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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231724(P2015-231724A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-120027(P2014-120027)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊也
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG12
2C057AG30
2C057AG75
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】振動板のうち振動する領域を充分に確保し、所期の流路特性を高精度に実現する。
【解決手段】液体噴射ヘッド20は、インクが充填される圧力室Cと、圧力室Cに連通するノズルNと、圧力室C内の圧力を変動させる圧電素子28が形成された能動部262を含む振動板26と、振動板26に沿うY方向にインクを流すとともに少なくとも一部が振動板26に対向する絞り流路Aとを具備する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填される圧力室と、
前記圧力室に連通するノズルと、
前記圧力室内の圧力を変動させる圧電素子が形成された能動部を含む振動板と、
前記振動板に沿う第1方向に前記液体を流すとともに少なくとも一部が前記能動部に対向する絞り流路と
を具備する液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記振動板に対向する第1部分と、前記第1部分から前記振動板側に突出する第2部分とを含む流路基板を具備し、
前記絞り流路は、前記第2部分と前記振動板との間の流路である
請求項1の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第2部分は、前記流路基板に一体に形成される
請求項2の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2部分は、シリコンの基板に対するエッチングで形成される
請求項3の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記振動板と前記流路基板との間に設置されて第1空間を形成する圧力室基板を具備し、
前記圧力室は、前記圧力室基板が形成する前記第1空間と、前記第1部分に対応する第2空間とで構成される
請求項2から請求項4の何れかの液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記振動板に対する平面視で前記第1方向に交差する第2方向における前記第2空間の寸法は、前記第2方向における前記第1空間の寸法を下回る
請求項5の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記流路基板には、前記圧力室と前記ノズルとを連通する連通流路が形成される
請求項2から請求項6の何れかの液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかの液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙等の媒体にインク等の液体を噴射する各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1や特許文献2には、圧電素子が形成された振動板の振動により圧力室内の圧力を変動させることで圧力室内のインクをノズルから噴射する液体噴射ヘッドが開示されている。流路面積(断面積)が圧力室を下回るインク供給路を介して圧力室にインクが供給される。インク供給路は、振動板に沿う方向(水平方向)の流路であり、適切な流路抵抗をインクに付与する。また、特許文献3には、振動板に垂直な方向の貫通孔を流路として圧力室にインクを供給する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−073206号公報
【特許文献2】特開平11−157076号公報
