【解決手段】アルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した化成皮膜と、当該化成皮膜上に形成した塗膜とを含む放熱性アルミニウム塗装材であって、前記塗膜は、10000〜20000の数平均分子量と40〜70℃のガラス転移温度を有する第一のポリエステル樹脂100重量部に対して、メラミン樹脂1〜50重量部を配合して架橋され、更に、前記第一のポリエステル樹脂100重量部に対して、平均粒子径が0.001〜0.070μmのアルミナ10〜80重量部を配合して形成されており、5〜25μmの塗膜厚と0.83以上の赤外線積分放射率を有することを特徴とする放熱性アルミニウム塗装材。
アルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した化成皮膜と、当該化成皮膜上に形成した塗膜とを含む放熱性アルミニウム塗装材であって、前記塗膜は、10000〜20000の数平均分子量と40〜70℃のガラス転移温度を有する第一のポリエステル樹脂100重量部に対して、メラミン樹脂1〜50重量部を配合して架橋され、更に、前記第一のポリエステル樹脂100重量部に対して、平均粒子径が0.001〜0.070μmのアルミナ10〜80重量部を配合して形成されており、5〜25μmの塗膜厚と0.83以上の赤外線積分放射率を有することを特徴とする放熱性アルミニウム塗装材。
アルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した化成皮膜と、当該化成皮膜上に形成した塗膜とを含む放熱性アルミニウム塗装材であって、前記塗膜は、10000〜20000の数平均分子量と40〜70℃のガラス転移温度を有する第一のポリエステル樹脂と10000〜20000の数平均分子量と−20〜20℃のガラス転移温度を有する第二のポリエステル樹脂との合計100重量部に対して、メラミン樹脂1〜50重量部を配合して架橋され、更に、前記第一及び第二のポリエステル樹脂の100重量部に対して、平均粒子径が0.001〜0.070μmのアルミナ10〜80重量部を配合して形成されており、前記第一のポリエステル樹脂:第二のポリエステル樹脂の重量割合が、20:80〜70:30であり、前記塗膜が5〜25μmの塗膜厚と0.83以上の赤外線積分放射率を有することを特徴とする放熱性アルミニウム塗装材。
【背景技術】
【0002】
電子機器に組み込まれる電子部品の小型化、高性能高集積化により、電子機器内部が高温化する。これによる電子機器の誤動作や寿命低下を防止する為、熱を効率よく電子機器筐体の外部へ排出することが重要な課題となっている。このような課題に対し、自然空冷よりもファンを用いた強制空冷が有効であることが知られている。具体的には、電子機器筐体に開口部を設け、更に、その周辺に設けたファンを作動させて、電子機器内部で発生する熱を外部に排出するものである。
【0003】
しかしながら、この方法では、外部から水分や埃等が内部に侵入し易く、電子機器内部の電子回路がショートする場合があるという問題が残った。そこで、電子機器内部の温度上昇を防止するために、自然空冷を利用することが検討されている。自然空冷による空冷効率を高めるために、熱伝導率の高い材料を用いて高い放熱性を有する表面処理が行われる。樹脂材料と比較して、金属材料の熱伝導率は著しく高く、その中でもアルミニウム基材の熱伝導率が高い。また、高い放熱性を与える表面処理としては、Siを特定の成分量含有させたアルミニウム合金を陽極酸化する方法や、特定の粒径を有するグラファイトやカーボンブラックを特定量含有する塗料を塗装する方法が広く知られている。しかしながら、これらの表面処理したものは何れも、外観が黒色である。近年、電子機器の筐体には、非黒色が望まれる場合があり、前述した表面処理では、要求に対して答えられないという問題が残った。
【0004】
次に、冷暖房システムは一般に、室内の空気そのものを冷却したり、暖めたりして循環させる対流空調が主流となっている。このような場合、冷風や温風が人体に直接当たることが多く、不快に感じることがある。また、吹出口から発生する騒音や室内の温度ムラ等が問題となるケースがある。これに対し、放射空調システムでは、天井面や床面、側面等の温度を制御することで、気流感がなく音も静かにすることができる。また、送風による冷温風の空気対流がないため、場所による温度ムラを少なくすることが可能である。このような放射空調システムの中には、冷温水と放射パネル間の熱移動を制御するシステムがある。この場合、熱伝導率の高いアルミニウム基材を用い、放射パネルの冷温水と接触する側は熱抵抗を小さくする為に未塗装とし、室内側に高い放熱性を有し、かつ非黒色の表面処理を施すことが近年になって要求されている。
