【解決手段】本発明の防曇性ポリオレフィン系シートは、ポリオレフィン系シートの少なくとも一方の表面に、防曇剤と、ガラス転移温度がそれぞれ異なる2以上の親水性樹脂とを含有する防曇層を備えることを特徴とするものである。
ポリオレフィン系シートの少なくとも一方の表面に、防曇剤と、ガラス転移温度がそれぞれ異なる2以上の親水性樹脂とを含有する防曇層を備えることを特徴とする防曇性ポリオレフィン系シート。
複数の冷却ロールに巻装されたエンドレスベルトと鏡面冷却ロールとの間に溶融ポリオレフィンを導入後、前記エンドレスベルトおよび鏡面冷却ロールで前記溶融ポリオレフィンを圧接してシート状に成形するとともに、急冷してポリオレフィン系シートを成形するシート成形工程と、
このシート成形工程により得られたポリオレフィン系シートの少なくとも一方の表面に、防曇剤と、ガラス転移温度がそれぞれ異なる2以上の親水性樹脂とを含有する塗布液を、前記防曇剤および前記親水性樹脂の合計付着量が、固形分で50mg/m2以上550mg/m2以下となるように、塗布した後、乾燥させて防曇層を形成する防曇層形成工程と、を備える
ことを特徴とする防曇性ポリオレフィン系シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[防曇性ポリオレフィン系シート]
先ず、本発明の防曇性ポリオレフィン系シートについて説明する。
本発明の防曇性ポリオレフィン系シートは、以下説明するポリオレフィン系シートの少なくとも一方の表面に、以下説明する防曇層を備えることを特徴とするものである。
【0011】
(ポリオレフィン系シート)
本発明に用いるポリオレフィン系シートは、ポリオレフィン系樹脂から形成されるシートである。このポリオレフィン系樹脂としては、種々のオレフィンの単独重合体、共重合体、およびこれらの混合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
単独重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソプレン、ブタジエンなどのモノマーからなる単独重合体が挙げられる。また、共重合体としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性、強度などの観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0012】
(防曇層)
本発明における防曇層は、防曇剤と、ガラス転移温度がそれぞれ異なる2以上の親水性樹脂とを含有する層である。
本発明に用いる防曇剤としては、特に限定されないが、ショ糖系脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸3級アミド、高級アルコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、透明性および防曇性などの観点から、ショ糖系脂肪酸エステルが好ましく、蔗糖と炭素数12以上22以下の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物がより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この防曇剤の付着量は、固形分で4mg/m
2以上400mg/m
2以下であることが好ましく、固形分で50mg/m
2以上200mg/m
2以下であることがより好ましい。付着量が前記範囲内であれば、効果的に防曇性を発揮させることができる。
なお、付着量は、(i)乾燥後の防曇層中の単位面積あたり質量を測定する方法や、(ii)塗布液の濃度、塗布量および塗布面積から算出する方法により求められる。
【0013】
本発明においては、ガラス転移温度がそれぞれ異なる2以上の親水性樹脂を用いることが必要である。ガラス転移温度が同一の親水性樹脂を単独で用いる場合には、防曇層のべたつきの防止と、成形時における防曇層の延伸への追従とを両立させることができない。ここで、2以上の親水性樹脂は、ガラス転移温度がそれぞれ異なる樹脂であればよく、同種の樹脂であってもよい。
なお、親水性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に規定されている測定方法に準拠して測定した中間点ガラス転移温度をいう。
【0014】
親水性樹脂の中でも、透明性、成形性および防曇層のべたつきの観点から、親水性アクリル樹脂が好ましい。
