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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232334(P2015-232334A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   F02M51/06 A
   F02M51/06 D
   F02M51/06 S
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-189414(P2015-189414)
(22)【出願日】2015年9月28日
(62)【分割の表示】特願2011-244280(P2011-244280)の分割
【原出願日】2011年11月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 順
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄次
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066AB02
3G066BA46
3G066BA51
3G066CC05U
3G066CC51
3G066CC56
3G066CD14
3G066CE22
3G066CE23
3G066CE24
3G066DA01
(57)【要約】
【課題】部材の経年変化による燃料噴射量の性能変化を抑制可能な燃料噴射弁を提供する。
【解決手段】ニードル40は、ハウジング20内に往復移動可能に設けられ、径外方向へ延びるよう形成される大径部43を有している。可動コア50は、外径が大径部43の外径より大きく形成され、大径部43のシール部側に設けられている。筒状の固定コア60は、可動コア50の開弁方向側に設けられている。コイル70は、通電により可動コア50をニードル40とともに開弁方向に吸引する。スプリング81はニードル40を閉弁方向に付勢する。ブッシュ90は、固定コア60と別体かつ筒状に形成され、固定コア60の内側に設けられている。ブッシュ90は、筒部91及び筒部91の内壁から径内方向へ突出するよう形成される内側突出部92を有し、内側突出部92の内壁が大径部43の外壁と摺接することでニードル40を往復移動可能に支持する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端に形成され燃料が噴射される噴孔、当該噴孔の周囲に形成される弁座、および、前記噴孔への燃料が流通する燃料通路を有する筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に往復移動可能に設けられ、前記弁座側の端部に形成されるシール部、および、径外方向へ延びるよう形成される大径部を有し、前記シール部が前記弁座から離座または前記弁座に着座することで前記噴孔を開閉する棒状のニードルと、
外径が前記大径部の外径より大きく形成され、前記大径部の前記シール部側に、前記ニードルと一体または別体に設けられる可動コアと、
前記可動コアの開弁方向側に設けられる筒状の固定コアと、
通電により前記可動コアと前記固定コアとの間に磁気吸引力を発生させることで、前記可動コアを前記ニードルとともに開弁方向に吸引するコイルと、
前記ニードルを閉弁方向に付勢する第1付勢部材と、
前記固定コアと別体に形成され、前記固定コアの内側に設けられ、筒部及び当該筒部の内壁から径内方向へ突出するよう形成される内側突出部を有し、当該内側突出部の内壁が前記大径部の外壁と摺接することで前記ニードルを往復移動可能に支持する筒状のブッシュと、
を備えることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
前記シール部が前記弁座から離座してから前記可動コアが前記固定コアまたは前記ブッシュに当接するまでの間、前記内側突出部と前記大径部との軸方向の摺接長は一定であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記シール部が前記弁座に着座しているとき、前記内側突出部の前記噴孔とは反対側の端面と、前記大径部の前記噴孔とは反対側の端面とは、前記ニードルの軸方向において略同じ位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記内側突出部の軸方向の長さは、前記大径部の軸方向の長さより短いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記ブッシュは、前記固定コアよりも硬度が高い材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項6】
前記ブッシュは、前記ニードルと硬度が同等の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項7】
前記ブッシュは、前記可動コア側の端面が、前記固定コアの前記可動コア側の端面よりも前記可動コア側に位置するよう設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項8】
前記ブッシュは、前記固定コアよりも飽和磁束密度が低い材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項9】
前記ブッシュは、前記可動コア側の端面に、前記可動コアとは反対側へ凹むよう形成される第1溝を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項10】
前記可動コアは、前記ブッシュ側の端面に、前記ブッシュとは反対側へ凹むよう形成される第2溝を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項11】
前記可動コアは、外径が前記ハウジングの内径より小さく形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項12】
前記可動コアを前記ニードルとともに開弁方向に付勢する第2付勢部材をさらに備え、
