特開2015-231821(P2015-231821A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231821(P2015-231821A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】車両用制動システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20151201BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20151201BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   B60T17/18
   B60T8/00 Z
   B60T13/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-120108(P2014-120108)
(22)【出願日】2014年6月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 敬士郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 伸二
(72)【発明者】
【氏名】植田 信介
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 佳史
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB37
3D048CC08
3D048CC18
3D048DD02
3D048HH13
3D048HH42
3D048HH50
3D048HH53
3D048HH59
3D048HH66
3D048HH68
3D048RR13
3D048RR25
3D049BB02
3D049CC02
3D049HH10
3D049HH31
3D049HH34
3D049HH39
3D049HH41
3D049HH42
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049RR04
3D049RR06
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA01
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA39A
3D246HA39B
3D246JA12
3D246JB02
3D246JB31
3D246LA15Z
3D246MA06
3D246MA16
3D246MA21
(57)【要約】
【課題】スレーブシリンダを駆動するモータの温度上昇に伴って当該モータの出力を低減しても、制動力の不足を抑制する。
【解決手段】モータ温度判定部は、スレーブシリンダ16を駆動するモータ72の温度を判定する。モータ出力制限部は、モータ温度判定部で判定されたモータ72の温度が所定温度以上になった場合は、モータ72の出力を制限し、スレーブシリンダ16で発生する制動力を抑制する。この場合には、車両挙動安定化制御部で、車両挙動安定化装置18を制御して制動力を発生させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータで駆動することにより制動操作量に応じて車両に制動力を発生させる電気的液圧発生部と、
前記電気的液圧発生部と連通し、車両の挙動を安定するように車両に制動力を発生させる車両挙動安定化装置と、
前記モータの温度を判定するモータ温度判定部と、
前記モータ温度判定部で判定された前記モータの温度が所定温度以上になった場合は、そうでない場合と比べて前記モータの出力を制限するモータ出力制限部と、
前記モータ出力制限部で前記モータの出力を制限する場合は、前記車両挙動安定化装置を制御して制動力を発生させる車両挙動安定化制御部と、
を備えることを特徴とする車両用制動システム。
【請求項2】
前記車両挙動安定化制御部は、前記モータの出力の制限による前記電気的液圧発生部の制動力の低減分を補うように、前記車両挙動安定化装置を制御して前記低減分の制動力を発生させることを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項3】
前記車両挙動安定化制御部は、当該車両挙動安定化制御部により前記車両挙動安定化装置で発生する制動力と前記電気的液圧発生部が発生する制動力との和が前記制動操作量に応じたものとなるように、前記車両挙動安定化装置を制御して制動力を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、運転者のブレーキペダルの操作に応じて、モータでスレーブシリンダ(モータシリンダ)を駆動して液圧(油圧)を発生させ、これにより車両の摩擦制動力を発生させる、所謂バイ・ワイヤ・ブレーキが知られている。
特許文献1では、スレーブシリンダで大きなトルクを発生させようとすると、スレーブシリンダを駆動するモータで大きなモータ電流が必要になって、当該モータの発熱が増加することについて言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−245823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、スレーブシリンダの駆動に大きなモータ電流が必要になってモータが発熱することの対策としては、当該モータの温度を判定し、当該温度が所定程度に高くなったときにはモータの出力を制限することが考えられる。
しかしながら、このようにモータの温度が高まったときにモータの出力を制限すると、ブレーキペダルの操作に比して制動力が小さいとして、運転者に違和感を与える可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、電気的液圧発生部(スレーブシリンダ)を駆動するモータの温度上昇に伴って当該モータの出力を低減しても、制動力の不足を抑制することができる車両用制動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、モータで駆動することにより制動操作量に応じて車両に制動力を発生させる電気的液圧発生部と、前記電気的液圧発生部と連通し、車両の挙動を安定するように車両に制動力を発生させる車両挙動安定化装置と、前記モータの温度を判定するモータ温度判定部と、前記モータ温度判定部で判定された前記モータの温度が所定温度以上になった場合は、そうでない場合と比べて前記モータの出力を制限するモータ出力制限部と、前記モータ出力制限部で前記モータの出力を制限する場合は、前記車両挙動安定化装置を制御して制動力を発生させる車両挙動安定化制御部と、を備えることを特徴とする車両用制動システムである。
