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特開2015-232157真空脱ガス設備を用いる溶鋼の脱燐処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232157(P2015-232157A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】真空脱ガス設備を用いる溶鋼の脱燐処理方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/064 20060101AFI20151201BHJP
   C21C 7/06 20060101ALI20151201BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20151201BHJP
   C21C 7/076 20060101ALI20151201BHJP
   C21C 7/10 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   C21C7/064 A
   C21C7/06
   C21C7/04 B
   C21C7/076 A
   C21C7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-118984(P2014-118984)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120581
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100180426
【弁理士】
【氏名又は名称】剱物 英貴
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 武
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽俊
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013BA03
4K013BA08
4K013CA12
4K013CB02
4K013CB04
4K013CB09
4K013CE01
4K013CE03
4K013CE06
4K013CE07
4K013DA10
4K013DA12
4K013DA13
4K013EA02
4K013EA03
4K013EA09
4K013EA19
(57)【要約】
【課題】CaFを添加せず、粉体インジェクション設備の導入といった大幅な設備改造を必要とせず、かつ溶鋼バブリング処理といった新たなプロセスを追加する必要がないために処理時間の短縮および熱エネルギーロスの抑制を図りながら、転炉の次工程にあるRHを用いて、追加の脱燐処理を効率よくかつ簡便に行う。
【解決手段】転炉から取鍋へ出鋼されたフリー酸素濃度が400ppm以上である溶鋼を、真空脱ガス設備を用いて脱燐処理する方法である。脱燐剤として、脱燐剤中に含まれる全CaO質量のうち35%以上がカルシウムフェライトとして含まれているものを、真空脱ガス槽内に挿入した上吹きランスから溶鋼の浴面へ向けて吹付けること、または、真空脱ガス槽内の溶鋼に合金鉄を投入する投入孔から添加することによって、溶鋼の還流中に添加し、脱燐剤の添加を終えた後に溶鋼を還流して脱燐反応させた後、脱酸を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉または電気炉から取鍋へ出鋼されたフリー酸素濃度が400ppm以上である溶鋼を、真空脱ガス設備を用いて脱燐処理する方法であって、
脱燐剤として、該脱燐剤中に含まれる全CaO質量のうち35%以上がカルシウムフェライトとして含まれているものを、真空脱ガス槽内に挿入した上吹きランスから溶鋼の浴面へ向けて吹付ける方法、および、真空脱ガス槽内の溶鋼に合金鉄を投入する投入孔から添加する方法のうちのいずれか一方または両方の方法によって、前記溶鋼の還流中に添加し、当該脱燐剤の添加を終えた後に溶鋼を還流して脱燐反応させた後、脱酸を行うこと
を特徴とする真空脱ガス設備を用いる脱燐処理方法。
【請求項2】
前記脱燐剤として、前記脱燐剤中に含まれる全CaO質量に対して、当該質量の20〜50%のCaFを外数として含有する脱燐剤を用いる請求項1に記載の脱燐処理方法。