前記可動コアは、前記ニードルとは別体、かつ、前記ニードルに対し相対移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を噴射供給する燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内で往復移動するニードルの噴孔とは反対側の端部を固定コアの内壁で支持する構成の燃料噴射弁が知られている。例えば特許文献1および2に記載された燃料噴射弁では、ニードルが往復移動するとき、ニードルの噴孔とは反対側の端部の外壁と固定コアの内壁とは摺接する。ニードルは、弁座との当接(着座)を繰り返す部材のため、耐摩耗性および耐衝撃性等の観点から、比較的硬度の高い材料により形成されるのが一般的である。一方、固定コアは、磁性材料により形成されるため、比較的硬度が低い。よって、燃料噴射弁の長期に亘る使用によりニードルと固定コアとが摺接を繰り返すと、固定コアおよびニードルの摺接箇所のうち特に固定コア側が摩耗するおそれがある。固定コアが摩耗すると、固定コアの磁気特性の変化や、ニードル開弁時の姿勢変化、摩耗による摺動抵抗の変化により、燃料圧力および噴射量など燃料噴射弁の性能が使用初期と比べ変化するおそれがある。
【0003】
また、特許文献1および2の燃料噴射弁では、図の記載から、可動コアは、外壁がハウジングの内壁と摺接可能に設けられていると考えられる。そのため、長期使用により可動コアとハウジングとが摺接を繰り返すと、摺接箇所が摩耗するおそれがある。当該摩耗により、可動コアの磁気特性が変化するおそれがある。
【0004】
このように、長期使用により固定コアまたは可動コアの磁気特性が変化すると、燃料圧力および噴射量など燃料噴射弁の性能が使用初期と比べ変化または低下するおそれがある。また、燃料噴射弁における部材同士の摺接箇所が多い構成では、摩耗粉の発生が増大するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−518858号公報
【特許文献2】特表2005−504218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部材の経年変化による燃料噴射量の性能変化を抑制可能な燃料噴射弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の燃料噴射弁の発明は、ハウジングとニードルと可動コアと固定コアとコイルと第1付勢部材とブッシュとを備えている。ハウジングは、筒状に形成され、軸方向の一端に形成され燃料が噴射される噴孔、当該噴孔の周囲に形成される弁座、および、噴孔への燃料が流通する燃料通路を有している。ニードルは、棒状に形成され、ハウジング内に往復移動可能に設けられている。ニードルは、弁座側の端部に形成されるシール部、および、径外方向へ延びるよう形成される大径部を有している。ニードルは、シール部が弁座から離座または弁座に着座することで噴孔を開閉する。可動コアは、外径がニードルの大径部の外径より大きく形成されている。可動コアは、大径部のシール部側に、ニードルと一体または別体に設けられている。固定コアは、筒状に形成され、可動コアの開弁方向側に設けられている。コイルは、通電により可動コアと固定コアとの間に磁気吸引力を発生させることで、可動コアをニードルとともに開弁方向に吸引する。第1付勢部材は、ニードルを閉弁方向に付勢する。ブッシュは、固定コアと別体かつ筒状に形成され、固定コアの内側に設けられている。ブッシュは、筒部及び当該筒部の内壁から径内方向へ突出するよう形成される内側突出部を有し、当該内側突出部の内壁がニードルの大径部の外壁と摺接することでニードルを往復移動可能に支持する。
【0008】
上記構成により、本発明では、固定コアは、ニードルがハウジング内で往復移動可能なよう、ブッシュを経由してニードルの大径部側の端部を支持する。そのため、ニードルがハウジング内で往復移動するとき、ニードルと固定コアとは摺接しない。よって、ニードルの往復移動に伴って固定コアが摩耗することはない。したがって、燃料噴射弁の長期使用による固定コアの経年変化を抑制することができる。よって、燃料圧力および噴射量など燃料噴射弁の性能が使用初期と比べ変化または低下するのを抑制することができる。
また、本発明では、ブッシュは、固定コアとは別体のため、固定コアと異なる材料で形成することが可能である。例えばブッシュを固定コアよりも硬度が高い材料で形成すれば、ニードルの大径部との摺接に伴うブッシュの摩耗を抑制することができる。
また、例えばブッシュをニードルと硬度が同等の材料で形成すれば、ブッシュとニードルの大径部との摺接に伴うブッシュおよびニードル両方の摩耗を抑制することができる。
請求項2に記載の発明では、シール部が弁座から離座してから可動コアが固定コアまたはブッシュに当接するまでの間、内側突出部と大径部との軸方向の摺接長は一定である。
請求項3に記載の発明では、シール部が弁座に着座しているとき、内側突出部の噴孔とは反対側の端面と、大径部の噴孔とは反対側の端面とは、ニードルの軸方向において略同じ位置にある。
請求項4に記載の発明では、内側突出部の軸方向の長さは、大径部の軸方向の長さより短い。
【0009】
請求項5に記載の発明では、ブッシュは、固定コアよりも硬度が高い材料で形成されている。よって、ニードルの大径部との摺接に伴うブッシュの摩耗を抑制することができる。
請求項6に記載の発明では、ブッシュは、ニードルと硬度が同等の材料で形成されている。よって、ブッシュとニードルの大径部との摺接に伴うブッシュおよびニードル両方の摩耗を抑制することができる。
【0010】
請求項7に記載の発明では、ブッシュは、可動コア側の端面が、固定コアの可動コア側の端面よりも可動コア側に位置するよう設けられている。そのため、可動コアがコイルにより開弁方向に吸引されたとき、可動コアのブッシュ側の端面は、ブッシュに衝突するものの、固定コアに衝突することはない。よって、可動コアとの衝突に伴う固定コアの摩耗および損傷等を防止することができる。これにより、固定コアの経年変化による燃料噴射量の性能変化を抑制することができる。また、この構成では、固定コアの可動コア側の端面に、耐摩耗性および耐衝撃性を向上させるためのめっき等の特殊処理を施す必要がないため、製造コストを低減することができる。
