【解決手段】複合機10において、ロックピン177、搬送ローラ60及び排出ローラ62の駆動が搬送モータ152に集約されている。制御部140は、レバー部90が第1位置から第2位置へ移動されてからメディアトレイ110がプリンタ部11に挿入される前に、ロックピン177をロック状態からアンロック状態に移動させるので、ロックピン177の移動のための搬送モータ152の正転駆動によって、搬送ローラ60及び排出ローラ62が搬送向き87へ回転してとしても、メディアトレイ110が搬送向き87へ移動して排出ローラ62から離れることが抑制される。
第1ローラ及び当該第1ローラと対向する第2ローラを有し、上記第1ローラと上記第2ローラとが当接しておりシートを挟持可能な第1状態、及び上記第1ローラと上記第2ローラとが離間しており被記録媒体を支持するメディアトレイを挟持可能な第2状態に状態変化可能なローラ対と、
上記ローラ対よりもシートの搬送向きの下流側に配置されており、メディアトレイを支持可能な支持状態、及びメディアトレイを支持しない不支持状態に状態変化可能なトレイガイドと、
上記ローラ対により搬送されるシートまたは上記メディアトレイに支持された被記録媒体へ向けてノズルからインク滴を吐出する記録部と、
上記記録部のノズルを覆う被覆状態、及び上記記録部から離間した離間状態に状態変化可能なキャップと、
上記被覆状態のキャップ及び上記記録部を上記離間状態へ相対移動しないように保持するロック状態、並びに上記被覆状態のキャップ及び上記記録部を上記離間状態へ相対移動可能とするアンロック状態に状態変化するロック部材と、
第1駆動源と、
上記第1駆動源の一方向の回転を上記第1ローラへシートの搬送向きの回転として伝達し、かつ上記ロック部材が上記ロック状態から上記アンロック状態へ状態変化する駆動として伝達する駆動伝達機構と、
上記トレイガイドが支持状態であることを検知するトレイガイド検知部と、
上記第1駆動源の駆動を制御する制御部と、を具備しており、
上記制御部は、上記トレイガイド検知部が上記トレイガイドが支持状態であることを検知したことに応じて、上記ロック部材が上記ロック状態から上記アンロック状態へ状態変化するように上記第1駆動源を駆動するインクジェット記録装置。
上記制御部は、上記ロック部材がアンロック状態であり、かつ上記メディアトレイに支持された被記録媒体への印刷指示が入力されたことに応じて、上記第1駆動源の他方向の回転を上記第1ローラへシートの搬送向きと逆向きのメディアトレイの搬送向きの回転として伝達する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
上記駆動伝達機構は、上記記録部との当接によって、上記第1ローラ及び上記ロック部材へ駆動伝達する第1駆動伝達位置と、上記第1ローラへ駆動伝達し上記ロック部材へ駆動伝達しない第2駆動伝達位置とに切換可能であって、上記キャップ位置の上記記録部により上記第1駆動伝達位置に保持される請求項3に記載のインクジェット記録装置。
上記ローラ対は、上記トレイガイドが上記不支持状態から上記支持状態へ状態変化するのに連動して、上記第1状態から上記第2状態に状態変化する請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0020】
[複合機10の全体構造]
図1に示されるように、複合機10(インクジェット記録装置の一例)は、薄型の直方体に概ね形成されており、下部にプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、プリント機能として、インクジェット方式で記録用紙12(
図2参照)の片面に画像を記録する機能を有している。なお、複合機10は、記録用紙12の両面に画像を記録する機能を有していてもよい。また、複合機10は、後述するメディアトレイ110(
図2参照)に支持されたCD−ROMやDVD−ROMなどの記録メディア(被記録媒体の一例)の盤面上に画像を記録する機能を有する。この機能については後述される。
【0021】
[給送トレイ20]
図1に示されるように、プリンタ部11は、前面に開口13が形成された筐体14を有している。筐体14の正面には、開口13を通じて後方へ凹んだ凹部80が形成されている。給送トレイ20が、前後方向8に移動することによって、凹部80へ挿入可能であり凹部80から脱抜可能である。給送トレイ20は、上側が開放された箱形状の部材である。
図2に示されるように、給送トレイ20の底板22には、記録用紙12が支持される。給送トレイ20の前側且つ上側には、排出トレイ21が支持されている。排出トレイ21は、給送トレイ20と一体に前後方向8に移動する。排出トレイ21の上面には、後述される記録部24によって画像を記録された記録用紙12が排出される。
【0022】
[給送部16]
図2に示されるように、給送部16は、凹部80に挿入された状態の給送トレイ20の底板22の上方に設けられている。給送部16は、給送ローラ25、給送アーム26、及び駆動伝達機構27を備えている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端部で軸支されている。給送アーム26は、基端部に設けられた支軸28を中心として、矢印29の方向に回動可能である。これにより、給送ローラ25は、給送トレイ20の底板22または給送トレイ20に支持された記録用紙12に対して、当接及び離間が可能である。
【0023】
給送ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、搬送モータ152(
図10参照)の駆動力が伝達されて回転する。これにより、給送トレイ20の底板22に載置された記録用紙12のうち、給送ローラ25と当接している最も上側の記録用紙12が、後述する搬送路65へ給送される。
【0024】
[搬送路65]
図2に示されるように、筐体14内部において、給送トレイ20の後端部から搬送路65が延出されている。搬送路65は、湾曲部33と直線部34とを備える。湾曲部33は、給送トレイ20の後端部から上方へ向かって湾曲しつつ延びている。直線部34は、前後方向8に延びている。
【0025】
湾曲部33は、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とによって形成されている。直線部34は、記録部24が配置されている位置において、所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24とプラテン42とによって形成されており、記録部24より後方において、上側ガイド部材17と外側ガイド部材18とによって形成されている。
