【解決手段】プリンタは、第1軸を中心に回動する回動部と、回動部から延設される中継部と、中継部に設けられ、第2軸を中心に回転し媒体を搬送するローラと、ローラに対向する位置に設けられる支持部と、からなり、回動に基づいてローラが媒体を付勢し、ローラと支持部との間を媒体が搬送されるように構成される。
前記媒体が第1の紙および第2の紙を含む場合に、前記摩擦部材と前記第2の紙の下面との間の摩擦力は、(i)前記第1の紙の下面と前記第2の紙の上面との間の摩擦力よりも大きく、かつ、(ii)前記ローラと前記第1の紙の上面との間の摩擦力よりも小さい
請求項2に記載のプリンタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、紙の載置面が移動することにより紙がローラに押し付けられる構造を有する給紙装置における給紙不良を防止する技術である。したがって、駆動源からの動力によってローラが紙に押し付けられる構造を有する給紙装置(オートコンプ方式)に特許文献1の技術を適用することは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、駆動源からの動力によってローラが紙に押し付けられる場合に、給紙不良の発生を減少させることができる給紙装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る給紙装置は、第1軸を中心に回動する回動部と、前記回動部から延設される中継部と、前記中継部に設けられ、第2軸を中心に回転し媒体を搬送するローラと、前記ローラに対向する位置に設けられる支持部と、からなり、前記回動に基づいて前記ローラが前記媒体を付勢し、前記ローラと前記支持部との間を前記媒体が搬送されるように構成される。
【0009】
例えば、前記支持部は、摩擦部材と弾性部材とからなってもよい。
【0010】
例えば、前記媒体が第1の紙および第2の紙を含む場合に、前記摩擦部材と前記第2の紙の下面との間の摩擦力は、(i)前記第1の紙の下面と前記第2の紙の上面との間の摩擦力よりも大きく、かつ、(ii)前記ローラと前記第1の紙の上面との間の摩擦力よりも小さくてもよい。
【0011】
この構成によれば、複数の紙が第1の紙および第2の紙を含む2枚の紙である場合であっても、適切な摩擦力の関係が維持される。つまり、弾性部材および摩擦部材により、載置面に載置される紙が2枚になった場合における給紙不良を低減することができる。
【0012】
例えば、前記弾性部材は、前記摩擦部材よりも硬さの値が小さい部材であってもよい。
【0013】
この構成によれば、弾性部材が摩擦部材よりも硬さの値が小さいので、摩擦部材および弾性部材が複数の紙を介してローラから押されたときに、弾性部材が変形することにより摩擦部材を下に移動させることができる。
【0014】
例えば、前記弾性部材は、ばねであってもよい。
【0015】
この構成によれば、弾性部材がはねであるので、摩擦部材および弾性部材が複数の紙を介してローラから押されたときに、弾性部材が変形することにより摩擦部材を下に移動させることができる。
【0016】
例えば、前記弾性部材の一端は、前記載置面に接続され、前記摩擦部材および前記弾性部材が前記媒体を介して前記ローラから押されたときに、前記弾性部材の他端が下に移動してもよい。
【0017】
この構成によれば、弾性部材の一端が載置面に接続され、弾性部材の他端が移動可能に構成される。つまり、弾性部材は、片持ち構造によって実現される。したがって、摩擦部材および弾性部材が複数の紙を介してローラから押されたときに、弾性部材の他端が下に移動することによりする摩擦部材を下に移動させることができる。
【0018】
例えば、前記プリンタは、さらに、前記回動部を回動させる駆動源の回転軸体に連結されたフライホイールを備えてもよい。
【0019】
この構成によれば、駆動源の回転軸体にフライホイールが連結される。したがって、駆動源によって生じる回転力を安定してローラに伝達することができる。また、伝達機構のバックラッシュ(がたつき)によって動力がローラまで伝達されない間にも、フライホイールを回転させることができる。その後、動力がローラに伝達される状態になったときに、駆動源からの動力に加えて、フライホイールの慣性力がローラに伝達されるので、ローラの駆動力を向上させることができる。したがって、ローラと第1の紙の上面との間の摩擦力が増加した場合に、第1の紙を給紙できないことを減少させることができる。
【0020】
例えば、前記駆動源は、前記フライホイールと前記回動部との間に配置されてもよい。
【0021】
この構成によれば、駆動源を、フライホイールと伝達機構との間に配置することができる。したがって、伝達機構のバックラッシュに関わらず、フライホイールを回転させることができる。
