特開2015-231887(P2015-231887A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231887(P2015-231887A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】故障診断装置及び故障診断方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20151201BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   B66B5/00 E
   B66B5/02 S
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-118887(P2014-118887)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】石 井 洋 人
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA05
3F304BA14
3F304CA15
3F304ED18
(57)【要約】
【課題】エレベータ装置のカゴ内に設置された操作盤の釦のON故障を診断し、利用者の安全性を向上できる故障診断装置及び故障診断方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る故障診断装置は、動作状態取得部と、信号検出部と、診断部と、発報部と、を備える。動作状態取得部は、エレベータ装置のカゴの動作状態を取得する。信号検出部は、カゴ内に設けられた診断対象釦から発信される信号を検出する。診断部は、カゴの動作状態と診断対象釦から発信される信号の検出結果とに基づいて診断対象釦の故障を診断する。発報部は、診断部が故障と診断した場合、故障の発生を発報する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ装置のカゴの動作状態を取得する動作状態取得部と、
前記カゴ内に設けられた診断対象釦から発信される信号を検出する信号検出部と、
前記カゴの動作状態と前記診断対象釦から発信される信号の検出結果とに基づいて前記診断対象釦の故障を診断する診断部と、
前記診断部が故障と診断した場合、故障の発生を発報する発報部と、
を備える故障診断装置。
【請求項2】
前記診断部は、前記カゴの昇降中に、前記診断対象釦からON信号が発信された場合、前記診断対象釦を故障と診断する
請求項1に記載の故障診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記診断対象釦から所定時間以上継続してON信号が発信された場合、前記診断対象釦を故障と診断する
請求項2に記載の故障診断装置。
【請求項4】
前記診断対象釦には、前記カゴの扉を閉める戸閉釦、前記カゴに動物が乗っていることを通知するペット釦、及び暗証番号を入力可能にする開始釦の少なくとも1つが含まれる
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の故障診断装置。
【請求項5】
エレベータ装置のカゴの動作状態を取得し、
前記カゴ内に設けられた診断対象釦から発信される信号を検出し、
前記カゴの動作状態と前記診断対象釦から発信される信号の検出結果とに基づいて前記診断対象釦の故障を診断する
故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、故障診断装置及び故障診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータ装置のカゴ内に設置された操作盤の釦を押してONにした後、いわゆるセリという現象が発生して釦がOFF位置まで戻らなくなり、ON信号を発信し続けるON故障が発生することがあった。このようなセリによるON故障が検出可能に構成されていない場合、ON故障した釦が長時間押されたままの状態で、カゴの運転が継続されることがある。例えば、戸閉釦がON故障した状態でカゴの運転が継続された場合、カゴの停止中における戸開から戸閉までの時間が短くなり、利用者が扉に挟まれてけがをするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−294588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータ装置のカゴ内に設置された操作盤の釦のON故障を診断し、利用者の安全性を向上できる故障診断装置及び故障診断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る故障診断装置は、動作状態取得部と、信号検出部と、診断部と、発報部と、を備える。