特開2015-231683(P2015-231683A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋機械金属株式会社の特許一覧 ▶ 茨木工業株式会社の特許一覧

特開2015-231683複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機
<>
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000003
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000004
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000005
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000006
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000007
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000008
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000009
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000010
  • 特開2015231683-複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231683(P2015-231683A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】複合材プレス成形システム及びこれに用いる混練押出機
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/90 20060101AFI20151201BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20151201BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20151201BHJP
【FI】
   B29B7/90
   B29C43/02
   B29K105:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-118925(P2014-118925)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505264842
【氏名又は名称】茨木工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 玲
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 雅則
(72)【発明者】
【氏名】豊留 永久
(72)【発明者】
【氏名】八牟禮 健
【テーマコード(参考)】
4F201
4F204
【Fターム(参考)】
4F201AB25
4F201AJ13
4F201BA01
4F201BC02
4F201BC13
4F201BD02
4F201BK13
4F201BK74
4F201BQ16
4F201BQ35
4F201BQ57
4F204AC01
4F204AD16
4F204FA01
4F204FB01
4F204FF01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
(57)【要約】
【課題】1プレス分のコンパウンドを生成できて、メンテナンスが容易な混練押出機を提供する。また、この混練押出機を備えた複合材プレス成形システムを提供する。
【解決手段】加熱シリンダ16と、加熱シリンダ16内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュ17と、加熱シリンダ16の先端に取り付けられたダイ18とを備え、強化繊維が混練されたプラスチックのコンパウンド6を生成する混練押出機において、ダイ18に開設されたコンパウンド押出口18aを開閉するシャッタ部材19を設け、コンパウンド6の混練と押出とを間欠的に行う。シャッタ部材19には、ダイ18の表面からコンパウンド6を掻き落とすスクレーパ20を備えることもできる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料プラスチックの供給口及び少なくとも強化繊維を含む充填剤の供給口を有する加熱シリンダと、前記加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュと、前記加熱シリンダの先端に取り付けられたダイとを備えた混練押出機において、
