特開2015-231810(P2015-231810A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧
<>
  • 特開2015231810-ゴムクローラ 図000003
  • 特開2015231810-ゴムクローラ 図000004
  • 特開2015231810-ゴムクローラ 図000005
  • 特開2015231810-ゴムクローラ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231810(P2015-231810A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ゴムクローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20151201BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20151201BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   B62D55/253 D
   B62D55/253 A
   B62D55/253 E
   C09J175/04
   C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-119813(P2014-119813)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF091
4J040EF262
4J040GA24
4J040JA09
4J040JB02
4J040JB07
4J040KA11
4J040KA16
4J040MA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゴムクローラには、クローラの本体、ラグおよび突起(ガイド)をそれぞれ、予め加硫成形しておき、接着用ゴムシートを用いて一体に加硫接着するものが知られているが、ガイド突起部に対して幅方向に荷重が加わることで、ガイド突起部の根元に歪が発生し、剥離等の原因となる。クローラ本体に突起部が別体として接着された、耐久性に優れたゴムクローラを提供する。
【解決手段】本発明のゴムクローラ10は、内周面1bおよび外周面1aの少なくともいずれか一方に隆起部1cを有する、加硫済みゴムからなるクローラ本体1と、前記クローラ本体1の前記隆起部1cに接着手段Mを介して配置される、加硫済みゴムからなる突起部3とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面および外周面の少なくともいずれか一方に隆起部を有する、加硫済みゴムからなるクローラ本体と、前記クローラ本体の前記隆起部に接着手段を介して配置される、加硫済みゴムからなる突起部とを有することを特徴とする、ゴムクローラ。
【請求項2】
請求項1において、前記隆起部は、連続的にゴムクローラの周方向に延在するものである、ゴムクローラ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記隆起部の高さが前記突起部の高さよりも小さい、ゴムクローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記接着手段は、ゴム中に存在する炭素−炭素結合の少なくとも一つの炭素原子と結合し得る組成物を含むものである、ゴムクローラ。
【請求項5】
請求項4において、前記組成物と結合し得る前記炭素−炭素結合は、炭素−炭素単結合および炭素−炭素二重結合から選択される1種以上の結合である、ゴムクローラ。
【請求項6】
請求項4または5において、前記組成物は、少なくともポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)およびラジカル発生剤(C)を配合してなる組成物である、ゴムクローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムクローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムクローラには、クローラの基体(本体)となるベルト状ゴム弾性体、ラグおよび突起(ガイド)をそれぞれ、予め加硫成形しておき、接着用ゴムシートを用いて一体に加硫接着するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−129354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図4(a)の模式断面図で示すように、例えば、クローラ本体21の内周面21bと装軌車両のスプロケット等と噛み合うガイド突起部23との間に、接着用ゴムシート等の接着手段Mを挟んで加硫接着する場合、以下の点において改善の余地がある。たとえば、装軌車両の旋回時などでは、図4(b)の模式断面図の矢印に示すように、装軌車両の転輪(図示省略)からガイド突起部23に対して幅方向に荷重Fが加わることで、図4(b)の領域Rに示す部分には、ガイド突起部23の根元に歪が発生する。このため、図4(a),(b)に示すように、接着手段Mがクローラ本体21の内周面21bと同じ高さに配置されていると、接着手段Mに歪が発生し易く、接着手段Mの剥離等の原因となる。
【0005】
本発明の目的は、クローラ本体に突起部が別体として接着された、耐久性に優れたゴムクローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、ゴムクローラは、内周面および外周面の少なくともいずれか一方に隆起部を有する、加硫済みゴムからなるクローラ本体と、前記クローラ本体の前記隆起部に接着手段を介して配置される、加硫済みゴムからなる突起部とを有することを特徴とする。
本発明に係る、ゴムクローラによれば、クローラ本体に突起部が別体として接着された、耐久性に優れたゴムクローラとすることができる。
【0007】
上記ゴムクローラにおいて、前記隆起部は、連続的にゴムクローラの周方向に延在するものであることが好ましい。
この場合、前記クローラ本体の製造が容易である。
【0008】
上記ゴムクローラでは、前記隆起部の高さが前記突起部の高さよりも小さいことが好ましい。
この場合、前記クローラ本体の製造に際して、加硫成形時間の長時間化や例えば、前記クローラ本体の内部に設けられたスチールコードの配列の乱れ等を抑えることができる。
【0009】
上記ゴムクローラにおいて、前記接着手段は、ゴム中に存在する炭素−炭素結合の少なくとも一つの炭素原子と結合し得る組成物を含むものとすることができる。
この場合、前記突起部をクローラ本体に強力に接着することができる。
【0010】
上記ゴムクローラにおいて、前記組成物と結合し得る前記炭素−炭素結合は、炭素−炭素単結合および炭素−炭素二重結合から選択される1種以上の結合とすることができる。
【0011】
上記ゴムクローラにおいて、前記組成物は、少なくともポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)およびラジカル発生剤(C)を配合してなる組成物であることが好ましい。
この場合、前記突起部をクローラ本体に、より強力に接着することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クローラ本体に突起部が別体として接着された、耐久性に優れたゴムクローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の一実施形態である、ゴムクローラを、模式的に示す側面図であり、(b)は、(a)のゴムクローラを製造する際に用いられる、クローラ本体、ラグ突起部およびガイド突起部の各部品を模式的に示す側面図である。
図2】(a)は、図1のゴムクローラを、幅方向に切断した状態で模式的に示す断面図であり、(b)は、(a)のゴムクローラに幅方向から荷重が加わった状態を模式に示す断面図である。
図3】本発明の他の実施形態である、ゴムクローラを、模式的に示す側面図である。
図4】(a)は、従来のゴムクローラを、幅方向に切断した状態で模式的に示す断面図であり、(b)は、(a)のゴムクローラに幅方向から荷重が加わった状態を模式に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る、ゴムクローラの一実施形態および、当該ゴムクローラの製造方法の様々な例を詳細に説明する。なお、以下の説明において、「幅方向X」とは、無端状のゴムクローラ1の幅方向を意味し、「周方向Y」とは、ゴムクローラ1の周方向(延在方向)を意味する。さらに、「径方向Z」とは、幅方向Xおよび周方向Yに垂直な方向を意味する。
