特開2015-232225(P2015-232225A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232225(P2015-232225A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20151201BHJP
   E06B 3/22 20060101ALI20151201BHJP
   E06B 1/32 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   E06B5/16
   E06B3/22
   E06B1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-119289(P2014-119289)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田口 岳
(72)【発明者】
【氏名】桐野 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2E011
2E014
2E039
【Fターム(参考)】
2E011CA00
2E011CB01
2E011CC02
2E014AA03
2E014BA08
2E039BA02
2E039BA08
(57)【要約】
【課題】框体が溶融したとしても障子がレールとが、より確実に係合する建具を提供する。
【解決手段】合成樹脂製の枠体が備えるレールが挿入される溝状のレール挿入部が設けられた合成樹脂製の框材を備えた障子を有する建具であって、前記障子は、前記レール挿入部内の前記レールが挿入される開放端側に、当該レール挿入部に挿入され前記レールに当接する気密材と、溝状の前記レール挿入部において前記気密材より底側に設けられた難燃性または不燃性の框補強部材と、前記框材において前記レール挿入部の外側に設けられて前記框補強部材と連結され前記開放端側に延出されて前記障子の外周縁の一部をなす難燃性または不燃性の縁部材と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の枠体が備えるレールが挿入される溝状のレール挿入部が設けられた合成樹脂製の框材を備えた障子を有する建具であって、
前記障子は、前記レール挿入部内の前記レールが挿入される開放端側に、当該レール挿入部に挿入され前記レールに当接する気密材と、溝状の前記レール挿入部において前記気密材より底側に設けられた難燃性または不燃性の框補強部材と、前記框材において前記レール挿入部の外側に設けられて前記框補強部材と連結され前記開放端側に延出されて前記障子の外周縁の一部をなす難燃性または不燃性の縁部材と、
を有することを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記レールは、見込み方向に並べて複数設けられており、
前記障子は、前記枠体が形成する開口を閉塞する状態にて、見込み方向において互いに隣接する当該障子同士が対向する部位の少なくともいずれか一方に、前記縁部材が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項2に記載の建具であって、
前記レールは、前記障子の下側に位置して前記框材に挿入される下レールであり、
見込み方向において互いに隣接する前記下レールの間には、当該隣接する前記下レールが各々挿入される前記障子が備える前記縁部材の下方に間隔を隔てて設けられ、前記障子が降下した際に前記縁部材が載置される載置部を有し、前記障子の更なる降下を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具であって、
前記下レールは、当該下レールの長手方向に沿う中空部と、前記中空部内に難燃性または不燃性のレール補強部材と、を備えており、
前記障子が降下して前記縁部材が載置された状態で、
前記下レールの前記レール補強部材の上側に位置する縁部は、前記下レールが挿入される前記レール挿入部を備える前記框材に設けられた前記縁部材がなす前記外周縁より高い位置に位置することを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の建具であって、
前記規制部材は、前記載置部の見込み方向における端部に、前記載置部より上方に突出して、前記縁部材が前記載置部に載置されたときに前記縁部材と前記下レールとの間に入り込む突部を備えていることを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の建具であって、