前記ダイに開設されたコンパウンド押出口を開閉するシャッタ部材を備え、前記シャッタ部材を閉じた状態で、前記スクリュを回転駆動して、前記原料プラスチックと前記充填剤との混練を行い、前記加熱シリンダ内に所定量のコンパウンドが貯えられる毎に、前記シャッタを開き、かつ前記スクリュを前進駆動して、前記コンパウンド押出口より所定量のコンパウンドを外部に押し出し、しかる後に、前記シャッタを閉じて次回のコンパウンドの混練を行うという動作を繰り返すことを特徴とする混練押出機。
【請求項2】
前記シャッタ部材の一辺に、前記複合材押出口から押し出されたコンパウンドの端部を前記ダイの先端部から掻き落とすスクレーパを備えたことを特徴とする請求項1に記載の混練押出機。
【請求項3】
前記シャッタ部材にヒータを備え、当該ヒータにて前記シャッタ部材を加熱することを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の混練押出機。
【請求項4】
前記ダイにヒータを備え、当該ヒータにて前記ダイを加熱することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の混練押出機。
【請求項5】
前記ダイを、前記加熱シリンダに直接又は他の部材を介して固着される固定部と、当該固定部に着脱可能に取り付けられる可変部とから構成し、前記可変部に前記複合材押出口を開設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の混練押出機。
【請求項6】
前記複合材押出口の形成面及びその対向面を除く前記ダイの周囲を断熱板にて覆ったことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の混練押出機。
【請求項7】
原料プラスチックの供給部と、当該供給部から供給される原料プラスチックに少なくとも強化繊維を含む充填剤を加えて混練し、生成されたコンパウンドを押し出す混練押出機と、当該混練押出機から供給される所定量のコンパウンドをプレス成形するプレス装置とを備えた複合材プレス成形システムにおいて、
前記混練押出機として、加熱シリンダと、前記加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュと、前記加熱シリンダの先端に配置されたダイと、前記ダイに開設されたコンパウンド押出口を開閉するシャッタ部材を備えたものを用い、
前記混練押出機は、前記シャッタ部材を閉じた状態で、前記スクリュを回転駆動して、前記原料プラスチックと前記充填剤との混練を行い、前記加熱シリンダ内に所定量のコンパウンドが貯えられる毎に、前記シャッタを開き、かつ前記スクリュを前進駆動して、前記コンパウンド押出口より所定量のコンパウンドを外部に押し出し、しかる後に、前記シャッタを閉じて次回のコンパウンドの混練を行うという動作を繰り返すことを特徴とする複合材プレス成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材プレス成形システムと、プレス成形の素材である繊維強化プラスチック材料(コンパウンド)を生成する混練押出機の構成とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型の繊維強化プラスチック成形品を効率的に成形できることから、ライン上で強化繊維とプラスチック材料を直接混練し、生成されたコンパウンドを大型プレス成形機に供給してプレス成形する複合材プレス成形システムが注目されている。このシステムを用いた成形法は、DMC(Dough Molding Compound)成形法又はBMC(Bulk Molding Compound)成形法と呼ばれる。従来、このシステムには、大型プレス成形機にコンパウンドを供給する混練押出機として、LFT−D(Long-Fiber Thermoplastics Direct)装置が適用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
