特開2015-232120(P2015-232120A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2015-232120光学用ポリエステルフィルム及びそれを用いた偏光板および透明導電性フィルム
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  • 特開2015232120-光学用ポリエステルフィルム及びそれを用いた偏光板および透明導電性フィルム 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232120(P2015-232120A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】光学用ポリエステルフィルム及びそれを用いた偏光板および透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20151201BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20151201BHJP
   D02J 1/00 20060101ALI20151201BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20151201BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20151201BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   C08J5/18CFD
   D06M15/643
   D02J1/00 K
   B32B27/36
   G02B5/30
   H01B5/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-97152(P2015-97152)
(22)【出願日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-102161(P2014-102161)
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩見 篤史
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 功
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光隆
(72)【発明者】
【氏名】高田 育
【テーマコード(参考)】
2H149
4F071
4F100
4L033
4L036
5G307
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB02
2H149AB13
2H149BA02
2H149CA04
2H149DA02
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA12
2H149FA12X
2H149FA12Y
2H149FC02
2H149FC03
2H149FC04
2H149FC05
2H149FD05
2H149FD17
2H149FD47
4F071AA46
4F071AA82
4F071AF22
4F071AF25
4F071AF30
4F071AF31
4F071AF61
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100BA02
4F100GB41
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JN30
4L033AB03
4L033CA59
4L036MA05
4L036MA19
4L036MA20
4L036MA33
4L036PA42
5G307FA02
5G307FB01
5G307FB02
5G307FC02
5G307FC10
(57)【要約】
【課題】二軸延伸ポリエステルフィルムでありながら大画面の液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際に干渉色を呈することなく、かつ高温下での長期信頼性にも優れるポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが1500nm以下であり、かつ、フィルム密度が1.34g/cm以上1.39g/cm以下である光学用ポリエステルフィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが1500nm以下であり、かつ、フィルム密度が1.34g/cm以上1.39g/cm以下である光学用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステルA層とポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を有する少なくとも2層以上の積層フィルムである請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
100℃で12時間熱処理を施した際のフィルム密度が、1.34g/cm以上1.39g/cm以下である請求項1または2に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
A層の厚みが3.2μm未満である請求項1〜3のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記光学用ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最表面に、ハードコート性、自己修復性、防眩性、反射防止性、低反射性、及び帯電防止性からなる群より選択される1種以上の機能を示す層が積層されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム
【請求項6】
偏光子保護用である、請求項1から5のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
偏光子の両面に偏光子保護フィルムを有してなる偏光板であって、少なくとも一方の面に用いられる偏光子保護フィルムが請求項1〜6のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルムである偏光板。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルムを有する透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学用途(偏光子保護、透明導電性フィルムなど)に特に適して用いられるポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、フラットパネルディスプレイやタッチパネル分野において、偏光子保護フィルムや透明導電フィルムなど、各種光学用フィルムの需要が高まっており、その中でも、偏光子保護フィルム用途では、低コスト化を目的として、従来のTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから二軸延伸ポリエステルフィルムへの置換えが盛んに検討されている。