前記規制部材は、前記載置部の上に、加熱されて上方に膨張する加熱発泡材が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の建具であって、
前記枠体は、前記下レールの下方に当該下レールに沿って各々設けられたレール下中空部と、各々の前記レール下中空部内に各々設けられた難燃性または不燃性の2つの下枠補強部材と、を備え、
前記規制部材は、前記2つの下枠補強部材の上方にて架け渡されるとともに接合されていることを特徴とする建具。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記レールは、前記障子の上側に位置して前記框材に挿入される上レールであり、
前記上レールは、当該上レールの長手方向に沿う中空部と、前記中空部内に難燃性または不燃性のレール補強部材と、を備えており、
前記上レールの前記レール補強部材の下側に位置する縁部は、前記上レールが挿入される前記レール挿入部を備える前記框材に設けられた前記縁部材がなす前記外周縁より低い位置に位置することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の枠体が備えるレールが挿入される溝状のレール挿入部が設けられた合成樹脂製の框材を備えた障子を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の枠体が備えるレールが挿入される溝状のレール挿入部が設けられた合成樹脂製の框材を備えた障子を有する建具としては、例えば、上框、下框および縦框を方形状に框組みした框体にガラス体が納められた障子の、上框に枠体に設けられた上レールを収容する溝状の部位が設けられ、下框に枠体に設けられた下レールを収容する溝状の部位が設けられた樹脂サッシが知られている(例えば、特許文献1参照)。この樹脂サッシには、上レールまたは下レールを収容する溝状の部位の開放端側に、収容しているレールに当接するように気密材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−31992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような樹脂サッシは、火炎に晒されると合成樹脂製の框体が溶融してしまうので、溶融しても框体がレールに係合されるように、レールが収容される溝状の部位内に例えば金属製の補強部材が設けられている。しかしながら、レールを収容している溝状の部位の開放端側には気密材が設けられているので、補強部材は障子の外周縁部まで設けることができない。このため、框体が溶融した際に、補強部材とレールとが係合しない虞があるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、框体が溶融したとしても障子がレールとが、より確実に係合する建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、合成樹脂製の枠体が備えるレールが挿入される溝状のレール挿入部が設けられた合成樹脂製の框材を備えた障子を有する建具であって、前記障子は、前記レール挿入部内の前記レールが挿入される開放端側に、当該レール挿入部に挿入され前記レールに当接する気密材と、溝状の前記レール挿入部において前記気密材より底側に設けられた難燃性または不燃性の框補強部材と、前記框材において前記レール挿入部の外側に設けられて前記框補強部材と連結され前記開放端側に延出されて前記障子の外周縁の一部をなす難燃性または不燃性の縁部材と、を有することを特徴とする建具である。
【0007】
このような建具によれば、レールが挿入されているレール挿入部の外側に設けられてレール挿入部内の框補強部材と連結され、開放端側に延出されて障子の外周縁の一部をなす難燃性または不燃性の縁部材が、障子に設けられているので、レール挿入部の開放端側に設けられた気密材より底側に設けられた框補強部材よりも、障子の外周側に難燃性または不燃性の部材を配置することが可能である。このため、框補強部材のみが設けられている場合より、レールと框体に設けられた縁部材とが見込み方向に重なる量が大きくなるので、框体が溶融したとしてもレールと障子とが、より確実に係合する建具を提供することが可能である。
【0008】
かかる建具であって、前記レールは、見込み方向に並べて複数設けられており、前記障子は、前記枠体が形成する開口を閉塞する状態にて、見込み方向において互いに隣接する当該障子同士が対向する部位の少なくともいずれか一方に、前記縁部材が設けられていることが望ましい。
【0009】
