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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231701(P2015-231701A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】印刷制御装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/52 20060101AFI20151201BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20151201BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   B41J2/52
   B41J2/205
   B41J2/01 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-119345(P2014-119345)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(72)【発明者】
【氏名】鯨岡 洋一
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 光平
(72)【発明者】
【氏名】和哥山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】角谷 繁明
(72)【発明者】
【氏名】小橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】湯田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】宮本 徹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2C262
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EB58
2C056EC69
2C056EC75
2C056FA10
2C057AF25
2C057AL32
2C057AM28
2C057AN01
2C262AA02
2C262AA24
2C262AB13
2C262AC07
2C262BB06
2C262GA29
(57)【要約】
【課題】高品位な画像を形成する。
【解決手段】印刷媒体にインクを吐出する吐出部を備える印刷装置を制御する印刷制御装置であって、入力画像データを、ドットによる疑似階調で表現されたデータに変換するハーフトーン処理を行う際に、第1ディザマスクと、ドットの分散性が前記第1ディザマスクよりも低くなる特性を有する第2ディザマスクと、を用い、単位面積あたりのインク量が多くなるにつれて、前記第1ディザマスクの特性比重を減少させ、前記第2ディザマスクの特性比重を増加させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にインクを吐出する吐出部を備える印刷装置を制御する印刷制御装置であって、
入力画像データを、ドットによる疑似階調で表現されたデータに変換するハーフトーン処理を行う際に、
第1ディザマスクと、ドットの分散性が前記第1ディザマスクよりも低くなる特性を有する第2ディザマスクと、を用い、
単位面積あたりのインク量が多くなるにつれて、前記第1ディザマスクの特性比重を減少させ、前記第2ディザマスクの特性比重を増加させることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷制御装置において、
前記第2ディザマスクの特性比重を増加させた後、前記単位面積あたりのインク量が多くなるにつれて、前記第1ディザマスクの特性比重を増加させ、前記第2ディザマスクの特性比重を減少させることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷制御装置において、
前記第1ディザマスクは、ブルーノイズディザマスクであることを特徴とする印刷制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクの吸収による印刷媒体の撓み(コックリング)が発生するとインクドットの被覆率が不均一となる。そして、インクドットの被覆率が低い部分では濃度低下として視認される(コックリングムラ)場合がある。そこで、従来、コックリングムラが発生する印刷媒体か否かを判断し、例えば、コックリングムラが発生する印刷媒体であると判断された場合には、ペアドット制御ディザマスクによるハーフトーン処理を行い、コックリングムラが発生しない印刷媒体であると判断された場合には、ブルーノイズディザマスクによるハーフトーン処理を行う印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−223954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記印刷装置では、例えば、コックリングムラが発生する印刷媒体であると判断された場合には、ペアドット制御ディザマスクのみによるハーフトーン処理が実行される。