【課題】直流プラズマトーチにおいて、作動ガスの酸素消失による分子解離不足を補完し、プラズマ柱の高温高圧保持、酸化と窒化による硬化層膜生成防止、無駄のない溶断を実現と、溶滴粒の無酸化保護と表面張力緩和で、強固で滑らかな溶着展延とノンピンホールの溶射層の生成の実現。
【解決手段】直流エアプラズマトーチにおいて、炭化水素含有気化フラックスに、エアプラズマ化の際に焼失する酸素の分子解離不足を補う分子解離不足補完ガスを予め含有させて旋回噴出ノズル5から陰極と陽極間のアークに供給して、無酸化状態の窒素ガス主体のプラズマ柱を形成し被溶断金属を溶断するか、溶射粉粒体を噴射して被溶射体に溶射する。
空気を作動ガスとする直流プラズマトーチにおいて、炭化水素溶液にアルカリ土類金属、B族のホウ素、ハロゲン化合物の一種以上を磁場撹拌混合して得た液体フラックス中に空気と不活性ガスを圧入して気化フラックスにすると共に、前記気化フラックスに、予め含有空気がプラズマ化の際に炭化水素により焼失する酸素の分子解離不足を補うLi、Na、K、Cs、B、P、F、CL、Br、Iの一種以上の分子解離不足補完ガスを含有させてトーチ先部に設けた旋回噴出ノズルから陰極と陽極間のアークに供給して、無酸化状態の窒素ガス主体のプラズマ柱を形成しながら被溶断金属を溶断することを特徴とする直流プラズマトーチによる溶断方法。
空気を作動ガスとする直流プラズマトーチにおいて、炭化水素溶液にアルカリ土類金属やB族のホウ素やハロゲン化合物を磁場撹拌混合して得た液体フラックス中に空気と不活性ガスを圧入して気化フラックスにすると共に、前記気化フラックスに、予め含有空気がプラズマ化の際に炭化水素により焼失する酸素の分子解離不足を補うLi、Na、K、Cs、B、P、F、CL、Br、Iの一種以上の分子解離不足補完ガスを含有させてトーチ先部に設けた旋回噴出ノズルから陰極と陽極間のアークに供給して、無酸化状態の窒素ガス主体のプラズマ柱を得ると共に、このプラズマ柱に溶射粉粒体を噴射して溶射粉粒体を溶滴化し被溶射体に溶射することを特徴とする直流プラズマトーチによる溶射方法。
前記溶射粉粒体をセラミックス粒子又はサーメット粒子にする溶射の際、セラミックス粒子又はサーメット粒子の表面に鑞となる銅、ニッケル等の遷移金属を予め鍍金処理して後、前記プラズマ柱に噴射してセラミックス粒子又はサーメット粒子を溶滴化し被溶射金属に溶射することを特徴とする請求項2に記載の直流プラズマトーチによる溶射方法。
【背景技術】
【0002】
直流プラズマトーチによる金属溶断或いは金属、セラミック、サーメット等の溶射は、一般に、陰極(熱陰極)から陽極への直流アーク放電により作動ガスを熱プラズマ化して行われ、非移送式と移送式がある。
非移送式はトーチ内の陰極とトーチ先端部のノズル式陽極との間でアーク放電し、ノズル式陽極のノズル部分での熱的ピンチ効果を利用して高温の作動ガス熱プラズマ流を得るのでプラズマ溶射などの材料プロセシングに多く用いられている。更に移送式アークのようにトーチ外部に陽極が存在しないので、プラズマ溶断などでは対象物が導電性でなくてもよいという利点もある。
【0003】
一方移送式はトーチ内陰極とトーチ先端部の水冷ズルに対向する外部の導電性被溶射体の陽極との間でアーク放電するが、アーク電流の通路が水冷ノズルによる強制冷却と作動気体による熱的ピンチ作用によって細く絞られ、そのためにジュール加熱がより大きくなる。この結果、自己誘導磁場がさらに大きくなり、熱的ピンチ効果に伴い、磁気ピンチ効果が増し、アークはより高温になり、熱効率が高いので、プラズマ溶断や溶接などに広く利用されている。
【0004】
而して、従来の直流プラズマトーチによる簡易な金属溶断及び金属溶射は、作動ガスを空気にした所謂エアプラズマによるものが一般的である。このエアプラズマ溶断や溶射に必要とするエアの主成分は76%の窒素ガスと23%の酸素ガスなどを持った分子ガスである。
エアプラズマでは、N
2→N+N、O
2→O+Oの2原子ガスに分離するため分子解離が発生しアーク電圧が上昇する。この原理を利用したのがエアプラズマ溶断やエアプラズマ溶射である。
従来の大気中のガス溶断と比較するとmax20%のSS400の溶断比をガスとプラズマ溶断を比較すると2倍スピード溶断がガス溶断より可能のため又、ランニングコストはガス溶断の1/5程度である。難点は多量のNOXガス発生と酸化鉄煙の多量のためガス溶断よりは公害は多くなる。また酸化と窒化の同時発生によりこれらの硬化層膜が生成され、溶断面のクリーン化が必要であり煩雑で多くの量力と費用がかかる後処理工程が必要である。
【0005】
一方プラズマ溶射は溶射金属の溶滴粒が酸化するため100%エア溶射によるプラズマは使えない。
一般に、プラズマ状態になった気体の物理的性質を支配するのはプラズマ粒子の熱運動である。通常の気体では気体中にある粒子(分子や原子)は互いに衝突しながら無秩序な熱運動を行っているがプラズマ状態になるとイオン、電子、分子、原子は、式(1/2)m(V
