【課題】パウダーが固く凝集することを抑制でき、パウダーを攪拌するための部材を用いることなく、使用によりエアゾール組成物の量が少なくなった場合であっても噴射時にパウダーを良好に再分散させ、所定量のパウダーを含む一定量のエアゾール組成物を噴射することのできるエアゾール製品を提供する。
【解決手段】パウダーと液化ガスとを含むエアゾール組成物と、エアゾール容器とを含み、エアゾール容器は、エアゾール組成物が充填される容器本体と、エアゾールバルブとを含み、液化ガスは、60〜90容量%のハイドロフルオロオレフィンを含み、エアゾールバルブは、一定量のエアゾール組成物が取り込まれる定量室を有するハウジングを備え、ハウジングは、定量室に取り込まれたエアゾール組成物に含まれるパウダーが貯留されるパウダー貯留部を有する、定量噴射型エアゾール製品。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態の定量噴射型エアゾール製品(以下、単にエアゾール製品ともいう)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のエアゾール製品1の模式的な断面図である。
図2は、
図1に示されるエアゾール製品1の拡大された断面図である。
図1および
図2に示されるエアゾール製品は、エアゾール組成物を噴射していない。エアゾール製品1は、容器本体3と容器本体3に取り付けられるエアゾールバルブ4とからなるエアゾール容器と、エアゾール容器に充填されるエアゾール組成物2と、エアゾールバルブ4に取り付けられる噴射ボタン5とを主に含む。エアゾール組成物2は、パウダー21と液化ガス22とを含む。本実施形態のエアゾール製品1は、エアゾールバルブ4が有する定量室Sに一定量のエアゾール組成物2を取り込んで噴射することができる定量噴射型の製品である。その際、エアゾール製品1は、定量室S内に取り込んだエアゾール組成物2中に含まれる所定量のパウダー21を、固く凝集させることなくエアゾールバルブ4内のパウダー貯留部47に貯留することができる。また、エアゾール製品1は、噴射時に、貯留したパウダー21を分散させて噴射することができる。以下、それぞれの構成について詳細に説明する。
【0020】
<エアゾール組成物2>
エアゾール組成物2は、エアゾール製品1の容器本体3に充填され、適宜噴射される内容物である。本実施形態のエアゾール製品1は、パウダー21と液化ガス22とを含むことを特徴とする。そのため、パウダー21および液化ガス22以外の任意成分については後述する。
【0021】
(パウダー21)
パウダー21は、噴射されるエアゾール組成物2に所望の効果を付与するために添加される成分であり、粒径が1〜100μmの比較的小径の粉体である。パウダー21は、容器本体3内において、液相を構成する液化ガス22よりも比重が大きく、静置することにより容器本体3の内底部33に沈降する。
【0022】
また、パウダー21は、自身が有効成分として作用する場合のほか、その他の有効成分を付着しやすくするための補助剤や、適用箇所(皮膚など)をさらさらにして使用感を向上させる、などの目的でも配合される。
【0023】
パウダー21としては、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム等の制汗成分、酸化亜鉛、ミョウバン等の収斂成分、酸化チタン等の紫外線散乱成分、銀担持ゼオライト等の抗菌成分、タルク、無水ケイ酸、コーンスターチ、マイカ、雲母チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ナイロンパウダー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体等が例示される。
【0024】
パウダー21の含有量としては特に限定されない。パウダー21の含有量は、エアゾール組成物2中1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、パウダー21の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。パウダー21の含有量が1質量%よりも少ない場合、パウダー21の効果が充分に得られない傾向がある。一方、パウダー21の配合量が20質量%を超える場合、後述されるエアゾールバルブ4のステム孔43fや噴射ボタン5の噴射孔53において詰まり易い傾向がある。本実施形態のエアゾール組成物2は、パウダー21を2質量%以上含む場合であっても、後述するエアゾールバルブ4内で凝集させたり、ステム孔43fを詰まらせることなく均一にパウダー21を分散させて噴射することができる。
【0025】
(液化ガス22)
液化ガス22は、パウダー21を噴射するための噴射剤であり、容器本体3内に充填された状態において、所定の蒸気圧を有する液体である。液化ガス22は、後述される噴射ボタン5を操作してステム孔43fを開放して定量室S内と外部とを連通させると、その圧力差により気化して体積が膨張する。これにより、定量室S内を撹拌してパウダー貯留部内のパウダー21が分散されて液化ガス22とともに適用箇所(皮膚など)に噴射される。液化ガス22のうち一部は適用箇所においても気化し、その際の吸熱により適用箇所を冷却する。
【0026】
本実施形態において、液化ガス22は、ハイドロフルオロオレフィンを含む。ハイドロフルオロオレフィンとしては特に限定されない。ハイドロフルオロオレフィンとしては、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、HFO−1234zeともいう)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、HFO−1234yfともいう)が例示される。
【0027】
ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、液化ガス22中60〜90容量%である。ハイドロフルオロオレフィンが液化ガス22中60〜90容量%含まれる場合、パウダー21は、後述するパウダー貯留部47に沈降する際に固く凝集しにくい。また、ハイドロフルオロオレフィンは、噴射時に定量室S内で少なくとも一部が気化するため、パウダー貯留部47に貯留されたパウダー21に対して振動を与えることができ、パウダー21を再分散させやすい。その結果、エアゾール製品1は、適切な量のパウダー21を含むエアゾール組成物2を噴射することができ、皮膚等の適用箇所に所望の効果を付与することができる。ハイドロフルオロオレフィンは、65容量%以上であることが好ましい。また、ハイドロフルオロオレフィンは、85容量%以下であることが好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの含有量が60容量%未満の場合、パウダー21を分散しやすくする効果が得られにくい。一方、ハイドロフルオロオレフィンの含有量が90容量%を超える場合、噴射時の圧力が大きくなり過ぎて、パウダー21が適用箇所に付着しにくくなる。
【0028】
液化ガス22は、ハイドロフルオロオレフィン以外の他の液化ガスを10〜40容量%含んでいる。このような他の液化ガスは、エアゾール組成物2の圧力を下げて噴射の勢いを調整し、パウダー21を適用箇所に付着しやすくする等の目的で用いられる。このような液化ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物が例示される。液化石油ガスの中でもノルマルブタン、イソブタン、およびこれらの混合ガスが好ましい。さらに、液化ガス22は、エアゾール組成物2の圧力をさらに下げ、冷却効果を調整する等の目的で、イソペンタン、ノルマルペンタン等の炭素数が5個の炭化水素を含んでもよい。他の液化ガスは、15容量%以上であることが好ましい。また、他の液化ガスは、35容量%以下であることが好ましい。他の液化ガスの含有量が10容量%未満の場合、噴射時の圧力が大きくなり過ぎて、パウダー21が適用箇所に付着しにくくなる。一方、他の液化ガスの含有量が40容量%を超える場合、燃焼性が高くなり、パウダー21を分散しやすくする効果が得られにくい。
【0029】
液化ガス22の含有量は、特に限定されない。液化ガス22の含有量は、エアゾール組成物2中60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガス22の含有量は、98質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることがより好ましい。液化ガス22の含有量が60質量%未満の場合、定量室S内でパウダー21を分散しやすくする効果が得られにくい傾向がある。一方、液化ガス22の含有量が98質量%を超える場合、パウダー21が飛散しやすく、適用箇所に付着しにくい傾向がある。
【0030】
次に、上記したパウダー21および液化ガス22を含むエアゾール組成物2が充填されるエアゾール容器(容器本体3およびエアゾールバルブ4)、噴射ボタン5について説明する。なお、本実施形態のエアゾール製品1において、エアゾールバルブ4は、一定量のエアゾール組成物2を取り込むための定量室Sを有するハウジング42を備え、かつ、ハウジング42が定量室Sに取り込まれたエアゾール組成物2に含まれるパウダー21のうち、所定量のパウダーを貯留するパウダー貯留部47を有していればよい。そのため、以下に示す容器本体3、エアゾールバルブ4および噴射ボタン5の構成は一例であり、本実施形態はこれに限定されない。
【0031】
<エアゾール容器>
エアゾール容器は、エアゾール組成物2を充填するための容器本体3と、容器本体3の開口に取り付けられ、容器本体3内を密封するエアゾールバルブ4とからなる。
【0032】
(容器本体3)
容器本体3は、エアゾール組成物2が加圧充填される耐圧容器である。容器本体3の形状は特に限定されず、汎用の形状が採用される。本実施形態の容器本体3は、略有底筒状であり上部のみ縮径された胴部31と、胴部31よりも小径であり胴部31の上部に一体的に設けられた筒状の首部32とからなる。首部32の上部には開口が形成されている。開口は、エアゾール組成物2を充填するための充填口であり、後述するエアゾールバルブ4により閉止される。首部32の外周には、周状の係止溝32aが形成されている。係止溝32aは、後述するカバーキャップ46の縁部46bの下端が係止溝32a側に塑性変形されて嵌め込まれる。これにより、容器本体3に、カバーキャップ46が位置決めされる。
【0033】
容器本体3の内底部33には、パウダー21が沈降する。容器本体3は、エアゾール組成物2(液化ガス22)が加圧充填された状態で静置されると、上部に気相部分が形成される。すなわち、容器本体3内において、エアゾール組成物2を含む液相部分は、液密状態で充填されることがない。そのため、液相部分は、たとえば容器本体3を上下に振とうする等により容易に攪拌することができる。その結果、パウダー21は内底部33に沈降していても、容易に液相中に再分散させることができる。
【0034】
容器本体3を構成する材料は特に限定されない。材料としては、アルミニウムやブリキなどの金属、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂、耐圧ガラス等が例示される。合成樹脂を用いる場合は、たとえば、日光による内容物の劣化を防止するために紫外線吸収剤が含有されてもよく、液化ガス22の透過を防止するために容器本体3の外表面または内面に炭素やシリカなどが蒸着されてもよい。ほかにも、容器本体3は、未使用のポリエチレンテレフタレートに対して、飲料用として使用された後のポリエチレンテレフタレートを添加して再利用した材料が使用されてもよい。
【0035】
(エアゾールバルブ4)
エアゾールバルブ4は、容器本体3に取り付けられるバルブであり、容器本体3からエアゾール組成物2を取り込んで、後述する噴射ボタン5に送るための部材である。エアゾールバルブ4は、マウンティングカップ41、ハウジング42、ステム43、バネ部材(スプリング44)、ステムラバー45およびカバーキャップ46を備える。