【請求項3】
前記溶鋼の還流時間は2分間以上である請求項1または請求項2に記載の脱燐処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス設備を用いる溶鋼の脱燐処理方法に関し、転炉や電気炉等で精錬して取鍋へ出鋼した溶鋼を、溶鋼還流型の真空脱ガス設備(RH)を用いて脱燐処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼法では、一般に、溶銑やスクラップ等の主原料と生石灰等の副原料とを転炉や電気炉に装入して酸素を吹付け、脱炭や脱燐等の酸化精錬を施して溶鋼とした後、取鍋へ出鋼して、出鋼時に溶鋼にAlや合金鉄を添加して脱酸および成分調整を行う。その後、多くの場合、さらに真空脱ガス設備(RH)等の二次精錬設備を用いて、脱ガス処理や成分調整、介在物除去等の二次精錬を施している。
【0003】
しかし、近年は鉄鋼製品の用途が拡大し、高品質化への要求が強くなっている。その一方で、近年は低品位鉄鉱石の使用などにより溶銑中のP濃度が上昇しているために、溶銑に予備脱燐処理を施してから、さらに転炉で脱炭及び脱燐等の酸化精錬を施して溶鋼とする処理が、広く行われるようになっている。しかし、それでもなお、その酸化精錬後の溶鋼中P濃度が、その最終製品のP濃度をその規格濃度以下とするのに十分なレベルまで低下できていない場合も発生している。このような事情は、鉄鋼製品への高品質化の要求が背景にあるため、電気炉による酸化精錬でも転炉による場合と同様に存在する。
【0004】
転炉によるか電気炉によるかを問わず、酸化精錬後の溶鋼中P濃度が十分なレベルまで低下できていない場合、出鋼する前に再度脱燐処理を行うことが多いが、酸化精錬後に取鍋へ出鋼した後に、溶鋼中P濃度が最終製品の規格濃度を超えていると分かる場合もある。その場合には、その溶鋼をP濃度の規格を満たすことのできる製品に向先を振り替えるか、再度転炉に装入して脱燐処理をやり直す等の通常操業を乱す対応が必要になり、製造コストが悪化する。
【0005】
代わりに、転炉や電気炉の次工程にある真空脱ガス設備(RH)等の二次精錬設備を用いて追加の脱燐処理を効率よく行うことができれば、前記した通常操業を乱す対応が必要無くなる。さらに、そのような対応を要しないようにと、転炉や電気炉で過剰に使用している生石灰等の副原料の使用量を削減することもできる。
【0006】
例えば、特許文献1,2には、真空脱ガス槽内の未脱酸溶鋼(フリー酸素>100ppm)に脱燐剤を吹込んで脱燐する発明が開示されている。ただし、その脱燐剤としては「65質量%CaO・35質量%CaF」のものを4kg/t用いた例と、「80質量%CaO・20質量%CaF」のものを6kg/t用いた例と、「65質量%CaO・35質量%CaF」のものを3kg/t用いた例とが、それぞれの実施例として開示されているだけである。
【0007】
特許文献1により開示された発明では、特許文献2により開示された発明の短所である「脱燐反応と脱炭反応とが溶鋼中のフリー酸素を互いに奪い合って脱燐反応速度が低下する事態」を避ける手段として、溶鋼中C濃度レベルに応じた槽内真空度の制御を行っていることから、これらのいずれの発明においても、脱燐反応を促進するために同時に酸素を供給する技術思想は存在していなかったと解される。また、いずれの発明も、脱燐剤の吹込みは真空脱ガス槽内下部に設けた粉体吹き込み羽口を通して行っている。したがって、吹込み羽口の損耗防止に特別な注意を必要とする。
【0008】
一方、特許文献3には、真空脱ガス槽内の鋼浴上に、脱燐剤として石灰系フラックスとしてCaOを含む粉体、特に70質量%CaOと30質量%CaFの粉体と、脱燐のための酸素を酸素ガスまたは固体酸化物を含む粉末、特にFeの粉末とを上吹きランスを通じて吹き込むことによって極低炭素鋼を製造する方法が開示されている。しかし、その脱燐のために上記の石灰系フラックスを1〜4kg/t添加すると記載されている以外には、フラックス添加条件に関する記載が乏しい。
【0009】
特許文献4には、転炉から取鍋への出鋼時に溶鋼を脱燐処理する方法が開示されており、脱燐剤としてカルシウムフェライトの組成を有する低融点焼結鉱等の添加条件が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−122013号公報
