特開2015-232346(P2015-232346A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232346(P2015-232346A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ボールねじ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20151201BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   F16H25/22 C
   F16H25/24 J
   F16H25/22 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-118778(P2014-118778)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 篤
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA27
3J062CD07
3J062CD32
3J062CD47
3J062CD75
(57)【要約】
【課題】潤滑不良が生じにくく製造が容易なボールねじを提供する。
【解決手段】ボールねじは、ねじ軸1と、ナット2と、複数のボール3とを有し、ねじ軸1の外周面に形成された螺旋溝1aとナット2の内周面に形成された螺旋溝2aとが対向して、螺旋状に連続する螺旋空間11が形成され、この螺旋空間11の連続方向の一部が、ボール3が転動する転動路13を構成している。螺旋空間11には、連続方向に間隔をあけつつ複数の転動路13が形成されている。そして、それぞれの転動路13に対して、ボール3を転動路13の終点から始点に戻すボール戻し路15が設けられ、対応する転動路13とボール戻し路15とで、ボール3が循環する無端状の循環回路17が構成されている。螺旋空間11のうち転動路13同士の間の中間部分19にはボール3は配されず、グリースGが配されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、
前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、
前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋溝とが対向して、螺旋状に連続する螺旋空間が形成され、この螺旋空間の連続方向の一部が、前記ボールが転動する転動路を構成し、
前記ナットと前記ねじ軸とを相対回転運動させることにより、前記転動路内での前記ボールの転動を介して前記ナットと前記ねじ軸とが軸方向に相対移動するようになっており、
前記螺旋空間には前記連続方向に間隔をあけつつ複数の前記転動路が形成され、それぞれの前記転動路に対して、前記ボールを前記転動路の終点から始点に戻すボール戻し路が設けられ、対応する前記転動路と前記ボール戻し路とで前記ボールが循環する無端状の循環回路が構成され、
前記螺旋空間のうち前記転動路同士の間の中間部分には前記ボールは配されず、グリースが配されているボールねじ。
【請求項2】
前記ボールを前記転動路の終点から始点に戻すためのボール戻し溝を有する循環コマを前記ナットに装着することによって、前記ボール戻し路を形成した請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、
前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、
前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋溝とが対向して、螺旋状に連続する螺旋空間が形成され、この螺旋空間の連続方向の一部が、前記ボールが転動する転動路を構成し、
前記ナットと前記ねじ軸とを相対回転運動させることにより、前記転動路内での前記ボールの転動を介して前記ナットと前記ねじ軸とが軸方向に相対移動するようになっており、
前記螺旋空間には前記連続方向に間隔をあけつつ複数の前記転動路が形成され、それぞれの前記転動路に対して、前記ボールを前記転動路の終点から始点に戻すボール戻し路が設けられ、対応する前記転動路と前記ボール戻し路とで前記ボールが循環する無端状の循環回路が構成され、
前記螺旋空間のうち前記転動路同士の間の中間部分には前記ボールは配されず、前記循環回路内に前記ボールが配されるボールねじを、
前記螺旋空間の中間部分を形成する前記ナットの螺旋溝上にグリースを配した後に、このナットと前記ねじ軸と前記ボールを組み立てることにより製造するボールねじの製造方法。
【請求項4】
常温よりも低温のグリースを前記ナットの螺旋溝上に配する請求項3に記載のボールねじの製造方法。
【請求項5】
40℃以下のグリースを前記ナットの螺旋溝上に配する請求項3に記載のボールねじの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールねじ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、螺旋溝を外周面に有する略棒状のねじ軸と、ねじ軸の螺旋溝に対向する螺旋溝を内周面に有する略筒状のナットと、両螺旋溝により形成される螺旋状の転動路内に転動自在に装填された複数のボールと、を備えている。そして、ボールを介して螺合されているナットとねじ軸とを相対回転運動させると、転動路内でのボールの転動を介して、ナットとねじ軸とが軸方向に相対移動するようになっている。このようなボールねじは、転動路内に配されたグリースで潤滑されつつ作動される。
【0003】