【0022】
例えば、前記ローラの幅は、前記弾性部材の幅よりも広く、前記ローラの外周面には、前記弾性部材に対向する位置に周方向に延びる凹部が形成されてもよい。
【0023】
この構成によれば、ローラの外周面の摩擦部材と対向する位置に、周方向に延びる凹部を形成することができる。したがって、適切な凹部を選択することにより、ローラが摩擦部材に紙を押し付ける力を調整することができる。つまり、給紙不良の発生を減少させるための調整を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様に係るプリンタは、駆動源からの動力によってローラが紙に押し付けられる場合に、給紙不良の発生を減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0027】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0028】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る給紙装置は、駆動源からの動力によってローラを紙に押し付けるとともにローラを回転させる。そして、ローラが紙を押す力の変化によって給紙不良が発生することを抑制するために、給紙装置は、載置面のローラに対向する位置に設けられた摩擦部材を下方から支持する弾性部材を備える。
【0029】
[給紙装置の構成]
次に、本実施の形態に係る給紙装置の構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る給紙装置の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る給紙装置の伝達機構を示す斜視図である。
図3は、実施の形態1に係る給紙装置のローラ、摩擦部材および弾性部材近傍の拡大断面図である。具体的には、
図3において、(a)は、載置面に紙が載置されていない状態を示し、(b)は、載置面に載置された紙が搬送される状態を示す。
【0030】
本実施の形態に係る給紙装置100は、プリンタに含まれており、給紙トレイ11の載置面11aに積載された媒体(例えば複数の紙)を1枚ずつ順に搬送する。具体的には、給紙装置100は、給紙トレイ11の載置面11aに積載された複数の紙のうちの最上位の紙を残りの紙から分離し、分離された1枚の最上位の紙を搬送する。
【0031】
給紙装置100は、
図1〜
図3に示すように、駆動源101と、伝達機構110と、ローラ120と、摩擦部材130と、弾性部材140とを備える。
【0032】
駆動源101は、伝達機構110を介してローラ120を駆動する。具体的には、駆動源101は、例えばモータである。
【0033】
伝達機構110は、駆動源101からの動力を伝達することにより、ローラ120を回転させるとともにローラ120を複数の紙のうちの最上位の紙の上面に押し付ける。
【0034】
ここでは、伝達機構110は、第1歯車111と、第2歯車112と、第3歯車113と、第1シャフト114と、第4歯車115と、第5歯車116と、第6歯車117と、第7歯車118と、第2シャフト119とを備える。なお、以下において、右回りおよび左回りは、X軸の正の方向から負の方向にみた回転方向を表す。
【0035】
載置面11aに載置された紙を搬送する際に、駆動源101は左回りに回転する。第1歯車111は、駆動源101の回転軸体に連結されているので、当該回転軸体とともに左回りに回転する。第2歯車112および第3歯車113は、第1歯車111とともに回転する。その結果、第3歯車113は左回りに回転する。
【0036】
第3歯車113は、第1シャフト114の一端に連結されている。したがって、第3歯車113が左回りに回転することにより第1シャフト114も左回りに回転する。
【0037】
第1シャフト114は、第1軸を中心に回動する回動部の一例である。第1シャフト114は、紙の搬送方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に延びる棒状の部材である。第1シャフト114は、載置面11aの上方に配置される。
【0038】
第4歯車115は、第1シャフト114の他端に連結されている。したがって、第1シャフト114が左回りに回転すれば、第4歯車115も左回りに回転する。第5歯車116、第6歯車117および第7歯車118は、第4歯車115とともに回転する。その結果、第7歯車118は右回りに回転する。
【0039】
第7歯車118は、第2シャフト119に連結されている。したがって、第7歯車が右回りに回転すれば、第2シャフト119も右回りに回転(自転)する。
