートの製造方法への適用に好適である。
絶対濾過精度が55μm以下のフィルターを用いることにより、成形体の光学性能を低下させる大きさを有した、剛性を有する異物を確実に捕集できる。
なお、「絶対濾過精度」とは、濾過対象物を真球状粒子と仮定した場合の、フィルターを通過する間に100%捕集することができる最小の粒子直径を意味する。
【0039】
<フィルターの空隙率と絶対濾過精度の関係>
本実施形態のフィルターの空隙率と絶対濾過精度は、各々が特定の範囲である必要がある。
すなわち、空隙率が40%以上70%以下であり、かつ絶対濾過精度が5μm以上55μm以下である必要がある。
両方の範囲を満足するフィルターであることにより、溶融状態の芳香族ポリカーボネート中のゲルを磨り潰して細分化し、成形体とした際に表面に観測される長径200μm以上のフィッシュアイの数を十分に低減化する効果が顕著となる。
すなわち、フィルターの絶対濾過精度を高く(100%捕集最小粒子直径を小さく)設定した場合であっても、当該フィルターの空隙率が70%より大きいと、成形体に長径200μm以上のフィッシュアイが形成される場合があり、また、操作条件によっては、フィルター処理後に長径200μm以上のフィッシュアイの個数が増加してしまう場合もある。
絶対濾過精度が高い(100%捕集最小粒子直径が小さい)フィルターを用いることにより、溶融状態の芳香族ポリカーボネート中に含まれるゲルを高い割合で分離捕集できると考えられがちであるが、上述したように、ゲルは剛性が非常に低く、特定の固定形状を維持しておらず、形状が変化する特性を持っているため、フィルターの絶対濾過精度以上の大きさを有するゲルであっても、フィルターで分離捕集されずに、形状を変えてフィルターを通過することがある。
【0040】
<フィルターの種類>
本実施形態の「フィルター」とは、一般にポリマーフィルターと呼称されるものであり、溶融状態の芳香族ポリカーボネートの色調悪化を防ぐ観点から、ステンレス繊維を用いた濾過層を有するリーフディスク型フィルターであるものとする。
リーフィディスク型フィルターは、フィルター濾過層が平面となっており、芳香族ポリカーボネートが濾過層に接触、通過する際、滞留部が無い点でキャンドル型フィルターに比べて優れている。
【0041】
<フィルターの単位濾過面積当たりの処理量>
本実施形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法においては、押出濾過工程で溶融状態の芳香族ポリカーボネートの濾過処理を行う。
当該濾過処理においては、本実施形態のフィルターを通過する際の溶融状態の芳香族ポリカーボネートの単位濾過面積当たりの処理量が、50kg/h/m2以上350kg/h/m2以下であるものとする。
「単位濾過面積当たりの処理量」とは、フィルターにて濾過処理する溶融状態の芳香族ポリカーボネートの処理量(kg/h)を、使用するフィルターの全濾過層の濾過面積(m2)で除した値を意味する。
本実施形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法は、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量が、溶融状態の芳香族ポリカーボネートの色調悪化を防ぐ観点から、50kg/h/m2以上、フィルターの変形を防ぐ観点から、350kg/h/m2以下であるものとし、100kg/h/m2以上320kg/h/m2以下が好ましく、180kg/h/m2以上240kg/h/m2以下がより好ましい。
単位濾過面積当たりの処理量の上限は、フィルターの耐圧強度より設定される差圧を適正にする観点で設定される。
単位濾過面積当たりの処理量の下限は、溶融状態の芳香族ポリカーボネートの色調悪化を防ぐ観点から設定される。
【0042】
<溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度>
前記芳香族ポリカーボネートの濾過処理においては、本実施形態のフィルターを通過する際の芳香族ポリカーボネートの温度は、255℃以上350℃以下であるものとする。
前記「フィルターを通過する際の溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度」は、フィルターで濾過処理する前と濾過処理した後の両方における芳香族ポリカーボネートの温度を意味する。
フィルターを通過する際の溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度は、260℃以上340℃以下が好ましく、280℃以上320℃以下がより好ましい。
溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度を255℃以上にすることで、粘度が急激に上昇することを防止することができ、特に工業規模の生産量を有する製造方法への適用上好ましい。
溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度を350℃以下にすることで、芳香族ポリカーボネートの色調等の品質を良好に維持しやすくなる。
フィルター濾過処理前の溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度は、フィルターの上流に設置されている重合反応工程又は押出濾過工程の混練装置或いは強制移送装置の温度制御装置及び計器で調整し、フィルター濾過処理後の溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度は、フィルターを格納しているフィルター装置の温度制御装置及び計器で調整することができる。
【0043】
<芳香族ポリカーボネートの分子量>
また、前記芳香族ポリカーボートの濾過処理において、本実施形態のフィルターを通過する際の前記溶融状態の芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量は、20000g/mоl以上40000g/mоl以下とする。