【0005】
放射空調システムの放射パネルには意匠性も求められ、板材に曲げ加工や絞り加工が施される。また、筐体においても、板材に曲げ加工や絞り加工を施すことによって、所定の形状に成形される。これらの製品の意匠性には当然に色彩も求められ、非黒色(例えば白色)であることが求められる。その為、非黒色で高い放熱性を有する表面処理が施されたアルミニウム材には優れた加工性が要求される。更に、成形後の運搬時や実際の使用時における清掃の際において、非黒色の高い放熱性を有する表面処理を施されたアルミニウム材には、優れた耐傷付き性も要求される。
【0006】
特許文献1には、非黒色の表面処理をアルミニウム材に施すことが開示されている。特許文献1には、アルミニウム板の一方の側面に形成される第一皮膜と、他方の側面に形成された第二皮膜とを備える成形用プレコートアルミニウム板であって、赤外線の積分放射率が0.6以上であることを特徴とする成形用プレコートアルミニウム板が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の成形用プレコートアルミニウム板は、赤外線積分放射率が不足しており、放射空調システム等に要求される放熱性を満足しないという問題が残った。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.放熱性アルミニウム塗装材
本発明に係る第一の実施態様の放熱性アルミニウム塗装材は、アルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した化成皮膜と、当該化成皮膜上に形成した塗膜とを含み、この塗膜は、10000〜20000の数平均分子量と40〜70℃のガラス転移温度を有する第一のポリエステル樹脂100重量部に対して、メラミン樹脂1〜50重量部を配合して架橋され、更に、前記第一のポリエステル樹脂100重量部に対して、平均粒子径が0.001〜0.070μmのアルミナ10〜80重量部を配合して形成されており、5〜25μmの塗膜厚と0.83以上の赤外線積分放射率を有する。
【0015】
本発明に係る第二の実施態様の放熱性アルミニウム塗装材は、アルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した化成皮膜と、当該化成皮膜上に形成した塗膜とを含み、この塗膜は、上記第一のポリエステル樹脂と10000〜20000の数平均分子量と−20〜20℃のガラス転移温度を有する第二のポリエステル樹脂の100重量部に対して、メラミン樹脂1〜50重量部を配合して架橋され、更に、前記第一及び第二のポリエステル樹脂の100重量部に対して、平均粒子径が0.001〜0.070μmのアルミナ10〜80重量部を配合して形成されており、前記第一のポリエステル樹脂:第二のポリエステル樹脂の重量割合が、20:80〜70:30であり、前記塗膜が5〜25μmの塗膜厚と0.83以上の赤外線積分放射率を有する。
【0016】
以下において第二のポリエステル樹脂以外は、第一及び第二の実施態様において共通して用いられる。
【0017】
B.アルミニウム基材
本発明で用いるアルミニウム基材は、純アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材である。以下において、純アルミニウムからなる基材及びアルミニウム合金からなる基材を、単に「アルミニウム基材」と記す。
【0018】
C.化成皮膜
本発明で用いる化成皮膜は、塗布型であっても反応型であってもよいが、アルミニウム基材及び塗膜への密着性の観点から、反応型が好ましい。具体的には、りん酸クロメート、クロム酸クロメート、りん酸ジルコニウム、りん酸チタニウム等の化成処理液によって形成される化成皮膜である。性能と経済性の観点から、りん酸クロメートの処理液によって形成されるもの(以下、「りん酸クロメート化成皮膜」と記す)がより好ましい。りん酸クロメート化成皮膜の付着量は、金属Cr元素換算で5〜50mg/m
2であるのが好ましい。付着量がCr元素換算で5mg/m