このような建具によれば、見込み方向に並べて設けられた複数のレールに対応する複数の障子が、枠体が形成する開口を閉塞する状態にて、互いに隣接する障子の対向する部位に縁部材が設けられているので、開口を閉塞する状態、すなわち障子が閉じられた状態では、縁部材が視認されにくい。このため、意匠性を損なうことなく難燃性または不燃性の縁部材を備えることが可能である。
【0010】
かかる建具であって、前記レールは、前記障子の下側に位置して前記框材に挿入される下レールであり、見込み方向において互いに隣接する前記下レールの間には、当該隣接する前記下レールが各々挿入される前記障子が備える前記縁部材の下方に間隔を隔てて設けられ、前記障子が降下した際に前記縁部材が載置される載置部を有し、前記障子の更なる降下を規制する規制部材が設けられていることが望ましい。
【0011】
このような建具によれば、見込み方向において互いに隣接する下レールの間には、障子が降下した際に縁部材が載置されて当該障子の更なる降下を規制する規制部材が設けられているので、たとえば、下側の框材が溶融したとしても、規制部材に載置された障子は更に降下しない。このため、障子が降下することにより上レールから外れる、あるいは、脱落することを防止することが可能である。また規制部材は、各障子が備える縁部材と上下方向に間隔を隔てて設けられているので、障子がレールに沿って移動する際に接触しない。このため、障子が適切に納められていれば滑らかに移動することが可能である。
【0012】
かかる建具であって、前記下レールは、当該下レールの長手方向に沿う中空部と、前記中空部内に難燃性または不燃性のレール補強部材と、を備えており、前記障子が降下して前記縁部材が載置された状態で、前記下レールの前記レール補強部材の上側に位置する縁部は、前記下レールが挿入される前記レール挿入部を備える前記框材に設けられた前記縁部材がなす前記外周縁より高い位置に位置することが望ましい。
【0013】
このような建具によれば、障子が降下して縁部材が載置された状態では、下レールのレール補強部材の上側に位置する縁部は、下レールが挿入される下側の框材に設けられた縁部材がなす外周縁より高いので、下側の框材が溶融したとしても、降下した障子が下レールと下側の框材との間にて見込み方向に移動することも防止することが可能である。
【0014】
かかる建具であって、前記規制部材は、前記載置部の見込み方向における端部に、前記載置部より上方に突出して、前記縁部材が前記載置部に載置されたときに前記縁部材と前記下レールとの間に入り込む突部を備えていることが望ましい。
【0015】
このような建具によれば、障子が降下した際に縁部材が載置される規制部材の載置部には、見込み方向における端部に、障子が降下したときに縁部材とレールとの間に入り込む突部が設けられているので、障子が降下したときには、突部と障子に設けられた縁部材とが見込み方向に重なる。このため、降下した障子が見込み方向に移動することも防止することが可能である。
かかる建具であって、前記規制部材は、前記載置部の上に、加熱されて上方に膨張する加熱発泡材が設けられていることが望ましい。
【0016】
このような建具によれば、載置部の上に加熱発泡材が設けられているので、火炎により框材が溶融して載置部上に降下した、隣接する障子間にて加熱発泡材が膨張する。このため、隣接する障子間が膨張した加熱発泡材で埋められて隣接する障子間の下方から火炎が貫通することを防止することが可能である。
【0017】
かかる建具であって、前記枠体は、前記下レールの下方に当該下レールに沿って各々設けられたレール下中空部と、各々の前記レール下中空部内に各々設けられた難燃性または不燃性の2つの下枠補強部材と、を備え、前記規制部材は、前記2つの下枠補強部材の上方にて架け渡されるとともに接合されていることが望ましい。
【0018】
このような建具によれば、下レールの下方に沿ってそれぞれ設けられた下枠補強部材の上方に架け渡された規制部材により2つの下枠補強部材が接合されているので、下枠の剛性を高めるとともに、下枠が溶融した際に、2つの下補強部材の間にて下枠が折れる、或いは、分離することを防止することが可能である。
【0019】
かかる建具であって、前記レールは、前記障子の上側に位置して前記框材に挿入される上レールであり、前記上レールは、当該上レールの長手方向に沿う中空部と、前記中空部内に難燃性または不燃性のレール補強部材と、を備えており、前記上レールの前記レール補強部材の下側に位置する縁部は、前記上レールが挿入される前記レール挿入部を備える前記框材に設けられた前記縁部材がなす前記外周縁より低い位置に位置することが望ましい。