LFT−D装置は、図9に示すように、各種の原料プラスチックを混合してプレミックス樹脂組成物を生成するプレミックス生成部101と、プレミックス生成部101から供給されるプレミックス樹脂組成物102に、強化繊維103、フィラー104及び充填剤105を混練して押し出す第1混練押出機106と、第1混練押出機106から押し出される中間コンパウンド107に、強化繊維108をさらに加えて押し出す第2混練押出機109と、第2混練押出機109から押し出される完成コンパウンド110をプレス成形品のサイズに適合する大きさに切断するカッタ111を含んで構成される。なお、第2混練押出機109は、必要に応じて備えられるもので、これについては省略することもできる。また、図9中の符号112はプレス装置を示し、符号113は繊維強化プラスチック成形品を示している。
【0004】
プレミックス生成部101は、各種の原料プラスチック121a、121b、121cが貯えられた複数の原料タンク122a、122b、122cと、各原料タンク122a、122b、122cから供給される原料プラスチック121a、121b、121cをプレミックスするミキシングドラム123と、一定量のプレミックス樹脂組成物102を貯える計量タンク124と、計量タンク124内に貯えられたプレミックス樹脂組成物102を第1混練押出機106に供給するポンプ125とからなる。
【0005】
強化繊維103、108としては、それぞれリール114、115に巻回されたエンドレス連続繊維が用いられる。リール114から引き出された強化繊維103は、その先端部から第1混練押出機106内に連続的に供給される。また、リール115から引き出された強化繊維108は、その先端部から第2混練押出機109内に連続的に供給される。
【0006】
第1及び第2の混練押出機106、109は、バンドヒータを備えた加熱シリンダ内に1本乃至2本のスクリュを回転自在に収納してなり、加熱シリンダの基端側に設けられた原料供給孔106a、109aから加熱シリンダ内に上述した各種の原料を供給し、スクリュの送り機能によって原料を加熱シリンダの先端側に移送するようになっている。加熱シリンダ内に供給された原料は、その移送の過程で混練されると共に、原料中のプラスチック材料がバンドヒータの発熱、原料の混練に伴う剪断発熱及び摩擦熱によって可塑化され、所定の組成のコンパウンド107、110が生成される。第1及び第2の混練押出機106、109内に供給された強化繊維103、108は、スクリュの回転に伴う剪断力や摩擦力を受けて破断されるが、LFT−D装置は、第1及び第2の混練押出機106、109内にエンドレス連続繊維を連続的に供給するので、完成コンパウンド110中に長繊維を多く残すことができ、高強度の繊維強化プラスチック成形品113を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0317769A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のLFT−D装置は、第2混練押出機109から連続的に押し出される完成コンパウンド110を、第2混練押出機109の前方(プレス装置112側)に配置されたカッタ111にて切断する構成であるので、大型、高強度かつ鋭利なカッタ111を備える必要がある。即ち、第2混練押出機109から押し出された完成コンパウンド110は、急速に温度が低下して硬度が高くなるので、その切断には、鋭利にして大動力で駆動される大型かつ高強度のカッタ111が必要となる。このため、従来のコンパウンド供給装置は、設備コストが高く、設置面積が広くなるばかりでなく、カッタ111のメンテナンスに多大の労力が必要になって、成形品の製造効率を十分に高めることが難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、繊維強化プラスチック成形品の製造に用いる1プレス分のコンパウンドを、カッタを用いることなく生成できて、メンテナンスが容易な混練押出機を提供すること、及び、この混練押出機を備えた複合材プレス成形システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような技術的課題を解決するため、混練押出機に関しては、原料プラスチックの供給口及び少なくとも強化繊維を含む充填剤の供給口を有する加熱シリンダと、前記加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュと、前記加熱シリンダの先端に取り付けられたダイとを備えた混練押出機において、前記ダイに開設されたコンパウンド押出口を開閉するシャッタ部材を備え、前記シャッタ部材を閉じた状態で、前記スクリュを回転駆動して、前記原料プラスチックと前記充填剤との混練を行い、前記加熱シリンダ内に所定量のコンパウンドが貯えられる毎に、前記シャッタを開き、かつ前記スクリュを前進駆動して、前記コンパウンド押出口より所定量のコンパウンドを外部に押し出し、しかる後に、前記シャッタを閉じて次回のコンパウンドの混練を行うという動作を繰り返すことを特徴とする。
