特開2015-232297(P2015-232297A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232297(P2015-232297A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】流体用ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/22 20060101AFI20151201BHJP
   F04D 7/02 20060101ALI20151201BHJP
   F04D 1/08 20060101ALI20151201BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20151201BHJP
   F04D 29/18 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   F04D29/22 E
   F04D7/02 A
   F04D1/08 Z
   F04D13/06 J
   F04D29/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-119428(P2014-119428)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】河原 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】城地 勇人
(72)【発明者】
【氏名】首藤 智仁
(72)【発明者】
【氏名】吉野 明
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA06
3H130AA23
3H130AA24
3H130AA30
3H130AA32
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB48
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB69
3H130AC01
3H130BA22A
3H130BA22D
3H130BA72A
3H130BA72D
3H130BA74A
3H130BA74D
3H130BA97A
3H130BA97D
3H130CA13
3H130DA02Z
3H130DA04X
3H130DD04Z
3H130EB02D
(57)【要約】      (修正有)
【課題】部材の厚肉化を避けながら高い楊程を得やすい流体用ポンプを提供する。
【解決手段】回転することにより流体の圧力を上昇させるインペラ2A,2Bと、インペラ2A,2Bを回転させるためのモータ1と、モータ1の回転をインペラ2A,2Bに伝達する回転伝達部材3と、インペラ2A,2Bと回転伝達部材3とモータ1がそれぞれ流体とともに存在する空間14と、回転伝達部材3に設けられて、インペラ2A,2Bの導入側である一次側の空間14と、その反対側である二次側の空間14を連通させる連通路11とを備える。一次側から導入された流体が高圧で二次側に流れるとき、その一部が二次側から連通路11を通って一次側に還流され、二次側の圧力上昇が抑制される。二次側の構成部材を厚肉化しなくても、高い楊程を得やすい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することにより流体の圧力を上昇させるインペラと、
上記インペラを回転させるためのモータと、
上記モータの回転を上記インペラに伝達する回転伝達部材と、
上記インペラと上記回転伝達部材と上記モータがそれぞれ上記流体とともに存在する空間と、
上記回転伝達部材に設けられて、上記インペラの導入側である一次側の上記空間と、その反対側である二次側の上記空間を連通させる連通路とを備えた
ことを特徴とする流体用ポンプ。
【請求項2】
上記回転伝達部材が軸シールによって軸支され、上記軸シールは上記連通路の上記二次側における開口と上記インペラの間に配置されている
請求項1記載の流体用ポンプ。
【請求項3】
上記インペラが、上記回転伝達部材に沿って複数配置されている
請求項1または2記載の流体用ポンプ。
【請求項4】
上記流体が液化ガスである
請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体用ポンプ。
【請求項5】
上記液化ガスが可燃性ガスである
請求項4記載の流体用ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を移送するための流体用ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
配管を通して液体を移送する際には、主として遠心式ポンプが使用される。移送する液体のなかには液化ガスもある。上記液化ガスには、沸点が−150℃以下になるものもある。たとえば、液体窒素、液体酸素、液体アルゴン、液化天然ガス(LNG)などである。
【0003】
一般に、低温液化ガス用の遠心式ポンプとしては、例えばつぎのようなものがある。
(1)軸シールポンプ(例えば下記の非特許文献1)
(2)サブマージドポンプ(例えば下記の特許文献1)
(3)マグネットカップリング駆動シールレスポンプ(例えば下記の特許文献2)
【0004】
上記(1)軸シールポンプ、(2)サブマージドポンプ、(3)マグネットカップリング駆動シールレスポンプには、つぎのような問題があった。