動作状態取得部は、エレベータ装置のカゴの動作状態を取得する。信号検出部は、カゴ内に設けられた診断対象釦から発信される信号を検出する。診断部は、カゴの動作状態と診断対象釦から発信される信号の検出結果とに基づいて診断対象釦の故障を診断する。発報部は、診断部が故障と診断した場合、故障の発生を発報する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】エレベータ装置の一例を示す概略構成図。
図2図1のエレベータ装置のカゴ内に設置された操作盤を示す概略構成図。
図3】一実施形態に係る故障診断装置の機能構成を示すブロック図。
図4図3の故障診断装置による故障診断方法を示すフローチャート。
図5図3の故障診断装置の動作を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、一実施形態に係る故障診断装置及び故障診断方法について、図面を参照して説明する。
【0008】
まず、本実施形態に係る故障診断装置及び故障診断方法が適用されるエレベータ装置の構成について説明する。図1は、エレベータ装置を示す概略構成図である。図1に示すように、エレベータ装置は、巻上機1と、カゴ2と、メインロープ3と、釣合重り4と、テールコード5と、制御盤6と、モータ線7とを備える。
【0009】
カゴ2は、メインロープ3によって釣合重り4と連結されており、巻上機1が回転駆動することにより昇降路内を昇降する。巻上機1は、モータ線7を介して制御盤6と接続されており、モータ線7を介して制御盤6から受信した駆動信号によって回転駆動される。すなわち、制御盤6は、駆動信号を巻上機1に発信するか否かにより巻上機1の回転駆動を制御して、カゴ2の昇降を制御する。また、制御盤6は、テールコード5を介してカゴ2と接続されている。制御盤6は、カゴ2内に設置された操作盤20からの信号を、当該テールコード5を介して受信し、受信した信号に応じてカゴ2の昇降を制御する。
【0010】
ここで、図2は、カゴ2内に設置された操作盤20を示す概略構成図である。図2に示すように、操作盤20は、戸閉釦21と、戸開釦22と、ペット釦23と、開始釦24と、行き先階釦25とを備えるが、操作盤20が備える釦はこれに限られない。
【0011】
戸閉釦21は、カゴ2の扉を閉める釦である。戸開釦22は、カゴ2の扉を開く釦である。ペット釦23は、カゴ2に犬や猫などの動物が乗っていることを、乗場で待機しているカゴ2の利用者に通知する釦である。開始釦24は、特定の階をカゴ2の行き先階として登録許可するための暗証番号の入力を可能にする釦である。行き先階釦25は、各階へのカゴ2の行き先階を登録する釦である。
【0012】
エレベータ装置の利用者がカゴ2内でこれらの釦を押している間、各釦からテールコード5を介して制御盤6にON信号が発信される。通常、これらの釦は、利用者が押すのをやめると、押される前の位置(OFF位置)に自動的に戻り、ON信号の発信が停止する。上述のON故障とは、利用者が釦を押すのをやめても釦がOFF位置まで戻らず、ON信号を発信し続けることをいう。
【0013】
次に、本実施形態に係る故障診断装置の機能構成について、図3を参照して説明する。図3は、故障診断装置の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、この故障診断装置は、動作状態取得部101と、信号検出部102と、故障診断部103と、発報部104とを備える。
【0014】
動作状態取得部101は、制御盤6から巻上機1へ発信されている駆動信号を検出することにより、カゴ2の動作状態を取得する。カゴ2の動作状態には、昇降中及び停止中などの状態が含まれる。動作状態取得部101は、例えば、カゴ2の加速度や巻上機1を駆動するモータの角速度を検出することにより、カゴ2の動作状態を取得してもよい。
【0015】
信号検出部102は、診断対象釦から発信されているON信号を検出する。診断対象釦とは、操作盤20が備える釦のうち、故障診断装置による故障診断の対象となる釦のことである。
【0016】