【0011】
混練押出機にコンパウンド押出口を開閉するシャッタ部材を備え、当該シャッタ部材を開閉することによって、コンパウンドの混練と混練押出機からのコンパウンドの押し出しとを交互に行うと、コンパウンドを1プレス分ずつ混練押出機から押し出すことができるので、従来技術とは異なり、コンパウンドを1プレス分の塊に切断するためのカッタが不要となる。従って、混練押出機を含むコンパウンド供給装置を小型化及び低コスト化できると共に、カッタのメンテナンスを不要にすることができて、複合材プレス成形システムの稼働効率を高めることができる。
【0012】
また本発明は、前記構成の混練押出機において、前記シャッタ部材の一辺に、前記コンパウンド押出口から押し出された1プレス分のコンパウンドを前記ダイの先端部から掻き落とすスクレーパを備えたことを特徴とする。
【0013】
ダイから押し出されるコンパウンドは粘性を有しており、ダイの前面に付着する。従って、シャッタ部材の一辺にスクレーパを備えると、ダイの前面に付着したコンパウンドを掻き落とすことができて、1プレス分のコンパウンドを正確に取り出すことができる。また、ダイの前面に付着したコンパウンドを掻き落とせることから、ダイの前面を常時清浄に保つことができ、ダイのメンテナンスを容易化できて、繊維強化プラスチック成形品の製造効率を高めることができる。
【0014】
また本発明は、前記構成の混練押出機において、前記シャッタ部材にヒータを備え、当該ヒータにて前記シャッタ部材を加熱することを特徴とする。
【0015】
ヒータを用いてシャッタ部材を適温に加熱すると、シャッタ部材に接するコンパウンドの温度低下による硬化を防止できるので、ダイの前面からのコンパウンドの掻き落としを容易に行うことができる。
【0016】
また本発明は、前記構成の混練押出機において、前記ダイにヒータを備え、当該ヒータにて前記ダイを加熱することを特徴とする。
【0017】
ヒータを用いてダイを適温に加熱すると、ダイ中に蓄えられたコンパウンドの温度低下による硬化を防止できるので、ダイからのコンパウンドの押し出しを容易かつ円滑に行うことができる。
【0018】
また本発明は、前記構成の混練押出機において、前記ダイを、前記加熱シリンダに直接又は他の部材を介して固着される固定部と、当該固定部に着脱可能に取り付けられる可変部とから構成し、前記可変部に前記コンパウンド押出口を開設したことを特徴とする。
【0019】
このように、コンパウンド押出口が開設された可変部を固定部に対して着脱可能に取り付ける構成にすると、コンパウンド押出口の形状が異なる適宜の可変部を選択することにより、ダイから押し出される1プレス分のコンパウンドの形状及びサイズを、製造しようとする繊維強化プラスチック成形品の形状及びサイズに合わせて適宜変更できる。よって、各種形状の繊維強化プラスチック成形品を高能率に製造できる。
【0020】
また本発明は、前記構成の混練押出機において、前記コンパウンド押出口の形成面及びその対向面を除く前記ダイの周囲を断熱板にて覆ったことを特徴とする。
【0021】
ダイの周囲を断熱板にて覆うと、ダイからの無駄な放熱を抑制できるので、ダイの内部に蓄えられたコンパウンドを適温に保持できる。また、電気ヒータを用いてダイを加熱する場合には、電気ヒータの省電力化を図ることができる。
【0022】
一方、本発明は、複合材プレス成形システムに関し、原料プラスチックの供給部と、当該供給部から供給される原料プラスチックに少なくとも強化繊維を含む充填剤を加えて混練し、生成されたコンパウンドを押し出す混練押出機と、当該混練押出機から供給される所定量のコンパウンドをプレス成形するプレス装置とを備えた複合材プレス成形システムにおいて、前記混練押出機として、加熱シリンダと、前記加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュと、前記加熱シリンダの先端に配置されたダイと、前記ダイに開設されたコンパウンド押出口を開閉するシャッタ部材を備えたものを用い、前記混練押出機は、前記シャッタ部材を閉じた状態で、前記スクリュを回転駆動して、前記原料プラスチックと前記充填剤との混練を行い、前記加熱シリンダ内に所定量のコンパウンドが貯えられる毎に、前記シャッタを開き、かつ前記スクリュを前進駆動して、前記コンパウンド押出口より所定量のコンパウンドを外部に押し出し、しかる後に、前記シャッタを閉じて次回のコンパウンドの混練を行うという動作を繰り返すことを特徴とする。