本実施形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法によるゲル及び/又はフィッシュアイの低減効果は、フィルター濾過処理される溶融状態の芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量が20000g/mol以上40000g/mol以下のものについて顕著であり、好ましくは25000g/mol以上、より好ましくは30000g/mol以上のものについてさらに顕著である。この重量平均分子量は、工業的規模で生産される、薄物フィルムや波板及び平板シートや飲料用ボトルに用いられる芳香族ポリカーボネート製品の範囲をほぼ含んでおり、本実施形態の製造方法の工業上の有効性を示している。
【0044】
<フィッシュアイの低減効果>
本実施形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法によれば、溶融状態でフィルター濾過処理する前後における、芳香族ポリカーボネートの成形体の表面に観測される長径200〜500μmのフィッシュアイの削減率を70%以上とすることが可能である。
長径200〜500μmのフィッシュアイの削減率は、90%以上であることが好ましい。
また、本実施形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法により、溶融状態でフィルター濾過処理した、芳香族ポリカーボネートの成形体の表面に観測される長径500μm以上のフィッシュアイは、2個/g以下となることが好ましく、長径200〜500μmのフィッシュアイは、10個/g以下となることが好ましい。
【0045】
<フィルターの諸元>
本実施形態のフィルターは、所定の濾過層を有しており、当該濾過層を構成するステンレス繊維の材質は、以下に限定されるものではないが、SUS316が好ましく、SUS316Lがより好ましい。
ステンレス繊維の繊維径は、一般に5〜40μm程度であるが、本実施形態においては特に限定されるものではなく、上述したように、空隙率が40%以上70%以下、絶対濾過精度が5μm以上55μm以下の条件を満たせるものであれば、任意に選択することができる。
フィルターの濾過層の種類は、以下に限定されるものではないが、耐圧強度が高い焼結繊維或いは不織布が好ましい。
フィルターの濾過層の諸元の一つに目付量がある。「目付量」とは、濾過層面積に占めるステンレス繊維の重量を意味する。
本実施形態のフィルターの濾過層の目付量は、800〜3200g/m2程度であることが好ましいが、本実施形態においては特に限定されるものではなく、上記所望の空隙率と絶対濾過精度を得るために任意に選択される。
本実施形態のフィルターは、リーフディスク型のフィルターである。
リーフィディスク型フィルターの厚みは、以下に制限されるものではないが、1枚当たり0.5〜2.5mmが好ましく、1.0〜1.5mmがより好ましい。
1枚当たりの厚みが0.5mm以上であると、濾過層、引いてはフィルターの耐圧強度が充分に大きいので、工業的規模の生産に好適である。
1枚当たりの厚みが2.5mm以下であると、フィルター通過時間が長過ぎず、フィルター処理した芳香族ポリカーボネートが色調悪化し難い点で好ましい。
ステンレス製フィルターには、濾過層が焼結粒子からなるものもあるが、ゲルの磨り潰し細分化による粉砕効果を充分に発揮させ、長径200μm以上のフィッシュアイを低減化させる観点から、焼結繊維或いは不織布からなるものが好ましい。
なお、フィルターでの濾過処理の際、溶融状態の芳香族ポリカーボネートに剪断応力が掛かるが、掛かる剪断応力、その結果発生する剪断速度や剪断速度分布は、上述したフィルターの空隙率、絶対濾過精度、単位濾過面積当たりの処理量、溶融状態の芳香族ポリカーボネートの温度及び重量平均分子量で定まる粘性抵抗、濾過層を構成しているステンレス繊維の繊維径により従属的に決まる値である。
【0046】
<フィルター装置の圧力損失>
本実施形態の芳香族ポリカーボネートを工業的規模の生産量を有する製造方法として実施する場合、リーフディスク型フィルターを使用する際には、当該フィルターは数十〜百数十枚程度が積層されていることが好ましく、フィルター装置に一括収容、設置されていることが好ましい。
この場合、積層されたフィルター自体の圧力損失(a)の他にも、溶融状態の芳香族ポリカーボネートがフィルター装置に入りフィルターへ到達するまでの流路における圧力損失(b)や、溶融状態の芳香族ポリカーボネートがフィルターを通過した後、フィルター装置から出て行くまでの流路における圧力損失(c)が発生する。
フィルター装置の圧力損失は、これら(a)〜(c)の各圧力損失の総和となり、積層されたフィルター自体の圧力損失(a)のみを監視することは非常に難しい。従って、フィルター装置の入口と出口の操作圧力の差、すなわち上記総和圧力損失に対して使用上限を設定し監視することが通常行われている。
総和圧力損失の上限は、フィルター自体の耐圧強度を元に設定されるが、通常14.8MPa程度であり、運転状態の微変動によりフィルター破損を防止する観点で、12.9MPaが好ましく、10.9MPaがより好ましい。
【0047】
<溶融状態の芳香族ポリカーボネートの、フィルターを設置した装置への充填>
溶融状態の芳香族ポリカーボネートを、フィルターが設置された装置に初めて充填する場合は、フィルターの変形や破損を防止するため、充填流量を規制し、低流量から段階的に、時間を掛けて流量を増加させ、所定流量に到達することが好ましい。
流量規制の方法は、所定流量を4以上にn等分し、1/nから始め、2/n、3/nと徐々に増加させる方法、所定流量を積層されたフィルター数で分割し、1枚当たりの流量単位で増加させる方法等が挙げられる。
【0048】
(押出成形工程)
上述した押出濾過工程を実施した後、溶融状態の芳香族ポリカーボネートを冷却固化し、所定の製品形態とする押出成形工程を実施する。
具体的には、前記フィルターで濾過処理された溶融状態の芳香族ポリカーボネートを所定の押出装置で押し出し、所定の成形装置で固化し製品形態とする。
【0049】
<押出装置>
押出濾過工程の下流、押出成形工程の先端には、目的とする製品形態に応じたダイヘッドが設置されており、ダイヘッドの排出部は、押出装置の下流に設置されている成形装置に対して水平〜垂直の角度で溶融状態の芳香族ポリカーボネートを排出する構成となっている形態が一例として挙げられる。