【0011】
請求項8に記載の発明では、ブッシュは、固定コアよりも飽和磁束密度が低い材料で形成されている。ブッシュが例えば非磁性材料や弱磁性材料あるいは固定コアより飽和磁束密度の低い材料で形成され、固定コアが例えば磁性材料(強磁性材料)などブッシュより飽和磁束密度の高い材料で形成されている場合、コイルへの通電時、磁束はブッシュを流れにくくなるため、可動コアおよび固定コアの磁束密度の上昇を早めることができる。これにより、可動コアと固定コアとの間に生じる磁気吸引力の立ち上がりを早くすることができる。その結果、ニードル開弁時の応答性を向上することができる。
【0012】
ところで、ブッシュの可動コア側の端面と可動コアのブッシュ側の端面とが当接可能な構成の場合、燃料噴射弁の作動時、ブッシュに当接していた可動コアがブッシュから離間するとき、ブッシュと可動コアとの端面間にリンキング力が生じる。当該リンキング力は、可動コアがブッシュから離間するのを妨げるよう作用する。そのため、リンキング力が大きい場合、ニードル閉弁時の応答性が低下するおそれがある。特に、ブッシュおよび可動コアの周囲に燃料が存在する場合、リンキング力が大きくなることが懸念される。
【0013】
そこで、請求項9に記載の発明では、ブッシュは、可動コア側の端面に、可動コアとは反対側へ凹むよう形成される第1溝を有している。これにより、ブッシュと可動コアとの当接面積を小さくすることができる。よって、ブッシュと可動コアとの間に生じるリンキング力を小さくすることができる。したがって、ニードル閉弁時の応答性を向上することができる。
【0014】
ところで、燃料噴射弁の作動時、可動コアがコイルにより開弁方向に吸引されてブッシュまたは固定コアに衝突するとき、可動コアとブッシュおよび固定コアとの端面間にスクイズ力(端面間の流体により生じる力)が生じる。当該スクイズ力は、可動コアがブッシュまたは固定コアに衝突するのを妨げるよう作用する。そのため、スクイズ力が過度に大きい場合、ブッシュまたは固定コアに衝突するときの可動コアの速度が所定値以下となり、燃料圧力および噴射量等に関し燃料噴射弁の個体毎の性能ばらつきが大きくなるおそれがある。特に、ブッシュ、固定コアおよび可動コアの周囲に燃料が存在する場合、スクイズ力が大きくなることが懸念される。また、スクイズ力が大きい場合、可動コアの経年変化に対するロバスト性が低下するおそれがある。
【0015】
そこで、請求項10に記載の発明では、可動コアは、ブッシュ側の端面に、ブッシュとは反対側へ凹むよう形成される第2溝を有している。これにより、可動コアがコイルにより開弁方向に吸引されてブッシュまたは固定コアに衝突するとき、可動コアとブッシュおよび固定コアとの端面間の流体(燃料)を第2溝に逃がすことで、過度なスクイズ力の発生を抑制することができる。そのため、ブッシュまたは固定コアに衝突するときの可動コアの速度を所定値以上にすることができる。その結果、燃料圧力および噴射量等に関し燃料噴射弁の個体毎の性能ばらつきを小さくすることができる。また、過度なスクイズ力の発生を抑制することにより、可動コアの経年変化に対するロバスト性を向上することができる。
また、可動コアが第2溝を有することで、可動コアとブッシュまたは固定コアとの当接面積を小さくすることができる。よって、ブッシュまたは固定コアと可動コアとの間に生じるリンキング力を小さくすることができる。したがって、ニードル閉弁時の応答性を向上することができる。
【0016】
請求項11に記載の発明では、可動コアは、外径がハウジングの内径より小さく形成されている。そのため、本発明では、可動コアの外壁がハウジングの内壁と摺接しない構成とすることができる。この構成では、可動コアの外壁の摩耗を防止できる。これにより、可動コアの磁気特性の経年変化を抑制することができる。また、この構成では、燃料噴射弁における部材同士の摺接箇所を低減できるため、摩耗粉の発生を抑制することができる。
【0017】
請求項12に記載の発明は、可動コアをニードルとともに開弁方向に付勢する第2付勢部材をさらに備えている。そして、可動コアは、ニードルとは別体、かつ、ニードルに対し相対移動可能に設けられている。本発明では、可動コアとニードルとによるダンパ効果により、ニードルのシート部が弁座に着座したとき、および、可動コアがブッシュまたは固定コアに衝突したときのニードルの過度のバウンスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態による燃料噴射弁を示す断面図。
図2】本発明の第1実施形態による燃料噴射弁の要部を示す部分断面図。
図3】(A)は本発明の第1実施形態による燃料噴射弁のブッシュを示す断面図、(B)は(A)を矢印B方向から見た図、(C)は本発明の第1実施形態による燃料噴射弁の可動コアを図2の矢印IIIC方向から見た平面図、(D)は(C)のD−D線断面図。
図4】(A)は本発明の第2実施形態による燃料噴射弁のブッシュを示す断面図、(B)は(A)を矢印B方向から見た図。
図5】(A)は本発明の第3実施形態による燃料噴射弁の可動コアを示す平面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)を矢印C方向から見た図。
図6】本発明の第4実施形態による燃料噴射弁の要部を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の複数の実施形態を図に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料噴射弁を図1に示す。燃料噴射弁10は、例えば図示しない直噴式ガソリンエンジンの燃料噴射装置に用いられ、燃料としてのガソリンをエンジンに噴射供給する。
【0020】
燃料噴射弁10は、ハウジング20、ニードル40、可動コア50、固定コア60、コイル70、第1付勢部材としてのスプリング81、第2付勢部材としてのスプリング82、および、ブッシュ90等を備えている。