【0003】
しかし、従来検討されている二軸延伸ポリエステルフィルムでは、延伸時のポリマーの配向に起因してTACフィルムと比較してリタデーションが高くなるため、液晶ディスプレイとして組み立てた際にリタデーションに起因した干渉色が生じ、画像を表示した際の品位が低下するという課題があった。本課題を解決するために、リタデーションを制御する方法が提案されている(たとえば特許文献1、特許文献2)。しかしながら、これらの提案は、フィルムの幅方向におけるリタデーションについては制御しておらず、大画面の液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際、フィルム幅方向で干渉色を呈してしまう課題があり、偏光子保護用フィルムの用途では実用的なものではなかった。
【0004】
また、タッチパネルなどで用いられる透明導電性フィルムや飛散防止フィルムにおいても、大画面化や構成の簡素化により、タッチパネルなどに組み立てた際の干渉色抑制の要求が強まってきているが、従来のフィルム(例えば、特許文献1から3)では特性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−200435号公報
【特許文献2】特開2013−210598号公報
【特許文献3】特許4120089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、二軸延伸ポリエステルフィルムでありながら大画面の液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際に干渉色を呈することなく、かつ高温下での長期信頼性にも優れるポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は次の構成からなる。すなわち、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが1500nm以下であり、かつ、フィルム密度が1.34g/cm以上1.39g/cm以下である光学用ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際にも高品位で表示することができ、かつ長期間搭載した際の白化等を抑制する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを測定する際の概要図である。aは試料ステージを示し、光束入射方向に対して直行している。bはaに対して50°傾斜した試料ステージである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の光学用ポリエステルフィルムについて詳細に説明する。
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが1500nm以下であることが必要である。光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを1500nm以下と低く制御することで、本発明のフィルムを使用した偏光板および透明導電性フィルムが搭載された液晶ディスプレイを観る際、観る角度による色づきや輝度の低下を高精度に抑制することができる。ここで、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度とは、光束の入射方向と直行する測定試料ステージ角度を0°の面とした場合、この0°面と測定試料ステージが成す角度が50°となるように傾斜させることである。
【0011】
光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションは、1000nm以下であればさらに好ましく、1nm以上500nm以下であれば最も好ましい。
光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを1500nm以下とする方法としては、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Y、フィルム厚み方向を方向Zとすると、ポリエステルフィルムのXとYの屈折率の平均値と、Z方向の屈折率の差をできるだけ小さくすることが好ましい。本発明の光学用ポリエステルフィルムは、二軸配向とすることが好ましいが、二軸配向とする場合、フィルム面内の屈折率は、フィルム厚み方向の屈折率より大幅に大きくなる。このため、二軸配向としながら、フィルム面内の屈折率を低くすることが重要となる。フィルム面内の屈折率を低くする方法としては、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルのジオール成分および/または、ジカルボン酸成分を2種類以上とし、ポリエステルフィルムの二軸配向を低下させる方法、延伸倍率を低く設定したり、延伸温度を上げたりするなど、製造条件を調整してポリエステルフィルムの二軸配向を低下させる方法、フィルム厚みを低減させる方法、融点の異なるポリエステル層を少なくとも2層以上有する積層構成の場合に融点の低い層の厚み割合を大きくする方法などが挙げられる。
【0012】
フィルムに用いられるポリエステルのジオール成分および/または、ジカルボン酸成分を2種類以上とする場合、ポリエステル樹脂のジオール由来の構造単位に対して、エチレングリコール由来の構造単位を60モル%以上90モル%以下、その他のジオール由来の構造単位を10モル%を超えて、40モル%未満含有する構成とする方法、ジカルボン酸由来の構造単位に対して、テレフタル酸由来の構造単位を60モル%以上90モル%以下、その他のジカルボン酸由来の構造単位を10モル%を超えて、40モル%未満含有する構成とする方法などが好ましく用いられる。
【0013】
ここで、エチレングリコール由来の構造単位以外のジオール由来の構造単位としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルベート、スピログリコールが好ましく用いられる。これらのジオール由来の構造単位は、エチレングリコール由来の構造単位以外に1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0014】
また、テレフタル酸由来の構造単位以外のジカルボン酸由来の構造単位としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸由来の構造単位、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸由来の構造単位とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でもイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく用いられる。これらのジカルボン酸由来の構造単位は、テレフタル酸由来の構造単位以外に1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