(1)軸シールポンプ
軸シールが摩耗により消耗すると、軸シール部から低温液化ガスが漏れやすくなる。
(2)サブマージドポンプ
モータと軸受けが低温液化ガス中にある。このため、特殊な潤滑剤を使用した軸受けが必要となる。また、モータの予冷時間が長く、その間に液化ガスが気化し、ロスが多い。また、運転中もモータと軸受けの発熱によって液化ガスが気化し、ロスが多い。
(3)マグネットカップリング駆動シールレスポンプ
マグネットカップリングと軸受けが低温液化ガス中にある。このため、特殊な潤滑剤を使用した軸受けが必要となる。また、マグネットカップリングの予冷時間が長く、その間に液化ガスが気化し、ロスが多い。また、運転中もマグネットカップリングと軸受けの発熱によって液化ガスが気化し、ロスが多い。
【0005】
下記の特許文献3には、つぎのような(4)遠心式竪型シールレスポンプが開示されている。
モータが上側にインペラが下側になるようモータとインペラが配置され、それらの間で回転駆動を伝達する回転伝達手段で連結され、
上記モータ、回転伝達手段およびインペラが、それぞれ互いに連通して低温液化ガスが導入される密閉空間内に存在し、
上記モータによってインペラが回転駆動されることにより、低温液化ガスに圧力差を与えてポンプ移送する低温液化ガス用ポンプ。
【0006】
上記特許文献3に開示された(4)遠心式竪型シールレスポンプは、上記モータ、回転伝達手段およびインペラをそれぞれ互いに連通して低温液化ガスが導入される密閉空間内に存在させている。これにより、上述した(1)のポンプような低温液化ガスの漏れがない。また、(2)(3)のポンプに比べて予冷時間を短縮する。したがって、液化ガスのロスを少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−288382号公報
【特許文献2】特表2001−514360号公報
【特許文献3】特開2012−92813号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cryostar社インターネットカタログ 型式GBSD(http://www.cryostar.com/pdf/data-sheet/en/gbsd.pdf)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、例えば都市ガスや鉄鋼所などでは、低温液化ガスを長距離にわたって配管を通して移送するニーズが存在する。配管で移送できなければ、ボンベを使用して移送することになり、移送の効率は一気に低下する。配管による移送では、液体を高圧で吐出するポンプが必要になる。
【0010】
しかしながら、上記各先行技術文献に記載のポンプでは、液体を高圧で吐出させる手段についてはなんら提案されていない。特に、例えば部材を厚肉化するなどの大幅な設計変更を避けながら、高い楊程を得る手段についてはなんの言及もない。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、つぎの目的を有する。
例えば部材を厚肉化するなどの大幅な設計変更を避けながら、高い楊程を得やすくなる流体用ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の流体用ポンプは、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
回転することにより流体の圧力を上昇させるインペラと、
上記インペラを回転させるためのモータと、
上記モータの回転を上記インペラに伝達する回転伝達部材と、
上記インペラと上記回転伝達部材と上記モータがそれぞれ上記流体とともに存在する空間と、
上記回転伝達部材に設けられて、上記インペラの導入側である一次側の上記空間と、その反対側である二次側の上記空間を連通させる連通路とを備えた。
【0013】
請求項2記載の流体用ポンプは、請求項1に記載した構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記回転伝達部材が軸シールによって軸支され、上記軸シールは上記連通路の上記二次側における開口と上記インペラの間に配置されている。
【0014】
請求項3記載の流体用ポンプは、請求項1または2に記載した構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記インペラが、上記回転伝達部材に沿って複数配置されている。
【0015】
請求項4記載の流体用ポンプは、請求項1〜3のいずれか一項に記載した構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記流体が液化ガスである。
【0016】
請求項5記載の流体用ポンプは、請求項4に記載した構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記液化ガスが可燃性ガスである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の流体用ポンプは、上記モータの回転が回転伝達部材によってインペラに伝達され、インペラの回転によって流体の圧力が上昇する。上記インペラと上記回転伝達部材と上記モータは、それぞれ上記流体とともに上記空間内に存在している。そして、上記回転伝達部材には、上記インペラの導入側である一次側の上記空間と、その反対側である二次側の上記空間を連通させる連通路が設けられている。