【0020】
このような建具によれば、上レールのレール補強部材の下側に位置する縁部は、上レールを収容する上側の框材に設けられた縁部材がなす外周縁より低いので、框材が溶融したとしても、降下した障子が上レールと上側の框材との間にて見込み方向に移動することを防止することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、框体が溶融したとしても障子がレールとが、より確実に係合する建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る建具の縦断面図である。
図2】本実施形態に係る建具の横断面図である。
図3】建具の上部を示す縦断面図である。
図4】建具の下部を示す縦断面図である。
図5】規制部材および縁部材を示す斜視図である。
図6】規制部材と縁部材との係合状態を下方から見た斜視図である。
図7】降下した障子が規制部材上に載置された状態の下部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態の建具は、図1図2に示すように、内障子3および外障子4を備えた引違い窓用の建具1である。
【0024】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の建具1を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。建具1の各部位であっても、また、建具1を構成する各部材については単体の状態であっても、建具1が取り付けられた状態で上下方向、左右方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0025】
本実施形態の建具1は、矩形状に枠組みされた合成樹脂製の枠体10と、枠体10に沿って移動可能に設けられ、枠体10により形成され室内と室外とを連通する開口10aを閉塞可能な内障子3および外障子4と、を備えている。
【0026】
枠体10を構成し、障子3、4の上側に位置する上枠11および障子3、4の下側に位置する下枠12は同一断面形状をなしており、枠体10の状態で互いに対向する上対向面部111および下対向面部121と、上対向面部111および下対向面部121から互いに対向する側に各々突出させて障子3、4が案内されるレール112、122が2本ずつ設けられている。上枠11および下枠12にそれぞれ設けられた2本のレール112、122は、見込み方向に互いに間隔を隔てて設けられている。
【0027】
図3に示すように、上枠11の上レール112は、長手方向に沿うレール中空部112aを有しており、レール中空部112a内には不燃性である鉄製の補強部材(以下、レール補強部材という)13がほぼ全長に渡ってそれぞれ設けられている。
【0028】
上枠11の上対向面部111の、外周側、すなわち、各上レール112が突出している下側と反対側となる上側には、複数の上枠中空部111aが見込み方向に並べて設けられており、それら上枠中空部111aの1つが各上レール112の外周側に位置するように配置されている。各上レール112の外周側に設けられている上枠中空部111a内には、各々鉄製の補強部材(以下、上枠補強部材という)15がほぼ全長に渡ってそれぞれ設けられている。上枠補強部材15には、室外側の部位と上枠中空部111aを形成する室外側の壁部111bとの間に位置するように加熱発泡材としての熱膨張性黒鉛32が設けられている。
【0029】
上枠11の各上レール112内に設けられたレール補強部材13と、上枠11の各上レール112の外周側の上枠中空部111a内に設けられた上枠補強部材15とは、上レール112のレール中空部112aを上下方向に貫通する皿ビス16にて接合されている。
【0030】
図4に示すように、下枠12の下レール122は、長手方向に沿うレール中空部122aを有しており、レール中空部122a内には、上枠11のレール中空部112a内と同様に不燃性である鉄製の補強部材(以下、レール補強部材という)13がほぼ全長に渡ってそれぞれ設けられている。下枠12の下レール122の上端には、障子3、4に設けられた合成樹脂製の戸車29が載置されて案内されつつ転動するレール金具14が嵌合されている。
【0031】
下枠12の下対向面部121の、外周側、すなわち、各下レール122が突出している上側と反対側となる下側には、複数のレール下中空部としての下枠中空部121aが見込み方向に並べて設けられており、それら下枠中空部121aの1つが各下レール122の外周側に位置するように配置されている。下枠12の各下レール122の下に設けられた下枠中空部121aは、各下レール122の見込み方向の幅より広く形成されており、室内側の下レール122の下の下枠中空部121aは下レール122より室外側に至るように形成され、室外側の下レール122の下の下枠中空部121aは下レール122より室内側に至るように形成されている。
