【実施例】
【0109】
以下に本発明を説明するためにいくつかの実施例を示すが、これによって本発明を限定するものではない。また、各特性の測定条件は、次のとおりとした。
【0110】
<試験方法>
(1)プロトン核磁気共鳴分光(
1H-NMR)測定試験
核磁気共鳴分光装置(型式:AV−400M、(株)Bruker社製)を用い、30℃にて測定を行った。測定の際の重水素化溶媒には、重ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6)または重メタノール(MeOH−d
4)を用いた。ケミカルシフト値の基準は、前記の重水素化溶媒に含まれるトリメチルシラン化合物のメチル基のプロトンシグナルを0ppmとした。
【0111】
(2)ガラス転移温度(Tg)測定
示差走査熱量計(DSC、型式:DSC−2010型、TAインスツルメント社製)を用い、窒素気流下、5℃/分の昇温速度により測定した。また、フィルム形状のものは、動的粘弾性測定装置(DMA、型式:RSA−II、Rheometric社製)を用い、昇温速度10℃/分、周波数1Hzにて測定を行い、貯蔵弾性率曲線が低下する前後における2つの接線の交点をガラス転移温度とした。繊維強化複合材料は、動的粘弾性測定装置(DMA、型式:DMA−Q−800型、TAインスツルメント社製)を用い、片持ち梁方式、0.1%のひずみ、1Hzの周波数、窒素気流下、3℃/分の昇温速度により測定した。貯蔵弾性率曲線が低下する前後における2つの接線の交点をガラス転移温度とした。
【0112】
(3)最低溶融粘度測定
レオメーター(型式:AR2000型、TAインスツルメント社製)を用い、25mmパラレルプレートで4℃/分の昇温速度により測定した。
【0113】
(4)5%重量減少温度測定
熱重量分析装置(TGA、型式:SDT−2960型、TAインスツルメント社製)を用い、窒素気流下、5℃/分の昇温速度により測定した。
【0114】
(5)弾性率測定試験、破断強度測定試験、破断伸び測定試験
テンシロン万能材料試験機(商品名:TENSILON/UTM−II−20、(株)オリエンテック製)を用い、室温にて、引張速度3mm/分で行った。試験片形状は、長さ20mm、幅3mm、厚さ80〜120μmのフィルムとした。
【0115】
(6)赤外吸収スペクトル測定
日本分光(株)製、FT/IR−230S型分光計を用いて、室温にて、400cm
-1〜4000cm
-1の測定範囲にて積算回数32回の条件にて赤外吸収スペクトル測定を行なった。
【0116】
(7)溶液粘度測定
東機産業株式会社製R550型E型粘度計を用いて23℃の条件にて測定を行った。
【0117】
(8)超音波深傷試験
クラウトクレーマー社製SDS7800R型超音波深傷試験装置を使用し、5〜15MHzの深傷プローブを用いて、水中にて測定を行った。
【0118】
(9)光学顕微鏡観察
オリンパス社製測定顕微鏡STM−MJSを用いて、50〜1000倍の拡大率にて測定を行った。
【0119】
(10)層間せん断強度測定
ASTM−D2344に準拠して行った。
【0120】
<(A)芳香族テトラカルボン酸ジエステル化合物の製造>
(製造例1)
温度計、攪拌子、窒素導入管、還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物を500g(2.29mol)入れ、メタノール1200.13g(37.5mol)を添加し、窒素気流下にて懸濁した状態で80℃にて加熱還流しながら攪拌を行った。攪拌開始後、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が溶媒に徐々に溶解されるのが確認され、攪拌開始から約60分ですべて完全に溶解された。さらに攪拌を続けると、一部溶媒に不溶の沈殿物の析出が確認され、攪拌開始後から120分後に加熱を停止し、室温まで冷却して懸濁溶液を得た。その後、メタノールを室温にて真空条件下で揮発させて、白色粉末の生成物を得た。得られた生成物の
1H−NMR測定(DMSO−d
6溶媒中)より、ジエステル基が互いにシスの位置に存在する1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジメチルエステルが約40%存在し、ジエステル基が互いにトランスの位置に存在する1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジメチルエステルが約60%存在する異性体の混合物であった。なお、得られた芳香族テトラカルボン酸ジエステル化合物は、前記一般式(1)において、R
2はメチル基、R
3はメチル基であった。
【0121】
(製造例2)
前記と同様の方法にて、温度計、攪拌子、窒素導入管、還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物を500g(2.29mol)入れ、エタノール1200.10g(26.05mol)を添加し、窒素気流下にて懸濁した状態で105℃にて加熱還流しながら攪拌を開始した。攪拌開始後に1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が溶媒に徐々に溶解されるのが確認され、攪拌開始から約60分ですべて完全に溶解された。さらに攪拌を続けると、一部溶媒に不溶の沈殿物が析出が確認され、攪拌開始後から120分後に加熱を停止し、室温まで冷却して懸濁溶液を得た。その後、エタノールを室温にて真空条件下で揮発させて、白色粉末の生成物を得た。得られた生成物の
1H−NMR測定(DMSO−d
6溶媒中)より、ジエステル基が互いにシスの位置に存在する1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステルが約34%存在し、ジエステル基が互いにトランスの位置に存在する1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステルが約66%存在する異性体の混合物であった。なお、得られた芳香族テトラカルボン酸ジエステル化合物は、前記一般式(1)において、R
2はエチル基、R
3はエチル基であった。
【0122】
(製造例3)
前記と同様の方法にて、温度計、攪拌子、窒素導入管、還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物を500g(2.29mol)入れ、2−プロパノール1202.00g(20.00mol)を添加し、窒素気流下にて懸濁した状態で105℃にて加熱還流しながら攪拌を開始した。攪拌開始後に1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物が溶媒に徐々に溶解されるのが確認され、攪拌開始から約180分ですべて完全に溶解された。さらに攪拌を続けると、一部溶媒に不溶の沈殿物の析出が確認され、攪拌開始後から120分後に加熱を停止し、室温まで冷却して懸濁溶液を得た。その後、2−プロパノールを室温にて真空条件下で揮発させて、白色粉末の生成物を得た。得られた生成物の