図1に示すように、ハウジング20は、第1筒部材21、第2筒部材22、第3筒部材23および噴射ノズル30から構成されている。第1筒部材21、第2筒部材22および第3筒部材23は、いずれも略円筒状に形成され、第1筒部材21、第2筒部材22、第3筒部材23の順に同軸となるよう配置され、互いに接続している。
【0021】
第1筒部材21および第3筒部材23は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により形成され、磁気安定化処理が施されている。第1筒部材21および第3筒部材23は、硬度が比較的低い。一方、第2筒部材22は、例えばオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料により形成されている。第2筒部材22の硬度は、第1筒部材21および第3筒部材23の硬度よりも高い。
【0022】
噴射ノズル30は、第1筒部材21の第2筒部材22とは反対側の端部に設けられている。噴射ノズル30は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の金属により形成されている。噴射ノズル30は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。
【0023】
噴射ノズル30は、略有底筒状に形成され、底部31および筒部32を有する。底部31は、筒部32の一方の端部を塞いでいる。底部31には、内壁と外壁とを接続する噴孔311が形成されている。また、底部31の内壁には、噴孔311を囲むようにして環状の弁座312が形成されている。筒部32は、外壁が第1筒部材21の内壁に嵌合するようにして第1筒部材21に接続している。筒部32と第1筒部材21との嵌合箇所は溶接されている。
【0024】
ニードル40は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の金属により棒状に形成されている。ニードル40は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。ニードル40の硬度は、噴射ノズル30の硬度とほぼ同等に設定されている。
【0025】
ニードル40は、ハウジング20内に軸方向へ往復移動可能に収容されている。ニードル40の噴射ノズル30側の端部には、弁座312に当接可能なシール部41が形成されている。また、ニードル40には、シール部41から軸方向に所定の距離離れた位置に摺接部42が形成されている。摺接部42は、略円柱状に形成され、外壁421の一部が面取りされている。摺接部42は、外壁421の面取りされていない部分が、噴射ノズル30の筒部32の内壁321と摺接可能である。これにより、ニードル40は、噴孔311側先端部の往復移動が案内される。
【0026】
ニードル40は、シール部41とは反対側の端部から径外方向、すなわちハウジング20の内壁24に向かうよう延びて形成される大径部43を有している。本実施形態では、大径部43は略円環状に形成されている。ニードル40は、シール部41が弁座312から離座(離間)または弁座312に着座(当接)することで噴孔311を開閉する。以下、適宜、ニードル40が弁座312から離座する方向を開弁方向といい、ニードル40が弁座312に着座する方向を閉弁方向という。なお、ニードル40の大径部43側は、中空筒状に形成され、内壁45と外壁46とを接続する孔44が形成されている。
【0027】
可動コア50は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により略円筒状に形成されている。可動コア50は、磁気安定化処理が施されている。可動コア50の硬度は比較的低く、ハウジング20の第1筒部材21および第3筒部材23の硬度と概ね同等である。
【0028】
可動コア50は、内側にニードル40が挿通されるようにして、ハウジング20の内側に設けられる。可動コア50は、シール部41とは反対側の端面53が、ニードル40の大径部43のシール部41側の端面に当接可能である。すなわち、可動コア50は、大径部43のシール部41側に、ニードル40とは別体に設けられている。可動コア50は、内壁51がニードル40の外壁46と摺接可能である。これにより、可動コア50は、ニードル40に対し軸方向に相対移動可能である。また、可動コア50は、外径がハウジング20の内径、すなわち第1筒部材21の第2筒部材22側端部、および、第2筒部材22の内径より小さく形成されている。
また、可動コア50のシール部41側端部は、内径が軸方向の他の部分より大きく形成されている。これにより、可動コア50の内側に環状の段差面54が形成されている(図1および2参照)。
【0029】
固定コア60は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により略円筒状に形成されている。固定コア60は、磁気安定化処理が施されている。固定コア60の硬度は比較的低く、可動コア50の硬度と概ね同等である。固定コア60は、ハウジング20の内側に固定されるようにして設けられている。固定コア60とハウジング20の第3筒部材23とは溶接されている。固定コア60の可動コア50側端部は、内径が軸方向の他の部分より大きく形成されている。これにより、固定コア60の内側に環状の段差面61が形成されている(図1および2参照)。
【0030】
コイル70は、略円筒状に形成され、ハウジング20の特に第2筒部材22および第3筒部材23の径方向外側を囲むようにして設けられている。コイル70は、電力が供給(通電)されると磁力を生じる。コイル70に磁力が生じると、固定コア60、可動コア50、第1筒部材21および第3筒部材23に磁気回路が形成される。これにより、固定コア60と可動コア50との間に磁気吸引力が発生し、可動コア50は、固定コア60に吸引される。このとき、可動コア50の端面53はニードル40の大径部43に当接するため、ニードル40は、可動コア50とともに固定コア60側、すなわち開弁方向へ移動する。これにより、シール部41が弁座312から離座し、噴孔311が開放される。
【0031】