【0032】
各下レールの122の外周側に設けられている下枠中空部121a内には、各々鉄製の補強部材(以下、下枠補強部材という)17がほぼ全長に渡り、下枠中空部121aの見込み方向におけるほぼ全幅に渡ってそれぞれ設けられている。下枠補強部材17には、室外側の部位と下枠中空部121aを形成する室外側の壁部121bとの間に位置するように加熱発泡材としての熱膨張性黒鉛32が設けられている。
【0033】
下枠12の各下レール122内に設けられたレール補強部材13と、下枠12の各下レール122の外周側の下枠中空部121a内に設けられた下枠補強部材17とは、下レール122のレール中空部122aを上下方向に貫通する皿ビス16にて接合されている。
枠体10は、躯体2に固定され、下枠12が有する2つの下枠補強部材17間に渡る鉄製のブラケット18に支持されている。
【0034】
内障子3および外障子4は、面材としての複層ガラス5と、複層ガラス5の各端部を各々収容する合成樹脂製の上框21、下框22、戸先框23および召合せ框24が矩形状に框組みされた框体20と、を有している。
【0035】
上框21、下框22、戸先框23および召合せ框24はいずれも、框本体21a、22a、23a、24aと、框本体21a、22a、23a、24aに係合される押縁30と、を有している。上框21、下框22、戸先框23および召合せ框24は、矩形状に框組みされた框体20の状態において内周側に、框本体21a、22a、23a、24aに係合された押縁30とともに複層ガラス5の端部が収容されるガラス収容部21b、22b、23b、24bを形成し、ガラス収容部21b、22b、23b、24bの外周側に各々長手方向に貫通する中空部21c、22c、23c、24cを有している。
【0036】
複層ガラス5は、周縁部が鉄製の保持金具6により室内側および室外側から挟まれた状態でガラス収容部21b、22b、23b、24bに収容されている。
【0037】
内障子3および外障子4を構成する上框21、下框22、戸先框23および召合せ框24のガラス収容部21b、22b、23b、24bおよび中空部21c、22c、23c、24cを形成する部位は、同一の断面形状をなしており、框体20は、上框21、下框22、戸先框23および召合せ框24の長手方向における端部が各々45度の傾斜をなすように切断され、互いに隣接する各框21、22、23、24同士の端部を突き合わせて溶着されて形成されている。
【0038】
内障子3および外障子4の各框21、22、23、24が有する中空部21c、22c、23c、24c内には、各框21、22、23、24の長手方向に沿って不燃性である鉄製の中空部補強部材25が各々設けられている。中空部補強部材25は、断面がコ字状をなし、対向する一対の対向壁部25aと、対向壁部25aの一方の端同士を連結する連結壁部25bと、を有している。複層ガラス5の周縁部に設けられた鉄製の保持金具6と中空部補強部材25はビスまたはリベットにより接合されている
【0039】
内障子3および外障子4の上框21、下框22および戸先框23には、框体20状に框組みされた状態の外周部に、内周側に向かって窪む溝状凹部21d、22d、23dが、上框21、下框22および戸先框23の各々の長手方向に沿って設けられている。各溝状凹部21d、22d、23dは、開放されている、框体20の外周側が開放端側となり、内周側が底側となる。上框21および下框22に設けられた溝状凹部21d、22dは、内障子3および外障子4が枠体10に装着された際に、枠体10のレール112、122が挿入されるレール挿入部に相当する。
【0040】
上框21および下框22の溝状凹部21d、22d内には、溝状凹部21d、22dの対向する壁部21e、22eの開放端側にそれぞれ、互いに対向する側に向かって突出するように、所謂モヘアと呼ばれる気密材31が設けられている。この気密材31は、内障子3および外障子4が、枠体10に装着された際に、溝状凹部21d、22dに挿入されている枠体10の上レール112または下レール122に見込み方向における両側からそれぞれ当接する。ここで、モヘヤは、繊維が起毛状(ブラシ状)に設けられる部材であって、建具等において一般的にエアタイト材、止水材、虫等の浸入を防ぐ防虫材等として用いられる部材を示している。
【0041】