しかしながら、印刷媒体においてコックリングムラの顕著な部分とコックリングムラの程度が低い部分があると、コックリングムラの無い部分であっても粒状性向上の見込みが小さい、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる印刷制御装置は、印刷媒体にインクを吐出する吐出部を備える印刷装置を制御する印刷制御装置であって、入力画像データを、ドットによる疑似階調で表現されたデータに変換するハーフトーン処理を行う際に、第1ディザマスクと、ドットの分散性が前記第1ディザマスクよりも低くなる特性を有する第2ディザマスクと、を用い、単位面積あたりのインク量が多くなるにつれて、前記第1ディザマスクの特性比重を減少させ、前記第2ディザマスクの特性比重を増加させることを特徴とする。
【0007】
印刷媒体に向けてインクを吐出した際に発生するコックリングムラは、印刷媒体における単位面積あたりのインク量(インクDuty)に起因する場合がある。そこで、上記構成によれば、印刷媒体において単位面積あたりのインク量が比較的少ない部分では、比較的コックリングの発生が低い部分であるため、ドットの分散性が高い第1ディザマスクの特性比重を高くする。すなわち、第1ディザマスクの特性の強度を高める。これにより、粒状性の高い画像が形成される。一方、印刷媒体において単位面積あたりのインク量が多くなるにつれて、第1ディザマスクの特性比重を減少させ、第2ディザマスクの特性比重を増加させる。印刷媒体において単位面積あたりのインク量が多くなる部分では、コックリングの発生が高く、ドットの着弾位置ずれが起こりやすい。そこで、第1ディザマスクの特性比重に対して第2ディザマスクの特性比重を高める。換言すれば、第1ディザマスクの特性の強度よりも第2ディザマスクの特性の強度の方を高める。第2ディザマスクは、第1ディザマスクに比べてドットの分散性が低い特性であるため、ドットの着弾位置ずれによる濃度変化の小さい画像が形成される。このようにして、印刷媒体においてコックリングムラの顕著な部分やコックリングムラの程度が低い部分があっても、コックリングムラの程度が低い部分について、さらに画像品質を向上させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる印刷制御装置では、前記第2ディザマスクの特性比重を増加させた後、前記単位面積あたりのインク量が多くなるにつれて、前記第1ディザマスクの特性比重を増加させ、前記第2ディザマスクの特性比重を減少させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、印刷媒体において単位面積あたりのインク量が多くなる部分での粒状性劣化の発生を低減することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる印刷制御装置の前記第1ディザマスクは、ブルーノイズディザマスクであることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、特に低階調領域におけるドットの分散性を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】印刷システムの構成を示すブロック図。
図2】プリンターの構成を示す概略図。
図3】第1ディザマスク及び第2ディザマスクの特性を説明する説明図。
図4】コックリング現象によるドットの着弾位置ずれを説明する説明図。
図5】印刷処理方法を示すフローチャート。
図6】ディザマスクの生成状態の例を示す模式図。
図7】変形例1にかかるディザマスクの生成状態の例を示す模式図。
図8】変形例2にかかるディザマスクの生成状態の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各部材等を認識可能な程度の大きさにするため、各部材等の尺度を実際とは異ならせて示している。
【0014】
まず、印刷システムの構成について説明する。印刷システムは、印刷装置と印刷制御装置とを含むものである。そして、印刷制御装置は、印刷媒体にインクを吐出する吐出部を備える印刷装置を制御する印刷制御装置であって、入力画像データを、ドットによる疑似階調で表現されたデータに変換するハーフトーン処理を行う際に、第1ディザマスクと、ドットの分散性が第1ディザマスクよりも低くなる特性を有する第2ディザマスクと、を用い、単位面積あたりのインク量が多くなるにつれて、第1ディザマスクの特性比重を減少させ、第2ディザマスクの特性比重を増加させるものである。以下、具体的に説明する。
【0015】
図1は、印刷システムの構成を示すブロック図である。印刷システム100は、印刷装置としてのインクジェットプリンター1(以下、プリンター1)と、印刷制御装置としてのコンピューター2と、を備えている。
【0016】