2未満では、耐食性が劣る場合がある。また、付着量がCr元素換算で50mg/m
2を超えると、化成皮膜が凝集破壊し易く、加工密着性が劣る場合がある。より好ましい付着量は、Cr元素換算で10〜40mg/m
2である。
【0019】
アルミニウム基材表面に化成皮膜を形成させる方法としては、所定温度に加熱した化成処理液をアルミニウム基材にスプレー又は塗布する方法、所定温度に加熱した化成処理液中にアルミニウム基材を所定時間浸漬する方法などが用いられる。
【0020】
なお、化成処理を行なう前に、アルミニウム基材表面の汚れを除去したり表面性状を調整したりするために、硫酸、硝酸、リン酸等による酸処理(洗浄)、或いは、カセイソーダ、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等によるアルカリ処理(洗浄)を行なうことが望ましい。このような洗浄による表面処理も、アルミニウム基材に所定の表面処理液をスプレー又は塗布し、或いは、処理液中に所定温度で所定時間浸漬することによって行われる。
【0021】
D.塗膜
D−1.塗膜の構成
D−1−1.ポリエステル樹脂
第一及び第二のポリエステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格としたものである。多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、フマル酸、マレイン酸等の1種又は2種以上が用いられる。多価アルコールとしては、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の1種又は2種以上が用いられる。合成方法としては、これらのモノマーを適宜配合し、常圧又は加圧下で直接エステル化して重合する方法や、エステル交換してから重合する方法や、少量のキシレンを添加して常圧で脱水反応を行う方法等が用いられる。
【0022】
本発明に用いられる第一及び第二のポリエステル樹脂の数平均分子量は10000〜20000であり、好ましくは11000〜19000である。数平均分子量が10000未満では、塗膜の柔軟性が不足して加工性が劣る。一方、20000を超えると、塗料粘度が上昇し、後述する方法で塗装する場合に塗装性が劣る。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定される。
【0023】
本発明に用いられる第一のポリエステル樹脂のガラス転移温度は、40〜70℃であり、好ましくは45〜65℃である。室温よりも高いガラス転移温度を有するポリエステル樹脂を用いることによって、実際の使用時においてガラス状態にあるため、塗膜の耐傷付き性に優れる。ガラス転移温度が40℃未満では耐傷付き性が劣り、70℃を超えると加工性が劣る。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、20℃/分の昇温速度で測定される。
【0024】
本発明に用いられる第二のポリエステル樹脂のガラス転移温度は、−20〜20℃であり、好ましくは−15〜15℃である。第二の実施態様に係る放熱性アルミニウム塗装材では、この第二のポリエステル樹脂を第一のポリエステル樹脂にブレンドすることにより、第一の実施態様に係る放熱性アルミニウム塗装材の塗膜に比べてその柔軟性が更に向上する。その結果、より厳しい加工でも塗膜の割れや亀裂がなく、第一の実施態様に係る放熱性アルミニウム塗装材に比べて加工性が更に向上する。第二のポリエステル樹脂のガラス転移温度が−20℃未満では、耐傷付き性が劣る。一方、20℃を超えると、第一の実施態様に係る放熱性アルミニウム塗装材の塗膜に比べてその柔軟性の向上効果が得られず、加工性の向上が認められない。第一のポリエステル樹脂:第二のポリエステル樹脂の重量割合は全体を100として、20:80〜70:30であり、好ましくは30:70〜45:55である。第一のポリエステル樹脂の重量割合が20未満では、耐傷付き性が劣る場合がある。一方、この重量割合が70を超えると、第一の実施態様に係る放熱性アルミニウム塗装材の塗膜に比べて加工性が劣る場合がある。
【0025】
D−1−2.メラミン樹脂