【0026】
給送トレイ20に支持された記録用紙12は、給送ローラ25によって湾曲部33へ給送され、湾曲部33から直線部34に亘って
図2に一点鎖線の矢印で示される搬送向き15に沿って搬送される。メディアトレイ110は、開口13から直線部34へ挿入され、直線部34に沿って前後方向8に搬送される。
【0027】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、直線部34の上側に設けられている。記録部24の下側且つ記録部24と対向する位置には、プラテン42が設けられている。
【0028】
プラテン42は、前後方向8及び左右方向9の長さが上下方向7の長さよりも長い平板形状の部材である。
図6に示されるように、プラテン42は、その上面に、搬送向き15と直交する左右方向9に間隔を空けて複数配置され且つ前後方向8に延設されたリブ120を備える。複数のリブ120は、直線部34を搬送される記録用紙12と下方から当接する。つまり、複数のリブ120は、記録用紙12を支持する。なお、プラテン42は、平板形状でなくてもよい。また、複数のリブ120が間隔を空けて並ぶ方向は、搬送向き15と直交する左右方向9に限らず、搬送向き15と交差する方向であればよい。
【0029】
図2及び
図7に示されるように、記録部24は、キャリッジ40と記録ヘッド38とを備えている。キャリッジ40は、前後方向8に間隔を空けて配置された2つのガイドレール56、57によって左右方向9(走査方向の一例)へ往復移動可能に支持されている。記録ヘッド38は、キャリッジ40に搭載されている。記録ヘッド38には、インクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。記録ヘッド38の下面には、ノズル39が形成されている。キャリッジ40が左右方向9に移動しているときに、記録ヘッド38は、ノズル39からインク滴をプラテン42に向けて吐出する。これにより、搬送向き15に搬送されてプラテン42に支持された記録用紙12またはメディアトレイ110に支持された記録メディアに画像が記録される。
【0030】
図7に示されるように、キャリッジ40からは、インクチューブ45及びフレキシブルフラットケーブル46が延出されている。インクチューブ45は、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジのインクを記録ヘッド38に供給する。フレキシブルフラットケーブル46は、制御部140が実装された制御基板と記録ヘッド38とを接続する。
【0031】
キャリッジ40は、前後方向8に離間する位置において各々が左右方向9に延設されたガイドレール56、57に支持されている。キャリッジ40は、ガイドレール56に設けられた公知のベルト機構に連結されている。ベルト機構は、左右方向9におけるガイドレール56の右端に設けられた駆動プーリ47と、左端に設けられた従動プーリ48と、駆動プーリ47及び従動プーリ48に巻回された無端環状のベルト49とを有する。キャリッジ40は、その底面側においてベルト49に連結されている。キャリッジモータ153(
図10参照、第2駆動源の一例)の駆動力によって回転する駆動プーリ47がベルト49を周運動させることにより、キャリッジ40は左右方向9に往復移動する。
【0032】
ガイドレール56には、左右方向9に延びる帯状のエンコーダストリップ37が設けられている。エンコーダセンサ36(走査検知部の一例)は、キャリッジ40の上面に搭載されている。また、エンコーダセンサ36とエンコーダストリップ37とは、上下方向7において対向する位置に配置されている。キャリッジ40が移動する過程において、エンコーダセンサ36は、エンコーダストリップ37を読み取ってパルス信号を生成し、生成したパルス信号を制御部140に出力する。
【0033】
[プラテン42]
プラテン42は、搬送向き15における搬送ローラ対59及び排出ローラ対44の間に設けられている。プラテン42は、上下方向7において記録部24に対向するようにして配置されており、搬送ローラ対59によって搬送される記録用紙を下側から支持する。
【0034】
[搬送ローラ対59及び排出ローラ対44]
図2に示されるように、直線部34における記録部24及びプラテン42よりも搬送向き15の上流側であって、給送トレイ20よりも搬送向き15の下流側には、搬送ローラ対59が配置されている。直線部34における記録部24よりも搬送向き15の下流側には、排出ローラ対44(ローラ対の一例)が配置されている。
【0035】
図2及び
図4に示されるように、搬送ローラ対59は、直線部34の上側に配置された搬送ローラ60と、直線部34の下側に搬送ローラ60と対向して配置されたピンチローラ61とを備えている。搬送ローラ60は、左右方向9に延びた円柱状の部材である。ピンチローラ61は、左右方向9に間隔を空けて複数設けられている。各ピンチローラ61は、後述する移動機構50を構成する部材の一つであって各ピンチローラ61に対応して設けられた支持部材55によって回転可能に支持されている。各支持部材55は、弾性部材66によって搬送ローラ60側に付勢されている。これにより、各ピンチローラ61は、弾性部材66に搬送ローラ60側へ付勢されることによって搬送ローラ60を押圧している。なお、本実施形態では、ピンチローラ61は2個で1組となったものが4個、つまり8個設けられているが、ピンチローラ61の数は8個に限らない。
【0036】
図2に示されるように、排出ローラ対44は、直線部34の下側に配置された排出ローラ62(第1ローラの一例)と、直線部34の上側に排出ローラ62と対向して配置された拍車63(第2ローラの一例)とを備えている。
図4に示されるように、排出ローラ62は、左右方向9に延びた軸64と、左右方向9に間隔を空けて軸64に取り付けられたローラ部58とを備えている。拍車63は、左右方向9に間隔を空けて複数設けられている。各拍車63は、ローラ部58と対向する位置に設けられている。排出ローラ62は、弾性部材によって拍車63側へ付勢されている。
【0037】
搬送ローラ対59及び排出ローラ対44は、後述するように記録用紙12またはメディアトレイ110を挟持可能である。また、搬送ローラ60及び排出ローラ62は、搬送モータ152(
