特開2015-232114(P2015-232114A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2015232114-ゴム組成物及び空気入りタイヤ 図000006
  • 特開2015232114-ゴム組成物及び空気入りタイヤ 図000007
  • 特開2015232114-ゴム組成物及び空気入りタイヤ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232114(P2015-232114A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20151201BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20151201BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20151201BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20151201BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20151201BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20151201BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20151201BHJP
   C08J 5/00 20060101ALN20151201BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/22
   C08K3/36
   C08K3/04
   C08J3/20 BCEQ
   C08L91/00
   B60C1/00 A
   C08J5/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-93110(P2015-93110)
(22)【出願日】2015年4月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-101566(P2014-101566)
(32)【優先日】2014年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 達也
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA06
4F070AC11
4F070AC15
4F070AC23
4F070AC94
4F070AE01
4F070AE02
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC03
4F071AA12
4F071AA12X
4F071AA71
4F071AA81
4F071AB03
4F071AB18
4F071AB26
4F071AE04
4F071AE17
4F071AF13
4F071AF15
4F071AF22
4F071AH08
4F071BA01
4F071BB03
4F071BC04
4J002AC05W
4J002AC08X
4J002AE053
4J002DA038
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ006
4J002DJ017
4J002DJ036
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD023
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び引張性能をバランス良く改善することができるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】シス含量95モル%以上、ビニル含量1.2モル%以下、重量平均分子量53万以上の油展ブタジエンゴム、及び/又は結合スチレン量10〜60質量%、重量平均分子量80万以上のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、下記式で表され、かつ窒素吸着比表面積10〜60m/gの無機補強剤と、窒素吸着比表面積100m/g以上のシリカ及び/又は窒素吸着比表面積100m/g以上のカーボンブラックとを含み、前記油展ブタジエンゴムは、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、前記ゴム成分中における前記油展ブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムの合計含有量が10〜100質量%であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記無機補強剤の含有量が1〜70質量部、前記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が50質量部以上であるゴム組成物。
mM・xSiO・zH
(式中、MはAl、Mg、Ti、Ca及びZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、該金属の酸化物又は水酸化物であり、mは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス含量95モル%以上、ビニル含量1.2モル%以下、重量平均分子量53万以上の油展ブタジエンゴム、及び/又は結合スチレン量10〜60質量%、重量平均分子量80万以上のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、下記式で表され、かつ窒素吸着比表面積10〜60m/gの無機補強剤と、窒素吸着比表面積100m/g以上のシリカ及び/又は窒素吸着比表面積100m/g以上のカーボンブラックとを含み、
前記油展ブタジエンゴムは、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、
前記ゴム成分中における前記油展ブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムの合計含有量が10〜100質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記無機補強剤の含有量が1〜70質量部、前記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が50質量部以上であるゴム組成物。
mM・xSiO・zH
(式中、MはAl、Mg、Ti、Ca及びZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、該金属の酸化物又は水酸化物であり、mは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。)
【請求項2】
前記無機補強剤が水酸化アルミニウムである請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