本発明によれば、電気的液圧発生部を駆動するモータの温度が所定温度以上になった場合に当該モータの出力を制限しても、制動力の不足を抑制することができる。
【0007】
前記の場合に、前記車両挙動安定化制御部は、前記モータの出力の制限による前記電気的液圧発生部の制動力の低減分を補うように、前記車両挙動安定化装置を制御して前記低減分の制動力を発生させるようにしてもよい。
本発明によれば、モータの出力の制限による電気的液圧発生部の制動力の低減分を車両挙動安定化装置で補うことができる。
【0008】
前記の場合に、前記車両挙動安定化制御部は、当該車両挙動安定化制御部により前記車両挙動安定化装置で発生する制動力と前記電気的液圧発生部が発生する制動力との和が前記制動操作量に応じたものとなるように、前記車両挙動安定化装置を制御して制動力を発生させるようにしてもよい。
本発明によれば、電気的液圧発生部のモータの出力を制限しても、制動操作量に応じた制動力を出力することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気的液圧発生部を駆動するモータの温度上昇に伴って当該モータの出力を低減しても、制動力の不足を抑制することができる車両用制動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である車両用制動システムの説明図である。
図2】本発明の一実施形態である車両用制動システムの制御系の電気的な接続を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である車両用制動システム10の説明図である。車両用制動システム10は、車両における摩擦制動力を発生するための装置である。具体的には、車両用制動システム10は、バイ・ワイヤ・ブレーキ・システムなどから構成される。
【0012】
すなわち、車両用制動システム10は、ブレーキペダル12の操作により運転者が入力した踏力をブレーキ液圧に変換するマスタシリンダ34などを備えた入力装置14、マスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧に応じて、または、そのブレーキ液圧とは無関係にブレーキ液圧を発生させる電気的液圧発生部となるスレーブシリンダ16、車両挙動安定化装置18、ディスクブレーキ機構30a〜30dなどを備える。スレーブシリンダ16は、電気的アクチュエータとなるモータ72の駆動力を受けてブレーキ液圧を発生させる第1および第2スレーブピストン77a,77bを備える。
なお、配管チューブ22a〜22fには、各部のブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサPm,Pp,Phが設けられている。
【0013】
スレーブシリンダ16には、車両の右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aで液圧により摩擦制動力を発生させるホイールシリンダ32FRと、左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bに液圧により摩擦制動力を発生させるホイールシリンダ32RLと、右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cに液圧により摩擦制動力を発生させるホイールシリンダ32RRと、左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dに液圧により摩擦制動力を発生させるホイールシリンダ32FLと、が接続される。
【0014】
車両挙動安定化装置18は、所謂VSA(登録商標である)装置などであり、ブレーキ液を供給するポンプ73と、ポンプ73を駆動するモータMと、図1に図示する各種バルブなどから構成される(公知技術のため、詳細は省略)。車両挙動安定化装置18は、各ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに個別に液圧を供給することにより、車両の挙動の安定化を図るための装置である。例えば、ABS(Antilock Brake System)も車両挙動安定化装置18により動作する。
また、入力装置14の筺体などには、車両用制動システム10のうち、主に入力装置14、スレーブシリンダ16などからなるバイ・ワイヤ・ブレーキ・システムを制御するECU(Electronic Control Unit)101が設けられている。
【0015】
次に、車両用制動システム10の基本動作について説明する。車両用制動システム10では、スレーブシリンダ16などのバイ・ワイヤ・ブレーキ・システムの制御を行うECU101の正常作動時において、運転者がブレーキペダル12を踏むと、所謂バイ・ワイヤ式のブレーキシステムがアクティブになる。具体的には、正常作動時の車両用制動システム10では、運転者がブレーキペダル12を踏むと、ブレーキペダルストロークセンサ113(図2)でブレーキペダル12の操作量、操作速度を検出し、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bが、マスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)との連通を遮断した状態で、スレーブシリンダ16が、モータ72の駆動により発生するブレーキ液圧を用いてディスクブレーキ機構30a〜30d(のホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)を作動させて、各車輪を制動する。
【0016】