上記連通路は、上記二次側の上記空間の圧力上昇が抑制される。つまり、インペラの一次側から導入された流体は、インペラの回転によって圧力が高くなり、インペラの二次側に流れる。高圧になった流体の大部分は、吐出部から吐出される。このとき、高圧になった流体の一部が、二次側の上記空間から上記連通路を通って一次側に還流される。この連通路を介した流体の還流により、上記二次側の上記空間の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本発明の流体用ポンプは、上記二次側の上記空間を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。また、内圧の異常上昇による不具合や故障を防ぎ、メンテナンス性も向上する。
【0018】
請求項2記載の流体用ポンプは、上記回転伝達部材が軸シールによって軸支されている。そして、上記軸シールは上記連通路の上記二次側における開口と上記インペラの間に配置されている。
このため、上記インペラで圧力が上昇した流体は、上記軸シールに遮られて上記二次側の上記空間に流れ込みにくい。したがって、本発明の流体用ポンプでは、上記二次側の上記空間の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本発明の流体用ポンプは、上記二次側の上記空間を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。
【0019】
請求項3記載の流体用ポンプは、上記インペラが、上記回転伝達部材に沿って複数配置されている。
このため、上記回転伝達部材に沿って複数配置されたインペラにより上記二次側の上記空間の圧力が上昇しやすいところ、本発明の流体用ポンプでは、上記二次側の上記空間の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本発明の流体用ポンプは、上記二次側の上記空間を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。
【0020】
請求項4記載の流体用ポンプは、上記流体が液化ガスである。
上記液化ガスはモータの発熱等により気化しやすい。上記空間内で液化ガスが気化すると、上記空間内の圧力が上昇し、耐圧性の設計にする必要がでてくる。本発明の流体用ポンプでは、上記二次側の上記空間の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本発明の流体用ポンプは、上記二次側の上記空間を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。
【0021】
請求項5記載の流体用ポンプは、上記液化ガスが可燃性ガスである。
上記可燃性ガスがモータの発熱等により上記空間内で気化すると、上記空間内の圧力が上昇し、爆発や燃焼の危険性が高くなる。本発明の流体用ポンプでは、上記二次側の上記空間の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本発明の流体用ポンプは、上記二次側の上記空間を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。それとともに、爆発や燃焼の危険性を低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態の流体用ポンプの全体構成を示す図である。
図2】連通路の各種の態様例を示す図である。
図3】一次側と二次側の圧力変動をプロットした試験例(穴径3.0mm)を示す。
図4】一次側と二次側の圧力変動をプロットした試験例(穴径1.5mm)を示す。
図5】本発明の第2実施形態の流体用ポンプの全体構成を示す図である。
図6】本発明の第3実施形態の流体用ポンプの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の流体用ポンプの第1実施形態を示す概略図である。
【0025】
〔基本構造〕
この装置は、モータ1によってインペラ2A,2Bを回転させ、流体の圧力を上昇させてポンプ移送する流体用ポンプである。回転することにより流体の圧力を上昇させるインペラ2A,2Bと、上記インペラ2A,2Bを回転させるためのモータ1と、上記モータ1の回転を上記インペラ2A,2Bに伝達する回転伝達部材3とを備えている。
【0026】
上記モータ1が耐圧壁4A,4Bに囲まれてモータ部20を構成している。上記インペラ2A,2Bがボリュートハウジング7に収容されてポンプ部19を構成している。この例では、上記モータ1が上側に、上記インペラ2A,2Bが下側になるよう配置され、これらが上記回転伝達部材3で連結されている。
【0027】
上記モータ1の回転を回転伝達部材3でインペラ2A,2Bに伝達する。インペラ2A,2Bが回転することにより、ボリュートハウジング7の下部に形成された導入部6から流体が導入される。導入された流体はインペラ2A,2Bで圧力が上昇し、ボリュートハウジング7の上部側面に形成された吐出部8から吐出される。
【0028】
本発明では、流体の導入部6が設けられた導入側を一次側という。また、上記導入側の反対側を二次側という。本実施形態では、上記導入側すなわち一次側は下側である。また、上記反対側すなわち二次側は上側である。
【0029】
〔流体〕