図2は、プリンターの構成を示す概略図であり、図2(a)は概略断面図であり、図2(b)はプラテンの構成を示す平面図である。図1及び図2(a)に示すように、プリンター1は、コントローラー10と、搬送ユニット20と、キャリッジユニット30と、吐出部としてのヘッドユニット40と、検出器群50と、を有している。コントローラー10は、プリンター1の全体的な制御を行うものであり、コンピューター2との間でデータの送受信を行うインターフェイス部11と、CPU12と、メモリー13と、ユニット制御回路14と、を有する。検出器群50はプリンター1内の状況を監視し、検出結果をコントローラー10に出力する。
【0017】
搬送ユニット20は、画像を印刷する印刷媒体S(例えば、用紙や布等)を印刷可能な位置に給紙し、Y方向の下流側へ搬送するためのものであり、給紙ローラー21と排紙ローラー22等を有する。なお、図2では印刷媒体Sとしてロール状に巻かれた連続紙を例に挙げているがこれに限らず、カット紙でもよい。キャリッジユニット30は、キャリッジ31に搭載されたヘッド41を、ガイドレール32に沿わせ、印刷媒体Sの搬送方向であるY方向と交差する方向(ここでは直交する方向)であるX方向に移動するためのものである。
【0018】
ヘッドユニット40は、印刷媒体Sにインクを吐出するヘッド41と、印刷媒体Sを裏面(印刷面の反対側面)から支持するプラテン42とを有する。ヘッド41の下面(印刷媒体Sとの対向面)には、インクを吐出する多数のノズルの開口部がY方向に所定の間隔おきに並んだノズル列が複数形成されている。そして、複数のノズル列からはそれぞれ、例えば、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)、ブラックインク(K)が吐出される。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室を膨張・収縮させるピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってノズルからインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0019】
プラテン42は、図2(b)に示すように、略直方体形状の部材であり、ヘッド41との対向面において、ノズル列の長さ以上にY方向に延びた複数の凸部422が、X方向に間隔を空けて並んでいる。つまり、ヘッド41と対向するプラテン42の面は、X方向に沿って凹凸形状を成している。そして、凸部422の間の凹部421もノズル列の長さ以上にY方向に延びており、縁無し印刷の際に印刷媒体Sから外れたインクを凹部421が受けることによって、印刷媒体Sの汚れを防止できる。
【0020】
以上の構成であるプリンター1において、ヘッド41がX方向に移動しながらインクを吐出する吐出動作(パス)と、印刷媒体SがY方向の下流側へ搬送される搬送動作と、が繰り返される。その結果、印刷媒体S上に2次元の画像が印刷される。
【0021】
図1に示すように、コンピューター2は、プリンター1との間で通信可能に接続されている。そして、コンピューター2に搭載されたオペレーティングシステムの下、各種アプリケーションプログラム60やプリンタードライバー70等のプログラムが動作し、プログラムに準じた演算をコンピューター2内のCPU(不図示)が実行している。
【0022】
プリンタードライバー70は、アプリケーションプログラム60から入力された入力画像データを印刷データに変換する機能等をコンピューター2に実現させるためのプログラムであり、解像度変換処理部71と、色変換処理部72と、ハーフトーン処理部73と、ラスタライズ処理部74と、を有する。なお、プリンタードライバー70は、CD−ROMなどコンピューター2が読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよいし、インターネットなど各種通信手段を通じてコンピューター2にダウンロード可能な構成であってもよい。
【0023】
解像度変換処理部71では、プリンタードライバー70(プログラム)がアプリケーションプログラム60から印刷すべき入力画像データを受け取ると、画像データの解像度を、プリンター1が印刷する際の解像度に変換する。なお、解像度変換されたデータは、RGB色空間で表されるデータであり、色毎に、印刷解像度に応じた大きさの画素が2次元に並ぶデータである。各画素は、各画素に対応する印刷媒体S上の領域である画素領域の濃淡を示す多階調の階調値(例えば0〜255)を有する。本実施形態では、階調値の値が大きいほど濃度が濃いとする。また、プリンター1におけるX方向に対応するデータの方向もX方向と呼び、プリンター1におけるY方向に対応するデータの方向もY方向と呼ぶ。
【0024】
色変換処理部72では、色変換テーブル75を参照し、解像度変換されたRGB色空間で表されるデータを、プリンター1が吐出可能なインクの色(YMCK)に対応したデータに色変換する。
【0025】