【特許文献2】特開昭62−205221号公報
【特許文献3】特表2002−544376号公報
【特許文献4】特開昭61−217519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜3により開示された発明は、いずれも、脱燐剤として一般的なCaOを用いるが、融点が高く溶融性(滓化性)が悪いCaOの溶融性をスラグ撹拌力の弱い二次精錬設備において確保するために、ホタル石(CaF)を同時に投入する。しかし、これにより生成するスラグからのフッ素の溶出が土壌環境基準等の地球環境保護の観点から問題となり、スラグがフッ素(F)を土壌環境基準以上に含有する場合にはスラグを路盤材等にリサイクル使用できなくなる。このため、ホタル石を用いない製鋼法が求められる。
【0012】
特許文献4により開示された発明は、出鋼時の撹拌を利用し、さらに取鍋内で底吹きバブリングを加えて溶鋼と溶鋼上の脱燐剤とを反応させる技術であって、真空脱ガス装置へ溶鋼が到着した後に補助的に脱燐処理する方法とは、基本的な反応処理形態が異なる。
【0013】
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、CaFを添加せず、かつ新たに溶鋼バブリング処理や粉体インジェクション処理を必要とせずに、転炉や電気炉の次工程にある真空脱ガス設備(RH)を用いて追加の脱燐処理を効率よくかつ簡便に行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記の知見A〜Eを得て、本発明を完成した。
【0015】
(A)溶鋼の脱燐反応をイオン式で書くと、
[P]+(5/2)[O]+(3/2)O2−=PO3−
となり、脱燐反応にはスラグ塩基度が高いこと(すなわちCaOが存在すること)と、スラグ中酸素ポテンシャル(T.Fe)の上昇が必要である。従来は、ホタル石(CaF)の使用によりスラグ塩基度を上昇させて脱燐を行っていた。ホタル石を使用せずにスラグ塩基度を高位にすることは困難である。
【0016】
そこで、本発明者らはスラグ中の酸素ポテンシャルを高位に維持することを検討した。スラグ中の酸素ポテンシャルを高位に維持するには溶鋼中の酸素活量を高位にしておく必要がある。よって、一度脱酸をしてしまうと脱燐反応は進行しなくなるため、二次精錬において脱燐を行うには未脱酸出鋼を行うことが前提となる。転炉や電気炉で低炭素領域(C=0.02〜0.08質量%)まで吹酸すれば、溶鋼中の酸素活量は300〜500ppm程度に高まる。
【0017】
本発明者らは、この状態でCaOを投入すれば平衡上はスラグT.Feも上昇し、CaO−FeOの生成によりスラグも溶融し、脱燐反応が進行すると期待したが、実際に投入試験を行ったところ脱燐反応はうまく進行しなかった。さらに、RHで上方から酸素吹きを行い、溶鋼中の酸素活量をさらに500〜900ppm程度まで上昇させたが、同じ結果であった。
【0018】
これは、RHは、真空反応容器であってスラグ−溶鋼間の撹拌に適した機講ではないため、溶鋼の酸素がスラグへ十分移行せず、CaO−FeOの生成によるスラグ溶解が進行しなかったためと考えられる。
【0019】
(B)そこで、脱燐フラックスとして、予め酸素源を含有し、かつ融点が低いものを用いる必要があると考え、そのような脱燐フラックスであるカルシウムフェライト(CaO:25〜50質量%、Fe:30〜50質量%)の投入試験を行った。その試験の結果、全投入脱燐フラックス中にCaO換算でカルシウムフェライトの割合が35%以上であれば、ホタル石を使用しなくとも脱燐率は安定して高位となることが判明した。
【0020】
カルシウムフェライトは、融点が低く、投入後速やかに溶け高酸素かつ高塩基度の溶融スラグを生成できるためと考えられる。例えば、脱燐フラックスとして生石灰とスケール(FeO)の混合品を用いると、生石灰の融点が高いだけでなくFeOとの接触頻度も影響するため、素早く溶融スラグを生成できないために脱燐効率が悪い。
【0021】
(C)脱燐フラックスを投入する際の溶鋼中の酸素活量(フリー酸素濃度)が400ppm未満であると、脱燐率が低下する。溶鋼中の酸素活量が低過ぎるとスラグ中の酸素活量を高位に保てないためであると考えられる。
【0022】