上記流体としては、主として水、油、液化ガスなどの液体が適用される。以下の説明では、上記流体が低温液化ガスである例を説明する。低温液化ガスは、図示した系内においてポンプ移送される液体の一部が気化し、気体となって存在する場合がある。本発明はこのようなポンプを含む趣旨である。液化ガスとしては、例えば液化窒素、液化酸素、液化炭酸ガス等、各種の低温液化ガスを含む趣旨である。また、上記液化ガスとしては、液化天然ガス、液化石油ガス等、各種の液化した可燃性ガスを含む趣旨である。
【0030】
〔モータ部〕
上記モータ1が耐圧壁4A,4Bに囲まれてモータ部20を構成している。
【0031】
上記モータ1は、例えば、直流モータ、三相誘導モータなど一般的な構造のモータをベースとして製作することができる。その他にPMモータ(永久磁石モータ)を使用することによりエネルギー効率のよいポンプとすることができる。
【0032】
この例では、上記モータ1は、耐圧壁4A,4Bで外側が囲われた空間内に収容されている。耐圧壁4A,4Bの内側の空間が、上記モータ1が収容されるモータ用空間5である。上記耐圧壁4A,4Bおよびモータ1を含んでモータ部20が形成される。
【0033】
〔ポンプ部〕
上記インペラ2A,2Bがボリュートハウジング7に収容されてポンプ部19を構成している。
【0034】
上記インペラ2A,2Bは、ボリュートハウジング7内に配置されて回転駆動される。上記ボリュートハウジング7は、低温液化ガスを導入する導入部6に連通する。インペラ2A,2Bがボリュートハウジング7内で回転することにより、導入部6から導入された低温液化ガスに遠心力によって圧力を上昇させる。圧力の上がった低温液化ガスが、ボリュートハウジング7の外周部に設けられた吐出部8から吐出される。上記ボリュートハウジング7内の空間が、上記インペラ2A,2Bが収容されるインペラ用空間9である。
【0035】
上記インペラ2A,2Bは、上記回転伝達部材3に沿って複数配置されている。この例では2つである。導入部6に近い導入側に1段目のインペラ2Aが配置され、導入部6の反対側に2段目のインペラ2Bが配置されている。
【0036】
図において符号10は、低温液化ガスの流動を助けるインデューサ10である。上記インデューサ10は、上記回転伝達部材3における導入部6側の端部に取り付けられている。上記インペラ2A,2B、ボリュートハウジング7、インデューサ10を含んでポンプ部19が形成されている。
〔回転伝達部材〕
【0037】
上記モータ1とインペラ2A,2Bは、それらの間で回転駆動を伝達する回転伝達部材3によって連結されている。
【0038】
上記回転伝達部材3は、この例では、モータ1の回転軸とインペラ2A,2Bの回転軸の双方に共通した1本のシャフトが使用されている。上記回転伝達部材3は、モータ1の回転軸とインペラ2A,2Bの回転軸の双方に同軸である。上記回転伝達部材3は、モータ1とインペラ2A,2Bに共通した一体のものに限らず、モータ1用シャフトとインペラ2A,2B用シャフトを別体とし、両者をカップリング等で連結したものを用いることもできる。つまり、上記回転伝達部材3は、モータ1の回転軸とインペラ2A,2Bの回転軸の双方に対して同軸状の1または2以上のシャフトを含んで構成することができる。
【0039】
〔空間〕
上記インペラ2A,2Bと上記回転伝達部材3と上記モータ1は、それぞれ上記低温液化ガスとともに空間14内に存在する。上記空間14は、モータ用空間5、インペラ用空間9およびシャフト用空間13とが互いに連通して形成されている。つまり、モータ用空間5、インペラ用空間9およびシャフト用空間13は、それぞれ上記空間14の一部をなしている。すなわち、ボリュートハウジング7、シャフトカバー12およびモータ1の耐圧壁4A,4Bにより、互いに連通した1つの耐圧性の空間14を作っている。
【0040】
上記空間14のうち、ポンプ部19よりも上側の二次側に存在するシャフト用空間13とモータ用空間5は、低温液化ガスの出口がない耐圧性の密閉空間である。具体的には、モータ部20の耐圧壁4A,4B、ボリュートハウジング7、シャフトカバー12のそれぞれの接合部には、ガスケット、O−リングなどのシール材を使用し、フランジなどをボルトで締め込むか、またはねじ構造として締め込むことにより密閉構造としている。
【0041】
上記モータ1とインペラ2A,2Bの間は、ある程度の間隙が確保され、上記回転伝達部材3の上記間隙を通過する部分は、シャフトカバー12で覆われている。上記シャフトカバー12の内側が回転伝達部材3の一部が収容されるシャフト用空間13である。
【0042】
そして、上記モータ1とインペラ2A,2Bの間は、熱調整部として機能する。この熱調整部は、低温液化ガスの液相内にインペラ2A,2Bを存在させるよう保つとともに、低温液化ガスの気相内にモータ1を存在させるよう保つ。上記熱調整部として機能するのは、上記シャフト用空間13と、その内部に存在する回転伝達部材3の一部と、シャフトカバー12とを含んで構成される部分である。
【0043】
上記熱調整部の存在により、下部のポンプ部19を低温部とし、中間の熱調整部を低温ないし常温とし、上部のモータ部20を常温とする。つまり、冷気は下がり暖気は上がる性質により、温度範囲が分けられる。したがって、液相で満たされる部分は、一次側の導入部6からポンプ部19までである。二次側のモータ用空間5は気相で満たされている。
【0044】