前記ダイヘッドの排出部に、溶融状態の芳香族ポリカーボネートから溶出した触媒失活剤及び/又は添加剤が付着し、異物源となることを防止するために、ダイヘッドの排出部は、定期的に清掃することが好ましく、目的とする製品の用途に応じて清掃頻度を適宜調整することがより好ましい。
前記ダイヘッドの温度は、ダイヘッドへの溶融状態の芳香族ポリカーボネートの流入温度と同じか10℃程度高い温度に設定するのが好ましい。
押出装置の下流に設置されている成形装置によっては、ダイヘッドを設置せず、溶融状態の芳香族ポリカーボネートを、押出濾過工程から配管にて直接成形設備へ移送してもよい。
【0050】
<成品形態>
押出成形により芳香族ポリカーボネートは固化され、製品形態となる。
当該製品形態としては、以下に限定されるものではないが、円柱状ペレット、球状ペレット、フィルム、シート等が挙げられる。
これらのいずれの形態であっても、本実施形態のフィルターを使用し、芳香族ポリカーボネートを製造することにより、ゲルを効果的に除去でき、フィッシュアイの効果的な低減を図ることができる。
【0051】
<成形装置>
前記「成形装置」とは、いずれの製品形態に成形する装置も含まれる。
例えば、ペレットに成形する場合の装置は、ダイヘッドからストランド状に押し出された溶融状態の芳香族ポリカーボネートを冷却し、所望形状に細断する機能を有するペレタイザーシステムである。
フィルムにする場合の装置は、ダイヘッドから薄膜状に押し出された溶融状態の芳香族ポリカーボネートを冷却し、引き伸ばし、所望の幅と厚みで巻き取る機能を有するインフレーション成形機である。
フィルム及び/又はシートに成形する場合は、ダイヘッドからフィルム状に押し出された溶融状態の芳香族ポリカーボネートを冷却し、引き伸ばし、所望の幅と厚みで巻き取る機能を有するフィルム及び/又はシート成形機である。
形の異なる成形品を成形する機能を有する異型押出成形機も挙げられ、これらは全て「成形装置」に含まれる。
【0052】
本実施形態のフィルター、及び当該フィルターを用いた芳香族ポリカーボネートの製造方法によれば、着色が少なく、ゲルが少なく、成形体の表面に観測されるフィッシュアイの少ない芳香族ポリカーボネートを製造することができる。
この理由は、本発明者の検討により、次のように推察される。
【0053】
ゲルを含んだ溶融状態の芳香族ポリカーボネートをフィルターで濾過処理する効果として、(1)濾過によるフィルターへのゲルの分離捕集と、(2−1)フィルターを通過することによるゲルの物理的粉砕、及び(2−2)ゲルの化学的分解があると考えられる。
前記(1)は、フィルター濾過処理において通常期待される効果であるが、捕集される物体が、ある特定の固定形状を有している場合に、より効果的である。不定形であるゲルは、フィルター濾過処理されても、フィルターを通り抜ける可能性が高い。
フィルター濾過処理後もゲルが残留しているにも関わらず、ゲルを核としたフィッシュアイが少なくなった事実を説明するには、前記(1)のみでは不充分であり、前記(2−1)及び前記(2−2)の効果を考慮する必要がある。
同じ絶対濾過精度でも、空隙率が小さいフィルターの方が、フィルター内を流動するポリマーの流路がより長く複雑であり、フィルター内を流動する過程において、不定形であるゲルが、捕集されるに至らないまでも、物理的な粉砕を受ける機会が多くなると推察される。この際、物理的粉砕ばかりではなく、ゲルがより小さい分子量形態へと化学的に分解している可能性もある。
【0054】
本発明者の検討によれば、成形体の表面に観測されるフィッシュアイ及びその核となっているゲルの大きさと個数については、フィルターによる濾過処理を行わない場合は、形状の大きいフィッシュアイ及びゲルの数が多く、空隙率が70%より大きいフィルターを用いた場合には、フィッシュアイ及びゲル形状がやや小さくなるものの個数が増加する。
また、空隙率が70%以下のフィルターを用いた場合は、フィッシュアイ及びゲル形状が非常に小さくなるとともに、個数が激減する。
空隙率が68%以下のフィルターを用いた場合には、より顕著にフィッシュアイ及びゲル形状が小さくなるとともに、個数が激減する。
これらの結果から、ゲル及び成形体の表面に観測されるゲルを核としたフィッシュアイを少なくする効果として、フィルターによる濾過処理によるゲルの物理的粉砕及びゲルの化学的分解が重要であると推察できる。
【実施例】
【0055】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いたフィルター及び評価方法を以下に示す。
【0056】
〔フィルター〕
(空隙率ε及び目付量BW)
空隙率ε及び目付量BWは、化学工学論文集第30巻第1号(2004)79頁に記載されている以下の式を用いて求めた。
空隙率[%]:ε
目付量[kg/m2]:BW
フィルター濾過層厚み[m]:L
フィルターを構成しているステンレス繊維の密度:ρ[kg/m3
フィルター濾過層質量:W[kg]
フィルター濾過面積:A[m2
BW=W/A
ε={1−BW/(ρL)}×100
<濾過面積>
リーフディスク型:濾過面積は、フィルターの濾過層のリーフディスクに対する投影面積で求めた。
キャンドル型:フィルター濾過層を平面に広げた際の投影面積で求めた。
(絶対濾過精度)
均一粒子径を有するラテックスビーズを分散させた液を数種類用いて定圧濾過試験を行い、フィルター濾材通過前後の粒子数(NAとNB)を測定して次式により濾過効率を算出し、算出した濾過効率とラテックスビーズの粒子径から、濾過効率曲線(粒子径に対する濾過効率のグラフ)を作成し、濾過効率100%の粒子径を絶対濾過精度とした。
フィルター濾材通過前粒子数:NA
フィルター濾材通過後粒子数:NB
濾過効率(%)={(NA−NB)/NA}×100
【0057】
〔測定方法〕
(重量平均分子量(Mw))
試料の重量平均分子量(以下、Mwと略す。)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から、下式による換算分子量校正曲線を用いて求めた。