【特許文献3】特開平6−234218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2の技術では、振動板に対する平面視で(振動板の表面に垂直な方向からみて)インク供給路に重ならないように圧電素子が形成される。したがって、振動板のうち圧電素子が形成される領域(圧電素子に連動して振動する領域)のサイズを充分に確保することが困難であるという問題がある。他方、特許文献3の技術では、圧力室にインクを供給する流路として利用される貫通孔がパンチ(プレス)等の方法で形成されるから、貫通孔の位置や内径に誤差が発生し易い。したがって、所期の流路特性(流路抵抗等)を高精度に実現することが困難であるという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、振動板のうち振動する領域を充分に確保するとともに所期の流路特性を高精度に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体噴射ヘッドは、液体が充填される圧力室と、圧力室に連通するノズルと、圧力室内の圧力を変動させる圧電素子が形成された能動部を含む振動板と、振動板に沿う第1方向に液体を流すとともに少なくとも一部が能動部に対向する絞り流路とを具備する。以上の構成では、絞り流路に対向する範囲まで振動板の能動部(圧電素子)が存在するから、圧電素子がインク供給路(絞り)に対向しない特許文献1や特許文献2の構成と比較して振動板の能動部を充分に確保する(ひいてはインクの噴射量を増加させる)ことが可能である。また、振動板に沿う第1方向に液体を流すように絞り流路が形成されるから、例えばパンチ等の方法で基板に形成された貫通孔を絞り流路として利用する特許文献3の構成(すなわち、絞り流路が振動板に垂直な方向に沿う構成)と比較して高精度に絞り流路が形成される。したがって、所期の流路特性(例えば流路抵抗)を高精度に実現することが可能である。
【0006】
ところで、圧力室を形成する圧力室基板に振動板を設置する構成では、圧力室基板に形成された開口部の内壁面から突出する形状の突起部で絞り流路を形成することも可能である。しかし、圧力室基板に突起部を形成した構成のもとで、振動板と絞り流路とを相互に対向させた場合には、振動板の能動部の振動に起因した応力が振動板や圧力室基板の突起部の基端側に集中して振動板や圧力室基板の破損の原因となり得る。以上の事情を考慮すると、本発明に係る液体噴射ヘッドにおいては、振動板に対向する第1部分と、第1部分から振動板側に突出する第2部分とを含む流路基板を設置し、第2部分と振動板との間の流路を絞り流路とした構成が格別に好適である。以上の構成では、流路基板に形成された第2部分と振動板との間に絞り流路が形成されるから、振動板の振動に起因した各要素(例えば振動板や圧力室基板)の破損を抑制できるという利点がある。
【0007】
本発明の好適な態様において、第2部分は、流路基板に一体に形成される。以上の態様では、第2部分が流路基板に一体に形成されるから、例えば流路基板とは別体に形成された第2部分を流路基板に設置する構成と比較して、第2部分を高精度に所期の位置に形成できるという利点がある。シリコンの基板に対するエッチングで第2部分を形成する構成によれば、以上の効果は格別に顕著である。
【0008】
本発明の好適な態様に係る液体噴射ヘッドは、振動板と流路基板との間に設置されて第1空間を形成する圧力室基板を具備し、圧力室は、圧力室基板が形成する第1空間と、第1部分に対応する第2空間とで構成される。以上の態様では、第1空間と第2空間とで圧力室が形成されるから、例えば第1空間のみを圧力室として利用する構成と比較して圧力室の容量を増加させることが可能である。また、振動板に対する平面視で第1方向に交差する第2方向における第2空間の寸法が、第2方向における第1空間の寸法を下回る構成によれば、相互に隣合う各第2空間の間隔が拡大するから、第2空間内の圧力変動の影響が周囲のノズルまで波及し難いという利点がある。なお、第2空間を形成することで圧力室の容量を確保する構成においても、圧力室とノズルとを連通する連通流路を流路基板に形成した構成が好適である。
【0009】
本発明の好適な態様に係る液体噴射装置は、以上の各態様に係る液体噴射ヘッドを具備する。液体噴射ヘッドの好例は、インクを噴射する印刷装置であるが、本発明に係る液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の構成図である。
図2】液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図3】液体噴射ヘッドの断面図(図2のIII-III線の断面図)である。
図4】流路基板を部分的に拡大した斜視図である。
図5】流路基板を部分的に拡大した平面図である。