図6参照)から正転の駆動力が伝達されて正転し、逆転の駆動力が伝達されて逆転する。
【0038】
搬送ローラ対59に記録用紙12またはメディアトレイ110が挟持されている状態において、搬送ローラ60が正転すると、記録用紙12またはメディアトレイ110は、搬送ローラ対59によって直線部34を、搬送向き15、つまり前向きに搬送され、搬送ローラ60が逆転すると、記録用紙12またはメディアトレイ110は、搬送ローラ対59によって直線部34を、搬送向き15と逆向き、つまり後向きに搬送される。
【0039】
また、排出ローラ対44に記録用紙12またはメディアトレイ110が挟持されている状態において、排出ローラ62が正転すると、記録用紙12またはメディアトレイ110は、排出ローラ対44によって直線部34を、搬送向き15、つまり前向きに搬送されて排出トレイ21に排出され、排出ローラ62が逆転すると、記録用紙12またはメディアトレイ110は、排出ローラ対44によって直線部34を、搬送向き15と逆向き、つまり後向きに搬送される。
【0040】
[搬送ローラ対59、排出ローラ対44、及びプラテン42の状態変化]
図4及び
図5に示されるように、プリンタ部11には、移動機構50が設けられている。移動機構50は、支持部材55と、支持部材55の左右両端部から下方へ突出しており孔53が形成された凸部52と、左右方向9に延びており孔53に挿通されたシャフト54と、レバー部90とを備えている。シャフト54の左右両端部は、レバー部90に設けられた開口91(
図3参照)に挿通されている。
【0041】
凸部52は、複数のピンチローラ61のうち左右両端側に設けられたピンチローラ61Aの軸51Aに設けられた凸部52Aと、左右方向9における中央側に設けられたピンチローラ61Bの軸51Bに設けられた凸部52Bとで構成されている。
【0042】
ピンチローラ61Aは、左右方向9において、複合機10に挿入された状態のメディアトレイ110の右端及び左端付近に対応する位置に設けられている。一方、ピンチローラ61Bは、左右方向9において、複合機10に挿入された状態のメディアトレイ110の中央付近に対応する位置に設けられている。
【0043】
凸部52Aに設けられた孔53Aを構成する内周面の上端は、凸部52Bに設けられた孔53Bを構成する内周面の上端と同じ高さである。孔53Aを構成する内周面の下端は、孔53Bを構成する内周面の下端よりも低い位置である。つまり、孔53Aは、孔53Bよりも大きい。
【0044】
排出ローラ62の軸64の左右両端部は、レバー部90に設けられた開口92(
図3参照)に挿通されている。
【0045】
搬送ローラ対59は、シャフト54が上下動することによって、ピンチローラ61が搬送ローラ60と当接しており記録用紙12を挟持可能な第1状態(
図5(A)参照)、及びピンチローラ61が搬送ローラ60から離間しておりメディアトレイ110を挟持可能な第2状態(
図5(C)参照)に状態変化する。
【0046】
排出ローラ対44は、排出ローラ62の軸64が上下動することによって、拍車63が排出ローラ62と当接しており記録用紙12を挟持可能な第1状態(
図2に実線で示される状態)、及び排出ローラ62が拍車63から離間しておりメディアトレイ110を挟持可能な第2状態(
図2に破線で示される状態)に状態変化する。シャフト54及び軸64の上下動は、レバー部90が前後方向8に移動することによって実行される。
【0047】
図3に示されるように、プラテン42の左右両側面には、外側に向けて突出した突起43が設けられている。突起43は、レバー部90に設けられた開口130に挿通されている。プラテン42は、突起43が上下動することによって、記録部24との間に間隔D1を有した第1状態(
図3(A)参照)、及び記録部24との間に間隔D1よりも大きな間隔D2を有した第2状態(
図3(B)参照)に状態変化する。
【0048】
記録用紙12が直線部34を搬送される際、プラテン42は第1状態に状態変化されて記録用紙12を支持する。メディアトレイ110が直線部34を搬送される際、プラテン42は第2状態に状態変化される。これにより、プラテン42は、搬送されるメディアトレイ110よりも下方に位置する。その結果、搬送されるメディアトレイ110は、プラテン42と接触しない。
【0049】
以上より、搬送ローラ対59、排出ローラ対44、及びプラテン42は、記録用紙12に画像記録される際に第1状態に状態変化され、メディアトレイ110に支持された記録メディアに画像記録される際に第2状態に状態変化される。この状態変化は、ユーザがレバー部90を移動させることによって行われる。
【0050】
[レバー部90]
図3に示されるように、プリンタ部11には、レバー部90が前後方向8に移動可能に配置されている。レバー部90は、
図3(A)に示される位置である第1位置と、第1位置よりも前側の位置であって
図3(B)に示される位置である第2位置との間で移動可能である。
【0051】
図6に示されるように、レバー部90は、ユーザによって把持される把持部93と、把持部93の左右両端部から後方へ延びており把持部93及び案内部95を連結する一対の接続部94と、接続部94の後端部から後方へ延びた一対の案内部95とを備えている。
【0052】
図1に示されるように、把持部93は、凹部80における開口13近傍であって、開口13の上端近傍に配置されている。
図6に示されるように、把持部93は、左右方向9に延びた部材である。把持部93の左右方向9の中央部には、開口96が設けられている。ユーザは、開口96に指を入れることによって把持部93を把持することができる。
【0053】
接続部94は前後方向8に長い平板形状の部材である。一対の接続部94の一方は、凹部80の右端近傍且つ上端近傍を前後方向8に延びている。一対の接続部94の他方は、凹部80の左端近傍且つ上端近傍を前後方向8に延びている。接続部94は、プリンタ部11の筐体14の内側面81(
図1参照)によって、前後方向8に移動可能に支持されている。
【0054】
一対の接続部94の間の左右方向9に沿った距離は、メディアトレイ110の左右方向9に沿った寸法より短い。また、一対の接続部94の上面は、前後方向8及び左右方向9に沿った平面であり、この平面上にメディアトレイ110が支持される。つまり、接続部94は、レバー部90が第2位置であるときにトレイガイドとして機能する。換言すれば、レバー部90が第1位置である状態が接続部94がメディアトレイ110を支持しない不支持状態であり、レバー部90が第2位置である状態が接続部94がメディアトレイ110を支持する支持状態である。
