【解決手段】(a)過酸化水素又は水中で過酸化水素を発生する化合物0.005質量%以上、10質量%以下(過酸化水素として)、(b)特定の漂白活性化剤0.05質量%以上、7.5質量%以下、(c)アルカリ剤、(d)特定のアルキルグリコシドを含有する、カビ取り剤組成物。
(c)成分が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属のケイ酸塩及びアルカノールアミンから選ばれる1以上のアルカリ剤である、請求項1記載のカビ取り剤組成物。
請求項1〜4の何れか1項記載のカビ取り剤組成物及び水を含有する液体カビ取り剤組成物又は請求項5もしくは6記載の2剤型カビ取り剤の組成物Aと組成物Bとを混合して調製された液体カビ取り剤組成物をカビ汚れに塗布する工程(1)、前記液体カビ取り剤組成物がカビ汚れに塗布された状態を5分間以上維持する工程(2)、前記液体カビ取り剤組成物を水ですすぐ工程(3)、を有するカビ汚れの除去方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、(b)成分の特定の漂白活性化剤の安定化が実現する。また、本発明では、(d)成分のアルキルグリコシドを添加することによって、(b)成分の特定の漂白活性化剤から有機過酸が生成する反応を阻害することなく、有機過酸の分解を抑制できる。そのため、漂白に使うことが可能な有機過酸の量が向上する。
一般に、過酸化水素〔(a)成分〕は酸化剤として作用するが、過酸化水素と有機過酸前駆体とを併用することで、より酸化力の高い有機過酸が生じるため、しばしば過酸化水素と有機過酸前駆体とを併用することが行われる。有機過酸前駆体は漂白活性化剤としても知られていたが、生成した有機過酸は反応性が高いためカビ取り剤としては有効であるが、有機過酸どうしが反応して失活する反応も起こるため、一部はカビ取り効果を示す前に失活してしまう。そのため、有機過酸を有効に利用することによってカビ取り効果を向上させる技術が望まれていた。本発明では、特定の漂白活性化剤〔(b)成分〕とアルキルグリコシド〔(d)成分〕を併用することで、カビ取り効果を大幅に向上させることが可能となる。これは、(d)成分が存在することによって、生成した有機過酸の失活が抑制され、漂白に使用される有機過酸量が向上したためである。この際、(d)成分は、有機過酸の存在している反応場を変化させると考えられる。具体的には、(d)成分によって、有機過酸同士の衝突によって引き起こされる有機過酸の分解反応を起こしにくい立体配座を有機過酸に取らせることが可能となっているものと推測される。この結果、本発明によれば、有効な有機過酸量を向上させることによって、従来技術では除去することが困難であったカビ汚れが多い対象物やカビ汚れと微生物や有機物由来の汚れが複合した対象物を高い性能で漂白することが可能となる。
【0020】
〔カビ取り剤組成物〕
<(a)成分>
(a)成分は、過酸化水素又は水中で過酸化水素を発生する化合物である。(a)成分は過酸化水素が好ましい。水中で過酸化水素を発生する化合物としては、過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩、過ホウ酸ナトリウム等の過ホウ酸塩が挙げられる。
【0021】
カビ取り効果を高める観点から、本発明のカビ取り剤組成物は、(a)成分を過酸化水素として0.005質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に0.5質量%以上、更に1質量%以上、更に1.5質量%以上、そして、(b)成分の保存安定性を高める観点から、10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは6.5質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0022】
<(b)成分>
(b)成分は、下記一般式(I)で表される漂白活性化剤である。
【0024】
〔式中、R
1は炭素数6以上、15以下の炭化水素基を示し、Zはアニオン性基を示す。〕
【0025】
本発明のカビ取り剤組成物中での(b)成分の安定性を更に高める観点から、一般式(I)におけるR
1は、炭素数6以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは11以上である。また、過酸化水素と有効に反応し、効率よく有機過酸を生成するために、一般式(I)におけるR
1は、炭素数15以下であり、好ましくは13以下であり、より好ましくは12以下である。本発明のカビ取り剤組成物中での(b)成分の安定性を更に高め、また、過酸化水素と有効に反応し、効率よく有機過酸を生成するために、一般式(I)におけるR