図6】液体噴射ヘッドの各要素の関係を示す平面図である。
図7】圧電素子の断面図および平面図である。
図8図6におけるVIII-VIII線の断面図である。
図9図6におけるIX-IX線の断面図である。
図10】第1実施形態の変形例の平面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
図12】第2実施形態の液体噴射ヘッドの各要素の関係を示す平面図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
図14】変形例に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
図15】変形例に係る印刷装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な構成図である。第1実施形態の印刷装置100は、液体の例示であるインクを印刷用紙等の媒体Mに噴射する液体噴射装置であり、制御装置12と搬送機構14とヘッドモジュール16とを具備する。制御装置12は、印刷装置100の各要素を統括的に制御する。搬送機構14は、制御装置12による制御のもとで媒体MをY方向に搬送する。また、印刷装置100には、インクが充填されたカートリッジ102が装着される。
【0012】
図1のヘッドモジュール16は、複数の液体噴射ヘッド20を含んで構成される。第1実施形態のヘッドモジュール16は、Y方向に交差するX方向に沿って複数の液体噴射ヘッド20が配列(いわゆる千鳥配置またはスタガ配置)されたラインヘッドである。各液体噴射ヘッド20は、カートリッジ102から供給されるインクを制御装置12による制御のもとで媒体Mに噴射する。搬送機構14による媒体Mの搬送に並行して各液体噴射ヘッド20が媒体Mにインクを噴射することで媒体Mの表面に所望の画像が形成される。なお、X-Y平面(媒体Mの表面に平行な平面)に垂直な方向を以下ではZ方向と表記する。各液体噴射ヘッド20によるインクの噴射方向(鉛直方向の下向き)がZ方向に相当する。
【0013】
図2は、任意の1個の液体噴射ヘッド20の分解斜視図であり、図3は、図2におけるIII-III線の断面図(Y-Z平面に平行な断面)である。図2および図3に例示される通り、第1実施形態の液体噴射ヘッド20は、流路基板22のうちZ方向の負側の面上に圧力室基板24と振動板26と保護体32と筐体34とを設置するとともに、流路基板22のうちZ方向の正側の面上にノズル板42とコンプライアンス部44とを設置した構造体である。液体噴射ヘッド20の各要素は、概略的にはX方向に長尺な略平板状の部材であり、例えば接着剤を利用して相互に固定される。
【0014】
ノズル板42は、X方向に配列する複数のノズル(噴射口)Nが形成された平板状の要素であり、例えば接着剤を利用して流路基板22のうちZ方向の正側の表面に固定される。各ノズルNは、インクが通過する貫通孔である。ノズル板42の材料や製法は任意であるが、例えばシリコン(Si)の単結晶で形成された基板をエッチング等の半導体製造技術により選択的に除去することで、所期の形状のノズル板42を簡便かつ高精度に形成することが可能である。
【0015】
流路基板22は、インクの流路を形成するための平板状の要素である。図4は、流路基板22のうち図2の領域αを拡大した斜視図であり、図5は、流路基板22を部分的に拡大した平面図である。図3から図5に例示される通り、第1実施形態の流路基板22には、開口部52と複数の供給流路54と複数の連通流路56とが形成される。図2から把握される通り、開口部52は、複数のノズルNにわたり連続するX方向に長尺な貫通孔(開口)である。複数の供給流路54は、平面視で(Z方向からみて)X方向に沿って配列する。同様に、複数の連通流路56は、平面視でX方向に沿って配列する。開口部52と複数の連通流路56の配列との間に複数の供給流路54が配列する。各供給流路54および各連通流路56は、ノズルN毎に形成された貫通孔である。図3および図5に例示される通り、流路基板22のうちZ方向の正側の表面には、供給流路54と開口部52とを連通するようにY方向に延在する溝状の分配流路58(マニホールド)が供給流路54毎に形成される。他方、各連通流路56は1個のノズルNに連通する。
【0016】
図3から図5に例示される通り、流路基板22のうちZ方向の負側の表面において相互に対応する供給流路54と連通流路56との間の領域には第1部分62と第2部分64とが形成される。第1部分62および第2部分64は、平面視でY方向に沿って相互に隣合う。具体的には、流路基板22に対する平面視で第1部分62と供給流路54との間に第2部分64が位置し、第2部分64と連通流路56との間に第1部分62が位置する。
