特開2015-232113(P2015-232113A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2015-232113脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルの製造方法、及びポリマー成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232113(P2015-232113A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルの製造方法、及びポリマー成形体
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/91 20060101AFI20151201BHJP
   C08G 63/02 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   C08G63/91
   C08G63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-55870(P2015-55870)
(22)【出願日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-99383(P2014-99383)
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】宮原 香織
(72)【発明者】
【氏名】根本 太一
(72)【発明者】
【氏名】新井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晋
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔太
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 義仁
(72)【発明者】
【氏名】加門 祐樹
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA01
4J029AB01
4J029AD01
4J029AE02
4J029AE03
4J029AE06
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA08
4J029BA09
4J029BF26
4J029EG01
4J029EG02
4J029EG03
4J029EG04
4J029EG05
4J029EG06
4J029EG07
4J029EG08
4J029EG09
4J029EG10
4J029EH01
4J029EH02
4J029EH03
4J029FA02
4J029FA03
4J029FC03
4J029FC07
4J029FC08
4J029FC45
4J029JA091
4J029JB171
4J029JC021
4J029JC142
4J029JC162
4J029JC292
4J029JC322
4J029JF221
4J029JF321
4J029JF331
4J029JF371
4J029JF471
4J029KA01
4J029KB06
4J029KD03
4J029KE02
4J029KE05
4J029KH01
(57)【要約】
【課題】 従来の方法を用いて、脂肪族ポリエステルをアミド結合により鎖延長させた場合には、反応系の粘度上昇により反応の進行が制限されるので、脂肪族ポリエステルを充分に高分子量化することができない。
【解決手段】 脂肪族ポリエステルは、1×10−3モル%以上1×10−1モル%以下のアミド結合部を含有し、50万以上200万以下の数平均分子量を有する。これにより、例えば、薄膜フィルムの成形材の用途で、脂肪族ポリエステルを用いることが可能となるなど、脂肪族ポリエステルの用途が広がる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド結合を有しており、
エステル結合部及びアミド結合部の総量に対する前記アミド結合部の含有量が1×10−3モル%以上1×10−1モル%以下であり、
数平均分子量が50万以上200万以下であることを特徴とする脂肪族ポリエステル。
【請求項2】
残存モノマー量が5000質量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリエステル。
【請求項3】
イエローインデックス(YI)値が15以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステル。
【請求項4】
乳酸単位からなる直鎖状のポリマー鎖を有しており、
当該脂肪族ポリエステルの絶対分子量(M)と極限粘度(η)とから作成したマルク−ホウインクプロットから求められる、下記式(1)で定義される係数αが0.90以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル。
η=KMα ・・・ (1)
(式中、ηは極限粘度、Kは定数、Mは絶対分子量を表す。)
【請求項5】
オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物、及び、カルボジイミド化合物から選択される少なくとも一種の化合物と、脂肪族ポリエステルと、を圧縮性流体中で反応させることにより、前記脂肪族ポリエステルを鎖延長させることを特徴とすることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記化合物は、モノマーであることを特徴とする請求項5に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
前記化合物は、ポリマーであることを特徴とする請求項5に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記圧縮性流体は二酸化炭素であり、
低極性溶媒の存在下、前記脂肪族ポリエステルを鎖延長させることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
前記低極性溶媒は、常温で気体であることを特徴とする請求項8に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項10】
前記低極性溶媒は、ジメチルエーテルであることを特徴とする請求項8又は9に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステルを含有することを特徴とするポリマー成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド結合を有する脂肪族ポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪族ポリエステルは、縫合糸用の繊維、生体適合材料用のシート、化粧品用の粒子、或いは、レジ袋用のフィルムなどに用いられている。脂肪族ポリエステルには、ポリ乳酸のように生分解性を有するものもあり、近年、環境負荷低減やその機能性の高さから需要が高まってきている。脂肪族ポリエステルを製造する方法としては、開環重合性モノマーを溶融状態で反応させる方法が知られている。例えば、ラクチドを開環重合してポリ乳酸を製造する方法として、触媒としてオクチル酸錫を用い、反応温度を195℃として、溶融状態でラクチドを反応させて重合させる方法が提案されている(特許文献1参照)。この提案の製造方法によると重量平均分子量が18万程度のポリ乳酸が得られる。
【0003】
また、圧縮性流体中、有機触媒の存在下、開環重合性モノマーを重合させることによりポリ乳酸を製造する方法が開示されている(特許文献2,6参照)。この方法により得られるポリマーの分子量は、55,000程度であることが開示されている。
【0004】
ところで、ポリマーを薄膜フィルムの成形に用いるような場合には、成形材としてのポリマーが高い粘度、あるいは高い分子量を有していること、また、成形時に粘度変化が少ないことが要求される。このため、上記の各方法により脂肪族ポリエステルを製造した場合には、粘度、あるいは分子量が低すぎて、薄膜フィルムの成形材などの用途に適さないことがあった。
【0005】
脂肪族ポリエステルを高分子量化する方法としては、脂肪族ポリエステルを鎖延長剤と反応させて鎖延長する方法が知られている。例えば、環状エステルの開環(共)重合体をオキサゾリン化合物との鎖延長反応により高分子量化することで、重量平均分子量23万程度の高分子量脂肪族ポリエステルが得られることが開示されている(特許文献3参照)。また、脂肪族ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とをアミド化触媒の存在下で鎖延長反応により高分子量化することで、重量平均分子量15万程度の高分子量脂肪族ポリエステル系樹脂が得られることが開示されている(特許文献4参照)。更に、生分解性ポリエステル樹脂を、ポリカルボジイミド化合物と反応させて鎖延長することにより、重量平均分子量13万程度の高分子量脂肪族ポリエステルが得られることが開示されている(特許文献5参照)。なお、これらの鎖延長剤により脂肪族ポリエステルを鎖延長した場合には、脂肪族ポリエステルと鎖延長剤との結合部にアミド結合が形成されるので、ポリマーを高粘度化することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法を用いて、脂肪族ポリエステルをアミド結合により鎖延長させた場合には、反応系の粘度上昇により反応の進行が制限されるので、脂肪族ポリエステルを充分に高分子量化することができないという課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、アミド結合を有しており、エステル結合部及びアミド結合部の総量に対する前記アミド結合部の含有量が1×10−3モル%以上1×10−1モル%以下であり、数平均分子量が50万以上200万以下であることを特徴とする脂肪族ポリエステルである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の脂肪族ポリエステルは、1×10−3モル%以上1×10−1モル%以下のアミド結合部を含有し、50万以上200万以下の数平均分子量を有する。これにより、例えば、薄膜フィルムの成形材の用途で、脂肪族ポリエステルを用いることが可能となるなど、脂肪族ポリエステルの用途が広がるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、温度と圧力に対する物質の状態を示す一般的な相図である。
図2図2は、圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。
図3図3は、連続式の重合工程の一例を示す系統図である。
図4図4は、連続式の重合工程の一例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。本発明の一実施形態に係る脂肪族ポリエステルは、アミド結合を有しており、エステル結合部及びアミド結合部の総量に対するアミド結合部の含有量が1×10−3モル%以上1×10−1モル%以下であり、数平均分子量が50万以上200万以下であることを特徴とする。なお、エステル結合部とは、脂肪族ポリエステル主鎖における各エステル結合を形成する各エステル基を示す。アミド結合部とは、脂肪族ポリエステル主鎖における各アミド結合を形成する各アミド基を示す。このような脂肪族ポリエステルの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物、及び、カルボジイミド化合物から選択される少なくとも一種の化合物と、脂肪族ポリエステルと、を圧縮性流体中で反応させることにより、脂肪族ポリエステルを鎖延長させる方法が挙げられる。また、本発明の一実施形態によると、得られた脂肪族ポリエステルを成形して成形体とすることもできる。
【0011】
以下、上記の脂肪族ポリエステルの製造に用いられるモノマー、開始剤、その他の各種原材料、触媒、圧縮性流体、及び、鎖延長剤について順に説明する。
【0012】
<モノマー>
モノマーとしては、生成するポリマー組成物に生分解性機能を付与するために、脂肪族エステルを用いるのが好ましく、中でも、開環重合性モノマーを用いるのが好ましい。脂肪族ポリエステルを用いることにより、ポリマー生成物としてポリエステルが得られることになる。
【0013】
開環重合性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カルボニル基を環内に有する開環重合性モノマーが好ましい。カルボニル基は、電気陰性度の高い酸素が炭素とπ結合してなる。カルボニル基では、π結合電子がひきつけられることにより、酸素が負に分極し、炭素が正に分極している。そのため、カルボニル基は、反応性が高い。また、圧縮性流体が二酸化炭素の場合、カルボニル基が二酸化炭素の構造と似ていることから、二酸化炭素と生成したポリマー生成物との親和性は高くなると推測される。これらの作用により、圧縮性流体による、生成したポリマーの可塑化の効果は高くなる。カルボニル基を環内に有する開環重合性モノマーとしては、エステル結合を有する開環重合性モノマーがより好ましい。なお、環状とは円形に限らず、四角形などの多角形でもよい。このような、開環重合性モノマーとしては、例えば、環状エステルが挙げられる。
【0014】
−環状エステル−
環状エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される化合物のL体及び/又はD体を脱水縮合して得られる環状二量体が好ましい。
R−C*−H(−OH)(−COOH) 一般式(1)
ただし、一般式(1)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、「C*」は、不斉炭素を表す。