【0015】
本発明の光学用ポリエステルフィルムはフィルム密度が1.34g/cm以上1.39g/cm以下であることが必要である。密度が1.39g/cmを超える場合、配向または結晶性が高いため、結晶化により白化しているか、透明性を維持している場合には面配向しているかを示しており、50°傾斜した角度に対するリタデーションが高くなってしまうため、偏光子保護、透明導電性フィルムとして光学的に不十分となる。一方、フィルム密度が1.34g/cm未満の場合は、結晶性が低すぎるため、光学用途のうち、偏光子保護用途においては高温下での長時間保管時にシワ、うねり等の外観不良の発生等により長期信頼性が不十分となり、透明導電性フィルム用途においては透明導電層を積層(スパッタリング加工、コーティングなど)する際に結晶化が進行し、ヘイズアップ等による視認性が悪化する。
【0016】
本発明者らは、光学用途としてフィルム密度に着目して鋭意検討を進めた結果、フィルム密度が1.34g/cm以上1.39g/cm以下とすることで、低ヘイズかつ低リタデーションを維持しつつ、偏光子保護用途においては高温下でも品位を保持でき、透明導電性フィルム用途においては透明導電層積層時の耐久性を得ることを見出したものである。
【0017】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、偏光子保護用途においては、より長期間の信頼性を確保するため、透明導電性用途においては、より導電層積層による耐久性を向上させるためには、フィルム密度は、1.35g/cm以上1.38g/cm以下であればより好ましく、1.355g/cm以上1.375g/cm以下であれば最も好ましい。
【0018】
本発明の光学用ポリエステルフィルムのフィルム密度を上記の範囲とする方法としては特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム、ジオール由来の構造単位に対して、エチレングリコール由来の構造単位を60モル%以上90モル%以下、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルベート、スピログリコールの中から選ばれるジオール由来の構造単位を10モル%を超えて40モル%未満含有する方法、より好ましくは、エチレングリコール由来の構造単位を70モル%以上85モル%以下、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルベート、スピログリコールの中から選ばれるジオール由来の構造単位を15モル%を超えて30モル%未満含有する方法を挙げることができる。
【0019】
また、ジカルボン酸由来の構造単位に対して、テレフタル酸由来の構造単位を60モル%以上90モル%以下、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸のいずれかのジカルボン酸由来の構造単位を10モル%を超えて40モル%未満含有する方法、より好ましくは、ジカルボン酸由来の構造単位に対して、テレフタル酸由来の構造単位を70モル%以上85モル%以下、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸のいずれかのジカルボン酸由来の構造単位を15モル%を超えて30モル%未満含有する方法を挙げることができる。
【0020】
また、上記組成として、さらに二軸延伸時に結晶を成長させずに非晶部をある程度配向させることも有効である。
【0021】
例えば、本発明のフィルムを二軸延伸する工程において、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことができるが、この際、予熱温度は低く保ちつつ、延伸温度を段階的に高くしていく方法が好ましく用いられる。具体的には、長手方向の予熱温度として、65℃以上80℃未満、延伸温度としては、80℃以上90℃以下であれば好ましい。また、幅方向の予熱温度は、75℃以上90℃以下であれば好ましく、延伸温度は、1段目90℃以上100℃以下、2段目以降100℃以上150℃以下と段階的に高くすることが好ましい。
【0022】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、100℃で12時間熱処理を施した際の密度が、1.34g/cm以上1.39g/cm以下であることが好ましい。100℃という高温下で12時間熱処理を施した際の密度を上記範囲内に制御することで、偏光子保護用途では長期信頼性を確保することが可能となり、透明導電性フィルム用途では、より導電層積層時の耐久性を維持することができる。本発明の光学用ポリエステルフィルムは、より長期間の信頼性を確保および導電層積層時の耐久性を向上させるために、フィルム密度は、1.35g/cm以上1.38g/cm以下であればより好ましく、1.355g/cm以上1.375g/cm以下であれば最も好ましい。
【0023】
本発明の光学用ポリエステルフィルムの100℃で12時間熱処理を施した際の密度を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、特に有効な方法として、二軸延伸後の熱処理温度を低く制御することが挙げられる。具体的には、170℃以上220℃以下であれば好ましく、175℃以上215℃以下であればより好ましい。
【0024】
本発明において光学用ポリエステルフィルムとしては、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを低く保ちつつ、長期信頼性も両立するために、ポリエステルA層とポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を有する少なくとも2層以上の積層フィルムであることが好ましい。ポリエステルA層よりも融点の低いポリエステルB層を有することで、ポリエステルB層で、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを低く保ちつつ、A層で長期信頼性および導電層積層時の耐久性を確保することが可能となる。本発明における融点としては、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分で測定を行った際の融解現象で発現する吸熱ピーク温度である。異なる組成のポリエステル樹脂をブレンドして使用し、フィルムとした場合などには複数の融解に伴う吸熱ピークが現れる場合があるが、その場合、熱量の絶対値が最も大きい温度を融点とする。なお、本発明におけるポリエステルB層は、ポリエステルA層よりも融点が低い層のことを指すが、結晶性が低く、明確な融点を有さないポリエステルについても包含するものとする。
【0025】