(D)さらに、ホタル石(CaF)をカルシウムフェライトと併用することにより、脱燐率をさらに高位に維持することができる。スラグからのフッ素の溶出が問題とならない程度であれば、この方法を選択してもよい。
【0023】
(E)脱燐フラックスの投入から脱酸材の投入までの還流時間は2分間以上確保することが望ましい。これは、RHの槽内スラグが取鍋上に排出される前に、槽内スラグを脱酸してしまうため復燐が起こることを防ぐためである。還流回数を用いて換言すると、還流回数={還流処理時間T(min))/(当該溶鋼の全質量M(t)/溶鋼還流量Q(t/min))≧2を満足することが望ましい。
【0024】
本発明は以下に列記のとおりである。
【0025】
(1)転炉または電気炉から取鍋へ出鋼されたフリー酸素濃度が400ppm以上である溶鋼を、真空脱ガス設備(RH)を用いて脱燐処理する方法であって、
脱燐剤として、該脱燐剤中に含まれる全CaO質量のうち35%以上がカルシウムフェライト(CaO:25〜50質量%、Fe:30〜50質量%)として含まれているものを、真空脱ガス槽内に挿入した上吹きランスから溶鋼の浴面へ向けて吹付ける方法、および、真空脱ガス槽内の溶鋼に合金鉄を投入する投入孔から添加する方法のうちのいずれか一方または両方の方法によって、前記溶鋼の還流中に添加し、
当該脱燐剤の添加を終えた後に溶鋼を還流して脱燐反応させた後、例えば、溶鋼にAlを添加してAl含有濃度を0.003質量%以上とすることによって、脱酸を行うことを特徴とする真空脱ガス設備(RH)を用いる脱燐処理方法。
【0026】
(2)前記脱燐剤として、前記脱燐剤中に含まれる全CaO質量に対して、当該質量の20〜50%のCaFを外数として含有する脱燐剤を用いる(1)項に記載の脱燐処理方法。
【0027】
(3)前記溶鋼の還流時間は2分間以上である(1)項または(2)項に記載の脱燐処理方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、CaFを添加せず、粉体インジェクション設備の導入といった大幅な設備改造を必要とせずに、かつ溶鋼バブリング処理といった新たなプロセスを追加する必要がないために処理時間の短縮および熱エネルギーロスの抑制を図りながら、転炉や電気炉の次工程にある真空脱ガス設備(RH)を用いて、追加の脱燐処理を効率よくかつ簡便に行うことができるようになり、これにより、従来よりも安定して溶鋼の脱燐処理を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、CaO原単位と脱P率の関係を示すグラフである。
図2図2は、カルシウムフェライトCaO比率とCaO脱燐効率との関係を示すグラフ(ホタル石なし)である。
図3図3は、カルシウムフェライトCaO比率とCaO脱燐効率との関係を示すグラフ(ホタル石あり)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を、添付図面を参照しながら説明する。以降の説明では、濃度に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する。
【0031】
1.処理対象
本発明では、基本的に、転炉または電気炉から取鍋へ出鋼されたフリー酸素濃度が400ppm以上である溶鋼を、真空脱ガス設備(RH)を用いて脱燐処理する。転炉または電気炉を用いて、[C]≦0.06%に脱炭することにより、溶鋼中フリー酸素は400ppm以上となる。
【0032】
このようにフリー酸素濃度が高い条件では、転炉または電気炉で生成されるスラグ中の酸化鉄濃度(T.Fe%)も高くなるため、脱燐反応の促進には好都合である。
【0033】
ただし、本発明は、RH到着後の溶鋼を脱燐処理することから、転炉や電気炉から取鍋への出鋼時にAlを投入して脱酸する鋼種には実質的に適用できない。転炉や電気炉から取鍋への出鋼時にAlを投入しない鋼種としては、RHで脱炭処理する鋼種、すなわち極低炭素鋼を始めとする低炭素鋼がある。
【0034】
本発明では、RHで脱炭処理するそのような鋼種への適用を想定し、かつ、出鋼時のスラグフォーミングの抑制や、少量のMn等の合金鉄の添加も考慮して、溶鋼中フリー酸素濃度が400ppm以上であることを前提とする。
【0035】
2.脱燐剤
従来は、特許文献1,2に記載されている脱燐剤、すなわち生石灰を主たるCaO源とし、それに20〜35%のCaFを混合したものを用いていた。ただし、上吹きランスから吹付けるために、最大粒径はいずれも0.15mm以下にした粉体である。