2)=(3/2)KTにより示すように熱運動速度Vの2乗となる。但しこの式において、m:粒子質量、K:ボルツマン乗数、T:絶対温度である。KT=1eVの時、T=11600Kである。各種原子を引き離すに必要な電離電圧は空気でありイナートガス以上の分子熱解離熱が発生する。しかも空気は無限に使用できるが空気中の酸素を除去してしまうと23%の分子解離が不足するためプラズマ柱の高温高圧を保持ができない。
【0006】
このため精密な機械加工や後工程の煩雑さを考慮すると、高価でも例えばN2:60%、Ar:30%、H:5〜8%、O2:1〜2%の入った4種子混合ガスなどのように、Ar+H、Ar+He、Ar+N
2などのシールドガスを作動ガスにして該硬化膜の生成を防止や溶滴粒の酸化を防止していた。しかし納期との関係で、止む無く高額でしかも工期を延長するしかなく、高価ガス使用溶断の専門プラズマ溶断機メーカーに外注することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エアプラズマ切断や溶射に必要とするエアの主成分は76%の窒素ガスと23%の酸素ガスなどを持った分子ガスである。N
2→N+N、O
2→O+Oの2原子ガスに分離するため分子解離が発生しアーク電圧が上昇する。この原理を利用したのがエアプラズマ切断やエアプラズマ溶射である。従来の大気中のガス切断と比較するとmax20%のSS400の切断比をガスとプラズマ切断を比較すると2倍スピード切断がガス切断より可能のため又、ランニングコストはガス切断の1/5程度である。難点は多量のNOXガス発生と酸化鉄煙の多量のためガス切断よりは公害は多くなる。酸化と窒化同時発生による切断面のクリーン化が必要であり後工程に金がかかる。
プラズマ状態になった気体の物理的性質を支配するのはプラズマ粒子の熱運動である。通常の気体では気体中にある粒子(分子や原子)は互いに衝突しながら無秩序な熱運動を行っているがプラズマ状態になるとイオン、電子、分子、原子は熱運動速度Vの2乗となる。
(1/2)m(V
2)=(3/2)KT
m:粒子質量、K:ボルツマン乗数、T:絶対温度である。KT=1eVの時、T=11600Kである。各種原子を引き離すに必要な電離電圧は空気でありイナートガス以上の分子熱解離熱が発生する。しかも空気は無限に使用できる。空気中の酸素を除去してしまうと23%の分子解離が不足する。
本発明では後述のように、当該分子解離不足をカバーするため気化フラックス中に分子解離不足補完ガスとしてNa、K、Li、Cs等を予め含有させるのである。プラズマガスとなって分子からバラバラな原子状態となり、切断母材近辺で再び冷却されて分子ガスとなるため窒素14.54V→29.08Vに上昇する。この分子や原子状態になる度に解離エネルギーが供給されるため熱エネルギーとなってプラズマ柱の高温高圧を保持する。表1は原子の電離電圧及び最低励起電圧及び純安定電圧の例である。
【0009】
【表1】
而して、本発明は、作動ガスをエアとする直流プラズマトーチにおいて、エアの酸素消失による分子解離不足を補完して、プラズマ柱の高温高圧を保持して、溶断の際は、酸化と窒化の同時発生を防止して硬化層膜の無いしかも少溶断量と少溶断幅の溶断を実現すると共に、溶射の際は生成する溶滴粒を無酸化保護し同時に、気化フラックス効果にて溶滴粒の表面張力を緩和させて、被溶射体表面への溶滴粒溶射は、強固で滑らかな溶着展延とノンピンホールの溶射層にすることを可能にする直流プラズマトーチによる溶断方法及び溶射方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記した課題を満足するものでありその特徴とするところは次の(1)〜(6)のである。
【0011】
(1)、空気を作動ガスとする直流プラズマトーチにおいて、炭化水素溶液にアルカリ土類金属、B族のホウ素、ハロゲン化合物の一種以上を磁場撹拌混合して得た液体フラックス中に空気と不活性ガスを圧入して気化フラックスにすると共に、前記気化フラックスに、予め含有空気がプラズマ化の際に炭化水素により焼失する酸素の分子解離不足を補うLi、Na、K、Cs、B、P、F、CL、Br、Iの一種以上の分子解離不足補完ガスを含有させてトーチ先部の旋回噴出ノズルから陰極と陽極間のアークに供給して、無酸化状態の窒素ガス主体のプラズマ柱を形成しながら被溶断金属を溶断することを特徴とする直流プラズマトーチによる溶断方法。
【0012】
(2)、空気を作動ガスとする直流プラズマトーチにおいて、炭化水素溶液にアルカリ土類金属やB族のホウ素やハロゲン化合物を磁場撹拌混合して得た液体フラックス中に空気と不活性ガスを圧入して気化フラックスにすると共に、前記気化フラックスに含有空気がプラズマ化の際に炭化水素により焼失する酸素の分子解離不足を補うLi、Na、K、Cs、B、P、F、CL、Br、Iの一種以上の分子解離不足補完ガスを予め含有させてトーチ先部に設けた旋回噴出ノズルから陰極と陽極間のアークに供給して、無酸化状態の窒素ガス主体のプラズマ柱を得ると共に、このプラズマ柱に溶射粉粒体を噴射して溶射粉粒体を溶滴化し被溶射体に溶射することを特徴とする直流プラズマトーチによる溶射方法。