ハーフトーン処理部73では、入力画像データを、ドットによる疑似階調で表現されたデータに変換する。具体的には、YMCK色空間で表される多階調のデータを、プリンター1が表現可能な階調数のデータ、つまり、画像を構成するドットのパターンを示すデータに変換する。例えば、印刷媒体S上の各画素領域にドットを形成するか否かで画像を構成する場合には、各画素の階調値は2階調のデータに変換され、プリンター1が3種類のサイズのドットを形成可能な場合には、各画素の階調値は4階調のデータに変換される。本実施形態では、2次元に閾値が配置されたディザマスクを使用したディザ法によりハーフトーン処理が行われる。ディザ法では、ハーフトーン処理部73が、処理対象のデータに対して、例えば左上の部位から順にディザマスクを繰り返し対応付け、入力画像データを構成する画素の階調値と、その画素に対応するディザマスクの閾値とを、比較する。そして、ハーフトーン処理部73は、画素の階調値がディザマスクの閾値より大きい場合には、その画素にドットを形成すると判断し、逆に、画素の階調値がディザマスクの閾値以下の場合には、その画素にドットを形成しないと判断する。なお、本実施形態では、ディザマスク生成部76によって生成されたディザマスクを参照してハーフトーン処理が行われる。本実施形態にかかるディザマスク生成部76では、ドットの分散性が高い特性(第1特性)を有する第1ディザマスクと、第1ディザマスクよりもドットの分散性が低い特性(第2特性)を有する第2ディザマスクと、を用い、単位面積あたりのインク量に応じて、第1特性と第2特性との特性比重(第1特性と第2特性との特性強度の割合)を可変したディザマスクを生成する。
【0026】
ラスタライズ処理部74では、ハーフトーン処理されたデータをプリンター1に転送すべき順に並べ替える処理を行う。こうして処理されたデータはその他の印刷に関するデータと共に印刷データとしてプリンター1に送信される。プリンター1は、受信した印刷データに基づき、印刷媒体Sに画像を印刷する。
【0027】
次に、第1ディザマスク及び第2ディザマスクの特性について説明する。図3は、第1ディザマスク及び第2ディザマスクの特性を説明する説明図である。まず、図3(a)は、異なるパスで形成されるドットD1,D2の配置を説明する図である。プリンター1では、一般に、印刷画像の画質を高めるために、X方向(ヘッド41の移動方向)に沿うドット列であるラスターラインを異なる2つのノズルで形成する印刷方法(所謂オーバーラップ印刷方法)や、Y方向(印刷媒体Sの搬送方向)の印刷解像度を高めるために、先のパスで形成されたラスターライン間に後のパスでラスターラインを形成する印刷方法(所謂インターレース印刷方法)が実施される。このような印刷方法を実施する場合、印刷媒体Sの一部の領域に印刷される画像片は複数回のパスで完成される。本実施形態では、2回のパスで画像片が完成されるとし、図3(a)に示すように、先のパスで形成されるドットD1と後のパスで形成されるドットD2とが、X方向及びY方向に交互に並ぶとする。
【0028】
図3(b)は、第1ディザマスクとしてのブルーノイズディザマスクでハーフトーン処理されたデータに基づき形成されるドットD1,D2の配置を説明する図であり、図3(c)は、第2ディザマスクとしてのペアドットディザマスクでハーフトーン処理されたデータに基づき形成されるドットD1,D2の配置を説明する図である。低階調値のデータにより淡い画像が印刷される場合、その画像を構成する複数の画素領域にドットが形成される割合は低くなる。図3(b)及び図3(c)では、6×6個の画素領域のうち4個の画素領域にドットD1,D2が形成されている。
【0029】
本実施形態では、前述のように、ディザマスクを使用したディザ法によりハーフトーン処理が行われる。図3(b)の左図に示すように、ドット分散性が高い(ドット分散性の良い)第1特性を有するブルーノイズディザマスクでハーフトーン処理されたデータに基づき印刷される淡い画像では、隣接する画素領域にドットD1,D2が形成されずに、離れた画素領域にドットD1,D2が形成される。このようにドットD1,D2を分散させることで、画像の粒状性を高めることができる。なお、ブルーノイズディザマスクとは、高周波領域において感度が低いという人間の視覚特性を考慮し、形成されるドットの分布が、空間周波数領域において高周波領域側にピークを持つノイズ特性を有し、ドットの分散性に優れたマスクである。例えば、1周期の長さが2画素以下の高周波領域に最も大きな周波数成分を有するマスクである。
【0030】
しかし、ブルーノイズディザマスクでハーフトーン処理された画像であっても、ドットの着弾位置ずれが発生すると、図3(b)の右図に示すように、本来離れて形成されるべきドットD1,D2が隣接して形成されてしまう。プリンター1では、一般に、画素領域よりも大きいサイズのドットが形成されるので、隣接する画素領域にドットが形成されるとドット同士が重なり、ドットが印刷媒体Sを覆う割合である被覆率が低下してしまう。その結果、画像の濃度が淡くなってしまう。特に、ブルーノイズディザマスクでハーフトーン処理された画像では、ドットの着弾位置ずれが発生しなければ、印刷媒体Sの被覆率が比較的に高い。そのため、ドットの着弾位置ずれが発生する場合と発生しない場合とで、印刷媒体Sの被覆率の変化量が大きく、画像の濃度変化が大きくなってしまう。