【0015】
<ゴムクローラ>
図1(a)において、符号10は、本発明の一実施形態である、ゴムクローラである。ゴムクローラ10は、加硫済みゴムからなる無端状のクローラ本体1に、この実施形態では、加硫済みゴムからなる複数のラグ突起部2および複数のガイド突起部3が接着手段Mによって接着されている。クローラ本体1は、予め未加硫ゴムを用いて加硫成形された加硫成形品である。ラグ突起部2およびガイド突起部3も、クローラ本体1と同様、予め未加硫ゴムを用いて加硫成形された加硫成形品である。
【0016】
さらに具体的には、図1(b)において、クローラ本体1は、完成品としてのゴムクローラ10の本体である。クローラ本体1は、帯状の部材の両端が連結された無端状の部材である。本実施形態では、クローラ本体1の内部には、周方向Yに延在する複数のスチールコードSTが、幅方向Xに一定の間隔で配置されたスチールコード層(図2(a)、(b)参照)が配置されている。また、本実施形態では、クローラ本体1の外周面1aは、図1(b)や図2(a)に示すように、ほぼ凹凸のない平滑な平面で構成されている。本実施形態では、クローラ本体1の外周面1aには、ラグ突起部2が配置されている。ラグ突起部2は、接着手段M(以下、「接着手段M2」ともいう)によってクローラ本体1の外周面1aに接着されている。本実施形態では、ラグ突起部2は、図2(a)に示すように、幅方向Xの両側に一定の間隔を置いて配置されている。また、ラグ突起部2は、図1(a)に示すように、周方向Yに一定の間隔を置いて配置されている。本実施形態では、ラグ突起部2はそれぞれ、路面等に接地可能なラグとして機能する。
【0017】
また、本実施形態では、図1(b)および図2(a)に示すように、クローラ本体1の内周面1bも、ほぼ凹凸のない平滑な平面で構成されている。本実施形態では、クローラ本体1の内周面1bは、装軌車両の転輪(図示省略)の通過面(転輪通過面)となる。また、クローラ本体1の内周面1bには、隆起部1cが配置されている。本実施形態では、図2(a)に示すように、隆起部1cは、クローラ本体1の幅方向Xの中心位置に配置されている。隆起部1cは、クローラ本体1と一体に形成されており、クローラ本体1の内周面1bから径方向Zの内周側に向かって突出する。また、本実施形態では、図1(b)に示すように、隆起部1cは、連続的に周方向Yに延在し、クローラ本体1を周方向Yに周回する環状隆起部としてなる。なお、本実施形態では、隆起部1cを環状隆起部として構成したが、隆起部1cは、クローラ本体1の内周面1bに、周方向Yに一定の間隔を置いて配置することもできる。
【0018】
隆起部1cには、図1(a)に示すように、ガイド突起部(突起部)3が周方向Yに一定の間隔を置いて配置されている。ガイド突起部3は、それぞれ、接着手段M(以下、「接着手段M3」ともいう)によってクローラ本体1の隆起部1cに接着されている。これにより、図2(a)に示すように、接着手段M3は、クローラ本体1の内周面1bよりも高さh1だけ径方向Zの内周側に位置する。本実施形態では、ガイド突起部3は、クローラ本体1の隆起部1cとともに、装軌車両のスプロケット等と噛み合うガイドを構成する。ガイドは、それぞれ、装軌車両のスプロケット(図示省略)と噛み合って、スプロケットの回転力をクローラ本体1に伝達する。
【0019】
本実施形態のゴムクローラ10によれば、接着手段M3がクローラ本体1の内周面1bと異なる位置に配置されることにより、接着手段M3に生じる歪、特に、本実施形態では、図2(b)に示すように、装軌車両の転輪(図示省略)から幅方向Xに加わる荷重Fによる、応力集中が最も生じ易いガイドの根元(本実施形態では、隆起部1cの根元、対応する従来技術では、図4(b)の領域R)と接着手段M3で構成された接着層とが一致しないため、当該接着層に生じる、荷重Fに起因する歪を軽減することができる。
【0020】
従って、本実施形態によれば、クローラ本体1にラグ突起部2およびガイド突起部3の少なくとも一方が別体として接着された、耐久性に優れたゴムクローラ10を提供することができる。
【0021】
また、本実施形態のように、クローラ本体1に複数のスチールコードSTを内蔵する場合、クローラ本体1の内周面1bには、幅方向Xにわずかなウェーブ(波面)が発生することがある。こうしたウェーブは、せん断歪を発生させる原因となるが、本実施形態では、接着手段M3がクローラ本体1の内周面1bよりも内周側に配置されることにより、こうしたせん断歪も抑制することができる。また、せん断歪が抑制されることで、スチールコードSTの耐久性も向上する。
【0022】
また、本実施形態では、隆起部1cは、図1(a)および(b)に示すように、連続的に周方向Yに延在することで、環状隆起部を構成する。この場合、隆起部1cをガイド突起部3に合わせて周方向Yに間隔を置いて設けた場合に比べて、金型による成形時のゴム流れが良好であるため、クローラ本体1の製造が容易となる。また、この場合、ガイド突起部3を隆起部1cに取り付けることが容易であるため、ゴムクローラの製造も容易となる。
【0023】
ゴムクローラをクローラ本体と突起部との別体で製造する場合、クローラ本体の凹凸部分が減少することから、金型に形成された凹凸形状に起因する、加硫成形時間の長時間化や、ゴム流れの悪化に伴うスチールコードSTの配列の乱れ等が抑制される。しかしながら、本実施形態のように、クローラ本体1に隆起部1cを設けることは、結果的に、加硫成形時間の長時間化や、スチールコードSTの配列の乱れ等を生じさせる懸念がある。これに対し、本実施形態では、図1(a)に示すように、クローラ本体1の隆起部1cの高さ(径方向長さ)h1は、ガイド突起部3の高さ(径方向長さ)h3よりも小さく(短く)設定されている。この場合、クローラ本体1の製造に際して、加硫成形時間の長時間化やスチールコードSTの配列の乱れ等も抑えることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、クローラ本体1の内周面1b側にのみ、クローラ本体1の隆起部1cとガイド突起部3との構成を採用したが、クローラ本体1の外周面1a側にも、クローラ本体1のラグ側に隆起部を設けてラグ突起部3とともに、ガイド側と同様の構成を採用することができる。
【0025】
ところで、接着手段Mは、この実施形態では、加硫ゴム中に存在する炭素−炭素結合の少なくとも一つの炭素原子と結合し得る組成物を含んでいる。接着手段Mには、例えば、接着剤、接着シートが含まれる。本実施形態では、接着手段M2の厚さd2は、0mmを含まない0.5mm以下の厚さである(0<d2≦0.5mm)。厚さd2の好適な範囲としては、10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmの範囲が挙げられる。同様に、本実施形態では、接着手段M3の厚さd3は、0mmを含まない0.5mm以下の厚さ(0<d3≦0.5mm)である。厚さd3の好適な範囲としては、10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmの範囲が挙げられる。
【0026】
以下、接着手段Mに含まれる組成物、並びに、接着手段Mの一例としての、接着剤および接着シートについて説明する。
【0027】
[組成物]
本発明のゴムクローラに用いられる前記組成物の一例は、ポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、及びラジカル発生剤(C)を配合してなり、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)が例えば0.2以上かつ0.78以下である、組成物である。
【0028】
前記組成物によると、未加硫ゴムに限らず、加硫ゴムをも強力に接着することができる。その理由は、次のとおりであると推測される。
ポリチオール化合物(A)の一部とイソシアネート基含有化合物(B)とがウレタン化反応を起こすことにより、前記組成物が強固に硬化すると考えられる。また、ポリチオール化合物(A)の他の一部が、ラジカル発生剤(C)と反応してチイルラジカルが生じ、このチイルラジカルが、ゴム中に存在する炭素−炭素二重結合と反応すると考えられる。このようなチオール・エン反応により、前記組成物がゴムに化学的に結合することにより、前記組成物がゴムに強力に接着すると考えられる。特に、未加硫ゴムのみならず加硫ゴムにも炭素−炭素二重結合が存在するため、前記組成物によると、ゴム特に加硫ゴムを強力に接着することができると考えられる。
また、ゴム中に存在する炭素−炭素結合主鎖からの水素引き抜き反応により、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−炭素結合の炭素原子とが化学的に結合すると考えられる。したがって、必ずしもゴム中に炭素−炭素二重結合が存在しなくても良い。