【0015】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、乳酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシブタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシペンタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシヘキサン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシヘプタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシオクタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシノナン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシデカン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシウンデカン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシドデカン酸の鏡像異性体、などが挙げられる。これらの中でも、乳酸の鏡像異性体が反応性、又は入手容易性の点から特に好ましい。
【0016】
また、環状エステルとしては、例えば、脂肪族のラクトンなどが挙げられる。脂肪族のラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−カプロラクトン、δ−ドデカノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクタイド、などが挙げられる。これらの中でも、ε−カプロラクトンが、反応性及び入手性の観点から特に好ましい。これらの開環重合性モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
<開始剤>
開始剤は、開環重合により得られるポリマー生成物の分子量を制御するために用いられる。開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール系であれば、脂肪族アルコールのモノ、又は多価アルコールのいずれでもよく、また飽和、不飽和のいずれであっても構わない。開始剤としては、例えば、モノアルコール、多価アルコール、乳酸エステルなどが挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、などが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジアルコール;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、トリエタノールアミン、などが挙げられる。乳酸エステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、ポリカプロラクトンジオール、ポリテトラメチレングリコールのような末端にアルコール残基を有するポリマー生成物を開始剤に使用することもできる。これにより、ジブロック共重合体や、トリブロック共重合体などが合成される。
【0019】
重合工程における開始剤の使用量は、目標とする分子量に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、モノマーとしてL−ラクチドを用いる場合、ラクチドの供給量99.9モル乃至99.95モルに対し、0.1モル乃至0.05モルが好ましく、より好ましくはL−ラクチド99.917モルに対し、0.083モルである。不均一に重合が開始されるのを防ぐために、開環重合性モノマーが触媒に触れる前にあらかじめ開環重合性モノマーと開始剤とをよく混合しておくことが好ましい。
【0020】
<その他の各種原材料>
続いて、その他の各種原材料について説明する。その他の各種原材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、添加剤が挙げられる。
【0021】
(添加剤)
また、開環重合に際しては、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤の例としては、界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、防曇剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、無機粒子、各種フィラー、熱安定剤、難燃剤、結晶核剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、天然物、離型剤、可塑剤、その他類似のものがあげられる。必要に応じて重合反応後に重合停止剤(安息香酸、塩酸、燐酸、メタリン酸、酢酸、乳酸等)を用いることもできる。上記添加剤の配合量は、添加する目的や添加剤の種類によって異なるが、好ましくは、ポリマー組成物100質量部に対して0質量部以上5質量部以下である。
【0022】
界面活性剤としては、圧縮性流体に溶融し、かつ圧縮性流体と開環重合性モノマーの双方に親和性を有するものが好適に用いられる。このような界面活性剤を使用することで、重合反応を均一に進めることができ、生成物の分子量分布を狭くしたり、粒子状のポリマーを得やすくなる等の効果を期待できる。界面活性剤を用いる場合、圧縮性流体に加えても、開環重合性モノマーに加えても良い。例えば、圧縮性流体として二酸化炭素を用いた場合には、親二酸化炭素基と親モノマー基を分子内に持つ界面活性剤が使用される。このような界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤が挙げられる。
【0023】
安定剤としては、エポキシ化大豆油、カルボジイミド等などが用いられる。酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソールなどが用いられる。防曇剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリルなどが用いられる。フィラーとしては、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、結晶核剤としての効果を持つクレイ、タルク、シリカなどが用いられる。顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、群青等などが用いられる。
【0024】
<触媒>
続いて、本実施形態の管状成形物の製造に用いられる触媒について説明する。触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機触媒、金属触媒、などが挙げられる。
【0025】
−有機触媒−
有機触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属原子を含まず、開環重合性モノマーの開環重合反応に寄与し、開環重合性モノマーとの活性中間体を形成した後、アルコールとの反応で脱離、再生するものが好ましい。
【0026】
例えば、エステル結合を有する開環重合性モノマーを重合する場合、有機触媒としては、塩基性を有する求核剤として働く(求核性の)化合物が好ましく、窒素原子を含有する化合物がより好ましく、窒素原子を含有する環状化合物が特に好ましい。このような化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、環状モノアミン、環状ジアミン(例えば、アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物など)、グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物、窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物、N−ヘテロサイクリックカルベン、などが挙げられる。なお、カチオン系の有機触媒は、開環重合に用いられるが、この場合、ポリマー主鎖から水素を引き抜く(バック−バイティング)ため、分子量分布が広くなり高分子量の生成物を得にくい。
【0027】
環状モノアミンとしては、例えば、キヌクリジン、などが挙げられる。環状ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン、などが挙げられる。アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ジアザビシクロノネン、などが挙げられる。グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物としては、例えば、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG)、などが挙げられる。窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物としては、例えば、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン(PPY)、ピロコリン、イミダゾール、ピリミジン、プリン、などが挙げられる。N−ヘテロサイクリックカルベンとしては、例えば、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)、などが挙げられる。これらの中でも、立体障害による影響が少なく求核性が高い、或いは、減圧除去可能な沸点を有するという理由により、DABCO、DBU、DPG、TBD、DMAP、PPY、ITBUが好ましい。
【0028】
これらの有機触媒のうち、例えば、DBUは、室温で液状であって沸点を有する。このような有機触媒を選択した場合、得られたポリマー生成物を減圧処理することで、ポリマー生成物中から有機触媒をほぼ定量的に取り除くことができる。なお、有機触媒の種類や除去処理の有無は、生成物の使用目的等に応じて決定される。
【0029】
−金属触媒−
金属触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スズ系化合物、アルミ系化合物、チタン系化合物、ジルコニウム系化合物、アンチモン系化合物、などが挙げられる。スズ系化合物としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル酸錫、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ、などが挙げられる。アルミ系化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、酢酸アルミニウム、などが挙げられる。チタン系化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、などが挙げられる。ジルコニウム系化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロオイキシド、などが挙げられる。アンチモン系化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、などが挙げられる。
【0030】
触媒の種類及び使用量は、圧縮性流体と開環重合性モノマーとの組合せによって変わるので一概には特定できないが、開環重合性モノマー100モルに対して、0.01モル以上15モル以下が好ましく、0.1モル以上1モル以下がより好ましく、0.3モル以上0.5モル以下が特に好ましい。使用量が、0.1モル未満であると、重合反応が完了する前に触媒が失活して、目標とする分子量のポリマー生成物が得られない場合がある。一方、使用量が、15モルを超えると、重合反応の制御が難しくなることがある
【0031】
重合工程において用いられる触媒としては、生成物の安全性及び安定性を必要とする用途では、有機触媒(金属原子を含まない有機触媒)が好適に用いられる。
【0032】
<圧縮性流体>
続いて、本実施形態の管状成形物の製造に用いられる圧縮性流体について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、温度と圧力に対する物質の状態を示す相図である。図2は、圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。「圧縮性流体」とは、物質が、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、及び(3)のいずれかの領域に存在するときの状態を意味する。「圧縮性流体」とは、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、及び(3)のいずれかの領域に存在する状態のときの物質を意味する。
【0033】
このような領域においては、物質はその密度が非常に高い状態となり、常温常圧時とは異なる挙動を示すことが知られている。なお、物質が(1)の領域に存在する場合には超臨界流体となる。超臨界流体とは、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮しない流体のことである。また、物質が(2)の領域に存在する場合には液体となるが、本実施形態においては、常温(25℃)、常圧(1気圧)において気体状態である物質を圧縮して得られた液化ガスを表す。また、物質が(3)の領域に存在する場合には気体状態であるが、本実施形態においては、圧力が臨界圧力(Pc)の1/2(1/2Pc)以上の高圧ガスを表す。
【0034】