ボールが転動する転動路内に配されているグリースは、ボールねじの作動(ボールの転動)によって転動路から掻き出されてしまうため、ボールねじの作動時間が長時間にわたると、転動路内のグリースが不十分となって潤滑不良が生じるおそれがあった。
そこで、転動路外にグリースを配したボールねじが提案されている。例えば、特許文献1には、ナットの内周面に螺旋溝が形成されていない範囲を設け、この範囲にグリースを保持させたボールねじが開示されている。特許文献1に開示のボールねじは、ボールを転動路の終点から始点へ戻し循環させるボール戻し路を備え、転動路とボール戻し路とからなる無端状の循環回路を複数備えており、前記範囲は2つの循環回路の間に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−19932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されていない範囲をナットに設ける必要があるため、内周面に1つの螺旋溝が連続的に形成された一般的なナットをそのまま使用してボールねじを製造することはできなかった。そのため、一般的なナットとは異なる方法でナットを製造する必要があるので、一般的なボールねじを製造する製造ラインを使用してナットを製造することができないという問題点を有していた。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、潤滑不良が生じにくく製造が容易なボールねじを提供することを課題とする。また、本発明は、潤滑不良が生じにくいボールねじを容易に製造することができるボールねじの製造方法を提供することを併せて課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係るボールねじは、ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋溝とが対向して、螺旋状に連続する螺旋空間が形成され、この螺旋空間の連続方向の一部が、前記ボールが転動する転動路を構成し、前記ナットと前記ねじ軸とを相対回転運動させることにより、前記転動路内での前記ボールの転動を介して前記ナットと前記ねじ軸とが軸方向に相対移動するようになっており、前記螺旋空間には前記連続方向に間隔をあけつつ複数の前記転動路が形成され、それぞれの前記転動路に対して、前記ボールを前記転動路の終点から始点に戻すボール戻し路が設けられ、対応する前記転動路と前記ボール戻し路とで前記ボールが循環する無端状の循環回路が構成され、前記螺旋空間のうち前記転動路同士の間の中間部分には前記ボールは配されず、グリースが配されている。
このボールねじにおいては、前記ボールを前記転動路の終点から始点に戻すためのボール戻し溝を有する循環コマを前記ナットに装着することによって、前記ボール戻し路を形成してもよい。
【0007】
また、本発明の他の態様に係るボールねじの製造方法は、ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋溝とが対向して、螺旋状に連続する螺旋空間が形成され、この螺旋空間の連続方向の一部が、前記ボールが転動する転動路を構成し、前記ナットと前記ねじ軸とを相対回転運動させることにより、前記転動路内での前記ボールの転動を介して前記ナットと前記ねじ軸とが軸方向に相対移動するようになっており、前記螺旋空間には前記連続方向に間隔をあけつつ複数の前記転動路が形成され、それぞれの前記転動路に対して、前記ボールを前記転動路の終点から始点に戻すボール戻し路が設けられ、対応する前記転動路と前記ボール戻し路とで前記ボールが循環する無端状の循環回路が構成され、前記螺旋空間のうち前記転動路同士の間の中間部分には前記ボールは配されず、前記循環回路内に前記ボールが配されるボールねじを、前記螺旋空間の中間部分を形成する前記ナットの螺旋溝上にグリースを配した後に、このナットと前記ねじ軸と前記ボールを組み立てることにより製造する。
このボールねじの製造方法においては、常温よりも低温のグリースを前記ナットの螺旋溝上に配してもよいし、40℃以下のグリースを前記ナットの螺旋溝上に配してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のボールねじは、潤滑不良が生じにくく製造が容易である。また、本発明のボールねじの製造方法は、潤滑不良が生じにくいボールねじを容易に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るボールねじの断面図である。
図2】一部分を破断して示したナットの斜視図である。
図3】循環コマの平面図である。
図4図3の循環コマが装着されたナットの断面図である。
図5】樹脂製の循環コマが装着されたナットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るボールねじの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るボールねじを、軸方向に沿う平面で切断して示した断面図である。
図1に示すように、ボールねじは、略棒状のねじ軸1と、略筒状のナット2と、複数のボール3とを有しており、ねじ軸1はナット2を貫通している。また、このボールねじは、ナット2の軸方向端部に取り付けられねじ軸1に摺接する略環状の接触シール5を備えている。
【0011】
ねじ軸1の外周面には螺旋状に連続する1つの螺旋溝1aが形成され、また、ナット2の内周面には螺旋状に連続する1つの螺旋溝2aが形成されており、これら両螺旋溝1a、2aが対向して、螺旋状に連続する1つの螺旋空間11が形成されている。そして、この螺旋空間11の連続方向の一部には複数のボール3が転動自在に装填され、このボール3が装填された部分が、ボール3が転動するための転動路13を構成している。