【0031】
一方、ディザマスクの中には、淡い画像を印刷する範囲の階調値において、ドットの分散性がブルーノイズディザマスクより低くなる特性、詳しくは、隣接する画素領域に共にドットが形成される確率がブルーノイズディザマスクより高くなる特性(第2特性)を有するペアドットディザマスクがある。ペアドットディザマスクでハーフトーン処理された淡い画像では、図3(c)の左図に示すように、ドットの着弾位置ずれが発生しなくとも隣接する画素領域にドットD1,D2が形成されている。そのため、ドットの着弾位置ずれが発生しても、図3(c)の右図に示すように、ドットD1,D2同士が重なっている確率が高い。つまり、ペアドットディザマスクを使用する方が、ブルーノイズディザマスクを使用する場合に比べて、画像の粒状性は低下してしまうが、ドットの着弾位置ずれが発生する場合と発生しない場合とで、印刷媒体Sの被覆率の変化量が小さく、画像の濃度変化を小さくすることができる。
【0032】
次に、コックリング現象によるドットの着弾位置ずれについて説明する。図4は、コックリング現象によるドットの着弾位置ずれを説明する説明図である。図4(a)に示すように、ヘッド41と対向するプラテン42の面は凹凸形状を成している。そのため、印刷媒体Sにインクが吐出される前、又は、インク吐出量が少ない時には、実線S1で示すように、印刷媒体Sは平坦な状態でプラテン42に支持される。しかし、印刷媒体Sに吐出されるインク量が増え、インクを吸収した印刷媒体Sが膨潤すると、一点鎖線S2で示すように、プラテン42の凸部422で支持されている印刷媒体Sの部位に対して、凹部421に位置する印刷媒体Sの部位が下方(ヘッド41とは反対側)に撓んでしまう。つまり、プラテン42の凹凸形状に沿って印刷媒体Sが波状に変形する現象、所謂コックリング現象が発生してしまう。特に、印刷時の印刷媒体Sの位置ずれを防止するために、プラテン42に印刷媒体Sを吸引吸着させたり静電吸着させたりする場合には、よりコックリング現象が発生し易くなってしまう。
【0033】
コックリング現象が発生しても、凸部422で支持されている印刷媒体Sの部位では、ヘッド41のノズル開口面から印刷媒体Sまでの距離、所謂ペーパーギャップPGが変化しない。これに対して、凹部421に位置する印刷媒体Sの部位では、コックリング現象によりペーパーギャップPGが変化してしまう。そのため、凸部422で支持されている印刷媒体Sの部位では、ドットの着弾位置ずれが発生しないが、凹部421に位置する印刷媒体Sの部位では、ドットの着弾位置ずれが発生してしまう。そして、ドットの着弾位置ずれにより、コックリングムラ(濃淡ムラ)が発生する。
【0034】
そして、コックリングムラの発生レベルは、印刷媒体Sにおける単位面積あたりのインク量により変化する。すなわち、インクDuty(%)に応じてコックリングムラの発生レベルが可変する。本実施形態の例では、図4(b)に示すように、インクDuty(%)が低い場合には、コックリングムラの発生レベルは低い。そして、インクDuty(%)が、徐々に高くなるに従って、コックリングムラの発生レベルも高まっていく。そして、あるインクDuty(%)でコックリングムラの発生レベルが頂点に達し、さらに、インクDuty(%)が高まっていくとコックリングムラの発生レベルが低下していく。なお、インクDuty(%)とは、インクDuty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100として表される。なお、式中の「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。
【0035】
ここで、仮に、インクDuty(%)に関係なく、ドット分散性の良いブルーノイズディザマスクだけを使用してハーフトーン処理が行われたとする。この場合、インクDuty(%)が低い場合、すなわち、インク量が少ない場合には、コックリングが発生しないため、ペーパーギャップPGが変化せず、ドットの着弾位置ずれが発生しない。このため、印刷データが示す濃度で画像が印刷される。一方、インクDuty(%)がより高くなると、すなわち、印刷媒体Sに吐出されるインク量が増えていくと、ペーパーギャップPGが変化してしまう。そのため、先のパスでは、印刷媒体Sが撓んでいない状態で、印刷データの示す画素領域にドットD1が形成されるのに対して、後のパスでは、先のパスで吐出されたインクにより印刷媒体Sが撓み、印刷データの示す画素領域からずれた位置にドットD2が形成されてしまう。その結果、本来離れて形成されるべき先のパスのドットD1と後のパスのドットD2とが重なって形成されて被覆率が低下し、淡い画像が印刷されてしまう。つまり、濃度むらが印刷画像に発生してしまう(図3(b)参照)。
【0036】