また、上框21および下框22の溝状凹部21d、22d内には、気密材31より底側に不燃性である鉄製の框補強部材26が溝状凹部21d、22dのほぼ全長に渡って設けられている。框補強部材26は、縦断面がコ字状をなし、溝状凹部21d、22dの対向する壁部21e、22eにそれぞれ沿うとともに対面する室内側壁部26aおよび室外側壁部26bと、室内側壁部26aおよび室外側壁部26bの一方の端同士を連結し底部21f、22fに沿うとともに対面する底側連結部26cと、を有している。框補強部材26と中空部補強部材25とは、ビスまたはリベットにより接合されている。
【0042】
本実施形態の建具1の、下枠12の2本の下レール122間には、内障子3および外障子4を閉じた状態、すなわち開口10aを閉塞する状態にて、内障子3と外障子4との召合せ框24同士が見込み方向に対向する召合せ部の下方に、合成樹脂製の風止め部材(不図示)と、内障子3および外障子4の降下を規制するための、不燃性である鉄製の規制部材27とが、左右方向に並べて下対向面部121上に設けられている。風止め部材と規制部材27とは、規制部材27が風止め部材の、外障子4における戸先側に位置して隣接するように配置されている。
【0043】
また、内障子3および外障子4の下端部には、召合せ部において互いに対向する側にそれぞれ、内障子3および外障子4の外周縁、具体的には下端側の縁の一部をなす不燃性である鉄製の縁部材28が設けられている。縁部材28は、下框22の溝状凹部22d内に設けられた框補強部材26とビスにより連結されている。
【0044】
規制部材27は、図4図6に示すように、下枠12の下対向面部121と上下方向に間隔を隔てて対向する水平面を形成し、降下した内障子3および外障子4が載置される載置部27aと、載置部27aの左右方向における両縁から各々垂設された2つの脚部27b、27cと、2つの脚部27b、27cのうちの外障子4の戸先側に位置する脚部27bの下端から水平方向に他方の脚部27cと反対側に延出されてビス止めされる固定部27dと、を有している。載置部27aの室内側には、室内側に延出されるとともに上方に立ち上がる突部27eが設けられ、載置部27aの室外側には、室外側に延出されるとともに上方に立ち上がる突部27eが設けられている。規制部材27には、載置部27aの上面と、外障子4の戸尻側に位置する脚部27cに、隣り合わせて設けられている風止め部材側の面と、に熱膨張性黒鉛32が貼り付けられている。
【0045】
縁部材28は、鉄板を縦断面がL字状をなすように折り曲げて形成されている。縁部材28は、下框22の室内または室外に臨む面に当接されて、溝状凹部22d内に設けられている框補強部材26にビス止めされ、下框22の溝状凹部22dの開放端側に延出されている固定板部28aと、固定板部28aの下縁からほぼ直角に折り曲げられ、下框22が有する溝状凹部22dの室内側および室外側にて下面をなす部位のいずれか一方の一部を覆う周面板部28bと、を有している。すなわち、縁部材28は、内障子3の召合せ部において、下框22の室外側の面に固定板部28aが当接されて固定され、周面板部28bが下框22において溝状凹部22dより室外側の下面を覆って内障子3の外周縁の一部をなし、外障子4の召合せ部において、下框22の室内側の面に固定板部28aが当接されて固定され、周面板部28bが下框22において溝状凹部22dより室内側の下面を覆って外障子4の外周縁の一部をなすようにそれぞれ取り付けられる。
【0046】
規制部材27は、下枠12に取り付けられた状態にて、室内側の突部27eが下枠12の室内側の下レール122に近接して対向し、室外側の突部27eが下枠12の室外側の下レール122に近接して対向するように形成されている。このため、内障子3および外障子4の戸車29が下レール122のレール金具14上に載置されて、内障子3および外障子4が枠体10に装着された状態では、室内側の突部27e上に、内障子3の下框22が有する溝状凹部22d内に設けられて、室内側の下レール122の室外側の面に当接する気密材31が位置しており、室外側の突部27e上に、外障子4の下框22が有する溝状凹部22d内に設けられて、室外側の下レール122の室内側の面に当接する気密材31が位置している。このため、建具1が火炎等に晒され合成樹脂製の戸車29が溶融して、内障子3および外障子4が降下すると、図7に示すように、内障子3および外障子4の下框22に設けられた縁部材28が規制部材27の載置部27a上に当接されて内障子3および外障子4が載置される。このとき、内障子3および外障子4に設けられた縁部材28の周面板部28bは、規制部材27の突部27eの上端より下に位置するので、内障子3および外障子4の見込み方向の移動も規制される。