1H−NMR測定(DMSO−d
6溶媒中)より、ジエステル基が互いにシスの位置に存在する1,2,4,5−テトラカルボン酸ジイソプロピルエステルが約50%存在し、ジエステル基が互いにトランスの位置に存在する1,2,4,5−テトラカルボン酸ジイソプロピルエステルが約50%存在する異性体の混合物であった。
【0123】
<(C)4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエステル化合物の製造>
(製造例4)
前記と同様の方法にて、温度計、攪拌子、窒素導入管、還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸を600g(2.41mol)入れ、エタノール1200.25g(26.05mol)を添加し、窒素気流下にて懸濁した状態で105℃にて加熱還流しながら攪拌を開始した。攪拌開始後に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸が溶媒に徐々に溶解されるのが確認され、攪拌開始から約10分ですべて完全に溶解された。さらに攪拌を続け、攪拌開始後から120分後に加熱を停止し、室温まで冷却した。その後、エタノールを室温にて真空条件下で揮発させて、白色粉末の4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステルを得た。得られた生成物のDSC測定結果から、融点は130℃に観測された。
なお、得られた4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステルは、前記一般式(2)において、R
4およびR
5は水素原子またはエチル基を表し、いずれか1つがエチル基を表す。
【0124】
(実施例1)
100mLのサンプル瓶中に、(B)2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.446g(16.1mmol)とメタノール6.8g(212.2mmol)を加えて完全に溶解させた後に、製造例2で作製した(A)1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステル4.000g(12.9mmol)および製造例4で作製した(C)4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.913g(6.5mmol)を入れ、容器内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、室温にて懸濁した状態で攪拌を開始した。攪拌開始後にエステル化合物が溶媒に徐々に溶解され始めたのを確認し、攪拌開始後60分で完全に均一に溶解した。その後、攪拌を続け、攪拌開始後から24時間後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がメタノールに均一に溶解したワニスを得た。
【0125】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度60℃で3時間加温し、さらに200℃で1時間加温することで、メタノールを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基で表され、平均としてm=4、n=0である。
【0126】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より210℃であり、最低溶融粘度は62Pa・sec(340℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ96μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基であるフェニルエチニル部位に含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
-1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。このフィルム状の硬化物のTgは、DSC測定より337℃、DMA測定より336℃、TGAによる5%重量減少温度は538℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.1GPa、破断強度が143MPa、破断伸びが31%であった。
【0127】
また、前記で得られたワニスを室温条件下で真空乾燥させて末端変性ポリイミド樹脂原料組成物の粉末を得た。この粉末はMeOH−d
4に速やかに溶解し、
1H−NMR測定を行った結果、得られたシグナルは、
図1に示すとおり、本実施例で使用した1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジメチルエステル、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルならびに4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノメチルエステルのそれぞれに対応するプロトンシグナルとは異なる位置に観測された。また、この粉末をDMSO−d
6中に溶解させて
1H−NMR測定を行った結果、得られたシグナルは、
図2に示すとおり、本実施例で使用した1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジメチルエステル、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノメチルエステルのそれぞれに対応するプロトンシグナルと完全に同じ位置に観測され、また、アミド基のNHプロトンのシグナルは1〜14δ/ppmのシグナル範囲において観測されなかった。これらの結果より、本実施例で作製したメタノール溶液のワニス中で末端変性ポリイミド樹脂原料組成物を構成するすべての成分がイオン錯体(塩)を形成して溶解されていることがわかる。
【0128】
(比較例1)
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.7613g(10mmol)とN−メチル−2−ピロリドン10mLを加え、溶解後、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物1.7450g(8mmol)とN−メチル−2−ピロリドン(沸点:約204℃)0.8mLを入れ、窒素気流下、室温で2.5時間、60℃で1.5時間、さらに室温で1時間重合反応させアミド酸オリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.9929g(4mmol)を入れ、窒素気流下、室温で12時間反応させ末端変性し、続けて195℃で5時間攪拌しイミド結合させた。
【0129】