上記回転伝達部材3は、上記空間14内の気相に存在させた軸受け16で軸支される。このように、本実施形態は、ポンプシャフトとモータシャフトを1本の回転伝達部材3で共用している。また、上記軸受け16は、モータ1の軸受けをポンプ軸受けと共用している。軸受け16が気相に存在することから、固体潤滑剤によらず、グリス等の潤滑剤を使用することができる。
【0045】
〔ポンプ機能〕
このような構造により、低温液化ガスは、上記インデューサ10によって導入部6からポンプ部19の内部に引き込まれる。引きこまれた低温液化ガスは、インペラ2A,2Bによって圧力が上昇して動力が与えられ、吐出部8から吐出される。
【0046】
このとき、ポンプ部19の内部に入った低温液化ガスは、基本的には吐出部8しか出口がなく、その大部分は吐出部8から吐出される。低温液化ガスの一部は、密閉空間であるシャフト用空間13とモータ用空間5の方に侵入しようとするが、モータ用空間5が行き止まりとなっているため、モータ1の方までは入って行かない。ところが、インペラ2A,2Bで高圧となった低温液化ガスの一部がシャフト用空間13とモータ用空間5の方に侵入しようとすることにより、シャフト用空間13とモータ用空間5内の圧力が上昇しようとする。
【0047】
特に、高楊程化により高圧で吐出するポンプにおいて、上述したシャフト用空間13とモータ用空間5内の圧力上昇は顕著になる。
【0048】
〔高楊程化〕
一般に、遠心式のポンプにおいて高圧の吐出を行なう場合、つぎの(a)(b)(c)に示す手法を検討することができる。
(a)インペラ径の増大
インペラ径を大きくすることにより、遠心力を上げ、ポンプの揚程を高くすることができる。構造が複雑化しない点がメリットである。
(b)回転数の増加
インペラの回転数を増加させることにより、遠心力を上げ、ポンプの揚程を高くすることができる。
(c)インペラの多段化
インペラの多段化を行うことにより、ポンプの揚程を高くすることができる。小さなインペラにより低回転で高圧化を実現できるメリットがある。また、構造的には一段ポンプを直列に接続した状態であるため、段数を重ねれば任意の揚程まで上げることができる。さらに、一段あたりのインペラを流量に合わせて自由に設計できる。
【0049】
図1では、上述したポンプを高楊程化する3通りの手法のうち(c)インペラの多段化を採用した例を示している。
【0050】
ところが、インペラの二次側に密閉空間が存在するポンプにおいて、楊程を上げようとすると、高圧になった流体が密閉空間に流れ込んで、密閉空間が異常な高圧になってしまう。
【0051】
図1のように、例えばインペラ2A,2Bを2段にすると、一次側のインデューサ部10から引き込まれた液化ガスは、1段目のインペラ2Aによって動力が与えられ、2段目のインペラ2Bでさらに動力が与えられる。2段のインペラ2A,2Bで高圧となった流体の大部分は、吐出部8から吐出される。2段のインペラ2A,2Bで高圧となった流体の一部は、吐出部8より上側つまり二次側にあるシャフト用空間13およびモータ用空間5に流入しようとする。その結果、二次側の密閉空間であるシャフト用空間13およびモータ用空間5が高圧になる。
【0052】
このように二次側の密閉空間であるシャフト用空間13およびモータ用空間5が高圧になる構造では、その対策として、シャフト用空間13およびモータ用空間5を構成する部品の耐圧強度を上げなければならない。つまり、シャフトカバー12や耐圧壁4A,4Bを厚肉化する等の措置である。このように部材を厚肉化すると、コストアップが避けられず、モータ部20自体の重量が増加する。
【0053】
また、上述した多段インペラの構造において二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5が高圧になるのを防止する策として、つぎの方法が考えられる。例えば、インペラに穴をあければ、インペラの導入側と二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力差を小さくすることができる。ところが、2段インペラ2A,2Bのポンプで2段目のインペラ2Bに穴をあけた構造では、2段目のインペラ2Bの導入側の圧力が上部のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力となる。これは1段目のインペラ2Aの吐出側の圧力であり、単段型のポンプと比べ、依然として二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力が高圧となる。一方、1段目のインペラ2Aに穴をあけた場合、設計によって、二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力を下げられなかったり、充分な楊程が得られなかったりする。結局、インペラ2A,2Bに穴をあけるという方法では、問題を解決できない。
【0054】
〔二次側の高圧化防止構造〕
そこで、本実施形態では、上記回転伝達部材3に、上記インペラ2A,2Bの導入側である一次側の上記空間14と、その反対側である二次側の上記空間14を連通させる連通路11を設けた。
【0055】
また、上記回転伝達部材3は、軸シール15によって軸支されている。上記軸シール15は、上記連通路11の上記二次側における二次側開口17Bと上記インペラ2A,2Bの間に配置されている。
【0056】