1は、炭素数11であることがより好ましい。一般式(I)におけるR
1が、炭素数9以上、好ましくは10以上、より更に好ましくは11以上であり、そして、炭素数15以下であり、好ましくは13以下であり、より好ましくは12以下であることは、(b)成分が水を含有する液体組成物、例えば水を含有する1剤型の液体カビ取り剤組成物や2剤型カビ取り剤の組成物Aに配合される場合の、(b)成分の安定性を高める観点でより好ましい。
【0026】
一般式(I)におけるR
1は、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。また、一般式(I)におけるR
1は、直鎖又は分岐鎖が好ましく、直鎖がより好ましい。また、一般式(I)におけるR
1は、1級が好ましい。一般式(I)におけるR
1は、直鎖1級の炭素数11のアルキル基が好ましい。
【0027】
一般式(I)におけるZはアニオン性基であり、−SO
3M又はCOOMであることが好ましい。ここで、Mは、有機又は無機の陽イオンを示す。Mの陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、炭素数3以上、15以下、更に炭素数7以上、15以下のアルキルアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられ、アルカリ金属イオンが好ましい。
【0028】
カビ取り効果を高める観点から、本発明のカビ取り剤組成物は、(b)成分を0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上含有し、そして、(b)成分の保存安定性を高める観点から、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有する。
【0029】
なお、本発明において、(b)成分の含有量は、一般式(I)におけるZのアニオン性基がナトリウム塩となっている化合物に換算した量を採用するものとする。従って、例えば、(b)成分が、一般式(I)中のZが−SO
3M又はCOOMの化合物である場合、Mの陽イオンがナトリウムイオンである化合物に換算した量を、(b)成分の含有量とする。
【0030】
<(c)成分>
(c)成分はアルカリ剤である。(c)成分は、本発明のカビ取り剤組成物が後述のpHとなるような量で用いられるのが好ましい。
(c)成分は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属のケイ酸塩及びアルカノールアミンから選ばれる1以上のアルカリ剤が好ましい。
(c)成分は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンからなる群から選択される1以上のアルカリ剤がより好ましい。
カビ取り効果を高める観点から、(c)成分は、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属の炭酸塩からなる群から選択される1以上のアルカリ剤が更に好ましく、アルカリ金属の水酸化物から選択される1以上のアルカリ剤がより更に好ましい。
(c)成分は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選択される1以上のアルカリ剤がより好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される1以上のアルカリ剤が更に好ましい。
【0031】
<(d)成分>
(d)成分は、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0032】
R
2−(OR
3)
x−G
y (II)
〔式中、R
2は、炭素数4以上、20以下のアルキル基もしくはアルケニル基又は炭素数6以上、20以下のアリール基を示し、R
3は炭素数2以上、4以下のアルキレン基を示し、Gは還元糖に由来する残基を示す。xは平均値0以上、6以下の数、yは平均値0.5以上、10以下の数を示す。〕
【0033】
カビ取り効果を高める観点から、一般式(II)におけるR
2は、炭素数4以上、20以下のアルキル基、又は水酸基で置換されていてもよいフェニル基であることが好ましく、炭素数4以上、20以下のアルキル基がより好ましい。一般式(II)におけるR
2は、直鎖アルキル基が好ましく、R
2の炭素数は6以上が好ましく、更に7以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、11以上がより更に好ましく、そして、18以下が好ましく、15以下がより好ましく、14以下が更に好ましく、13以下がより更に好ましい。R