冷却後、反応液を900mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。80mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を130℃で1日間減圧乾燥し、生成物を得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基で表され、平均としてm=4、n=0である。
【0130】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より213℃であり、最低溶融粘度は150Pa・sec(343℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ100μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基であるフェニルエチニル部位に含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
-1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。この得られたフィルム状の硬化物のTgはDSC測定より346℃、DMA測定より、343℃、TGAによる5%重量減少温度は538℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.2GPa、破断強度が132MPa、破断伸びが16%であった。
【0131】
(比較例2)
温度計、攪拌子、窒素導入管、還流管を備えた4つ口の100mLフラスコに、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.905g(17.8mmol)とN−メチル−2−ピロリドン10mLを加え、溶解後、製造例1にて作製した1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジメチルエステル4.007g(14.2mmol)および製造例4で作製した4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.990g(7.1mmol)およびN−メチル−2−ピロリドン0.8mLを入れ、窒素気流下、60℃で3時間攪拌を行い、アミド酸結合生成反応を行った。その後、窒素気流下、200℃で5時間反応させてイミド結合生成反応を行った。
【0132】
冷却後、反応液を900mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。80mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を240℃で5時間減圧乾燥し、生成物を得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基で表され、平均としてm=4、n=0である。
【0133】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より217℃であり、最低溶融粘度は216Pa・sec(340℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ86μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基であるフェニルエチニル部位に含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
-1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。このフィルム状の硬化物のTgは、DSC測定より336℃、DMA測定より346℃、TGAによる5%重量減少温度は538℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が2.8GPa、破断強度が128MPa、破断伸びが18%であった。
【0134】
(実施例2)
100mLのサンプル瓶中に、(B)2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.008g(14.5mmol)と9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン0.562g(1.62mmol)とメタノール7.0g(218.4mmol)を加えて完全に溶解させた後に、製造例2で作製した(A)1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステル4.000g(12.9mmol)および製造例4で作製した(C)4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.913g(6.5mmol)を入れ、容器内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、室温にて懸濁した状態で攪拌を開始した。攪拌開始後にエステル化合物が溶媒に徐々に溶解され始めたのを確認し、攪拌開始後60分で完全に均一に溶解した。その後、攪拌を続け、攪拌開始後から24時間後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がメタノールに均一に溶解したワニスを得た。
【0135】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度60℃で3時間加温し、さらに200℃で1時間加温することで、メタノールを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基または9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基で、R
9が9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基で表され、平均としてm=3.6、n=0.4である。
【0136】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より221℃、最低溶融粘度は94Pa・sec(345℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ80μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基であるフェニルエチニル部位に含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
-1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。このフィルム状の硬化物のTgは、DSC測定結果より355℃、DMA測定結果より357℃、TGAによる5%重量減少温度は537℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.2GPa、破断強度が137MPa、破断伸びが20%であった。