【0012】
螺旋空間11には、連続方向に間隔をあけつつ複数(図1の例では4個)の転動路13が形成されている。そして、それぞれの転動路13に対して、ボール3を転動路13の終点から始点に戻すボール戻し路15が設けられ、対応する転動路13とボール戻し路15とで、ボール3が循環する無端状の循環回路17が構成される。すなわち、図1のボールねじは、転動路13とボール戻し路15と循環回路17を、それぞれ4個備えている。なお、図1では、3個のボール戻し路15が図示されており、1個のボール戻し路15は図示されていない。
【0013】
ボール戻し路15を構成するための部材は特に限定されるものではなく、例えばリターンチューブでボール戻し路15を構成してボール3を循環させてもよいが、本実施形態においては、循環コマ7をナット2に装着することによってボール戻し路15が形成されている。すなわち、循環コマ7は、ボール3を転動路13の終点から始点に戻すためのボール戻し溝7aを有していて、ボール戻し溝7aをねじ軸1の外周面に対向させつつ、ナット2の内周面と外周面とを貫通する貫通孔2bに装着されている。
【0014】
このボールねじにおいてボール3は、転動路13内を移動しつつねじ軸1の回りを回って転動路13の終点に至り、そこで転動路13から掬い上げられてボール戻し路15の一方の端部に入る。ボール戻し路15に入ったボール3はボール戻し路15内を通ってボール戻し路15の他方の端部に達し、そこから転動路13の始点に戻されるようになっている。
よって、ボールねじは、ねじ軸1とナット2とを相対回転運動させることにより、転動路13内でのボール3の転動を介して、ねじ軸1とナット2とが軸方向に相対直線移動することが可能となっている。そして、ボール3は、無端状の循環回路17内を無限に循環するようになっているため、ねじ軸1とナット2とは継続的に相対直線移動することができる。
【0015】
このようなボールねじの内部にはグリースGが配されており、グリースGによりボール3と両螺旋溝1a,2aとの潤滑がなされつつボールねじが作動される。グリースGは、図1,2に示すように、螺旋空間11のうち隣接する転動路13同士の間の中間部分19に配されていて(図2において、螺旋溝2aのうちハッチングが付されている部分に、グリースGが塗布されている)、ボールねじの作動に伴って転動路13に供給されて潤滑に供される。この中間部分19にはボール3は配されない。
【0016】
このように、ボール3が転動しない中間部分19にグリースGが配されているので、ボールねじの作動によってグリースが転動路13等の被潤滑部から掻き出されることがない。ボールねじの作動による温度上昇や環境温度により、中間部分19に配されたグリースGの基油が少量ずつ長期間にわたって転動路13に供給され、螺旋溝1a、2a及びボール3を潤滑するため、被潤滑部の潤滑剤が枯渇しにくく潤滑不良が生じにくい。このようなボールねじは長寿命であり、アクチュエータ等に好適に使用可能である。
【0017】
このボールねじは、以下のようにして製造することができる。すなわち、ねじ軸1、ナット2、ボール3を組み立てる前に、螺旋空間11の中間部分19を形成するナット2の螺旋溝2a上にグリースGを配し、その後に、グリースGを配したナット2とねじ軸1とボール3を組み立てる。
このようにボールねじを製造すれば、組み立て時に、螺旋空間11の中間部分19に誤ってボール3を装填するという誤作業が発生しにくくなる。また、たとえ誤作業が発生し、螺旋空間11の中間部分19にボール3を装填したとしても、ボールねじの作動時のトルクが大きくなるため、誤作業の発生を確実に発見することができる。さらに、内周面に1つの螺旋溝が形成された一般的なナットをそのまま使用してボールねじを製造することができるので、ボールねじの製造が容易である。
【0018】
グリースGは予め常温よりも低温あるいは40℃以下(好ましくは20℃以下)に冷却しておき、冷却したグリースGを螺旋空間11の中間部分19に配することが好ましい。そうすれば、螺旋空間11の中間部分19に誤ってボール3を装填するという誤作業がより発生しにくくなるとともに、ボールねじの作動時のトルクがより大きくなるため誤作業の発生をより確実に発見することができる。なお、常温以上あるいは40℃超過(好ましくは20℃超過)のグリースGを螺旋空間11の中間部分19に配した後にナット2を常温よりも低温あるいは40℃以下(好ましくは20℃以下)に冷却し、冷却したナット2とねじ軸1とボール3を組み立ててもよい。
【0019】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、図3,4に示すように、循環コマ7に突起7bを設け、突起7bを螺旋空間11の中間部分19に配してもよい。そうすれば、螺旋空間11の中間部分19に誤ってボール3を装填するという誤作業がより発生しにくい。
また、図5に示すように、循環コマ7を樹脂製とし、ナット2をインサートとした樹脂材料のインサート成形によって循環コマ7を製造するとともに循環コマ7をナット2に装着してもよい。そして、インサート成形の際に、螺旋空間11の中間部分19に樹脂材料を充填してもよい(図5において、螺旋溝2aのうちハッチングが付されている部分に、樹脂材料が充填されている)。そうすれば、螺旋空間11の中間部分19に誤ってボール3を装填するという誤作業がより発生しにくい。
【符号の説明】
【0020】
1 ねじ軸
1a 螺旋溝
2 ナット
2a 螺旋溝
3 ボール
7 循環コマ
7a ボール戻し溝
11 螺旋空間
13 転動路
15 ボール戻し路
17 循環回路
19 中間部分
G グリース
図1
図2
図3
図4
図5