【0017】
図3から理解される通り、第1部分62は、振動板26に対向する部分である。他方、第2部分64は、第1部分62から振動板26側(Z方向の負側)に突出した突起部である。第1実施形態では、第2部分64の表面(頂面)が流路基板22の表面と同一面内に位置する構成を例示する。図3および図4から理解される通り、第1部分62は、第2部分64の表面(流路基板22の表面)に対して窪んだ部分(凹部)とも換言され得る。すなわち、第1部分62を底面として第1部分62と第2部分64との段差を高さとする空間(以下「第2空間」という)c2が第1部分62の面上に形成される。
【0018】
第1実施形態の流路基板22は、シリコン(Si)の単結晶で形成された基板(以下「原基板」という)を加工することで形成される。例えば、流路基板22の貫通孔(開口部52,各供給流路54,各連通流路56)は、原基板に対するレーザーの照射により原基板を部分的に除去することで形成され得る。また、流路基板22の各第1部分62(表面に対する窪み)および各分配流路58は、エッチング等の半導体製造技術により原基板の特定の領域を厚さ方向に部分的に除去することで形成され得る。以上の説明から理解される通り、流路基板22の各第2部分64は、エッチング等の半導体製造技術を利用したシリコンの原基板の加工により流路基板22と一体に形成される。以上の例示のようにエッチング等の半導体製造技術を利用することで、所期の形状の流路基板22を簡便かつ高精度に形成することが可能である。もっとも、流路基板22の製法は以上の例示に限定されない。
【0019】
図3のコンプライアンス部44は、液体噴射ヘッド20の流路内の圧力変動を抑制(吸収)するための要素であり、例えば可撓性を有するシート状の部材を含んで構成される。具体的には、流路基板22の開口部52と各分配流路58と各供給流路54とが閉塞されるように、流路基板22のうちZ方向の正側の表面にコンプライアンス部44が固定される。したがって、流路基板22の開口部52からノズルN毎の分配流路58に分岐して供給流路54に到達するインクの流路が形成される。
【0020】
図3に例示される通り、流路基板22のうちZ方向の負側の表面には筐体34が固定される。筐体34の材料や製法は任意であるが、例えば樹脂材料の射出成型で一体的に成形される。第1実施形態の筐体34には、収容部342と導入流路344とが形成される。収容部342は、平面視で流路基板22の開口部52に対応した外形の凹部(窪み)であり、導入流路344は、収容部342に連通する流路である。図3から理解される通り、流路基板22の開口部52と筐体34の収容部342とを相互に連通させた空間が液体貯留室(リザーバー)Rとして機能する。カートリッジ102から供給されて導入流路344を通過したインクが液体貯留室Rに貯留される。図3のコンプライアンス部44は、液体貯留室Rの底面を構成し、液体貯留室R内のインクの圧力変動を吸収する。
【0021】
図3に例示される通り、流路基板22のうちZ方向の負側の表面に圧力室基板24が固定される。圧力室基板24は、例えば接着剤を利用して流路基板22の表面に固定される。図2および図3に例示される通り、圧力室基板24には、相異なるノズルNに対応する複数の開口部242が形成される。複数の開口部242は、X方向に沿って直線状に配列する。
【0022】
図6は、液体噴射ヘッド20の各要素の関係を示す平面図である。図6に例示される通り、圧力室基板24に形成された開口部242は、平面視でY方向に長尺な貫通孔である。具体的には、開口部242のうちY方向の負側の端部は平面視で流路基板22の1個の供給流路54に重なり、開口部242のうちY方向の正側の端部は平面視で流路基板22の1個の連通流路56に重なる。圧力室基板24の材料や製法は任意であるが、例えば前述のノズル板42や流路基板22と同様に、シリコンの単結晶で形成された基板を半導体製造技術により選択的に除去することで、所期の形状の圧力室基板24を簡便かつ高精度に形成することが可能である。
【0023】
図3に例示される通り、圧力室基板24のうち流路基板22とは反対側の表面には振動板26が固定される。振動板26は、弾性的に振動可能な平板状の部材である。例えば酸化シリコン等の弾性材料で形成された弾性膜と、酸化ジルコニウム等の絶縁材料で形成された絶縁膜との積層で振動板26が構成される。
【0024】