【0036】
(マウンティングカップ41)
マウンティングカップ41は、ハウジング42を保持し、容器本体3に位置決めするための部材である。マウンティングカップ41は、中心にステム43が挿通される挿通孔が形成された円盤状のカップ本体41aと、カップ本体41aの外周縁近傍から下方に延設された円筒状のカップ筒部41bとを備える。挿通孔の径は、ステム43の外径よりも大きい。そのため、マウンティングカップ41は、ステム43の摺動を妨げない。カップ本体41aの外周縁には、周状のフランジ部41cが形成されている。カップ本体41aは、ハウジング42の上部およびステムラバー45を覆う部材であり、カバーキャップ46の内面を保護する。カップ筒部41bは、容器本体3の開口に挿入され、外周面に容器本体3の開口部との間をシールするシール材を備える。また、カップ筒部41bは、内周面にハウジング42を保持する嵌合突起41dを備える。フランジ部41cは、下面に、容器本体3の首部32の上端(上面)とフランジ部41cの下面との間をシールするシール材を備える。
【0037】
(ハウジング42)
ハウジング42は、略円筒状の部材であり、その上端および下端にそれぞれ開口(上端開口部42aおよび下端開口部42b)を有する。ハウジング42内には、ステム43が挿通されている。上端開口部42aは、ステム43の上端を露出させるための開口である。下端開口部42bは、後述するブッシュ7を介してディップチューブ8を接続するための開口である。
【0038】
ハウジング42の内周壁には、径方向の内側に膨出した周状のハウジング膨出部42cがされている。ハウジング膨出部42cは、中心にステム43が挿通される挿通孔が形成された円盤状の本体部42dと、挿通孔の周囲において本体部42dの上面から上方向に延設された延設部42eとを備える。本体部42dの下面は、後述するブッシュ7とともに弁部材6を位置決めするための面である。延設部42eは、略円筒状の部材であり、後述するスプリング44の下端が接続される上面を有する。延設部42eの外周面と、ハウジング42の内周面との間は離間されている。本体部42dの上面と、延設部42eの外周面と、ハウジング42の内周面とは、パウダー21が所定量貯留される空間(パウダー貯留部47)を画定する。
【0039】
パウダー貯留部47は、ハウジング42内に形成された環状の溝であり、ハウジング42内に取り込まれたエアゾール組成物2に含まれるパウダー21を貯留するための空間である。パウダー貯留部47にパウダー21が沈降される機序については後述される。
【0040】
弁部材6は、逆円錐台状の弾性部材であり、上面側から下面側に貫通する貫通孔61(取込口の一例)が形成されている。貫通孔61は、ディップチューブ8を介して容器本体3から後述する定量室Sにエアゾール組成物2を取り込むための孔である。貫通孔61は、上面側から下面側にかけて縮径されている。貫通孔61の上面側の開口径は、後述するステム43の外径よりも大きい。一方、貫通孔61の下面側の開口径は、ステム43の外径よりも小さい。そのため、ステム43は、上下方向へ摺動することにより、弁部材6の周面に適宜当接させて、貫通孔61を開閉することができる。ステム43による貫通孔61の開閉の詳細については後述される。
【0041】
弁部材6は、上面側の外周において、径方向の外側に膨出する膨出部62を有する。膨出部62は、本体部42dの下面と、後述するブッシュ7の上面とにより挟持される。これにより、弁部材6は、ハウジング42内の適切な位置に位置決めされる。
【0042】
ブッシュ7は、円盤状のブッシュ本体71と、ブッシュ本体71の上面において上方向に延設された上円筒部72と、下方向に延設された下円筒部73とを有する。ブッシュ本体71の中心には、貫通孔が形成されている。上円筒部72の外径は、ハウジング42の内径よりもわずかに小さい。そのため、ブッシュ7は、上円筒部72をハウジング42に挿入することによりハウジング42に装着される。下円筒部73の内径は、ディップチューブ8の外径よりもわずかに大きい。そのため、下円筒部73には、ディップチューブ8が挿入され、装着される。
【0043】
ディップチューブ8は、容器本体3の内底近傍まで延びる比較的長尺の円筒状部材であり、下円筒部73に差し込まれる上端と、容器本体3に貯留されたエアゾール組成物2の液相に浸漬され、エアゾール組成物2を取り込むための開口が形成された下端とを有する。ディップチューブ8に形成された開口は、パウダー21の径よりも充分に大きい。
【0044】
(ステム43)
ステム43(開閉部材の一例)は、ハウジング42内を上下方向に摺動する部材であり、上部ステム43aと下部ステム43bとからなる。ステム43は、非噴射時に弁部材6の貫通孔61を開放し、噴射時に貫通孔61を閉止する。
【0045】
上部ステム43aは、下向きの椀状であり、下面にスプリング44の上端が接続される比較的大径の椀状部43cと、椀状部43cよりも小径であり、椀状部43cの上面中央から上方に延びる円筒状の円筒部43dとを有する。椀状部43cと円筒部43dとの接続箇所には、非噴射時において後述するステムラバー45が当接する。円筒部43dは、噴射時にハウジング42内に取り込まれたエアゾール組成物2が通過する上部ステム内通路43eを有する。また、円筒部43dの側周面には、ハウジング内の空間と上部ステム内通路43eとを連通するステム孔43fが形成されている。ステム孔43fは、非噴射時には、後述するステムラバー45の内周面により閉止される。
【0046】
下部ステム43bは、略棒状であり、挿通孔に挿通するよう配置されている。下部ステム43bの下端は、非噴射時において弁部材6の周面と離間しており、貫通孔61を開放している。一方、下部ステム43bの下端は、噴射時には弁部材6の周面と当接し、貫通孔61を閉止する。下部ステム43bの下端近傍は、弁部材6の周面と当接しやすいように、下方向にかけて縮径されている。