本発明の光学用ポリエステルフィルムが、ポリエステルA層とポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を有する積層フィルムの場合、ポリエステルB層の厚みは、フィルム全体厚みを100%として、65%以上100%以下であることが好ましい。ここで、ポリエステルA層、B層が複数存在する場合は、各層の合計厚みを示す。ポリエステルB層の厚みが65%未満であると、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを低く保つことが難しくなる場合がある。低リタデーションと長期信頼性および導電層積層時の耐久性を両立するためには、ポリエステルB層の厚みはフィルム全体厚みを100%として、70%以上90%以下であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、ポリエステルA層とポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を有する積層フィルムの場合、リタデーションを低く制御しつつ、高剛性を両立するために、ポリエステルA層1層あたりの厚みが3.2μm未満であることが好ましい。ポリエステルA層の厚みは、3μm未満であればさらに好ましく、1μm以上2.8μm以下であれば最も好ましい。なお、本発明の光学用ポリエステルフィルムがポリエステルA層を複数有する場合は、各ポリエステルA層の厚みが、それぞれ3.2μm未満とすることが好ましい。
【0027】
本発明の光学用ポリエステルフィルムにおいて、リタデーションは、フィルム内における直交する2方向の屈折率差とフィルム厚みの積から算出されるものであるため、リタデーションを低く制御するためには厚みは薄い方が好ましい。このため、取り扱い性、低リタデーション制御の観点から、厚みが5μm以上75μm以下であることが好ましく、10μm以上40μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上30μm以下であれば最も好ましい。
【0028】
また、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加してもよい。
【0029】
(表面層)
また、製造工程における工程安定化や、使用環境における耐久性を付与するため、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の面にハードコート性、自己修復性、防眩性、反射防止性、低反射性、紫外線遮蔽性、及び帯電防止性からなる群より選択される1種以上の機能を示す表面層を有することが好ましい。
【0030】
前記表面層の厚みは、その機能により異なるが、好ましくは10nmから30μmの範囲であり、50nmから20μmがより好ましい。これよりも薄いと効果が不十分になり、厚くなると光学性能などに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
ここでハードコート性とは、表面の硬度を高めることにより傷がつきにくくする機能である。その機能としては、JIS K5600−5−4(1999)に記載の引っかき硬度(鉛筆法)による評価にて、好ましくはHB以上で、より好ましくは2H以上であるか、#0000のスチールウールで200g/cmの条件で行う耐擦傷性試験において、傷つかない状態を示す。また、自己修復性とは、弾性回復などによって傷を修復することで傷がつきにくくなる機能であり、その機能としては、500gの荷重をかけた真鍮ブラシで表面を擦過した際、3分以内で傷が修復、より好ましくは1分以内で傷が修復することである。
【0032】
防眩性とは、表面での光散乱により外光の映り込みを抑制することで、視認性を向上させる機能である。その機能としては、JIS K7136(2000)に記載の、ヘイズ(ヘーズ)の求め方に基づく評価にて、2〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜40%、特に好ましくは2〜30%である。
【0033】
反射防止性、低反射性とは、光の干渉効果により表面での反射率を低減することで、視認性を向上させる機能である。その機能としては反射率分光測定により、反射率が好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0034】
帯電防止性とは、表面からの剥離や表面への擦過により発生した摩擦電気を、漏洩させることにより除去する機能である。その機能の目安としては、JIS K6911(2006)に記載の表面抵抗率が、好ましくは1011Ω/□以下であり、より好ましくは10Ω/□以下である。帯電防止性の付与は、公知の帯電防止剤を含有した層である他、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子を含有した層からなるものであってもよい。以下、ハードコート性と防眩性の付与について、より詳しく述べる。
【0035】
前記ハードコート性を付与する表面層(以下、ハードコート層とする)に用いられる材料は、公知のハードコート層に用いられる材料を用いることができ、特に限定されないが、乾燥、熱、化学反応、もしくは電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する樹脂化合物を用いることができる。このような、硬化性樹脂としては、メラミン系、アクリル系、シリコン系、ポリビニルアルコール系の硬化性樹脂が挙げられるが、高い表面硬度もしくは光学設計を得る点で電子線又は紫外線により硬化するアクリル系硬化性樹脂が好ましい。
【0036】
電子線又は紫外線により硬化するアクリル樹脂とは、アクリレート系の官能基を有するものであり、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を含有するものが使用できる。
【0037】
電子線又は紫外線硬化型樹脂の場合には、前述の樹脂中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチラウムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。上記光重合開始剤の添加量は、電子線紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0038】
上記塗膜の硬化方法としては特に限定されないが、紫外線照射によって行うことが好ましい。紫外線によって硬化を行う場合、190〜380nmの波長域の紫外線を使用することが好ましい。紫外線による硬化は、例えば、メタルハライドランプ灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯等によって行うことができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0039】
また、シロキサン系熱硬化性樹脂もハードコート層の樹脂として有用であり、酸または塩基触媒下においてオルガノシラン化合物を単独または2種以上混合して加水分解及び縮合反応させて製造することができる。