この親水性アクリル樹脂としては、特に限定はないが、ポリアクリル酸エステルなどの共重合体を採用することができる。ここで、ポリアクリル酸エステルを構成するアクリル酸エステルとしては、アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステルなどが挙げられる。そして、これらのアクリル酸エステルを、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニルなどと共重合させたポリマーを採用できる。また、これらのアクリル酸エステルを、アクリル酸、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ヒドロキシジアルキルメタクリレートなどの官能性モノマーと共重合させたポリマーを採用することもできる。
【0015】
本発明においては、前記親水性樹脂が、ガラス転移温度が−50℃以上90℃以下である第一親水性樹脂と、ガラス転移温度が100℃以上170℃以下である第二親水性樹脂とを含有することが好ましい。
第一親水性樹脂は、低温側のガラス転移温度を有する親水性樹脂である。第一親水性樹脂により、防曇層に成形性を付与でき、成形時には防曇層が延伸に追従しやすくできる。第一親水性樹脂のガラス転移温度は、成形性、防曇層のべたつきなどのバランスの観点から、40℃以上80℃以下であることがより好ましく、50℃以上70℃以下であることが特に好ましい。第一親水性樹脂のガラス転移温度が室温よりも低い場合には、防曇層のべたつきにより、ブロッキングの可能性が高くなる傾向にある。
第一親水性樹脂の付着量は、固形分で25mg/m
2以上300mg/m
2以下であることが好ましく、固形分で40mg/m
2以上200mg/m
2以下であることがより好ましい。付着量が前記下限未満では、防曇層の柔軟性が不足し、成形時の延伸でクラックが入り、防曇性を損なってしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、防曇層のべたつきにより、原反でブロッキングが発生し、接触面に防曇層を剥されるため、防曇性や透明性を損なってしまう傾向にある。
【0016】
第二親水性樹脂は、高温側のガラス転移温度を有する親水性樹脂である。第二親水性樹脂により、防曇層のべたつきを低減できる。第二親水性樹脂のガラス転移温度は、成形性、防曇層のべたつきなどのバランスの観点から、100℃以上160℃以下であることがより好ましく、100℃以上130℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度が高くなるほど、成形時の加熱による軟化が遅れ、ポリオレフィン系シートへ防曇層が追従しにくくなる傾向にある。
第二親水性樹脂の付着量は、固形分で20mg/m
2以上200mg/m
2以下であることが好ましく、固形分で30mg/m
2以上150mg/m
2以下であることがより好ましい。付着量が前記下限未満では、防曇層のべたつきが防止できず、原反でブロッキングが発生し、接触面に防曇層を剥されるため、防曇性を損なってしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、防曇層の硬度が上がりすぎ、成形時の延伸でクラックが入り、防曇性を損なってしまう傾向にある。
【0017】
本発明における防曇層は、前記防曇剤および前記親水性樹脂(第一親水性樹脂および第二親水性樹脂)の付着量が、それぞれ前記範囲内となるようにして形成される層である。ここで、前記防曇剤および前記親水性樹脂の合計付着量は、防曇性、透明性、防曇層のべたつきなどのバランスの観点から、固形分で50mg/m
2以上550mg/m
2以下であることが好ましく、固形分で70mg/m
2以上400mg/m
2以下であることがより好ましく、固形分で100mg/m
2以上300mg/m
2以下であることが特に好ましい。
【0018】
[防曇性ポリオレフィン系シートの製造方法]
次に、本発明の防曇性ポリオレフィン系シートの製造方法について、図面に基づいて説明する。本発明の防曇性ポリオレフィン系シートの製造方法は、以下説明するシート成形工程および防曇層形成工程を備える方法である。ここでは、
図1に示すように、ポリオレフィン系シートとしてのポリプロピレンシート11の一方の表面に、防曇層12を備える防曇性ポリオレフィン系シート1を製造する方法を例に挙げて説明する。
(ポリオレフィン系シートの製造装置)
先ず、
