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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231785(P2015-231785A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】車両の制動システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20151201BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20151201BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   B60T17/18
   B60T8/00 Z
   B60T17/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-119341(P2014-119341)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 貴史
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049BB02
3D049CC02
3D049HH10
3D049HH39
3D049HH42
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049HH52
3D049RR13
3D246BA02
3D246DA01
3D246EA02
3D246GA01
3D246HA03A
3D246HA05A
3D246HA48A
3D246JA12
3D246JB02
3D246JB04
3D246JB10
3D246JB12
3D246LA10Z
3D246MA08
3D246MA16
3D246MA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブレーキペダルストロークセンサの検出値について運転者のブレーキペダルの操作に起因しない急変動が生じても、ブレーキアシストによる制動力の増大を抑制できるようにする。
【解決手段】制動力制御部121は、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値に基づいてスレーブシリンダ16で発生する制動力を制御する。制動力加算部141は、ブレーキペダルストロークセンサ111で検出した単位時間当たりのブレーキペダルのストローク量(ストローク速度)が第1の値以上になった場合は、制動力制御部121で決定する制動力に所定量の制動力を加算するブレーキアシストを行う。制動力制限部151は、ストローク速度が第1の値以上となった場合に当該状態の継続時間が第1の時間以下であったときは、制動力加算部141の加算による制動力の増大に対して第2の時間の間継続して制限を設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルのストローク量を検出するブレーキペダルストロークセンサと、
電気的アクチュエータを作動させることにより、車両に制動力を発生させる電気的液圧発生部と、
前記ブレーキペダルストロークセンサの検出値に基づいて前記電気的液圧発生部で発生する制動力を制御する制動力制御部と、
単位時間当たりの前記ストローク量が第1の値以上になった場合は、前記制動力制御部で決定する制動力に所定量の制動力を加算するようにする制動力加算部と、
単位時間当たりの前記ストローク量が前記第1の値以上となった場合に当該状態が所定の条件を満たしたときに前記ブレーキペダルストロークセンサの検出値を実際に検出したものより制限した第2の値に基づいて、前記加算による制動力の増大の制限を行う制動力制限部と、
を備えることを特徴とする車両の制動システム。
【請求項2】
前記ストローク量が第3の値以上となる継続時間が所定の時間以上となることにより前記ブレーキペダルストロークセンサを故障と判定する故障判定部を備え、
前記制動力制限部は、制動力の増大の前記制限を前記所定の時間中であっても行うことを特徴とする請求項1に記載の車両の制動システム。
【請求項3】
前記制動力制限部は、前記所定の条件を満たさなくなったときは前記制限を漸次解除することを特徴とする請求項2に記載の車両の制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者のブレーキペダルの操作に応じて、モータでスレーブシリンダを駆動して液圧(油圧)を発生させ、これにより車両の摩擦制動力を発生させる、所謂バイ・ワイヤ・ブレーキが知られている。
【0003】
また、女性や老人など、体力的に比較的劣る運転者は、緊急ブレーキの際に大きな踏力でブレーキペダルを踏み込むことができない。そこで、緊急のブレーキであることを判断して制動力をアシストすることにより、緊急の際においても車両を充分に減速することができるように制御するブレーキアシスト機能が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ブレーキアシスト機能において、運転者が緊急状態におかれていることの判断は、ブレーキペダルストロークセンサで検出するブレーキペダルのストローク速度に基づいて行うことができる。また、バイ・ワイヤ・ブレーキにおけるブレーキアシストによる制動力のアシストは、スレーブシリンダで発生させる液圧に加算分を設けることで行うことができる。