なお、本明細書において、ポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、ラジカル発生剤(C)、ウレタン化触媒(D)及び表面調整剤(E)を、それぞれ、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)ということがある。
【0029】
<ポリチオール化合物(A)>
前記組成物において、ポリチオール化合物(A)とは、1分子中にチオール基を2つ以上有する化合物のことをいう。
ポリチオール化合物(A)には特に制限はないが、接着性を向上させる観点から、1分子中にチオール基を2〜6個有するものが好ましい。
また、ポリチオール化合物(A)には、1級、2級及び3級のものが含まれるが、接着性を向上させる観点から、1級がより好ましい。
ポリチオール化合物(A)の分子量は、接着性を向上させる観点から、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下であり、更に好ましくは1000以下であり、より更に好ましくは900以下であり、より更に好ましくは800以下である。なお、ポリチオール化合物(A)がポリマーの場合、分子量とは、スチレン換算の数平均分子量のことをいう。
【0030】
ポリチオール化合物(A)としては、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオール及びヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族ポリチオールが挙げられ、接着性を向上させる観点から、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールが好ましい。
ここで、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールとは、1分子中にチオール基を2つ以上有する、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪族化合物のことをいう。また、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族ポリチオールとは、1分子中にチオール基を2つ以上有する、ヘテロ原子を含んでもよい芳香族化合物のことをいう。
ヘテロ原子は、接着力の向上の観点から、好ましくは酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン原子、ケイ素から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは酸素、窒素、硫黄、リン及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種であり、更に好ましくは酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1種である。
【0031】
ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールとしては、例えば、炭素数2〜20のアルカンジチオール等のようにチオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール、アルコールのハロヒドリン付加物のハロゲン原子をチオール基で置換してなるポリチオール、ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとチオグリコール酸とのエステル化により得られるチオグリコール酸エステル化物、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとメルカプト脂肪酸とのエステル化により得られるメルカプト脂肪酸エステル化物、イソシアヌレート化合物とチオールとを反応させてなるチオールイソシアヌレート化合物、ポリスルフィド基を含有するチオール、チオール基で変性されたシリコーン、チオール基で変性されたシルセスキオキサン等が挙げられる。
なお、上記の分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとしては、炭素数2〜20のアルカンジオール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0032】
これらの中で、接着性の向上の観点から、チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール、アルコールのハロヒドリン付加物のハロゲン原子をチオール基で置換してなるポリチオール、ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール、チオグリコール酸エステル化物、メルカプト脂肪酸エステル化物、及びチオールイソシアヌレート化合物がより好ましく、メルカプト脂肪酸エステル化物及びチオールイソシアヌレート化合物が更に好ましく、メルカプト脂肪酸エステル化物がより更に好ましい。同様の観点から、ポリスルフィド基やシロキサン結合を含有しないチオールがより好ましい。
【0033】
(チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール)
チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオールの例としては、炭素数2〜20のアルカンジチオールがある。
前記炭素数2〜20のアルカンジチオールとしては、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール等が挙げられる。
【0034】
(チオグリコール酸エステル化物)
チオグリコール酸エステル化物としては、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、1,6−ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等が挙げられる。
【0035】
(メルカプト脂肪酸エステル化物)
メルカプト脂肪酸エステル化物としては、接着性の向上の観点から、1級チオール基を有するメルカプト脂肪酸エステル化物が好ましく、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールの、β−メルカプトプロピオン酸エステル化物がより好ましい。また、1級チオール基を有するメルカプト脂肪酸エステル化物は、接着性の向上の観点から、1分子中におけるチオール基の数が4〜6個であることが好ましく、4個又は5個であることが好ましく、4個であることがより好ましい。
【0036】
上記の1級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、好ましくはテトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)(EGMP−4)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)が挙げられる。これらの中で、PEMP及びDPMPが好ましく、PEMPがより好ましい。
【0037】
なお、2級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールと、β−メルカプトブタン酸とのエステル化物が挙げられ、具体的には、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。
【0038】
(チオールイソシアヌレート化合物)
イソシアヌレート化合物とチオールとを反応させてなるチオールイソシアヌレート化合物としては、接着力の向上の観点から、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物が好ましい。また、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、接着性の向上の観点から、1分子中におけるチオール基の数が2〜4個であることが好ましく、3個であることがより好ましい。
上記の1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)が好ましい。
【0039】
(チオール基で変性されたシリコーン)
チオール基で変性されたシリコーンとしては、商品名KF-2001、KF-2004、X-22-167B(信越化学工業)、SMS042、SMS022(Gelest社)、PS849、PS850(UCT社)等が挙げられる。
【0040】
(芳香族ポリチオール)