故障診断部103は、動作状態取得部101が取得したカゴ2の動作状態と、信号検出部102による診断対象釦のON信号の検出結果とに基づいて、診断対象釦のON故障を診断する。一般に、カゴ2の昇降中に、利用者が操作盤20の釦を押し続けることはないため、故障診断部103は、カゴ2の昇降中に診断対象釦のON信号が継続的に検出された場合、診断対象釦にON故障が発生していると診断する。故障診断部103による診断方法については後述する。
【0017】
発報部104は、故障診断部103により診断対象釦がON故障していると診断された場合、ON故障の発生をエレベータ装置の利用者や管理者に発報する。具体的には、発報部104は、故障診断部103から発報信号を受信することにより、ON故障の発生を発報する。発報部104として、例えば、カゴ2に設けられたブザーや、エレベータ装置の管理端末に組み込まれたディスプレイを用いることができる。
【0018】
故障診断装置のこれらの機能構成は、制御盤6に組み込まれていてもよく、例えば、制御盤6にプログラムを実行させることにより実現することができる。また、故障診断装置は、上記の各機能構成を実現するプログラムを実行する制御盤6とは別体のコンピュータ装置により構成することも可能である。この場合、故障診断装置は、制御盤6の制御信号や操作盤20が備える釦のON信号を検出可能に構成される。
【0019】
次に、本実施形態に係る故障診断方法について、図4を参照して説明する。図4は、故障診断方法を示すフローチャートである。
【0020】
図4に示すように、まず、動作状態取得部101は、カゴ2の動作状態を取得する(ステップS1)。具体的には、動作状態取得部101は、制御盤2から巻上機1へ発信される駆動信号を検出し、駆動信号を検出した場合、カゴ2の動作状態を昇降中と判定し、駆動信号が検出されない場合、カゴ2の動作状態を停止中と判定することにより、カゴ2の動作状態を取得する。なお、上述の通り、動作状態取得部101によるカゴ2の動作状態の取得方法はこれに限られない。
【0021】
次に、故障診断部103は、動作状態取得部101からカゴ2の動作状態を取得し、カゴ2が停止中の場合(ステップS2のNO)、故障診断処理を終了する。一方、故障診断部103は、カゴ2が昇降中の場合(ステップS2のYES)、信号検出部102からON信号の検出結果を取得する。
【0022】
故障診断部103は、信号検出部102がON信号を検出していない場合(ステップS3のNO)、故障診断処理を終了する。一方、故障診断部103は、信号検出部102がON信号を検出している場合(ステップS3のYES)、ON時間が閾値時間Tthを経過したか否か判定する(ステップS4)。
【0023】
ここでいうON時間とは、カゴ2の昇降中に、信号検出部102が継続的に診断対象釦のON信号を検出している時間のことをいう。また、閾値時間Tthは、ON故障が生じているか判定するために予め設定された時間であり、任意に設定可能である。
【0024】
故障診断部103は、ON時間が閾値時間Tthを経過していない場合(ステップS4のNO)、故障診断処理を終了する。一方、故障診断部103は、ON時間が閾値時間Tthを経過している場合(ステップS4のYES)、診断対象釦にON故障が発生していると診断し、発報部104に発報信号を発信する(ステップS5)。発報信号を受信した発報部104は、ON故障の発生を利用者や管理者に発報する(ステップS6)。
【0025】
このように、ON時間と閾値時間Tthとを比較してON故障を診断することにより、カゴ2の利用者が診断対象釦を押した場合に、ON故障の発生と誤診断することを防ぐことができる。これは、一般に、利用者がカゴ2の昇降中に釦を押す場合、押し続ける時間は短時間であることが予想されるためである。
【0026】
故障診断装置は、以上の処理をエレベータ装置の運行中に繰り返し実行することにより、診断対象釦のON故障を検出する。
【0027】
ここで、図5は、故障診断装置の動作を示すタイミングチャートである。図5において、診断対象釦は戸閉釦であり、発報部104はブザーである。まず、図5に示したカゴ2の動作状態について説明する。
【0028】
カゴ2は、時刻tにおいて、着床位置に停止して扉が開き始め、時刻tにおいて、扉が全開になる。その後、カゴ2の利用者によって時刻tに戸閉釦21が押され、カゴ2は時刻tに扉が全閉となって昇降を開始する。ここでは、時刻tに戸閉釦21が押された際、戸閉釦21にON故障が発生し、以降、戸閉信号(戸閉釦21のON信号)が発信され続けている例について説明する。
【0029】
カゴ2は、時刻tにおいて再び着床位置に停止して扉が開き始め、時刻tにおいて、扉が全開になる。その直後、時刻tより発信され続けている戸閉信号によって、カゴ2の扉は閉まり始める。この際の戸開時間T(=t−t)は、ON故障発生前の戸開時間T(=t−t)より短くなる。