あるいは、各車輪に個別に液圧を付加して車両の挙動の安定化を図る車両挙動安定化装置(VSA(登録商標)装置など)によって液圧を発生することによっても、ブレーキアシストによる制動力のアシストを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−298256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブレーキペダルストロークセンサの検出に基づくブレーキペダルのストローク速度は、ブレーキペダルの踏み込みによらずに急変する場合がある。すなわち、ブレーキペダルストロークセンサの電源電圧の突発的な変動などの諸要因により、現実には存在しないブレーキペダルのストロークの急変動を検出してしまう場合がある。この場合には、当該ブレーキペダルのストロークの急変動に基づいたブレーキアシストの制御によって運転者の意図しない車両の減速が発生することになり、運転者に対して違和感を与えてしまう可能性がある。
【0007】
本発明の課題は、ブレーキペダルストロークセンサの検出値について運転者のブレーキペダルの操作に起因しない急変動が生じても、ブレーキアシストによる制動力の増大を抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、ブレーキペダルのストローク量を検出するブレーキペダルストロークセンサと、電気的アクチュエータを作動させることにより、車両に制動力を発生させる電気的液圧発生部と、前記ブレーキペダルストロークセンサの検出値に基づいて前記電気的液圧発生部で発生する制動力を制御する制動力制御部と、単位時間当たりの前記ストローク量が第1の値以上になった場合は、前記制動力制御部で決定する制動力に所定量の制動力を加算するようにする制動力加算部と、単位時間当たりの前記ストローク量が前記第1の値以上となった場合に当該状態が所定の条件を満たしたときに前記ブレーキペダルストロークセンサの検出値を実際に検出したものより制限した第2の値に基づいて、前記加算による制動力の増大の制限を行う制動力制限部と、を備えることを特徴とする車両の制動システムである。
本発明によれば、ブレーキペダルの単位時間当たりのストローク量(ストローク速度)が急増(第1の値以上)したにもかかわらず、当該ストローク量が大きな状態が所定の状態(一定の時間以上の継続など)にならなかった場合がある。この場合は、当該ストローク速度の急増は運転者の操作によるものではないと判断できる。そこで、このようなときには、制動力の増大の制限を行うのに用いるブレーキペダルストロークセンサの検出値を実際に検出したものより制限した第2の値を用いることで、制動力加算部による制動力の加算を抑制することができる。
【0009】
この場合に、前記ストローク量が前記第1の値以上となる継続時間が所定の時間以上となることにより前記ブレーキペダルストロークセンサを故障と判定する故障判定部を備え、前記制動力制限部は、制動力の増大の前記制限を前記所定の時間中であっても行うようにしてもよい。
本発明によれば、ブレーキペダルストロークセンサの故障判定中においても、制動力加算部による制動力の増大を抑制するので、当該故障判定の実行に関わらず、運転者のブレーキペダルの操作に起因しない制動力加算部による制動力の増大を防止することができる。
【0010】
さらに、前記制動力制限部は、前記所定の条件を満たさなくなったときは前記制限を漸次解除するようにしてもよい。
本発明によれば、制動力の急変を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブレーキペダルストロークセンサの検出値について運転者のブレーキペダルの操作に起因しない急変動が生じても、制動力加算部による制動力の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態である車両の制動システムの説明図である。
図2】本発明の一実施の形態である車両の制動システムのECUを中心とした車両の制動システムの制御系のブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態である車両の制動システムECUが行う制御の作用について説明するタイミングチャートである。
図4】本発明の一実施の形態である車両の制動システムECUが行う制御の作用について説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である車両の制動システム10の説明図である。車両の制動システム10は、車両における摩擦制動力を発生するための装置である。具体的には、車両の制動システム10は、バイ・ワイヤ・ブレーキ・システムなどから構成される。
【0014】
すなわち、車両の制動システム10は、ブレーキペダル12の操作により運転者が入力した踏力をブレーキ液圧に変換するマスタシリンダ34などを備えた入力装置14、マスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧に応じて、または、そのブレーキ液圧とは無関係にブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置(スレーブシリンダ装置)16、車両挙動安定化装置18、ディスクブレーキ機構30a〜30dなどを備える。モータシリンダ装置16は、電動モータ72の駆動力を受けてブレーキ液圧を発生させる第1及び第2スレーブピストン77a,77bを備える。
なお、配管チューブ22a〜22fには、各部のブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサPm,Pp,Phが設けられている。また、車両挙動安定化装置18は、ブレーキ液加圧用のポンプ73を備える。