本発明に用いられるメラミン樹脂は、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はイソブタノールなどの一価アルコールを、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂と反応させる常法により調製される、一価アルコールでエーテル化されたメラミン樹脂である。このようなメラミン樹脂は、単量体又は重合体のいずれの状態でも用いることができる。メラミン樹脂は自己縮合して塗膜の表層において濃化する性質を有し、更に、ポリエステル樹脂と比較して硬質な為に、塗膜表面における耐傷付き性を向上させる。
【0026】
メラミン樹脂は、ポリエステル樹脂100重量部に対して(第一の実施態様では、第一のポリエステル樹脂の100重量部に対してであり、第二の実施態様では、第一及び第二のポリエステル樹脂を合わせた100重量部に対してである)1〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の割合で配合される。1重量部未満では、メラミン樹脂の自己縮合が不足して耐傷付き性が劣り、また、架橋が不足して加工性が劣る。一方、50重量部を超えると、メラミン樹脂が過剰となり加工性が劣る。なお、メラミン樹脂以外の架橋剤を用いる場合は、耐傷付き性が劣る場合がある。
【0027】
D−1−3.アルミナ
アルミナは酸化アルミニウムであり、またアルミニウムの両性酸化物である。アルミナは、常温では白色の固体である。アルミナは、天然には、コランダム、ルビー、サファイアとして産出する。一方、アルミナは合成により製造することも可能であり、硝酸アルミニウムや硫酸アルミニウム等の塩を1200〜1300℃で直接熱分解する方法、塩化アルミニウム蒸気を、1000℃以上の温度で酸素又は水蒸気と反応させる方法、アルミニウム塩からアルミニウムドーソナイトを合成して、これを焼成する方法等が知られている。
【0028】
本発明で用いるアルミナとしては、γ、θ−アルミナを主相とした遷移アルミナを用いるのが好ましい。本発明で用いるアルミナの平均粒子径は、0.001〜0.070μm、好ましくは0.007〜0.040μmである。このようなアルミナは、平均粒子径が数μmである通常のα―アルミナと比較すると、表面積が大きいために塗膜に添加した際における赤外線放射率を0.83以上に高めることができる。平均粒子径が0.070μmを超えると、比表面積が小さくなり、添加量を増加しても十分な放熱性が得られない。一方、平均粒子径が0.001μm未満では、樹脂と比較して硬質なアルミナの特性が発現せず、耐傷付き性が劣る。本発明に用いるアルミナの配合量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して(第一の実施態様では、第一のポリエステル樹脂の100重量部に対してであり、第二の実施態様では、第一及び第二のポリエステル樹脂を合わせた100重量部に対してである)10〜80重量部であり、好ましくは15〜60重量部である。10重量部未満では放熱性が劣り、80重量部を超えると放熱性と加工性が劣る。なお、アルミナ粒子を金蒸着後、走査型電子顕微鏡により観察し、粒子径を計測する。20箇所測定し、その平均値を算出したものを平均粒子径とする。
【0029】
D−1−4.その他添加剤
本発明における塗膜には、必要に応じて、レベリング剤、防錆剤、はじき防止剤、わき防止剤、ワックス、艶消し剤、着色顔料等を適量含有させてもよい。
【0030】
D−2.膜厚
塗膜の膜厚を5〜25μmとすることにより、加工後の歪による内部応力の発生が抑制され、塗膜密着性の低下を防止することができる。膜厚が5μm未満では、成形加工時において樹脂部分が破断し易くなり、絞り成形性が損なわれる。また、耐傷付き性が劣る。更に、赤外線放射率も劣る。膜厚が25μmを超えると、加工後の塗膜の内部応力が大きくなり、絞り成形性が損なわれる。また、曲げ加工性が劣る。なお、好ましい膜厚は8〜20μmである。膜厚は、後述するロールコート方式では、ピックアップロールとアプリケーターロール間のニップ圧や塗料粘度を適宜調整することにより制御される。
【0031】
D−3.赤外線放射率
本発明に係る放熱性アルミニウム塗装材の赤外線積分放射率は、0.83以上である。物体の放射率εは、黒体と物体の放射発散度(平面状の放射源から半球空間に放射された放射源の単位面積当たりの放射束)をそれぞれM、M‘として、ε=M‘/Mで定義される。ここで、黒体とは、全ての温度と全ての波長に対して理想的な、或いは、完全な放射又は吸収を行うものを指す。