逆に、インクDuty(%)に関係なく、ペアドットディザマスクだけを使用してハーフトーン処理が行われたとする。この場合、例えば、インクDuty(%)が比較的高い場合、コックリング現象によりドットの着弾位置ずれが発生しても、印刷媒体Sの被覆率の変化量が小さく、画像の濃度変化を小さくすることができる。従って、濃度むらの発生を抑制できる。しかし、インクDuty(%)が低い場合、コックリング現象によりドットの着弾位置ずれが発生しないため、印刷する画像の粒状性を、必要以上に低下させることになってしまう(図3(c)参照)。
【0037】
そこで、本実施形態では、単位面積あたりのインク量(インクDuty(%))に応じて、第1ディザマスクの第1特性の比重と第2ディザマスクの第2特性の比重とを可変させたディザマスクを用いて印刷処理を行う。
【0038】
続いて、印刷処理方法について説明する。図5は、印刷処理方法を示すフローチャートである。図5(a)に示すように、まず、ステップS100では、印刷処理が開始されると、入力された入力画像データの解像度を、プリンター1が印刷する際の解像度(RGB色空間で表されるデータ)に変換する。
【0039】
次いで、ステップS200では、色変換テーブル75を参照し、解像度変換されたRGB色空間で表されるデータを、プリンター1が吐出可能なインクの色(YMCK)に対応したデータに色変換する。
【0040】
次いで、ステップS300では、入力画像データを、ドットによる疑似階調で表現されたデータに変換する。具体的には、YMCK色空間で表される多階調のデータを、プリンター1が表現可能な階調数のデータ、つまり、画像を構成するドットのパターンを示すデータに変換する。本実施形態では、2次元に閾値が配置されたディザマスクを使用したディザ法によりハーフトーン処理が行われる。
【0041】
ここで、ハーフトーン処理で用いられるディザマスクの生成方法について説明する。本実施形態では、ディザマスク生成部76によってディザマスクが生成される。ディザマスクの生成方法は、図5(b)に示すように、まず、画像領域に対応するインクDuty(%)情報を取得(ステップS310)し、取得したインクDuty(%)に応じて、第1ディザマスクとしてのブルーノイズディザマスクが有する第1特性と、第2ディザマスクとしてのペアドットディザマスクが有する第2特性と、の特性比重を可変したディザマスクを生成する(ステップS320)。
【0042】
図6は、ディザマスクの生成状態の例を示す模式図である。図6において、横軸は、インクDuty(%)を示し、縦軸は、第1特性及び第2特性の各特性の比重(強度)を示している。なお、図6では、インクDuty(%)が、B(%)からG(%)においてコックリングムラが発生し、特にインクDuty(%)が、F(%)において最もコックリングムラの発生レベルが高い場合に対応して生成されたディザマスクの生成状態が表されている。
【0043】
図6に示すように、本実施形態のディザマスクは、インクDuty(%)に応じて、第1特性(ドット分散性が高い(ドット分散性の良い))と、第2特性(隣接画素にドットが形成される確率を第1特性よりも高い)と、のそれぞれの比重(強度)を変化させている。例えば、インクDuty(%)(単位面積あたりのインク量)が多くなるにつれて、第1特性(第1ディザマスクとしてのブルーノイズディザマスク)の特性比重を減少させ、第2特性(第2ディザマスクとしてのペアドットディザマスク)の特性比重を増加させている。また、第2特性(第2ディザマスクとしてのペアドットディザマスク)の特性比重を増加させた後、インクDuty(%)(単位面積あたりのインク量)が多くなるにつれて、第1特性(第1ディザマスクとしてのブルーノイズディザマスク)の特性比重を増加させ、第2特性(第2ディザマスクとしてのペアドットディザマスク)の特性比重を減少させている。
【0044】
例えば、インクDutyがA(%)(インクDuty(%)が低い領域)では、第1特性の比重が第2特性の比重よりも強くなるように設定されている。なお、このインクDutyがA(%)では、コックリングムラが発生しないレベルであるため、第2特性の比重よりも第1特性の比重を高くする。本実施形態のインクDuty(%)がA(%)では、第1特性のみで設定されている。このように設定することにより、粒状性劣化の発生を低減することができる。
【0045】
また、インクDuty(%)がC(%)では、第1特性と第2特性とを有する領域である。なお、このインクDuty(%)がC(%)では、インクDutyがA(%)の場合に比べ、低いレベルだがコックリングムラが発生する領域である。このため、第1特性と第2特性とを含み、第1特性の方が第2特性よりも比重を高くする。このように設定することにより、粒状性劣化の発生を抑制するとともに、コックリングムラによりドットの着弾位置ずれが発生しても、印刷媒体Sの被覆率の変化量が小さく、画像の濃度変化を小さくすることができる。
【0046】