芳香族ポリチオールとしては、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等が挙げられる。
【0041】
<イソシアネート基含有化合物(B)>
イソシアネート基含有化合物(B)としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらの変性体等が挙げられる。
【0042】
芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、メチルシクロへキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロへキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロへキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
配合されるポリチオール化合物(A)が、メルカプト脂肪酸エステル化物および/またはチオールイソシアヌレート化合物である場合、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)は、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロへキサン(水素化XDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の1種又は2種以上が好ましい。また、これらの中では、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロへキサン(水素化XDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)の1種又は2種以上がより好ましい。
【0044】
また、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートの変性体としては、トリメチロールプロパンとイソシアネートとの反応により得られるTMP(トリメチロールプロパン)アダクト型変性体、イソシアネートの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、ウレアとイソシアネートとの反応により得られるビューレット型変性体、ウレタンとイソシアネートとの反応により得られるアロファネート型変性体、ポリオールとイソシアネートとの反応で得られるプレポリマー体等が挙げられ、適宜、使用することができる。
【0045】
なお、TMPアダクト型変性体、イソシアヌレート型変性体、ビューレット型変性体、アロファネート型変性体としては、接着性の向上の観点から、次の変性体が好ましい。
すなわち、TMPアダクト型変性体としては、TMPとTDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとXDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPと水素化XDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとIPDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとHDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、及びTMPとMDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体が好ましい。
また、イソシアヌレート型変性体としては、HDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、IPDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、TDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、及び水素化XDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、が好ましい。
また、ビューレット型変性体としては、ウレアとHDIとの反応により得られるビューレット型変性体、が好ましい。
また、アロファネート型変性体としては、ウレタンとIPDIとの反応により得られるアロファネート型変性体が好ましい。
【0046】
上記TMPアダクト型変性体、イソシアヌレート型変性体、ビューレット型変性体及びアロファネート型変性体の少なくとも1種と組み合せて使用されるポリチオール化合物(A)としては、好ましくは1級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物及び1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物の1種又は2種である。
ここで、1級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、好ましくはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)の少なくとも1種である。また、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、好ましくは1分子中におけるチオール基の数が3個である1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物であり、より好ましくはトリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)である。
【0047】
<ラジカル発生剤(C)>
ラジカル発生剤(C)としては、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤の少なくとも1種を用いることができる。これらの中で、接着力の向上の観点及び透明ではない(光を通さない)ゴムを接着できるという観点から、熱ラジカル発生剤が好ましく、過酸化物からなる熱ラジカル発生剤がより好ましく、有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤が更に好ましい。
ラジカル発生剤(C)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0048】
有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサノン、ジ−t―ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ(t-ブチル)パーオキサイド、過酸化ベンゾイル1,1’−ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ベンゾイル1,1’−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、t−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサノン、ジ−t―ブチルパーオキサイド、及びt−ブチルクミルパーオキサイドの少なくとも1種である。有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0049】
無機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤としては、過酸化水素と鉄(II)塩との組み合わせ、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、等の酸化剤と還元剤の組み合わせからなるレドックス発生剤が挙げられる。無機化酸化物からなる熱ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0050】
光ラジカル発生剤としては、公知のものを広く用いることができ、特に制限されるものではない。
例えば分子内開裂型の光ラジカル発生剤が挙げられ、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル系光ラジカル発生剤;2,2−ジエトキシアセトフェノン、4'−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系光ラジカル発生剤;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4'−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4'−ドデシル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン系光ラジカル発生剤;ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン系光ラジカル発生剤;アシルフォスフィンオキサイド系光ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0051】