スプリング81は、一端がニードル40の大径部43側の端部に当接するよう設けられている。スプリング81の他端は、固定コア60の内側に圧入固定されたアジャスティングパイプ11の一端に当接している。スプリング81は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、スプリング81は、ニードル40を可動コア50とともに閉弁方向に付勢している。
【0032】
スプリング82は、一端が可動コア50の段差面54に当接するよう設けられている。スプリング82の他端は、ハウジング20の第1筒部材21の内側に形成された環状の段差面211に当接している。スプリング82は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、スプリング82は、可動コア50をニードル40とともに開弁方向に付勢している。
本実施形態では、スプリング81の付勢力は、スプリング82の付勢力よりも大きく設定されている。そのため、コイル70に電力が供給(通電)されていない状態では、ニードル40のシール部41は、弁座312に着座した状態、すなわち閉弁状態となる。
【0033】
ブッシュ90は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の金属により筒状に形成されている。ブッシュ90は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。ブッシュ90は、固定コア60よりも硬度が高い。ブッシュ90の硬度は、ニードル40の硬度とほぼ同等に設定されている。また、ブッシュ90は、固定コア60よりも飽和磁束密度が低い。
【0034】
図2に示すように、ブッシュ90は、筒部91および内側突出部92を有している。筒部91は、円筒状に形成されている。内側突出部92は、筒部91の可動コア50側の端部の内壁から径内方向へ突出するようにして円筒状に形成されている。よって、内側突出部92の内径は、筒部91の内径よりも小さい。
【0035】
ブッシュ90は、筒部91の可動コア50とは反対側の端部が段差面61に当接するよう、固定コア60の内側に設けられている。ここで、筒部91の外壁は、固定コア60の内壁に密に接している。これにより、ブッシュ90は、固定コア60の内側に固定されている。
【0036】
内側突出部92の内壁、すなわちブッシュ90の内壁の一部は、ニードル40の大径部43の外壁と摺接可能である。これにより、ニードル40は、ハウジング20内で往復移動するとき、大径部43側の端部がブッシュ90によって支持される。つまり、ブッシュ90は、内壁が大径部43の外壁と摺接することでニードル40を往復移動可能に支持する。
また、上述のように、ニードル40は、ハウジング20内で往復移動するとき、摺接部42(噴孔311側の端部)が噴射ノズル30の筒部32によって支持される。このように、本実施形態では、ニードル40は、軸方向の2箇所(大径部43および摺接部42)を支持され、ハウジング20の内側を往復移動する。
また、上述のように、可動コア50の外径は、ハウジング20の内径、すなわち第1筒部材21の第2筒部材22側端部、および、第2筒部材22の内径より小さく形成されている。そのため、可動コア50は、内壁51がニードル40の外壁46と摺接するものの、外壁52はハウジング20の内壁24と摺接することなく、ハウジング20の内側で往復移動可能である。
【0037】
また、ブッシュ90は、可動コア50とは反対側の端部が段差面61に当接した状態において、可動コア50側の端面93(筒部91および内側突出部92の可動コア50側の端面)が固定コア60の可動コア50側の端面62よりも可動コア50側に位置するよう設けられている(図2参照)。そのため、可動コア50は、磁気吸引力により固定コア60側(開弁方向)に吸引されると、端面53がブッシュ90の端面93に衝突する。これにより、可動コア50は、開弁方向への移動が規制される。すなわち、ブッシュ90は、可動コア50のストッパとして機能する。
【0038】
図3(A)および(B)に示すように、ブッシュ90は、可動コア50側の端面93に、可動コア50とは反対側へ凹むよう形成される第1溝94を有している。第1溝94は、端面93の周方向に沿って環状に形成されている。
図3(C)および(D)に示すように、可動コア50は、ブッシュ90側の端面53に、ブッシュ90とは反対側へ凹むよう形成される第2溝55を有している。第2溝55は、例えば切削あるいは型抜き等により形成されている。第2溝55は、可動コア50の中心穴(内壁51)から径外方向へ延びるよう、周方向に等間隔で4つ形成されている。また、本実施形態では、第2溝55は、可動コア50の軸に平行な仮想平面による断面の形状が矩形状となるよう形成されている。よって、第2溝55を形成する壁面同士のなす角、および、第2溝55を形成する壁面と端面53とのなす角は、概ね90度となる(図3(D)参照)。また、第2溝55の深さは、第2溝55を流体(燃料)が流れる場合に流体抵抗が生じない程度の深さに設定されている。
【0039】
図1に示すように、第3筒部材23の第2筒部材22とは反対側の端部には、略円筒状の燃料導入パイプ12が圧入および溶接されている。燃料導入パイプ12の内側には、フィルタ13が設けられている。フィルタ13は、燃料導入パイプ12の導入口14から流入した燃料の中の異物を捕集する。
【0040】
燃料導入パイプ12および第3筒部材23の径方向外側は、樹脂によりモールドされている。当該モールド部分にコネクタ15が形成されている。コネクタ15には、コイル70へ電力を供給するための端子16がインサート成形されている。また、コイル70の径方向外側には、コイル70を覆うようにして筒状のホルダ17が設けられている。
【0041】
燃料導入パイプ12の導入口14から流入した燃料は、固定コア60、アジャスティングパイプ11およびニードル40の内側、孔44、第1筒部材21とニードル40との間、噴射ノズル30とニードル40との間を流通し、噴孔311に導かれる。つまり、ハウジング20の内側には、燃料が流通する燃料通路18が形成されている。なお、燃料噴射弁10の作動時、可動コア50の周囲は燃料で満たされた状態となる。
【0042】
次に、燃料噴射弁10の作動について説明する。