少なくとも前記ゴム成分及び前記水酸化アルミニウムを排出温度150℃以上で混練して得られる請求項2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記油展ブタジエンゴムの重量平均分子量が70万以上、及び/又は前記スチレンブタジエンゴムの重量平均分子量が100万以上である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカの窒素吸着比表面積が160m/g以上、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積140m/g以上であって、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が60質量部以上である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
更に別途添加されるプロセスオイルの配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して14質量部以下である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
タイヤトレッド用である請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、トレッド、サイドウォール等、様々な部材により構成され、各部材に応じて諸性能が付与されている。路面と接触するトレッドには、安全性等の観点でウェットグリップ性能などの性能が要求され、水酸化アルミニウムの添加により当該性能を改善する方法が提案されているが、耐摩耗性や引張性能が悪化するという欠点があるため、一般公道用のタイヤに用いられることは少ない。
【0003】
また、溶液重合スチレンブタジエンゴムのスチレン量及びビニル量の増加や変性溶液重合スチレンブタジエンゴムによるtanδカーブの制御、シリカの増量によりtanδピークを高くすること、グリップレジンの添加、などの方法も挙げられるが、他の諸物性を維持しながら、ウェットグリップ性能を改善するのは難しいのが現状である。
【0004】
特許文献1には、特定のゴム成分や水酸化アルミニウムなどの特定の無機補強剤を用いて、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び加工性を向上させることが開示されているが、ウェットグリップ性能と耐摩耗性の両立の面では、未だ改善の余地があり、更に引張性能を含めた性能をバランス良く改善することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4559573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び引張性能をバランス良く改善することができるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シス含量95モル%以上、ビニル含量1.2モル%以下、重量平均分子量53万以上の油展ブタジエンゴム、及び/又は結合スチレン量10〜60質量%、重量平均分子量80万以上のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、下記式で表され、かつ窒素吸着比表面積10〜60m/gの無機補強剤と、窒素吸着比表面積100m/g以上のシリカ及び/又は窒素吸着比表面積100m/g以上のカーボンブラックとを含み、前記油展ブタジエンゴムは、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、前記ゴム成分中における前記油展ブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムの合計含有量が10〜100質量%であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記無機補強剤の含有量が1〜70質量部、前記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が50質量部以上であるゴム組成物に関する。
mM・xSiO・zH
(式中、MはAl、Mg、Ti、Ca及びZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、該金属の酸化物又は水酸化物であり、mは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。)
【0008】
本発明のゴム組成物は、前記無機補強剤が水酸化アルミニウムであることが好ましい。
【0009】
本発明のゴム組成物は、少なくとも前記ゴム成分及び前記水酸化アルミニウムを排出温度150℃以上で混練して得られることが好ましい。
【0010】
本発明のゴム組成物は、前記油展ブタジエンゴムの重量平均分子量が70万以上、及び/又は前記スチレンブタジエンゴムの重量平均分子量が100万以上であることが好ましい。
【0011】
本発明のゴム組成物は、前記シリカの窒素吸着比表面積が160m/g以上、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積140m/g以上であって、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が60質量部以上であることが好ましい。
【0012】
本発明のゴム組成物は、所定の硬さを確保しつつ、グリップ、摩耗性、引張性能を向上できる観点、及び練り時にフィラー、無機フィラーに分散トルクを付与しやすい観点から、更に別途添加されるプロセスオイルの配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して14質量部以下であることが好ましい。プロセスオイル、グリップレジンは、共に軟化剤に分類され、加工性、分散性を向上させるが、総量が多すぎると、硬さ(=E‘)を下げるデメリットがある。
【0013】
本発明のゴム組成物は、タイヤトレッド用であることが好ましい。
【0014】
本発明のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤもまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、特定のゴム成分と、所定の窒素吸着比表面積を有する所定の無機補強剤と、特定の窒素吸着比表面積を有するシリカ及び/又はカーボンブラックとを所定量配合したゴム組成物であるので、これを用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤは、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び引張性能をバランス良く改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ゴム配合の練り中や加硫中に生じるアルミとシリカの反応、又はタイヤ表面の水酸化アルミニウムと路面上のシリカとの間に生じる瞬間的な反応を示す図。
図2】ポリマーの分散の状態の模式図の一例。
図3】水酸化アルミニウムの示差走査熱分析曲線のイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のゴム組成物は、特定のゴム成分と、所定の窒素吸着比表面積を有する特定の無機補強剤と、特定の窒素吸着比表面積を有するシリカ及び/又はカーボンブラックとを所定量配合したものである。