【0040】
第4歯車115と、第5歯車116と、第6歯車117と、第7歯車118と、第2シャフト119とを含む部材の組み合わせは、回動部から延設される中継部の一例である。
【0041】
第2シャフト119は、紙の搬送方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に延びる棒状の部材である。第2シャフト119は、載置面11aの上方に配置され、第1シャフト114の下方に配置される。第2シャフト119の両端には、ローラ120が連結されている。したがって、第2シャフト119が右回りに回転すれば、ローラ120も右回りに回転する。
【0042】
また、第2シャフト119は、第1シャフト114が左回りに回転することにより、第1シャフト114を中心に左回りに回転(公転)する。したがって、ローラ120は、載置面11aに載置された紙に押し付けられる。つまり、載置面11aに複数の紙が積載されている場合には、ローラ120は、最上位の紙の上面に押し付けられる。
【0043】
ローラ120は、第2軸を中心に回転し、媒体(例えば紙)を搬送する。第1シャフト114の回動に基づいて、ローラ120が媒体を付勢する。媒体は、ローラ120と摩擦部材130との間を搬送される。
【0044】
具体的には、ローラ120は、ピックアップローラである。ローラ120は、駆動源101からの動力によって載置面11aに積載された複数の紙のうちの最上位の紙の上面に押し付けられ、当該最上位の紙の上面と接触した状態で回転する。その結果、ローラ120は、当該最上位の紙をY軸方向に搬送する。つまり、ローラ120は、複数の紙のうちの最上位の紙を残りの紙から分離する。言い換えると、ローラ120は、複数の紙のうちの最上位の紙のみをピックアップする。そして、ローラ120は、ピックアップされた紙を搬送する。
【0045】
具体的には、ローラ120は、内周部材121と、外周部材122とを備える。内周部材121は、第2シャフト119と連結される。内周部材121は、ホイールと呼ばれる場合もある。内周部材121には、例えば、樹脂などの軽量かつ硬質な材料が用いられる。
【0046】
外周部材122は、内周部材121を周方向に囲む帯状の部材である。外周部材122は、タイヤと呼ばれる場合もある。外周部材122は、複数の紙のうちの最上位の紙の上面との間に適当な摩擦力を発生させる。具体的には、外周部材122には、例えばゴムなどの摩擦係数が高い材料が用いられる。
【0047】
摩擦部材130は、載置面11aのローラ120に対向する位置に設けられ、複数の紙のうちの最下位の紙の下面と接触する。そして、摩擦部材130は、当該最下位の紙の下面との間に適当な摩擦力を発生させる。
【0048】
ここでは、摩擦部材130は、紙の搬送方向(Y軸方向)に延びるシート状の部材である。摩擦部材130の厚みは、例えば0.4mmである。
【0049】
弾性部材140は、摩擦部材130を下方から支持する。つまり、弾性部材140は、摩擦部材130の下に配置される。ここでは、弾性部材140は、紙の搬送方向(Y軸方向)に延びるシート状の部材である。弾性部材の厚みは、例えば1mmである。
【0050】
本実施の形態では、弾性部材140は、摩擦部材130よりも硬さの値が小さい部材(つまり、柔らかい部材)である。言い換えると、上下方向(Z軸方向)において、弾性部材140のヤング率は、摩擦部材130のヤング率よりも小さい。したがって、上方から力が加えられた場合に、弾性部材140の上下方向の厚みの変化は、摩擦部材130の上下方向の厚みの変化よりも大きい。その結果、摩擦部材130および弾性部材140が複数の紙を介してローラ120から押されたときに、弾性部材140が変形することにより摩擦部材130が下方に移動する。
【0051】
具体的には、弾性部材140は、例えば、スポンジ、比較的柔らかいゴムなどによって形成される。一方、摩擦部材130は、例えば、樹脂、コルク、ゴムなどによって形成される。
【0052】
また、摩擦部材130および弾性部材140は、載置面11aに形成された凹部11bに設置される。このとき、凹部11bは、摩擦部材130の上面が載置面11aよりも上に位置するように形成される。摩擦部材130および弾性部材140は、支持部の一例である。
【0053】
[給紙装置の動作]
次に、以上のように構成された給紙装置100の動作について
図3および
図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態1に係る給紙装置における摩擦力の関係を説明するための図である。なお、以下で説明する摩擦力は、静止摩擦力に関する。また、載置面11aに積載される複数の紙20が、2枚の紙(第1の紙21および第2の紙22)である場合について説明する。