【0040】
上記ハードコート層の膜厚は、0.5μm〜20μmが好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜15μmがさらに好ましい。
【0041】
前記防眩性を付与する表面層(以下、防眩層とする)に使用される樹脂としては、前述の電子線又は紫外線硬化型樹脂と同様のものも使用することができる。前記記載の樹脂から1種類もしくは2種類以上を混合して使用することができる。また、可塑性や表面硬度などの物性を調整するために、電子線又は紫外線で硬化しない樹脂を混合することもできる。電子線または紫外線で硬化しない樹脂には、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0042】
防眩層に使用する粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、アルミナ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子、あるいはポリメチルメタクリレート粒子、アクリル−スチレン共重合体粒子、架橋アクリル粒子、メラミン粒子、架橋メラミン粒子、ポリカーボネート粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン粒子、架橋ベンゾグアナミン粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子などの樹脂粒子が好ましく挙げられる。形状としては、表面突起形状が揃う真球状粒子が好適に用いられるが、タルク、ベントナイトなどの層状無機化合物などの不定形のものも使用できる。また、異なる2種以上の粒子を併用して用いてもよい。素材種が2種類以上でも、粒径が2種類以上でも、その制限は無い。
【0043】
防眩層で使用する粒子の粒径は、0.5〜10μmであり、0.5〜5μmがより好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましく、0.5〜1.5μmがより一層好ましい。また、前記粒子の含有量は、樹脂に対して1〜50重量%であり、2〜30重量%がさらに好ましい。
【0044】
上記防眩層の膜厚は、0.5μm〜20μmが好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜10μmがさらに好ましい。本発明における平均粒径とは、D=ΣDi /N(Di :粒子の円相当径、N:粒子の個数)で表される数平均径Dのことを指す。
本発明に用いられる防眩層としては、特開平6−18706号公報、特開平10−20103号公報、特開2009−227735号公報、特開2009−86361号公報、特開2009−80256号公報、特開2011−81217号公報、特開2010−204479号公報、特開2010−181898号公報、特開2011−197329号公報、特開2011−197330号公報、特開2011−215393号公報などに記載の防眩層も好適に使用できる。
【0045】
前記表面層には、上記記載のもの以外に、必要に応じて、発明の効果を失わない範囲でその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、限定されるわけではないが、例えば、無機または有機顔料、重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、触媒、赤外線吸収剤、難燃剤、消泡剤、導電性微粒子、導電性樹脂などを添加することができる。
(光学用フィルム)
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際に高品位な表示が可能となることから、各種光学用途に好適に用いることが可能であり、光学用途の中でも、特に、偏光子保護用途、透明導電性フィルム用途、ガラスの飛散防止フィルム用途などに好適に用いることできる。
【0046】
(偏光板)
本発明の偏光板は、偏光子の両面に偏光子保護フィルムを有してなる偏光板であって、少なくとも一方の面の偏光子保護フィルムが前記偏光子保護ポリエステルフィルムであることが好ましい。他方の偏光子保護フィルムは、本発明の偏光子保護ポリエステルフィルムであっても良いし、トリアセチルセルロースフィルムやアクリルフィルム、ノルボルネン系フィルムに代表されるような複屈折が無いフィルムを用いることも好ましい。
【0047】
偏光子としては、例えばポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性材料を含むものが挙げられる。偏光子保護フィルムは偏光子と直接または接着剤層を介して張り合わされるが、接着性向上の点からは接着剤を介して張り合わせることが好ましい。本発明のポリエステルフィルムを接着させるのに好ましい偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性材料を染色・吸着させ、ホウ酸水溶液中で一軸延伸し、延伸状態を保ったまま洗浄・乾燥を行うことにより得られる偏光子が挙げられる。一軸延伸の延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。ポリビニルアルコール系フィルムとしてはポリビニルアルコールが好適であり、「クラレビニロン」[(株)クラレ製]、「トーセロビニロン」[東セロ(株)製]、「日合ビニロン」[日本合成化学(株)製]などの市販品を利用することができる。二色性材料としてはヨウ素、ジスアゾ化合物、ポリメチン染料などが挙げられる。
(透明導電性フィルム)
本発明の透明導電性フィルムは、本発明の光学用ポリエステルフィルム上に、直接、または易接着層を介して透明導電層を積層したフィルムである。透明導電層は、透明な導電性の膜を形成できれば特に限定されず、例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、CNT、銀、銅などの薄膜が挙げられる。これらの化合物は、適切な生成条件を選択することにより、透明性と導電性を両立できる。
【0048】
透明導電層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法、導電性材料を含んだ塗液をコーティングする方法などが知られており、材料の種類および必要な膜厚に応じて適宜の方法を選択して使用することができる。例えば、スパッタリング法の場合は、化合物ターゲットを使用した通常のスパッタ、金属ターゲットを使用した反応性スパッタ等が使用される。この際、酸素、窒素、水蒸気などの反応性ガスを導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を併用したりすることもできる。
【0049】
(製造方法)
次に、本発明のフィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
【0050】