MwPC=0.3591MwPS1.0388
(MwPCはポリカーボネートのMw、MwPSはポリスチレンのMwを示す。)
【0058】
(色調)
色調は、後述する実施例及び比較例において製造した芳香族ポリカーボネートの円盤を成形し、測定した。
まず、射出成型機を用い、予め窒素雰囲気下、120℃で4時間以上乾燥させた芳香族ポリカーボネートを、シリンダー温度290℃、金型温度90℃で、直径55mm×厚さ3.2mmの円盤状試験片に連続成形した。
得られた試験片の色調は色彩計を用いて測定した。
色彩計は、JIS Z8722に準拠した分光測光器を装備し、色調は、JIS Z8729に準拠したCIELAB法(Commission Internationale de l‘Eclairage 1976 L*** Diagram)表色系である、黄色度の指標であるb*値で示した。
具体的には、測定の基準とするb*値1.97の白板上に、前記厚さ3.2mmの円盤状試験片を置き、反射法にて円盤状試験片のb*値を測定した。
同一の芳香族ポリカーボネートを用いて、フィルターによる濾過処理を行わずに連続成形した円盤状試験片のb*値を、フィルター濾過処理前のb*値とした。
【0059】
(フィッシュアイ)
フィッシュアイは、後述する実施例及び比較例において製造した芳香族ポリカーボネートのシートを成形し、計数した。
シート成形用Tダイを設置した単軸押出機を用い、予め窒素下120℃で4時間以上乾燥させた芳香族ポリカーボネートを、シリンダー温度280℃又は290℃で、幅17cm×厚み0.5〜0.7mmのシートに連続成形した。
得られたシートのうち、幅10cm×長さ10cmの領域で、長径200μm以上のフィッシュアイを目視で観察し、計数した。
フィッシュアイの外周は、その周辺と屈折率が異なるため、目視で歪んで見える部分とした。
同一シートに対して、場所の異なる5ヶ所の測定領域でフィッシュアイを計数し、その平均値をシートの代表値とし、1g当たりの個数に換算した。
同一の芳香族ポリカーボネートを用いて、フィルターによる濾過処理を行わずに連続成形したシートのフィッシュアイを、フィルター濾過処理前のフィッシュアイとした。
【0060】
(「実施例1〜9」、「比較例1〜6」、「参考例1、2」における芳香族ポリカーボネートの製造)
実施例1〜9、比較例1〜6、及び参考例1、2において、芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを、ジアリールカーボネートとしてジフェニルカーボネートを用い、これらを溶融状態で重合して製造した。
得られた芳香族ポリカーボネートは、重合反応工程から押出濾過工程へ送液し、押出成形工程へ送液した。
押出濾過工程における混練装置として二軸押出機を用い、フィルター濾過処理の操作圧力源として、二軸押出機の先端にギアポンプを設置し、ギアポンプの先にフィルター装置を設置し、溶融状態の芳香族ポリカーボネートをフィルターにより濾過処理した。
【0061】
(「実施例1〜9」、「比較例1〜6」、「参考例1、2」におけるフィルター濾過処理)
<実施例1>
空隙率が60%、絶対濾過精度が25μmである、SUS316L焼結繊維のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度286℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置前後の圧力損失(以下、差圧と記載する。)は10.6MPa、フィルター装置出口の溶融状態の芳香族ポリカーボネート(以下、溶融ポリマーと記載する。)温度は315℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは56個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0062】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続したが、その間及び10日経過後(以下、10日後と記載する。)、フィルター装置の差圧は10.6MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは3個/g、500μm以上のフィッシュアイは1個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は94%で、濾過処理期間を通じて安定しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が確認された。
【0063】
<実施例2>
空隙率が63%、絶対濾過精度が16μmである、SUS316L焼結繊維のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度290℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は150kg/h/m2、フィルター装置の差圧は11.5MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は319℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは54個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0064】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は11.5MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは4個/g、500μm以上のフィッシュアイは2個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は90%で、濾過処理期間を通じて安定しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が確認された。
【0065】
<実施例3>