【0054】
上述したように、駆動源101からの動力は、伝達機構110によってローラ120に伝達される。その結果、ローラ120は、
図3の(b)に示すように、第1の紙21の上面に押し付けられるとともに右回りに回転する。
【0055】
複数の紙20が第1の紙21および第2の紙22のみを含む場合に、ローラ120、複数の紙20、および摩擦部材130において、
図4に示すような押付力および摩擦力が発生する。
【0056】
具体的には、ローラ120は、押付力Fpickで複数の紙20に押し付けられる。その結果、ローラ120と第1の紙21の上面との間には、摩擦力Ftireが発生する。さらに、第1の紙21の下面と第2の紙22の上面との間には、摩擦力Fpaperが発生する。また、第2の紙22の下面と摩擦部材130との間には、摩擦力Fpadが発生する。
【0057】
このとき、摩擦力Ftireが摩擦力Fpaperよりも大きければ、ローラ120は、空回りせずに、第1の紙21を搬送することができる。つまり、給紙装置100は、いずれの紙も搬送することができないことを防ぐことができる。言い換えると、給紙装置100は、ミスピックを防止することができる。
【0058】
さらに、摩擦力Fpadが摩擦力Fpaperよりも大きければ、第1の紙21と第2の紙22とを分離することができる。つまり、給紙装置100は、第1の紙21と第2の紙22とが重なった状態で第1の紙21と第2の紙22とが一緒に搬送されることを防ぐことができる。言い換えると、給紙装置100は、重送を防止することができる。
【0059】
また、第1の紙21が搬送された後に、第2の紙22のみが載置面11aに残った場合に、摩擦力Ftireが摩擦力Fpadよりも大きければ、ローラ120は、空回りせずに、第2の紙22を搬送することができる。つまり、給紙装置100は、最後に残った1枚の紙を搬送できないことを防ぐことができる。言い換えると、給紙装置100は、最後の1枚の紙のミスピックを防止することができる。
【0060】
以上のように、摩擦力の関係がFtire>Fpad>Fpaperを満たせば、給紙装置100は、給紙不良(重送およびミスピック)を防ぐことができる。
【0061】
しかしながら、本実施の形態に係る給紙装置100のように、駆動源101からの動力によってローラ120が複数の紙20に押し付けられる場合には、複数の紙20の高さが減少したときにローラ120が複数の紙20を押す力(押付力Fpick)が増加し、摩擦力の関係がFtire>Fpad>Fpaperを満たさなくなる場合がある。具体的には、複数の紙20の高さが減少した場合、紙の搬送される方向と逆の方向にローラ120が移動し、押付力Fpickが増加する。この現象は、食い込み現象と呼ばれる。
【0062】
このように食い込み現象が発生した場合、押付力Fpickとともに摩擦力Ftireが増加するために、駆動源101に高い駆動力が要求される。また、駆動源101が高い駆動力を有していても、押付力Fpickの増加によって、摩擦力の関係(Ftire>Fpad>Fpaper)が崩れてしまう。
【0063】
そこで、本実施の形態では、弾性部材140が摩擦部材130を下方から支持する。つまり、摩擦部材130が上方から押し付けられたときに、弾性部材140は変形して摩擦部材130の上面を下降させる。すなわち、弾性部材140は、押付力Fpickの増加とともに、摩擦部材130と第2の紙22の接触面を下降させる。
【0064】
その結果、複数の紙20の高さが減少した場合に、押付力Fpickが増加することを抑制することができる。つまり、弾性部材140は、食い込み現象の発生を抑制することができる。すなわち、弾性部材140は、摩擦力の関係(Ftire>Fpad>Fpaper)を維持し、給紙不良の発生を減少させることができる。
【0065】
言い換えると、給紙装置100では、複数の紙20が第1の紙21および第2の紙22を含む2枚の紙である場合に、摩擦部材130と第2の紙22の下面との間の摩擦力Fpadは、(i)第1の紙21の下面と第2の紙22の上面との間の摩擦力Fpaperよりも大きく、かつ、(ii)ローラ120と第1の紙21の上面との間の摩擦力Ftireよりも小さい。
【0066】
[効果]
以上のように、本実施の形態に係る給紙装置100によれば、弾性部材140が摩擦部材130を下方から支持することができる。そして、弾性部材140は、ローラ120が第1の紙21を押す力の変化に応じて、摩擦部材130の位置を変化させることができる。したがって、弾性部材140は、ローラ120が第1の紙21を押す力の変化を緩和することができる。その結果、給紙装置100は、ローラ120を安定して回転させることができる。また、給紙装置100は、ローラ120、紙および摩擦部材130の間の摩擦力を適切な大きさに保つことができる。