【0018】
特定の窒素吸着比表面積を持つ水酸化アルミニウムなどの無機補強剤を添加することでウェットグリップ性能を改善できるが、これは、以下の(1)〜(3)の作用が発揮されることによる効果であると推察される。
【0019】
(1)配合した水酸化アルミニウム(Al(OH))などの無機補強剤が混練り中に一部がシリカ以上のモース硬度を持つアルミナ(Al)に転化したり、水酸化アルミニウムなどの無機補強剤がシリカと(共有又は脱水)結合し、微分散したシリカ鎖を介しゴム配合中に固定化されたりすることにより、金属酸化物塊や無機補強剤が路面の骨材上のミクロ凹凸(数十μmピッチ)にアンカー効果を発現し、それにより、ウェットグリップ性能が高まると考えられる。
(2)路面上の二酸化ケイ素とタイヤ表面上の水酸化アルミニウムなどの無機補強剤が走行中に接触する(擦れる)ことに伴って、図1で示されるような瞬間的な共有結合が形成され、ウェットグリップ性能が向上すると考えられる。
【0020】
(3)ウェット路面では、タイヤ表面が水膜を介して路面に接触する部位が存在し、通常、この水膜はタイヤと路面が直接接触する部位で発生する摩擦熱により蒸発すると考えられるが、例えば、水酸化アルミニウムが添加されていると、当該摩擦熱は、タイヤ表面の水酸化アルミニウムにおいて「Al(OH)→1/2Al+3/2HO」で示される吸熱反応が進行することにより、水膜(水分)の蒸発が抑制されると考えられる。仮に水膜が蒸発した場合はタイヤ表面と路面間に空間が形成されるため、路面とタイヤ接触面積が減少し、ウェットグリップ性能が低下する。
【0021】
このような従来の水酸化アルミニウムなどの無機補強剤の添加による作用効果でウェットグリップ性能が改善されるものの、通常は耐摩耗性や引張性能が悪化するため、これらをバランス良く改善することは難しい。本発明は、所定の窒素吸着比表面積を持つ水酸化アルミニウムなどの無機補強剤を添加しているため、耐摩耗性や引張性能の低下を抑制し、良好な性能を維持しながら、ウェットグリップ性能を改善され、これらの性能をバランス良く改善できる。本発明では、このような特定の無機補強剤に加えて、特定のゴム成分を用いるため、耐摩耗性及び引張性能も顕著に改善される。従って、本発明では、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び引張性能、ひいてはカットチッピング性の性能バランスが相乗的に改善される。
【0022】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、シス含量95モル%以上、ビニル含量1.2モル%以下、重量平均分子量53万以上の油展ブタジエンゴム(以下、「高分子量油展BR」ともいう)、及び/又は結合スチレン量10〜60質量%、重量平均分子量80万以上のスチレンブタジエンゴム(以下、「高分子量SBR」ともいう)を含む。これらの特定のゴム成分と上記所定の窒素吸着比表面積を持つ水酸化アルミニウムなどの無機補強剤とを組み合わせることにより、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び引張性能をバランス良く改善できる。
【0023】
上記高分子量油展BRと高分子量SBRとは単独で用いてもよく、併用してもよい。
上記高分子量油展BRと高分子量SBRとを併用した場合には、良好な低燃費性、ウェットグリップ性能を維持しながら、耐摩耗性がより顕著に改善され、コスト上昇を抑制しつつ、これらの性能バランスを改善できる。同時に、優れた耐チッピング性等の耐久性も得ることが可能である。
上記性能バランスや耐久性が改善される理由は明らかではないが、特定の高分子量油展ブタジエンゴムとすることでブタジエンゴムを柔らかくし、高分子量スチレンブタジエンゴムとすることでポリマーが切れ難くする。これらの2つの働きにより、図2(b)のように、ブタジエン相とスチレンブタジエン相が複雑に入り組んだ相を形成する。そのため、通常シリカが混和しにくいブタジエン相に多くのシリカが分配し、通常カーボンブラックが混和しにくいスチレンブタジエン相に多くのカーボンブラックが分配し、両ゴム相へ両フィラーが偏りなく分配・分散するため、各種性能が改善されるものと推察される。
【0024】
本明細書において油展ブタジエンゴムとは、ポリマー製造段階から、ブタジエンゴムに、油展成分としてオイルなどを添加したゴムを意味する。
上記高分子量油展BRのシス含量は、95モル%以上であり、好ましくは97モル%以上である。95モル%未満であると、良好な耐摩耗性、耐久性が得られない。なお、シス含量の上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
【0025】
上記高分子量油展BRのビニル含量は、1.2モル%以下であり、好ましくは1.0モル%以下である。1.2モル%を超えると、耐摩耗性、耐久性が低下するおそれがある。なお、ビニル含量の下限は特に限定されず、0モル%でもよい。
【0026】
上記高分子量油展BRの重量平均分子量(Mw)は、53万以上であり、好ましくは60万以上、より好ましくは70万以上である。一方、Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは100万以下、より好ましくは95万以下である。53万未満であると、耐摩耗性、耐久性に劣るおそれがある。100万を超えると、ポリマーの分散が困難、かつ、フィラーの取り込みが困難となり、耐久性が悪化する傾向がある。
【0027】
上記高分子量油展BRは、希土類元素系触媒を用いて、公知の方法で合成されたものである。
上記希土類元素系触媒は公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
【0028】
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前述のとおり、Nd系触媒の使用が高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
【0029】
上記高分子量油展BRの油展成分としては、パラフィンオイル、アロマオイル、ナフテンオイル、軽度抽出溶媒和物(MES(mild extraction solvates))、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE(treated distillate aromatic extracts))、溶媒残留物芳香族系抽出物((S−RAE)solvent residue aromatic extracts)等が挙げられる。なかでも、MES、TDAEが好ましい。耐摩耗性、グリップ性能の面で、特に好ましくは、TDAEである。また、氷上グリップ性能を求める場合には、ガラス転移温度(Tg)の低いMESが好ましい。
【0030】
上記高分子量油展BRの油展量、即ちブタジエン分100質量部に対する油展成分の含有量は特に限定されず、適宜設定すれば良く、通常、5〜100質量部、好ましくは10〜50質量部である。
【0031】