図2を参照して、本発明におけるシート成形工程において、ポリプロピレンシート11の製造に用いられる製造装置について説明する。この製造装置は、押出機のTダイ22と、第一冷却ロール23、第二冷却ロール26、第三冷却ロール24および第四冷却ロール25と、エンドレスベルト27と、冷却水吹き付けノズル28と、水槽29と、吸水ロール30と、剥離ロール31とを備えて構成されている。
第四冷却ロール25、第二冷却ロール26および第三冷却ロール24は、金属製ロールであり、その内部には表面温度調節を可能にするために水冷式などの冷却手段(図示省略)が内蔵されている。
ここで、第一冷却ロール23の表面には、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)製の弾性材32が被覆されている。この弾性材32は、その硬度(JIS K 6301Aに準拠した方法で測定)が60度以下、厚さが10mmのものである。なお、第一冷却ロール23、第四冷却ロール25および第三冷却ロール24の少なくとも一つは、その回転軸が回転駆動手段(図示省略)と連結されている。
【0019】
第二冷却ロール26は、Rmax=1.0μmの鏡面を有する金属製ロール(鏡面冷却ロール)であり、その内部には表面の温度調節を可能にするための水冷式などの冷却手段(図示省略)が内蔵されている。ここで、Rmax=1.0μm(RmaxはJIS B 0601「表面粗さ−定義及び表示」に基づく)より大きいと、得られるポリプロピレンシート11の光沢度が低くなり、透明性の低いポリプロピレンシート11となる。
この第二冷却ロール26は、ポリプロピレンシート11をエンドレスベルト27を介して第一冷却ロール23との間に挟むように配置されている。
【0020】
エンドレスベルト27は、ステンレスなどからなり、Rmax=1.0μm以下の鏡面を有するものである。このエンドレスベルト27は、上述の第一冷却ロール23、第三冷却ロール24および第四冷却ロール25に回動自在に巻装されている。
冷却水吹き付けノズル28は、第二冷却ロール26の下面側に設けられており、これによって、エンドレスベルト27の裏面に冷却水が吹き付けられることとなる。このように冷却水を吹き付けることで、エンドレスベルト27を急冷するとともに、第一冷却ロール23および第二冷却ロール26により面状圧接された直後のポリプロピレンシート11を急冷している。
また、水槽29は、上面が開口した箱状に形成され、第二冷却ロール26の下面全体を覆うように設けられている。この水槽29により、吹き付けられた冷却水を回収するとともに、回収した水を水槽29の下面に形成された排出口29Aより排出する。
吸水ロール30は、第二冷却ロール26における第三冷却ロール24側の側面部に、エンドレスベルト27に接するように設置されており、エンドレスベルト27の裏面に付着した余分な冷却水を除去する作用をする。
【0021】
剥離ロール31は、ポリプロピレンシート11をエンドレスベルト27および第三冷却ロール24にガイドするように配置されるとともに、冷却終了後のポリプロピレンシート11をエンドレスベルト27から剥離するものである。
なお、本実施形態では、剥離ロール31は、ポリプロピレンシート11を第三冷却ロール24側に圧接していないが、圧接するようにしても構わない。ただし、本実施形態のように圧接しない方が好ましい。
【0022】
(シート成形工程)
次に、以上のように構成された製造装置を用いてポリプロピレンシート11を製造する方法について説明する(シート成形工程)。
シート成形工程では、先ず、ポリプロピレンシート11と直接接触し、これを冷却するエンドレスベルト27および第二冷却ロール26の表面温度が露点以上、30℃以下に保たれるように、予め各冷却ロール24,25,26の温度制御を行う。
ここで、第二冷却ロール26およびエンドレスベルト27の表面温度が露点以下では、表面に結露が生じ均一な製膜が困難になる可能性がある。一方、表面温度が30℃より高いと、得られるポリプロピレンシート11の透明性が低くなるとともに、α晶が多くなり、熱成形しにくいものとなる可能性がある。したがって、本実施形態では表面温度を14℃としている。
【0023】
次に、押出機のTダイ22より押し出されたポリプロピレンシート11を、第一冷却ロール23上でエンドレスベルト27と第二冷却ロール26との間に挟み込む。この状態で、ポリプロピレンシート11を第一冷却ロール23、第二冷却ロール26で圧接するとともに、14℃で急冷する。