【0013】
(3)、前記溶射粉粒体をセラミックス粒子又はサーメット粒子にする溶射の際、セラミックス粒子又はサーメット粒子の表面に鑞となる銅、ニッケル等の遷移金属を予め鍍金処理して後、前記プラズマ柱に噴射してセラミックス粒子又はサーメット粒子を溶滴化し被溶射金属に溶射することを特徴とする前記(2)に記載の直流プラズマトーチによる溶射方法。
【0014】
(4)、前記気化フラックスは、ホウフッ化カリウム(KBF
4)、ホウ砂(Na
2B
4O
7)、ホウ酸(H
3BO
3)、酸性フッ化カリウム(KHF
2)を混合して炭化水素系溶媒に濃度15〜30wt%溶解した液体フラックスを気化したものであることを特徴とする前記(1)に記載の直流プラズマトーチによる溶断方法又は前記(2)に記載の直流プラズマトーチによる溶射方法。
【0015】
(5)、前記気化フラックスは、ホウ砂(Na
2B
4O
7)、ホウ酸(H
3BO
3)、酸化ホウ素(B
2O
3)を混合して炭化水素系の溶媒に15〜30wt%溶解した液体フラックスを気化したものであることを特徴とする前記(1)に記載の直流プラズマトーチによる溶断方法又は前記(2)に記載の直流プラズマトーチによる溶射方法。
【0016】
(6)、前記気化フラックスは、ホウ化亜鉛(Zn(BF
4)
2)、フッ化アンモニウム(NH
4F)、ジエチルアミン塩酸塩((C
2H
3)NH・HCL)、尿素(CO(NH
2)
2)を混合して炭化水素系の溶媒に濃度15〜30wt%溶解した液体フラックスを気化したものであることを特徴とする前記(1)に記載の直流プラズマトーチによる溶断方法又は前記(2)に記載の直流プラズマトーチによる溶射方法。
【0017】
(7)、前記気化フラックスは、ホウフッカ亜鉛(Zn(BF
4)
2)、ホウフッ化スズ(Sn(BF
4)
2)、ホウフッ化カドミウム(Cd(BF
4)
2)、ジエチルアミン塩酸塩((C
2H
3)NH・HCL)、尿素(CO(NH
2)
2)を混合して炭化水素系の溶媒に濃度15〜30wt%溶解した液体フラックスを気化したものであることを特徴とする前記(1)に記載の直流プラズマトーチによる溶断方法又は前記(2)に記載の直流プラズマトーチによる溶射方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明は次の(1)〜(4)に紹介のように優れた作用効果を呈し、作動ガスを空気とする簡易な直流プラズマトーチによる溶断及び溶射の適用範囲を加工精度良く大幅に拡張したものである。
【0019】
(1)、本発明は、作動ガスをエアとする直流プラズマトーチにおいて、前記特徴により、トーチ内部を通過した圧縮空気のプラズマアークは瞬時に含有酸素を含有炭化水素ガスにて消失し無酸化状態となるが、この酸素原子消失による作動ガスの分子解離不足を、前記気化フラックスに予め含有させた前記Li、Na、K、Cs、B、P、F、CL、Br、Iの一種以上の分子解離不足補完ガスにより補完して、プラズマ柱の高温高圧を確実に保持する新規な作用効果を呈する。
【0020】
(2)、更に、本発明は、直流プラズマトーチによる溶断の際は、前記各種気化フラックスの旋回噴出により酸化と窒化の同時発生を防止して被溶断金属のよう断面への硬化層膜の生成を防止する。また溶断において、プラズマ柱に残った気体フラックスのアルカリ土類金属やホウ素やハロゲン原子は、再結合したり解離して1000℃以上に高温化して溶断金属母材に接して冷却され、再分子化しホウ酸ガラス、リン酸ガラスなどに近い薄いガラス状のものが溶断面に張り付くため無酸化溶断、溶断面下部へのノロ付着が僅少で、多少の付着は簡単な衝撃にてノ剥離除去が可能であるなどの優れた作用効果を呈する。
【0021】
(3)、更に、本発明は、直流プラズマトーチによる溶射の際は、溶射粉粒体をプラズマ柱に噴射して生成する溶滴粒を前記各種気化フラックスにより無酸化保護し同時に、気化フラックス効果にて溶滴粒の表面張力を緩和させて、被溶射体表面への溶滴粒溶射は、強固で滑らかな溶着展延とノンピンホールの溶射層を確実に形成することができる。
【0022】
(4)、更に本発明は、プラズマ柱の周囲に外気吸引旋回カーテンを形成することにより、プラズマ柱(プラズマアーク)をより強制的に冷却してそのピンチ効果により内側に向かって絞り、この結果ジュール加熱がより大きくなり、自己誘導磁場がさらに大きくなり、この熱的ピンチ効果に伴い、磁気ピンチ効果が増大し、プラズマ柱をより安定した高温プラズマ柱にする。このため極めて少量の溶断量と僅少幅の溶断を迅速的確に実現し、また精度の高い溶射層を有利に形成することができる。
【0023】