【0055】
図3及び
図6に示されるように、案内部95は、前後方向8において排出ローラ対44から搬送ローラ対59の後方まで延びている。案内部95は、搬送路65の右端よりも右側及び搬送路65の左端よりも左側に、一対に配置されている。なお、図示されていないが、案内部95は、プリンタ部11のフレーム82(
図4参照)に支持されている。
【0056】
図3に示されるように、案内部95には、開口91、92と、2つの開口130が設けられている。開口91は、前側が後側よりも高位置である傾斜面97と、傾斜面97の前端と繋がっており前後方向8に延びた水平面98Aと、傾斜面97の後端と繋がっており前後方向8に延びた水平面98Bとを備えている。
【0057】
開口92は、前側が後側よりも高位置である傾斜面99と、傾斜面99の前端と繋がっており前後方向8に延びた水平面100Aと、傾斜面99の後端と繋がっており前後方向8に延びた水平面100Bとを備えている。
【0058】
開口130は、前側が後側よりも高位置である傾斜面131と、傾斜面131の前端と繋がっており前後方向8に延びた水平面132Aと、傾斜面131の後端と繋がっており前後方向8に延びた水平面132Bとを備えている。
【0059】
以下、レバー部90の移動に伴う搬送ローラ対59の状態変化について説明する。
図3(A)及び
図5(A)に示されるように、レバー部90が第1位置に位置しているとき、シャフト54は、開口91における水平面98Aの下方に位置している。このとき、ピンチローラ61は、弾性部材66(
図4参照)の付勢力によって搬送ローラ60に圧接されている。つまり、搬送ローラ対59は第1状態である。
【0060】
ユーザが、把持部93を把持して、レバー部90を前向きに引っ張ると、レバー部90は、第1位置から前方に移動する。これにより、シャフト54は傾斜面97と当接する。レバー部90が更に前方に移動すると、シャフト54は、傾斜面97に対して摺動しながら相対移動する。これにより、シャフト54は、傾斜面97に案内されて下方に移動する。
【0061】
すると、シャフト54は、凸部52Bの孔53Bを構成する内周面の下端と当接し、当該下端を押す。これにより、凸部52Bと一体形成された支持部材55、及び当該支持部材55に支持されたピンチローラ61Bは、下方に移動する。その結果、ピンチローラ61Bは、搬送ローラ60から離間する。なお、この時点では、凸部52Aと一体形成された支持部材55、及び当該支持部材55に支持されたピンチローラ61Aは、移動しない。
【0062】
ピンチローラ61Bが搬送ローラ60から離間した状態で、レバー部90が更に前方に移動すると、シャフト54は更に下方に移動する。そして、
図5(B)に示されるように、シャフト54は、凸部52Aの孔53Aを構成する内周面の下端と当接し、当該下端を押す。これにより、凸部52Aと一体形成された支持部材55、及び当該支持部材55に支持されたピンチローラ61Aは、下方に移動する。その結果、
図5(C)に示されるように、ピンチローラ61Aは、搬送ローラ60から離間する。つまり、搬送ローラ対59は第2状態となる。
【0063】
レバー部90が更に前方に移動すると、
図3(B)に示されるように、シャフト54は、弾性部材66の付勢力によって水平面98Bと圧接した状態となる。このとき、レバー部90は第2位置に到達している。すなわち、レバー部90が第2位置のとき、搬送ローラ対59は第2状態である。
【0064】
図5(C)では、ピンチローラ61Bと搬送ローラ60との距離D3は、ピンチローラ61Aと搬送ローラ60との距離D4よりも大きい。これは、ピンチローラ61Bがピンチローラ61Aよりも先に下方への移動を開始したからである。つまり、移動機構50は、複数のピンチローラ61の一部であるピンチローラ61Aを、搬送ローラ60から離間する向きである下方に距離D4移動させ、複数のピンチローラ61のうちのピンチローラ61A以外のピンチローラ61Bを、下方に距離D3移動させることによって、搬送ローラ対59を第1状態から第2状態へ状態変化させる。
【0065】
距離D3は、メディアトレイ110の厚み(複合機10に挿入された状態における上下方向7の長さ)よりも大きい。一方、距離D4は、メディアトレイ110の厚みよりも小さい。これにより、複合機10に挿入されたメディアトレイ110は、搬送ローラ60とピンチローラ61Aとによって挟持されるが、搬送ローラ60とピンチローラ61Bとによって挟持されない。
【0066】
以下、レバー部90の移動に伴う排出ローラ対44の状態変化について説明する。
図3(A)に示されるように、レバー部90が第1位置に位置しているとき、排出ローラ62の軸64は、開口92における水平面100Aの下方に位置している。このとき、排出ローラ62は、弾性部材(不図示)の付勢力によって拍車63に圧接されている。つまり、排出ローラ対44は第1状態である。
【0067】
ユーザが、把持部93を把持して、レバー部90を前向きに引っ張ると、レバー部90は、第1位置から前方に移動する。これにより、軸64は傾斜面99と当接する。レバー部90が更に前方に移動すると、軸64は、傾斜面99に対して摺動しながら相対移動する。これにより、軸64は、下方に移動する。つまり、排出ローラ62は、下方に移動する。その結果、排出ローラ62は、傾斜面99に案内されて下方に移動し、拍車63から離間する。つまり、排出ローラ対44は第2状態となる。
【0068】
レバー部90が更に前方に移動すると、
図3(B)に示されるように、軸64は、弾性部材の付勢力によって水平面100Bと圧接した状態となる。このとき、レバー部90は第2位置に到達している。すなわち、レバー部90が第2位置のとき、排出ローラ対44は第2状態である。
【0069】
以下、レバー部90の移動に伴うプラテン42の状態変化について説明する。
図3(A)に示されるように、レバー部90が第1位置に位置しているとき、プラテン42の突起43は、開口130における水平面132Aの下方に位置している。このとき、プラテン42は、第1状態である。
【0070】