図3から理解される通り、振動板26と流路基板22とは、圧力室基板24に形成された開口部242の内側で相互に間隔をあけて対向する。圧力室基板24の開口部242の内側で流路基板22の第2部分64と振動板26との間に位置する空間は、振動板26に平行なY方向に沿う流路(以下「絞り流路」という)Aとして機能する。すなわち、絞り流路Aは、振動板26に沿う方向(Y方向)にインクを流動させる流路である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、流路基板22の第2部分64で絞り流路Aが形成される。また、圧力室基板24の開口部242の内側で流路基板22の第1部分62と振動板26との間に位置する空間は、当該空間内のインクに圧力を付与する圧力室(キャビティ)Cとして機能する。すなわち、第1部分62は、圧力室Cの底面を構成する要素(底部)とも換言され得る。圧力室CはノズルN毎に個別に形成される。
【0025】
図3から理解される通り、第1実施形態の圧力室Cは、圧力室基板24の開口部242の内側で絞り流路Aの下流側に位置する第1空間c1と、流路基板22の第1部分62の面上に形成される第2空間c2とを含んで構成される。以上の例示のように圧力室Cが第1空間c1と第2空間c2とを包含する構成によれば、例えば圧力室Cを第1空間c1のみで形成する構成(以下「対比例」という)と比較して、圧力室Cの容量を増加させる(ひいてはインクの噴射量を増加させる)ことが可能である。また、第1空間c1に加えて第2空間c2も圧力室Cとして利用することで、所期の容量を圧力室Cに確保するための開口部242の面積が対比例と比較して縮小されるから、圧力室基板24の機械的な強度(剛性)を確保し易いという利点もある。
【0026】
図3から理解される通り、流路基板22の各連通流路56は圧力室CとノズルNとを相互に連通する。また、第1実施形態の絞り流路Aは、圧力室C毎(ノズルN毎)に形成されて圧力室Cの上流側に位置する。図3から理解される通り、絞り流路Aは、上流側の供給流路54および下流側の圧力室Cと比較して流路面積が小さい(すなわち絞られた)流路である。
【0027】
以上の説明から理解される通り、液体貯留室Rに貯留されたインクが複数の分配流路58に分岐したうえで供給流路54と絞り流路Aとを通過して各圧力室Cに並列に供給および充填され、振動板26の振動に応じて圧力室Cから連通流路56とノズルNとを通過して外部に噴射される。第1実施形態の絞り流路Aは、液体貯留室Rと圧力室Cとの間のインクに適切な流路抵抗を付与するための抵抗流路である。
【0028】
振動板26のうち圧力室基板24とは反対側の表面には、相異なるノズルN(圧力室C)に対応する複数の圧電素子28が形成される。各圧電素子28は、駆動信号の供給により個別に振動する。保護体32は、各圧電素子28を保護するとともに圧力室基板24や振動板26の機械的な強度を補強する要素であり、圧力室基板24(振動板26)の表面に例えば接着剤で固定される。保護体32のうち振動板26側の表面に形成された凹部に各圧電素子28が収容される。
【0029】
図7は、圧電素子28を拡大した平面図および断面図である。図7に例示される通り、振動板26の表面には、第1電極282と圧電体284と複数の第2電極286とが形成される。第1電極282は、複数の圧電素子28にわたり連続するように振動板26の表面に形成される。圧電体284は、第1電極282の表面に形成される。圧電体284の表面に圧電素子28毎(ノズルN毎)に個別に第2電極286が形成される。各第2電極286は、Y方向に沿って延在する電極である。第1電極282と第2電極286とが圧電体284を挟んで対向する部分が圧電素子28として機能する。なお、第1電極282を複数の圧電素子28にわたり連続させるとともに第2電極286を圧電素子28毎に個別に形成した構成も採用され得る。
【0030】
図3から理解される通り、振動板26のうち圧電素子28が形成された領域(以下「能動部」という)262は、圧電素子28に連動して振動することで圧力室C内の圧力を変動させる。振動板26の能動部262は、平面視で圧電素子28に重なる領域(圧電素子28から圧力が直接的に作用する領域)とも換言され得る。図3および図6から理解される通り、絞り流路Aと振動板26(能動部262)とは相互に対向する(すなわち、直接的に向かい合う)。具体的には、絞り流路Aを形成する第2部分64と振動板26の能動部262とが平面視で相互に重なる。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、振動板26の能動部262が、平面視で圧力室Cと絞り流路Aの少なくとも一部との双方にわたるようにY方向に延在する。
【0031】