【0047】
本実施形態の建具1が備える内障子3および外障子4には、図3に示すように、上框21の召合せ部にも縁部材28が設けられている。上框21に設けられた縁部材28は、内障子3の召合せ部において、上框21の室外側の面に固定板部28aが当接されて固定され、周面板部28bが上框21において溝状凹部21dより室外側の上面を覆って内障子3の外周縁の一部をなし、外障子4の召合せ部において、上框21の室内側の面に固定板部28aが当接されて固定され、周面板部28bが上框21において溝状凹部21dより室内側の上面を覆って外障子4の外周縁の一部をなすようにそれぞれ取り付けられる。
【0048】
このとき、内障子3および外障子4の上框21に設けられた縁部材28の周面板部28bが、レール補強部材13の下側の縁部13aより上に位置している。また、建具1が火炎等に晒され合成樹脂製の戸車29が溶融して、内障子3および外障子4が降下した場合には、縁部材28が規制部材27の載置部27a上に当接されて内障子3および外障子4が載置された場合および規制部材27が設けられていない場合であっても、内障子3および外障子4の上框21に設けられた縁部材28の周面板部28bが、レール補強部材13の下側の縁部13aより上に位置して、内障子3および外障子4が、上レール112に係合された状態が維持されるように構成されている。
【0049】
本実施形態の建具1によれば、レール112、122が収容されている溝状凹部21d、22dの外側に設けられて溝状凹部21d、22d内の框補強部材26と連結され、開放端側に延出されて内障子3および外障子4の外周縁の一部をなす鉄製の縁部材28が、内障子3および外障子4に設けられているので、溝状凹部21d、22dの開放端側に設けられた気密材31より底側に設けられた框補強部材26よりも、内障子3および外障子4の外周側に鉄製の部材を配置することが可能である。このため、框補強部材26のみが設けられている場合より、レール112、122の中空部21c、22c内に設けられた鉄製のレール補強部材13と上框21および下框22に設けられた鉄製の縁部材28とが見込み方向に重なる量が大きくなるので、框体20が溶融したとしてもレール112、122と障子3、4とが、より確実に係合する建具1を提供することが可能である。
【0050】
また、見込み方向に並べて設けられた2本のレール112、122に対応する内障子3および外障子4が、枠体10が形成する開口10aを閉塞する状態にて、互いに隣接する内障子3および外障子4の召合せ部に縁部材28が設けられているので、開口10aを閉塞する状態、すなわち内障子3および外障子4が閉じられた状態では、縁部材28が視認されにくい。このため、意匠性を損なうことなく鉄製の縁部材28を備えることが可能である。
【0051】
また、見込み方向において互いに隣接する下レール122の間には、内障子3および外障子4が降下した際に縁部材28が載置されて内障子3および外障子4の更なる降下を規制する規制部材27が設けられているので、たとえば、下框22や戸車29が溶融したとしても、規制部材27に載置された内障子3および外障子4は更には降下しない。このため、内障子3および外障子4が降下することにより上レール112から外れる、あるいは、脱落することを防止することが可能である。
【0052】
また規制部材27は、内障子3および外障子4が備える規制部材27と上下方向に間隔を隔てて設けられているので、内障子3および外障子4がレール112、122に沿って移動する際に接触しない。このため、内障子3および外障子4が適切に納められていれば滑らかに移動することが可能である。
【0053】
また、内障子3および外障子4が降下して縁部材28が載置部27aに載置された状態では、下レール122のレール補強部材13の上側に位置する縁部13aは、下レール122を収容する下框22に設けられた縁部材28がなす外周縁28cより高いので、下框22や戸車29が溶融したとしても、降下した障子が下レール122と下框22との間にて見込み方向に移動することも防止することが可能である。
【0054】
また、内障子3および外障子4が降下して縁部材28が載置された状態では、上レール112のレール補強部材13の下側に位置する縁部13aは、上レール112を収容する上框21に設けられた縁部材28がなす外周縁28cより低いので、框体20が溶融したとしても、降下した障子が上レール112と上框21との間にて見込み方向に移動することも防止することが可能である。
【0055】