圧縮性流体を構成する物質としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素、メタン、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、エチレン、などが挙げられる。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力が約7.4MPa、臨界温度が約31℃であって、容易に超臨界状態を作り出せること、不燃性で取扱いが容易であることなどの点で好ましい。これらの圧縮性流体は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
重合時の圧力、すなわち圧縮性流体の圧力は、圧縮性流体が液化ガス(図2の相図の(2))、または高圧ガス(図2の相図の(3))となる圧力でも良いが、超臨界流体(図2の相図の(1))となる圧力が好ましい。圧縮性流体を超臨界流体の状態とすることで、開環重合性モノマーの溶解又は可塑化が促進され、均一かつ定量的に重合反応を進めることができる。なお、二酸化炭素を圧縮性流体として用いる場合、反応の効率化やポリマー転化率等を考慮すると、その圧力は、3.7MPa以上、好ましくは5MPa以上、より好ましくは臨界圧力の7.4PMa以上である。また、二酸化炭素を圧縮性流体として用いる場合、同様の理由により、その温度は25℃以上であることが好ましい。本実施形態において、圧縮性流体の濃度は、圧縮性流体に開環重合性モノマーおよび開環重合性モノマーから生成されるポリマーを溶解又は可塑化させることが可能な濃度である限り、特に限定されない。
【0036】
<鎖延長剤>
本発明の一実施形態によると、脂肪族ポリエステルにおけるアミド結合は、鎖延長反応により形成される。脂肪族ポリエステルとの鎖延長反応によりアミド結合を形成可能な鎖延長剤としては、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物、及びカルボジイミド化合物が挙げられる。鎖延長剤はモノマーであってもポリマーであっても良い。これらのうち、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、ポリカルボジイミドは、反応性の理由により、好適に用いられる。
【0037】
オキサゾリン化合物としては、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリンなどの2−オキサゾリン化合物;2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)などの2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)化合物;ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド、分子鎖末端または側鎖に2個以上のオキサゾリン環構造が導入された高分子化合物などが挙げられる。
【0038】
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基含有ポリマーでも良い。オキサゾリン基含有ポリスチレン、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、オキサゾリン基含有スチレン−アクリル系ポリマー等のオキサゾリン基含有ポリマーが例示される。工業的に入手可能なオキサゾリン基含有ポリマーとしては、例えば、エポクロス(登録商標)Kシリーズ、WSシリーズ、RPS(日本触媒社製)が例示される。
【0039】
オキサジン化合物としては、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−デシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−アリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−クロチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどが挙げられる。
【0040】
さらに、オキサジン化合物としては、2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−P,P’−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)などが挙げられる。
【0041】
イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、ジイソシアネートおよびトリイソシアネートが挙げられ、ジイソシアネートが好ましい。ジイソシアネートの具体例としては、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0042】
ポリカルボジイミドとしては、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)カルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)カルボジイミドが挙げられる。また公知のジイソシアネートのうち1種、もしくは2種以上を組み合わせたものを脱炭酸反応後、縮合して得られるものを使用でき、公知のジイソシアネートとしてはトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられ、末端にイソシアネート基が残存しても良い、又は末端のイソシアネート基をアミンやアルコール類と変性させたものも使用できる。またポリカルボジイミドとしてはポリエステルの架橋剤として一般に広く知られているものも使用できる。具体的にはLA−1(日清紡社製)、スタバクゾールP(ラインケミー社製)なども使用できる。
【0043】
<低極性溶媒>
本発明の一実施形態によると、鎖延長反応時の反応系の粘度を低減させる目的で、低極性溶媒を用いることができる。低極性溶媒とは、比誘電率が、3以上10以下の溶媒である。低極性溶媒は、重合工程で用いる圧縮性流体よりもアミド結合を有する脂肪族ポリエステルとの親和性が高く、鎖延長反応時の反応系の粘度を低下させる一方で、鎖延長反応後には脂肪族ポリエステルから容易に分離する。低極性溶媒としては、脂肪族ポリエステルからの分離を容易にするために、常温で気体のものが好ましい。また、低極性溶媒としては、粘度低下の理由により、鎖延長反応の条件下で圧縮性流体となるものが好ましい。
【0044】
低極性溶媒とは、圧縮性流体の状態で用いることができる物質として、n−ペンタン、n−へキサン、n−ヘプタン、2−メチルへキサン、3−メチルへキサン、シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン、1,2,3,4−テトラリン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、アニソール、メチルターシャリーブチルエーテル、エチルターシャリーブチルエーテル又はグリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
低極性溶媒の中でも、ジメチルエーテルは、安価で沸点、臨界点共に低く圧縮性流体として扱いやすいこと、後工程における脱気処理がし易いこと、低毒性であり環境負荷が低いことなどから、特に好ましい。
【0045】
低極性溶媒を添加するタイミングとしては、1)予め二酸化炭素に低極性溶媒を混合する方法、2)鎖延長剤と共に低極性溶媒を混合する方法、3)ポリマーを重合させた後鎖延長剤を添加する前に低極性溶媒を添加する方法が挙げられ、好ましくは3)である。また、3)の方法の場合、低極性溶媒と圧縮性流体の混合物を供給することが圧縮性流体を含むポリマーとの混合性、親和性の観点から好ましい。低極性溶媒の使用量として、ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、ジメチルエーテルを10モル%以上80モル%以下、二酸化炭素を20モル%以上90モル%以下使用することが好ましく、ジメチルエーテルを30モル%以上70モル%以下、二酸化炭素を30モル%以上70モル%以下使用することがより好ましい。
【0046】
<<重合反応装置>>
続いて、図3を用いて、上記の脂肪族ポリエステルの製造において好適に用いられる重合反応装置について説明する。図3は、重合工程の一例を示す系統図である。本実施形態における重合反応は、連続式の工程で実行される。図3の系統図において、重合反応装置100は、原材料や圧縮性流体等を供給する供給ユニット100aと、供給ユニット100aによって供給された開環重合性モノマーを重合させる重合反応装置本体100bとを有する。
【0047】
供給ユニット100aは、タンク(1,3,5,7,11,21,27)と、計量フィーダー(2,4,22)と、計量ポンプ(6,8,12,28)とを有する。
【0048】
供給ユニット100aのタンク1は、モノマーとしての開環重合性モノマーを貯蔵する。貯蔵される開環重合性モノマーは粉末であっても液体であっても良い。タンク3は、開始剤および添加剤のうち固体(粉末又は粒状)のものを貯蔵する。タンク5は、開始剤および添加剤のうち液体のものを貯蔵する。なお、開始剤および添加剤の一部または全部を、予め開環重合性モノマーと混合しておき、その混合物をタンク1に貯蔵しても良い。タンク7は、圧縮性流体を貯蔵する。タンク11は、触媒を貯蔵する。タンク21は、鎖延長剤を貯蔵する。タンク27は、低極性溶媒を貯蔵する。なお、タンク(7,27)は、重合反応装置本体100bに供給される過程で、あるいは、重合反応装置本体100b内で加熱または加圧されて圧縮性流体となる気体(ガス)、液体、または、固体を貯蔵しても良い。この場合、タンク(7,27)に貯蔵される気体、液体、または固体は、加熱または加圧されることにより、重合反応装置本体100b内で図2の相図における(1)、(2)、または(3)の状態となる。
【0049】
計量フィーダー2は、タンク1に貯蔵された開環重合性モノマーを計量して重合反応装置本体100bに連続的に供給する。計量フィーダー4は、タンク3に貯蔵された固体を計量して重合反応装置本体100bに連続的に供給する。計量ポンプ6は、タンク5に貯蔵された液体を計量して重合反応装置本体100bに連続的に供給する。計量ポンプ8は、タンク7に貯蔵された圧縮性流体を、一定の圧力および流量で重合反応装置本体100bに連続的に供給する。計量ポンプ12は、タンク11に貯蔵された触媒を計量して重合反応装置本体100bに供給する。計量フィーダー22は、タンク21に貯蔵された鎖延長剤を計量して重合反応装置本体100bに連続的に供給する。計量ポンプ28は、タンク27に貯蔵された低極性溶媒を、一定の圧力および流量で重合反応装置本体100bに連続的に供給する。なお、本実施形態において連続的に供給するとは、バッチ毎に供給する方法に対する概念であって、開環重合させたポリマーが連続的に得られるよう供給することを意味する。即ち、開環重合させたポリマーが連続的に得られる限り、各材料は、断続的、或いは、間欠的に供給されても良い。また、開始剤および添加剤がいずれも固体の場合には、供給ユニット100aは、タンク5および計量ポンプ6を有していなくても良い。同様に、開始剤および添加剤がいずれも液体の場合には、供給ユニット100a、タンク3および計量フィーダー4を有していなくても良い。
【0050】
本実施形態において、重合反応装置本体100bは、一端部に、開環重合性モノマーを導入するモノマー導入口を有し、他端部に、モノマーを重合させて得られたポリマーを排出するポリマー排出口を有する管状の装置である。また、重合反応装置本体100bの一端部には、圧縮性流体を導入する圧縮性流体導入口を更に有し、一端部と他端部との間に、触媒を導入する触媒導入口を有し、触媒導入口と他端部との間に、鎖延長剤を導入する導入口を有する。また、重合反応装置本体100bは、一端部に設けられた接触部9と、反応部13と、他端部に設けられた反応部33と、を有する。重合反応装置本体100bの各部あるいは装置は、原材料、圧縮性流体、あるいは生成したポリマーを輸送する耐圧性の配管30によって、図3に示されたように接続されている。また、重合反応装置本体100bの各部あるいは装置は、上記の原材料等を通過させる管状の部材を有している。
【0051】
重合反応装置本体100bの接触部9は、各タンク(1,3,5)から連続的に供給された開環重合性モノマー、開始剤、添加物などの原材料と、タンク7から連続的に供給された圧縮性流体とを連続的に接触させる耐圧性の装置あるいは管などにより構成される。接触部9では、原材料と圧縮性流体とを接触させることにより、原材料が溶融または溶解する。本実施形態において、「溶融」とは、原材料あるいは生成したポリマーが圧縮性流体と接触することで、膨潤しつつ可塑化、液状化した状態を意味する。また、「溶解」とは、原材料が圧縮性流体中に溶けることを意味する。開環重合性モノマーを溶解した場合には流体相、溶融した場合には溶融相が形成されるが、均一に反応を進めるために、溶融相または流体相のいずれか一層が形成されていることが好ましい。また、圧縮性流体に対して原材料の比率が高い状態で反応を進行させるために、開環重合性モノマーを溶融させることが好ましい。なお、本実施形態では、原材料および圧縮性流体を連続的に供給することにより、接触部9において、開環重合性モノマーなどの原材料と圧縮性流体とを一定の濃度の比率で連続的に接触させることができる。これにより、原材料を効率的に溶融または溶解させることができる。
【0052】
接触部9には、タンク型の攪拌装置、あるいは、筒型の攪拌装置が設けられていてもよいが、一端から原材料を供給し、他端から溶融相あるいは流体相などの混合物を取り出せる筒型の装置が好ましい。このような装置としては、一軸のスクリュウ、互いに噛み合う二軸のスクリュウ、互いに噛み合う又は重なり合う多数の攪拌素子をもつ二軸の混合機、互いに噛み合うらせん形の攪拌素子を有するニーダー、スタティックミキサーなどが好ましく用いられる。特に、互いに噛み合う二軸又は多軸攪拌装置は、攪拌装置や容器への反応物の付着が少なく、セルフクリーニング作用があるので好ましい。接触部9に攪拌装置が設けられていない場合、接触部9は、耐圧性の配管30の一部によって構成される。なお、接触部9が配管30の一部によって構成される場合、接触部9内での各材料を確実に混合するため、接触部9に供給される開環重合性モノマーを予め液体にしておくことが好ましい。