【0067】
具体的には、駆動源101からの動力によってローラ120が複数の紙20に押し付けられる場合には、複数の紙20の高さが減少したときにローラ120が第1の紙21を押す力が増加する場合がある。このような場合に弾性部材140がなければ、ローラ120と第1の紙21の上面との間の摩擦力も増加するため、駆動源101に大きな動力が要求される。一方、弾性部材140があれば、第1の紙21の上面の位置が下がり、ローラ120と第1の紙21の上面との間の摩擦力の増加が緩和される。その結果、駆動源101に要求される動力の増加が抑制され、給紙装置100は、ローラ120を安定して回転させることができる。
【0068】
また、ローラ120が第1の紙21を押す力が増加した場合、ローラ120と第1の紙21との間の摩擦力、複数の紙の間の摩擦力、および、摩擦部材130と第2の紙22との間の摩擦力の関係が不適切になる場合がある。例えば、第1の紙21と第2の紙22との間の摩擦力が、摩擦部材130と第2の紙22との間の摩擦力よりも大きくなる場合がある。このような場合には、第2の紙22は、第1の紙21と一緒に搬送されてしまう。しかしながら、弾性部材140があれば、ローラ120が第1の紙21を押す力の増加を緩和することができるので、給紙装置100は、適切な摩擦力の関係を維持することができる。
【0069】
以上のように、給紙装置100は、駆動源101からの動力によってローラ120が複数の紙20に押し付けられる場合に発生する特有の現象(複数の紙20の高さの減少に依存する、ローラ120が複数の紙20を押す力の増加)に対して、給紙不良の発生を減少させることができる。
【0070】
また、本実施の形態に係る給紙装置100によれば、複数の紙20が第1の紙21および第2の紙22を含む2枚の紙である場合であっても、適切な摩擦力の関係が維持される。つまり、弾性部材140が摩擦部材130を下方から支持することにより、載置面11aに載置される紙が2枚になった場合における給紙不良を低減することができる。
【0071】
また、本実施の形態に係る給紙装置100によれば、弾性部材140が摩擦部材130よりも柔らかいので、摩擦部材130および弾性部材140が複数の紙20を介してローラ120から押されたときに、弾性部材140が変形することにより摩擦部材130を下に移動させることができる。
【0072】
(変形例1)
次に、実施の形態1の変形例1について説明する。本変形例に係る給紙装置では、弾性部材がばねである点が実施の形態1と主として異なる。以下に、本変形例に係る給紙装置について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0073】
図5は、実施の形態1の変形例1に係る給紙装置のローラ、摩擦部材および弾性部材近傍の拡大断面図である。
図5において、
図3と同一または類似する構成については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0074】
本変形例に係る給紙装置100Aは、弾性部材140Aを備える。弾性部材140Aは、ばねであり、摩擦部材130を下方から支持する。Z軸方向において、弾性部材140Aのヤング率は、摩擦部材130のヤング率より小さい。
【0075】
なお、
図5では、弾性部材140Aはコイルばねであるが、これに限定されない。弾性部材140Aは、例えば、板ばねであってもよい。
【0076】
具体的には、摩擦部材130は、受け皿141A上に載置される。受け皿141Aは、弾性部材140Aに支持される。したがって、摩擦部材130からローラ120から押された場合、弾性部材140Aが縮み、摩擦部材130は下方に移動する。
【0077】
以上のように、本変形例に係る給紙装置100Aによれば、弾性部材140Aがはねであるので、摩擦部材130および弾性部材140Aが複数の紙20を介してローラ120から押されたときに、弾性部材140Aが変形することにより摩擦部材130を下に移動させることができる。
【0078】
(変形例2)
次に、実施の形態1の変形例2について説明する。本変形例に係る給紙装置では、弾性部材の構造が実施の形態1と主として異なる。以下に、本変形例に係る給紙装置について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0079】
図6は、実施の形態1の変形例2に係る給紙装置のローラ、摩擦部材および弾性部材近傍の拡大断面図である。