【0015】
モータシリンダ装置16には、車両の右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aで液圧により摩擦制動力を発生させるホイールシリンダ32FRと、左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bに液圧により摩擦制動力を発生させるホイールシリンダ32RLと、右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cに液圧により摩擦制動力を発生させるホイールシリンダ32RRと、左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dに液圧により摩擦制動力を発生させるホイールシリンダ32FLと、が接続される。
【0016】
車両挙動安定化装置18は、ブレーキ液を供給するポンプ73と、ポンプ73を駆動するモータMと、図1に図示する各種バルブなどから構成され(公知技術のため、詳細は省略)、各ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに個別に液圧を供給することにより、車両の挙動の安定化を図るための装置である。例えば、ABS(Antilock Brake System)も車両挙動安定化装置18により動作する。
また、入力装置14の筺体には、車両の制動システム10のうち、主に入力装置14、モータシリンダ装置16などからなるバイ・ワイヤ・ブレーキ・システムを制御するECU(Electronic Control Unit)101が設けられている。
【0017】
次に、車両の制動システム10の基本動作について説明する。車両の制動システム10では、モータシリンダ装置16などのバイ・ワイヤ・ブレーキ・システムの制御を行うECU101の正常作動時において、運転者がブレーキペダル12を踏むと、所謂バイ・ワイヤ式のブレーキシステムがアクティブになる。具体的には、正常作動時の車両の制動システム10では、運転者がブレーキペダル12を踏むと、ブレーキペダルストロークセンサ111(図2)でブレーキペダル12の操作量、操作速度を検出し、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bが、マスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)との連通を遮断した状態で、モータシリンダ装置16が、モータ72の駆動により発生するブレーキ液圧を用いてディスクブレーキ機構30a〜30d(のホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)を作動させて、各車輪を制動する。
【0018】
また、正常作動時は、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bが遮断される一方、第3遮断弁62が開弁され、ブレーキ液は、マスタシリンダ34からストロークシミュレータ(ペダルフォースシミュレータ)64に流れ込むようになり、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bが遮断されていても、ブレーキ液が移動し、ブレーキペダル12の操作時にはストロークが生じ、ペダル反力が発生するようになる。なお、第3遮断弁62は、配管チューブ22a側の系統に設けられていてもよい。
【0019】
一方、車両の制動システム10では、モータシリンダ装置16などが不作動である異常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むと、既存の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。具体的には、異常時の車両の制動システム10では、運転者がブレーキペダル12を踏むと、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bをそれぞれ開弁状態とし、かつ、第3遮断弁62を閉弁状態として、マスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(のホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)に伝達して、ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)を作動させて各車輪を制動する。
その他の入力装置14、モータシリンダ装置16、車両挙動安定化装置18などの構成や動作は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
図2は、ECU101を中心とした車両の制動システム10の制御系のブロック図である。ECU101には、ブレーキペダル12を運転者が操作したときのブレーキペダル12のストローク量を検出するブレーキペダルストロークセンサ111が接続されている。
ECU101は、制動力制御部121、ストローク速度判定部131、制動力加算部141、制動力制限部151、故障判定部161などを備えている。
【0021】