空隙率が63%、絶対濾過精度が38μmである、SUS316L焼結繊維のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度287℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は9.3MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は312℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは58個/g、500μm以上のフィッシュアイは9個/gで、それぞれ安定していた。
【0066】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は9.3MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは4個/g、500μm以上のフィッシュアイは2個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は91%で、濾過処理期間を通じて安定しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が確認された。
【0067】
<実施例4>
空隙率が64%、絶対濾過精度が28μmである、SUS316L焼結繊維のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度320℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は5.2MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は322℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは55個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0068】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続したところ、途中で差圧が5.3MPaに上昇したが、以後10日後まで5.3MPaで安定した。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは1個/g、500μm以上のフィッシュアイは0個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は98%で、濾過処理期間を通じて安定しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が確認された。
【0069】
<実施例5>
実施例4と同じリーフディスク型フィルターを装着したフィルター装置を用いた。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量27000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度304℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は3.4MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は306℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは26個/g、500μm以上のフィッシュアイは2個/gで、それぞれ安定していた。
【0070】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。1000T後のフィルター装置の差圧は3.4MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは1個/g、500μm以上のフィッシュアイは0個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は96%で、濾過処理期間を通じて安定しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が確認された。
【0071】
<実施例6>
実施例4、5と同じリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度319℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は60kg/h/m2、フィルター装置の差圧は1.6MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は323℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは54個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0072】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は1.6MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、途中で2.3と上昇し、以後10日後まで2.3で安定していた。フィルター濾過処理によりb*値が上昇し、色調が悪化した。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは11個/g、500μm以上のフィッシュアイは3個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は77%で、濾過処理期間を通じて安定しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が確認されたが、その効果は実施例1〜5に比べると若干低かった。
【0073】
<実施例7>
実施例6と同じリーフィディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度292℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は350kg/h/m2、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は326℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは56個/g、500μm以上のフィッシュアイは9個/gであった。