コイル70に通電されると、可動コア50は固定コア60に吸引される。これにより、ニードル40は、可動コア50とともに固定コア60側へ移動し、シール部41が弁座312から離座する。これにより、噴孔311は開放された状態(開弁状態)となる。燃料導入パイプ12の導入口14から流入した燃料は、燃料通路18を流通し、噴孔311から噴射される。一方、コイル70への通電がオフされると、ニードル40のシール部41が弁座312に着座し、閉弁する。これにより、燃料噴射が遮断される。
【0043】
本実施形態では、ブッシュ90の可動コア50側の端面93に第1溝94が形成されているため、可動コア50とブッシュ90との当接面積を小さくすることができる。よって、燃料噴射弁10の作動時(コイル70の磁気吸引力によりブッシュ90に当接していた可動コア50がブッシュ90から離れるとき)にブッシュ90と可動コア50との間に生じるリンキング力を小さくすることができる。これにより、ニードル40閉弁時の応答性を向上することができる。
【0044】
また、可動コア50のブッシュ90側の端面53に第2溝55が形成されているため、燃料噴射弁10の作動時(コイル70の磁気吸引力により吸引された可動コア50がブッシュ90に衝突するとき)に可動コア50とブッシュ90および固定コア60との端面間の燃料を第2溝55に逃がすことで、過度なスクイズ力の発生を抑制することができる。これにより、ブッシュ90に衝突するときの可動コア50の速度を所定値以上にすることができる。
【0045】
また、可動コア50のブッシュ90側の端面53に第2溝55が形成されているため、可動コア50とブッシュ90との当接面積をさらに小さくすることができる。よって、燃料噴射弁10の作動時にブッシュ90と可動コア50との間に生じるリンキング力をさらに小さくすることができる。したがって、ニードル40閉弁時の応答性をさらに向上することができる。
また、本実施形態では、可動コア50とニードル40とによりダンパ機構を構成することにより、ニードル40のシート部41が弁座312に着座したとき、および、可動コア50がブッシュ90に衝突したときのニードル40の過度のバウンスを抑制することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、固定コア60は、ニードル40がハウジング20内で往復移動可能なよう、ブッシュ90を経由してニードル40の大径部43側の端部を支持する。そのため、ニードル40がハウジング20内で往復移動するとき、ニードル40と固定コア60とは摺接しない。よって、ニードル40の往復移動に伴って固定コア60が摩耗することはない。したがって、燃料噴射弁10の長期使用による固定コア60の磁気特性の変化(経年変化)を抑制することができる。よって、燃料圧力および噴射量など燃料噴射弁10の性能が使用初期と比べ変化または低下するのを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、ブッシュ90は、固定コア60とは別体のため、固定コア60と異なる材料で形成することが可能である。本実施形態では、ブッシュ90は、固定コア60よりも硬度が高い材料で形成されている。よって、ニードル40の大径部43との摺接に伴うブッシュ90の摩耗を抑制することができる。
また、本実施形態では、ブッシュ90は、ニードル40と硬度が同等の材料で形成されている。よって、ブッシュ90とニードル40の大径部43との摺接に伴うブッシュ90およびニードル40両方の摩耗を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、ブッシュ90は、可動コア50側の端面93が、固定コア60の可動コア50側の端面53よりも可動コア50側に位置するよう設けられている。そのため、可動コア50がコイル70により開弁方向に吸引されたとき、可動コア50のブッシュ90側の端面53は、ブッシュ90に衝突するものの、固定コア60に衝突することはない。よって、可動コア50との衝突に伴う固定コア60の摩耗および損傷等を防止することができる。これにより、固定コア60の磁気特性の経年変化を抑制することができる。また、この構成では、固定コア60の可動コア50側の端面62に、耐摩耗性および耐衝撃性を向上させるためのめっき等の特殊処理を施す必要がないため、製造コストを低減することができる。
【0049】
また、本実施形態では、ブッシュ90は、マルテンサイト系ステンレスで形成され、フェライト系ステンレスで形成された固定コア60よりも飽和磁束密度が低い。よって、コイル70への通電時、磁束はブッシュ90を流れにくくなるため、可動コア50および固定コア60の磁束密度の上昇を早めることができる。これにより、可動コア50と固定コア60との間に生じる磁気吸引力の立ち上がりを早くすることができる。その結果、ニードル40開弁時の応答性を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態では、ブッシュ90は、可動コア50側の端面93に、可動コア50とは反対側へ凹むよう形成される第1溝94を有している。これにより、ブッシュ90と可動コア50との当接面積を小さくすることができる。よって、ブッシュ90と可動コア50との間に生じるリンキング力を小さくすることができる。したがって、ニードル40閉弁時の応答性を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態では、可動コア50は、ブッシュ90側の端面53に、ブッシュ90とは反対側へ凹むよう形成される第2溝55を有している。これにより、可動コア50がコイル70により開弁方向に吸引されてブッシュ90に衝突するとき、可動コア50とブッシュ90および固定コア60との端面間の流体(燃料)を第2溝55に逃がすことで、過度なスクイズ力の発生を抑制することができる。そのため、ブッシュ90に衝突するときの可動コア50の速度を所定値以上にすることができる。その結果、燃料圧力および噴射量等に関し燃料噴射弁10の個体毎の性能ばらつきを小さくすることができる。また、過度なスクイズ力の発生を抑制することにより、可動コア50の経年変化に対するロバスト性を向上することができる。