制動力制御部121は、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値に基づいて、スレーブシリンダ装置16で発生させる制動力を制御する。スレーブシリンダ装置16は、電気的アクチュエータであるモータ72を作動させることにより、車両の制動力を液圧で発生させる電気的液圧発生部となるものである。制動力制御部121は、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値に基づいて、バイ・ワイヤ・ブレーキ制御を行う。すなわち、制動力制御部121は、ブレーキペダル12の操作により運転者が求めた制動力をスレーブシリンダ装置16により発生させるように制御する。
ストローク速度判定部131は、(検出値制限部152)、選択部156、および解除部155(いずれも後述)を介して入力するブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(ストローク量)について、その単位時間当たりの量(ストローク速度)を判定する。
【0022】
制動力加算部141は、ブレーキアシストの制御を行う。すなわち、制動力加算部141は、ストローク速度判定部131で判定したストローク速度を、予め定められた閾値となる「第1の値」と比較する。そして、ストローク速度が第1の値以上となったときは、制動力加算部141は、制動力制御部121で決定してスレーブシリンダ装置16で発生させる制動力に対して加算する所定量の制動力を、車両挙動安定化装置18(のモータMなどのアクチュエータ)を制御して発生させる。
【0023】
よって、制動力加算部141により車両挙動安定化装置18で制動力を発生させるときは、制動力加算部141によりスレーブシリンダ装置16で発生させる通常の制動力より、車両の制動力が大きくなる。つまり、ブレーキペダル12のストローク速度が第1の値以上となったとき、すなわち、緊急ブレーキの際には、スレーブシリンダ装置16で発生させる制動力に、車両挙動安定化装置18で発生させる制動力を加算する。よって、大きな踏力でブレーキペダル12を踏み込むことが少し大変な女性や老人などの体力的に比較的劣る運転者であっても、十分に(快適に)車両を減速することができ、ブレーキアシスト機能を実現することができる。
【0024】
制動力制限部151は、ブレーキペダル12のストローク速度が第1の値以上となった場合に、当該状態が本発明の「所定の条件」を満たすとき、例えば、当該状態の継続時間が「第1の時間」以下であったときは、制動力加算部141により車両挙動安定化装置18で発生させる前記の制動力の増大に対して制限を設ける。この制限は、「第2の時間」の間だけ継続する。
すなわち、制動力制限部151は、検出値制限部152、タイマ153、タイマ154、解除部155、選択部156などを備えている。
【0025】
検出値制限部152は、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(ストローク量)について、実際に検出したものに比べて、当該検出値の増大を制限した「第2の値」を生成して、これを選択部156に出力する。
検出値制限部152は、具体的には様々な手段で実現することができる。例えば、検出値制限部152にローパスフィルタを用いて、第2の値を生成することができる。すなわち、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値をローパスフィルタによって鈍らせて、その値の増大を制限した第2の値を出力することができる。
また、サンプルホールド回路を検出値制限部152に用い、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値が増大し始めたある時点の値をサンプルホールドし、その値を第2の値として出力するようにしてもよい。
さらに、レートリミッタ(Rate Limiter)を検出値制限部152に用い、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値の増大のときの変化率を制限することで、当該検出値の増大を制限した第2の値を出力するようにしてもよい。
【0026】
タイマ153は、第1の時間をカウントするタイマであって、制動力加算部141の判定でストローク速度が第1の値以上となったときに、カウントを開始する。制動力加算部141の判定でストローク速度が第1の値以上となってタイマ153がカウントを開始し、そのカウント時間が第1の時間となったときは、タイマ153は、検出値制限部152に前記の第2の値を出力させる。また、タイマ153は、制動力加算部141の判定でストローク速度が第1の値以上となったときは、タイマ154のカウントを開始する。タイマ154は、「第2の時間」のカウントを行う。タイマ154がカウントを開始し、そのカウント時間が第2の時間となったときは、タイマ154は、検出値制限部152による前記の第2の値の出力を停止させる。
【0027】
また、選択部156は、タイマ154からの信号により、第2の時間のカウント開始からカウントアップまでは検出値制限部152が出力する第2の値を解除部155に出力させ、それ以外の時間はブレーキペダルストロークセンサ111の検出値をそのまま解除部155に出力する。すなわち、選択部156は、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値、または、第2の値を、選択的に解除部155に出力する。
【0028】