【0023】
混練押出機にコンパウンド押出口を開閉するシャッタ部材を備え、当該シャッタ部材を開閉することによって、コンパウンドの混練と混練押出機からのコンパウンドの押し出しとを交互に行うと、混練押出機からコンパウンドを1プレス分ずつ押し出すことができるので、従来技術とは異なりコンパウンドを1プレス分の塊に切断するためのカッタが不要となる。従って、複合材プレス成形システムの構成を簡略化できて、複合材プレス成形システムの小型化及び低コスト化が図れると共に、カッタのメンテナンスを不要にできて、繊維強化プラスチック成形品の製造効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、混練押出機にコンパウンド押出口を開閉するシャッタ部材を備え、混練押出機からコンパウンドを1プレス分ずつ押し出せるようにしたので、コンパウンドを1プレス分ずつの塊に切断するためのカッタが不要となり、装置の小型化及び低コスト化と、繊維強化プラスチック成形品の製造効率の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る複合材プレス成形システムの構成図である。
図2】実施形態に係る混練押出機の側面図である。
図3】実施形態に係る混練押出機に備えられるスクリュ駆動機構の平面図である。
図4】実施形態に係る混練押出機に備えられるスクリュ駆動機構の側面図である。
図5】実施形態に係る混練押出機の前方から見た要部斜視図である。
図6】実施形態に係る混練押出機のシャッタ閉鎖状態の要部断面図である。
図7】実施形態に係る混練押出機のシャッタ開放状態の要部断面図である。
図8】実施形態に係る混練押出機の動作シーケンスを示す図である。
図9】従来知られている複合材プレス成形システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る複合材プレス成形システム及びこれに備えられる混練押出機の実施の形態について説明する。
【0027】
実施の形態に係る複合材プレス成形システムは、図1に示すように、プレミックス生成部1と、リール2と、プレミックス生成部1から供給されるプレミックス樹脂組成物3にリール2から引き出される強化繊維4を混練して押し出す混練押出機5と、混練押出機5から1プレス分ずつ押し出されるコンパウンド6をプレス成形して所要の繊維強化プラスチック成形品7を製造するプレス装置8と、混練押出機5から押し出されるコンパウンド6をプレス装置8まで移送するコンベア装置9を備えている。なお、上述の複合材プレス成形システムには、必要に応じて、フィラー及び充填剤の供給装置などの他の装置を備えることももちろん可能である。
【0028】
プレミックス生成部1としては、特許文献1に記載のプレミックス生成部101(図9参照)と同様のものを備えることができる。また、これに代えて、ホッパ内に貯蔵されたペレット状、フレーク状又は粉末状の原料プラスチックを直接混練押出機5内に供給するものを備えることもできる。このように、プレミックス生成部1については、繊維強化プラスチック成形品7の製造に適用されるコンパウンド6の種類に応じて適宜使い分けることができる。
【0029】
混練押出機5に供給するプレミックス樹脂組成物3又は原料プラスチックとしては、公知に属する任意の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を用いることができる。また、強化繊維4としては、ガラス繊維、カーボン繊維、合成繊維、金属繊維、有機繊維及び天然繊維を用いることができる。なお、ガラス繊維、カーボン繊維を用いる場合には、数百本のフィラメントをバインダで集束してなるストランドを用いることができる。また、数本〜数十本のストランドを引き揃えてリールに巻回したロービングを用いることもできる。
【0030】
プレス装置8は、固定金型8aと可動金型8bとの間に、コンベア9を介して混練押出機5から移送されてくる1プレス分のコンパウンド6を挟み込み、可動金型8bを油圧等で固定金型8aに押し付けて、所要の繊維強化プラスチック成形品7を製造する。プレス装置8については、公知に属する事項であり、かつ本発明の要旨でもないので、これ以上の説明を省略する。
【0031】