【0047】
(スプリング44)
スプリング44(バネ部材の一例)は、ステム43を上方向へ常時付勢するために、ハウジング42内に圧縮状態で保持される部材である。スプリング44は、上部ステム43aの下面に接続される上端と、延設部42eの上面に接続される下端とを有する。スプリング44は、非噴射時において、ステム43を上方向へ付勢し、上部ステム43aの椀状部43cと円筒部43dとの接続箇所がステムラバー45に押し当てられる位置までステム43を移動させる。
【0048】
(ステムラバー45)
ステムラバー45は、ハウジング42の内部空間と外部とを遮断するための部材であり、中心に上部ステム43aが挿通される挿通孔が形成された円盤状の部材である。ステムラバー45の内径は、上部ステム43aの外径よりもわずかに小さく、非噴射時において、内周面を上部ステム43aの外周面と密着させて、上部ステム43aのステム孔43fを閉止する。ステムラバー45の外周近傍は、マウンティングカップ41の下面とハウジング42の上面とにより挟持される。これにより、ステムラバー45は、エアゾールバルブ4内において適切に位置決めされる。
【0049】
(カバーキャップ46)
カバーキャップ46は、エアゾールバルブ4を容器本体3に取り付けるための部材である。カバーキャップ46は、円盤状のキャップ本体46aと、キャップ本体46aの外周縁において下方に延設された円筒状の縁部46bとを有する。キャップ本体46aは、中心に上部ステム43aが挿通される挿通孔が形成されている。縁部46bの下端は、首部32の係止溝32aに係止されるよう湾曲形状に塑性変形されている。
【0050】
以上のように構成されたエアゾールバルブ4は、ハウジング42内に定量室Sを形成する。定量室Sは、後述する噴射時から非噴射時に切り替える際に、容器本体3から一定量のエアゾール組成物2が取り込まれる空間であり、ステムラバー45と上部ステム43aとの接触箇所と、弁部材6と下部ステム43bとの当接箇所とにより画定される所定容積の空間である。
【0051】
<噴射ボタン5>
噴射ボタン5は、ステム43を上下に摺動させて、エアゾールバルブ4を後述する非噴射状態と噴射状態とに切り替えるための部材である。噴射ボタン5は、使用者が操作する操作部51と、噴射孔53が形成された先端チップ52とを備える。
【0052】
操作部51は、定量室Sに取り込まれたエアゾール組成物2を噴射するために操作される部位である。操作部51の形状は特に限定されず、汎用の形状が採用される。本実施形態の操作部51は、略円筒状である。使用者は、たとえば操作部51の上面を指で押し下げることにより、ステム43を上下方向に摺動させて、エアゾール組成物2を噴射するための操作を行う。操作部51は、噴射時にエアゾール組成物2が通過するボタン内噴射通路51aを内部に有する。ボタン内噴射通路51aは、略L字状の管路であり、上部ステム43aの上端が挿入される一端と、先端チップ52が取り付けられる他端とを有する。ボタン内噴射通路51aは、ボタン内噴射通路51a内を通過するエアゾール組成物2が適切な噴射圧に加圧されるように、一端側から他端側にかけて段階的に内径が小さくなるよう構成されている。なお、ボタン内噴射通路51aの内径は、連続的に小さくなるよう構成されてもよく、一定に構成されてもよい。
【0053】
先端チップ52は、ボタン内噴射通路51aの他端に接続される治具である。先端チップ52には、ボタン内噴射通路51aの他端に形成された開口と対応する位置に、この開口よりもさらに径が小さな噴射孔53が形成されている。噴射孔53の個数、寸法(形状、径の大きさ等)は特に限定されず、所望の噴射パターンでエアゾール組成物2を噴射できるように適宜選択される。
【0054】
エアゾール製品1の説明に戻り、エアゾール製品1を作製する方法としては特に限定されない。エアゾール製品1は、容器本体3に、パウダー21、液化ガス22および必要に応じて原液を充填し、容器本体3にエアゾールバルブ4を固着することにより作製することができる。なお、原液を充填する場合には、パウダー21は、原液中に分散させてから充填してもよい。また、液化ガス22は、容器本体3にエアゾールバルブ4を固着する前にアンダーカップ充填されてもよく、エアゾールバルブ4を固着した後でステム孔43fを介して充填されてもよい。
【0055】
<噴射時および非噴射時におけるエアゾールバルブ4の状態について>
次に、本実施形態のエアゾール製品1を用いてエアゾール組成物2を噴射しない場合(非噴射時)および噴射する場合(噴射時)のエアゾールバルブ4の状態について、
図1および
図2に加えて
図3を参照しながら説明する。
図3は、噴射時におけるエアゾールバルブ4の状態を説明する模式的な断面図である。なお、以下の説明において、非噴射時のエアゾールバルブ4の状態を非噴射状態といい、噴射時のエアゾールバルブ4の状態を噴射状態という。
【0056】
まず、使用者により噴射ボタン5(
図1参照)が下方へ押し下げられると、
図3に示されるように、噴射ボタン5の操作部51に接続されたステム43も下方へ摺動される。これにより、下部ステム43bの下端が弁部材6の周面と当接し、貫通孔61が閉止される。また、ステム孔43fがステムラバー45による閉止から開放される。その結果、定量室S内と外部とが連通され、定量室S内が外部と同じ圧力となる。そうすると、定量室S内に取り込まれていたエアゾール組成物2(噴射前にエアゾール組成物2が定量室Sに取り込まれる機序については後述する)に含まれる液化ガス22は、気化して体積が膨張する。これにより、エアゾール組成物2は、膨張した体積分だけステム孔43fおよび上部ステム内通路43eを通過し、噴射ボタン5の噴射孔53(
図1参照)から噴射される。
【0057】
次いで、使用者が噴射ボタン5の押し下げ動作を止めると、ステム43は、スプリング44による上方向への付勢により、上方向へ摺動される。これにより、