(5)、さらにセラミックス粒子やサーメット粒子を溶射粉粒体とする場合は、これら溶射粉粒体の表面に銅やニッケル等の遷移金属を予め分散メッキ処理をしておくことにより、鍍金処理セラミックス粒子や鍍金処理サーメット粒子の溶滴が被溶射金属面に張り付いたときプラズマ火炎にて気化ガス中のK、Na、Cs、Bなどによるフラックスができるためこの酸化防止効果と表面張力除去作用効果によって、各粒子間がプラズマろう付となるため、被溶射金属表面へのセラミック又はサーメットの溶射層の溶着が緻密で強固であり接合強度が極めて高い結果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を以下の実施例と共に詳細に説明する。
図1は、本発明における直流プラズマトーチによる溶断方法及び溶射方法を実施するための装置(以下単にエアプラズマ装置と言う)の概念図を示す説明図である。
図1に示すエアプラズマ装置は、強磁場用磁石201を配置し、分子解離不足補完ガスを含むアルカリ土類金属又はB族のホウ素又はハロゲン化合物を液化炭化水素を溶媒にした液体フラックス202を収容し、加圧空気203と加圧不活性ガス(CO
2,N
2,Ar)204を導入して撹拌して気化フラックス210を製造する液体フラックス気化装置200を有し、液体フラックス気化装置200に加圧空気203を供給するエアコンプレッサー220と加圧不活性230を供給するガスボンベGBとを有する。
【0026】
エアコンプレッサー220にはエア3点セットレギュレータ221を備えている。
液体フラックス気化装置200からの気化フラックス210は、帯電室300を介して吸引排出する圧空式エゼクター400に供給される。
圧空式エゼクター400には、別途前記エア3点セットレギュレータ221からのエア圧力最大5kg/cm2の圧空がDC溶接機230を介して供給して前記導入の気化フラックス210を圧空のエゼクター効果により吸引吐出して圧空と共にエアプラズマトーチ100に供給する。
【0027】
これによりエアプラズマトーチ100は、陰極101直後の周囲から、空気60〜70%、気化フラックス40〜30%と液化炭化水素ガス10〜20%と不活性ガス(CO
2ArN
2)の混合ガスMGを導入して、空気を作動ガスとしながらもプラズマ化した瞬間に炭化水素ガスにより空気中の酸素を燃焼し無酸化状態にし、残った窒素ガス+気化フラックス中のアルカリ土類金属やハロゲン原子ガスによりプラズマ柱の電圧を高くする。
【0028】
即ち、前記プラズマ柱は、気化フラックスに含有した分子解離不足補完ガス(:Li、Na、K、Csなどのアルカリ土類金属原子)によるペニング効果によるグロー放電現象をするため燃焼により消えたO以上の電圧保持をすることから、20%以上の厚み方向溶断と30%溶断幅を小さくし20%以上の溶断速度をアップする。
【0029】
図2には、
図1に示す直流プラズマトーチの溶断用先端部構造を示す拡大断面説明図(1)と溶射用先端部構造を示す拡大断面説明図(2)を示し、溶射用先端部構造が溶断用先端部構造と異なるところは、溶射金属粉粒体の噴射ノズルNを追加設置したところである。
図2において、エアプラズマトーチ100からのプラズマ柱放出部の外側周囲に外気誘引室500を設置する。これによりプラズマ柱に沿って2次旋回エアによる外気誘引スカートが形成される構成のトーチ100となる。非接触タイプとするため外気誘引室500の外側にセラミックス等の溶射層を被覆して接触でもスパークしないようになっている。この外気誘引室500の内壁面にワイヤカットにて旋回溝を8〜16等分に形成しているので吸引された外気は外気誘引室500内で旋回し先部から旋回吐出してプラズマ柱を囲む外気吸引旋回カーテンを形成する。
【0030】
図3には、本発明を適用した混合ガス噴射式プラズマ溶射ガンの具体例1の縦断面説明図をしめす。
混合ガス噴射式プラズマ溶射ガン(トーチ)の先端部においては、電極ホルダー1の中央部に水冷式陰極2を支持し、水冷式陰極2の周囲に不活性ガス (CO
2、Ar、N
2)放出ノズル3を配置し、水冷式陰極2の先方周囲に陽極ノズル4を設け、陽極ノズル4の外周部に前記混合ガスMGを旋回噴射する旋回噴射ノズル5を形成し、旋回噴射ノズル5の外周にノズルホルダー6を装着し、噴射ノズルホルダ6には陽極ノズル4の先方部に開口部7を形成し、この開口部7の内周にはプラズマ柱にキャリアガスで溶射粉粒体を噴射する噴射ノズル8と、前記旋回噴射ノズル5に前記気化フラックスを含む混合ガスMGを供給する気化フラックス供給管9を装着してある。前記旋回噴射ノズル5と気化フラックス供給管9間には分配リング10が形成され、この分配リング10には不活性ガス(CO
2、Ar、N
2)が別途導入され混合される。
【0031】
図4には、本発明を適用した混合ガス噴射式プラズマ溶射ガンの具体例2の縦断面説明図をしめす。
図3と同一構成部材には同一符号を付してある。
図4の混合ガス噴射式プラズマ溶射ガン(トーチ)は、その先部において、電極ホルダー1の中央部に水冷式陰極2を支持し、水冷式陰極2の周囲に、ガン後部に連通した供給管から不活性ガス(CO