【0074】
フィルター濾過処置開始直後のフィルター装置の差圧は15.0MPaを示していた。引き続き10日間のフィルター濾過処理の継続を試みた。開始から間もなくフィルター装置の差圧が14.7MPaに低下したが、以後10日後まで14.7MPaで安定した。10日後にフィルター装置を開放点検してみたところ、装着されたフィルターの一部が変形していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、2.0とやや上昇した。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは14個/g、500μm以上のフィッシュアイは5個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は71%であった。フィルターに若干の変形を生じたが、フィッシュアイの削減率は実用上良好であった。
【0075】
<実施例8>
実施例6と同じリーフィディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量27000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度256℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は150kg/h/m2、フィルター装置の差圧は13.8MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は262℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは54個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0076】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は13.8MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは12個/g、500μm以上のフィッシュアイは3個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は76%で、濾過処理期間を通じて安定しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が確認されたが、その効果は実施例1〜5に比べると若干低かった。
【0077】
<実施例9>
実施例6と同じリーフィディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度343℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は8.3MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は348℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は2.1、200〜500μmのフィッシュアイは56個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0078】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続したところ、途中で差圧が8.4MPaに上昇したが、以後10日後まで8.4MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、途中で2.5と上昇し、以後10日後まで2.5で安定していた。フィルター濾過処理によりb*値が上昇し、色調が悪化した。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは11個/g、500μm以上のフィッシュアイは3個/g、200μm以上のフィッシュアイ削減率は78%で、濾過処理期間を通じて安定しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が確認されたが、その効果は実施例1〜5に比べると若干低かった。
【0079】
<比較例1>
空隙率が72%、絶対濾過精度が9μmである、SUS316L焼結繊維のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、押出成形工程で成形した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネート固形ペレットを、溶融機能が付与された二軸押出機を有する、実験室規模の生産量である押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルター装置へ供給される溶融ポリマー温度は317℃、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は12.7MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は323℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは54個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0080】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続したところ、途中で差圧が12.8MPaに上昇したが、以後10日後まで12.8MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは著しく増加しており、100個/gで計数を止めたが、それ以上の個数が目視確認された。500μm以上のフィッシュアイは、5個/gであった。