図2に示されるように、ステム孔43fがステムラバー45により再び閉止されるとともに、下部ステム43bの下端が弁部材6の周面から離れ、貫通孔61が開放される。ここで、容器本体3内は、液化ガスにより常時加圧されている。一方、定量室S内は、噴射時にステム孔43fが開放されたため、外部と同じ圧力となっている。そのため、エアゾール容器内と定量室S内との圧力差に従って、開放された貫通孔61から次回噴射されるべき一定量のエアゾール組成物2が定量室S内に取り込まれる。
【0058】
また、上記のとおり、パウダー21は、液相よりも比重が大きい。そのため、時間の経過とともに沈降しやすい。したがって、本実施形態のエアゾール製品1は、適宜、噴射前にたとえば上下に振とうされ内底部33に沈降したパウダー21を液相に均一に分散させることが好ましい。このようにパウダー21が分散した状態で噴射を行うと、次回噴射されるべきエアゾール組成物2が定量室S内に取り込まれる際に、取り込まれるエアゾール組成物2に一定量のパウダー21が含まれやすい。
【0059】
定量室Sに取り込まれたエアゾール組成物2に含まれるパウダー21は、時間の経過とともに沈降する。具体的には、小径の貫通孔61を通って、貫通孔61よりも大径の定量室S内に導入されたパウダー21は、定量室S内で拡散されてハウジング42の内周面を伝って大部分がパウダー貯留部47内に沈降して貯留される。パウダー貯留部47からあふれたパウダー21や延設部42eよりも径方向の外側(すなわちパウダー貯留部47の上方の位置)まで拡散されなかったパウダー21などの一部のパウダーは開放されている貫通孔61から容器本体3の内底部33に落下して沈降する。このように、本実施形態のエアゾール製品1は、非噴射時において貫通孔61が開放されている場合であっても、所定量のパウダー21がパウダー貯留部47に貯留され、定量室S内に残される。したがって、次回噴射されるエアゾール組成物2には、所定量のパウダー21が含まれる。パウダー21の噴射量はエアゾール組成物2中の濃度だけでなく、パウダー貯留部47の容積によっても調整することができる。
【0060】
また、定量室S内に取り込まれたエアゾール組成物2は、60〜90容量%のハイドロフルオロオレフィンを含む液化ガス22を含む。上記のとおり、ハイドロフルオロオレフィンは、60〜90容量%含まれる場合において、パウダー貯留部47においてパウダー21を固く凝集させにくい。
【0061】
ここで、再びエアゾール組成物2を噴射する場合には、好ましくは、エアゾール製品1は、容器本体の内底部33に沈降したパウダー21を分散させる目的において、たとえば上下に振とうされる。定量室においてパウダーが固く凝集した従来のエアゾール製品の場合、エアゾールバルブ内が液密状態に近いほど、エアゾール製品を上下に振とうする程度では定量室内において液流が発生しにくく、凝集したパウダーが充分に分散されない場合があった。しかしながら、本実施形態のエアゾール製品1の場合、パウダー貯留部47に貯留されたパウダー21は、固く凝集していない。さらに、貫通孔61は、噴射時に下部ステム43bの下端で閉止される。そのため、定量室S内は、容器本体3内との連通が遮断されて容器本体3内からのエアゾール組成物2の供給が停止される。その結果、定量室S内に取り込まれた液化ガスは、噴射される前に定量室S内で気化しやすくなり、その容積膨張によりパウダー貯留部47内に沈降しているパウダー21を拡散させやすい。したがって、非噴射時から長時間を経過した後にエアゾール組成物2が噴射される場合であっても、エアゾール製品1は、所定量のパウダー21を含むエアゾール組成物2を噴射することができ、所望の効果を得ることができる。
【0062】
さらに、従来の圧縮ガスを用いてパウダーを分散させる場合には、上記のとおり、圧縮ガスは、容器本体内の気相部分に多く存在する。そのため、使用により容器本体内のエアゾール組成物が減ると、気相部分の体積が増え、容器本体3内の圧力が低下する。その結果、エアゾール組成物中の溶液(たとえば水)に溶けている圧縮ガスの量が減り、噴射時にパウダーを分散させる効果が減弱していた。しかしながら、本実施形態のエアゾール製品1は、上記した液化ガス22のうち、60〜90容量%がハイドロフルオロオレフィンである。そのため、仮に容器本体3内の圧力が低下したとしても、定量室S内には一定量のハイドロフルオロオレフィンを含む液化ガス22が取り込まれる。その結果、パウダー貯留部47に貯留されたパウダー21を分散させる効果は減弱しない。
【0063】
以上のように、本実施形態のエアゾール製品1は、パウダー21を再分散させるために、パウダー21を攪拌するための部材を必要とせず、エアゾールバルブ4の一連の動作により、所定量のパウダー21を含むエアゾール組成物2を、適宜パウダー21を分散させつつ一定量噴射することができる。
【0064】
(エアゾール組成物2の任意成分)
次に、本実施形態のエアゾール製品1のうち、エアゾール組成物2が好適に含んでよい任意成分について説明する。本実施形態において、エアゾール組成物2は、パウダー21の付着性を向上させる、使用感を向上させる等の目的で、パウダー21以外の有効成分、パウダー分散剤、パウダー付着剤(油剤)、溶剤等を含有する原液を含んでもよい。
【0065】
パウダー21以外の有効成分としては、l−メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤、イソプロピルメチルフェノール、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、レゾルシン、サリチル酸、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌(抗菌)・防腐剤、アラントイン、グリチルレチン酸、アズレンなどの抗炎症剤、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェミラミンなどの抗ヒスタミン剤、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、茶エキスなどの消臭・防臭剤、レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ビタミンD2、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン類、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチルなどの紫外線吸収剤、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ユーカリエキス、セージエキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液、アロエエキスなどの各種抽出液、N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避剤、香料などが例示される。