具体的には、上記連通路11は、一次側のインペラ用空間9と、二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5を連通させている。この例では、上記連通路11は、縦流路11Aと横流路11Bとが互いに連通して形成されている。上記縦流路11Aは、シャフト状の回転伝達部材3の軸心付近に長手方向に沿って形成されている。上記縦流路11Aは、回転伝達部材3の一次側の端部に一次側開口17Aを形成する。上記横流路11Bは、回転伝達部材3の径方向に形成されている。上記横流路11Bは、回転伝達部材3の外周面に2つの二次側開口17Bを形成する。
【0057】
このような構造により、インペラ2A,2Bの一次側から導入された低温液化ガスは、インペラ2A,2Bの回転によって圧力が高くなり、インペラ2A,2Bの二次側に流れる。高圧になった低温液化ガスの大部分は吐出部8から吐出される。このとき、高圧になった低温液化ガスの一部が、二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5から上記連通路11を通って一次側に還流される。この連通路11を介した低温液化ガスの還流により、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力上昇が抑制される。
【0058】
上記軸シール15は、回転部材と固定部材のあいだをシールするものである。上記軸シール15は、インペラ用空間9とシャフト用空間13の間に設けられ、上記回転伝達部材3の外周部をシールしている。つまり、上記回転伝達部材3の外周部において、インペラ用空間9とシャフト用空間13の間の低温液化ガスの流通を防止している。この例では、上記軸シール15は、シャフトカバー12におけるシャフト用空間13の一次側の開口部に設けられている。
【0059】
そして、上記連通路11の横流路11Bは、上記軸シール15よりも二次側に二次側開口部17Bを形成するよう設けられている。したがって、上記連通路11の一次側開口17Aは上記軸シール15よりも一次側に形成され、上記連通路11の二次側開口17Bは上記軸シール15よりも二次側に形成されている。
【0060】
このような構造により、上記インペラ2A,2Bで圧力が上昇した低温液化ガスは、上記軸シール15に遮られて上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5に流れ込みにくい。したがって、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力上昇が抑制される。
【0061】
つまり、ポンプの運転中に発生する回転部材と固定部材のあいだの漏れを、上記軸シール15によってできるだけ少なくしている。二次側の密閉空間であるシャフト用空間13およびモータ用空間5は、軸シール15のわずかな隙間を洩れて侵入する低温液化ガスによって高圧となる。軸シール15を洩れて侵入した低温液化ガスを連通路11を通して一時側に還流させる。これにより、二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5内の圧力を、ポンプ内でもっとも圧力の低い一次側の導入圧力と均圧化することができる。
【0062】
〔連通路の態様例〕
図2は、上記連通路11の各種の態様例を示す。
(A)は、図1と同様の態様である。(D)は、その横流路11Bを軸方向に見た図である。上記縦流路11Aが、シャフト状の回転伝達部材3の軸心付近に長手方向に沿って形成されている。上記縦流路11Aは、回転伝達部材3の一次側の端部に一次側開口17Aを形成している。上記横流路11Bは、回転伝達部材3の径方向に形成されている。上記横流路11Bは、回転伝達部材3の外周面に2つの二次側開口17Bを形成する。
【0063】
(B)は、上記横流路11Bが、軸方向において段違い状に形成された例である。
(C)は、上記縦流路11Aと横流路11Bが、Y字状において形成された例である。
【0064】
(D)は、上記横流路11Bが、回転伝達部材3の径方向に貫通するように形成されている。回転伝達部材3の外周面に2つの二次側開口17Bが形成されている。
(E)は、上記横流路11Bが、回転伝達部材3の径方向に3本放射状に形成されている。回転伝達部材3の外周面に3つの二次側開口17Bが形成されている。
(F)は、上記横流路11Bが、回転伝達部材3の径方向に4本放射状に形成されている。回転伝達部材3の外周面に4つの二次側開口17Bが形成されている。
【0065】
これらの例では、縦流路11Aの穴径が大きく、横流路11Bの穴径が縦流路11Aより小さくなるように設定されている。また、1つの縦流路11Aに対して複数の横流路11Bが設けられている。
【0066】
〔連通路の穴径〕
上記連通路11の穴径は、一次側のインペラ用空間9から二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5へ、上記軸シール15を洩れて侵入する低温液化ガスの量に応じて決定する。
軸シール15を洩れて侵入する低温液化ガスを二次側の空間にとどめることなく、一次側へと逃がす。二次側の空間内の圧力を一次側の空間内の圧力に戻される。上記連通路11の穴径を決定することにより、モータ部20内の圧力をポンプ部19の導入圧力とほぼ同等の値とする。モータ部20の二次側の圧力と、ポンプ部19の一次側の導入圧力との差は、低温液化ガスやそれが気化したガスが連通路11を通過する摩擦抵抗と同等である。
【0067】
上述したように、上述した例では、縦流路11Aの穴径を横流路11Bの穴径よりも大きくしている。また、1つの縦流路11Aに対して複数の横流路11Bを設けている。