ユーザが、把持部93を把持して、レバー部90を前向きに引っ張ると、レバー部90は、第1位置から前方に移動する。これにより、突起43は傾斜面131と当接する。レバー部90が更に前方に移動すると、突起43は、傾斜面131に対して摺動しながら相対移動する。これにより、突起43は、下方に移動する。つまり、プラテン42は、下方に移動し第2状態となる。
【0071】
レバー部90が更に前方に移動すると、
図3(B)に示されるように、突起43は、弾性部材の付勢力によって水平面132Bと圧接した状態となる。このとき、レバー部90は第2位置に到達している。すなわち、レバー部90が第2位置のとき、プラテン42は第2状態である。
【0072】
レバー部90が第2位置から第1位置に移動するときには、上述と逆の動作となる。つまり、シャフト54が水平面98Bから離間して傾斜面97に対して摺動することによって、ピンチローラ61が上方へ移動して搬送ローラ60と当接する。また、軸64が水平面100Bから離間して傾斜面99に対して摺動することによって、排出ローラ62が上方へ移動して拍車63と当接する。また、突起43が水平面132Bから離間して傾斜面131に対して摺動することによって、プラテン42が上方へ移動する。
【0073】
以上より、レバー部90は、搬送ローラ対59、排出ローラ対44、及びプラテン42を第1状態とする第1位置、並びに搬送ローラ対59、排出ローラ対44、及びプラテン42を第2状態とする第2位置の間で移動可能である。
【0074】
[レバー部センサ122]
図1には現れていないが、レバー部センサ122(トレイガイド検知部の一例)は、筐体14の内側面81に設けられている。レバー部センサ122は、上下方向7においてレバー部90が第1位置に存在するか否かを検知するために用いられる。レバー部センサ122は、発光ダイオード等からなる発光部と、光学式センサなどからなる受光部とを備えている。発光部は、制御部140によって指示された光量の光をレバー部90へ向けて照射する。レバー部90へ照射された光は、レバー部90において反射され、反射された光が受光部で受光される。
【0075】
レバー部センサ122は、受光部の受光量に応じた検知信号を制御部140へ出力する。例えば、レバー部センサ122は、受光量が大きい程、レベルの高い検知信号を制御部140へ出力する。制御部140は、レバー部センサ122から出力される検知信号の信号レベルが閾値レベルより高いことを条件として、レバー部90が第1位置に存在すると判断する。一方、制御部140は、検知信号の信号レベルが閾値レベル以下であることを条件として、レバー部90が第1位置に存在しないと判断する。
【0076】
[メンテナンス機構70]
複合機10は、更に
図8に示されるメンテナンス機構70を備えている。メンテナンス機構70は、
図7に示されるように、記録用紙に対面し得るキャリッジ40の移動範囲(以下、「記録領域」と表記する。)から右方に外れた位置に配置されている。メンテナンス機構70は、キャリッジ40が記録領域より右側の位置(以下、「キャップ位置」と表記する。)に移動したときに、記録ヘッド38に形成されたノズル39からインクと共に気泡や異物を吸引除去するパージ処理を実行する。メンテナンス機構70は、記録ヘッド38のノズル39が形成された面(以下、「ノズル面」と表記する。)を覆うキャップ71と、キャップ71をノズル面に接離させるためのリフトアップ機構73と、キャップ71に連通されて吸引を行うポンプ76(
図10参照)とを備えている。
【0077】
キャップ71は、ゴムにより構成されている。キャップ71は、リフトアップ機構73により記録ヘッド38のノズル面に密着して、当該ノズル面との間に密閉空間を形成する。ポンプ76は、例えば、ロータリ式のチューブポンプである。ポンプ76が搬送モータ152(第1駆動源の一例)に駆動されることによって、キャップ71とノズル面との間に形成された密閉空間が負圧状態になる。メンテナンス機構70は、当該密閉空間を負圧状態にすることによって、ノズル39からインクと共に気泡や異物を吸引除去する。
【0078】
リフトアップ機構73は、左右一対の等長リンク74を備える。この等長リンク74が回動することで、
図8(A)の位置と
図8(B)の位置との間でホルダ75が移動する。ホルダ75は、鉛直上方へ突出された当接レバー77を保持している。キャリッジ40がキャップ位置へ向かって右方に移動する際に当接レバー77を右向きへ押圧することで、
図8(B)の位置にホルダ75が移動する。キャップ71は、ホルダ75が
図8(B)の位置に移動することで、ノズル39を覆うようにノズル面に密着する(被覆状態)。また、キャリッジ40がキャップ位置から左方に移動すると、
図8(A)の位置にホルダ75が移動し、キャップ71が記録ヘッド38から離間する(離間状態)。
【0079】
図7に示されるように、ホルダ75には、上下方向7に移動可能なロックピン177(ロック部材の一例)が設けられている。ロックピン177は、左右方向9においてキャップ71の左方に配置されている。すなわち、ロックピン177は、記録ヘッド38のノズル39とは対応しない位置に配置されている。ロックピン177は、搬送モータ152から駆動伝達されて上下方向7に移動可能であり、その上端がキャップ71の上端面より上方に位置するロック状態(
図8(B)参照)と、その上端がキャップ71の上端面より下方に位置するアンロック状態(
図8(A)参照)とに変化する。
【0080】
ロック状態において、ロックピン177は記録ヘッド38の下面に形成されたロック孔178(
図2参照)に進入する。ロックピン177がロック孔178に進入することによって、記録ヘッド38を搭載するキャリッジ40がキャップ71の上方から左右方向9へ移動しないように保持される。アンロック状態において、ロックピン177は記録ヘッド38のロック孔178から退避する。これにより、記録ヘッド38を搭載するキャリッジ40がキャップ71に対して左右方向9へ移動可能となる。
【0081】
[駆動伝達機構154]
図10に示される駆動伝達機構154は、搬送モータ152の駆動力を、給送ローラ25、搬送ローラ60、排出ローラ62、及びメンテナンス機構70(ロックピン177)へ伝達する。駆動伝達機構154は、歯車、プーリ、無端環状のベルト、遊星歯車機構(振子ギヤ機構)、及びワンウェイクラッチ等の全部又は一部を組み合わせて構成される。駆動伝達機構154は、搬送モータ152の駆動力の伝達先を切り替える切替機構170を備えている。
【0082】
[切替機構170]