【0066】
パウダー21以外の有効成分を配合する場合の含有量は、エアゾール組成物2中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダー21以外の有効成分を配合する場合の含有量は、エアゾール組成物2中10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。パウダー21以外の有効成分の含有量が0.1質量%未満の場合、有効成分を含むことによる効果が奏されにくい傾向がある。一方、パウダー21以外の有効成分の含有量が10質量%を超える場合、有効成分濃度が高く、適用箇所(皮膚など)に悪影響を及ぼす虞がある。
【0067】
パウダー分散剤は、容器本体3やパウダー貯留部47に沈降したパウダー21を、たとえばエアゾール製品1を上下に振とうした際に液相中に分散させやすくするために含有されてもよい。パウダー分散剤としては、ソルビタンモノオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などの非イオン性界面活性剤などが例示される。
【0068】
パウダー分散剤を配合する場合の含有量は、エアゾール組成物2中0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましい。また、パウダー分散剤を配合する場合の含有量は、エアゾール組成物2中5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダー分散剤の含有量が0.01質量%未満の場合、パウダー21の分散性を向上させる効果が得られにくい傾向がある。一方、パウダー分散剤の含有量が5質量%を超える場合、適用箇所においてベタつくなど、使用感が低下しやすい傾向がある。
【0069】
パウダー付着剤(油剤)は、パウダー21の飛散や乾燥を抑えて適用箇所(特に人体)にパウダー21を付着しやすくするために含有されてもよい。パウダー付着剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、エチルヘキサン酸ブチルエーテルプロパンジオール、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコールなどのエステルオイル、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ホホバ油、オリーブ油、オレンジ油、カミレツ油、キウイ油、コメヌカ油、サフラワー油、ジャスミン油、スペアミント油、ツバキ油、パーム油、ユーカリ油、ローズマリー油などの油脂など油剤等が例示される。
【0070】
パウダー付着剤(油剤)を配合する場合の含有量は、エアゾール組成物2中0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、パウダー付着剤を配合する場合の含有量は、エアゾール組成物2中5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダー付着剤の含有量が0.05質量%未満の場合、パウダー21が飛散して付着しにくい、または、付着したパウダー21が剥がれ落ちやすい傾向がある。一方、パウダー付着剤の含有量が5質量%を超える場合、適用箇所においてベタつくなど、使用感が低下しやすい傾向がある。
【0071】
溶剤は、パウダー21の飛散防止、乾燥性や冷却効果を調整するなど、使用感を調整する目的で含有されてもよい。溶剤としては、精製水やイオン交換水などの水、エタノールやイソプロパノール、イソブチルアルコールなどの低級アルコールなどが例示される。
【0072】
溶剤を配合する場合の含有量は、エアゾール組成物2中0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤を配合する場合の含有量は、エアゾール組成物2中25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。溶剤の含有量が0.5質量%未満の場合、溶剤の効果が得られにくい傾向がある。一方、溶剤の含有量が25質量%を超える場合、パウダー21が流れ落ちやすく、乾燥性が悪くなる傾向がある。
【0073】
以上のような有効成分等を含む原液を調製する方法は特に限定されない。原液は、上記した有効成分やパウダー分散剤を、パウダー付着剤や溶剤などに混合することにより調製することができる。
【0074】
原液の含有量は、エアゾール組成物2中1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物2中30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が1質量%未満の場合、原液に含まれる有効成分等の効果が得られにくい傾向がある。一方、原液の含有量が30質量%を超える場合、パウダー21が適用箇所から流れ落ちやすく、乾燥性が悪くなりやすい傾向がある。