また、その他水素引き抜き型の光ラジカル発生剤として、ベンゾフェノン/アミン系光ラジカル発生剤、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン系光ラジカル発生剤、チオキサントン/アミン系光ラジカル発生剤等を挙げることができる。また未反応光ラジカル発生剤のマイグレーションを避けるため非抽出型光ラジカル発生剤を用いることができる。例えばアセトフェノン系ラジカル発生剤を高分子化したもの、ベンゾフェノンにアクリル基の二重結合を付加したものがある。
これらの光ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0052】
<任意成分>
本発明のゴムクローラに用いられる前記組成物は、更に任意成分が配合されてもよい。任意成分としては、ウレタン化触媒、表面調整剤、溶剤、バインダー、フィラー、顔料分散剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、乾燥防止剤、浸透剤、pH調整剤、金属封鎖剤、防菌防かび剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、レベリング剤等が挙げられる。
【0053】
(ウレタン化触媒(D))
ウレタン化触媒(D)としては、任意のウレタン化触媒を用いることができる。該ウレタン化触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;塩化第一スズ等の無機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン、2,2’−ジモルホリノエチルエーテル、N-メチルモルフォリン等のアミン類;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;ナトリウムアルコラート、水酸化リチウム、アルミニウムアルコラート、水酸化ナトリウム等の塩基類;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマス化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは上記アミン類であり、より好ましくはトリエチレンジアミン(TEDA)である。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(表面調整剤(E))
表面調整剤(E)としては、任意の表面調整剤を使用することができる。該表面調整剤としては、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系などが挙げられる。これらの中でも、相溶性と表面張力低下能の観点からシリコーン系が好ましい。
【0055】
(溶剤)
溶剤としては、他の配合成分と反応しないものであれば特に制限はなく、芳香族溶媒や脂肪族溶媒が挙げられる。
芳香族溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族溶媒としては、ヘキサン等が挙げられる。
【0056】
<各成分の配合量>
本発明のゴムクローラに用いられ得る前記組成物に配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)は、0.20以上0.78以下であることが好ましい。当該比(イソシアネート基/チオール基)が0.20未満であると、前記組成物が十分に強固に硬化せず、接着強度が小さくなる。また、当該比(イソシアネート基/チオール基)が0.78よりも大きいと、チオール基が少ないために、チオール基とゴム部材の炭素−炭素二重結合との間でチオール・エン反応が十分に行われず、前記組成物をゴム部材に強固に接着させることができなくなることがあり、接着強度が小さくなる虞がある。同様の観点から、当該比(イソシアネート基/チオール基)は、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.7以下であり、さらに好ましくは0.4〜0.7である。
ここで、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数は、配合されるポリチオール化合物(A)のモル数に、ポリチオール化合物(A)の1分子が有するチオール基数を乗じることにより算出することができる。
また、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数は、JIS K1603−1 B法により測定することができる。
更に、上記モル数の比(イソシアネート基/チオール基)は、上記のようにして得られる、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数を、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数で除することにより求めることができる。
【0057】
配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるラジカル発生剤(C)の合計モル数の比(ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、0.025以上であることが好ましい。これにより、接着性が向上する。この観点から、当該比(ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.035以上であり、より更に好ましくは0.04以上である。また、接着性の向上の観点から、当該比(ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.45以下であり、更に好ましくは0.4以下である。
【0058】
本発明のゴムクローラに用いられる任意成分として、炭素−炭素二重結合を含む化合物を配合してもよい。ただし、この炭素−炭素二重結合を含む化合物の配合量が多くなると、ポリチオール化合物(A)がこの炭素−炭素二重結合を含む化合物と反応してしまう。これにより、ポリチオール化合物(A)とゴム中の炭素−炭素二重結合との間のチオール・エン反応が生じ難くなり、ゴムに対する組成物の接着力が低下するおそれがある。または、これにより、ゴムの炭素−炭素結合主鎖からの水素引き抜き反応により、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−炭素結合の炭素原子とが化学的に結合する反応が生じ難くなり、ゴムに対する組成物の接着力が低下するおそれがある。したがって、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される炭素−炭素二重結合を含む化合物に含まれる炭素−炭素二重結合の合計モル数の比(炭素−炭素二重結合/チオール基)が、0.4未満であることが好ましく、0.1未満であることがより好ましく、0.08以下であることが更に好ましく、0.05以下であることがより更に好ましく、0.01以下であることが特に好ましい。
ここで、配合される炭素−炭素二重結合を含む化合物に含まれる炭素−炭素二重結合の合計モル数は、配合される当該化合物のモル数に、当該化合物の1分子が有する炭素−炭素二重結合の数を乗じることにより求めることができる。
また、上記モル数の比(炭素−炭素二重結合/チオール基)は、上記のようにして得られる、配合される炭素−炭素二重結合を含む化合物に含まれる炭素−炭素二重結合の合計モル数を、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数で除することにより求めることができる。
【0059】
上記のとおり、本発明のゴムクローラに用いられ得る前記組成物は、必須成分である成分(A)〜(C)の他に、任意成分を含有してもよい。しかし、ゴム特に加硫ゴムを強力に接着するという観点から、前記組成物中における成分(A)〜(C)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上である。
同様の観点から、成分(A)〜(E)の合計含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
【0060】
[接着剤]