また、前記で得られたワニスを室温条件下で真空乾燥させて末端変性ポリイミド樹脂原料組成物の粉末を得た。この粉末はMeOH−d
4に速やかに溶解し、実施例1と同様に、
1H−NMR測定を行った結果から、本実施例で作製したメタノール溶液のワニス中で末端変性ポリイミド樹脂原料組成物を構成するすべての成分がイオン錯体(塩)を形成して溶解されていることがわかった。
【0137】
(実施例3)
100mLのサンプル瓶中に、(B)2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.664g(13.2mmol)と9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン0.514g(1.48mmol)とメタノール6.0g(185.2mmol)を加えて完全に溶解させた後に、製造例2で作製した(A)1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステル4.000g(12.9mmol)および製造例4で作製した(C)4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.060g(3.6mmol)を入れ、容器内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、室温にて懸濁した状態で攪拌を開始した。攪拌開始後にエステル化合物が溶媒に徐々に溶解され始めたのを確認し、攪拌開始後60分で完全に均一に溶解した。その後、攪拌を続け、攪拌開始後から24時間後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がメタノールに均一に溶解したワニスを得た。
【0138】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度60℃で3時間加温し、さらに200℃で1時間加温することで、メタノールを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基または9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基で、R
9が9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基で表され、平均としてm=6.3、n=0.7である。
【0139】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より247℃、の最低溶融粘度は2036Pa・sec(366℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ90μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基であるフェニルエチニル部位に含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
-1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。このフィルム状の硬化物のTgは、DSC測定結果より357℃、DMA測定結果より355℃、TGAによる5%重量減少温度は543℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.1GPa、破断強度が142MPa、破断伸びが24%であった。
また、前記で得られたワニスを室温条件下で真空乾燥させて末端変性ポリイミド樹脂原料組成物の粉末を得た。この粉末はMeOH−d
4に速やかに溶解し、実施例1と同様に、
1H−NMR測定を行った結果から、本実施例で作製したメタノール溶液のワニス中で末端変性ポリイミド樹脂原料組成物を構成するすべての成分がイオン錯体(塩)を形成して溶解されていることがわかった。
【0140】
(実施例4)
100mLのサンプル瓶中に、製造例3で作製した1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジイソプロピルエステル4.541g(14.00mmol)および製造例4で作製した4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.177g(4.00mmol)、エタノール3.4g(73.8mmol)を入れ、容器内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、約70℃にて懸濁した状態で攪拌を続けた。攪拌開始後60分後に2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.421g(16.0mmol)を加えて攪拌を続け、その後、約30分後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がエタノールに均一に溶解したワニスを得た。
【0141】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度60℃で3時間加温し、さらに250℃で1時間加温することで、エタノールを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基で表され、平均としてm=7、n=0である。
【0142】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より245℃であり、最低溶融粘度は400Pa・s(340℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ96μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基PEPAに含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
−1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。このフィルム状の硬化物のTgは、DSC測定より334℃、DMA測定より335℃、TGAによる5%重量減少温度は538℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.1GPa、破断強度が141MPa、破断伸びが35%であった。
【0143】
(実施例5)
前記と同様の方法にて、温度計、攪拌子、窒素導入管、還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物を366.44g(1.68mol)入れ、エタノール89g(1.93mol)と2−プロパノール89g(1.48mol)を添加し、窒素気流下にて懸濁した状態で105℃にて加熱還流しながら攪拌を開始した。攪拌開始後に1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物が溶媒に徐々に溶解されるのが確認され、攪拌開始から約180分ですべて均一に溶解された。