ポリエステルA層に用いるポリエステルAと、ポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層に用いるポリエステルBをそれぞれ別々のベント式二軸押出機に供給し溶融押出する。この際、押出機内を流通窒素雰囲気下で、酸素濃度を0.7体積%以下とし、樹脂温度は265℃〜295℃に制御することが好ましい。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点未満にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0051】
本発明のポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸配向フィルムとすることが好ましい。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
【0052】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、長手方向に、好ましくは、2.8倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは3倍以上3.3倍以下が採用される。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また長手方向の予熱温度は65℃以上80℃未満、延伸温度としては、80℃以上90℃以下が好ましい。
【0053】
また、幅方向の延伸倍率としては、好ましくは2.8倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは、3倍以上3.5倍以下で、長手方向の延伸倍率にそろえることが好ましい。幅方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また、フィルム密度を特定の範囲に制御するため、幅方向の予熱温度は、75℃以上90℃以下であれば好ましく、延伸温度は、1段目90℃以上100℃以下、2段目以降100℃以上150℃以下と段階的に高くすることが好ましい。
【0054】
さらに、二軸延伸後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上のポリエステルの結晶融解ピーク温度以下の温度で行われるが、好ましくはポリエステルA層の融点―10℃以上融点+30℃以下であることが好ましく、100℃で12時間熱処理を施した際のフィルム密度を特定の範囲に制御するためには、170℃以上220℃以下とすることが好ましい。ここで好ましい熱処理温度とは、二軸延伸後に行う熱処理温度の中で、最も高温となる温度を示す。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは5秒以上60秒以下、より好ましくは10秒以上40秒以下、最も好ましくは15秒以上30秒以下で行うのがよい。
【0055】
さらに、偏光子や透明導電層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、易接着層をコーティングさせることもできる。コーティング層をフィルム製造工程内のインラインで設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際、易接着層厚みとしては0.01μm以上1μm以下とすることが好ましい。また、易接着層中に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機粒子、帯電防止剤、核剤などを添加してもよい。易接着層に好ましく用いられる樹脂としては、接着性、取扱い性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。さらに、90〜200℃条件下でオフアニールすることも好ましく用いられる。
【0056】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが1500nm以下であり、かつ、フィルム密度が1.34g/cm以上1.39g/cm以下であるため、大画面の液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際に干渉色を呈することがなく、PVA中にヨウ素を含有させて配向させて作成されたPVAシート(偏光子)と貼り合わされて偏光板として、好ましく用いられたり、良好な外観の透明導電性フィルム、およびそれを用いたタッチパネル部材として好ましく用いられたりする。
【0057】
本発明の光学用ポリエステルフィルムにおいて、ハードコート性、自己修復性、防眩性、反射防止性、低反射性、及び帯電防止性などの機能を付与するため、最表面に表面層を積層する場合には、前述の塗料組成物をに塗布−乾燥−硬化することにより形成する製造方法を用いることが好ましい。
【0058】
塗布により表面層を製造する方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより表面層を形成することが好ましい。さらに、これらの塗布方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗布方法としてより好ましい。
【0059】
次いで、塗布された液膜を乾燥することで完全に溶媒を除去するため、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
【0060】
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、100℃以上200℃以下がより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
【0061】
また、活性エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3,000mW/cm、好ましくは200〜2,000mW/cm、さらに好ましくは300〜1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3,000mJ/cm、好ましく200〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。
ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0062】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0063】
(1)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
【0064】
(2)ポリエステルの固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の固有粘度を評価することができる。
【0065】
(3)フィルム厚み、層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルム厚みおよびポリエステル層の厚みを求めた。