フィッシュアイは、濾過処理期間を通じて発生しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が全く見られず、200〜500μmのフィッシュアイは増加した。
【0081】
<比較例2>
空隙率が44%、絶対濾過精度が53μmである、SUS316L焼結粒子のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、押出成形工程で成形した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネート固形ペレットを、溶融機能が付与された二軸押出機を有する、実験室規模の生産量である押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルター装置へ供給される溶融ポリマー温度は286℃、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は100kg/h/m2、フィルター装置の差圧は12.5MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は329℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは56個/g、500μm以上のフィッシュアイは9個/gで、それぞれ安定していた。
【0082】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は12.5MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは著しく増加しており、100個/gで計数を止めたが、それ以上の個数が目視確認された。500μm以上のフィッシュアイは、4個/gであった。
フィッシュアイは、濾過処理期間を通じて発生しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が全く見られず、200〜500μmのフィッシュアイは増加した。
【0083】
<比較例3>
空隙率が70%、絶対濾過精度が30μmである、SUS316L焼結繊維のキャンドル型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、押出成形工程で成形した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネート固形ペレットを、溶融機能が付与された二軸押出機を有する、実験室規模の生産量である押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルター装置へ供給される溶融ポリマー温度は285℃、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は8.2MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は290℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは54個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0084】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は8.2MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは著しく増加しており、100個/gで計数を止めたが、それ以上の個数が目視確認された。500μm以上のフィッシュアイは、4個/gであった。
フィッシュアイは、濾過処理期間を通じて発生しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が全く見られず、200〜500μmのフィッシュアイは増加した。
【0085】
<比較例4>
空隙率が72%、絶対濾過精度が9μmである、SUS316L焼結繊維のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重合平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度319℃の溶融状態のまま押出濾過行程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は12.6MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は325℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは54個/g、500μm以上のフィッシュアイは9個/gで、それぞれ安定していた。
【0086】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続したところ、途中で差圧が12.7MPaに上昇したが、以後10日後まで12.7MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは著しく増加しており、100個/gで計数を止めたが、それ以上の個数が目視確認された。500μm以上のフィッシュアイは、4個/gであった。
フィッシュアイは、濾過処理期間を通じて発生しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が全く見られず、200〜500μmのフィッシュアイは増加した。
【0087】
<比較例5>
空隙率が44%、絶対濾過精度が53μmである、SUS316L焼結粒子のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度290℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は100kg/h/m2、フィルター装置の差圧は12.2MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は333℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは56個/g、500μm以上のフィッシュアイは9個/gで、それぞれ安定していた。