混練押出機5は、図2乃至図7に示すように、図示しない制御装置、電源装置及びエアコンプレッサなどが収納された箱状のフレーム11と、フレーム11上に固定されたベース盤12と、ベース盤12上に設置された箱状のカバーケース13と、カバーケース13内に収納されたスクリュ駆動機構14とを備えている。スクリュ駆動機構14は、図1及び図4に示すように、ベース盤12の上面に設けられた案内レール12aに取り付けられる。スクリュ駆動機構14は、加熱シリンダ取付板15を含んで構成され、加熱シリンダ取付板15には、加熱シリンダ16が固定される。加熱シリンダ16内には、図3に示すように、スクリュ駆動機構14によって駆動されるスクリュ17が回転可能かつ前後進可能に収納される。さらに、加熱シリンダ16の先端部には、図5に示すように、コンパウンド押出口18aを有するダイ18と、ダイ18の表面側に配置され、コンパウンド押出口18aを開閉するシャッタ部材19と、ダイ18の表面に付着したコンパウンド6を掻き落とすスクレーパ20と、シャッタ部材19及びスクレーパ20を駆動するシャッタ駆動機構21が備えられる。
【0032】
スクリュ駆動機構14は、図3及び図4に示すように、加熱シリンダ取付板15と、これと対向に配置された移動板22を有する。加熱シリンダ取付板15は、案内レール12aに移動可能に固定される。これに対して、移動板22は、案内レール12aに移動可能に取り付けられ、加熱シリンダ取付板15に接近する方向及び加熱シリンダ取付板15から離隔する方向に移動できるようになっている。移動板22の幅方向には、2本のねじ軸23、24が所定の間隔を隔てて回転自在に保持されており、加熱シリンダ取付板15には、これらのねじ軸23、24を螺合するナット体25、26が固着されている。ねじ軸23、24とナット体25、26とは、2組のボールねじ機構を構成する。さらに、移動板22の上面には、スクリュ回転モータ27及びスクリュ前後進モータ28が取り付けられる。スクリュ回転モータ27の回転軸27aには第1プーリ29が固着され、スクリュ17には第2プーリ30が固着されていて、これら第1及び第2のプーリ29、30には第1タイミングベルト31が輪掛けされる。また、スクリュ前後進モータ28の回転軸28aには第3プーリ32が固着されると共に、ねじ軸23、24にはそれぞれ第4及び第5のプーリ33、34が固着されており、第3プーリ32と第4プーリ33に第2タイミングベルト35が輪掛けされると共に、第3プーリ32と第5プーリ34に第3タイミングベルト36が輪掛けされる。
【0033】
従って、スクリュ回転モータ27を回転駆動すると、その回転力が第1プーリ29、第1タイミングベルト31及び第2プーリ30を介してスクリュ17に伝達され、加熱シリンダ16内でスクリュ17が回転駆動される。また、スクリュ前後進モータ28を回転駆動すると、その回転力が第3プーリ32、第2タイミングベルト35及び第4プーリ33を介して第1ねじ軸23に伝達されると共に、第3プーリ32、第3タイミングベルト36及び第5プーリ34を介して第2ねじ軸24に伝達される。これにより、第1及び第2のねじ軸23、24が第1及び第2のナット体25、26にねじ込まれて、移動板22が加熱シリンダ取付板15に接近する方向に前進する。
【0034】
加熱シリンダ16は、内部にスクリュ17を回転可能かつ前後進可能に収納可能な筒状に形成されており、図3に示すように、その基端側にプレミックス生成部1から供給されるプレミックス樹脂組成物2(原料プラスチック)の供給孔41が開設されると共に、長さ方向の中間位置には強化繊維4の供給孔42が開設されている。さらに、加熱シリンダ16の外周には、図2に示すように、加熱シリンダ16内の原料及びコンパウンドを適温に加熱するための複数のバンドヒータ43が巻回されている。なお、加熱シリンダ16に形成されるスクリュ挿入孔の断面形状は円形である。
【0035】
スクリュ17は、外面にフライト(ねじ山)が形成された棒状の部材である。従って、このスクリュ17を加熱シリンダ16内で回転駆動すると、フライトの送り機能により、供給孔41、42から加熱シリンダ16内に供給されたプレミックス樹脂組成物2及び強化繊維4が、加熱シリンダ16の先端側に移送される。加熱シリンダ16内に供給された各材料は、その移送の過程で混練されると共に、プレミックス樹脂組成物2がバンドヒータ43の発熱、材料の混練に伴う剪断発熱及び摩擦熱によって可塑化され、所定のコンパウンド6が生成される。実施形態に係る混練押出機5も、従来例に係るLFT−D装置と同様に、加熱シリンダ16内に強化繊維4としてエンドレス連続繊維を供給するので、コンパウンド6中に長繊維を多く残すことができ、高強度の繊維強化プラスチック成形品7を得ることができる。また、スクリュ17を加熱シリンダ16内で前進駆動することにより、コンパウンド押出口18aからコンパウンド6を押し出すことができる。