また、内障子3および外障子4が降下した際に縁部材28が載置される規制部材27の載置部27aには、見込み方向における端部に、内障子3および外障子4が降下したときに縁部材28とレール122との間に入り込む突部27eが設けられているので、内障子3および外障子4が降下したときには、突部27eと内障子3および外障子4に設けられた縁部材28の周面板部28bとが見込み方向に重なる。このため、降下した内障子3および外障子4が見込み方向に移動することも防止することが可能である。
【0056】
また、載置部27aの上に熱膨張性黒鉛32が設けられているので、火炎により下框22や戸車29が溶融して載置部27a上に降下した、隣接する内障子3と外障子4との間にて熱膨張性黒鉛32が膨張するので、内障子3と外障子4との間が膨張した熱膨張性黒鉛32で埋められて内障子3および外障子4の移動をより確実に規制すること、および、内障子3と外障子4との間の下方から火炎が貫通することを防止することが可能である。
【0057】
また、下レール122の下方に、当該下レール122沿ってそれぞれ設けられた下枠補強部材17の上方に架け渡された規制部材27により2つの下枠補強部材17が接合されているので、下枠12の剛性を高めるとともに、下枠12が溶融した際に、2つの下枠補強部材17の間にて下枠12が折れる、或いは、分離することを防止することが可能である。
【0058】
上記実施形態においては、レール補強部材13、上枠補強部材15、下枠補強部材17、ブラケット18、中空部補強部材25、框補強部材26、規制部材27、縁部材28を不燃性の鉄製としたが、アルミニウム、ステンレス等の不燃性の金属等は、もちろんのこと、難燃性の材料で構成しても構わない。
【0059】
上記実施形態においては、枠体10が上下にそれぞれ2本のレールを有し、内障子3と外障子4とを備えた建具1を例に挙げて説明したが、レールの数または障子の数は、これに限るものではない。3本以上のレール及び3枚以上の障子を備えている場合には、見込み方向に隣接する障子が互いに対向する部位に縁部材が設けられ、その下方に規制部材が設けられる。
【0060】
上記実施形態においては、縁部材28が、内障子3および外障子4の下框22にて見込み方向において互いに対向する部位、すなわち下框の外側に設けられている例について説明したが、溝状凹部22dの外側であれば下框22内に設けられていてもよい。また、上記実施形態の縁部材28は、断面がL字状をなしていたが、障子の外周縁の一部をなすように開放端側に延出されていれば、周面板部28bを有しない平板状であっても構わない。
【0061】
上記実施形態においては、内障子3および外障子4の溝状凹部21d、22d内に、挿入されている下レール122に室内側および室外側からそれぞれ当接される気密材31が設けられている例について説明したが、気密材31は室内側または室外側の一方のみに設けられていてもよい。この場合には、縁部材28は、少なくとも気密材31が設けられている側であって溝状凹部21d、22dの外側に設けられていることが望ましい。
【0062】
上記実施形態においては、縁部材28が、内障子3および外障子4の各々に設けられている例について説明したが、これに限らず、いずれか一方に設けられていてもよい。また、上記実施形態においては、縁部材28が、開口10aを閉塞した状態で内障子3と外障子4とが互いに対向する位置に設けられている例について説明したが、内障子3の室内側および外障子4の室外側に設けられている、或いは、室内側および室外側のいずれにも設けられていても構わない。
【0063】
上記実施形態においては、レールが挿入される上框21および下框22の溝状凹部21d、22dを対向する壁部21e、22eと平坦な底部を有する矩形の溝状をなし、框補強部材26が、縦断面がコ字状をなす例を挙げて説明したが、溝状凹部および框補強部材の形状は、これに限らず例えば断面がU字状などの形状であっても構わない。
【0064】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1 建具、2 躯体、3 内障子、4 外障子、10 枠体、10a 開口、
13 レール補強部材、13a 縁部、17 下枠補強部材、20 框体、
21 上框、 21d 溝状凹部、22 下框、22d 溝状凹部、
26 框補強部材、27 規制部材、27a 載置部、27e 突部、28 縁部材、
28c 外周縁、31 気密材、32 熱膨張性黒鉛、111a 上枠中空部、
112 上レール、112a レール中空部、121a 下枠中空部、
122 下レール、122a レール中空部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7