【0144】
その後、前記の溶液5mlを取り出し、エタノールと2−プロパノールを室温にて真空条件下で揮発させて、白色粉末の生成物を得た。得られた生成物の
1H−NMR測定(DMSO−d
6溶媒中)より、1,2,4,5−テトラカルボン酸ジエチルエステルが約76.5%、1,2,4,5−テトラカルボン酸ジイソプロピルエステルが約1.6%、モノエチルエステルとモノイソプロピルエステルのそれぞれが結合した1,2,4,5−テトラカルボン酸が約21.9%存在する混合物であった。
【0145】
前記で得られた溶液に、製造例4で作製した4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル119.16g(0.48mol)を入れ、窒素雰囲気下とした後に密閉し、約70℃にて攪拌を続けた。攪拌開始後30分後に均一に溶解した溶液を得た。2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル530.57g(1.92mol)を加えて攪拌を続け、その後、約30分後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がエタノールに均一に溶解したワニスを得た。
【0146】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度60℃で3時間加温し、さらに250℃で1時間加温することで、エタノールを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基で表され、平均としてm=7、n=0である。
【0147】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より245℃であり、最低溶融粘度は410Pa・s(340℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ86μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基PEPAに含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
−1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。このフィルム状の硬化物のTgは、DSC測定より332℃、DMA測定より333℃、TGAによる5%重量減少温度は538℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.2GPa、破断強度が144MPa、破断伸びが33%であった。
【0148】
(実施例6)
100mLのサンプル瓶中に、(B)2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.446g(16.1mmol)とアセトン6.8g(117.1mmol)を加えて完全に溶解させた後に、製造例2で作製した(A)1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステル4.000g(12.9mmol)および製造例4で作製した(C)4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.913g(6.5mmol)を入れ、容器内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、室温にて懸濁した状態にて撹拌を開始した。撹拌開始後にエステル化合物が溶媒に徐々に溶解され始めたのを確認し、撹拌開始後60分で完全に均一に溶解した。その後、攪拌を続け、攪拌開始後から24時間後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がアセトンに均一に溶解したワニスを得た。
【0149】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度60℃で3時間加温し、さらに200℃で1時間加温することで、アセトンを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基で表され、平均としてm=4、n=0である。
【0150】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より210℃であり、最低溶融粘度は80Pa・sec(340℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ90μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定により、末端変性イミドオリゴマーの末端基であるフェニルエチニル部位から、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応によって高分子量化していることが示された。このフィルム状の硬化物のTgは、DSC測定より342℃、DMA測定より338℃、TGAによる5%重量減少温度は538℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.1GPa、破断強度が140MPa、破断伸びが28%であった。
【0151】
(実施例7)
100mLのサンプル瓶中に、製造例3で作製した1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジイソプロピルエステル4.541g(14.00mmol)および製造例4で作製した4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.177g(4.00mmol)、1,4−ジオキサン3.4g(38.6mmol)を入れ、容器内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、約70℃にて懸濁した状態で攪拌を続けた。攪拌開始後60分後に2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.421g(16.0mmol)を加えて攪拌を続け、その後、約30分後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がエタノールに均一に溶解したワニスを得た。
【0152】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度100℃で3時間加温し、さらに250℃で1時間加温することで、1,4-ジオキサンを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基で表され、平均としてm=7、n=0である。