図7は、実施の形態1の変形例2に係る摩擦部材および弾性部材の拡大平面図である。
図6において、
図3と同一または類似する構成については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0080】
本変形例に係る給紙装置100Bは、弾性部材140Bを備える。弾性部材140Bの第1端141Bは、載置面11aに接続される。一方、弾性部材140Bの第2端142Bは、載置面11aに接続されない。つまり、弾性部材140Bは、片持ち構造を有する。片持ち構造において、第1端141Bは固定端であり、第2端142Bは自由端である。
【0081】
したがって、摩擦部材130および弾性部材140Bが複数の紙を介してローラ120から押されたときに、弾性部材140Bの第2端142Bが下に移動することにより摩擦部材130が下方に移動する。
【0082】
具体的には、弾性部材140Bは、載置面11aと一体に形成されている。弾性部材140Bの第1端141Bを除く周囲には、空隙143Bが形成されている。つまり、弾性部材140Bのうち第1端141Bのみが載置面11aに接続されている。
【0083】
以上のように、本変形例に係る給紙装置100Bによれば、弾性部材140Bの一端(第1端141B)が載置面に接続され、弾性部材140Bの他端(第2端142B)が移動可能に構成される。つまり、弾性部材140Bは、片持ち構造によって実現される。したがって、摩擦部材130および弾性部材140Bが複数の紙を介してローラから押されたときに、弾性部材140Bの他端が下に移動することによりする摩擦部材130を下に移動させることができる。
【0084】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る給紙装置は、駆動源の回転軸体にフライホイールを備える点が、実施の形態1に係る給紙装置と主として異なる。以下に、本実施の形態に係る給紙装置について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0085】
図8は、実施の形態2に係る給紙装置の外観を示す斜視図である。
図8において、
図1と同一または類似する構成については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0086】
本実施の形態に係る給紙装置200は、駆動源101の回転軸体102に連結されたフライホイール103を備える。
【0087】
本実施の形態では、フライホイール103は、円柱形状である。フライホイール103の中心軸に、駆動源101の回転軸体102が貫通している。また、フライホイール103は、伝達機構110が連結された側とは逆側に配置される。つまり、駆動源101は、フライホイール103と伝達機構110との間に配置される。また、フライホイール103は、駆動源101の近傍に配置される。
【0088】
以上のように、本実施の形態に係る給紙装置200によれば、駆動源101の回転軸体102にフライホイール103が連結される。したがって、駆動源101によって生じる回転力を安定してローラ120に伝達することができる。また、伝達機構110のバックラッシュ(がたつき)によって動力がローラ120まで伝達されない間にも、フライホイール103を回転させることができる。その後、動力がローラ120に伝達される状態になったときに、駆動源101からの動力に加えて、フライホイール103の慣性力がローラ120に伝達されるので、ローラ120の駆動力を向上させることができる。したがって、ローラ120と第1の紙の上面との間の摩擦力が増加した場合に、第1の紙を給紙できないことを減少させることができる。
【0089】
また、本実施の形態に係る給紙装置200によれば、駆動源101を、フライホイール103と伝達機構110との間に配置することができる。したがって、伝達機構110のバックラッシュに関係なく、フライホイール103を回転させることができる。
【0090】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。本実施の形態では、ローラの外周面に周方向に延びる凹部が形成されている点が、実施の形態1および2と異なる。以下に、本実施の形態に係る給紙装置について、実施の形態1および2と異なる点を中心に説明する。
【0091】
図9は、実施の形態3に係る給紙装置300のローラ320および摩擦部材130の拡大平面図である。
図9において、他図と同一または類似する構成については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0092】