上記高分子量油展BRは、例えば、希土類系触媒を用いて公知の方法で調製したものを用いてもよく、市販品も使用可能である。市販品としては、ランクセス(株)製のBUNA−CB29 TDAE(Nd系触媒を用いて合成した希土類系BR、ゴム成分100質量部に対してTDAEを37.5質量部含有、シス含量:95.8モル%、ビニル含量:0.4モル%、Mw:76万)、ランクセス(株)製のBUNA−CB29 MES(Nd系触媒を用いて合成した希土類系BR、ゴム成分100質量部に対してMESを37.5質量部含有、シス含量:96.1モル%、ビニル含量:0.4モル%、Mw:73.7万)等が挙げられる。
【0032】
上記高分子量SBRは、結合スチレン量が10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは34質量%以上である。また、該結合スチレン量は、60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは46質量%以下である。結合スチレン量が10質量%未満であると、ウェットグリップ性能が不充分となるおそれがあり、60質量%を超えると、ポリマーの分散が困難になったり、低燃費性が悪化したりするおそれがある。
【0033】
上記高分子量SBRの重量平均分子量(Mw)は、80万以上、好ましくは90万以上、より好ましくは100万以上である。一方、Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは150万以下、より好ましくは130万以下である。80万未満であると、耐摩耗性が低下するおそれがあり、150万を超えると、ポリマーの分散が困難、かつ、フィラーの取り込みが困難となり、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0034】
上記高分子量SBRのビニル含量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上である。また、該ビニル含量は、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果を充分に発揮できる。
【0035】
上記高分子量SBRとしては、特に限定されず、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)などが挙げられ、油展されていても、油展されていなくてもよい。なかでも、耐摩耗性の観点から、油展E−SBRが好ましく、また、油展各種シリカ用変性SBR(各種変性剤でポリマーの末端や主鎖が変性された油展SBRなど)も使用可能である。
【0036】
上記油展SBRとは、ポリマー製造段階から、スチレンブタジエンゴムに油展成分としてオイルなどを添加したSBRを意味する。上記油展成分としては、上記の高分子量油展BRに用いられるものと同様のもの等が挙げられる。なかでも、アロマオイル、TDAE、ナフテンオイル、MESが好ましい。
【0037】
上記油展SBRの油展量、即ちスチレンブタジエンゴム100質量部に対する油展成分の含有量は特に限定されず、適宜設定すれば良く、通常、5〜100質量部、好ましくは10〜50質量部である。
【0038】
上記高分子量SBRは、例えば、アニオン重合法、溶液重合法、乳化重合法等、公知の方法を用いて調製でき、市販品も使用可能である。市販品としては、日本ゼオン(株)製のNipol 9548、JSR(株)製の0122等が挙げられる。
【0039】
なお、本明細書において、BRのシス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)及びビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)、SBRのビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法により測定でき、SBRの結合スチレン量は、H−NMR測定により算出される。BR、SBRの重量平均分子量(Mw)は、実施例で示す方法により、求めることができる。
【0040】
上記ゴム成分中における上記高分子量油展BR及び上記高分子量SBRの合計含有量は、10質量%以上、好ましくは12質量%以上である。10質量%未満であると、耐摩耗性及び引張性能が低下する。上記含有量の上限は特になく、100質量%であってもよい。
なお、上記高分子量油展BRの含有量は、ゴム固形分、即ちブタジエンゴム成分の含有量を意味する。同様に、高分子量SBRとして油展SBRを用いる場合には、含まれるスチレンブタジエンゴム成分の含有量を意味する。
【0041】
上記高分子量油展BRと上記高分子量SBRとを併用する場合、高分子量油展BR分及び高分子量SBR分の配合比率(BR固形成分質量/SBR固形成分質量)は、好ましくは10/90〜80/20、より好ましくは12/88〜70/30、更に好ましくは15/85〜67/33である。当該配合比率が10/90未満の場合や80/20を超える場合、併用の効果が充分に発揮されない傾向がある。なお、ライトトラック用タイヤの場合、単位面積当たりの接地面圧力が高く、ウェットグリップ性能は自動的に高くなるため、SBR分は比較的少量で良い。
【0042】
本発明のゴム組成物は、上記高分子量油展BR、高分子量SBR以外の他のゴム成分を含んでもよい。
上記他のゴム成分としては、上記高分子量油展BR以外のブタジエンゴム(非油展BR等)や、上記高分子量SBR以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)や、天然ゴム(NR)やイソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。
【0043】
本発明のゴム組成物は、下記式で表され、かつ特定の窒素吸着比表面積を有する無機補強剤を含む。
mM・xSiO・zH
(式中、MはAl、Mg、Ti、Ca及びZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、該金属の酸化物又は水酸化物であり、mは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。)
【0044】
上記無機補強剤としては、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、チタン白、チタン黒、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウムマグネシウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸マグネシウム、ジルコニウム、酸化ジルコニウムなどがあげられる。これらの無機化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、空気と接触して形成される酸化皮膜によって引っ掻き効果が生じてウェットグリップ性能が改善されるとともに、良好な耐摩耗性も得られるという点から、MがAl又はZrの無機補強剤が好ましく、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムがより好ましい。更に良好な練り生産性、ロール加工性も得られるという観点では、水酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0045】