【0036】
これに対し、本発明では、脱燐剤として、脱燐剤中に含まれる全CaO質量のうち35%以上がカルシウムフェライト(CaO:25〜50%、Fe:30〜50%)として含まれているものを用いる。カルシウムフェライトは、融点が低く、投入後速やかに溶け、高酸素かつ高塩基度の溶融スラグを生成できるため、ホタル石を使用しなくとも脱燐率は安定して高位となる。
【0037】
この脱燐剤を用いることにより、溶鋼中のフリー酸素と取鍋内溶鋼上のスラグ中酸素とを利用することに併せて、溶鋼中の脱燐反応サイトに供給される脱燐剤が脱燐処理の促進に必要なCaO源(CaO)と酸素源(Fe)とを有するため、RHでの脱燐反応を促進することが可能になる。
【0038】
さらに、脱燐剤として、脱燐剤中に含まれる全CaO質量に対してこの質量の20〜50%のCaFを外数として含有する脱燐剤を用いてもよい。フッ素の溶出が問題とならない程度であれば、この方法を選択して脱燐率を高位に維持してもよい。
【0039】
3.脱燐剤の添加方法
特許文献1,2に記載されている発明では、羽口を使用して脱燐剤を吹き込んでいた。しかし、羽口は脱燐剤の吹き込みに伴う損耗の防止や、脱燐剤を吹き込まない間の閉塞防止のために特別な注意を必要とし、かつ、維持コストも嵩む。
【0040】
これに対し、本発明では、上述の脱燐剤を用いることから、羽口からの吹き込みでなくとも脱燐反応を促進することができる。本発明では、近年では多くのRHに装着されている、真空脱ガス槽内に挿入した上吹きランスから溶鋼の浴面へ向けて吹付けること、および、真空脱ガス槽内の溶鋼に合金鉄を投入する投入孔から添加することのうちのいずれか一方または両方の方法によって、溶鋼の還流中に上述の脱燐剤を添加する。
【0041】
4.還流処理
RHでは、処理対象の溶鋼が収容された取鍋が到着した後、真空槽の下部の浸漬管を溶鋼に浸漬し、真空槽内を減圧して溶鋼の還流処理を開始する。
【0042】
本発明は、溶鋼中のフリー酸素と取鍋内溶鋼上のスラグ中酸素とを利用し、さらに、脱燐処理の促進に必要なCaO源と酸素源とを脱燐剤の中に含有させて溶鋼中の脱燐反応サイトに供給し、脱燐反応を促進する。
【0043】
したがって、本発明では、Alを添加したり合金鉄を添加したりといった溶鋼中のフリー酸素濃度を低減させる処理に先立って、本発明の実施を開始する。
【0044】
本発明では、上述の脱燐剤を溶鋼に添加した後に、溶鋼を還流して脱燐反応させる。溶鋼の還流時間は2分間以上であることが、RHの槽内スラグが取鍋上に排出される前に、槽内スラグを脱酸してしまうため復燐が起こることを防ぐために、有効である。
【0045】
このようにしてRHで脱燐反応を行わせた後、例えば、溶鋼にAlを添加してAl含有濃度を0.003%以上とすることによって、脱酸を行う。
【0046】
本発明では、このようにして、CaFを添加せず、粉体インジェクション設備の導入といった大幅な設備改造を必要とせずに、かつ溶鋼バブリング処理といった新たなプロセスを追加する必要がないために処理時間の短縮および熱エネルギーロスの抑制を図りながら、真空脱ガス設備(RH)を用いて、溶鋼に対する追加の脱燐処理を効率よくかつ簡便に行うことができる。
【実施例】
【0047】
例えば、転炉でC=0.05%、P≦0.013%を目標として酸化精錬した後、260トンの溶鋼を出鋼中AlやSiを投入することなく取鍋へ出鋼し、その含有成分を分析して確認した。
【0048】
脱燐剤として、脱燐剤中に含まれる全CaO質量のうち35%以上がカルシウムフェライトとして含まれているものを、RH槽内に挿入した上吹きランスから溶鋼の浴面へ向けて吹付けること、または、RH槽内の溶鋼に合金鉄を投入する投入孔から添加することのいずれかの添加方法により、溶鋼に添加した。また、処理前酸素活量は400ppm以上となるよう上吹きランスからの送酸で調整した。
【0049】
その後、RHの浸漬管をその溶鋼中に浸漬し、還流用Arガスを1.6〜2.5Nm/min流して直ちに溶鋼還流を開始した。この還流用ガス流量は、溶鋼還流量Qとしては130〜149t/minに相当する。なお、溶鋼還流量Qの計算には、「桑原達朗ら:鉄と鋼、73(1987),S176」に示されている公知の式(1)を用いて算出した。
Q=11.4×D4/3×G1/3×(ln(P1/P0))1/3 ・・・(1)