本発明のゴムクローラの製造に使用可能な、接着手段Mの一例としての接着剤は、上記の組成物を含む。この接着剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内において、上記の組成物以外の成分を含んでもよい。しかし、本発明の効果を良好に発現させる観点から、接着剤中における組成物の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0061】
[接着シート]
本発明のゴムクローラの製造に使用可能な、接着手段Mの他の一例としての接着シートは、前述した組成物を用いてなるものである。
この接着シートは、剥離紙や剥離フィルム等の剥離シート上に前記組成物を塗布し、シート形状を保持することにより、好適に製造することができる。この保持により、前記組成物中のチオール基とイソシアネート基の少なくとも一部がチオールウレタン反応することにより、シート形状になるものと考えられる。なお、塗布後、常温で放置することにより、接着シートを好適に製造することができる。また、塗布後、ラジカル発生剤によるラジカル反応が開始しない程度に加熱することにより、接着シートを製造してもよい。
塗布後の放置又は加熱温度は、好ましくは−30〜60°Cであり、より好ましくは−20〜40°C、更に好ましくは0〜40°Cである。
塗布後、放置又は加熱する前の状態における、剥離シート及びその上の前記組成物の合計厚さは、接着する対象や要求される接着強度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜1000μmであり、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは30〜200μmである。
保持時間は、ウレタン化触媒の量により調整することができる。シート化形成の作業性及び接着作業時にシート形状を維持し得る程度に保形させる観点から、好ましくは1分以上であり、より好ましくは3分以上であり、更に好ましくは30分以上であり、より更に好ましくは60分以上である。また、保持温度は、通常室温でシート化可能であるが、材料中のラジカル発生剤が開裂しない程度に加温することも可能である。以上の観点から好ましくは0〜60°Cであり、より好ましくは15〜40°Cである。なお、剥離シートは使用の際に取り除かれる。
【0062】
剥離シートの材料としては特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルスルフォン等のケトン系樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等のスルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂基板を好適に用いることができる。
前記接着シートの厚さは、接着する対象や要求される接着強度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜1000μmであり、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは30〜200μmである。なお、当該接着シートを用いるときには、当該接着シートを剥離シートから剥離してから又は剥離しながら用いることができる。
【0063】
<クローラ本体、ラグ突起部およびガイド突起部>
クローラ本体1、ラグ突起部2およびガイド突起部3(以下、「クローラ本体1等」ともいう)を構成する加硫ゴムは、炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。この場合、加硫ゴムに含まれる炭素−炭素二重結合の炭素原子が、接着手段Mに含まれる、例えば、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−硫黄結合を形成すると推測される。
ただし、前記加硫ゴムが、炭素−炭素二重結合を有しなくても、クローラ本体1等を得ることができると推測される。これは前述したように、ポリチオール化合物(A)による、加硫ゴム中に存在する炭素−炭素結合主鎖からの水素引き抜き反応により、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−炭素結合の炭素原子とが化学的に結合するためと推測される。しかし、接着力の向上の観点からは、前記加硫ゴムが、炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。
【0064】
また、加硫ゴムの材料は特に限定されず、例えば天然ゴム;ポリイソプレン合成ゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等の共役ジエン系合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ポリシロキサンゴムなどが挙げられるが、これらの中では天然ゴム及び共役ジエン系合成ゴムが好ましい。また、ゴム成分は、一種単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
<ゴムクローラの製造方法(前記接着剤を用いる場合)>
次に、接着手段Mの一例として、前記接着剤を用いてゴムクローラ10を製造する方法について、図1(b)を参照して説明する。
本実施形態の製造方法では先ず、隆起部1cを有する、加硫済みのゴムからなるクローラ本体1を準備するととともに、同じく加硫済みのゴムからなるラグ突起部2およびガイド突起部3をそれぞれ、複数準備する。次いで、複数のラグ突起部2をクローラ本体1の外周面1aに接着するとともに、複数のガイド突起部3をクローラ本体1の内周面1bから突出した隆起部1cの接着面1fに接着する。さらに詳細には、予め加硫成形された複数のラグ突起部2のクローラ本体1との接着面(接着剤塗布面)2aに、前記接着剤を塗布する。次いで、必要に応じて所定時間放置した後、クローラ本体1の外周面1aに対して、ラグ突起部2の接着面2aを面接触させる。ガイド突起部3についても同様で、予め加硫成形された複数のガイド突起部3のクローラ本体1の隆起部1cとの接着面(接着剤塗布面)3bに、前記接着剤を塗布する。次いで、必要に応じて所定時間放置した後、クローラ本体1の隆起部1cの接着面1fに対して、ガイド突起部3の接着面3aを面接触させる。このようにして、クローラ本体1にラグ突起部2およびガイド突起部3を配置することにより、図1(a)に示すような形状の、ゴムクローラ10の半完成品を得る。
【0066】
次いで、必要に応じて、この半完成品にその厚み方向のプレス圧を加えながら、硬化させることにより、図1(a)と同様の形状の、完成品としてのゴムクローラ10を好適に製造することができる。本実施形態では、完成品としてのゴムクローラ10において、クローラ本体1とラグ突起部2との間に配置された接着手段M2の厚さd2が、0mmを含まない0.5mm以下(0<d2≦0.5mm)になるように前記接着剤を塗布する。厚さd2のより好適な範囲としては、10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmの範囲が挙げられる。したがって、接着手段M2として塗布する前記接着剤を塗布する厚さは、少なくとも、0mmを含まない0.5mm以下とすることができる。同様に、本実施形態では、完成品としてのゴムクローラ10において、クローラ本体1の隆起部1cとガイド突起部3との間に配置された接着手段M3の厚さd3が、0mmを含まない0.5mm以下(0<d3≦0.5mm)になるように前記接着剤を塗布する。より厚さd3の好適な範囲としては、10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmの範囲が挙げられる。したがって、接着手段M3として塗布する前記接着剤を塗布する厚さも、少なくとも、0mmを含まない0.5mm以下とすることができる。
【0067】
上記製造方法において、塗布後に所定時間放置する場合、放置時間は、硬化時に前記接着剤が半完成品から漏れ出ないように前記接着剤を保形する観点から、好ましくは0〜30分であり、より好ましくは1〜15分である。
また、半完成品を得るに際しては、ラグ突起部2およびガイド突起部3の取り付け順序は特に限定されない。また、前記接着剤は、クローラ本体1の外周面1aおよび隆起部1cの接着面1fに塗布されていても良い。さらに、ラグ突起部2をクローラ本体1に対して一体に設けておくことができる。また、クローラ本体1の外周面1a側でも、クローラ本体1の外周面1aにラグ側の隆起部を設け、この隆起部にラグ突起部2を接着することができる。
また、半完成品にプレス圧を加える場合、接着力を向上させると共に半完成品から接着剤が漏出することを防止又は抑制する観点から、プレス圧は、好ましくは0〜5MPaであり、より好ましくは0〜2.5MPaであり、更に好ましくは0〜1MPaである。また、同様の観点から、プレス時間は、好ましくは5〜120分であり、より好ましくは10〜60分であり、更に好ましくは15〜45分である。