【0053】
接触部9には、計量ポンプ8によってタンク7から供給された圧縮性流体を導入する圧縮性流体導入口の一例としての導入口9aと、計量フィーダー2によってタンク1から供給された開環重合性モノマーを導入するモノマー導入口の一例としての導入口9bと、計量フィーダー4によってタンク3から供給された粉末を導入する導入口9cと、計量ポンプ6によってタンク5から供給された液体を導入する導入口9dとが設けられている。本実施形態において各導入口(9a,9b,9c,9d)は、継手によって構成される。この継手としては、特に制限されず、レデューサー、カップリング、Y、T、アウトレットなどの公知のものが用いられる。また、接触部9には、供給された各原材料および圧縮性流体を加熱するためのヒータ9eが設けられている。
【0054】
重合反応装置本体100bの接触部9と反応部13との間には、送液ポンプ10が設けられている。送液ポンプ10は、接触部9で溶融または溶解した各原材料を反応部13に送液する。
【0055】
重合反応装置本体100bの反応部13は、送液ポンプ10によって送液され、溶融または溶解した各原材料と、計量ポンプ12によって供給された触媒とを混合して、開環重合性モノマーを連続的に開環重合させるための耐圧性の装置あるいは管などにより構成されている。反応部13で開環重合性モノマーを開環重合させることにより、ポリマーが連続的に得られる。
【0056】
反応部13には、タンク型の混合装置、あるいは、筒型の混合装置が設けられていてもよいが、デッドスペースが少ない筒型の装置が好ましい。反応部13に混合装置が設けられている場合、原材料と生成されたポリマーの密度差によって、ポリマー粒子が沈降することを抑制できるので、重合反応をより均一かつ定量的に進められる。このような装置としては、互いに噛み合うスクリュウや、2フライト(長円形)や3フライト(三角形様)などの攪拌素子、円板又は多葉形(クローバー形など)の攪拌翼をもつ二軸又は多軸のものがセルフクリーニングの観点から好ましい。あらかじめ触媒を含む原材料が充分に混合されている場合には、案内装置により流れの分割と複合(合流)を多段的に行う静止混合器も攪拌装置に応用出来る。静止型混合器としては、特公昭47−15526、同47−15527、同47−15528、同47−15533などで開示されたもの(多層化混合器)、及び特開昭47−33166に開示されたもの(ケニックス型)、及びそれらに類似する可動部のない混合装置が挙げられる。反応部13が混合装置を有していない場合、反応部13は、耐圧性の配管30の一部によって構成される。この場合、配管30の形状は特に限定されないが、装置をコンパクト化するために、らせん状のものが好適に用いられる。
【0057】
反応部13には、接触部9で溶解または溶融させた原材料を導入するための導入口13aと、計量ポンプ12によってタンク11から供給された触媒を導入するための触媒導入口の一例としての導入口13bとが設けられている。本実施形態において各導入口(13a,13b)は、継手によって構成される。この継手としては、特に制限されず、レデューサー、カップリング、Y、T、アウトレットなどの公知のものが用いられる。なお、反応部13には、蒸発物を除去するための気体出口が設けられていても良い。また、反応部13には、送液された原材料を加熱するためのヒータ13cが設けられている。
【0058】
重合反応装置本体100bには、接触部29が設けられている。接触部29は、タンク21から供給された鎖延長剤と、タンク27から供給された低極性溶媒とを連続的に接触させ、鎖延長剤を溶融または溶解させるための耐圧性の装置あるいは管である。これにより、鎖延長剤を溶融または溶解させた状態で、反応部33に供給することができる。接触部29には、計量ポンプ28によってタンク27から供給された低極性溶媒を導入する導入口29aと、計量フィーダー22によってタンク21から供給された鎖延長剤を導入する導入口29bとが設けられている。本実施形態において、各導入口(29a,29b)は、継手によって構成される。この継手としては、特に制限されず、レデューサー、カップリング、Y、T、アウトレットなどの公知のものが用いられる。なお、本実施形態において、接触部29の構成は、接触部9と同様のものが用いられるため、詳細な説明を省略する。
【0059】
反応部33は、反応部13で得られ、溶融または溶解した状態の中間体としてのポリマーと、接触部29で溶融または溶解させた鎖延長剤とを接触させて、低極性溶媒の存在下、連続的に鎖延長反応させるための耐圧性の装置あるいは管などのより構成されている。反応部33には、上記の中間体としてのポリマーを導入するための導入口33aと、上記の溶融または溶解させた鎖延長剤、および低極性溶媒を導入するための導入口33bとが設けられている。本実施形態において各導入口(33a,33b)は、継手によって構成される。この継手としては、特に制限されず、レデューサー、カップリング、Y、T、アウトレットなどの公知のものが用いられる。なお、本実施形態において、反応部33の構成は、反応部13と同様のものが用いられるため、詳細な説明を省略する。
【0060】
反応部33の端部には、圧調整バルブ34が設けられている。圧調整バルブ34は、反応部33の内外の圧力差を利用することにより、反応部33で重合されたポリマー生成物Pを反応部33の外に送り出す。
【0061】
<<重合方法>>
続いて、重合反応装置100を用いた開環重合性モノマーの重合方法について説明する。本実施形態の製造方法は、少なくとも開環重合性モノマーと、圧縮性流体とを連続的に供給し、接触させて、開環重合性モノマーを開環重合させてポリマーを連続的に得る重合工程を有する。
【0062】
〔重合工程〕
まず、本実施形態のポリマーの製造方法における重合工程について説明する。各計量フィーダー(2,4)および計量ポンプ6、計量ポンプ8を作動させる。これにより、各タンク(1,3,5,7)内のモノマーとしての開環重合性モノマー、開始剤、添加剤、圧縮性流体を連続的に供給し、各導入口(9a,9b,9c,9d)から、接触部9の管内に導入させる。なお、固体(粉末又は粒状)の原材料は、液体の原材料と比較して計量精度が低い場合がある。この場合、固体の原材料を前もって液体にしてタンク5に貯蔵しておき、計量ポンプ6によって接触部9の管内に導入させても良い。各計量フィーダー(2,4)および計量ポンプ6、計量ポンプ8を作動させる順序は、特に限定されないが、初期の原材料が圧縮流体に接触せずに反応部13に送られると、温度低下によって固化する恐れがあるため、先に計量ポンプ8を作動させることが好ましい。
【0063】
計量フィーダー(2,4)および計量ポンプ6による各原材料の各供給速度は、開環重合性モノマー、開始剤、および添加剤の所定の量比に基づいて、一定の比率となるように調整される。計量フィーダー(2,4)および計量ポンプ6よって単位時間当たりに供給される各原材料の質量の合計(原材料の供給速度(g/min))は、所望のポリマー物性や反応時間等に基づいて調整される。同様に、計量ポンプ8よって単位時間当たりに供給される圧縮性流体の質量(圧縮性流体の供給速度(g/min))は、所望のポリマー物性や反応時間等に基づいて調整される。原材料の供給速度と圧縮性流体の供給速度との比(原材料の供給速度/圧縮性流体の供給速度、フィード比という)は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、10以上であることが特に好ましい。また、上記フィード比の上限値については、1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が特に好ましい。
【0064】
上記のフィード比を1以上とすることにより、各原材料および圧縮性流体が反応部13に送液されたときに、原材料および生成したポリマーの濃度(いわゆる固形分濃度)が高い状態で反応が進行する。このときの重合系内の固形分濃度は、従来の製造方法で圧倒的な量の圧縮性流体に対して少量の開環重合性モノマーを溶解させて重合したときの重合系の固形分濃度とは大きく異なる。本実施形態の製造方法は、固形分濃度が高い重合系でも重合反応が効率的かつ安定して進行することに特徴がある。なお、本実施形態において、フィード比を1未満としてもよく、この場合であっても、得られるポリマー生成物の品質に問題はないが、経済的な効率は劣ることになる。また、フィード比が1000を超えると、圧縮性流体が開環重合性モノマーを溶融させる能力が不十分となる恐れがあり、目的とする反応が均一に進まない場合がある。
【0065】
各原材料および圧縮性流体は、接触部9の管内に連続的に導入されるので、それぞれが連続的に接触する。これにより、接触部9内で、開環重合性モノマー、開始剤、添加物などの各原材料が溶融または溶解する。接触部9が攪拌装置を有する場合には、各原材料および圧縮性流体を攪拌しても良い。供給された圧縮性流体が気体に変わることを避けるため、反応部13の管内の温度および圧力は、少なくとも上記圧縮性流体の三重点以上の温度および圧力に制御される。この制御は、接触部9のヒータ9eの出力あるいは圧縮性流体の供給量を調整することにより行われる。本実施形態において、開環重合性モノマーを溶融させるときの温度は、開環重合性モノマーの常圧での融点以下の温度であっても良い。これは、圧縮性流体の存在下、接触部9内が高圧となり、開環重合性モノマーの融点が常圧での融点よりも低下することによると考えられる。このため、開環重合性モノマーに対する圧縮性流体の量が少ない場合であっても、接触部9内で開環重合性モノマーは溶融する。
【0066】
各原材料が効率的に溶融または溶解するように、接触部9で各原材料および圧縮性流体に熱や攪拌を加えるタイミングを調整しても良い。この場合、各原材料と圧縮性流体とを接触させた後、熱や攪拌を加えても、各原材料と圧縮性流体とを接触させながら、熱や攪拌を加えても良い。また、より確実に溶融させるため、例えば、あらかじめ開環重合性モノマーに融点以上の熱をかけてから、開環重合性モノマーと圧縮性流体とを接触させても良い。この場合、例えば接触部9に二軸の混合装置が設けられているときには、スクリュウの配列、各導入口(9a,9b,9c,9d)の配置、接触部9のヒータ9eの温度を適宜設定することにより実現される。
【0067】
なお、本実施形態では、開環重合性モノマーとは別に添加物を接触部9に供給しているが、開環重合性モノマーと共に添加物を供給しても良い。また、重合反応後に添加物を供給しても良い。この場合、反応部13から得られたポリマーを取り出した後に添加物を混錬しながら添加することもできる。
【0068】
接触部9で溶融または溶解させた各原材料は送液ポンプ10によって送液され、導入口13aから反応部13に供給される。一方、タンク11内の触媒は、計量ポンプ12によって計量され、導入口13bから反応部13へ所定量供給される。なお、触媒は、圧縮性流体と接触前のモノマーに加えても良いが、反応均一性の観点から圧縮性流体と接触後のモノマーに加えることが好ましい。
【0069】
送液ポンプ10によって送液された各原材料および計量ポンプ12によって供給された触媒は、必要に応じて反応部13の混合装置によって充分に混合され、あるいは送液される間、ヒータ13cにより所定温度に加熱される。これにより、反応部13内で、触媒の存在下、開環重合性モノマーは開環重合されてポリマーが連続的に得られる。
【0070】
開環重合性モノマーを開環重合させる際の温度(重合反応温度)の下限は、特に限定されないが、40℃、好ましくは50℃、より好ましくは60℃である。重合反応温度が40℃未満であると、開環重合性モノマー種によっては、圧縮性流体による溶融に長い時間がかかったり、溶融が不十分であったり、触媒の活性が低くなったりする。これにより、重合時には反応速度が低下しやすくなり、定量的に重合反応を進めることができなくなる場合がある。
【0071】
重合反応温度の上限は、特に限定されないが、150℃、又は、開環重合性モノマーの融点より50℃高い温度のうちいずれか高い温度である。重合反応温度の上限は、好ましくは、100℃、又は、開環重合性モノマーの融点より30℃高い温度のうちいずれか高い温度である。重合反応温度の上限は、より好ましくは、90℃、又は、開環重合性モノマーの融点のうちいずれか高い温度である。重合反応温度の上限は、更に好ましくは、80℃、又は、開環重合性モノマーの融点より20℃低い温度のうちいずれか高い温度である。重合反応温度が、開環重合性モノマーの融点より30℃高い温度を超えると、開環重合の逆反応である解重合反応も平衡して起こりやすく、定量的に重合反応が進みにくくなる。室温で液状である開環重合性モノマーなどの融点が低い開環性モノマーを使用する場合においては、触媒の活性を高めるため、重合反応温度を融点より50℃以上高い温度としても良い。この場合でも、重合反応温度を150℃以下とすることが好ましい。なお、重合反応温度は、反応部13に設けられたヒータ13cあるいは反応部13の外部からの加熱等により制御される。また、重合反応温度を測定する場合、重合反応によって得られたポリマーを用いても良い。
【0072】
本実施形態において、重合反応時間(反応部13内の平均滞留時間)は、目標とする分子量に応じて設定されるが、通常、1時間以内が好ましく、45分以内がより好ましく、30分以内が更に好ましい。本実施形態の製造方法によると、重合反応時間を20分以内とすることもできる。
【0073】