解除部155は、レートリミッタなどにより構成される。そして、タイマ154が第2の時間のカウントを終了し、選択部156の出力が、第2の値から、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(そのままの値)への切り替わる際には、前者から後者への変化の変化率に制限をかける。これにより、前記の第2の時間が経過して、選択部156の出力が、第2の値から、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(そのままの値)へと切り替わる際には、前者の値から後者の値への急激な変動を和らげ、第2の値の出力を漸次解除するようにする。この解除部155で調整された選択部156からの出力は、ストローク速度判定部131に出力される(図1中、丸付き数字の1同志は接続されている)。
【0029】
故障判定部161は、ブレーキペダルストロークセンサ111のストローク量が「第3の値」以上となる継続時間が本発明の「所定の時間」となる「第3の時間」以上となるか否かを判定する。そして故障判定部161は、ストローク量が第3の値以上となる継続時間が第3の時間以上となることにより、前記ブレーキペダルストロークセンサ111を故障と判定する。故障判定部161がブレーキペダルストロークセンサ111は故障していると判定したときは、報知部171により運転者に報知する。報知部171は、車室内に設けられ、ランプの点灯、画像の表示、音声の出力などにより、当該故障の事実を運転者に知らせる。なお、ブレーキペダルストロークセンサ111の故障は、ブレーキペダルストロークセンサ111の機械的は故障や、ブレーキペダルストロークセンサ111の天絡、地絡などによる。
【0030】
次に、ECU101が行う制御の作用について説明する。
図3は、ECU101が行う制御の作用について説明するタイミングチャートである。図3(a)は、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)の時間変化を示すグラフである。ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)201が急増して、第3の値202(前記の「第3の値」)以上となっている。しかし、この例では、この値が第3の値202以上となる継続時間は、第3の時間より短い時間taであったため、故障判定部161は、ブレーキペダルストロークセンサ111が故障していないと判定することになる。
【0031】
図3(b)は、急変検知フラグなどの時間変化を示すグラフである。すなわち、制動力加算部141は、ブレーキペダル12のストローク速度(検出値201の傾き)が、通常の場合に運転者が踏み込める速度よりも大きな値などとして予め設定されている前記の「第1の値」以上となったか否かを判断する。なお、この第1の値は、通常の場合のブレーキアシストが実行されるブレーキペダル12のストローク速度よりも大きな値に設定されていてもよい。制動力加算部141は、ストローク速度が第1の値以上となったときは、急変検知フラグ212を立て、タイマ153に報知する。そして、タイマ153は、ストローク速度が第1の値以上となった報知を受けると、時間カウントを行い、その継続時間tbが「第1の時間」以下であれば、検出値制限部152により第2の値の出力を行わせる(図3(b)の例では、継続時間tbが第1の時間以下である)。また、この場合はタイマ153が第2の値の出力を開始したことをタイマ154に報知する。これにより、図3(c)に示すように、第2の値の出力を第2の時間の間継続する。
なお、前記の第3の値202は、ブレーキペダルストロークセンサ111が故障と判定できる所定の電圧値であればよい。
【0032】
図3(d)には、実線でブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)201が示されている。また、一点鎖線で検出値制限部152が出力する第2の値(符号203)を示している。検出値制限部152は、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)201の値の増大を制限した第2の値を生成している。また、第2の時間の間、第2の値を出力した後、第2の値からブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)201の値に戻すが、この戻す際の値(符号211)は、解除部155により第2の値からブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)201に漸次戻るようにしている。
【0033】
このように、ブレーキペダル12のストローク速度が前記の第1の値以上となっても、当該状態が極短時間である第1の時間以下しか継続しない場合がある。このように、ストローク速度が第1の値以上の状態が第1の時間以下である場合とは、ブレーキペダルストロークセンサ111の電源電圧の突発的な変動などの諸要因により、ブレーキペダル12が運転者により踏み込まれなくても、突発的に発生するものである。このような突発的なストローク速度の変動は極短時間(瞬時)しか発生しないのが一般的であり、ストローク速度が第1の値以上の状態の継続時間が第1の時間以下であることにより判断できる。
【0034】
一方、ストローク速度が第1の値以上の状態が第1の時間を超えたときは、ストローク速度が第1の値以上となったのは、運転者が緊急ブレーキを踏んだからだと判断できる。
よって、ストローク速度が第1の値以上の状態が第1の時間を超えて継続したときは、緊急ブレーキと判断でき、第1の値以上となった高いストローク速度がストローク速度判定部131から制動力加算部141に入力されるので、前記したブレーキアシストが実行される。
【0035】
そして、前記のとおりストローク速度が第1の値以上の状態が第1の時間以下の場合は、緊急ブレーキではないと判断できる。この場合は、ストローク速度が第1の値以上の状態が極短時間継続しただけであるため、ブレーキペダルストロークセンサ11の電源電圧の突発的な変動などの諸要因により、ブレーキペダル12が操作されることなくブレーキペダルストロークセンサ11の検出値が得られたものと考えられる。