【0068】
前記接着剤がラジカル発生剤として熱ラジカル発生剤を含んでいる場合、硬化は加熱により行うことが好ましい。加熱温度は熱ラジカル発生剤が効率よくラジカルを発生する温度を適宜選択することができるが、好ましくは熱ラジカル発生剤の1分間半減期温度±30°C付近である。
前記接着剤がラジカル発生剤として光ラジカル発生剤を含んでいる場合、硬化は光照射により行うことが好ましい。接着力の向上及びコスト低減の観点から、光源としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線などの電磁波、及び、α線、γ線、電子線などの粒子線から選択される少なくとも1種を好適に用いることができ、紫外線ランプをより好適に用いることができる。また、同様の観点から、光照射時間は、好ましくは数秒〜数十秒であり、より好ましくは1秒〜40秒、更に好ましくは3秒〜20秒である。
なお、加熱によって硬化させた場合にも強力な接着力が得られることは、接着剤へ十分な光照射をし難い場合に、加熱する方法を採用できる点で有益である。
【0069】
<ゴムクローラの製造方法(前記接着シートを用いる場合)>
次に、接着手段Mの他の例として、前記接着シートを用いてゴムクローラ10を製造する方法について説明する。
図1(b)を参照して説明するように、接着手段Mとして接着剤を用いたときと同様、ラグ突起部2については、ラグ突起部2の接着面2aとクローラ本体1の外周面1aとの間に、前記接着シートから剥離シートを剥がしたのちの前記組成物を介在させる。ガイド突起部3についても同様で、ガイド突起部3の接着面3bとクローラ本体1の隆起部1cの接着面1fとの間に、前記接着シートから剥離シートを剥がしたのちの前記組成物を介在させる。このようにして、クローラ本体1にラグ突起部2およびガイド突起部3を配置することにより、図1(a)に示すような、ゴムクローラ10の半完成品を得る。
【0070】
次いで、必要に応じて、この半完成品にその厚み方向のプレス圧を加えながら、硬化させることにより、完成品としてのゴムクローラ10を好適に製造することができる。半完成品にその厚み方向のプレス圧を加える場合、接着力を向上させる観点から、プレス圧は、好ましくは0.1〜5.0MPaであり、より好ましくは0.2〜4.0MPaであり、更に好ましくは0.3〜3.0MPaである。より更に好ましくは0.4〜3.0MPaであり、より更に好ましくは0.5〜3.0MPaである。本実施形態でも、完成品としてのゴムクローラ10において、クローラ本体1とラグ突起部2との間に配置される接着手段(組成物)M2の厚さd2が、0mmを含まない0.5mm以下(0<d2≦0.5mm)になるように前記接着シートを選択する。厚さd2のより好適な範囲としては、10μ〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmの範囲が挙げられる。したがって、接着手段M2として塗布する前記接着シートの厚さは、少なくとも、0mmを含まない0.5mm以下とすることができる。同様に、本実施形態では、完成品としてのゴムクローラ10において、クローラ本体1の隆起部1cと突起部3との間に配置される接着手段(組成物)M3の厚さd3が、0mmを含まない0.5mm以下(0<d3≦0.5mm)になるように前記接着シートを選択する。厚さd3のより好適な範囲としては、10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmの範囲が挙げられる。したがって、接着手段M3として塗布する前記接着シートの厚さも、少なくとも、0mmを含まない0.5mm以下とすることができる。
なお、それ以外のプレス条件(プレス時間)や、硬化条件(加熱温度、加熱時間、光源、及び光照射時間)は、前述した接着剤を用いる場合と同様である。
【0071】
ところで、ラグ突起部2やガイド突起部3を別体として接着して製造したゴムクローラでは、接着部分(接着手段M)の厚みが必要以上に厚くなる場合、以下の問題も生じることが明らかになった。
ゴムクローラは無限軌道帯であり、複数の車輪に巻き掛けられている。ゴムクローラが駆動輪で巻き取られると、ゴムクローラの内周側には圧縮応力が生じる一方、外周側には引っ張り応力が生じる。そして転輪を通過するときには、ゴムクローラに生じた曲げは解消される。このように駆動輪で巻き取られたり転輪面で伸ばされたりすることにより、ゴムクローラには繰り返し曲げが生じる。このため、ゴムクローラの厚さは、接着手段(接着部分)M2の厚さd2および接着手段(接着部分)M3の厚さd3に従い厚くなり、ゴムクローラの厚みが厚くなればなるほど、高い歪が表面に生じることで、ゴムクローラの疲労を早めることになる。また、接着手段M2の厚さd2および接着手段M3の厚さd3が厚いと、スプロケットにゴムクローラ10を巻き掛けたときに、接着手段M2や接着手段M3に生じる歪みそのものが大きくなり、この歪みの増大は、接着手段M2や接着手段M3の疲労を早めることになる。
すなわち、ゴムクローラの耐久性は、接着手段M2の厚さd2や接着手段M3の厚さd3にも起因することが明らかになった。
【0072】
これに対し、本実施形態では、接着手段Mが0.5mm以下の厚さであることで、車輪にゴムクローラ10を巻き掛けたときの、当該ゴムクローラ10の巻き掛け部のうち、ラグ突起部2やガイド突起部3の接着部分(本実施形態では、接着手段M2およびM3)に生じる歪みを抑制することができる。
【0073】
さらに、例えば、加硫接着を行う技術では、接着手段Mとして、多量の硫黄を含む接着ゴム(未加硫ゴム)を使用するが、以下の理由から、接着ゴムの厚みは、0.6mm以下とするのが困難である。
理由1:ゴムの成形上、厚さが0.6mm以下の場合、精度の良い成形を行うことが困難である。
理由2:加硫接着では、接着ゴムに多量の硫黄を配合させることにより、接着の対象とする加硫ゴムに硫黄を移行させる必要がある。このため、接着ゴムの厚さを薄くし過ぎると、硫黄の絶対量が減少し、接着強度を維持することができない。
【0074】
これに対し、上記組成物を含む接着手段Mは、多量の硫黄が含まれた接着ゴムを使用する必要がないため、当該接着部分を、厚さ0.5mm以下(実際には、0.03mm〜0.1mmの範囲)の薄膜として形成するために、好適に用いることができる。
従って、本実施形態の製造方法を用いれば、接着部分(接着手段M)の厚みが抑えられることにより、小型軽量化が図られて耐久性に優れたゴムクローラ10を製造することができる。
【0075】
また、加硫接着を行う技術では、加硫接着面に凹凸を形成してアンカー効果を持たせる必要がある。このため、加硫接着面にバフ処理等の後処理を施したり、別体のシート部材を使用することにより、当該加硫接着面に凹凸を形成する必要がある。
これに対し、上記組成物を含有する接着手段Mを用いて接着を行う場合、加硫接着で必要な、バフ処理等の後処理や、別体のシート部材を用いた前処理が不要となる。バフ処理が不要となることで、例えば、バフ処理に要する工数やバフ粉の処理が不要となる。また、別体のシート部材を用いた前処理が不要となることで、例えば、シート部材の材料代、産業廃棄代、シート部材を剥がすのに要する工数が不要となる。
従って、本実施形態の製造方法を用いれば、製造コストおよび製造工数の削減等を図ることができる。
【0076】
さらに、モールド(金型)を用いて、ゴムクローラそのものを加硫成形する場合、ゴムクローラの形状に応じて当該ゴムクローラの形状に合わせたモールドを準備する必要があり、また、離型が困難な形状のゴムクローラについては製造が困難である。これに対し、本実施形態の製造方法を用いれば、製造方法が接着であるため、ゴムクローラの形状に応じて当該ゴムクローラの形状に合わせたモールドを準備する必要がなく、離型が困難な形状のゴムクローラについても製造することができる。
このように、本実施形態の製造方法によれば、金型を用いた一体加硫成形や加硫接着を行うことなく、ゴムクローラ10を得ることができる。
【0077】
上述のとおり、本実施形態のゴムクローラ10は、加硫接着を用いないゴムクローラとなる。この場合、接着部分の厚みが抑えられることにより、小型軽量化が図られて耐久性にも優れたゴムクローラとなる。また、接着が加硫接着ではないため、製造コストおよび製造工数の削減等が図られたゴムクローラとなる。さらに、ゴムクローラ全体の形成にモールドを使用する必要がないため、離型が困難な形状のゴムクローラとすることができる。
このように、本実施形態のゴムクローラ10は、金型を用いた一体加硫成形や加硫接着を行うことなく、製造可能な、ゴムクローラとなる。
【0078】