重合時の圧力、すなわち圧縮性流体の圧力は、タンク7から供給された圧縮性流体が液化ガス(図2の相図の(2))、または高圧ガス(図2の相図の(3))となる圧力でも良いが、超臨界流体(図2の相図の(1))となる圧力が好ましい。圧縮性流体を超臨界流体の状態とすることで、開環重合性モノマーの溶融が促進され、均一かつ定量的に重合反応を進めることができる。なお、二酸化炭素を圧縮性流体として用いる場合、反応の効率化やポリマー転化率等を考慮すると、その圧力は、3.7MPa以上、好ましくは5MPa以上、より好ましくは臨界圧力の7.4PMa以上である。また、二酸化炭素を圧縮性流体として用いる場合、同様の理由により、その温度は25℃以上であることが好ましい。
【0074】
反応部13内の水分量は、開環重合性モノマー100モル%に対して、4モル%以下、より好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.5モル%以下である。水分量が4モル%を超えると、水分自体も開始剤として寄与するため、分子量の制御が困難となる場合がある。重合反応系内の水分量を制御するために、必要に応じて、前処理として、開環重合性モノマー、その他原材料に含まれる水分を除去する操作を加えてもよい。
【0075】
鎖延長剤を添加する前のポリマー、即ち重合工程で得られる中間体としてのポリマーの数平均分子量(Mn)は、25万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましい。Mn25万より低いと粘度が低く薄膜フィルムが成型できない場合がある。また、中間体としてのポリマーの重量平均分子量(Mw)は、50万以上であることが好ましく、60万以上であることが更に好ましい。重量平均分子量(Mw)が50万より低いと粘度が低く薄膜フィルムが成型できない場合がある。
【0076】
〔鎖延長工程〕
続いて、本実施形態のポリマーの製造方法における鎖延長工程について説明する。まず、計量フィーダー22および計量ポンプ28を作動させ、各タンク(21,27)内の鎖延長剤および低極性溶媒を連続的に供給し、各導入口(29a,29b)から、接触部29の管内に導入させる。鎖延長剤および低極性溶媒は、接触部29の管内に連続的に導入されるので、それぞれが連続的に接触する。これにより、接触部29内で、鎖延長剤が溶融または溶解する。なお、鎖延長工程における鎖延長剤および低極性溶媒の導入の手順および条件は、重合工程における開環重合性モノマーおよび圧縮性流体の導入の手順および条件と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0077】
本実施形態では圧縮性流体中でポリマー重合後、鎖延長剤を添加する際に、低極性溶媒を加えることで、ポリマーの急激な増粘が抑えられ、連続重合が容易になる。低極性溶媒を加えないと、急激な増粘により配管が詰まり、あるいは、配管内の流速差が生じやすく、安定的に製造することができなくなる場合がある。
【0078】
本実施形態において、重合工程で計量フィーダー2によって単位時間当たりに供給される開環重合性モノマーの量(フィード量)と、鎖延長工程で計量フィーダー22によって単位時間当たりに供給される鎖延長剤の量(フィード量)との比は、目標とする分子量に基づいて各フィーダーで供給されるモノマーの量を決定すれば良い。より具体的には、中間体としてのポリマーに鎖延長剤を添加する場合に、その添加量は、開環重合性モノマー100モルに対し、好ましくは0.1モル以上10.0モル以下であり、より好ましくは0.3モル以上6.0モル以下が好ましい。添加量が0.1モル未満だと低粘度のため薄膜フィルムが成型できない不具合が生じる場合がある。10モルより多いとゲル化してしまい、薄膜フィルム欠陥が発生する場合がある。なお、鎖延長剤として、ポリカルボジイミドを用いる場合には、その添加量は、開環重合性モノマー100モルに対し、好ましくは0.1モル以上40.0モル以下であり、より好ましくは1.0モル以上20.0モル以下が好ましい。添加量が0.1モル未満の場合、鎖延長剤とポリマーとの混合が困難になり分子量分布がブロード化しやすい。また、添加量が20モル以上の場合、未反応の鎖延長剤が可塑剤として作用し、フィルム化を実現するための粘度が得られないし、材料コストの面からも好ましくない。
【0079】
反応部13内で生成し、溶融または溶解した状態の中間体としてのポリマーは、導入口33aから反応部33へ連続的に供給される。一方、接触部29で溶融または溶解させた鎖延長剤は低極性溶媒とともに、導入口33bから反応部33に連続的に供給される。これにより、中間体としてのポリマーと、鎖延長剤とは、反応部33内で連続的に接触する。中間体としてのポリマーと鎖延長剤とは、反応部33の攪拌装置によって充分に攪拌され、ヒータ33cにより所定温度に加熱される。これにより、反応部33内で、低極性溶媒の存在下、中間体としてポリマーおよび鎖延長剤は反応して最終生成物としてのポリマーが得られる。
【0080】
反応部33で鎖延長反応させる際の温度(鎖延長反応温度)の下限は、特に限定されないが、40℃である。鎖延長反応温度が40℃未満であると、鎖延長剤種によっては、圧縮性流体による溶融に長い時間がかかったり、溶融が不十分であったり、触媒の活性が低くなったりする。これにより、重合時には反応速度が低下しやすくなり、定量的に重合反応を進めることができなくなる場合がある。重合反応温度の上限は、特に限定されないが、100℃である。重合反応温度が100℃を超えると、開環重合の逆反応である解重合反応も平衡して起こりやすく、定量的に重合反応が進みにくくなる場合がある。
【0081】
本実施形態において、反応部33での鎖延長反応時間(反応部33への平均滞留時間)は、目標とする分子量に応じて設定されるが、通常、1時間以内が好ましく、45分以内がより好ましく、30分以内が更に好ましい。
【0082】
反応部33内の圧力(鎖延長反応圧力)、すなわち低極性溶媒の圧力は、タンク(7,27)から供給された圧縮性流体および低極性溶媒が液化ガス(図2の相図の(2))、または高圧ガス(図2の相図の(3))となる圧力でも良いが、超臨界流体(図2の相図の(1))となる圧力が好ましい。
【0083】
反応部33内で鎖延長反応を終えたポリマー生成物Pは、圧調整バルブ34から反応部33の外へ送り出される。圧調整バルブ34からポリマー生成物Pを送り出す速度は、圧縮性流体で満たされた重合系内の圧力を一定にして、均一な重合品を得るために、一定とすることが好ましい。そのため、圧調整バルブ34における背圧が一定となるように、反応部(13、33)の内部の送液機構、接触部(9,29)内部の送液機構、計量フィーダー(2,4,22)、及び計量ポンプ(6,8,28)の供給速度は制御される。制御方式は、ON−OFF型つまり間欠フィード型でもよいが、ポンプ等の回転速度を徐々に増減する連続又はステップ方式の方がより好ましいことが多い。いずれにせよ、このような制御によって、均一なポリマー生成物を安定に得ることが出来る。
【0084】
本実施形態により得られる脂肪族ポリエステルに残存する触媒は、必要に応じて除去される。除去方法としては、特に限定するものではないが、例えば、沸点を有する化合物であれば減圧留去や、触媒を溶解させる物質をエントレーナーとして用いて触媒を抽出してこれを除去する方法や、カラムにより触媒を吸着して除去する方法などが挙げられる。この場合、触媒を除去する方式としては、脂肪族ポリエステルを反応部33から取り出した後に除去するバッチ方式でも、取り出さずそのまま連続処理する方式でもかまわない。減圧留去する場合、減圧条件は触媒の沸点に基づいて設定される。例えば、減圧の際の温度は、100℃以上120℃以下であり、脂肪族ポリエステルが解重合する温度より低い温度で触媒を除去することが可能である。この抽出操作において有機溶媒を用いると、触媒を抽出後に有機溶媒を除去する工程が必要となる場合がある。このため、抽出操作においても溶媒として圧縮流体を用いることが好ましい。このような抽出操作としては、香料の抽出などの公知の技術を転用できる。
【0085】
<ポリマー生成物>
続いてポリマー生成物としての脂肪族ポリエステルの各種物性について説明する。
上記製造方法により得られる脂肪族ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、50万以上200万以下、好ましくは100万以上200万以下である。数平均分子量が50万以上200万以下であれば、好適に薄膜フィルムの成型が可能となる。数平均分子量が50万より低いと、ポリマーの粘度が低くなり薄膜が成型できなる場合があり、数平均分子量が200万より大きいとゲル化してしまい薄膜フィルムに欠陥が発生する場合がある。
【0086】
上記製造方法により得られる脂肪族ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、120万以上500万以下、好ましくは200万以上500万以下である。重量平均分子量が120万以上500万以下であれば、好適に薄膜フィルムの成型が可能となる。重量平均分子量が120万より低いと、ポリマーの粘度が低くなり薄膜が成型できなる場合があり、重量平均分子量が500万より大きいとゲル化してしまい薄膜フィルムに欠陥が発生する場合がある。
【0087】
上記製造方法により得られる脂肪族ポリエステルは、アミド結合を有する脂肪族ポリエステルであり、エステル結合部およびアミド結合部の総量に対するアミド結合部の含有量が1×10−3モル%以上1×10−1モル%以下、好ましくは3×10−3モル%以上6×10−2モル%以下である。アミド結合部の含有量が1×10−3モル%以上1×10−1モル%以下であれば、厚みとして10μm以下の薄膜フィルムを成型しやすくなる。一方、アミド結合部の含有量が1×10−3モル%未満だと、ポリマーの粘度が低くなり過ぎて薄膜フィルムに成形できなくなる場合がある。アミド結合部の含有量が1×10−1モル%より多いとゲル化してしまい、薄膜フィルム欠陥が発生する場合がある。アミド結合部の含有量の測定方法は特に限定されないが、後述の実施例に記載のNMR(Nuclear Magnetic Resonance)を用いた方法が挙げられる。
【0088】
ポリマー生成物の残存開環重合性モノマー量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5000質量ppm以下であることが好ましく、1000質量ppm以下がさらに好ましく、500質量ppm以下がより好ましい。残存開環重合性モノマー量が5000質量ppmを超えると、熱特性の低下により耐熱安定性が悪くなる場合があるのに加えて、残存開環重合モノマーが開環した際に生ずるカルボン酸に加水分解を促進する触媒機能を有するため、ポリマー生成物の分解が進行しやすくなることがある。
【0089】
残存開環重合性モノマーの含有量は、例えば、質量分率〔残存開環重合性モノマーの質量/開環重合性モノマーの総量(=残存開環重合性モノマーを含むポリマー生成物の質量)〕で表すことができる。また、残存開環重合性モノマーの含有量は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準,第3版改訂版,2004年6月追補,第3部,衛生試験法」に基づいて測定することができる。
【0090】
上記の製造方法によると、残存開環重合性モノマー等の低分子量成分の生成が低減されることから、イエローインデックス(YI)値の小さいポリマー生成物が得られる。ポリマー生成物のイエローインデックス(YI)値は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15以下が好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下がより好ましい。YI値が、15を超えると、外観上の問題となることがある。特に、食品包装容器として使用したときは、この問題が顕著となることがある。
ポリマー生成物のイエローインデックス(YI)値は、例えば、厚み2mmの樹脂板を作製してJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定し、YI値を求めることができる。
【0091】
本発明の一実施形態によると、ポリマー生成物は、例えば、粒子、フィルム、シート、成型品、繊維等に成形して、例えば、日用品、工業用資材、農業用品、衛生資材、医薬品、化粧品、電子写真用トナー、包装材料、電気機器材料、家電筐体、自動車材料等の用途に幅広く用いられる。
【0092】
<<成形体>>
本発明の一実施形態の成形体は、上記のポリマー生成物を成形してなる。
成形体としては、例えば、粒子、フィルム、シート、成型品、繊維などが挙げられる。
【0093】
<粒子>
ポリマー生成物を粒子に成形する方法としては、ポリマー生成物を従来公知の方法により粉砕する手法などが挙げられる。粒子の粒径は、特に限定されないが、通常、1μm以上50μm以下である。また、成形体の粒子が電子写真用トナーである場合、着色剤及び疎水性微粒子がポリマー生成物中に混合された混合物を作製する。混合物は、結着樹脂、着色剤及び疎水性微粒子の他に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、離型剤、帯電制御剤などが挙げられる。添加物を混合する工程は、重合反応と同時でもよいし、重合反応後の後工程や、重合生成物を取り出した後に溶融混錬しながら添加してもよい。その他の粒子として、DDS(Drug Delivery System)などが挙げられる。
【0094】
<フィルム>
本発明の一実施形態に係るフィルムとは、ポリマー生成物を薄い膜状に成形したものであって、厚みが10μm以下の薄膜フィルムである。本実施形態において、フィルムは、ポリマー生成物を延伸成形して製造される。
【0095】
この場合、延伸成形法としては、特に限定されないが、汎用プラスチックの延伸成形に適用される一軸延伸成形法、同時又は逐次二軸延伸成形法(チューブラー法、テンター法等)などを採用することができる。
【0096】