【0036】
ダイ18は、図6及び図7に示すように、シリンダヘッド44及び中継ブロック45を介して、加熱シリンダ16の先端部に取り付けられる。ダイ18は、中継ブロック45に取り付けられる固定部51と、固定部51に着脱自在に取り付けられる可変部52とからなる。可変部52には、図5に示すように、長円形のコンパウンド押出口18aが開設される。また、固定部51には、加熱シリンダ16側がスクリュ挿入孔に連通する円形で、可変部52側がコンパウンド押出口18aに連通する長円形のコンパウンド流通孔51aが開設される。このように、ダイ18を固定部51及び可変部52から構成すると、コンパウンド押出口18aの形状が異なる適宜の可変部を選択することにより、ダイ18から押し出される1プレス分のコンパウンド6の形状及びサイズを、製造しようとする繊維強化プラスチック成形品の形状及びサイズに合わせて適宜変更できるので、プレス装置8による繊維強化プラスチック成形品7のプレス成形を適正化できると共に、バリの除去作業を軽減又は省略することができるので、繊維強化プラスチック成形品7の製造効率を高めることができる。なお、可変部52の前面は、図6及び図7に示すように、円弧状に形成される。
【0037】
可変部52の前面及びこれと対向する固定部51の後面を除くダイ18の周囲には、コンパウンド流通孔51a内に蓄えられたコンパウンドを適温に加熱するためのカートリッジヒータ53が設置される。また、カートリッジヒータ53の周囲は、断熱板54で覆われる。このように、ダイ18の周囲にカートリッジヒータ53を設置すると、コンパウンド流通孔51a内に蓄えられたコンパウンドの硬化を防止できるので、ダイ18からのコンパウンド6の押し出しを容易かつ円滑に行うことができる。また、カートリッジヒータ53の周囲を断熱板54で覆うと、ダイ18からの無駄な放熱を抑制できるので、ダイ18の内部に蓄えられたコンパウンド6を適温に保持できると共に、カートリッジヒータ53の省電力化を図ることができる。
【0038】
シャッタ部材19は、図5に示すように、可変部52の前面を覆うに足る形状及び面積を有する長方形に形成されており、その内面は、可変部52の前面にフィットする円弧形に形成される。また、シャッタ部材19の外面中央部には、後述するエアシリンダ66に連結される連結片19aが設けられる。シャッタ部材19の内部には、図6及び図7に示すように、シャッタ加熱ヒータ55が内挿される。このように、シャッタ部材19の内部にヒータ55を内挿すると、ヒータ55を用いてシャッタ部材19及びスクレーパ20を適温に加熱できるので、シャッタ部材19に接するコンパウンドの温度低下に伴う硬化を防止できて、ダイ18の前面からのコンパウンドの掻き落としを容易に行うことができる。シャッタ部材19の内面は、可変部52の前面に接する位置に配置され、可変部52の前面に沿って上下方向に回動される。
【0039】
一方、スクレーパ20は、可変部52の横幅よりも長い角棒状に形成されていて、シャッタ部材19の下辺に取り付けられる。スクレーパ20の下辺部は、エッジ状に形成されていて、可変部52の前面に付着したコンパウンド6を掻き落としやすくなっている。スクレーパ20の下辺は、可変部52の前面に接する位置に配置され、可変部52の前面に沿って上下方向に回動される。このように、シャッタ部材19の一辺にスクレーパ20を備えると、可変部52の表面に付着したコンパウンドの掻き落としが容易になるので、1プレス分のコンパウンド6を正確に取り出すことができる。また、可変部52の表面に付着したコンパウンド6を掻き落とせることから、可変部52のメンテナンスが容易になって、繊維強化プラスチック成形品の製造効率を高めることができる。
【0040】
シャッタ駆動機構21は、図5乃至図7に示すように、先端にシャッタ部材19及びスクレーパ20が取り付けられ、他端が連結ピン61を介してダイ18の側方部分に旋回可能に軸支されたアーム部材62と、先端がダイ18の側面部分に固着された下向きコの字形のスタンド部材63と、スタンド部材63の上面に相平行に起立された2本の支持部材64と、連結ピン65を介して支持部材64に回動可能に取り付けられたエアシリンダ66と、連結ピン67を介してエアシリンダ66のピストンロッド66aとシャッタ部材19に設けられた連結片19aとを回動可能に連結する連結部材68とからなる。なお、スタンド部材63は、ダイ18の下側に向けて取り付けることもできる。また、エアシリンダ66のピストンロッド66aをシャッタ部材19に連結する構成に代えて、アーム部材62に連結する構成とすることもできる。本例のシャッタ駆動機構21は、シャッタ部材19及びスクレーパ20の駆動源としてエアシリンダ66を備えたが、油圧駆動源や電動駆動源を用いることもできる。