本実施形態に係る、ゴムクローラ10およびその製造方法によれば、ゴムクローラを接着により製造するときに加硫接着を用いる必要がない。なお、本実施形態において使用した上記組成物は、加硫接着用の接着ゴムと同様、加硫ゴム同士を化学的に結合させている。このため、接着強度は、加硫接着と同等である。
【0079】
なお、本発明に係る接着手段Mは、前記組成物を含むものに限定されることなく、例えば、上述のとおり、接着ゴム(未加硫ゴム)とすることも可能である。
【0080】
次いで、図3において、符号10´は、本発明の他の実施形態である、ゴムクローラである。ゴムクローラ10´は、ゴムを加硫成形したクローラ本体1に、ゴムを加硫成形した複数のラグ突起部2およびガイド突起部3が接着手段Mによって接着されている点では、上記の実施形態と同様である。ただし、本実施形態において、クローラ本体1に設けた隆起部1cは、ガイド突起部3に合わせて周方向Yに間隔を置いて設けている点が、先の実施形態と異なる。
【0081】
本実施形態では、ラグ突起部2をクローラ本体1に接着したときの、ラグ突起部2の先端部が、テーパ形状に形成されている。前記テーパ形状は、詳細には、図3に示すように、ラグ突起部2をクローラ本体1に接着したときの、ゴムクローラ10´の進退方向に配置された2つの傾斜面2tで構成されている。さらに詳細には、2つの傾斜面2tはそれぞれ、ラグ突起部2の先端2eに隣接し、ラグ突起部2の先端部として進退方向側の側面に対して局所的に形成されている。ただし、傾斜面2tは、後述のガイド突起部3と同様、進退方向側の側面そのものを傾斜面とすることもできる。すなわち、本実施形態では、ラグ突起部2をクローラ本体1に接着したときの、少なくとも当該ラグ突起部2の先端部が、進退方向に配置された2つの傾斜面で構成された先細りのテーパ形状に形成されていればよい。また、他の実施形態として、図3とは反対に、ラグ突起部2をクローラ本体1に接着したときの、少なくともラグ突起部2の先端部を、逆テーパ形状に形成することもできる。すなわち、2つの傾斜面2tによって、先端2eに向かうに従って横断面積が拡大する、末広がりの逆テーパ形状を形成することもできる。この場合、掻き取り性(接地面に対する引っ掛かり性)が向上することで、駆動力の向上を実現することができる。
【0082】
また、本実施形態では、ガイド突起部3をクローラ本体1の隆起部1cに接着したときの、ガイド突起部3が、隆起部1cとともに、テーパ形状に形成されている。前記テーパ形状は、詳細には、図3に示すように、ガイド突起部3をクローラ本体1の隆起部1cに接着したときの、ゴムクローラ10´の進退方向に配置された2つの傾斜面3tで構成されている。さらに詳細には、傾斜面3tは、ガイド突起部3の先端3eに隣接し、進退方向側の側面そのものとして形成されている。ただし、傾斜面3tは、ラグ突起部2と同様、ガイド突起部3の先端3eに隣接し、ガイド突起部3の先端部として進退方向側の側面に対して局所的に形成することもできる。すなわち、本実施形態では、ガイド突起部3をクローラ本体1に接着したときの、少なくとも当該ガイド突起部3の先端部が、進退方向に配置された2つの傾斜面で構成された先細りのテーパ形状に形成されていればよい。また、他の実施形態として、図2とは反対に、ガイド突起部3をクローラ本体1に接着したときの、少なくとも当該ガイド突起部3の先端部を、進退方向に配置された2つの傾斜面で構成された末広がりの逆テーパ形状になるように、クローラ本体1の隆起部1cとガイド突起部3を形成することもできる。すなわち、2つの傾斜面3tによって先端3eに向かうに従って横断面積が拡大する、末広がりの逆テーパ形状を形成することもできる。この場合、クローラ本体1の隆起部1cとガイド突起部3からなるガイドを車輪(スプロケット)の内側に強固に保持することができるため、脱輪を起こし難くすることができる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例を挙げて本発明に使用され得る接着手段Mに含まれる組成物を更に詳しく説明するが、接着手段Mに含まれる前記組成物は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
[原料等]
原料等としては、次のものを用いることができる。
<ポリチオール化合物(A)(成分(A))>
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP):SC有機化学株式会社製
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3―メルカプトプロピオネート)(DPMP):SC有機化学株式会社製
トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC):SC有機化学株式会社製、商品名「TEMPIC」
【0085】
<イソシアネート基含有化合物(B)(成分(B))>
HDIビューレット変性型イソシアネート:住友バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールN3200」
HDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHXLV」
IPDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールZ4470BA」
IPDIアロファネート変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールXP2565」
TDI TMPアダクト変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールL75(C)」
TDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−204」
XDI TMPアダクト変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−110N」
6XDI TMPアダクト変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−120N」
6XDI イソシアヌレート変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−127N」
IPDI:エボニックデグサジャパン(株)製、商品名「VESTANAT IPDI」、官能基当量111
【0086】
<ラジカル発生剤(C)(成分(C))>
t−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルO」
ジラウロイルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーロイルL」
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート:日本油脂株式会社製、商品名「パーオクタO」
1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサノン:日本油脂株式会社製、商品名「パーヘキサHC」
ジ−t―ブチルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルD」
t−ブチルクミルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルC」
【0087】
<ウレタン化触媒(D)(成分(D))>
トリエチレンジアミン(TEDA): Air Products社製、商品名「DABCO 33LV catalyst」
【0088】
<表面調整剤(E)(成分(E))>
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの混合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−307」、含有量100%
これらを用いることで、十分な接着力を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、クローラ本体にラグおよびガイドを有するゴムクローラに適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 クローラ本体
1a 外周面
1b 内周面
1c 隆起部
1f 接着面
2 ラグ突起部(突起部)
2a 接着面
2e 先端
2t 傾斜面
3 ガイド突起部(突起部)
3b 接着面
3e 先端
3t 傾斜面
10 ゴムクローラ
10´ ゴムクローラ
M 接着手段(接着剤、接着シート)
2 接着手段
2 厚さ
3 接着手段
3 厚さ
1 隆起部の高さ
3 突起部の高さ
図1
図2
図3
図4