図8は、図6におけるVIII-VIII線の断面図であり、図9は、図6におけるIX-IX線の断面図である。図9から理解される通り、圧力室C構成する第1空間c1と第2空間c2とに着目すると、X方向における第2空間c2の寸法(第1部分62の横幅)W2は、X方向における第1空間c1の寸法(開口部242の横幅)W1を下回る。同様に、図8から理解される通り、X方向における連通流路56の寸法W2は、X方向における第1空間c1の寸法W1を下回る。以上の構成では、第2空間c2および連通流路56の寸法W2を第1空間c1の寸法W1と同等に確保した構成と比較して、X方向に相互に隣合う各ノズルNの間で第2空間c2や連通流路56の間隔Qが拡大する。したがって、第1実施形態によれば、第2空間c2内または連通流路56内の圧力変動の影響が周囲のノズルNまで波及し難いという利点がある。
【0032】
以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、平面視で圧力室Cに対向する範囲だけでなく絞り流路Aに対向する範囲まで振動板26の能動部262が形成される。すなわち、流路面積が圧力室Cを下回るインク供給路には平面視で重ならないように圧電素子28を形成する特許文献1や特許文献2の技術と比較して振動板26の能動部262の面積が拡張される。したがって、特許文献1や特許文献2の技術と比較してインクの噴射量を増加させることが可能である。また、第1実施形態では、振動板26に沿うY方向に絞り流路Aが形成されるから、パンチ等の方法で基板に形成された貫通孔を絞り流路として利用する特許文献3の構成(すなわち、絞り流路AがZ方向に沿う構成)と比較して絞り流路Aを高精度に所期の形状に形成することが容易である。したがって、所期の流路特性(例えば流路抵抗)を高精度に実現できるという利点がある。第1実施形態では特に、絞り流路Aを構成する第2部分64がシリコンの原基板に対するエッチングで形成されるから、所期の形状の絞り流路Aを高精度に形成できるという前述の効果は格別に顕著である。また、流路抵抗等の流路特性はインクの噴射量等の噴射特性に影響するから、第1実施形態によれば、所期の噴射特性を高精度に実現することが可能である。
【0033】
ところで、振動板26に沿う絞り流路Aを形成する構成としては、例えば、図10に例示される通り、圧力室基板24の開口部242の内壁面からX方向に突出する突起部244を形成した構成も採用され得る。開口部242のうち突起部244で横幅が狭窄された箇所が絞り流路Aとして機能する。しかし、図10の構成において平面視で絞り流路Aに対向するように振動板26の能動部262を形成した場合、開口部242の内壁面から突起部244が突出する角部(図10の領域βのように形状が急峻に変化する箇所)に、能動部262の振動に起因した応力が集中的に作用して、振動板26や圧力室基板24の破損(クラック)が発生する原因となり得る。第1実施形態では、振動板26に間隔をあけて対向する(すなわち直接的には振動板26に接触しない)流路基板22に形成された第2部分64で絞り流路Aが形成されるから、振動板26や圧力室基板24の破損を防止できるという利点がある。もっとも、圧力室基板24に突起部244を形成した図10の構成も本発明の範囲には包含され得る。
【0034】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各態様において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0035】
図11は、第2実施形態における液体噴射ヘッド20の断面図であり、図12は、第2実施形態の液体噴射ヘッド20の各要素の関係を示す平面図(前掲の図6に対応する平面図)である。図11および図12に例示される通り、第2実施形態の圧力室基板24には、Y方向の負側(液体貯留室R側)に位置する側面まで到達するようにY方向に延在する開口部246がノズルN毎に形成される。図11から理解される通り、圧力室基板24の各開口部246は、液体貯留室Rに直接的に連通する。
【0036】
図11および図12に例示される通り、第2実施形態の流路基板22には開口部224がノズルN毎に形成される。開口部224は、圧力室基板24の開口部246とともに圧力室Cを形成する貫通孔であり、ノズル板42に形成された各ノズルNに連通する。圧力室基板24の任意の1個の開口部242の内側で流路基板22の表面と振動板26とに挟まれた空間が絞り流路Aとして機能する。以上の説明から理解される通り、第2実施形態の絞り流路Aは、第1実施形態と同様に、振動板26に沿うY方向にインクを流動させる。