2、Ar、N
2)を放出する不活性ガスノズル3を配置し、水冷式陰極2の先方周囲に陽極ノズル4を設け、陽極ノズル4にの前部外周部に前記気化フラックスを含む混合ガスMGを旋回噴射する旋回噴射ノズル5を形成し、旋回噴射ノズル5の外周にノズルホルダー6を装着し、噴射ノズルホルダ6には陽極ノズル4の先方部に開口部7を形成し、この開口部7の内周にはプラズマ柱に紛粒体タンクFTからの溶射粉粒体YFを開閉弁と調節弁を介してキャリアガスで噴射する噴射ノズル8と、前記旋回噴射ノズル5の傾斜溝5aに分配リング10を介して前記混合ガスMGを供給する気化フラックス供給管9を装着してある。
【0032】
本発明において、前記気化フラックスにする液体フラックスの製作は、電解液としてアルコール、アセトンなどの炭化水素系の溶媒中で30%以上の高濃度に無機化合物(アルカリ土類金属化合物やホウ素化合物やハロゲン化合物)を一旦ゼリー状のフラックスとして水で反応させて個体フラックスを作る。個体フラックスを再粉砕したフラックスを強磁場中で少量ずつ添加しながら10〜60rpmで撹拌させて最終濃度30%以上の液体フラックスを作る。このような再結晶法で作られたフラックスを強磁場中で溶解した液体フラックスである。
【0033】
このように前記気化フラックスは、可燃性の炭化水素ガスとアルカリ土類金属ガスとホウ素化合ガスとハロゲン化合ガスの混合した気化ガスが加わっている。
これらのガスは無機物の状態で化合物を作っているため2〜6種類の化合物を水でゼリー状に化学反応させてフラックスを作り、反応が終わり固まったものを再粉砕し、メタノール、エタノール、アセトンなどの炭化水素溶液中に強磁場をかけながら少量ずつ添加しながら、5〜10rpmの旋回流撹拌して溶解し30%以上の濃度とする。高温高圧で生成したフラックスは一定濃度に達すると再結晶化するため強磁場でも再結晶化は発生する問題がある。そのため前もって再結晶化してフラックスを粉砕して作ったフラックスを再溶解して作った液体フラックスである。
【0034】
炭化水素を溶媒として作られているため水素ガスは確実に発生気化している。H:13.59eVが追加されるため、
Hは、1eVより11600K×/273=578℃の温度上昇となる。
Naは、KT=5.14Vより、11600×5.14/273=218℃の温度上昇となる。
KはKT=4.33Vより、11600×4.33/273=184℃の温度上昇となる。
LiはKT=5.39Vより、11600×5.39/273=229℃の温度上昇となる。
【0035】
単純計算しても従来のエアプラズマ溶断よりも1000℃以上のプラズマ柱の温度が高い。従来SS400の20mm板厚の無酸化溶断が25mm板厚の無酸化溶断可能となる。かつ今回、新たにプラズマ溶断の外側にエゼクター原理の外ケースを新たに追加しているため旋回冷却エアによるプラズマ柱の強制冷却が加わるため溶断板厚は20%アップ、溶断幅は30%減少、溶断速度は20%アップに繋がった。溶断最下面に出る溶断ノロの100%付着がない。簡単な衝撃にて剥離する。そのため、従来のノロ取りグラインダー加工が不要となった。今回新たにプラズマ状態とすることで無酸化溶断と溶射を可能にした。溶断面にNa、K、Li、Cs、B、F、CLなどの侵入は全くない。無害でありエア中の燃焼ガスとして残った原子分子は金属接合、溶断フラックスとして作用することが証明された。
【0036】
そこで本発明にて使用する気体フラックス用の液体フラックスは、一般に言うフラックスとして使用する元素より、次のように溶解の難易さを示す。
気体フラックスを造る液体フラックスの溶解性は、Li:原子番号3、最外殻電子数(−1、+7)、Na:原子番号11、最外殻電子数(−1、+7)、K:原子番号19、最外殻電子数(−1、+7)、Rb:原子番号37、最外殻電子数(−3、+5)、Cs:原子番号55、最外殻電子数(−5、+3)、Be:原子番号4、最外殻電子数(−2、+6)、B:原子番号5、最外殻電子数(−3、+5)、P:原子番号15、最外殻電子数(−5、+3)、N:原子番号7、最外殻電子数(−5、+3)、O:原子番号8、最外殻電子数(−6、+2)、F:原子番号9、最外殻電子数(−7、+1)、CL:原子番号17、最外殻電子数(−7、+1)、Br:原子番号35、最外殻電子数(−1、+7)、I:原子番号53、最外殻電子数(−3、+5)である。(−)は電子を除去すれば安定することを示し、(+)は電子を加えると安定することを示す。電位差の大きなLi、Na、K、F、CL、Brは強磁場を与えると溶解しやすいことを示している。B、Cs、P、N、Oは分子化合物である。塩化物、フッ化物、臭化物、ホウ酸化物、ホウフッ化物などとして取り出すことで溶解を可能とする。これらの液体フラックスを気化して各種元素イオン状態にしたのがプラズマ気流である。
【0037】
これが従来のエアプラズマは、N2→N+N、O2→O+Oだけの反応であった。