【0052】
また、可動コア50が第2溝55を有することで、可動コア50とブッシュ90または固定コア60との当接面積を小さくすることができる。よって、ブッシュ90または固定コア60と可動コア50との間に生じるリンキング力を小さくすることができる。したがって、ニードル40閉弁時の応答性を向上することができる。
【0053】
また、本実施形態では、可動コア50は、外径がハウジング20の内径より小さく形成されている。そのため、本実施形態では、可動コア50の外壁がハウジング20の内壁と摺接しない構成とすることができる。この構成では、可動コア50の外壁52の摩耗を防止できる。これにより、可動コア50の磁気特性の経年変化を抑制することができる。また、この構成では、燃料噴射弁10における部材同士の摺接箇所を低減できるため、摩耗粉の発生を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態は、可動コア50をニードル40とともに開弁方向に付勢するスプリング82をさらに備えている。そして、可動コア50は、ニードル40とは別体、かつ、ニードル40に対し相対移動可能に設けられている。本実施形態では、可動コア50とニードル40との当接面(可動コア50の端面53とニードル40の大径部43のシール部41側の端面との当接面)に発生するダンパ効果により、ニードル40のシート部41が弁座312に着座したとき、および、可動コア50がブッシュ90に衝突したときのニードル40の過度のバウンスを抑制することができる。
【0055】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による燃料噴射弁を図4に基づき説明する。第2実施形態では、ブッシュ90の形状が第1実施形態と異なる。
【0056】
図4(A)および(B)に第2実施形態による燃料噴射弁のブッシュ90を示す。第2実施形態では、ブッシュ90の内側突出部92に、流通溝95が形成されている。流通溝95は、内側突出部92の可動コア50とは反対側の端面と可動コア50側の端面とを接続するよう、内側突出部92の周方向に等間隔で4つ形成されている。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、ブッシュ90に流通溝95が形成されているため、燃料噴射弁の作動時、固定コア60の内側の燃料は、流通溝95を経由して流通し、可動コア50の端面53、内壁51および外壁52の周囲に行き渡る。これにより、可動コア50と各部材とを潤滑するとともに、可動コア50とブッシュ90および固定コア60との間に適度なスクイズ力を生じさせることで可動コア50とブッシュ90との衝撃力を許容範囲内に抑えることができる。したがって、燃料噴射弁の長期使用による可動コア50および各部材の摩耗および損傷等を抑制することができる。
【0058】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による燃料噴射弁を図5に基づき説明する。第5実施形態では、可動コア50の第2溝55の形状が第1実施形態と異なる。
【0059】
図5(A)〜(C)に第3実施形態による燃料噴射弁の可動コア50を示す。第3実施形態では、第2溝55は、可動コア50の軸に平行な仮想平面による断面の形状が逆三角形状(V字状)となるよう形成されている。よって、第2溝55を形成する壁面同士のなす角、および、第2溝55を形成する壁面と端面53とのなす角は、鈍角となる(図5(B)および(C)参照)。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では、可動コア50の第2溝55を形成する壁面同士のなす角、および、第2溝55を形成する壁面と端面53とのなす角が鈍角となるよう形成されるため、第2溝55の形成に伴うバリの発生を抑制することができる。よって、第2溝55を流れる流体(燃料)の抵抗(流体抵抗)のばらつきを抑制することができる。
【0061】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による燃料噴射弁を図6に基づき説明する。第4実施形態では、ブッシュ90の形状が第1実施形態と異なる。
【0062】
図6に示すように、第4実施形態では、ブッシュ90は、筒部91の可動コア50とは反対側の端部の外壁から径外方向へ突出するよう形成される円筒状の外側突出部96を有している。よって、外側突出部96の外径は、筒部91の外径よりも大きい。外側突出部96の可動コア50側の端面は、テーパ状に形成されている。ブッシュ90には、当該テーパ状の端面と筒部91の内壁とを接続するよう流通孔97が形成されている。流通孔97は、筒部91の軸に対し傾斜するよう、筒部91の周方向に等間隔で4つ形成されている。
【0063】
ブッシュ90は、筒部91および外側突出部96の可動コア50とは反対側の端部が段差面61に当接するよう、固定コア60の内側に設けられている。ここで、外側突出部96の外壁は、固定コア60の内壁に密に接している。これにより、ブッシュ90は、固定コア60の内側に固定されている。この状態で、筒部91の外壁と固定コア60の内壁との間には、略円筒状の空間Sが形成されている。当該空間Sは、各流通孔97と接続している。
【0064】
なお、本実施形態では、第1実施形態と同様、ブッシュ90は、可動コア50とは反対側の端部が段差面61に当接した状態において、可動コア50側の端面93(筒部91および内側突出部92の可動コア50側の端面)が固定コア60の可動コア50側の端面62よりも可動コア50側に位置するよう設けられている。
【0065】
以上説明したように、本実施形態では、ブッシュ90に流通孔97が形成され、筒部91と固定コア60との間に空間Sが形成されているため、燃料噴射弁の作動時、固定コア60の内側の燃料は、流通孔97および空間Sを経由して流通し、可動コア50の端面53、内壁51および外壁52の周囲に行き渡る。これにより、可動コア50と各部材とを潤滑するとともに、可動コア50とブッシュ90および固定コア60との間に適度なスクイズ力を生じさせることで可動コア50とブッシュ90との衝撃力を許容範囲内に抑えることができる。したがって、燃料噴射弁の長期使用による可動コア50および各部材の摩耗および損傷等を抑制することができる。