【0037】
図11および図12に例示される通り、振動板26の能動部262(圧電素子28)は、平面視で圧力室C(開口部224)と絞り流路Aとの双方にわたるようにY方向に延在する。すなわち、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、振動板26に沿う絞り流路Aの一部が振動板26に対向する。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0038】
<第3実施形態>
図13は、第3実施形態に係る液体噴射ヘッド20の断面図である。第2実施形態(図11)では、複数のノズルNが形成されたノズル板42を流路基板22に設置した。第3実施形態の液体噴射ヘッド20では、図13に例示される通り、流路基板22に複数のノズルNが形成される。具体的には、図11に例示された開口部224に代えて、Z方向の正側に底部226が位置する開口部(有底孔)228が圧電素子28毎に流路基板22に形成され、各開口部228の底部226にノズルNが形成される。第1実施形態や第2実施形態のノズル板42は第3実施形態では省略される。
【0039】
第3実施形態においても第2実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、流路基板22に複数のノズルNが形成されるから、流路基板22とは別体のノズル板42が設置される第1実施形態や第2実施形態と比較して構成が簡素化される(例えば部品点数が削減される)という利点がある。なお、以上の説明では、流路基板22に複数のノズルNを形成したという観点で説明したが、第3実施形態の流路基板22は、開口部228がノズルN毎に形成されたノズル板とも観念され得る。
【0040】
<変形例>
以上に例示した形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0041】
(1)前述の各形態では、シリコンで形成された原基板に対するエッチングで第2部分64を流路基板22と一体に形成したが、流路基板22とは別個に形成された第2部分64を流路基板22に設置することも可能である。例えば、前述の各形態の例示と同様の形状の第2部分64を含む基板(流路基板22とは別体の基板)を流路基板22に積層した構成が採用され得る。ただし、第2部分64を流路基板22とは別個に形成した構成では、第2部分64が設置される位置の誤差に起因して絞り流路Aの流路特性(例えば流路抵抗)に誤差が発生する可能性がある。他方、原基板に対するエッチングで第2部分64を形成する前述の各形態によれば、第2部分64が高精度に所期の位置に形成される。したがって、所期の流路特性を高精度に実現するという観点からは、前述の各形態のように第2部分64を流路基板22と一体に形成した構成が好適である。
【0042】
(2)前述の各形態では、複数のノズルNを1列に配列した構成を例示したが、図14に例示される通り、前述の各形態と同様の構成を略線対称に配置することで2列のノズルNからインクを噴射する液体噴射ヘッド20を実現することも可能である。
【0043】
(3)前述の各形態では、媒体Mが搬送されるY方向に直交するX方向に複数の液体噴射ヘッド20を配列したラインヘッドを例示したが、シリアルヘッドにも本発明を適用することが可能である。例えば図15に例示される通り、前述の各形態に係る複数の液体噴射ヘッド20を搭載したキャリッジ18が制御装置12による制御のもとでX方向に往復しながら、各液体噴射ヘッド20が媒体Mにインクを噴射する。
【0044】
(4)以上の各形態で例示した印刷装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0045】
100……印刷装置(液体噴射装置)、M……媒体、102……カートリッジ、12……制御装置、14……搬送機構、16……ヘッドモジュール、18……キャリッジ、20……液体噴射ヘッド、22……流路基板、24……圧力室基板、242,246……開口部、244……突起部、26……振動板、262……能動部、28……圧電素子、282……第1電極、284……圧電体、286……第2電極、32……保護体、34……筐体、42……ノズル板、44……コンプライアンス部、52……開口部、54……供給流路、56……連通流路、58……分配流路、62……第1部分、64……第2部分、A……絞り流路、N……ノズル、C……圧力室、c1……第1空間、c2……第2空間、R……液体貯留室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15