本発明では無酸プラズマとするためには酸素原子イオンを100%除去することである。本発明では燃焼ガス(炭化水素系ガス)が新たに加わり、これで酸素を除去とすると残ったLi、Na、K、F、B、N、Hなどの分子解離不足補完ガス)が窒素ガスと混合して多元素プラズマ気流が生まれる。これらの熱プラズマ気体は分子、原子の解離熱の集合体でもある。そのため電離電圧や累積電離の加わった混合気体である。蛍光灯の放電開始電圧のように一瞬にて水銀やArガスを高電圧にするぺニング効果とよく似た現象でもある。
【0038】
従来のエアプラズマは空気中の窒素、酸素、その他であり高電圧のプラズマ化した際のN
2→N+N、O
2→O+Oの分子解離を利用して電離プラズマ熱を利用していた。空気の解離は無秩序運動することで熱エネルギーに交換していた。電子イオン中性子がバラバラとなった電離プラズマであった。この状態は原子、分子の解離、励起、電離がN
2とO
2だけである。プラズマ発生期のO+Oに変化した酸素は非常に強い酸化力を持つ。このことがエアプラズマ溶断でステンレス鋼を溶断すると強く硬い酸化膜の生まれる原因である。
これに対して、本発明のエアプラズマ溶断は、従来の熱プラズマ+ペニング効果を持っている。
【0039】
即ちノズルより出たプラズマ柱は、瞬間にベンチュリー管の原理にて強制的に旋回エアで冷却されるため当該プラズマアーク柱はピンチ効果により内側に向かって絞られてる。炭化水素ガスとして酸素を消費したため無酸化となり残ったアルカリ土類金属やホウ素やハロゲン原子が再結合したり解離したりするため従来より1000℃以上高温アップする。溶断金属母材に接しプラズマアーク柱が冷却されるため再分子化しホウ酸ガラス、リン酸ガラスなどに近い気化フラックスによる薄いガラス状のものが溶断面に張り付くため無酸化溶断、下部ノロ剥離して切り口にノロ付着がなく簡単な衝撃にて除去できる。
【0040】
従来のエアプラズマは直流溶接機(冷却水循環タンク付き)とコンプレッサー(5kg/cm
2)とプラズマ溶断トーチがあれば溶断可能であるが酸化と窒化は避けられなかった。厚板溶断の場合、溶断可能厚みはSS400は20mmまで、ステンレス鋼は12mmが限界であった。これに対して、本発明の前記エアプラズマ溶断では、溶接機と水冷プラズマトーチの間にベンチュリー管の原理にて気化フラックスを供給する特殊な装置と液体フラックスを気化する気化装置は必要であるが精密プラズマ溶断装置と比較すると低投資で無酸化溶断が可能である。気化ガス中の炭化水素ガスを使って100%燃焼させることで予熱と無酸化と難窒化を実現する。溶断速度20%アップ、溶断溝30%減少、溶断速度20%アップの改善である。
【0041】
本発明における気化フラックスは、メタノール、エタノール、アセトンなどの炭化水素系の溶媒に強磁場を使ってアルカリ土類金属やハロゲン化合物、ホウ素化合物、リン化合物を2〜6種類を電解溶解して得た液体フラックスを気化装置の中で気化ガスとしたものである。
この気化フラックスに含有するLi、Na、K、Cs、B、P、F、CL、Br、Iなどはエアのプラズマ化により、原子に分離する際の解離が加わることでアークプラズマ電圧が上昇する。かつLi、Na、K、Cs、B、P、F、CL、Br、Iなどは溶断面改善元素であり、ドロスの酸化を防止して溶断面への2次的付着を防止して溶断速度の向上につなげる。これらがアルカリ土類金属やハロゲン化合物などの原子の入った液体フラックスの役目である。すなわち液体フラックスの役目は、溶断母材表面の酸化を防ぎ清浄化を促進する途ともに、ドロスの流動性(融点降下作用)を促進し溶滴落降をスムーズにし、この溶断ドロスの共晶化がフラックスの役目で簡単に働くため融点降下と流動性のアップに繋がっているので、ドロスの積層成長を防止してプラズマ柱のKN、B、Pなどがガス化したものが溶断最下面に達する間に再結晶化して、
H
3BO
3、KO
2、NaO、K
2SiF
6、P
2O
5、Na
2B
4O
7・10H
2Oなどの極薄のガラス膜が付着するのでドロスの付着が防止される。
【0042】
前記液体フラックスは、30%以上の無機化合物を含有すると気化装置内でシールドガスの空気をいれることで蒸発する。アルコール蒸発のため急激に潜熱を奪うため温度が下がり気化しにくくなる。そのため気化室には3.5〜4.5Kガウスのネオジ磁石の多量に入った室を通過することで帯電磁励を受け自励振動することで気化状態を保持する。気化装置の強磁場を通過した気化フラックスである。分子ガス、イオンガス、原子ガスが混合した気化ガスである。
【0043】
気化装置を通過し帯電した気化フラックスをガスベンチュリーの原理にて従来の溶断直流溶接機とエアプラズマトーチの間にベンチュリー装置をつなぐことで従来の溶断エア圧5kg/cm2の力で自然に気化ガスを吸い込み混合しながら溶断トーチチューブ内を通過し、(+)と(−)のスパーク電圧にて瞬間にプラズマガス柱火炎となる。従来は燃焼しない空気だけのためN
2とO