【0066】
(4)融点
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121−1987、JIS K7122−1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステルフィルムを5mg、サンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。なお、積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の融点を測定した。本発明において、ポリエステルA層とポリエステルB層とを有する積層ポリエステルフィルムの場合は、各層の融点を測定し、融点の高い層をポリエステルA層、低い方の層をポリエステルB層とした。なお、融点が観測されない場合は、表に「ND」と表記している。
【0067】
(5)光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度のリタデーション(Re(50))
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いて測定した。フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとして、30mm×50mm(方向X×方向Y)のサンプルを切り出し、位相差測定装置に設置した。光束の入射方向と直交する測定試料ステージ(図1a)角度を0°の面とした場合、この0°面と測定試料ステージが成す角度が50°となるように試料ステージ傾斜(図1b)させ、波長590nmのリタデーションを測定した。
【0068】
(6)ヘイズ
スガ試験機株式会社製直読ヘイズコンピューターを用い、JIS K−7105に基づいて測定した。なお、測定はそれぞれ3回ずつ行い、その平均値を採用した。
(7)長期信頼性
フィルムを100mm角に切り出し、熱処理前のフィルムヘイズをHz1、100℃の熱風オーブン中に、オーブンの上下左右の壁面に接触しないようにツリー状に吊し、12時間保管し加熱処理を行った後のヘイズをHz2として、Hz2からHz1を引いた値より、以下のとおり判定した。
3%以下:○長期信頼性を満足する
2%以下:◎長期信頼性に非常に優れる
(8)導電層積層時の耐久性
導電層積層前のフィルムヘイズをDs1、フィルム上に透明導電層としてITO膜を150℃雰囲気中でスパッタリング法にて30nmの厚みで形成し、透明導電性フィルムを作製し、そのフィルムヘイズをDs2としたとき、Ds2からDs1を引いた値より、以下のとおり判定した。
2.5%以下:○耐久性を満足する
1.5%以下:◎耐久性に非常に優れる
(9)密度
フィルムを一辺5mmの正方形に切り取り、臭化ナトリウム水溶液を用いた密度勾配管により密度(g/cm3)を測定した。なお、測定はそれぞれ3回ずつ行い、その平均値を採用した。また、100℃で12時間熱処理を施した後のヘイズについては、100mm角のフィルムを100℃の熱風オーブン中に、オーブンの上下左右の壁面に接触しないようにツリー状に吊し、12時間保管し加熱処理を行った後、同様に測定を行った。
【0069】
(10)視認性テスト
PVA中にヨウ素を吸着・配向させて作成した偏光度99.9%の偏光子の一方の面にフィルムの幅方向中央部分から幅方向2方向にそれぞれ200mm(フィルム幅400mm)、長手方向に310mmのサイズで切り出したサンプルに85℃に設定したラミネーターロールを通して、貼り合わせ、テストピースとした。作成したテストピースとフィルムを貼り付けていない偏光板とをクロスニコルの配置にて重ね合わせLED光源(トライテック製A3−101)上においた場合の、テストピース平面の法線方向に対して50°の角度からの視認性を確認した。
【0070】
◎:干渉色はほとんどみられない。
【0071】
○:干渉色が若干見られるものの実用に問題ない。
【0072】
×:干渉色がはっきりみられるため、ディスプレイ用途には適さない。
【0073】
(11)100℃、12時間熱処理後の平面性
100mm角のフィルムを100℃の熱風オーブン中に、オーブンの上下左右の壁面に接触しないようにツリー状に吊し、12時間保管し加熱処理を行った後、フィルムの平面性について、下記基準にて目視で評価を行った。
【0074】
○:熱処理前と変化なし。
【0075】
△:フィルムに若干、うねり、シワが発生したが問題ないレベル。
【0076】
×:フィルムにうねり、シワが発生し、ディスプレイ用途に適さない。
【0077】
(12)鉛筆硬度
(10)で得られたテストピースについて、JIS K5600−5−4(1999)に記載の引っかき硬度(鉛筆法)による評価を行い、H以上を合格とした。
【0078】
(13)耐スチールウール性
(10)で得られたテストピースについて、ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなうことで、耐擦傷性の指標とした。
【0079】
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定。
【0080】
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:500g/cm
先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
【0081】
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察し、以下の基準で評価した。評価は上記テストを3回繰り返し、平均して5段階で評価した。
【0082】
○ :全く傷が見えない。
【0083】
△ :僅かに傷が見える。
【0084】
× :一目見ただけで分かる傷がある。
【実施例】
【0085】
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0086】
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が81モル%、イソフタル酸成分が19モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0087】
(ポリエステルB)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が78モル%、イソフタル酸成分が22モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0088】
(ポリエステルC)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が76モル%、イソフタル酸成分が24モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0089】