フィルム成形は、通常150℃以上280℃以下の温度範囲で行われる。成形されたフィルムには、ロール法、テンター法、チューブラー法等により一軸又は二軸延伸が施される。延伸温度は、通常30℃以上110℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下の範囲である。延伸倍率は、通常、縦、横方向、それぞれ通常0.6倍〜10倍の範囲で行われる。また、延伸後、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法、ヒートロール上に接触させる等の熱処理を施してもよい。
【0097】
このような延伸成形法により、延伸シート、フラットヤーン、延伸テープやバンド、筋付きテープ、スプリットヤーンなどの各種延伸フィルムが得られる。
【0098】
なお、成形された延伸フィルムには、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種合目的的二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)などが挙げられる。
【0099】
本実施形態により得られる延伸フィルムは、有機溶媒を含有しても、含有しなくてもどちらでもよい。有機溶媒を使用しなければ、安全性に優れているため、医療用途、食品包装用途、日用品、電気機器材料、家電筐体、自動車材料等の用途として幅広く適用される。特に、食品なども含め、酸素の影響を受けやすく、あるいは劣化する可能性のある物質を包装する上でも有用となる。また、残存モノマーも5,000質量ppm以下であれば、耐久性を高めることができ、着色を低減できる。
【0100】
<シート・成型品>
本実施形態において、シートとは、ポリマー生成物を薄い膜状に成形したものであって、厚みが250μm以上のものである。本実施形態において、シートは、ポリマー生成物に、熱可塑性樹脂に対して用いられる従来公知のシートの製造方法を適用して製造される。このような方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法などが挙げられる。シートに加工する際の加工条件は、ポリマー生成物の種類や、装置等に基づいて、適宜決定される。例えば、ポリ乳酸をTダイ法で加工する場合、温度は、Tダイを出口に取り付けた押出成型機によって、好ましくは150℃以上、250℃以下に加熱したポリマー生成物をTダイから押し出すことにより、シート加工することができる。
【0101】
本実施形態において、成型品とは、型を用いて加工された物である。この成型品の概念には、単体としての成型品のみでなく、トレーの取っ手のような成型品からなる部品や、取っ手が取り付けられたトレーのような成型品を備えた製品が含まれる。
【0102】
上記ポリマー生成物としての脂肪族ポリエステルの加工方法は、特に限定されるものではないが、従来公知の熱可塑性樹脂の加工方法を用いることができ、例えば、射出成型、真空成型、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型などが挙げられる。この場合、ポリマー生成物を溶融させて、射出成型し、成型品を得ることもできる。また、上記の製造方法で得られたシートを成型金型によりプレス成型して賦型すること(形状を与えること)により、成型品を得ることもできる。賦型する際の加工条件は、ポリマー生成物の種類や、装置等に基づいて、適宜決定される。例えば、ポリ乳酸のシートを成型金型によりプレス成型して賦型する場合、金型温度は、100℃以上150℃以下とすることができる。射出成形で賦型する場合、150℃以上、250℃以下に加熱したポリマー生成物を金型に射出して、金型温度を20℃以上、80℃以下程度に設定して、射出成形での加工が可能である。
【0103】
従来汎用的に用いられてきたポリ乳酸は、金属触媒、有機溶媒、及びモノマーの残存率が多かった。このようなポリ乳酸を加熱し、シート状にした場合、例えば、金属触媒、有機溶媒、及びモノマー等の残存する異物がフィッシュアイ状となって外観が損なわれたり、強度が低下したりすることがあった。また、このようなポリ乳酸を用いて金型成型や、射出成型などで成型した場合も、同様に外観が損なわれたり、強度が低下したりすることがあった。
【0104】
本実施形態に係るシート、及び成型品は、有機溶媒を含有しても、含有しなくてもどちらでもよいが、有機溶媒を含有しない場合は、安全性に優れているため好ましい。従って、有機溶媒を使用しない成型品は、特に限定されないが、工業用資材、日用品、農業用品、食品用、医薬品用、化粧品等のシート、包装材、トレー等の用途として幅広く適用される。ここで、ポリマー生成物がポリ乳酸やポリカプロラクトンのような生分解性を有するポリマーである場合、溶剤や金属も含まない点を生かすことで、体内に入る可能性があるような用途、特に食品に使用する包装材料、化粧品や、医薬品などの医療用シートとして有用となる。また、残存モノマーも5,000質量ppm以下であれば、耐久性を高めることができ、着色を低減させることができる。
【0105】
<繊維>
ポリマー生成物は、モノフィラメント、マルチフィラメント等の繊維にも応用可能である。なお、本実施形態において、繊維の概念には、モノフィラメントのような単体の繊維のみでなく、織布や不織布のような繊維によって構成される中間製品や、マスクのような織布や不織布を有する製品が含まれる。
【0106】
本実施形態において、繊維は、モノフィラメントの場合、ポリマー生成物を従来公知の方法により溶融紡糸、冷却、延伸することで繊維化して製造される。用途によっては、モノフィラメントに従来公知の方法により被覆層を形成してもよく、被覆層は、抗菌剤、着色剤等を含んでいてもよい。また不織布とする場合は、従来公知の方法により溶融紡糸、冷却、延伸、開繊、堆積、熱処理する手法が挙げられる。ポリマー生成物には、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、抗菌剤、結着樹脂等の添加剤が含有されていてもよい。添加物を混合する工程は、重合反応時でもよいし、重合反応後の後工程や、重合生成物を取り出した後に溶融混錬しながら添加してもよい。
【0107】
本実施形態により得られる繊維は、有機溶媒を含有しても、含有しなくてもどちらでもよい。有機溶媒を含有しない場合は、安全性に優れているため好ましい。従って、有機溶媒を使用しない繊維は、モノフィラメントであれば釣り糸、魚網、手術用縫合糸、電気機器材料、自動車材料、産業用資材等の用途として幅広く適用される。また、本実施形態の繊維は、不織布であれば水産・農業資材、建築・土木資材、インテリア、自動車部材、包装材料、日用雑貨、衛生資材等の用途として幅広く適用される。また、残存モノマーも5,000質量ppm以下であれば、耐久性を高めることができ、着色を低減させることができる。
【0108】
<他の実施形態>
続いて、本発明の他の一実施形態について、上記実施形態と異なる点を説明する。
【0109】
従来の脂肪族ポリエステルによると、成形時の粘度変化が大きいため、薄膜フィルム成形に適さないという課題が生じていた。この課題は、上記実施形態の脂肪族ポリエステルにおいて、乳酸単位からなる直鎖状のポリマー鎖を有し、マルク−ホウインクプロットから求めた係数αを0.90以上とすることで解決し得る。係数αは、下記に示した脂肪族ポリエステルの分析により、絶対分子量と極限粘度とから求めることができる。マルク−ホウインクの式は、下記式(1)で表すことができる。指数αはポリマーの形状や、屈曲性によって定まる指数であり、Kは高分子の種類や溶媒、温度により定まる定数である。
η=KMα ・・・(1)
(式中、ηは極限粘度、Kは定数、Mは絶対分子量を表す。)
【0110】
また、マルク−ホウインクプロットについて説明すると以下の通りである。上記式(1)の両辺の対数をとると下記式(1’)になる。
log[η]=alogM + logK ・・・(1’)
マルク−ホウインクプロットは、y軸に[log[η]]の値をとり、x軸に[alo
gM ]の値をとったプロットであり、プロットを結ぶ線の傾斜がαの値となる。αの値はGPC−MALS−VISCO法を用いて求めることができる。αが0.90以上であれば、加工時の粘度変化が小さくなる。αが0.90よりも小さい場合は加工時の粘度変化が大きくなる場合がある。直鎖状ポリマーを重合しているにもかかわらず、αが0.90を下回るということは、ポリマーの直鎖性が低くなっていることを意味し、重合中にポリマー鎖が切断されていることが推測される。切断されたポリマー鎖が存在することにより、加工時の粘度変化が大きくなると推測される。
【0111】
このような脂肪族ポリエステルを作製する場合、上記実施形態の触媒のうち金属触媒を好適に使用し得る。触媒の使用量は、圧縮性流体と開環重合性モノマーとの組合せによって変わるので一概には特定できないが、開環重合性モノマーに対して、10ppm以上10000ppm以下が好ましく、10ppm以上1000ppm以下がより好ましく、100ppm以上500ppm以下が特に好ましい。使用量が、10ppm未満であると、重合反応が完了する前に触媒が失活して、目標とする分子量のポリマー生成物が得られない場合がある。一方、使用量が、10000ppmを超えると、重合反応の制御加工安定性が低下することがある。
【0112】
このような脂肪族ポリエステルを作製する場合、上記実施形態の鎖延長剤のうちオキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物、及びポリカルボジイミド化合物が好適に用いられる。
【0113】
図4は、他の一実施形態における重合工程の一例を示す系統図である。重合反応装置100’において、ポリマーの搬送経路における圧調整バルブ34に対して下流側に押出口金15が設けられており、更にその下流側にモノマー分離装置400が設けられている。
【0114】
押出口金15は、反応部30で重合反応して得られたポリマーを排出する排出部の一例である。なお、反応部30の内外の圧力差を利用することにより、ポリマー生成物を反応部30内から送り出すこともできる。押出口金15からの送り出し量を調整するために、押出口金15の上流に圧力調整バルブや計量ポンプを用いることもできる。
【0115】
計量フィーダー2から、押出口金15(排出部)に至るモノマー又は生成したポリマーの移送経路は、連通していることが好ましい。これにより、連続的に重合反応を進行させることができるので、重合反応の局所的な進行に起因して不均質な生成物が形成されてしまうことを防ぐことができる。
【0116】
本実施形態はモノマー除去手段を有するポリマー製造装置を用いて、モノマー除去を行い、ポリマー生成物を製造する形態である。これにより、残存モノマーの含有量を極めて少なくすることができる。
【0117】
モノマー分離装置400は、押出口金15から排出されたポリマー生成物からモノマー成分を分離する装置であり、用途に応じてポリマー生成物からモノマー成分を除去する必要がある場合に使用する。
【0118】
モノマー分離装置400では、押出口金15から排出された直後に真空ポンプ20によって真空状態にしたペレタイザー18で樹脂の切断を行い、ペレット化することで、ポリマー分解を抑制し、モノマーの分離を行う。分離させたモノマーは、モノマー回収装置19によって回収される。
【0119】
モノマー分離を行わない場合のポリマー生成物の残存開環重合性モノマー含有量は、4モル%(40,000ppm)未満であるが、本実施形態では、モノマー分離を行うことにより残存開環重合性モノマー含有量を0.5モル%(5,000ppm)未満にすることができる。脱モノマー時の真空度は、10Torr以下が好ましく、1Torr以下がより好ましい。残存モノマーの含有量は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準、第3版改訂版、2004年6月追補、第3部、衛生試験法、P13」記載のラクチド量の測定方法に従って求めることができる。
【0120】
開環重合性モノマーを開環重合させる際の温度(重合反応温度)の下限は、特に限定されないが、170℃以上200℃以下が好ましい。さらに好ましくは170℃以上190℃以下である。開環重合性モノマーを含む原材料と、圧縮性流体とを式(2)の混合比で接触させて、開環重合性モノマーを開環重合させた場合には、重合時の温度を170℃以上200℃以下にすることにより、ポリマー鎖の切断が起こることなく粘度が下がる。ポリマー鎖の切断が起こらない場合は、熱安定性の高いポリマーを得ることができる。重合反応温度が170℃未満の場合、混合時のせん断力が大きくなって、ポリマー鎖の切断が起こり、熱安定性が不十分となる場合がある。
【0121】
【数1】
【0122】
反応部33で鎖延長反応させる際の温度(鎖延長反応温度)の下限は、特に限定されないが、170℃である。鎖延長反応温度が170℃未満であると、鎖延長剤種によっては、圧縮性流体による溶融に長い時間がかかったり、溶融が不十分であったり、触媒の活性が低くなったりする。これにより、重合時には反応速度が低下しやすくなり、定量的に重合反応を進めることができなくなる場合がある。
【0123】
得られたポリマーの残存開環重合性モノマー量は、10000質量ppm以下であることが好ましく、5000質量ppm以下であることがさらに好ましく、1000質量ppm以下がより好ましい。残存開環重合性モノマー量が10000質量ppmを超えると、粘度変化が大きくなり、薄膜フィルム成型が困難となる場合がある。
【実施例】
【0124】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で得られた脂肪族ポリエステル(ポリマー生成物)について、下記のようにして、分子量、分子量分布、ポリ乳酸系樹脂のアミド結合部含有量測定、残存開環重合性モノマーの含有量、イエローインデックス(YI値)、および溶融流動性を評価した。また、ポリマー生成物を成形して得られたフィルムについて、下記のようにしてフィッシュアイ状の異物があるかを確認した。
【0125】
<ポリマーの分子量測定>