【0088】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は12.2MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは著しく増加しており、100個/gで計数を止めたが、それ以上の個数が目視確認された。500μm以上のフィッシュアイは、4個/gであった。
フィッシュアイは、濾過処理期間を通じて発生しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が全く見られず、200〜500μmのフィッシュアイは増加した。
【0089】
<比較例6>
空隙率が70%、絶対濾過精度が30μmである、SUS316L焼結繊維のキャンドル型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量32000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度288℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は8.0MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は293℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは54個/g、500μm以上のフィッシュアイは8個/gで、それぞれ安定していた。
【0090】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は8.0MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは著しく増加しており、100個/gで計数を止めたが、それ以上の個数が目視確認された。500μm以上のフィッシュアイは、4個/gであった。
フィッシュアイは、濾過処理期間を通じて発生しており、フィルター濾過処理によるフィッシュアイ削減効果が全く見られず、200〜500μmのフィッシュアイは増加した。
【0091】
<参考例1>
空隙率が60%、絶対濾過精度が25μmである、SUS316L焼結繊維のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量18000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度272℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
すなわち、この参考例1においては、上述した実施例よりも、低い重量平均分子量の芳香族ポリカーボネートを用いた。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は2.0MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は274℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは3個/g、500μm以上のフィッシュアイは0個/gで、それぞれ安定していた。
【0092】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は2.0MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは3個/g、500μm以上のフィッシュアイは0個/gであり、フィルター濾過処理直前と変化が見られなかった。
上述したことから、重量平均分子量が18000g/mоl程度の、比較的分子量が低い芳香族ポリカーボネート中のゲルは、本発明のフィルターにより削除対象とするまでもなく、多くないことが確かめられた。
【0093】
<参考例2>
空隙率が72%、絶対濾過精度が9μmである、SUS316L焼結繊維のリーフディスク型フィルターをフィルター装置に装着した。
これに、重合反応工程で重合した重量平均分子量18000g/molの芳香族ポリカーボネートを、温度272℃の溶融状態のまま押出濾過工程へ供給した。
すなわち、この参考例2においては、上述した実施例よりも、低い重量平均分子量の芳香族ポリカーボネートを用いた。
このとき、フィルターの単位濾過面積当たりの処理量は190kg/h/m2、フィルター装置の差圧は5.5MPa、フィルター装置出口の溶融ポリマー温度は273℃であった。
フィルター濾過処理する直前の芳香族ポリカーボネートのb*値は1.9、200〜500μmのフィッシュアイは3個/g、500μm以上のフィッシュアイは0個/gで、それぞれ安定していた。
【0094】
引き続き、10日間フィルター濾過処理を継続した。その間及び10日後のフィルター装置の差圧は5.5MPaで安定していた。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートのb*値は、濾過処理期間を通じて1.9と安定しており、フィルター濾過処理による色調変化は見られなかった。
フィルター濾過処理した芳香族ポリカーボネートの200〜500μmのフィッシュアイは3個/g、500μm以上のフィッシュアイは0個/gであり、フィルター濾過処理直前と変化が見られなかった。
上述したことように、重量平均分子量が18000g/mоl程度の、比較的分子量が低い芳香族ポリカーボネート中のゲルは、本発明のフィルターにより削除対象とするまでもなく多くないので、この参考例2においては、参考例1と同様の結果となった。
【0095】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のフィルター、及び当該フィルターを用いた芳香族ポリカーボネートの製造方法は、特に、薄物フィルム、波板及び平板シート、飲料水用ボトル等の薄物成形体用の芳香族ポリカーボネートを製造するためのフィルター及び製造方法として産業上の利用可能性を有している。