低温液化ガスやそれが気化したガスが連通路11を通過する際に、氷や不純物などによって詰まりが生じるときでも、複数設けた穴径の小さな横流路11Bで詰まりを発生させる。穴径の大きな縦流路11Aを詰まらせず、詰まりの生じていない他の横流路11Bで流通を確保することができる。これにより、たちまち二次側の圧力が上昇することを防止する。
【0068】
また、液中に含まれる不純物や氷等は、ポンプの吸入配管部に横流路11Bより十分小さな網目をもったストレーナを設けることにより、ポンプ内部への侵入を防ぐことができる。万一、何らかの原因で連通路11が詰まったときも、二次側の圧力変動を記録することによって不具合を検知し、対処することができる。
【0069】
〔試験例〕
図2(A)(D)に示すT字状の連通路11を適用した流体用ポンプにより、一次側の圧力と二次側の圧力の差を測定した。
【0070】
縦流路11Aの穴径の一部をφ1.5mmにしたものと、φ3.0mmにしたものと2種類を準備した。これらの穴径は、低温液化ガスが液体窒素で、軸シール15からの漏れ量が5L/minであるとしたときに、差圧が0.01MPa以下になる条件から導出した。
【0071】
図1に示すポンプを運転し、運転開始から停止までの二次側の圧力と一次側の導入圧力をそれぞれ測定した。測定の条件はつぎのとおりである。
流体 :液体窒素(−196℃)
軸シール:ガスシール(イーグルブルグマンジャパン株式会社)
圧力計 :圧力トランスミッタ GC61(長野計器株式会社)
記録 :ポータブルマルチロガー ZR−RX40(オムロン株式会社)
【0072】
図3は縦流路11Aの穴径の一部がφ3.0mmの測定結果である。
図4は縦流路11Aの穴径の一部がφ1.5mmの測定結果である。
【0073】
縦流路11Aの穴径の一部がφ3.0(mm)では、二次側圧力であるモータ内圧と一次側の導入圧力が0.06MPa近傍でほぼ同等となった。
縦流路11Aの穴径の一部がφ1.5(mm)では、一次側の導入圧力がほぼ一定で推移しているのに対し、二次側圧力であるモータ内圧が高下している。一次側の導入圧力は0.06MPa近傍でほぼ一定である。二次側圧力であるモータ内圧は、運転開始時に0.06MPa近傍であり、その後、10分後に0.16MPaまで上昇した。また、50分経過後も、モータ内圧は導入圧力より少し高い値で推移している。これは、運転開始から20分程度のあいだ、軸シールのシール性が安定せず、低温液化ガスの漏れ量が変化したものである。つまり、運転時の漏れ量の変化によって、二次側圧力が増加してしまうことが明らかとなった。
【0074】
以上の結果から、連通路11の穴径として適正な値を選択することにより、二次側の圧力上昇を防止し、一次側と二次側の圧力差を均一化できることがわかる。したがって、インペラの二次側に密閉空間を形成するポンプにおいて、密閉空間へ高い圧力がかかることなく運転が可能となる。
【0075】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態を示す。
この例は、モータ部20として、耐圧壁4A,4Bを有しないものとした例である。すなわち、モータ1は、耐圧構造でない外壁21A,21Bに覆われてモータ部20が構成され、モータ部20の外側を、別の耐圧壁22で覆ったものである。
それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この例でも、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0076】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態を示す。
この例は、連通路11が、シャフト状の回転伝達部材3を貫通する貫通流路11Cと、モータ部2を構成する耐圧壁4Bに形成された壁流路11Dとから構成されている。
上記貫通流路11Cは、回転伝達部材3の軸心付近に長手方向に沿って貫通している。上記壁流路11Dは、上記回転伝達部材3の上端に対応して存在する上側の耐圧壁4Bにおいて、上記貫通流路11Cとモータ用空間5を連通させている。
それ以外は、上記第1および第2実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この例でも、上記第1および第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0077】
〔各実施形態の効果〕
上記各実施形態は、つぎの効果を奏する。
【0078】
上記連通路11は、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力上昇が抑制される。つまり、インペラ2A,2Bの一次側から導入された低温液化ガスは、インペラ2A,2Bの回転によって圧力が高くなり、インペラ2A,2Bの二次側に流れる。高圧になった低温液化ガスの大部分は、吐出部8から吐出される。このとき、高圧になった低温液化ガスの一部が、二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5から上記連通路11を通って一次側に還流される。この連通路11を介した低温液化ガスの還流により、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本実施形態の流体用ポンプは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。また、内圧の異常上昇による不具合や故障を防ぎ、メンテナンス性も向上する。