ローラ320の外周面320aには、摩擦部材130と対向する位置に周方向に延びる凹部320bが形成されている。逆に言えば、ローラ320の外周面320aには、摩擦部材130と対向しない位置に周方向に延びる凸部320cが形成されている。凹部320bの径は、凸部320cの径よりも小さい。
【0093】
例えば、ローラ320の外周部材322の厚みを回転軸方向(X軸方向)に変化させることにより、ローラ320の外周面320aに凹部320bおよび凸部320cが形成される。また例えば、ローラ320の内周部材321に凹部および凸部を形成することにより、ローラ320の外周面320aに凹部320bおよび凸部320cが形成されてもよい。
【0094】
以上のように、本実施の形態に係る給紙装置300によれば、ローラ320の外周面320aの摩擦部材130と対向する位置に、周方向に延びる凹部320bを形成することができる。したがって、適切な凹部320bを選択することにより、ローラ320が摩擦部材130に紙を押し付ける力を調整することができる。つまり、給紙不良の発生を減少させるための調整を容易にすることができる。例えば、ローラ320の外周部材322を交換して凹部の形状あるいは大きさを変更することにより、紙の種類あるいは給紙装置300の周囲環境(例えば温度、湿度など)などに対応して給紙不良の発生を減少させることが可能となる。
【0095】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態に係る給紙装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も本発明の範囲内に含まれる。
【0096】
例えば、上記各実施の形態における伝達機構の構成は一例であり、これに限定されない。つまり、駆動源からの動力によって、ローラが紙に押し付けられ、かつ、ローラが回転されれば、どのように動力が伝達されても構わない。
【0097】
また、給紙装置は、プリンタに含まれていたが、これに限られない。例えば、給紙装置は、ファクシミリ装置、複写機あるいは複合機に含まれてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態において、プリンタは、レーザプリンタであったが、これに限られない。例えば、給紙装置を含むプリンタは、インクジェットプリンタであってもよい。
【0099】
なお、上記各実施の形態において、摩擦部材は、紙の搬送方向(Y軸方向)に延びるシート状の部材であったが、これに限られない。つまり、摩擦部材は、載置面においてローラと対向すればよく、その形状は限定されない。例えば、摩擦部材は、紙の搬送方向に並べられた複数の円形状の部材であってもよい。
【0100】
なお、上記各実施の形態において、摩擦部材は、載置面に形成された凹部に配置されていたが、必ずしも凹部に配置される必要はない。例えば、摩擦部材は、載置面上に配置されてもよい。
【0101】
なお、上記各実施の形態において、給紙装置は、2つのローラを含んでいたが、ローラの数はこれに限定されない。例えば、ローラの数は、1つであってもよいし、3以上であってもよい。
【0102】
なお、上記各実施の形態において、1つのローラに対して1つの摩擦部材が設けられていたが、1つのローラに対して複数の摩擦部材が設けられてもよい。この場合、ローラの外周面には、複数の摩擦部材に対向する位置に複数の凹部が形成されてもよい。例えば、ローラの回転軸方向(X軸方向)の両端部に対向する位置に2つの摩擦部材が設けられた場合、ローラの外周面の両端部に2つの凹部が形成されればよい。言い換えると、ローラの外周面の中央部に凸部が形成されればよい。
【0103】
なお、上記実施の形態3における凹部の形状は一例であり、これに限定されない。例えば、上記実施の形態3では、凹部の両側にはそれぞれ凸部が形成されていたが、凹部の片側にのみ凸部が形成されてもよい。
【0104】
なお、上記各実施の形態におけるローラの外周部材の構造は、一例であり、これに限定されない。例えば、ローラの外周部材は、必ずしもローラの内周部材の全周を覆う必要はない。つまり、ローラの外周部材は、周方向に欠如する部分が存在してもよい。すなわち、ローラの外周部材は、無端ベルト形状に限定されない。また、ローラの外周面に凹部を形成するための他の部材がローラの外周部材の周りに装着されてもよい。
【0105】
なお、上記各実施の形態おけるローラの外周面の形状は一例であり、これに限定されない。例えば、ローラの外周面には、摩擦係数を増加させるために回転軸方向に延びる複数の溝が形成されてもよい。
【0106】
なお、上記各実施の形態では、複数の紙が載置面に載置される場合を例に説明したが、給紙装置は、1枚の紙が載置面に載置された場合でも当該紙を搬送できることは言うまでもない。