2の分子解離熱のみのプラズマ炎であった。燃焼することでCO
2やK、Na、Li、Cs、F、C、L、Brなどの原子もガス化することでイオン状態に体積膨張することは圧力アップに繋がっている。燃焼ガス中には酸素はなく無酸化となる。溶射では溶射粒子の無酸化は接合体力のアップに繋がっている。
溶断トーチの最外側ケースは全面セラミックス(AL
2O
3)の溶射が施工されているためスパーク対策ができている。かつ2分割となっているため先端のみ消耗交換するので低コストである。
【0044】
エアプラズマでの溶断や溶射に対して最大の効果を出す原子は13族のホウ素化合物である。酸化スケール中にB
2O
3+Na+K、H
3BO
3+Na+K、Na
2B
4O
7などとホウ化物のガラス状がみられる。
正式のプラズマ溶断機はHe、Ar、H
2、N
2、O
2、CO
2の6種のガスの組立であるがイナートガス+分子ガスを使うことでプラズマ柱の熱量をアップさせているが装置も精密で非常に高価である。1台数千万円の装置に対してエアプラズマは最大100万円以下である。使用ガスも非常に高価である。エアプラズマは空気だけのためコンプレッサーがあれば簡単に溶断可能である。それなり酸化、窒化は後工程で除去するとあきらめての溶断法であった。時にステンレス鋼種の溶断となると後工程の時間と費用の増加は避けられない。出張工事などに使うと後工程は大変である。対して気化フラックスを入れることはこれらを従来と同じ工程で無酸化が可能となった。
【0045】
電子付着とは電子が原子や分子と結びついてマイナスイオンとなった現象という。電子付着の生じた気体は種類によって異なる。He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnなどの不活性ガスは電子付着しにくい。最外殻電子が不活性ガスより1つ少ないハロゲン族FCL、Br、Iの化合物と酸化物は簡単に帯電しやすくマイナスイオン化の原子、分子となって電子親和力をもつ。例として、
CL
2+e→CL+CL、F
2+e→F+F、H
2(V“)+e→H+Hである。H
2(V“)は震動励起状態の水素分子である。気化フラックスの原料は、例えばフッ化物としてHF、LiF、NaF、KF、KHF
4、NaHF
4などがある。塩化物としては、HCL、LiCL、KCL、NaCL、NH
4CLなどがある。臭化物として、HBr、LiBr、NaBr、NH
4Brなどがある。
ホウ化物として、H
3BO
3、Na
2B
4O
7・10H
2O、LiB
2O
7、K
2B
2O
7、B(OCH
3)
2・B(OC
2H
2)
7などがある。マイナスイオンとして電離能力の高い無機ハロゲン酸化物がこのため使われる。これら無機物を溶媒となるメタノールやアセトンなどの溶液中に強磁場中で10〜60rpmの旋回溶解にて30%以上の高濃度として作った液体フラックスを気化装置で気化ガスとした各種ハロゲン族、酸化物、リン化物などが気体となって空気と混合しプラズマ火炎中で励起電圧となり電離することで、[H:13.6eV]、[N:14.54eV]、[O:13.6eV]、[Na:5.14eV]、[K:5.39eV]、[CL:13.01eV]と原子レベルにて各種のもつ励起電圧を一瞬にて吐き出すため単なる従来の空気(N
2+O
2)の2種分子ガスと比較すると4〜8種の分子ガスを持ったプラズマ炎ガスとなる。
【0046】
エアプラズマ溶断や溶射は、陰極側の溶断機や溶射機で、陽極側の母材に向かってアーク柱が流れるアーク放電である。高周波電圧にてアークが引っ張られてプラズマ柱となる。アーク柱は周囲の空気にて対流冷却されるためピンチ効果にて電流密度の高いプラズマ柱となる。ジュール熱の発生にて中心ほど高温のプラズマとなる。電子の様に軽い粒子とイオンや原子や分子のように重い粒子の混合気体で、mV
2=3KTの運動エネルギーを持つ。放電気圧を下げてグロー放電状態に近づけると温度は降下する。重い粒子集合体の低温プラズマとなる。プラズマ構成粒子間熱運動を激しくするためには水素のように軽い原子が必要である。気化フラックスの溶媒そのものがメタノールのため水素は確実に入っている。しかも化学反応の終了した再結晶フラックスを粉砕したパウダー溶解して作られた液体フラックスを気化したものである。
【0047】
ノズル内の陰極と溶断金属材(陽極)間に放電してプラズマ化したエア(酸素と窒素)はノズル内から高温のプラズマジェットとして噴出し溶断材(陽極)を高温のプラズマ圧力にて溶断する。溶射の場合は溶射粒を母材に吹き付ける。作動ガスが空気のため76%の窒素と23%の酸素の主力配分で両者とも分子ガスのため保有エネルギー(エンタルピー)が大きいことを
図5に示す。
精密専用のプラズマ溶断ガスは生成ガスとしてAr、He、H
2、N
2、O
2を主としており、不活性ガス中に+αとして1〜2%の酸素ガスの入った4〜5種混合ガスである。酸素を1〜2%入れるのは水素と還元して光輝溶断ができるためで溶断面の輝きを得るためである。原子ガス保有エネルギーは原子運動エネルギーにてイオン化したエネルギーと分子解離エネルギーが追加される。そのため2原子ガス(N