【0079】
上記インペラ2A,2Bで圧力が上昇した低温液化ガスは、上記軸シール15に遮られて上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5に流れ込みにくい。したがって、本実施形態の流体用ポンプでは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本実施形態の流体用ポンプは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。
【0080】
上記回転伝達部材3に沿って複数配置されたインペラ2A,2Bにより上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力が上昇しやすいところ、本実施形態の流体用ポンプでは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本実施形態の流体用ポンプは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。
【0081】
上記液化ガスはモータの発熱等により気化しやすい。上記空間14内で液化ガスが気化すると、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5内の圧力が上昇し、耐圧性の設計にする必要がでてくる。本実施形態の流体用ポンプでは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本実施形態の流体用ポンプは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。
【0082】
上記可燃性ガスがモータの発熱等により上記空間14内で気化すると、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5内の圧力が上昇し、爆発や燃焼の危険性が高くなる。本実施形態の流体用ポンプでは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5の圧力上昇が抑制される。このような作用により、本実施形態の流体用ポンプは、上記二次側のシャフト用空間13およびモータ用空間5を構成する部材を厚肉化するなどの設計変更を行わなくても、高い楊程を得やすくなる。それとともに、爆発や燃焼の危険性を低下させる。
【0083】
〔適用範囲〕
上記各実施形態は、インペラの二次側に密閉空間が存在するポンプにおいて、多段型で楊程を上げる場合を中心にして説明した。複数段のインペラで高圧になった流体が二次側の密閉空間に流れ込んで、密閉空間が異常な高圧になるからである。
【0084】
また、遠心式ポンプで高楊程を得る場合、3つの高楊程の手法のうち、(c)インペラの多段化が採用されるケースが多いという事情も存在するからである。なぜなら、(a)インペラ径の増大、(b)回転数の増加という手法は、対応できるケースが限られていることによる。
つまり、(a)インペラ径の増大は、ポンプのハウジングが大きくなるデメリットがある。また、目指す揚程と流量によっては、インペラの設計に無理が生じることがある。つまり、条件しだいでインペラの比速度が低くなり、キャビテーションが発生してしまう等の問題が生じることがある。また、(b)回転数の増加は、回転数を増加させるためには、インバータモータや増速機を使用しなければならない。つまり、回転装置のアッセンブルについて制限が生じる。また、回転速度が増加するとシャフト強度に問題が起こりやすく、構造設計の変更も必要となる。また、回転速度を高くするほどキャビテーションが生じやすく、構造的な危険もあるため、回転数を増加させるにも限度がある。
このように、これらは、インペラの設計に制限があり、上述したようにキャビテーションを起こしやすいからである。
【0085】
しかしながら、本発明は、(c)インペラの多段化だけでなく、(a)インペラ径の増大、(b)回転数の増加によって高楊程を得るポンプに対する適用を妨げない趣旨である。
【0086】
〔その他の変形例〕
上記各実施形態では、回転伝達手段としては、1本もしくは2本のシャフトを用いる例を説明したが、これに限定するものではなく、モータ1の回転をインペラ2A,2Bに伝達しうるものであれば、他の手段を用いることもできる。例えば、モータ1用シャフトと、インペラ2A,2B用シャフトとの間をギヤ、チェーン、ベルト等を用いて連結して回転を伝達するようにしてもよい。
【0087】
また、以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【符号の説明】
【0088】
1:モータ
2A:インペラ
2B:インペラ
3:回転伝達部材
4A:耐圧壁
4B:耐圧壁
5:モータ用空間
6:導入部
7:ボリュートハウジング
8:吐出部
9:インペラ用空間
10:インデューサ
11:連通路
11A:縦流路
11B:横流路
11C:貫通流路
11D:壁流路
12:シャフトカバー
13:シャフト用空間
14:空間
15:軸シール
16:軸受け
17A:一次側開口
17B:二次側開口
19:ポンプ部
20:モータ部
21A:外壁
21B:外壁
22:耐圧壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6