インクDuty(%)がD(%)では、第1特性と第2特性とを有する領域である。なお、このインクDuty(%)がD(%)では、インクDuty(%)がC(%)の場合に比べ、より高いレベルでコックリングムラが発生する領域である。このため、第1特性と第2特性とを含み、第1特性と第2特性とを同等の割合に設定する。このように設定することにより、粒状性劣化の発生を抑制するとともに、コックリングムラによりドットの着弾位置ずれが発生しても、印刷媒体Sの被覆率の変化量が小さく、画像の濃度変化を小さくすることができる。
【0047】
インクDuty(%)がE(%)では、第1特性と第2特性とを有する領域である。なお、このインクDuty(%)がE(%)では、インクDuty(%)がD(%)の場合に比べ、さらに高いレベルでコックリングムラが発生する領域である。このため、第1特性と第2特性とを含み、第1特性よりも第2特性の比重を高く設定する。このように設定することにより、粒状性劣化の発生を抑制するとともに、コックリングムラによりドットの着弾位置ずれが発生しても、印刷媒体Sの被覆率の変化量が小さく、画像の濃度変化を小さくすることができる。
【0048】
インクDuty(%)がF(%)では、コックリングムラが最も顕著に現れるレベルである。このため、第1特性よりも第2特性の比重を高くする。なお、本実施形態のインクDuty(%)がF(%)では、第2特性のみで設定されている。このように設定すれば、コックリングムラの対策を十分に行うことができる。すなわち、コックリングムラによりドットの着弾位置ずれが発生しても、印刷媒体Sの被覆率の変化量が小さく、画像の濃度変化を小さくすることができる。
【0049】
インクDuty(%)がH(%)では、第1特性の特性比重が第2特性よりも高く(強く)なるように設定されている。なお、このインクDuty(%)がH(%)では、コックリングムラが発生しないレベルであるため、第2特性よりも第1特性比重を高くする。本実施形態のインクDuty(%)がH(%)では、第1特性のみで設定されている。このように設定することにより、粒状性劣化の発生を低減することができる。
【0050】
なお、インクDuty(%)に対応する第1特性及び第2特性の比重については、入力される画像データ等に応じて、適宜設定することができる。
【0051】
そして、図5(a)に戻って、ステップS400では、ハーフトーン処理されたデータをプリンター1に転送すべき順に並べ替える処理を行う。以上のステップで処理されたデータはその他の印刷に関するデータと共に印刷データとしてプリンター1に送信される。そして、プリンター1では、受信した印刷データに基づき、印刷媒体Sに画像を印刷する。
【0052】
以上、上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0053】
インクDutyに応じて、第1特性と第2特性の比重が可変するディザマスクが生成され、当該ディザマスクに従ってハーフトーン処理される。従って、コックリングムラの発生に対して第1特性と第2特性との比重が異なるように印刷される。これにより、印刷媒体Sにおいてコックリングムラの顕著な部分やコックリングムラの程度が低い部分があっても、画像品質の低下を抑制することができる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0055】
(変形例1)上記実施形態では、インクDuty(%)が高い地点(例えば、図6におけるインクDutyがH(%))では、第1特性のみで設定したが、これに限定されない。図7は、変形例1にかかるディザマスクの生成状態の例を示す模式図である。図7に示すように、インクDuty(%)が高い地点(例えば、インクDuty(%)がH(%))では、第2特性のみで設定してもよい。このようにしても、インクDuty(%)が高いのでインクドットの被覆率が高まるため、粒状性劣化を低減することができる。また、インクDuty(%)に応じて第2特性から第1特性へ変化させるための演算処理を省くことができる。
【0056】
(変形例2)上記実施形態では、ディザマスク生成部76では、1つのディザマスクを生成した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ディザマスク生成部76において複数のディザマスクを生成してもよい。図8は、変形例2にかかるディザマスクの生成状態の例を示す模式図である。図8(a)及び図8(b)に示すように、インクDuty(%)に応じて、第1特性と第2特性との比重分布が異なるディザマスクを生成して、各ディザマスクを適宜利用するようにしてもよい。このようにすれば、画像データに応じて、最適な画像を形成することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…印刷装置としてのプリンター(インクジェットプリンター)、2…印刷制御装置としてのコンピューター、40…吐出部としてのヘッドユニット、70…プリンタードライバー、71…解像度変換処理部、72…色変換処理部、73…ハーフトーン処理部、74…ラスタライズ処理部、75…色変換テーブル、76…ディザマスク生成部、100…印刷システム。
図1
図2
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図6
図7
図8