切替機構170は、搬送モータ152の駆動力を、メンテナンス機構70に伝達しない非伝達状態と、メンテナンス機構70に伝達する伝達状態とに状態変化が可能に構成されている。切替機構170は、
図7に示されるように、プラテン42よりも右側に設けられている。切替機構170は、
図9に示されるように、切替ギヤ171と、2つのギヤ172A、172Dと、押圧部材175と、保持部173とを備える。
【0083】
切替ギヤ171は、支軸174を中心として回転可能で且つ支軸174の軸方向(すなわち、左右方向9)に沿って移動可能である。なお、支軸174は、メンテナンス機構70に保持されている。切替ギヤ171には、搬送モータ152の駆動力が搬送ローラ60を通じて伝達される。ギヤ172A、172Dは、支軸174の下側において左右方向9に沿った同軸上に回転可能であり、切替ギヤ171に噛合可能に構成されている。すなわち、切替ギヤ171は、左右方向9に移動することによって、ギヤ172A、172Dのいずれかと噛合する。ギヤ172Aは、搬送モータ152の駆動力を給送ローラ25に伝達するギヤである。ギヤ172Dは、搬送モータ152の駆動力をメンテナンス機構70に伝達するギヤである。
【0084】
押圧部材175は、切替ギヤ171の右側に位置しており、左右方向9にスライド自在に支軸174に挿通されている。当接レバー176は、押圧部材175から上方に突出し、環形状の内側に保持部173を有するレバーガイド179の内部空間を通ってキャリッジ40の移動経路にまで延びている。切替ギヤ171は第1バネによって右向きに付勢され、押圧部材175は第2バネによって左向きに付勢されている。また、第2バネの付勢力は、第1バネの付勢力より大きい。その結果、
図9(B)に示される切替ギヤ171及び押圧部材175は、左向きに付勢されている。
【0085】
左右方向9の右方へ移動するキャリッジ40に当接された当接レバー176は、押圧部材175を保持部173より右方へ移動し、押圧部材175を切替ギヤ171から離間させる。これにより、切替ギヤ171は、第1バネの付勢力によって右方に移動し、
図9(A)に示されるようにギヤ172Dと噛合する。ギヤ172Dと噛合する切替ギヤ171の位置が第1駆動伝達位置である。また、当接レバー176を保持部173より右方に保持しているキャリッジ40の位置が、キャリッジ40がリフトアップ機構73の当接レバー77に当接して、キャップ71を記録ヘッド38の下面に接触させるキャップ位置である。
【0086】
一方、キャリッジ40が左右方向9の左方へ移動して当接レバー176から離間すると、押圧部材175は第2バネの付勢力によって保持部173の左方へ移動し、切替ギヤ171を左方に移動させる。キャリッジ40が右方へ移動して再び当接レバー176に当接すると、当接レバー176は保持部173を乗り越える。その後、キャリッジ40が当接レバー176から離れることにより、当接レバー176が保持部173と係合した状態に保持される。これにより、切替ギヤ171は、
図9(B)に示されるように、ギヤ172Aと噛合する。ギヤ172Aと噛合する切替ギヤ171の位置が第2駆動伝達位置である。
【0087】
切替ギヤ171とギヤ172Aとが噛合されている状態(すなわち、
図9(B)に示される非伝達状態)において、駆動伝達機構154は、搬送モータ152の駆動力を給送ローラ25に伝達し且つメンテナンス機構70に伝達しない。一方、切替ギヤ171とギヤ172Dとが噛合されている状態(すなわち、
図9(A)に示される伝達状態)において、駆動伝達機構154は、搬送モータ152の駆動力をメンテナンス機構70に伝達し且つ給送ローラ25に伝達しない。換言すれば、切替機構170は、キャリッジ40が記録領域内に位置していることを条件として非伝達状態となり、キャリッジ40が記録領域外のキャップ位置に位置していることを条件として伝達状態となる。
【0088】
また、排出ローラ62は、ギヤ又はベルト等を介して搬送ローラ60と連結されている。これらベルト等は、上記切替機構の170の作用を受けない様に構成されている。例えば、ギヤ又はベルト等は、プラテン42よりも左側に設けられている。すなわち、本実施形態における搬送ローラ60及び排出ローラ62は、切替機構170の状態にかかわらず、搬送モータ152の正転駆動によって正転(記録用紙を搬送向き15に搬送する回転)し、搬送モータ152の逆転駆動によって逆転(記録用紙を搬送向き15と逆向きに搬送する回転)する。
【0089】
駆動伝達機構154は、伝達状態において、搬送モータ152の正転駆動をロックピン177へ伝達し、また、搬送モータ152の逆転駆動をポンプ76へ伝達する。したがって、切替ギヤ171とギヤ172Dとが噛合されている状態において、搬送モータ152が正転駆動するとロックピン177がロック状態又はアンロック状態に状態変化され、搬送モータ152が逆転駆動するとポンプ76が駆動する。このような駆動伝達機構154は、例えば駆動伝達するギヤ列に、ロックピン177へ駆動伝達するギヤ又はポンプ76へ駆動伝達するギヤに選択的に噛合する遊星ギヤ設けられることにより実現される。
【0090】
[制御部140]
図10に示されるように、制御部140は、CPU141、ROM142、RAM143、EEPROM144、及びASIC145を備えており、これらはバス147によって接続されている。ROM142には、CPU141が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM143は、CPU141が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM144には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0091】
ASIC145には、搬送モータ152及びキャリッジモータ153が接続されている。ASIC145は、各モータを回転させるための駆動信号をCPU141から取得し、駆動信号に応じた駆動電流を各モータに出力する。各モータは、ASIC145からの駆動電流によって正転駆動又は逆転駆動される。例えば、制御部140は、搬送モータ152の駆動を制御することによって、各ローラを回転させ又はメンテナンス機構70を駆動させる。また、制御部140は、キャリッジモータ153の駆動を制御することによって、キャリッジ40を往復移動させる。さらに、制御部140は、記録ヘッド38を制御してノズル39からインクを吐出させる。