この際、第一冷却ロール23および第二冷却ロール26間の押圧力で弾性材32が圧縮されて弾性変形することとなる。この弾性材32が弾性変形している部分、すなわち、第一冷却ロール23の中心角度θ1に対応する円弧部分で、ポリプロピレンシート11は第一冷却ロール23、第二冷却ロール26により面状圧接されている。この際の面圧は、0.1〜20MPaである。
上述のように圧接され、第二冷却ロール26およびエンドレスベルト27間に挟まれたポリプロピレンシート11は、続いて、第二冷却ロール26の略下半周に対応する円弧部分で、エンドレスベルト27と第二冷却ロール26とに挟まれて面状圧接されるとともに、冷却水吹き付けノズル28によるエンドレスベルト27の裏面側への冷却水の吹き付けにより、さらに急冷される。この際の面圧は、0.01〜0.5MPaであり、また、冷却水の温度は8℃である。
なお、吹き付けられた冷却水は、水槽29に回収されるとともに、回収された水は排出口29Aより排出される。
【0024】
このように第二冷却ロール26で面状圧接および冷却された後、エンドレスベルト27に密着したポリプロピレンシート11は、エンドレスベルト27の回動とともに第三冷却ロール24上に移動される。ここで、剥離ロール31によりガイドされたポリプロピレンシート11は、第三冷却ロール24の略上半周に対応する円弧部分で、再び30℃以下の温度で冷却される。
なお、エンドレスベルト27の裏面に付着した水は、第二冷却ロール26から第三冷却ロール24への移動途中に設けられている吸水ロール30により除去される。
第三冷却ロール24上で冷却されたポリプロピレンシート11は、剥離ロール31によりエンドレスベルト27から剥離され、巻取りロール(図示省略)により、所定の速度で巻き取られる。
【0025】
(防曇層形成工程)
次に、前記シート成形工程により得られたポリプロピレンシート11の一方の表面に防曇層12を形成する方法について説明する(防曇層形成工程)。
防曇層形成工程では、先ず、ポリプロピレンシート11の一方の表面にコロナ処理を施す。そして、コロナ処理を施したポリプロピレンシート11の一方の表面に、前記防曇剤および前記親水性樹脂を含有する塗布液を、前記防曇剤および前記親水性樹脂の合計付着量が、固形分で50mg/m
2以上550mg/m
2以下となるように、塗布した後、乾燥させて防曇層を形成する。
【0026】
ここで、用いる塗布装置としては、公知の塗布装置を適宜採用でき、グラビアコータ、スプレーコータなどを採用できる。
前記防曇剤、前記親水性樹脂の合計付着量は、防曇性、透明性、防曇層のべたつきなどのバランスの観点から、固形分で70mg/m
2以上400mg/m
2以下であることが好ましく、固形分で100mg/m
2以上300mg/m
2以下であることがより好ましい。
前記防曇剤、前記第一親水性樹脂および前記第二親水性樹脂のそれぞれの付着量については、前述した通りの範囲内とすることが好ましい。
乾燥条件としては、特に限定されない。例えば前記塗布液が水溶液である場合には、乾燥温度は、例えば20℃以上150℃以下であり、乾燥時間は、例えば1分間以上120分間以下である。
以上のようにして、防曇性ポリオレフィン系シート1を製造できる。
【0027】
[防曇性ポリオレフィン系シートの成形体および食品包装用成形体]
本発明の防曇性ポリオレフィン系シートの成形体は、本発明の防曇性ポリオレフィン系シートを熱成形して得られることを特徴とするものである。そして、本発明の防曇性ポリオレフィン系シートは、防曇層のべたつきを防止できるので、転写ムラなどを防止でき、成形体の透明性や外観が良好なものとなる。また、本発明の防曇性ポリオレフィン系シートは、成形時には防曇層が延伸に追従できるので、熱成形後の成形体の防曇性が十分なものとなる。
本発明の食品包装用成形体は、前記本発明の防曇性ポリオレフィン系シートの成形体を用いたことを特徴とするものである。本発明の防曇性ポリオレフィン系シートの成形体は、防曇性、透明性および外観に優れているため、食品包装用成形体、例えば食品用トレイなどに好適に利用することができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
透明ポリプロピレンシート(
図2に示す製造装置を用いてシート成形工程により作製したもの)の片面にコロナ処理を施した。この処理面に、ショ糖脂肪酸エステルの付着量が固形分で50mg/m
2、ガラス転移温度60℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で110mg/m