【0036】
よって、この場合は、ブレーキペダルストロークセンサ11の検出値の増大を制限した第2の値を検出値制限部152で出力し、選択部156、解除部155を介して、ストローク速度判定部131に入力させる。よって、ストローク速度判定部131で判定するブレーキペダル12のストローク速度が低くなり、第1の値未満にできるため、制動力加算部141のブレーキアシストによる制動力の発生を防止することができる。
図3の例では、ブレーキペダルストロークセンサ11が故障していないと判断される例を示したが、次に、ブレーキペダルストロークセンサ11が故障していると判断される例について説明する。図4は、ECU101が行う制御の作用について説明するタイミングチャートである。
【0037】
図4(a)は、ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)の時間変化を示すグラフである。ブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)201が急増して、第3の値202以上となっている。しかし、この例では、この値が第3の値202以上となる継続時間は、第3の時間より長い時間tcであるため、故障判定部161は、ブレーキペダルストロークセンサ111が故障していると判定することになる。すなわち、第3の時間は、ブレーキペダルストロークセンサ111が故障していると判定できる適切な時間に設定される。よって、この場合は、故障判定部161は、図4(b)に示すように、センサ電圧が第3の値202以上となる状態が時間tc継続した時点で、ブレーキペダルストロークセンサ111が故障したことを確定する故障確定フラグをONにする。また、図4(c)〜(e)は、それぞれ前記の図3(b)〜(d)に対応する図面であるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
図3図4に示すように、第3の時間中におけるブレーキペダルストロークセンサ11の故障判定中においても、制動力加算部141による制動力の増大は抑制する。よって、当該故障判定の実行中には、運転者のブレーキペダル12の操作に起因しない制動力加算部141のブレーキアシストによる制動力の増大を防止することができる。
【0039】
また、図3図4に示すように、ストローク速度判定部131には、第2の時間の間だけ第2の値を出力した後、第2の値からブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)201の値に戻す。ここで、第2の時間は、図3(a)に示すように、ブレーキペダルストロークセンサ111でブレーキペダル12を操作することなく、前記のとおり瞬間的にセンサ電圧201が高くなる時間より長いと想定される時間に設定する。この戻す際の値(符号211)は、解除部155により第2の値からブレーキペダルストロークセンサ111の検出値(センサ電圧)201に漸次戻すようにしている。よって、制動力加算部141による制動力の急変を防止することができ、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
【0040】
なお、図2の例では、ブレーキアシストによる制動力を車両挙動安定化装置18で出力する例で説明した。本発明は、これに限定するものではなく、ブレーキアシストによる制動力もスレーブシリンダ装置16で出力するようにしてもよい。すなわち、制動力制御部121によりスレーブシリンダ装置16で出力する制動力に加算するように、制動力加算部141によりスレーブシリンダ装置16で発生する制動力を増大させて、ブレーキアシストを実現するようにしてもよい。
【0041】
また、図2の例では、ブレーキペダルストロークセンサ11の検出値に代えて、当該検出値の増大を制限した第2の値をストローク速度判定部131に入力することで、ブレーキアシストの発動を制限するようにしている。しかし、これは本発明の一構成例にすぎない。制動力制限部151は、ストローク速度が第1の値以上となった場合に当該状態の継続時間が第1の時間以下であったときは、制動力加算部141の加算による制動力の増大に対して第2の時間の間継続して制限を設けることができれば、さまざまな手段で実現することができる。
【0042】
また、前記の例では、ストローク速度判定部131で判定するストローク速度(検出値201の傾き)が第1の値以上となる継続時間が第1の時間以上となったときに、ブレーキペダルストロークセンサ11の検出値に代えて、当該検出値の増大を制限した第2の値をストローク速度判定部131に入力するようにしている。しかし、これに代えて、ブレーキペダルストロークセンサ111で検出するブレーキペダル12のストローク量の変化幅が所定の閾値以上となったときに、ブレーキペダルストロークセンサ11の検出値に代えて、当該検出値の増大を制限した第2の値をストローク速度判定部131に入力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 車両の制動システム
12 スレーブシリンダ装置(電気的液圧発生部)
18 車両挙動安定化装置(電気的液圧発生部)
72 モータ(電気的アクチュエータ)
111 ブレーキペダルストロークセンサ
121 制動力制御部
141 制動力加算部
151 制動力制限部
161 故障判定部
202 第3の値
203 第2の値
M モータ(電気的アクチュエータ)
図1
図2
図3
図4