上記無機補強剤の窒素吸着比表面積(BET値)は、10〜60m/gである。上記範囲外では、耐摩耗性及びウェットグリップ性能が悪化するおそれがある。該BET値の下限は、好ましくは12m/gである。また、BET値の上限は、好ましくは50m/g、より好ましくは40m/g、更に好ましくは20m/gである。
なお、本明細書においてBET値は、ASTM D3037−81に準じて測定される値を意味する。
【0046】
上記無機補強剤の平均粒子径は、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは0.69μm以下、更に好ましくは0.6μm以下である。また、該平均粒子径は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.25μm以上、更に好ましくは0.4μm以上である。1.5μmを超えると、耐摩耗性及びウェットグリップ性能が低下するおそれがあり、0.2μm未満であると、耐摩耗性、加工性が低下するおそれがある。なお、無機補強剤の平均粒子径は、数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0047】
上記無機補強剤のモース硬度は、タイヤの耐摩耗性やウェットグリップ性能の確保や、バンバリーミキサーや押出機の金属摩耗を抑える観点から、シリカ並の7又はそれ未満であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。モース硬度は、材料の機械的性質の一つで古くから鉱物関係で汎用されている測定法であり、硬さを計りたい物質(水酸化アルミニウム等)を標準物質でこすり、ひっかき傷の有無でモース硬度を測定する。
【0048】
特に、モース硬度が7未満で、かつ該無機補強剤の脱水反応物のモース硬度が8以上の無機補強剤を使用することが好ましい。例えば、水酸化アルミニウムは、モース硬度約3で、バンバリーやロールの摩滅(摩耗)を防止するとともに、走行中の振動・発熱や一部混練りにより表層が脱水反応(転移)して、モース硬度約9のアルミナへ転化し、路面石以上の硬度となるので、優れた耐摩耗性やウェットグリップ性能が得られる。ここで、水酸化アルミニウムの内部全てが転化する必要はなく、一部の転化で路面の引っ掻き機能を発現できる。また、水酸化アルミニウムとアルミナは、水、塩基、酸に対して安定であり、加硫の阻害や酸化劣化の促進もない。なお、該無機補強剤の転移後のモース硬度は、より好ましくは9以上であり、上限は特に制限されない。ダイヤモンドは最高値10である。
【0049】
上記無機補強剤は、熱分解開始温度(DSC吸熱開始温度)が160〜500℃のものが好ましく、170〜400℃のものがより好ましい。160℃未満では、混練中に熱分解又は再凝集が進みすぎ、練り機のローター羽又は容器の壁等の金属摩耗が行き過ぎたりするおそれがある。なお、無機補強剤の熱分解開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)を実施して求められる。また、熱分解には、脱水反応も含まれる。
【0050】
上記無機補強剤としては、上記BET値を有する市販品を使用でき、また、無機補強剤に粉砕などの処理を施して上記特性を有する粒子に調整した処理品なども使用可能である。粉砕処理を施す場合、湿式粉砕、乾式粉砕(ジェットミル、カレントジェットミル、カウンタージェットミル、コントラプレックスなど)等、従来公知の方法を適用できる。
また、必要に応じて、医薬、バイオ関係で頻用されるメンブランフィルター法にて分取し、所定のBET値を有するものを作製し、ゴム配合剤として使用することもできる。
【0051】
上記無機補強剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。また、該配合量は、70質量部以下、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下である。70質量部を超えると、耐摩耗性が他の配合剤の調整で補えないほど悪化し、また、引張り強度等が悪化するおそれがある。
【0052】
本発明のゴム組成物は、特定範囲のBET値を有するシリカ及び/又はカーボンブラックを含む。上記シリカとカーボンブラックとは単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0053】
上記シリカは、BET値が100m/g以上である。BET値が100m/g以上のシリカを配合することにより、充分な耐摩耗性とウェットグリップ性能とを得ることができる。
上記シリカのBET値は、より好ましくは110m/g以上、更に好ましくは160m/g以上である。また、該BET値は、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。300m/gを超えると、加工性及び燃費性能が低下するおそれがある。
【0054】
上記カーボンブラックは、BET値が100m/g以上である。BET値が100m/g以上のカーボンブラックを配合することにより、充分な耐摩耗性とウェットグリップ性能とを得ることができる。
上記カーボンブラックのBET値は、より好ましくは110m/g以上、更に好ましくは140m/g以上である。また、該BET値は、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。300m/gを超えると、加工性及び燃費性能が低下するおそれがある。
【0055】
上記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して50質量部以上、好ましくは60質量部以上である。50質量部未満であると、充分な耐摩耗性及びウェットグリップ性能が得られないおそれがある。また、該合計含有量は、好ましくは130質量部以下、より好ましくは110質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。130質量部を超えると、低燃費性が低下するおそれがある。
【0056】
本発明のゴム組成物には、シランカップリング剤を配合してもよく、例えば、下記式(I)で表される化合物を好適に使用できる。ゴム成分及びシリカとともに下記式(I)で表されるシランカップリング剤を配合することで、シリカを良好に分散させ、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性を顕著に改善できる。また、下記式(I)で表されるシランカップリング剤はゴム焼けを起こしにくいため、製造時、高温で排出できる。
(C2p+1O)Si−C2q−S−CO−C2k+1 (I)
(式中、pは1〜3の整数、qは1〜5の整数、kは5〜12の整数である。)
【0057】
pは1〜3の整数であるが、2が好ましい。pが4以上ではカップリング反応が遅くなる傾向がある。
【0058】
qは1〜5の整数であるが、2〜4が好ましく、3がより好ましい。qが0または6以上では合成が困難である。
【0059】
kは5〜12の整数であるが、5〜10が好ましく、6〜8がより好ましく、7が更に好ましい。
【0060】