2、ガラス転移温度110℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で85mg/m
2となるように塗布して乾燥させ、防曇層を形成し、防曇性ポリオレフィン系シートを得た。
【0029】
[実施例2]
ショ糖脂肪酸エステルの付着量が固形分で25mg/m
2、ガラス転移温度60℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で55mg/m
2、ガラス転移温度110℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で42mg/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして、防曇性ポリオレフィン系シートを得た。
[実施例3]
ショ糖脂肪酸エステルの付着量が固形分で25mg/m
2、ガラス転移温度60℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で110mg/m
2、ガラス転移温度110℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で42mg/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして、防曇性ポリオレフィン系シートを得た。
【0030】
[比較例1]
ショ糖脂肪酸エステルの付着量が固形分で110mg/m
2、ガラス転移温度60℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で85mg/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして、防曇性ポリオレフィン系シートを得た。
[比較例2]
ショ糖脂肪酸エステルの付着量が固形分で50mg/m
2、ガラス転移温度110℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で42mg/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして、防曇性ポリオレフィン系シートを得た。
[比較例3]
ショ糖脂肪酸エステルの付着量が固形分で50mg/m
2、ガラス転移温度110℃の親水性アクリル樹脂の付着量が固形分で85mg/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして、防曇性ポリオレフィン系シートを得た。
【0031】
<防曇性ポリオレフィン系シートおよびその成形体の評価>
上記各実施例および比較例で得られた防曇性ポリオレフィン系シートについて、巻取り後のシート外観、巻取り後のシートの防曇性(高温/低温)について評価を行い、結果を表1に示した。巻取り後のシートの外観は、サンプルを温度35℃、湿度85%の雰囲気で1週間保管後に目視にて評価した。
また、上記各実施例および比較例で得られた防曇性ポリオレフィン系シートを一般的な真空圧空成形機でφ100mm、深さ10mmの容器を成形した。得られた容器についても同様の評価および透明性の評価を行い、併せて表1に示した。
ここで、巻取り後のシート外観、成形体外観および成形体透明性は、目視で評価した。
また、防曇性は、以下のような手法で評価した。
[1]高温防曇性
一定容量の容器に90℃の熱水を一定量注ぎ、成形蓋で密閉する。室温で放置後の経時変化を目視して評価した(評価5:良好、評価1:不良)。
[2]低温防曇性
一定容量の容器に23℃の水を一定量注ぎ、成形蓋で密閉する。5℃の冷蔵庫で放置後の経時変化を目視して評価した(評価5:良好、評価1:不良)。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3で得られた防曇性ポリオレフィン系シートについては、シートの外観、防曇性、および成形体の外観、透明性、防曇性が極めて良好であることが確認された。
これに対して、比較例1では、ガラス転移点が100℃以上170℃以下の親水性アクリル樹脂を含んでいないため、巻取りによるブロッキングで転写ムラが発生し、外観が損なわれていることが分かった。
また、比較例2および3では、ガラス転移点が−50℃以上90℃以下の親水性アクリル樹脂を含んでいないため、熱成形により防曇層にクラックが発生し、成形品の防曇性が損なわれていることが分かった。