【0041】
エアシリンダ66を伸長した状態においては、図6に示すように、シャッタ部材19が可変部52の前面と対向する位置に回動され、コンパウンド押出口18aがシャッタ部材19によって閉止される。この状態においては、コンパウンド押出口18aがシャッタ部材19によって閉止されているので、スクリュ16を回転駆動してもコンパウンド押出口18aからコンパウンド6が押し出されることがなく、コンパウンド6の混練及び計量が可能になる。エアシリンダ66を伸長状態から収縮状態に切り換えると、アーム部材62が連結ピン61を中心として回動し、図7に示すように、シャッタ部材19及びスクレーパ20が上方に移動されて、コンパウンド押出口18aが開放される。よって、コンパウンド押出口18aからのコンパウンド6の押し出しが可能になる。
【0042】
実施の形態に係る混練押出機5は、図8に示すように、シャッタ部材19によりコンパウンド押出口18aの閉止と、プレミックス樹脂組成物2と強化繊維4を含むコンパウンド6の可塑化、混練及び計量と、シャッタ19の開放と、コンパウンド押出口18aからのコンパウンド6の押し出しと、シャッタ部材19によるコンパウンド押出口18aの閉止とをこの順に行う。シャッタ部材19の開閉は、エアシリンダ66を伸縮することにより行われる。また、コンパウンドの可塑化及び混練は、インライン式の射出成形機と同様に、スクリュ回転モータ27を用いてスクリュ17を回転駆動することにより行われ、コンパウンドの計量は、スクリュ17の前方に送られるコンパウンドの圧力により、スクリュ17を設定位置まで後退させることにより行われる。さらに、コンパウンド6の押し出しは、スクリュ前後進モータ28を用いてスクリュ6を前進駆動することにより行われる。スクリュ回転モータ27及びスクリュ前後進モータ28の駆動制御、並びに、バンドヒータ43、カートリッジヒータ53及びシャッタ加熱ヒータ55の通電制御は、フレーム11内に備えられた図示しない制御装置により行われる。
【0043】
実施の形態に係る混練押出機5は、ダイ18に開設されたコンパウンド押出口18aを開閉するシャッタ部材19を備え、当該シャッタ部材19を開閉することによって、コンパウンド6の混練と混練押出機5からのコンパウンド6の押し出しとを交互に行うので、コンパウンド6を1プレス分ずつ押し出すことができる。よって、混練押出機からコンパウンドを連続的に押し出す場合とは異なり、コンパウンドを1プレス分の塊に切断するためのカッタが不要となり、複合材プレス成形システムに備えられるコンパウンド供給装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。また、カッタが不要であることから、コンパウンド供給装置のメンテナンスが容易になって、繊維強化プラスチック成形品7の製造効率を高めることができる。
【0044】
上記の実施の形態においては、コンパウンドの原料プラスチックとして熱可塑性樹脂を用いる場合を例にとって説明したが、熱硬化性樹脂を用いても、同様に実施可能である。また、上記の実施の形態においては、強化繊維を連続供給してコンパウンドを生成する場合を例にとって説明したが、チョップドファイバー(カットファイバー)を用いてコンパウンドを生成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、繊維強化プラスチック成形品の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 プレミックス生成部
2 リール
3 プレミックス樹脂組成物又は原料プラスチック
4 強化繊維
5 混練押出機
6 コンパウンド
7 繊維強化プラスチック成形品
8 プレス装置
9 コンベア
11 フレーム
14 スクリュ駆動機構
16 加熱シリンダ
17 スクリュ
18 ダイ
18a コンパウンド押出口
19 シャッタ部材
20 スクレーパ
21 シャッタ駆動機構
27 スクリュ回転モータ
28 スクリュ前後進モータ
43 バンドヒータ
53 カートリッジヒータ
55 シャッタ加熱ヒータ
62 アーム部材
66 エアシリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9