上記式(I)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXTなどがあげられる。上記式(I)で表されるシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、その他のシランカップリング剤、例えば、Momentive社製のNXT−Z45やEVONIK−DEGUSSA社製のSi69、Si75などと併用してもよい。なお、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部、更に好ましくは2〜7質量部である。上記範囲内であると、本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0061】
本発明におけるゴム組成物は、軟化点−20〜160℃のクマロンインデン樹脂及び/又は軟化点100〜170℃のテルペン系樹脂を含んでもよい。上記クマロンインデン樹脂及び/又はテルペン系樹脂を配合することで、耐摩耗性及び引張性能をより改善することができる。
【0062】
クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0063】
上記クマロンインデン樹脂の軟化点は−20〜160℃である。上限は、好ましくは145℃以下、より好ましくは130℃以下である。下限は、好ましくは−10℃以上、より好ましくは−5℃以上である。軟化点が160℃を超えると、練り中の分散性が悪化し、低燃費性が悪化する傾向がある。軟化点が−20℃未満であると、製造が困難な上に、他の部材への移行性、揮発性が高く、使用中に性能が変化するおそれがある。
なお、本明細書において、上記クマロンインデン樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0064】
テルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β−ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂などを使用できる。ここで、芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンなどが挙げられ、また、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
【0065】
テルペン系樹脂の軟化点は、100〜170℃である。上限は、好ましくは165℃以下、より好ましくは160℃以下である。下限は、好ましくは105℃以上、より好ましくは108℃以上、更に好ましくは112℃以上である。170℃を超えると、混練の際に分散しにくくなる傾向がある。100℃未満であると、NR相やSBR相とBR相との微細化が生じ難くなるおそれがある。なお、本発明において、上記テルペン系樹脂の軟化点は、上記クマロンインデン樹脂の軟化点の測定方法と同様の方法を用いることができる。
【0066】
上記クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。0.5質量部未満であると、耐摩耗性や引張性能の向上が不充分となるおそれがあり、60質量部を超えると、耐摩耗性及び引張性能の向上は見られず、低燃費性が悪化するおそれがある。
【0067】
上記テルペン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。1質量部未満であると、耐摩耗性及び引張性能の向上が不充分となるおそれがあり、40質量部を超えると、耐摩耗性及び引張性能の向上は見られず、低燃費性が悪化するおそれがある。
【0068】
本発明のゴム組成物は、通常、硫黄、ハイブリッド架橋剤等の架橋剤を含有する。硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。ハイブリッド架橋剤としては、市販品KA9188等が挙げられる。
【0069】
本発明ゴム組成物において、架橋剤由来の全硫黄量は、ゴム固形分100質量部に対して、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上である。また、該全硫黄量は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.6質量部以下、更に好ましくは1.4質量部以下である。0.4質量部未満であると、加硫後の硬度(Hs)や隣接ゴム配合との共架橋が充分に得られないおそれがあり、2.0質量部を超えると、耐摩耗性が悪化するおそれがある。なお、架橋剤由来の全硫黄量とは、仕上げ練りで投入する全架橋剤中に含まれる純硫黄成分量であり、例えば、架橋剤として不溶性硫黄(オイル含有)を用いる場合はオイル分を除いた純硫黄量を意味する。
【0070】
本発明のゴム組成物は、上記高分子量油展BRや油展SBR等、油展ゴムに含まれる油以外に、別途添加されるプロセスオイルの配合量が、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは14質量部以下、より好ましくは7質量部以下であり、配合しなくてもよい。別途添加されるプロセスオイルの配合量を14質量部以下とすることで、所定の硬さを確保しつつ、グリップ、摩耗性、引張性能を向上することができ、また、練り時にフィラー、無機フィラーに分散トルクを付与しやすくなる。
【0071】
本発明のゴム組成物には、上記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0072】
本発明のゴム組成物は、ベース練り工程、仕上げ練り工程等の混練工程を経る公知の方法で調製できる。混練工程は、例えば、混練機を用いて、これらの成分を混練することにより実施できる。混練機としては従来公知のものを使用でき、例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどが挙げられる。
【0073】
上記ベース練り工程等、少なくとも上記ゴム成分及び上記無機補強剤を混練する工程(例えば、ベース練り工程を1工程で実施する場合は当該工程、ベース練り工程を後述する分割したベース練り工程として実施する場合は上記無機補強剤を投入してゴム成分と混練する工程)における排出温度は、150℃以上、好ましくは155℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは165℃以上、特に好ましくは170℃以上である。例えば、水酸化アルミニウムの熱分解(脱水反応)は図3に示すような温度域、すなわち、水酸化アルミニウムの熱分解開始温度(DSC吸熱開始温度)の吸熱ピークは220〜350℃であるものの、ゴム練り試験でのウェットグリップ性能や耐摩耗性から判断して、図1に示すようなシリカとの脱水反応は140℃付近から発生していると推察されるため、上記排出温度とすることで、適度に水酸化アルミニウムのアルミナへの転化が起こり、上記(1)〜(3)の作用がバランス良く発揮され、ウェットグリップ性能を顕著に改善できる。150℃未満であると、ゴム組成物内の水酸化アルミニウムのアルミナへの転化する量が少なく、ウェットグリップ性能が低下するおそれがある。一方、排出温度の上限は特に限定されないが、所望の性能が得られるように、ゴム焼けが発生しない範囲で、適宜調整すればよいが、好ましくは190℃以下、より好ましくは185℃以下である。
【0074】