2、O
2、H
2、CO
2など)は低温でも高エネルギーを持つことを意味する。水素、窒素は解離と電離をアルゴンとヘリウムは電離のみでプラズマ温度も一定となる。2原子ガス(N
2、O
2、H
2、CO
2など)は不活性ガスよりもプラズマジェットアーク長が増大するためプラズマジェットは高温となる。従来の単独エアだけと比較すると多種元素の混合気体は新たな機能を持った溶断ガスであり溶射ガスでもある。分子ガスやハロゲンガスの混合は溶断面の清浄化効果もありそのままの状態で後工程の溶接を可能にした。
【0048】
従来のエアプラズマ切断は、エアプラズマの作動ガスが空気のため溶断には鉄の酸化反応で切ることに対して100%無酸化とすることは酸化反応の溶断ではなく窒素ガス溶断である。これでは確実に窒化溶断となるため気化フラックスがこの窒化を防ぐ最大の理由はホウ素融点2300℃、沸点3658℃、と非常にプラズマのような高温10000〜20000℃にてB
2O
3、NaB
7O
7、H
3BO
3中の気化ガス中の化合ホウ素が単独のホウ素となって溶断母材周囲で再度分子ガスとすることでホウ素化合物シール効果がでるためでありK、Na、Liなどのアルカリ土類金属のシールド効果も加わるため従来の空気溶断よりはるかに窒化が少ない。溶断面をグラインダー除去しないと溶接欠陥であるブローホールの原因となる。プラズマ発生させる電極はタングステンの先端部にハフニウムの埋め込み電極を使うのはWの融点3370℃、沸点5700℃と非常に高いのであるが酸化すると融点1500〜1600℃、沸点2000℃と急激にドロップする。そのためハフニウムを入れるのは2酸化ハフニウムの融点2812℃、沸点4300℃と酸化融点が高い為である。気化フラックスによる無酸化プラズマを作ることは陰極の酸化を防ぐことにつながる。ハフニウム埋め込みタイプのため先端を鋭角に陰極を研磨できず発生するプラズマ先端が丸みを帯びるため鋭角に集中化することができなかった。極端に言うとハフニウムの入らない100%のトリウム入りタングステン電極で鋭角に研磨して使えることはプラズマ温度をアップすることが可能である。アルカリ土類金属は融点も沸点も低い為簡単にガス化できるが13族のホウ素は化合物として酸化分別は高温のプラズマだと簡単に分子結合を原子状態にできるため3658℃の沸点をもつホウ素をガラス化できる。分子→原子→分子とプラズマ柱で反応することで従来の酸化溶断でなくても溶断が可能となった。新たに発生する水素イオンガスは盛んに冷却効果を出し対流冷却も加わるため従来のエア溶断にない複合イオンガス溶断となっている。表2にアルカリ土類金属元素の特性を示す。
陽極は銅、陰極はトリア入りタングステンである。最近La
2O
3、CeO
2、Y
2O
3などを含むタングステン電極が開発されている。プラズマガスとして酸化性ガスを用いる場合には、タングステンが非常に酸化されやすいので使用することができない。エアプラズマ溶断などに用いるために、ジルコニウムやハフニウム電極が開発されている。
【0050】
エアプラズマ溶断は酸素、アセチレン溶断を同じ酸化反応にて溶断している。そのためスケールは、Fe
2O
3(70%)、Fe
2O
4(20%)、FeO(10%)近い酸化スケールのため溶断面の清浄及び研削後でないと溶接できない。かつ、窒化硬化層の発生もある。後工程の必要な溶断法である。新たに空気+気化フラックスを混合することで無酸化溶断、軟窒化程度の溶断法を具現化した。プラズマ柱となった瞬間にLi、Na、K、Csなどのイオン状態となった原子ガスはペニング効果により消えた酸素以上の働きをする。
【0051】
従来セラミックスやサーメットのプラズマ溶射は無酸化ガス(Ar、He、N
2など)を使用しタービンブレードなどは溶射チャンバー内で強度アップのため大気内では溶射していない。
ある程度寿命は短くなるが大気溶射ができればとのことで無酸化ガス溶射があるがガスコストが高くなる。対して、主力ガスが空気では大気溶射は不可能である。
気化フラックスガスをエアと混合することでエア中の酸素除去、溶射中の大気シールも可燃性ガスにて燃えることでシールする。セラミックス粒子やサーメット粒子を溶射粉粒体とする場合は、これら溶射粉粒体の表面に銅やニッケル等の遷移金属を予め分散メッキ処理をしておくことで、鍍金処理セラミックス粒子や鍍金処理サーメット粒子の溶滴が被溶射金属面に張り付いたときプラズマ火炎にて気化ガス中のK、Na、Cs、Bなどによるフラックスができるためこの酸化防止効果と表面張力除去作用効果によって、各粒子間がプラズマろう付となるため、被溶射金属表面へのセラミック又はサーメットの溶射層の溶着が緻密で強固であり接合強度が極めて高い結果が得られる。新たにこれらのセラミックス粒子やサーメット粒子を大気溶射してもろう付強度により母材(被溶射金属)との接合力が増加した。