【0032】
放射率εはその物体の放射(及び吸収)の能率を表す尺度で、0から黒体の値である1の間の値をとる。ここで、赤外線積分放射率とは、100℃における波長4〜14μmにおいて積分した放射率をいう。放射率は、赤外放射測定ユニットを付帯したフーリエ変換赤外分光光度計を用い測定することができる。
【0033】
放熱性アルミニウム塗装材の赤外線積分放射率が0.83未満では、放射パネル等に要求される十分な放熱性が得られない。赤外線積分放射率が高い程、放熱性アルミニウム塗装材への吸収、或いは、放熱性アルミニウム塗装材からの放射による熱移動が大きくなる。本発明では、放熱性アルミニウム塗装材の赤外線積分放射率を0.83以上とすることで、加工により塗膜が変形しても十分な放熱効果が発揮される。なお、赤外線積分放射率の上限値は特に限定するものではないが、0.93とするのが好ましい。
【0034】
E.塗装方法
本発明における塗膜は、化成皮膜表面に塗膜形成用の液状の塗料組成物を塗装(塗布)し、それを焼付けることによって形成される。
【0035】
本発明における塗膜形成用の塗料組成物は、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂及びアルミナの必須成分に、必要に応じて添加剤を加えた塗料成分を、溶剤に溶解又は分散させて調製される。溶剤は、各塗料成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、炭化水素、アルコール、ケトン、エステルなどを用いることができる。塗料組成物の塗料成分濃度は15〜60%、好ましくは18〜55%とするのが、塗装をする上で好ましい。このような塗料成分濃度となるように、塗料成分量と溶剤量を適宜調整する。
【0036】
塗料組成物の塗装(塗布)方法としては、膜厚の均一性に優れ、生産性が良好なロールコート方式が好ましい。ロールコート方式では、通常、塗料をパンに貯めておき、ピックアップロールでパンから塗料をかき上げてアプリケーターロールに転写する。次いで、転写した塗料を素材に転写するものである。素材の搬送は、バックアップロールを用いて行なわれる。ロールコート方式の他に、グラビアロール方式やナチュラルコート方式等の方法で塗装しても良い。
【0037】
本発明に用いられる塗料組成物には、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂の熱硬化性樹脂を用いているので、塗布後において、熱風炉を通板して焼付硬化させるのが好ましい。焼付硬化条件は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜250℃の最高到達板温度で、15〜80秒、より好ましくは20〜68秒の焼付時間とするのが好ましい。熱風炉内の温度と炉内を通過する時間を調整することによって、上記焼付硬化条件が達成される。最高到達板温度が180℃未満又は焼付時間が15秒未満では、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となり曲げ加工性が劣る。一方、最高到達板温度が300℃を超え又は焼付時間が80秒を超えると、熱硬化性樹脂の劣化が始まりこれまた曲げ加工性が劣る。加熱方法は、熱風炉による加熱の他に、赤外線加熱、高周波誘導加熱を用いても良い。
【0038】
F.成形
このようにして作製される放熱塗装材は、プレス成形加工用のプレス油を塗布してから深絞り加工、曲げ加工等の成形加工を施すことにより、放射パネルや筐体等の成形品が作製される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
アルミニウム合金板(JIS A5052P O材、1.0mm厚さ)を弱アルカリ脱脂液で脱脂処理し、水洗した後に、市販のりん酸クロメート処理液中に浸漬して化成処理を施して乾燥した。表1〜4に示すように、このアルミニウム合金板に、各々の塗料組成物(塗料固形分が30%で、メチルエチルケトン/キシレンの混合溶剤中)をロールコータにて塗布し、最高到達板温度(PMT)230℃で、焼付時間40秒となるように焼付けして、アルミニウム合金板上に塗膜を形成した。このようにして作成したアルミニウム塗装材の試料の塗膜厚さを、渦電流式膜厚計にて測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