2の炭素数は12であることが最も好ましい。
【0034】
効率よく有機過酸を生成するために、一般式(II)におけるR
3は、炭素数2以上、4以下のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、より好ましくはエチレン基である。一般式(II)におけるxは平均値0以上、6以下の数であり、好ましくは0以上、3以下、より好ましくは0である。
【0035】
効率よく有機過酸を生成するために、一般式(II)におけるGは還元糖に由来する残基である。
還元糖としては、アルドースとケトースの何れであっても良く、また、炭素数3以上、6以下のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースを挙げることができる。アルドースとして具体的にはアピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができ、ケトースとしてはフルクトースを挙げることができる。本発明ではこれらの中でもアルドペントース又はアルドヘキソースが好ましく、アルドヘキソースがより好ましく、グルコースがより更に好ましい。
【0036】
一般式(II)におけるyは平均値0.5以上、10以下、好ましくは1以上、5以下、より好ましくは1以上、2以下の数を示す。
【0037】
本発明のカビ取り剤組成物は、カビ取り効果向上の観点から、(b)成分と(d)成分の質量比が、(b)成分/(d)成分で0.1以上、20以下であることが好ましい。(b)成分/(d)成分の質量比は、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.3以上、より更に好ましくは1.5以上であり、そして、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは11以下、より更に好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
【0038】
本発明のカビ取り剤組成物は、水を含有することが好ましい。水の含有量は、組成物中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0039】
本発明のカビ取り剤組成物は、硬質表面用として好適である。更には、本発明のカビ取り剤組成物は、硬質表面用のカビ取り剤組成物又は硬質表面用のカビ取り洗浄剤組成物として用いることが好ましい。また、浴室用のカビ取り剤組成物又は浴室用のカビ取り洗浄剤組成物として用いることがより好ましい。すなわち、本発明のカビ取り剤組成物は、硬質表面用カビ取り剤組成物、硬質表面用カビ取り洗浄剤組成物、浴室用カビ取り剤組成物、又は浴室用カビ取り洗浄剤組成物として使用できる。
【0040】
本発明のカビ取り剤組成物の一例として、(a)過酸化水素0.005質量%以上、10質量%以下、(b)成分0.05質量%以上、7.5質量%以下、(c)成分、(d)成分、及び水を含有する、液体カビ取り剤組成物が挙げられる。
【0041】
<その他の成分、物性等>
本発明のカビ取り剤組成物は、その他成分として、(d)成分以外の界面活性剤、香料、(c)成分以外のpH調整剤、金属イオン封鎖剤、可溶化剤、浸透剤、懸濁化剤、研磨剤、顔料等の任意成分を含有することが出来る。
【0042】
本発明のカビ取り剤組成物は、液体であることが好ましい。更に、水を含有する液体カビ取り剤組成物であることが好ましい。本発明のカビ取り剤組成物が、水を含有する液体組成物である場合、20℃のpHは、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上であり、そして、好ましくは13以下、より好ましくは12.8以下、更に好ましくは12.5以下である。
【0043】
〔2剤型カビ取り剤〕
本発明の2剤型カビ取り剤は、(a)過酸化水素〔(a)成分〕0.01質量%以上、20質量%以下、(b)成分0.1質量%以上、15質量%以下、及び水を含有し、20℃におけるpHが1以上、7以下である組成物Aと、(c)成分、及び水を含有し、20℃におけるpHが9以上である組成物Bとを、組成物Aと組成物Bとを分離して保持する容器に充填してなり、組成物A及び組成物Bの少なくとも一方が(d)成分を含有し、使用時に組成物Aと組成物Bを混合して液体カビ取り剤組成物として用いられる、2剤型カビ取り剤である。
【0044】
(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分の具体例や好ましい態様などは、それぞれ、本発明のカビ取り剤組成物で述べたものと同じである。