【0092】
また、ASIC145には、エンコーダセンサ36と、ロータリエンコーダ121と、レバー部センサ122とが接続されている。制御部140は、エンコーダセンサ36から出力されるパルス信号に基づいて、キャリッジ40の位置を検出する。また、制御部140は、レバー部センサ122から出力される信号に基づいて、レバー部90が第1位置にあるか否かを判断する。
【0093】
ロータリエンコーダ121は、搬送ローラ60の回転(換言すれば,搬送モータ152の回転駆動)に応じてパルス信号を発生させるものである。ロータリエンコーダ121は、搬送ローラ60の回転軸に設けられたエンコーダディスクと、エンコーダディスクの回転量(エンコーダ量)を検知する光学センサとを備える。光学センサは、回転するエンコーダディスクを読み取ってエンコーダ量に応じたパルス信号を生成し、生成したパルス信号を制御部140に出力する。
【0094】
[メディア印刷]
以下、
図11が参照されつつ、複合機10においてメディア印刷が行われる場合の動作が説明される。なお、プリンタ部11においては、画像記録が終了したときや電源がオンされたときに、キャリッジ40がキャップ位置に移動して記録ヘッド38のノズル面がキャップ71によって覆われ、また、ロックピン177がロック状態、すなわち記録ヘッド38のロック孔178に進入した状態にされる。したがって、メディア印刷が実行される直前において、キャリッジ40はキャップ位置にあり、記録ヘッド38のノズル面がキャップ71によって覆われ、ロックピン177がロック状態にある。
【0095】
メディアトレイ110が複合機10のプリンタ部11に挿入される前に、ユーザの操作によってレバー部90が第1位置から第2位置へ移動される。このレバー部90の移動に伴って、搬送ローラ対59、排出ローラ対44、及びプラテン42が第1状態から第2状態へ状態変化する。つまり、ピンチローラ61、排出ローラ62、及びプラテン42は、
図2に実線で示される位置から破線で示される位置へ移動する。これにより、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44は、メディアトレイ110を挟持して直線部34に沿って搬送可能な状態となる。また、プラテン42は、下方へ移動する。つまり、プラテン42は、直線部34を搬送されるメディアトレイ110と接触しない位置へ退避する。
【0096】
レバー部センサ122は、レバー部90が第1位置から移動することによって、閾値レベル以下の信号を制御部140に出力する。制御部140は、レバー部センサ122が出力する信号が閾値レベル以下であることに基づいてレバー部90が第1位置に無いと判断する(ステップS11 No)。
【0097】
制御部140は、レバー部90が第1位置に無いと判断すると、ロックピン177をロック状態からアンロック状態にする(ステップS12)。すなわち、キャリッジ40はキャップ位置にあり、記録ヘッド38のノズル面がキャップ71によって覆われている。また、切替ギヤ171は、ギヤ172Dと噛合した第1駆動伝達位置にある。この状態において、制御部140が搬送モータ152を正転駆動すると、駆動伝達機構154を介してロックピン177が下降し、ロック状態からアンロック状態に状態変化する。このとき、搬送ローラ60及び排出ローラ62は搬送向き87に回転するが、搬送ローラ60及び排出ローラ62は、メディアトレイ110などに当接していないので、搬送ローラ60及び排出ローラ62は空転する。
【0098】
ユーザによりレバー部90が第2位置にされた後、ユーザは、記録メディアが載置されたメディアトレイ110を開口13におけるレバー部90の上方へ差し込み、プリンタ部11内部の直線部34へ向けて搬送向き87と逆向きへ挿入する。
【0099】
しかしながら、ユーザがレバー部90を第2位置にした後、メディアトレイ110をプリンタ部11に未だ差し込まない状態のまま放置されることも想定される。そして、複合機10が移動されたり、複合機10に何らかの外力が加わったりすることにより、キャリッジモータ153が駆動されていないのに、キャリッジ40がキャップ位置から移動することが生じ得る。制御部140は、キャリッジ40がキャップ位置から移動したか否かをエンコーダセンサ36の出力信号に基づいて監視する(ステップS13)。そして、制御部140は、キャリッジ40がキャップ位置から移動したと判断したときは(ステップS13 Yes)、キャリッジモータ153を駆動して、キャリッジ40をキャップ位置へ移動する(ステップS14)。
【0100】
他方、ユーザによりメディアトレイ110が開口13から差し込まれると、そのメディアトレイ110は、レバー部90の接続部94の上面に支持されつつ排出ローラ対44に挟持される位置まで挿入される。なお、メディアトレイ110は、更に奥まで、例えば搬送ローラ対59に挟持される位置まで挿入されてもよい。
【0101】
次に、ユーザは、複合機10の操作パネルや複合機10に接続された外部機器を操作して、メディア印刷の指示を入力する(ステップS15)。この指示を受けて、制御部140は、キャリッジモータ153を駆動してキャリッジ40をキャップ位置から移動させ、さらにキャリッジ40を当接レバー176に当接させて、切替ギヤ171をギヤ172Aと噛合する第2駆動伝達位置に移動させる(ステップS16)。その後、制御部140は、メディア印刷を実行する(ステップS17)。
【0102】
詳細には、制御部140はは、搬送モータ152を逆転駆動して搬送ローラ60及び排出ローラ62を搬送向き87と逆向きへ回転させる。すると、メディアトレイ110は、排出ローラ対44によって、直線部34を搬送向き87と逆向きへ搬送されて、記録部24の直下を通過して、搬送ローラ対59に挟持される。
【0103】
搬送モータ152が更に逆転駆動されて、メディアトレイ110が更に搬送向き87と逆向きへ搬送されると、メディアトレイ110に支持された記録メディア(不図示)が記録部24よりも後方(
図2における左方)となる位置まで搬送される。なお、当該位置において、メディアトレイ110の端部は、装置背面に設けられた開口134(
図2参照)から突出している。
【0104】