【0153】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より244℃であり、最低溶融粘度は380Pa・s(340℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ96μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基PEPAに含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
−1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。このフィルム状の硬化物のTgは、DSC測定より340℃、DMA測定より338℃、TGAによる5%重量減少温度は538℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.1GPa、破断強度が139MPa、破断伸びが32%であった。
【0154】
(比較例3)
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.484g(12.6mmol)と9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン0.488g(1.4mmol)とN−メチル−2−ピロリドン10mLを加え、溶解後、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物2.619g(12.0mmol)とN−メチル−2−ピロリドン0.8mLを入れ、窒素気流下、室温で2.5時間、60℃で1.5時間、さらに室温で1時間重合反応させアミド酸オリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.993g(4mmol)を入れ、窒素気流下、室温で12時間反応させ末端変性し、続けて195℃で5時間攪拌しイミド結合させた。
【0155】
冷却後、反応液を900mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。80mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を130℃で1日間減圧乾燥し、生成物を得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基または9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基で表され、平均としてm=6、n=1である。
【0156】
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーのTgは、DSC測定結果より213℃であり、最低溶融粘度は9036Pa・sec(346℃)であった。この粉末状の末端変性イミドオリゴマーの一部を表面平滑性に優れたポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−75S、厚さ:75μm、サイズ:15cm角、宇部興産株式会社製)2枚の間に挿入し、370℃で1時間加圧し、冷却後に剥離することにより、赤褐色の透明であるフィルム状の硬化物(厚さ100μm)を得た。このフィルム状イミド樹脂組成物の一部を使用したIRスペクトル測定より、末端変性イミドオリゴマーの末端基であるフェニルエチニル部位に含まれる三重結合の伸縮振動に由来する2210cm
-1付近の吸収が消失していたことから、本加圧加熱成形によってフィルム状イミド樹脂組成物中で末端変性イミドオリゴマー成分が熱付加反応により高分子量化していることが示された。この得られたフィルム状の硬化物のTgはDSC測定より356℃、DMA測定より、356℃、TGAによる5%重量減少温度は538℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が3.2GPa、破断強度が132MPa、破断伸びが15%であった。
【0157】
実施例1〜7で得られたワニスは、いずれも、真空乾燥させたものはメタノールなどの有機溶剤への溶解性に優れたものであった。
また、実施例1〜7で得られたワニスを−5℃の冷凍庫中に静置保管し、数ヵ月後に取り出し、室温まで解凍し、溶液状態を確認したところ、沈殿の析出やゲル化は見られなかった。また、GPC測定においては、冷凍保管前後で同一のGPC曲線が得られたことから、本発明で作製したワニスは優れた長期貯蔵安定性を有することがわかった。
また、実施例1〜7で得られたワニスを加熱して得られた固体状のイミド樹脂組成物は、いずれも最低溶融粘度が300℃を超えており優れた高温溶融流動性を備えたものであり、また、成形加工性に優れたものであった。
また、実施例1〜7で得られた固体状のイミド樹脂組成物を溶融させた状態で加熱して高分子量化して得られたフィルム状の成形体は、いずれもTgが300℃を超えており、また、500℃を超える高温でもほとんど熱分解を起こさないことから、極めて高い耐熱性を有したものであり、加えて、高い破断強度および破断伸びを有するものであることがわかる。
また、実施例1〜7で得られたワニスは、比較例1〜3で得られたワニスに比べて、低沸点の有機溶剤を使用していることから、短時間で容易に有機溶剤を系外に除去することができ、優れた熱的物性を有するポリイミド粉末を特別な精製操作(再沈殿)を必要とすることなく簡便に得られることが分かる。
【0158】
(製造例5)
温度計、攪拌子、窒素導入管、還流管を備えた4つ口の1000mLフラスコに、1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物を80.40g(368.6mmol)および4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸26.14g(105.3mmol)を入れ、エタノール109.00g(2.36mol)を添加し、窒素気流下にて懸濁した状態で105℃にて加熱還流しながら攪拌を開始した。攪拌開始後に酸無水物が溶媒に徐々に溶解されるのが確認され、攪拌開始から約60分ですべて完全に溶解された。さらに攪拌を続けると、溶媒に不溶の沈殿物の析出が一部確認され、攪拌開始後から120分後に加熱を停止して室温まで冷却し、懸濁溶液を得た。理論上、この懸濁溶液中には、(A)成分として、1,2,4,5−テトラカルボン酸ジエチルエステルおよび(C)成分として4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステルが生成されていた。
その後、この懸濁溶液に2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル104.77g(379.1mmol)および9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン14.68g(42.1mmol)およびメタノール17.54g(547.4mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、室温にて懸濁した状態で攪拌を開始した。攪拌開始後に沈殿物が溶媒に徐々に溶解され始めたのを確認し、攪拌開始後60分で完全に均一に溶解した。その後、攪拌を続け、攪拌開始後から24時間後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がエタノールとメタノールの混合溶媒に均一に溶解したワニス(固形分濃度:約70重量%)を得た。