(ポリエステルD)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が74モル%、イソフタル酸成分が26モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0090】
(ポリエステルE)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が72モル%、イソフタル酸成分が28モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0091】
(ポリエステルF)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールが24mol%共重合された1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.7)。
【0092】
(ポリエステルG)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が80モル%、2−6−ナフタレンジカルボン酸成分が20モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%である2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.7)。
【0093】
(ポリエステルH)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が86モル%、イソフタル酸成分が14モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0094】
(ポリエステルI)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
【0095】
(粒子マスター)
ポリエステルI中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.65)。
【0096】
(ハードコート層形成用塗料組成物)
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度40質量%のハードコート層形成用塗料組成物を得た。
トルエン 30質量部
多官能ウレタンアクリレート 25質量部
(ダイセルオルネクス株式会社製 KRM8655)
ペンタエリスリトールトリアクリレート混合物 25質量部
(日本化薬株式会社製 PET30)
多官能シリコーンアクリレート 1質量部
(ダイセルオルネクス株式会社製 EBECRYL1360)
光重合開始剤 3質量部
(チバスペシャリティーケミカルズ社製 イルガキュア184)
(防眩層形成用塗料組成物)
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度40質量%の防眩層形成用塗料組成物を得た。
トルエン 30質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50質量部
(日本化薬株式会社製 PET30)
シリカ分散物(数平均粒径1μm) 12質量部
多官能シリコーンアクリレート 1質量部
(ダイセルオルネクス株式会社製 EBECRYL1360)
光重合開始剤 3質量部
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
(実施例1〜6)
組成を表の通りとして、原料を酸素濃度を0.2体積%としたベント同方向二軸押出機に供給し、押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、短管温度を275℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、
75℃で予熱を行い、延伸温度85℃で長手方向に3.3倍に延伸した。次いでテンター式横延伸機に予熱温度85℃、延伸1段目温度95℃、延伸2段目温度135℃で幅方向に3.3倍に延伸し、そのまま表に示す熱処理温度で、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、表に示した構成の光学用ポリエステルフィルムを得た。
【0097】
(実施例7〜20、比較例1〜3)
組成を表の通りとして、各原料について酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を270℃、B層押出機シリンダー温度を280℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を275℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、75℃で予熱を行い、延伸温度85℃で長手方向に3.3倍に延伸した。次いでテンター式横延伸機に予熱温度85℃、延伸1段目温度95℃、延伸2段目温度135℃で幅方向に3.3倍に延伸し、そのまま表に示す熱処理温度で、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、表に示した構成の光学用ポリエステルフィルムを得た。
【0098】
(実施例21)
実施例14で得られた二軸配向ポリエステルフィルムに、前述のハードコート層形成用塗布液を、乾燥後の厚みが5μmになるように流量を制御してスロットダイコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコート層が積層された光学用ポリエステルフィルムを得た。
【0099】
(実施例22)
実施例14で得られた二軸配向ポリエステルフィルム上に、前述の防眩層形成用塗布液をスロットダイコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、防眩層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層が積層された光学用ポリエステルフィルムを得た。
表2に記載のとおり、実施例1〜22については、偏光板として用いた際の視認性および、100℃12時間処理後の平面性に優れていることを確認した。また、実施例6〜13については透明導電性フィルムとしての耐久性に優れていることを確認した。
一方、比較例1は密度が1.34未満であったため、100℃12時間熱処理後の平面性が悪化した。
比較例2および3はリタデーションが1500nmを超えていたため、視認性に劣っていた。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが1500nm以下であり、かつ、フィルム密度が1.34g/cm以上1.39g/cm以下であるため、大画面の液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際に干渉色を呈することがなく、かつ高温下での長期信頼性にも優れた光学用ポリエステルフィルムとして用いることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 光束照射装置
2 光束入射方向
3 受光機
図1