GPC(gel permeationchromatography)により、以下の条件で測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー社製)
・カラム:TSK gel SuperH5000,TSK gel SuperH4000,TSK gel SuperH3000,TSK gel SuperH2000及びTSK gel SuperH1000(東ソー社製)
・温度:40℃
・溶媒:クロロホルム
・流速:1.0ml/分
【0126】
濃度0.5質量%の試料を1mL注入し、上記の条件で測定したポリマーの分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリマーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwを算出した。分子量分布はMwをMnで除した値である。
【0127】
<ポリ乳酸系樹脂のアミド結合部含有量測定>
鎖延長剤(オキサゾリン化合物,イソシアネート化合物,ポリカルボジイミド化合物)により鎖延長反応させて得られた脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸系樹脂等)の13C−NMR(装置:日本電子製ECA500、内部標準クロロホルム−d:δ=77ppm)を測定した。スペクトルにおいて、δ=170〜180ppm:ポリ乳酸主鎖のエステル結合部の炭素由来、δ=150〜170ppm:アミド結合部の炭素由来以上2種の積分値の比率より、ポリ乳酸系樹脂におけるエステル結合部とアミド結合部の総量に対するアミド結合部の含有量を決定し、用いた原料ポリ乳酸の数平均分子量とからポリ乳酸系樹脂1分子あたりのアミド結合ユニット数を算出した。なお、エステル結合部とは、脂肪族ポリエステル主鎖における各エステル結合を形成する各エステル基を示す。アミド結合部とは、脂肪族ポリエステルにおける各アミド結合を形成する各アミド基を示す。
【0128】
<残存モノマーの含有量>
得られたポリ乳酸組成物等の脂肪族ポリエステル組成物の残存モノマーの含有量は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準、第3版改訂版、2004年6月追補、第3部、衛生試験法、P13」記載のラクチド量の測定方法に従って求めた。具体的には、ポリ乳酸組成物等の脂肪族ポリエステル組成物をジクロロメタンに均一に溶解し、アセトン/シクロヘキサン混合溶液を加えてポリ乳酸組成物の脂肪族ポリエステル組成物を再沈させた上澄み液を、水素炎検出器(FID)付ガスクロマトグラフ(GC)に供し、残存モノマー(ラクチド及びグリコリド等)を分離し、内部標準法により定量することによりポリ乳酸組成物等の脂肪族ポリエステル組成物中の残存モノマーの含有量を測定した。なお、GCの測定は以下の条件で行うことができる。各表中の「ppm」は質量分率を示す。
【0129】
<<GC測定条件>>
・カラム :キャピラリーカラム(J&W社製、DB−17MS、長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)
・内部標準 :2,6−ジメチル−γピロン
・カラム流量:1.8mL/分
・カラム温度:50℃で1分間保持。25℃/分間で定速昇温して320℃で5分間保持。
・検出器 :水素炎イオン化法(FID)
【0130】
<イエローインデックス(YI値)>
得られたポリマー組成物について、厚み2mm樹脂ペレットを作製してJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機株式会社製)を用いて測定し、YI値を求めた。
【0131】
<溶融流動性>
得られたポリ乳酸組成物について、JIS−K7210に準拠して、温度210℃、荷重2.16kgでメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0132】
<フィルムの評価方法>
縦1,000mm、横1,000mmのサンプルを目視で観察し、フィッシュアイ(ゲル状)の異物があるかを確認した。
【0133】
(実施例1−1)
図3の重合反応装置100を用いて、L−ラクチドの開環重合を行った。重合反応装置100の構成を以下に示す。
(1)タンク1、及び計量フィーダー2(日本精密株式会社製、プランジャーポンプNP−S462)について、タンク1には、開環重合性モノマーとしてL−ラクチド(ピューラック社製、融点:100℃)と、重合開始剤としてのヘキサノールとの99.900:0.100(モル比)混合物を充填した。なお、タンク1内でラクチドを融点以上に加熱することにより、液体の状態とした。
(2)タンク3、及び計量フィーダー4については、本実施例では使用しなかった。
(3)タンク5、及び計量ポンプ6については、本実施例では使用しなかった。
(4)タンク7としては、炭酸ガスボンベを用いた。
(5)タンク27としては、ジメチルエーテルを用いた。
(6)タンク21、及び計量フィーダー22(日本精密株式会社製、プランジャーポンプNP−S462)について、タンク21には、鎖延長剤としての2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)(和光純薬工業製)を充填した。なお、タンク21内で2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)を170℃に加熱することにより、液体の状態で使用した。
(7)タンク11、及び計量ポンプ12(日本分光株式会社製、インテリジェントHPLCポンプ、PU−2080)について、タンク11には、触媒としてのジ(2−エチルヘキシル酸)スズを充填した。
(8)接触部9としては、互いに噛み合うスクリュウを取付けた二軸攪拌装置(シリンダー内径30mm、二軸同方向回転、回転速度30rpm)を用いた。
(9)接触部29としては、互いに噛み合うスクリュウを取付けた二軸攪拌装置(シリンダー内径30mm、二軸同方向回転、回転速度30rpm)を用いた。
(10)反応部13としては、二軸混練機(東芝株式会社製、TME−18)(シリンダー内径40mm、二軸同方向回転、回転速度60rpm)を用いた。
(11)反応部33としては、二軸混練機(東芝株式会社製、TME−18)(シリンダー内径40mm、二軸同方向回転、回転速度60rpm)を用いた。
【0134】
まず、計量フィーダー2を作動させて、タンク1内の原材料(ラクチド、ヘキサノール)を4g/分間の供給速度で接触部9の二軸攪拌装置に連続的に定量供給した。また、計量ポンプ8を作動させて、タンク7内の炭酸ガスを、原材料100質量部に対して10質量部となるように、接触部9の二軸攪拌装置に連続的に供給した。これにより、接触部9の二軸攪拌装置内で、ラクチド及びヘキサノールの各原材料と圧縮性流体とを連続的に接触させるとともに、各原材料を溶融させた。
【0135】
接触部9で溶融させた各原材料は、送液ポンプ10によって反応部13の二軸混練機に送液した。一方、計量ポンプ12を作動させて、タンク11に貯蔵された重合触媒としてのジ(2−エチルヘキシル酸)スズを、開環重合性モノマーとしてのラクチドに対して500質量ppmとなるように反応部13内に供給した。これにより、反応部13内でジ(2−エチルヘキシル酸)スズの存在下、ラクチドの開環重合を連続的に行った(重合工程)。これにより、反応部13では中間体としての開環重合物(ポリ乳酸)が連続的に得られた。
【0136】
計量ポンプ28を作動させて、タンク27内のジメチルエーテルを、ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、二酸化炭素30モル%に対して70モル%となるように、接触部29の二軸攪拌装置に連続的に供給した。これにより、接触部9の二軸攪拌装置内で、二酸化炭素、開環重合物(ポリ乳酸)及びジメチルエーテルを連続的に接触させるとともに、二酸化炭素および開環重合物にジメチルエーテルを溶解させた。
【0137】
計量フィーダー22を作動させて、タンク21に貯蔵された鎖延長剤としての2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)を供給速度0.18g/分で接触部29の二軸攪拌装置に連続的に定量供給した。鎖延長剤としての2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)は、開環重合性モノマー(L−ラクチド)100モルに対して、1.5モル添加した。
【0138】
反応部13で重合して得られた溶融状態の中間体としての開環重合物(ポリ乳酸)、低極性溶媒かつ圧縮性流体であるジメチルエーテル、及び鎖延長剤としての2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)を、反応部33の二軸混練機に連続的に供給した。これにより、反応部33内で、中間体としての開環重合物(ポリ乳酸)、低極性溶媒かつ圧縮性流体であるジメチルエーテル、及び鎖延長剤としての2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)との混合を連続的に行った(混合工程)。
【0139】
なお、実施例1−1において、接触部9、接触部29、反応部13、反応部33内の圧力は、圧調整バルブ34の開閉度を調整することにより15MPaとした。接触部(9,29)の二軸攪拌装置における送液経路の温度は、入口で150℃、出口で150℃である。反応部13、反応部33の二軸混練機における送液経路の温度は、入口、出口ともに170℃である。
【0140】
接触部9、反応部13内の原材料等の各平均滞留時間は、各接触部9、反応部13の配管系及び長さを調整することにより、60分間とした。また、接触部29、反応部33内の原材料等の各平均滞留時間は、各接触部29、反応部33の配管系及び長さを調整することにより、20分間とした。
【0141】
反応部33の先端には、圧調整バルブ34が取付けられており、この圧調整バルブ34からポリマー生成物としてのポリ乳酸組成物Pを連続的に送り出した。得られたポリマー生成物について、汎用のインフレ成形機で成形温度200℃、厚み25μmとなるようフィルム成形を行った。
【0142】
得られたポリ乳酸組成物について、上記のようにして、分子量、分子量分布、ポリ乳酸系樹脂のアミド結合部含有量測定、残存開環重合性モノマーの含有量、イエローインデックス(YI値)、及び溶融流動性を評価した。得られた延伸フィルムについて、フィッシュアイ状の異物があるかを上記の方法で確認した。また、結果を表1に示す。なお、各表のアミド結合部含有量の項目に記載の「E」は、指数表記を示す。
【0143】
(実施例1−2〜1−5及び比較例1−1〜1−5)
実施例1−1において、下記表1又は表4に示すように、重合開始剤の種類及び量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の種類及び量、及び温度の少なくとも一つを変えた以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜1−5及び比較例1−1〜1−5のポリ乳酸組成物を作製した。得られた各ポリ乳酸組成物について、実施例1−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表1又は表4に示した。
【0144】
(実施例1−6)
実施例1−1において、下記表1に示すように、開環重合性モノマーをグリコリドに変更し、重合開始剤の量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の量及び温度を変えた以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−6のポリ乳酸組成物を作製した。得られたポリ乳酸組成物について、実施例1−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表1に示した。
【0145】
(実施例1−7、1−8)
実施例1−1において、下記表1に示すように、鎖延長剤をオキサジン化合物、もしくはオキサゾリン基含有ポリマーに変更し、重合開始剤の量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の量及び温度を変えた以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−7、1−8のポリ乳酸組成物を作製した。なお、実施例1−8の鎖延長剤としては、オキサゾリン基含有ポリマーであるエポクロス(日本触媒社製K−2020E)を使用した。得られた実施例1−7,1−8のポリ乳酸組成物について、実施例1−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表1に示した。
【0146】
(実施例2−1)
実施例1−1で使用したものと同様の重合反応装置100を用いて、L−ラクチドの開環重合を行った。ただし、実施例2−1においては、タンク1には、開環重合性モノマーとしてL−ラクチド(ピューラック社製、融点:100℃)と、重合開始剤としてのエチレングリコールとの99.920:0.080(モル比)混合物を充填した。なお、タンク1内でラクチドを融点以上に加熱することにより、液体の状態とした。また、実施例2−1においては、タンク21には、鎖延長剤としてのイソホロンジイソシアネートを充填した。なお、タンク21内でイソホロンジイソシアネートを170℃に加熱することにより、液体の状態で使用した。
【0147】
まず、計量フィーダー2を作動させて、タンク1内の原材料(ラクチド、エチレングリコール)を4g/分間の供給速度で接触部9の二軸攪拌装置に連続的に定量供給した。また、計量ポンプ8を作動させて、タンク7内の炭酸ガスを、原材料100質量部に対して10質量部となるように、接触部9の二軸攪拌装置に連続的に供給した。これにより、接触部9の二軸攪拌装置内で、ラクチド及びエチレングリコールの各原材料と圧縮性流体とを連続的に接触させるとともに、各原材料を溶融させた。