上記ベース練り工程は、上記ゴム成分、無機補強剤等を1工程でベース練り工程を行う方法の他、ゴム成分、カーボンブラック、シリカ2/3量、シランカップリング剤2/3量を混練するX練り、X練りで混練した混練物、残りのシリカ、残りのシランカップリング剤、硫黄及び加硫促進剤を除くその他の成分を混練するY練り、Y練りで混練した混練物を再混練するZ練り等に分割したベース練り工程でもよい。なお、この場合、上記無機補強剤の混練時期は、X練り、Y練り、Z練り等、いずれのタイミングでもよい。
【0075】
上記ベース練り工程の後、例えば、得られた混練物1に、上記と同様の混練機を用いて、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等の成分を混練する仕上げ練り工程(排出温度は80〜110℃等)を行い、更に得られた混練物2(未加硫ゴム組成物)を130〜190℃で5〜30分間加硫反応させる加硫工程を行うことにより、本発明のゴム組成物を製造できる。
【0076】
本発明のゴム組成物を用いることにより、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び引張性能をバランス良く改善したゴム製品を得ることができる。なかでも、空気入りタイヤのトレッドに用いることが好ましい。また、本発明のゴム組成物は、履物の裏底用ゴム等にも好適である。
【0077】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて成形し、更に他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製した後、その未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、空気入りタイヤを製造できる。
【0078】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適であり、それぞれのサマータイヤ、スタッドレスタイヤとして使用可能である。
【実施例】
【0079】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0080】
以下に、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
<ブタジエンゴム>
BR1:ランクセス社製のBUNA−CB29 TDAE(Nd触媒を用いて合成されたNd系BR、シス含量95.8モル%、ビニル含量0.4モル%、重量平均分子量76万、ゴム成分100質量部に対してTDAEオイルを37.5質量部含有)
BR2:ランクセス社製のBUNA−CB24(Nd触媒を用いて合成されたBR、非油展、シス含量97.0モル%、ビニル含量0.7モル%、重量平均分子量54万、Tg−110℃)
BR3:宇部興産社製のBR150B(Co系触媒を用いて合成されたCo系BR、シス含量96.2モル%、ビニル含量2.1モル%、重量平均分子量43万、Tg−108℃)
【0081】
BR1〜3の物性値を表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
<スチレンブタジエンゴム>
以下の方法により、SBR1〜4を調製した。
まず、製造で用いた各種薬品について説明する。
乳化剤(1):ハリマ化成(株)製のロジン酸石鹸
乳化剤(2):和光純薬工業(株)製の脂肪酸石鹸
電解質:和光純薬工業(株)製のリン酸ナトリウム
スチレン:和光純薬工業(株)製のスチレン
ブタジエン:高千穂商事(株)製の1,3−ブタジエン
分子量調整剤:和光純薬工業(株)製のtert−ドデシルメルカプタン
ラジカル開始剤:日油(株)製のパラメンタンヒドロペルオキシド
SFS:和光純薬工業(株)製のソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート
EDTA:和光純薬工業(株)製のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム
触媒:和光純薬工業(株)製の硫酸第二鉄
重合停止剤:和光純薬工業(株)製のN,N‘−ジメチルジチオカルバメート
【0084】
(1)SBR1
市販の油展SBRである日本ゼオン(株)製のNipol 9548をSBR1とした。
【0085】
(2)SBR2(油展シリカ変性SBR)の調製
2−1.末端変性剤の作製
窒素雰囲気下、250mlメスフラスコに3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)を20.8g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を250mlにして末端変性剤を作製した。
2−2.SBR2の調製
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を800g、ブタジエンを1200g、テトラメチルエチレンジアミンを1.1mmol加え、40℃に昇温した。次に、1.6Mブチルリチウム(関東化学(株)製)を1.8mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に上記末端変性剤を4.1mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mL及び2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.1gを添加後、TDAE1200g添加し10分間撹拌を行った。その後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、SBR2を得た。
【0086】
(3)SBR3(非油展シリカ変性SBR)の調製
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を740g、ブタジエンを1260g、テトラメチルエチレンジアミンを17mmol加え、40℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10.5mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を3.5ml加え、30分撹拌を行った。次に、SBR2の調製時に作製した末端変性剤を30mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、SBR3を得た。
【0087】
(4)SBR4(非油展シリカ変性SBR)の調製
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を540g、ブタジエンを1460g、テトラメチルエチレンジアミンを17mmol加え、40℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10.5mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を3.5ml加え、30分撹拌を行った。次に、SBR2の調製時に作製した末端変性剤を30mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、SBR4を得た。
【0088】
SBR1〜4の物性値を表2に示した。
なお、SBRの重量平均分子量(Mw)は、下記の条件でゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により測定した。