【0030】
次に、上記のようなカゴ2の動作状態に対する故障診断装置の動作を説明する。時刻t〜tにおいて、故障診断装置は、カゴ2が停止中のため、ステップS1,S2を繰り返す。
【0031】
故障診断装置は、時刻tになると、カゴ2が昇降を開始するとともに(ステップS2のYES)、戸閉信号が発信されているため(ステップS3のYES)、故障診断部103による故障判定処理を開始する(ステップS4)。すなわち、故障診断装置は、時刻t以降、ステップS1〜S4の処理を繰り返し、戸閉信号のON時間が閾値時間Tthを経過したか否か判定する。図5の場合、ON時間は、時刻tからの経過時間となる。
【0032】
時刻t(=t+Tth)において、ON時間が閾値時間Tthを経過するため、時刻tを経過すると、故障診断部103は、ON故障が発生したと判定する(ステップS4のYES)。そして、時刻tにおいて、カゴ2が着床位置に停止すると、故障診断部103はブザーに発報信号を発信する(ステップS5)。発報信号を受信したブザーは鳴動し、カゴ2の利用者にON故障の発生を発報する(ステップS6)。
【0033】
以上説明した通り、本実施形態に係る故障診断装置及び故障診断方法によれば、カゴ2の操作盤20が備える診断対象釦のON故障を診断することができる。また、ON故障の発生を利用者や管理者に発報することができる。診断対象釦21が戸閉釦21である場合、ON故障の発生を発報することで、管理者に修理を促したり、利用者に注意喚起したりすることができるため、利用者が扉に挟まれる事故を抑制することができ、利用者の安全性を向上できる。
【0034】
なお、図5において、故障診断部103は、カゴ2が着床位置に停止した後に発報信号を送信しているが、ON故障が発生と判定したタイミング(時刻t)で発報信号を発信してもよい。また、上述の通り、診断対象釦は、戸閉釦21に限られず、戸開釦22、ペット釦23、開始釦24、及び行き先階釦25など、操作盤20に設けられた任意の釦とすることができる。
【0035】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:巻上機、2:カゴ、3:メインロープ、4:釣合重り、5:テールコード、6:制御盤、7:モータ線、20:操作盤、21:戸閉釦、22:戸開釦、23:ペット釦、24:開始釦、25:行き先階釦、101:動作状態取得部、102:信号検出部、103:故障診断部、104:発報部
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2015年6月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ装置のカゴの動作状態を取得する動作状態取得部と、
前記カゴ内に設けられた診断対象釦から発信される信号を検出する信号検出部と、
前記カゴの動作状態と前記診断対象釦から発信される信号の検出結果とに基づいて前記診断対象釦の故障を診断する診断部と、
前記診断部が故障と診断した場合、故障の発生を発報する発報部と、
を備える故障診断装置であって、
前記診断部は、前記カゴの利用者が前記診断対象釦を押していない間に前記診断対象釦からON信号が発信されるON故障を診断する故障診断装置。
【請求項2】
前記診断部は、前記カゴの昇降中に、前記診断対象釦からON信号が発信された場合、前記診断対象釦を故障と診断する
請求項1に記載の故障診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記診断対象釦から所定時間以上継続してON信号が発信された場合、前記診断対象釦を故障と診断する
請求項2に記載の故障診断装置。
【請求項4】
前記診断対象釦には、前記カゴの扉を閉める戸閉釦、前記カゴに動物が乗っていることを通知するペット釦、及び暗証番号を入力可能にする開始釦の少なくとも1つが含まれる
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の故障診断装置。
【請求項5】
エレベータ装置のカゴの動作状態を取得し、
前記カゴ内に設けられた診断対象釦から発信される信号を検出し、
前記カゴの動作状態と前記診断対象釦から発信される信号の検出結果とに基づいて前記診断対象釦の故障を診断する故障診断方法であって、
前記カゴの利用者が前記診断対象釦を押していない間に前記診断対象釦からON信号が発信されるON故障を診断する故障診断方法。