【0148】
接触部9で溶融させた各原材料は、送液ポンプ10によって反応部13の二軸混練機に送液された。一方、計量ポンプ12を作動させて、タンク11に貯蔵された重合触媒としてのジ(2−エチルヘキシル酸)スズを、開環重合性モノマーとしてのラクチドに対して500質量ppmとなるように反応部13内に供給した。これにより、反応部13内でジ(2−エチルヘキシル酸)スズの存在下、ラクチドの開環重合を連続的に行った(重合工程)。これにより、反応部13では中間体としての開環重合物(ポリ乳酸)が連続的に得られた。
【0149】
計量ポンプ28を作動させて、タンク27内のジメチルエーテルを、ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、二酸化炭素30モル%に対して70モル%となるように、接触部29の二軸攪拌装置に連続的に供給した。これにより、接触部9の二軸攪拌装置内で、二酸化炭素、開環重合物(ポリ乳酸)及びジメチルエーテルを連続的に接触させるとともに、二酸化炭素および開環重合物にジメチルエーテルを溶解させた。
【0150】
計量フィーダー22を作動させて、タンク21に貯蔵された鎖延長剤としてのイソホロンジイソシアネートを供給速度0.11g/分で接触部29の二軸攪拌装置に連続的に定量供給した。鎖延長剤としてのイソホロンジイソシアネートは、開環重合性モノマー(L−ラクチド)100モルに対して4モル添加した。
【0151】
反応部13で重合して得られた溶融状態の中間体としての開環重合物(ポリ乳酸)、低極性溶媒かつ圧縮性流体であるジメチルエーテル、及び鎖延長剤としてのイソホロンジイソシアネートを、反応部33の二軸混練機に連続的に供給した。これにより、反応部33内で、中間体としての開環重合物(ポリ乳酸)、低極性溶媒かつ圧縮性流体であるジメチルエーテル、及び鎖延長剤としてのイソホロンジイソシアネートの混合を連続的に行った(混合工程)。
【0152】
なお、実施例2−1において、接触部9、接触部29、反応部13、反応部33内の圧力は、圧調整バルブ34の開閉度を調整することにより15MPaとした。接触部(9,29)の二軸攪拌装置における送液経路の温度は、入口で150℃、出口で150℃である。反応部13、反応部33の二軸混練機における送液経路の温度は、入口、出口ともに170℃である。接触部9、反応部13内の原材料等の各平均滞留時間は、各接触部9、反応部13の配管系及び長さを調整することにより、60分間とした。また、接触部29、反応部33内の原材料等の各平均滞留時間は、各接触部29、反応部33の配管系及び長さを調整することにより、20分間とした。反応部33の先端には、圧調整バルブ34が取付けられており、この圧調整バルブ34から生成物としてのポリ乳酸組成物Pを連続的に送り出した。得られたポリマー生成物について、汎用のインフレ成形機で成形温度200℃、厚み25μmとなるようフィルム成形を行った。得られたポリ乳酸組成物について、上記のようにして、分子量、分子量分布、ポリ乳酸系樹脂のアミド結合部含有量測定、残存開環重合性モノマーの含有量、イエローインデックス(YI値)、及び溶融流動性を評価した。得られた延伸フィルムについて、フィッシュアイ状の異物があるかを上記の方法で確認した。また、結果を表2に示す。
【0153】
(実施例2−2〜2−5及び比較例2−1〜2−5)
下記表2又は表4に示すように、重合開始剤の種類及び量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の種類及び量、及び温度の少なくとも一つを変えた以外は、実施例2−1と同様にして、実施例2−2〜2−5及び比較例2−1〜2−5のポリ乳酸組成物を作製した。得られた各ポリ乳酸組成物について、実施例2−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表2又は表4に示した。
【0154】
(実施例2−6)
実施例2−1において、下記表2に示すように、開環重合性モノマーをグリコリドに変更し、重合開始剤の量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の量を変えた以外は、実施例2−1と同様にして、実施例2−6のポリ乳酸組成物を作製した。
得られた実施例2−6のポリ乳酸組成物について、実施例2−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表2に示した。
【0155】
(実施例2−7、2−8)
実施例2−1において、下記表2に示すように、鎖延長剤をヘキサメチレンジイソシアネート又はトリレンジイソシアネートに変更し、重合開始剤の量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の量及び温度を変えた以外は、実施例2−1と同様にして、実施例2−7、2−8のポリ乳酸組成物を作製した。得られた実施例2−7,2−8のポリ乳酸組成物について、実施例2−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表2に示した。
【0156】
(実施例3−1)
実施例1−1で使用したものと同様の重合反応装置100を用いて、L−ラクチドの開環重合を行った。ただし、実施例3−1においては、タンク21に鎖延長剤としてのスタバクゾールP(ラインケミー社製)を充填した。なお、スタバクゾールPは20質量%塩化メチレン溶液に溶解させることで、液体の状態で使用した。鎖延長剤としては、カルボジイミド化合物であるスタバクゾール(ラインケミージャパン社製 P)を使用した。
【0157】
計量ポンプ28を作動させて、タンク27内のジメチルエーテルを、ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、二酸化炭素30モル%に対して70モル%となるように、接触部29の二軸攪拌装置に連続的に供給した。これにより、接触部9の二軸攪拌装置内で、二酸化炭素、開環重合物(ポリ乳酸)及びジメチルエーテルを連続的に接触させるとともに、二酸化炭素および開環重合物にジメチルエーテルを溶解させた。
【0158】
計量フィーダー22を作動させて、タンク21に貯蔵された鎖延長剤としてのスタバクゾールPを供給速度0.15g/分で接触部29の二軸攪拌装置に連続的に定量供給した。鎖延長剤としてのスタバクゾールPは、開環重合性モノマー(L−ラクチド)100質量部に対して、5質量部添加した。
反応部13で重合して得られた溶融状態の中間体としての開環重合物(ポリ乳酸)、低極性溶媒かつ圧縮性流体であるジメチルエーテル、及び鎖延長剤としてのスタバクゾールPを、反応部33の二軸混練機に連続的に供給した。これにより、反応部33内で、中間体としての開環重合物(ポリ乳酸)、低極性溶媒かつ圧縮性流体であるジメチルエーテル、及び鎖延長剤としてのスタバクゾールPとの混合を連続的に行った(混合工程)。
【0159】
なお、実施例1において、接触部9、接触部29、反応部13、反応部33内の圧力は、圧調整バルブ34の開閉度を調整することにより15MPaとした。接触部(9,29)の二軸攪拌装置における送液経路の温度は、入口で150℃、出口で150℃である。反応部13、反応部33の二軸混練機における送液経路の温度は、入口、出口ともに170℃である。
【0160】
接触部9、反応部13内の原材料等の各平均滞留時間は、各接触部9、反応部13の配管系及び長さを調整することにより、60分間とした。また、接触部29、反応部33内の原材料等の各平均滞留時間は、各接触部29、反応部33の配管系及び長さを調整することにより、20分間とした。
【0161】
反応部33の先端には、圧調整バルブ34が取付けられており、この圧調整バルブ34から生成物としてのポリ乳酸組成物Pを連続的に送り出した。得られたポリマー生成物について、汎用のインフレ成形機で成形温度200℃、厚み25μmとなるようフイルム成形を行った。得られたポリ乳酸組成物について、上記のようにして、分子量、分子量分布、ポリ乳酸系樹脂のアミド結合部含有量測定、残存開環重合性モノマーの含有量、イエローインデックス(YI値)、及び溶融流動性を評価した。得られた延伸フイルムについて、フィッシュアイ状の異物があるかを上記の方法で確認した。また、結果を表3に示す。
【0162】
(実施例3−2〜3−5及び比較例3−1〜3−5)
実施例3−1において、下記表1又は表4に示すように、重合開始剤の種類及び量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の量、及び温度の少なくとも一つを変えた以外は、実施例3−1と同様にして、実施例3−2〜3−5及び比較例3−1〜3−5のポリ乳酸組成物を作製した。得られた各ポリ乳酸組成物について、実施例3−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表3又は表4に示した。
【0163】
(実施例3−6)
実施例3−1において、下記表3に示すように、開環重合性モノマーをグリコリドに変更し、重合開始剤の量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の量及び温度を変えた以外は、実施例3−1と同様にして、実施例3−6のポリ乳酸組成物を作製した。得られた実施例3−6のポリ乳酸組成物について、実施例3−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表3に示した。
【0164】
(実施例3−7)
実施例1において、下記表1に示すように、鎖延長剤をカルボジイミド化合物であるカルボジライト(日清紡社製LA−1)に変更し、重合開始剤の量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の量及び温度を変えた以外は、実施例3−1と同様にして、実施例3−7のポリ乳酸組成物を作製した。得られた実施例3−7のポリ乳酸組成物について、実施例3−1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表3に示した。
【0165】
(実施例4−1〜4−7,5−1〜5−7,6−1〜6−6,比較例4−1〜4−3,5−1〜5−3,6−1〜6−3)
実施例1−1において、重合時の温度、圧力、触媒量、開始剤量、低極性溶媒の量、鎖延長剤の種類及び量、及び温度の少なくとも一つを表5乃至7に示すように変え、製造装置として図4のポリマー製造装置100’を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、実施例4−1〜4−7,比較例4−1〜4−3のポリ乳酸組成物を作製した。なお、反応部13でラクチドを開環重合することで直鎖状のポリ乳酸のポリマー鎖が得られる。モノマー分離装置400における脱モノマー工程時の真空度は、表5乃至7に示した値とした。また、実施例4−7の鎖延長剤としては、オキサゾリン基含有ポリマーであるエポクロス(日本触媒社製K−2020E)を使用した。得られた各ポリ乳酸組成物について、実施例1−1と同様にして、諸特性を評価した。溶融流動性評価では、得られたポリ乳酸組成物に加えて、このポリ乳酸組成物を窒素雰囲気化210℃、30分加熱した後冷却したサンプルについても評価を行った。更に、得られたポリ乳酸組成物の係数α及び分子量保持率を以下のように求めた。
【0166】
<係数α算出方法>
GPC−MALS−VISCO法を用いて求めた。
装置:ゲル浸透クロマトグラフ−多角度光散乱光度計
構成:ポンプ 島津製作所 LC−20AD
検出器 示差屈折率計 Wyatt Technology製
Optilab rEX
多角度光散乱検出器 Wyatt Technology製
DAWN HELEOS
粘度検出器 Wyatt Technology製
VISCOSTAR−II
カラム:Shodex HFIP−806
温度:カラム40℃、検出器25℃
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(5mM トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)
流速:0.5mL/min
試料作製:試料6mgに溶媒5mLを加え、室温で穏やかに攪拌した。
注入量:0.2mL
データ処理:Wyatt Technology製データ処理システム(ASTRA)
【0167】
Viscotek HT-GPC(Malvern社製)により、溶媒クロロホルムを用いて得られたポリ乳酸組成物の測定を行った。RI、VISCO、MALS検出器を併用し、得られた絶対分子量と極限粘度からマルク−ホウインクプロットを作成し、係数αを求めた。
【0168】
<分子量保持率>
得られたポリ乳酸組成物について、窒素雰囲気下210℃で加熱30分後の分子量を測定し、加熱前後の重量平均分子量Mwに基づいて分子量保持率を求めた。
結果を表5〜7に示した。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】
【0174】
【表6】
【0175】
【表7】
【符号の説明】
【0176】
1,3,5,7,11,21,27 タンク
2,4,22 計量フィーダー
6,8,12,22,28 計量ポンプ
9,29 接触部
10 送液ポンプ
13 反応部
15 押出口金
34 圧調整バルブ
30 配管
100 重合反応装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0177】
【特許文献1】特開平8−259676号公報
【特許文献2】特開2011−208115号公報
【特許文献3】WO2004/033528号公報
【特許文献4】WO2009/110472号公報
【特許文献5】特開2006−63111号公報
【特許文献6】特開2013−189615号公報
図1
図2
図3
図4