【0075】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明したが、本発明のエアゾール製品は、たとえば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0076】
(1)上記実施形態では、
図1〜
図3に示されるように、弁部材に設けられた貫通孔を、ステム(下部ステム)を上下に摺動させることにより開放または閉止する態様について例示した。しかしながら、本発明のエアゾール製品は、弁部材に設けられた貫通孔に代えて、定量室内に容器本体からエアゾール組成物を取り込むことのできるその他の孔を開放または閉止する態様が採用されてもよい。一例を挙げると、本発明は、貫通孔に代えて、ハウジングの下端開口部や、ディップチューブの上端に設けられた開口を、下部ステムの下端により開放または閉止する態様を採用してもよい。同様に、本発明のエアゾール製品は、下部ステムに代えて、貫通孔を開放または閉止することのできるその他の開閉部材が採用されてもよい。一例を挙げると、本発明は、下部ステムに代えて、ステムと連動する別部材(たとえばボール弁機構など)によって貫通孔を開放または閉止する態様が採用されてもよい。
【0077】
(2)上記実施形態では、内部に略L字状の管路であるボタン内噴射通路が形成され、他端に先端チップが装着された噴射ボタンを例示した。先端チップは、ボタン内噴射通路の他端に接続される治具であり、噴射通路の他端に形成された開口と対応する位置に、この開口よりもさらに径が小さな噴射孔が1個形成されている。これに代えて、本発明のエアゾール製品の先端チップは、エアゾール組成物を旋回させながら噴射孔に導入するためのメカニカルブレークアップ機構を備えてもよい。
【0078】
また、本発明のエアゾール製品の噴射ボタンは、噴射の勢いを弱め、噴射されるエアゾール組成物が適用箇所に集中し過ぎることを抑制するための構成が採用されてもよい。
図4は、本発明の一変形実施形態のエアゾール製品1aの模式的な断面図である。エアゾール製品1aは、噴射ボタン5aの構成が異なる以外は、第1の実施形態において上記したエアゾール製品1(
図1参照)の構成と同様である。そのため、同様の構成については同様の参照符号が付され、説明が適宜省略される。
【0079】
本変形実施形態の噴射ボタン5aには、噴射時にエアゾール組成物2が通過するボタン内噴射通路51aが形成されている。噴射ボタン5aは、ボタン内噴射通路51aの他端側に、略水平方向に先端チップ52aが挿し込まれている。先端チップ52aは、水平方向に貫通する複数の噴射孔53が形成された本体部52bと、本体部52bの外周縁から水平方向に延設され、噴射ボタン5aに挿し込まれる脚部52cとを有する。また、噴射ボタン5aは、先端チップ52aの取り付け位置において、水平方向に落ち窪んだ凹部54が形成されている。凹部54の内底面は、ボタン内噴射通路51aの他端が開口している。先端チップ52aが噴射ボタン5aに取り付けられた状態において、噴射ボタン5aには、凹部54と、先端チップ52aの本体部52bと、脚部52cとにより所定容積の空間(膨張室S1)が形成される。
【0080】
ここで、従来の液化石油ガスを使用し、パウダーを噴射するエアゾール製品の蒸気圧は、25℃で0.2MPa程度である。一方、本発明のように液化ガス中に特定量のハイドロフルオロオレフィンを含むエアゾール組成物2は、蒸気圧が高くなる傾向がある(たとえば0.3〜0.5MPa程度)。そのため、噴射ボタン5aの形状によっては、噴射の勢いが強すぎて皮膚などの適用箇所においてエアゾール組成物2に含まれるパウダーが跳ね返り、パウダーの付着率が低くなる傾向がある。また、この場合、噴射されたエアゾール組成物2中の液化ガスが適用箇所に到達しやすく、過冷却を引き起こす可能性がある。しかしながら、本変形実施形態の噴射ボタン5aによれば、膨張室S1において噴射の勢いが適宜抑制される。また、先端チップ52aには複数の噴射孔53が形成されている。そのため、エアゾール組成物2は、適宜分散して噴射され、適用箇所に集中しにくい。その結果、本変形実施形態のエアゾール製品1aによれば、適用箇所におけるエアゾール組成物2に含まれるパウダー21の付着率が高くなり、かつ、適度な冷却感が得られやすい。さらに、従来の燃焼性の高い液化石油ガスを使用するエアゾール製品は、噴射の勢いが抑制されると、燃焼性を評価する火炎長試験において、噴射の速度よりも火炎が伝わる速度のほうが速くなりやすく、火炎が噴射孔側に逆流する逆火現象が起こる可能性がある。しかしながら、本変形実施形態のエアゾールエアゾール組成物2は、液化ガス中に特定量のハイドロフルオロオレフィンを含んでおり、燃焼性が低い。そのため、本変形実施形態のエアゾール製品1aは、膨張室S1により噴射の勢いが抑制されても、逆火現象が起こらず安全である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0082】
<実施例1> 制汗剤
以下の配合を有するパウダーAを3.0gと、以下の配合を有する原液Aを1.7gと、液化ガス(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)/液化石油ガス=70/30(容量比))100.9g(100.0ml)とからなるエアゾール組成物を
図1に示されるエアゾールバルブを取り付けたアルミニウム製の容器本体にそれぞれ充填し、直径0.5mmの噴射孔が形成された噴射ボタンを取り付けてエアゾール製品を作製した。1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの圧力は0.42MPa(20℃)であり、液密度は0.57g/mL(20℃)であった。
【0083】
(パウダーAの処方)
クロロヒドロキシアルミニウム 75.0
タルク 25.0
合計 100.0(質量%)
(原液Aの処方)
ミリスチン酸イソプロピル 90.0
ソルビタンモノオレエート 7.0
ジメチルポリシロキサン 3.0
合計 100.0(質量%)
【0084】
<実施例2> 制汗剤