【0159】
(実施例8)
製造例5で作製したワニスの一部をあらかじめアセトンにて脱サイジング処理した12.5cm×12.5cmの大きさの東邦テナックス社製「べスファイトIM−600 6K」の平織材(繊維目付195g/m、炭素繊維製)に含浸させて、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物が付着したウエットプリプレグを20枚作製した。得られたウエットプリプレグ中に占める末端変性ポリイミド樹脂原料組成物の平均含有量は約46重量%、平均溶媒含有量は約12重量%、炭素繊維の平均含有量は約42重量%であった。
【0160】
(実施例9)
実施例8で作製した末端変性ポリイミド樹脂原料組成物が付着したウエットプリプレグ3枚を循環式のエアーオーブン内にて内部温度200℃で1時間加温することで、プリプレグ中のアルコール成分を除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーのドライイミドプリプレグを得た。得られたドライイミドプリプレグ中に占める末端変性イミドオリゴマーの平均含有量は約47重量%、炭素繊維の平均含有量は約53重量%であった。
得られたドライイミドプリプレグを目視で外観の検査をしたところ、均一に樹脂が炭素繊維の表面と内部に付着していたことから、樹脂とプリプレグ間の密着性に優れたイミドプリプレグであることがわかった。
【0161】
(実施例10)
30cm×30cmのステンレス板上に、剥離フィルムとしてポリイミドフィルムを置き、その上に実施例8で作製した末端変性ポリイミド樹脂原料組成物のウエットプリプレグ12枚を積層した。さらにポリイミドフィルムとステンレス板を重ね、ホットプレス上、昇温速度約5℃/分で室温から80℃まで加熱し、80℃で1時間加熱した。その後、昇温速度約5℃/分で80℃から200℃まで加熱し、200℃で1時間加熱した。その後、昇温速度約5℃/分で200℃から260℃まで加熱し、260℃で1時間加熱した。その後、1.3MPaの圧力条件下、昇温速度約5℃/分で370℃まで昇温し、そのまま370℃で1時間加熱加圧させた。外観検査から判断して表面が非常に平滑で繊維間に樹脂が均一に含浸された良好な繊維強化複合材料積層板が得られた。得られた積層板のガラス転移温度(DSC)は、356℃に観測され、繊維体積含有率(Vf)は0.48であり、樹脂含有量は37wt%であった。
なお、DMA測定やTGA測定を用いることで、得られた繊維強化複合材料積層板において、ワニス含まれていたエタノールとメタノールなどの低沸点の有機溶剤は前記加熱処理により完全に除去されていることを確認した。
得られた繊維強化複合材料積層板は、ガラス転移温度が300℃を超えることから耐熱性に優れたものであり、また、3点曲げ法によるショートビームシェア試験による相間せん断強度が約70MPaの値を示したことから機械特性にも優れることがわかる。
また、前記積層板の内部を超音波深傷検査や光学顕微鏡を使用した断面観察で観察したところ、空隙がなかったことから、極めて高品質の繊維強化複合材料であることがわかる。
【0162】
(比較例4)
100mLのサンプル瓶中に、p−フェニレンジアミン1.741g(16.1mmol)とメタノール6.8g(212.2mmol)を加えて完全に溶解させた後に、製造例2で作製した1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステル4.000g(12.9mmol)および製造例4で作製した4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.913g(6.5mmol)を入れ、容器内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、室温にて懸濁した状態で攪拌を開始した。攪拌開始後にエステル化合物が溶媒に徐々に溶解され始めたのを確認し、攪拌開始後60分で完全に均一に溶解した。その後、攪拌を続け、攪拌開始後から24時間後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がメタノールに均一に溶解したワニスを得た。
【0163】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度60℃で3時間加温し、さらに200℃で1時間加温することで、メタノールを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9がp−フェニレンジアミン残基で表され、平均としてm=0、n=4である。
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーは、300℃以上に加熱しても溶融せず、硬化樹脂フィルムを得ることはできなかった。
【0164】
(比較例5)
100mLのサンプル瓶中に、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン4.707g(16.1mmol)とメタノール6.8g(212.2mmol)を加えて完全に溶解させた後に、製造例2で作製した1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステル4.000g(12.9mmol)および製造例4で作製した4−(2−フェニルエチニル)フタル酸モノエチルエステル1.913g(6.5mmol)を入れ、容器内を窒素雰囲気下とした後に密閉し、室温にて懸濁した状態で攪拌を開始した。攪拌開始後にエステル化合物が溶媒に徐々に溶解され始めたのを確認し、攪拌開始後60分で完全に均一に溶解した。その後、攪拌を続け、攪拌開始後から24時間後に攪拌を停止させ、末端変性ポリイミド樹脂原料組成物がメタノールに均一に溶解したワニスを得た。
【0165】
このワニスをガラス製のシャーレに移し、循環式のエアーオーブン内にて内部温度60℃で3時間加温し、さらに200℃で1時間加温することで、メタノールを除去しながらアミド酸結合生成反応ならびにイミド結合生成反応を行い、末端変性イミドオリゴマーを得た。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(5)において、R
6およびR
7は水素原子またはフェニル基であっていずれか一方がフェニル基を表し、R
8およびR
9が1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン残基で表され、平均としてm=0、n=4である。
硬化前の粉末状の末端変性イミドオリゴマーは、300℃以上に加熱しても溶融せず、硬化樹脂フィルムを得ることはできなかった。