(1)式において、
Q:溶鋼還流量[t/min]
D:浸漬管の内径[m]
G:還流ガス流量[Nl/min]
P0:真空脱ガス設備内の圧力[torr]
P1:ガス吹き込み点の圧力[torr]
である。ここで、D=0.65m,P0=5torr,P1=760torrを用いた。
【0050】
なお、この対象鋼種においてはフリー酸素濃度が400ppm未満であることは基本的には殆ど無いが、万一400ppm未満であった場合には、次に予定する脱燐剤を投入する前に酸素源を溶鋼に添加してフリー酸素濃度を高める操作を加えればよい。
【0051】
一例としては、還流開始から3分間経過後、脱燐剤としてCaO:0〜100%,カルシウムフェライト:0〜100%,CaO換算濃度:30〜100%の組成を有する粉を、RH槽内の上吹きランスから槽内の溶鋼表面へ4〜10分間吹き付けた。
【0052】
この脱燐剤の吹付けを完了した後、本発明例としては溶鋼還流時間2分間以上を満たすように3分間の溶鋼還流処理を継続し、その後にAlを添加してsol.Al濃度を0.020〜0.050%に調整したほか、製品規格として必要な合金成分を添加した。
【0053】
本実施例における脱P結果を表1にまとめて示すとともに、図1〜3にグラフで示す。
【0054】
【表1】
【0055】
図1は、CaO原単位と脱P率の関係を示すグラフであり、図2は、カルシウムフェライトCaO比率とCaO脱燐効率との関係を示すグラフ(ホタル石なし)であり、図3は、カルシウムフェライトCaO比率とCaO脱燐効率との関係を示すグラフ(ホタル石あり)との関係を示すグラフである。
【0056】
ここで、図1〜3における脱P率=([P]i−[P]f)/([P]i)×100であり、換算CaO投入量=(投入した脱燐剤量)×(それぞれのCaO濃度)であり、カルシウムフェライトCaO比率=(カルシウムフェライト投入量×カルシウムフェライトCaO濃度)/(全換算CaO)であり、CaO脱P効率=(脱P率)/(換算CaO投入量)である。なお、[P]i:処理前[P]であり、[P]f:処理後[P]である。また、図1,3では、CaO:CaF=1:0.2〜0.5である。
【0057】
表1における比較例1,2は、脱燐剤としてCaOとCaFの粉体を用いた例であり、CaO脱燐効率およびスラグリサイクル性のいずれもが不芳である。
【0058】
比較例3,4は、脱燐剤としてCaOとカルシウムフェライトの粉体を用いた例であり、スラグリサイクル性は優れるが、脱燐剤中に含まれる全CaO質量のうち14,7%がカルシウムフェライトとして含まれているため、CaOの溶融不良とスラグの酸素不足を生じ、CaO脱燐効率が不芳であった。
【0059】
比較例5,6は、脱燐剤としてCaOとカルシウムフェライトの粉体を用いた例であり、スラグリサイクル性は優れるが、出鋼された溶鋼のフリー酸素濃度が300,350ppmであるため、CaO脱燐効率が不芳であった。
【0060】
これに対し、発明例1〜8は、いずれも脱P効率が良好である。特に発明例5,6では脱P効率が高位であるが、ホタル石を使用しているため、もしリサイクル上問題ない頻度や環境であるならば、これらの条件を選択すればよい。
【0061】
発明例1〜8の結果から、
(I)本発明における脱燐剤は、RH槽内に挿入した上吹きランスから溶鋼の浴面へ向けて吹付けることにより投入してもよいし、RH槽内の溶鋼に合金鉄を投入する投入孔から添加することにより投入してもよいこと、
(II)脱燐剤として、脱燐剤中に含まれる全CaO質量のうち35%以上がカルシウムフェライトとして含まれているものを用いればよいこと、
(III)RHでの脱燐処理の対象である溶鋼のフリー酸素濃度は400ppm以上であればよいこと
が理解される。
【0062】
さらに、図1に示すグラフより、カルシウムフェライトを使用すれば、ホタル石を使用せずとも、CaOの投入量に応じた脱燐率が安定して得られること、および、ホタル石とカルシウムフェライトを併用すれば一層高位な脱P率が得られることがわかる。この関係に基づいて、処理前[P]の値に応じてカルシウムフェライトやホタル石の投入量を決定することにより、目的の[P]まで低下させることが可能となる。
【0063】
また、図2、3のグラフより、安定な脱燐率を得るためのカルシウムフェライトの必要量は、CaO換算で35%以上であることがわかる。
図1
図2
図3