【0066】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、ブッシュおよびニードルをマルテンサイト系ステンレスで形成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、ブッシュおよびニードルを二相系、析出硬化系またはフェライト系のステンレス、あるいは、鉄等の磁性材料で形成してもよい。また、ブッシュおよびニードルをオーステナイト系ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、セラミック等の非磁性材料で形成してもよい。ただし、フェライト系ステンレスおよび鉄は比較的硬度が低いこと、ならびに、鉄は燃料に対する耐腐食(錆)性が低いことから、ブッシュおよびニードルは、比較的硬度が高く、かつ、耐腐食(錆)性が高いマルテンサイト系、二相系、析出硬化系またはオーステナイト系のステンレス、チタン、セラミック等で形成することが望ましい。なお、ブッシュとニードルとは、異なる材料で形成されていてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、固定コアおよび可動コアをフェライト系ステンレスで形成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、固定コアおよび可動コアをマルテンサイト系、二相系または析出硬化系のステンレス、あるいは、鉄等の磁性材料で形成してもよい。ただし、鉄は飽和磁束密度は高いものの耐腐食(錆)性は低いことから、固定コアおよび可動コアは、飽和磁束密度が高く、かつ、耐腐食(錆)性が高いフェライト系ステンレスで形成することが望ましい。なお、固定コアと可動コアとは、異なる材料で形成されていてもよい。
【0068】
このように、本発明では、ブッシュ、ニードル、固定コアおよび可動コアを、硬度、飽和磁束密度および耐腐食(錆)性等の高低にかかわらず、例えば上に示したような如何なる材料で形成してもよい。上述の第1〜4実施形態では、ブッシュを、固定コア(フェライト系ステンレス)よりも飽和磁束密度の低い材料(マルテンサイト系ステンレス)で形成する例を示した。これに対し、例えばブッシュを、マルテンサイト系ステンレスよりもさらに飽和磁束密度が低いオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料で形成すれば、コイルへの通電時、磁束はブッシュをより流れにくくなるため、可動コア50および固定コア60の磁束密度の上昇をより早めることができる。これにより、可動コア50と固定コア60との間に生じる磁気吸引力の立ち上がりをより早くすることができる。その結果、ニードル40開弁時の応答性をさらに向上することができる。
【0069】
また、上述の実施形態では、ブッシュが、可動コア側の端面が固定コアの可動コア側の端面よりも可動コア側に位置するよう設けられる例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、ブッシュは、可動コア側の端面が、固定コアの可動コア側の端面よりも可動コアとは反対側に位置するよう設けられることとしてもよい。また、ブッシュは、可動コア側の端面が、固定コアの可動コア側の端面と同じ位置となるよう設けられることとしてもよい。
【0070】
また、本発明の他の実施形態では、ブッシュに形成される第1溝、および、可動コアに形成される第2溝は、どのような形状でもよく、また、いくつであってもよい。また、ブッシュは第1溝を有していなくてもよい。また、可動コアは第2溝を有していなくてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ブッシュに形成される流通溝または流通孔は、4つに限らず、いくつであってもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、ブッシュが内側突出部を有し、当該内側突出部の内壁でニードルの大径部を摺接可能かつ往復移動可能に支持する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、ブッシュは内側突出部を有さず、筒部の内壁でニードルの大径部を摺接可能かつ往復移動可能に支持することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、可動コアは、外径がハウジングの内径と略同じに形成され、ハウジングの内壁と摺接可能に設けられていてもよい。
【0072】
また、本発明の他の実施形態では、可動コアとニードルとは、一体に固定(相対移動不能)されていてもよいし、同一の材料で一体に形成されていてもよい。また、第2付勢部材を備えない構成であってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、第1筒部材と噴射ノズルとは、同一の材料で一体に形成されていてもよい。
本発明の燃料噴射弁は、直噴式のガソリンエンジンに限らず、例えばポート噴射式のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等に適用してもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 ・・・・燃料噴射弁
18 ・・・・燃料通路
20 ・・・・ハウジング
21 ・・・・第1筒部材(ハウジング)
22 ・・・・第2筒部材(ハウジング)
23 ・・・・第3筒部材(ハウジング)
30 ・・・・噴射ノズル(ハウジング)
311 ・・・噴孔
312 ・・・弁座
40 ・・・・ニードル
41 ・・・・シール部
43 ・・・・大径部
50 ・・・・可動コア
60 ・・・・固定コア
70 ・・・・コイル
81 ・・・・スプリング(第1付勢部材)
90 ・・・・ブッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6