【0045】
(a)成分である過酸化水素は、組成物Aに含有される。本発明の組成物Aは、カビ取り効果を高める観点から、(a)成分を、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上含有する。また、組成物Aは、(b)成分の保存安定性を高める観点から、(a)成分を、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは13質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下含有する。
【0046】
(b)成分は、組成物Aに含有される。本発明の組成物Aは、カビ取り効果を高める観点から、(b)成分を、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、より更に好ましくは6質量%以上含有する。また、組成物Aは、(b)成分の保存安定性を高める観点から、(b)成分を、20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは9質量%以下含有する。
【0047】
(c)成分は、組成物Bに含有される。組成物Bは、カビ取り効果を高める観点から、(c)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上含有し、そして、カビ取り効果を高める観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下含有する。
【0048】
(d)成分は、組成物A及び組成物Bの少なくとも一方に含有される。
本発明の2剤型カビ取り剤は、カビ取り効果向上の観点から、組成物Aと組成物Bの全量を基準として、(b)成分と(d)成分の質量比が、(b)成分/(d)成分で0.1以上、20以下であることが好ましい。(b)成分/(d)成分の質量比は、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.3以上、より更に好ましくは1.5以上であり、そして、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは11以下、より更に好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
【0049】
<その他の成分、物性等>
本発明の2剤型カビ取り剤は、その他成分として、(d)成分以外の界面活性剤、香料、(c)成分以外のpH調整剤、金属イオン封鎖剤、可溶化剤、浸透剤、懸濁化剤、研磨剤、顔料等の任意成分を含有することが出来る。これらの成分は、組成物A及び組成物Bの一方又は両方に配合できる。
【0050】
本発明の2剤型カビ取り剤において、組成物Aの20℃におけるpHは、(b)成分の分解を抑制するために、1以上、7以下である。組成物Aの20℃におけるpHは、好ましくは2以上、より好ましくは2.2以上、更に好ましくは2.5以上であり、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。
【0051】
本発明の2剤型カビ取り剤において、組成物Bの20℃におけるpHは、カビ取り効果を高める観点から、9以上である。組成物Bの20℃におけるpHは、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、更に好ましくは12以上、更に好ましくは12.5以上、更に好ましくは13以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは13.8以下、更に好ましくは13.6以下である。
【0052】
本発明の2剤型カビ取り剤は、(a)成分の過酸化水素と、(c)成分のアルカリ成分とを、非接触状態で保っておき、使用時において混合するものである。この場合の非接触状態に保持する方法は特に限定されるものではなく、例えば、下記の分包型のような剤型にすることができる。
【0053】
分包の方法は特に限定されるものではなく、ボトルや小袋を適宜組み合わせて包装することができる。ボトルや小袋の材質としては、一般に漂白洗浄剤用の容器に使用されるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン等を挙げることができる。また、これらのプラスチックには、必要に応じて、顔料、帯電防止剤、遮光剤、紫外線吸収剤を配合することができる。ボトルや小袋は、樹脂層を重ねたり、更にアルミニウム層を設けたりした多層構造にすることができ、シリカ、アルミニウム、アルミナ等を蒸着したものを用いることができる。また、ピンホール、逆止弁等のガス抜き手段、他の容器に移し替える場合のストロー状の注ぎ手段、更に直接ボトルにトリガー等の吐出容器を取り付けることができる。