得られた試料について、絞り加工性、曲げ加工性、赤外線積分放射率、耐傷付き性、色合いを下記方法によって測定した。○と△を合格とし、×を不合格とした。結果を、表1〜4に併せて示す。
【0046】
<絞り加工性>
上記試料を用いて、塗膜面が外側になるように円筒成形品に絞り加工した。加工条件は、パンチ径φ3.2mm、ダイス径φ33.68mm、ブランク径68.5mmとした。側壁部の外観を目視観察することにより、下記の基準に従って絞り加工性を評価した。
○:塗膜の割れは認められなかった。
△:部分的に塗膜の割れが認められた。
×:著しい塗膜の割れが認められた。
○と△を合格とし、×を不合格とした。
【0047】
<曲げ加工性>
上記試料を用いて、塗膜面を外側にして180度2T曲げを行なった。塗膜の割れの有無を目視観察することにより、下記の基準に従って曲げ加工性を評価した。
○:塗膜の割れ無し
△:小さな塗膜の割れがあるが使用可能
×:大きな塗膜の割れがあり使用不可
○と△を合格とし、×を不合格とした。
【0048】
<赤外線積分放射率>
赤外線放射率は、赤外放射測定ユニットを付帯したフーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定した。測定条件は、温度100℃で、波長4μm〜14μmとした。
【0049】
<耐傷付き性>
上記試料を用いて、バウデン式摩擦試験により、塗膜上に5Nの重りを載せて鋼球を10回摺動させた傷痕を観察することによって、耐傷付き性を下記の基準で評価した。
○:傷痕が僅かに認められる。
△:傷痕が認められるが、素地まで達していない。
×:素地まで達する傷が認められた。
○と△を合格とし、×を不合格とした。
【0050】
<色合い>
上記試料の塗膜側の色合いを目視で観察した。
○:白色
×:黒色又は灰色
○を合格とし、×を不合格とした。
【0051】
実施例1〜18はいずれも、絞り加工性、曲げ加工性、赤外線積分放射率、耐傷付き性及び色合いが良好であった。
【0052】
これに対して、比較例1、2では、ガラス転移温度が40〜70℃のポリエステル樹脂が用いていないため、耐傷付き性が劣った。
【0053】
比較例3では、架橋剤としてメラミン樹脂に代わってイソシアネート樹脂を用いたため、耐傷付き性が劣った。比較例4では、架橋剤を用いなかったため、耐傷付き性、絞り成形性、曲げ加工性が劣った。
【0054】
比較例5では、ポリエステル樹脂100重量部に対するメラミン樹脂の配合量が50重量部を超えたため、絞り加工性と曲げ加工性が劣った。
【0055】
比較例6では、ポリエステル樹脂100重量部に対するアルミナの配合量が10重量部未満のため、赤外線積分放射率が小さく熱放射性に劣った。また、色合いも劣った。
【0056】
比較例7では、ポリエステル樹脂100重量部に対するアルミナの配合量が80重量部を超えたため、絞り加工性と曲げ加工性が劣った。また、赤外線積分放射率が小さく熱放射性に劣った。
【0057】
比較例8、9では、アルミナの粒径が0.07μmを超えたため、赤外線積分放射率が小さく熱放射性に劣った。
【0058】
比較例10では、アルミナに代えて酸化チタンを用いたため耐傷付き性が劣り、また、赤外線積分放射率が小さく熱放射性も劣った。
【0059】
比較例11では、分子量が10000未満のポリエステル樹脂を用いたため、絞り加工性と曲げ加工性に劣った。
【0060】
比較例12では、膜厚が5μm未満のため、絞り加工性及び耐傷付き性が劣った。また、赤外線積分放射率が小さく熱放射性も劣った。
【0061】
比較例13では膜厚が25μmを超えた為、絞り加工性及び曲げ加工性が劣った。
【0062】
比較例14では、アルミナの粒径が0.001μm未満の為、耐傷付き性が劣った。
【0063】
比較例15では、ポリエステル樹脂の分子量が20000を超えていたため、塗膜が形成できなかった。
【0064】
比較例16では、Tgが70℃を超えていたため、絞り成形性と曲げ加工性が劣った。
【0065】
比較例17では、第一のポリエステル樹脂:第二のポリエステル樹脂の重量割合が10:90と第一のポリエステル樹脂の重量割合が低かったために、耐傷付き性が劣った。
【0066】
比較例18では、第一のポリエステル樹脂:第二のポリエステル樹脂の重量割合が80:20と第一のポリエステル樹脂の重量割合が高かったために、絞り成形性と曲げ加工性が劣った。