また、正常作動時は、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bが遮断される一方、第3遮断弁62が開弁され、ブレーキ液は、マスタシリンダ34からストロークシミュレータ(ペダルフォースシミュレータ)64に流れ込むようになり、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bが遮断されていても、ブレーキ液が移動し、ブレーキペダル12の操作時にはストロークが生じ、ペダル反力が発生するようになる。なお、第3遮断弁62は、配管チューブ22a側の系統に設けられていてもよい。
【0017】
一方、車両用制動システム10では、スレーブシリンダ16などが不作動である異常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むと、既存の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。具体的には、異常時の車両用制動システム10では、運転者がブレーキペダル12を踏むと、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bをそれぞれ開弁状態とし、かつ、第3遮断弁62を閉弁状態として、マスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(のホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)に伝達して、ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)を作動させて各車輪を制動する。
その他の入力装置14、スレーブシリンダ16、車両挙動安定化装置18などの構成や動作は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
図2は、ECU101を中心とした車両用制動システム10の制御系のブロック図である。ECU101は、所謂ESB−ECUおよびVSA−ECUに相当する。
ブレーキペダルストロークセンサ113は、ブレーキペダル12を運転者が操作する際のブレーキペダル12のストローク量を検出する。これにより、車両用制動システム10における運転者の制動操作量を検出することができる。
【0019】
ECU101は、ブレーキペダルストロークセンサ113で検出した制動操作量に応じて、スレーブシリンダ16のモータ72をモータ駆動回路112で制御するモータ制御部111を備えている。車両挙動安定化制御部131は、車両挙動安定化装置18のモータMを駆動するモータ駆動回路132、および、車両挙動安定化装置18のバルブ類などの各種アクチュエータ134を駆動する各種駆動回路133を制御する。これにより、車両挙動安定化制御部131は、車両挙動安定化装置18を制御して、前記のとおり車両の挙動を安定化するための制動力を発生する。
【0020】
ECU101は、モータ温度判定部121を備えている。モータ温度判定部121は、スレーブシリンダ16のモータ72の温度を判定する。ここで、モータ72の温度を判定するための手段は様々に実現することができる。例えば、モータ72に供給するモータ電流の電流値や、その供給時間、モータ電流の供給が停止してからの経過時間など、モータ72の稼働状況から、演算や予め用意されたマップの参照によりモータ72の温度を推定することができる。あるいは、モータ72の温度(モータ72の近傍の機器の温度)を温度センサで直接検出してもよい。
【0021】
モータ制御部111は、モータ出力制限部114を備えている。モータ出力制限部114は、モータ温度判定部121で判定したモータ72の温度が所定温度(閾値T)以上となった場合には、そうでない場合と比べてモータ72のモータ電流を低減し、モータ72の出力を所定程度制限する。これにより、スレーブシリンダ16で発生する制動力を、ブレーキペダルストロークセンサ113で検出した制動操作量に応じた制動力よりも所定程度低減する。
【0022】
そして、このように、モータ出力制限部114でモータ72の出力を制限したときは、これによる制動力の低減の情報を、モータ制御部111から車両挙動安定化制御部131に通知する。そして、この通知を受けると、車両挙動安定化制御部131は、モータMおよび各種アクチュエータ134を制御して、車両挙動安定化装置18により制動力を発生する。
【0023】
具体的には、スレーブシリンダ16の制動力の低減分を補うように、車両挙動安定化装置18で制動力を発生させる。
すなわち、この場合には、車両挙動安定化制御部131により車両挙動安定化装置18で発生する制動力と、スレーブシリンダ16が発生する制動力との和が、ブレーキペダルストロークセンサ113で検出した制動操作量に応じたものとなるように、モータ出力制限部114は、車両挙動安定化装置18を制御して制動力を発生させる。
【0024】
以上説明した本実施形態の車両用制動システム10によれば、スレーブシリンダ16を駆動するモータ72の温度が高くなった場合には、モータ72の出力を低減することで、モータ72の温度の上昇を抑制することができる。
この場合に、スレーブシリンダ16で発生する制動力は、ブレーキペダルストロークセンサ113で検出した制動操作量に応じた制動力より小さなものになる。
しかし、スレーブシリンダ16で発生する制動力が小さくなっても、車両挙動安定化装置18で制動力を発生する。これにより、スレーブシリンダ16を駆動するモータ72の温度上昇に伴って当該モータ72の出力を低減しても、制動力の不足を抑制することができる車両用制動システム10を提供することができる。
【0025】
すなわち、車両用制動システム10によれば、スレーブシリンダ16の制動力の低減分を補うように、車両挙動安定化装置18で制動力を発生させることができる。より具体的には、車両挙動安定化装置18で発生する制動力と、スレーブシリンダ16が発生する制動力との和が、ブレーキペダルストロークセンサ113で検出した制動操作量に応じたものとなるようにできる。
よって、モータ72の温度が高くても低くても、運転者によるブレーキペダル12の操作が同じであれば、車両にかかる制動力は同じになる。よって、ブレーキペダル12の操作に応じた制動力を、モータ72の温度にかかわらず出力できるので、運転者に違和感を与える恐れがない。
【符号の説明】
【0026】
10 車両用制動システム
16 スレーブシリンダ(電気的液圧発生部)
18 車両挙動安定化装置
72 モータ
114 モータ出力制限部
121 モータ温度判定部
131 車両挙動安定化制御部
図1
図2