【0054】
本発明の2剤型カビ取り剤は、硬質表面用のカビ取り剤又は硬質表面用のカビ取り洗浄剤として用いることが好ましい。浴室用のカビ取り剤又は浴室用のカビ取り洗浄剤として用いることがより好ましい。すなわち、本発明の2剤型カビ取り剤は、硬質表面用2剤型カビ取り剤、硬質表面用2剤型カビ取り洗浄剤、浴室用2剤型カビ取り剤、又は浴室用2剤型カビ取り洗浄剤として使用できる。
本発明の2剤型カビ取り剤は、本発明の液体カビ取り剤組成物の調製に好適に用いられる。
【0055】
本発明の2剤型カビ取り剤は、組成物A及び組成物Bの何れも形態が液体である。
組成物A及び組成物Bは、それぞれ、水を含有する。
水の含有量は、組成物A中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、より更に好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは83質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
また、水の含有量は、組成物B中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
【0056】
〔カビ汚れの除去方法〕
本発明は、上記本発明のカビ取り剤組成物及び水を含有する液体カビ取り剤組成物又は上記本発明の2剤型カビ取り剤の組成物Aと組成物Bとを混合して調製された液体カビ取り剤組成物をカビ汚れに塗布する工程(1)、前記液体カビ取り剤組成物がカビ汚れに塗布された状態を5分間以上維持する工程(2)、前記液体カビ取り剤組成物を水ですすぐ工程(3)、を有するカビ汚れの除去方法に関する。
【0057】
工程(1)で用いる液体カビ取り剤組成物は、20℃のpHは、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上であり、そして、好ましくは13以下、より好ましくは12.8以下、更に好ましくは12.5以下である。
【0058】
工程(1)では、液体カビ取り剤組成物、好ましくは本発明の2剤型カビ取り剤の組成物Aと組成物Bとを混合して調製された本発明の液体カビ取り剤組成物を、カビ汚れに塗布する。塗布する方法は、スプレーにより噴霧する方法、スプレーにより泡状に付着させる方法、ノズルにより液を付着させる方法、刷毛により液を付着させる方法が挙げられる。塗布量は、100cm
2に対して0.1ml以上、10ml以下であることが好ましく、0.2ml以上が好ましく。0.3ml以上がより好ましく、0.5ml以上がさらに好ましく、また9ml以下が好ましく、6ml以下が好ましく、4ml以下がより好ましく、3ml以下がさらに好ましい。
【0059】
工程(2)では、前記液体カビ取り剤組成物がカビ汚れに塗布された状態を5分間以上、好ましくは7分以上、より好ましくは10分以上、そして、好ましくは120分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは45分以下維持する。
【0060】
工程(3)では、前記液体カビ取り剤組成物を水ですすぐ。水は、流水を用いることが好ましい。すすぎの終了は、泡が視認されなくなった時点とすることができる。
【実施例】
【0061】
表2の実施例1〜4、比較例1〜2に示す組成の組成物A及び組成物Bを調製した。なお、組成物A、組成物Bの各pHは、4質量%水酸化ナトリウム水溶液又は1質量%硫酸水溶液を用いて調整した。組成物A、組成物Bを2剤型カビ取り剤とし、それらを用いて、下記のカビ汚れ洗浄試験、漂白活性化剤安定性試験、及び有機過酸安定性試験を実施した。
【0062】
<カビ汚れ洗浄試験>
組成物Aと組成物Bを等量(体積比1:1)混合し、液体カビ取り剤組成物を得た。該カビ取り剤組成物のpH(20℃)は、何れも11であった。また、組成物Aと組成物Bを等量混合した直後の組成物中の各成分の含有量は、表2中の数値(質量%)の1/2となる。
【0063】
クラドスポリウム(Cladosporium)属細菌を素焼きタイルに接種し、温度30℃、湿度100%RHで60日間培養したものをカビ発生タイルとし、カビ取り効果を比較した。
【0064】
カビ発生タイルに上記液体カビ取り剤組成物を12μl滴下し、直径約1cmとし、25℃で30分放置後、水洗、風乾した後、色差計(日本電色工業製SE6000)を用いて明度(L)値を測定し、次式によりカビ除去率を算出した。
【0065】
【数1】
【0066】
<漂白活性化剤安定性試験>