装置:東ソー(株)製のHLC−8220
分離カラム:東ソー(株)製のHM―H(2本直列)
測定温度:40℃
キャリア:テトラヒドロフラン
流量:0.6mL/分
注入量:5μL
検出器:示差屈折
分子量標準:標準ポリスチレン
【0089】
【表2】
【0090】
<無機補強剤>
水酸化アルミニウム1:住友化学(株)製のATH#B(BET値:15m/g、平均粒子径:0.6μm)
水酸化アルミニウム2:ATH#Bの乾式粉砕品(BET値:34m/g、平均粒子径:0.4μm)
水酸化アルミニウム3:ATH#Bの乾式粉砕品(BET値:45m/g、平均粒子径:0.25μm)
水酸化アルミニウム4:ATH#Bの乾式粉砕品(BET値:55m/g、平均粒子径:0.21μm)
水酸化アルミニウム5:ATH#Bの乾式粉砕品(BET値:61m/g、平均粒子径:0.15μm)
水酸化アルミニウム6:住友化学(株)製のATH#C(BET値:7.0m/g、平均粒子径:0.8μm)
水酸化アルミニウム7:住友化学(株)製のC−301N(BET値:4.0m/g、平均粒子径:1.0μm)
水酸化マグネシウム:タテホ化学工業製のEcomag PZ−1(BET値:6.0m/g、平均粒子径:約1.0μm)
ハードクレー:白石カルシウム(株)製のハードクラウン乾式分級No.80(BET値:8m/g、平均粒子径:0.65μm)
【0091】
<シリカ又はカーボンブラック>
カーボンブラック1:オリオンエンジニアドカーボンズ製のHP160(BET値:153m/g)
カーボンブラック2:オリオンエンジニアドカーボンズ製のHP180(BET値:175m/g)
カーボンブラック3:キャボットジャパン製のショウブラックN220(BET値:111m/g)
カーボンブラック4:キャボットジャパン製のショウブラックN330(BET値:78m/g)
シリカ1:Evonik社製のULTRASIL U9000Gr(BET値:235m/g)
シリカ2:Evonik社製のULTRASIL VN3(BET値:175m/g)
シリカ3:Rhodia社製のZ115Gr(BET値:115m/g)
シリカ4:Rhodia社製のZ1085(BET値:80m/g)
【0092】
<樹脂類>
クマロンインデン樹脂:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)
テルペン系樹脂1:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT115(軟化点:115℃、テルペンフェノール樹脂)
テルペン系樹脂2:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターTO125(軟化点:125℃、芳香族テルペン)
テルペン系樹脂3:アリゾナケミカル社製のTR7125(軟化点:125℃、Tg:73℃、ポリテルペン)
スチレン系樹脂:アリゾナケミカル社製のSylvares SA85(軟化点:85℃、Tg:43℃)
【0093】
<オイル>
プロセスオイル:H&R(株)製のVivaTec400(TDAEオイル)
なお、油展BRや油展SBRに由来する油展オイル分も表3、4中に示した。
【0094】
<助剤等>
ワックス:日本精鑞(株)製のOzoace0355
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R(平均粒子径:0.29μm、BET値:4m/g)
シランカップリング剤1:Evonik社製のSi69
シランカップリング剤2:Evonik社製のSi75
シランカップリング剤3:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT(上記式(I)で表されるシランカップリング剤において、p=2、q=3、k=7の化合物)
【0095】
<加硫剤等>
硫黄:細井化学工業(株)製のHK−200−5(5質量%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラー△NS‐G(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
【0096】
(実施例及び比較例)
表3、4に示す配合内容及び混練条件に従い、バンバリーミキサーを用いて、まず、ゴム成分と、無機補強剤全量と、カーボンブラック全量と、シリカ2/3量と、シランカップリング剤2/3量とを5分間混練り(X練り)した。水酸化アルミニウムは、X練りに投入した。
次いで、上記X練りにて混練した混練物と、残りのシリカと、残りのシランカップリング剤とを所定の温度で排出して混練し、硫黄及び加硫促進剤以外のその他の成分を混練して、更に5分間混練り(Y練り)した。
なお、X、Y練り時の排出温度は、表3、4の下方に記載した。
次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、4分間練り込み(仕上げ練り)、未加硫ゴム組成物を得た。この際、最高ゴム温度は95℃とした。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で12分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:245/40R18)を得た。
【0097】
得られた未加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。評価結果を表3、4に示す。
【0098】
(ウェットグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示をした。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。指数110以上の場合、ウェットグリップ性能が良好である。
【0099】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時8.0mm)、耐摩耗性として評価した。残溝量が多いほど、耐摩耗性に優れる。比較例1の残溝量を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0100】
(引張試験)
加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、25℃にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定し、比較例1のEBを100として指数表示した。EBが大きいほど、引張性能に優れることを示す。
【0101】
(総合評価)
総合評価として、上記ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び引張試験で得られた各指数の平均値を算出した。
【表3】
【表4】
【0102】
表3、4の評価結果から、特定のゴム成分と、所定の窒素吸着比表面積を有する特定の無機補強剤と、所定の窒素吸着比表面積を有するシリカ及び/又はカーボンブラックとを所定量配合した実施例では、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び引張性能の性能バランスが顕著に改善されることが明らかとなった。
図1
図2
図3