この状態において、制御部140は、搬送モータ152を逆転駆動から正転駆動へ切り替えて、搬送ローラ60及び排出ローラ62を搬送向き87へ回転させる。これにより、メディアトレイ110が搬送向き87に搬送され、メディアトレイ110に載置された記録メディアが記録部24の下方を通る。このとき、搬送される記録メディアに対して、記録ヘッド38からインク滴が吐出される。これにより、記録メディアの盤面上に画像が記録される。画像記録が終了した後、メディアトレイ110は開口13から複合機10の外部に突出される。また、メディア印刷が終了すると、制御部140は、キャリッジ40をキャップ位置に移動させる。これにより、記録ヘッド38のノズル面がキャップ71によって覆われ、また、切替ギヤ171がギヤ172Dと噛合する第1駆動伝達位置となる。そして、制御部140は、搬送モータ152を逆転駆動して、ロックピン177をロック状態、すなわち記録ヘッド38のロック孔178に進入した状態とする。
【0105】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、ロックピン177、搬送ローラ60及び排出ローラ62の駆動源が搬送モータ152に集約されるとともに、レバー部90が第1位置から第2位置へ移動されてからメディアトレイ110がプリンタ部11に挿入される前に、ロックピン177をロック状態からアンロック状態に移動させるので、ロックピン177の移動のための搬送モータ152の正転駆動によって、搬送ローラ60及び排出ローラ62が搬送向き87へ回転してとしても、メディアトレイ110が搬送向き87へ移動して排出ローラ62から離れることが抑制される。
【0106】
また、ロックピン177がアンロック状態であるときにメディア印刷の指示が入力されると、制御部140は搬送モータ152を逆転駆動して、排出ローラ対44によりメディアトレイ110を搬送向き87と逆向きへ搬送する。メディア印刷の指示が入力されたときには、ロックピン177がアンロック状態なので、ロックピン177を移動させるために搬送モータ152を制限駆動する必要がない。
【0107】
また、ユーザによりメディアトレイ110がレバー部90の接続部94の上面に支持させた後、メディア印刷の指示が入力される前に、複合機10が移動されたり、複合機10に衝撃が加わったりすることによりキャリッジ40が移動すると、キャップ位置を基準とするキャリッジ40の走査方向(左右方向9)の位置が把握できないおそれがあるが、キャリッジ40が移動すると、制御部140が、キャリッジ40をキャップ位置へ戻すので、キャリッジ40の走査方向の位置が把握可能となる。
【0108】
また、切替ギヤ171がギヤ172A又はギヤ172Dのいずれかと選択的に噛合して、ロックピン177へ駆動伝達する第1駆動位置又はロックピン177に駆動伝達しない第2駆動位置に切替可能なので、搬送モータ152からロックピン177へ選択的に駆動伝達することができる。
【0109】
また、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44は、レバー部90が第1位置から第2位置へ移動するのに連動して、第1状態から第2状態に状態変化するので、メディア印刷を行う際にユーザに要求されるアクションが軽減される。
【0110】
[変形例]
前述された実施形態では、レバー部90が第1位置から第2位置へ移動された後に、制御部140がロックピン177をロック状態からアンロック状態にするが、更に、ユーザがメディアトレイ110を開口13に差し込んだか否かを開口13内に設けられた光学センサやメカニカルセンサにより検知して、制御部140は、メディアトレイ110が開口13に差し込まれたと検知したときに、キャリッジ40をキャップ位置から移動させて、記録ヘッド38のノズル面からキャップ71を離してもよい。これにより、メディアトレイ110が差し込まれた後、記録メディアに画像記録が行われるまでの時間を短縮することができる。
【0111】
また、前述された実施形態では、ロック部材として上下方向7に移動して記録ヘッド38のロック孔178に出入するロックピン177が示されているが、ロック部材は、記録ヘッド38又はキャリッジ40に係合する部材であれば、適宜変更されてもよい。例えば、ホルダ75に設けられた鈎状の爪が記録ヘッド38又はキャリッジ40の凹部に係合する構成が採用されてもよい。
【0112】
また、前述された実施形態では、ピンチローラ61Aは、左右方向9の両側に配置されており、ピンチローラ61Bは、左右方向9の中央側に配置されていたが、このような配置に限らない。例えば、複数のピンチローラ61の全てが、ピンチローラ61Aのように構成されていてもよい。つまり、複数のピンチローラ61の全てが下方に距離D4移動する構成であってもよい。
【0113】
また、前述された実施形態では、搬送ローラ対59において、搬送ローラ60が上側でピンチローラ61が下側に設けられているが、ピンチローラ61が上側で搬送ローラ60が下側に設けられていてもよい。この場合、上側のピンチローラ61が移動することによって、搬送ローラ対59が状態変化する。また、上述の実施形態では、排出ローラ対44において、下側の排出ローラ62が移動することによって、排出ローラ対44が状態変化するが、上側の拍車63が移動することによって、排出ローラ対44が状態変化してもよい。
【0114】
また、記録用紙12に画像が記録される場合には、拍車63が使用される一方で、記録メディアに画像が記録される場合には、拍車63の代わりに、排出ローラ62に従動して回転する従動ローラ(拍車63とは異なりローラ面に凹凸がないローラ)が使用されてもよい。この場合、例えば、拍車63及び上記従動ローラが、レバー部90の移動に連動して上下動するように構成されており、レバー部90が第1位置から第2位置へ移動すると、拍車63が上方に退避する一方で、上記従動ローラが直線部34へ出てくる。また、レバー部が第2位置から第1位置へ移動すると、上記従動ローラが上方に退避する一方で、拍車63が直線部34へ出てくる。
【0115】
また、前述された実施形態では、ピンチローラ61が弾性部材66によって搬送ローラ60側に付勢され、排出ローラ62が弾性部材によって拍車63側に付勢されていたが、上述とは逆に、搬送ローラ60が弾性部材によってピンチローラ61側に付勢され、拍車63が弾性部材によって排出ローラ62側に付勢されていてもよい。
【0116】
また、ピンチローラ61及び排出ローラ62の移動方向は、上下方向7に限らない。例えば、上下方向7に対して傾斜した向きへピンチローラ61及び排出ローラ62が移動してもよい。