漂白活性化剤の安定性試験を、表2の組成物Aの調製直後と40℃で7日間保存したものとを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析により行った。
*使用機器
・HITACHI ELIETE LaChrome
ポンプ:L−2130、検出器:L−2455、オーブン:L−2300、サンプラー:L−2200
【0067】
検量線は漂白活性化剤〔(b)成分〕0.06gをHPLC用メタノール50mlに溶解させたものをサンプラーによって2、5、10、15μl採取し分析した結果を用いた。
サンプル(組成物A)は、配合直後のものと40℃で7日間保存したものを、それぞれ10μl採取し、HPLC用メタノール1mlに溶解させた。
分析溶媒は、HPLC用アセトニトリル:水が6:4(体積%)の液体に過塩素酸ナトリウムが14.095g/lとなるように調整した溶液を流速1.0ml/min.で流して使用した。
検出は波長230nmで行った。オーブン温度は40℃で、使用カラムは一般財団法人化学物質評価研究機構のL−colomn ODS、4.6×150nm、粒径5μmである。サンプルはサンプラーによって15μl採取して分析した。
漂白活性化剤の残存率は次式により算出した。
【0068】
【数2】
【0069】
<有機過酸安定性試験>
上記液体カビ取り剤組成物の調製直後(混合10秒後)と6分後(混合6分後)の有機過酸の生成量をHPLCによって測定し、有機過酸の残存率を求めた。
*使用機器
・HITACHI ELIETE LaChrome
ポンプ:L−2160U、検出器:L−2400U、オーブン:L−2300U、サンプラー:L−2200U、INJECTION VALVE
【0070】
組成物Aを5ml、組成物Bを5ml混合し1分間撹拌した液体カビ取り剤組成物を有機過酸の検量線作成に用いた。[スターラーピース(10mm×4mm)、スクリュー管No.4(株式会社マルエム社製)]
この液体カビ取り剤組成物の有機過酸濃度は、混合液4mlを水150mlに溶解させたサンプルに1質量%カタラーゼ水溶液を1ml添加し、過酸化水素を分解させた後、20質量%硫酸水溶液1mlと10質量%ヨウ化カリウム水溶液5mlを加えた後、未反応のヨウ化カリウムを1/10規定チオ硫酸ナトリウム水溶液によって滴定することにより求めた。
0.05mol/lリン酸水溶液とHPLC用アセトニトリルを1:1の質量比で混合した溶媒10mlに反応混合液0.25mlを溶かしたものをHPLCサンプラーによって4、40、80μl採取し、表1の条件で2〜3分の間に現れる有機過酸のピーク面積を求め検量線とした。
【0071】
組成物Aと組成物Bを等量混合したサンプルの有機過酸量は、組成物Aと組成物Bを等量混合し10秒及び6分後に、撹拌した液100μlを0.05mol/lリン酸水溶液とHPLC用アセトニトリルを1:1の質量比で混合した溶媒2mlに溶かしたものを20μl採取し分析し、上記検量線より求めた。HPLC測定のグラジエント条件を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
検出は波長230nmで行った。オーブン温度は40℃で、使用カラムはUnisonのUK−C18HT、4.6mm×75mm、粒径3μmである。有機過酸残存率は次式により算出した。
【0074】
【数3】
【0075】
<用いた成分>
以下に、表2の組成物A、組成物Bに用いた成分を示す。
【0076】
【化3】
【0077】
・非イオン界面活性剤1: C
12H
25−O−[CH
2CH
2O]
8−H
・キレート剤:デイクエスト2010(商品名、サーモフォスジャパン株式会社製、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸)
【0078】
【化4】
【0079】
【表2】
【0080】
表2中、d−1が添加されていない比較例1に比べ、d−1を添加した実施例1では、有機過酸の残存率が高くなり、カビ除去率も大きくなっている。また、d−2、d−3を添加した実施例2、実施例3においても同様のことが伺える。しかし非イオン界面活性剤1を添加した比較例2では過酸残存量、カビ除去率ともに変化が見られなかった。このことから(d)成分の添加によって、有機過酸の失活抑制による有効な有機過酸の量が増大したことでカビ除去率が向上したことがわかる。
【0081】
次に、組成物Aに非イオン界面活性剤1の代わりにd−1を用いて配合した実施例4では、過酸残存量及びカビ除去率が向上しており、漂白活性化剤の保存安定性も良好であることがわかる。これより、d−1は組成物A、組成物Bどちらに配合してもよく、かつ非常に有効な成分であることがわかる。