液化ガス(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン/液化石油ガス=80/20(容量比))107.0g(100.0ml)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、エアゾール製品を作製した。
【0085】
<比較例1>
液化ガス(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン/液化石油ガス=50/50(容量比))88.5g(100.0ml)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、エアゾール製品を作製した。
【0086】
<比較例2>
液化ガス(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン/液化石油ガス=95/5(容量比))116.0g(100.0ml)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、エアゾール製品を作製した。
【0087】
実施例1〜2および比較例1〜2で得られたそれぞれのエアゾール製品について、各組成の配合量および配合割合を表1に示す。また、実施例1〜2および比較例1〜2で得られたそれぞれのエアゾール製品について、以下の評価方法により、エアゾール組成物の噴射量およびパウダーの付着量を評価した。結果を表2に示す。
【0088】
<エアゾール組成物の噴射量およびパウダーの付着量の評価方法>
(a)エアゾール製品を25℃の恒温室内で1日間静置してパウダーを沈降させる。
(b)エアゾール製品を上下に3回振り、黒色に印刷した紙に15cmの距離から1回噴射する。
(c)噴射したエアゾール組成物の量(噴射量)を測定する。
(d)紙を乾燥させて重量を測定し、パウダーの付着量を算出する。
(e)(a)〜(d)を20回繰り返し、以下の評価基準にしたがってエアゾール組成物の噴射量およびパウダーの付着量をそれぞれ評価する。
(エアゾール組成物の噴射量の評価基準)
○:標準偏差が平均値の5%未満であった。
△:標準偏差が平均値の5%以上、10%未満であった。
×:標準偏差が平均値の10%以上であった。
(パウダーの付着量の評価基準)
○:標準偏差が平均値の5%未満であった。
△:標準偏差が平均値の5%以上10%未満であった。
×:標準偏差が平均値の10%以上であった。
【0089】
<実施例3> 高濃度制汗剤
以下の配合を有するパウダーBを6.0gと、以下の配合を有する原液Bを6.0gと、液化ガス(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)/液化石油ガス=70/30(容量比))101.0g(100.0ml)とからなるエアゾール組成物を
図1に示されるエアゾールバルブを取り付けたアルミニウム製の容器本体にそれぞれ充填し、直径0.5mmの噴射孔が形成された噴射ボタンを取り付けてエアゾール製品を作製した。1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの圧力は0.42MPa(20℃)であり、液密度は0.57g/mL(20℃)であった。
【0090】
(パウダーBの処方)
クロロヒドロキシアルミニウム 75.0
タルク 25.0
合計 100.0(質量%)
(原液Bの処方)
ジメチルポリシロキサン 90.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
ソルビタンモノオレエート 8.0
合計 100.0(質量%)
【0091】
<実施例4> 高濃度制汗剤
液化ガス(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン/液化石油ガス=80/20(容量比))107.0g(100.0ml)を用いた以外は実施例3と同様の方法によりエアゾール製品を作製した。
【0092】
<比較例3>
液化ガス(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン/液化石油ガス=50/50(容量比))88.5g(100.0ml)を用いた以外は実施例3と同様の方法によりエアゾール製品を製造した。
【0093】
<比較例4>
液化ガス(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン/液化石油ガス=95/5(容量比))116.0g(100.0ml)を用いた以外は実施例3と同様の方法によりエアゾール製品を作製した。
【0094】
実施例3〜4および比較例3〜4で得られたそれぞれのエアゾール製品について、各組成の配合量および配合割合を表3に示す。また、実施例3〜4および比較例3〜4で得られたそれぞれのエアゾール製品について、上記した評価方法により、エアゾール組成物の噴射量およびパウダーの付着量を評価した。結果を表4に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
表2に示されるように、60〜90容量%のハイドロフルオロオレフィンを含む液化ガスを用いた実施例1および実施例2のエアゾール製品は、繰り返し使用しても、エアゾール組成物の噴射量およびパウダーの付着量がほぼ一定であった。一方、ハイドロフルオロオレフィンの配合量が上記範囲を外れる液化ガスを用いた比較例1および比較例2のエアゾール製品は、繰り返し使用した場合、エアゾール組成物の噴射量およびパウダーの付着量が低下し、一定量のパウダーを噴射できないことが分かった。
【0100】
また、表4に示されるように、60〜90容量%のハイドロフルオロオレフィンを含む液化ガスを用いた実施例3および実施例4のエアゾール製品は、パウダーを多く含む場合であっても、繰り返し使用しても、エアゾール組成物の噴射量およびパウダーの付着量がほぼ一定であった。すなわち、これらエアゾール製品は、エアゾールバルブ内においてパウダーの凝集が効果的に抑制されることが分かった。