【解決手段】連結部材がそれぞれ、偏心量に応じて入力軸の回転運動を出力側支点の揺動運動に変換する車両用動力伝達装置であって、出力軸は、ワンウェイクラッチを介して前記出力側支点から駆動力が伝達される第1の出力軸3Aと、当該第1の出力軸3Aに結合されてトルク伝達方向下流側に延びる第2の出力軸3Bとを有し、前記出力軸の回転中心から前記出力側支点までの揺動半径を、前記第1の出力軸3Aと前記第2の出力軸3Bの結合部3A1からの距離に応じて異ならせる。
前記複数のてこクランク機構(20)のうち、前記第1の出力軸(3A)と前記第2の出力軸(3B)の結合部(3A1)に近い位置にある前記出力側支点(P5)の揺動半径(R2)を大きくし、前記結合部(3A1)から遠い位置にある前記出力側支点(P5)の揺動半径(R2)を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された四節リンク式無段変速機では、コネクティングロッドとワンウェイクラッチとが連結ピンなどによって回転自在に連結され、入力軸から出力軸へ駆動力を伝達するてこクランク機構を構成している。そして、四節リンク式無段変速機は、複数のてこクランク機構が互いに位相をずらして複数配置されて構成されているが、コネクティングロッド側の連結部(小径環状部)の中心とワンウェイクラッチ側の回転中心(出力軸の中心軸線)までの距離は一定となっている。
【0005】
しかしながら、これらのてこクランク機構は出力軸のねじれによるトルク伝達特性のばらつきにより、出力トルクの高いものと、低いものが存在するため、トルクを受ける出力側のワンウェイクラッチの最大許容トルクは、てこクランク機構の中で出力トルクが最大のものに合わせて設定する必要がある。この最大許容トルクは、てこクランク機構ごとにワンウェイクラッチを構成するインナー部材の内径を変更したり、揺動リンクを構成するアウター部材の剛性を変更することにより設定できるが、組み付ける部位ごとにインナー部材やアウター部材の形状や強度などを変更する必要があり、製造コストが高くなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、てこクランク機構の部品の形状や強度を変更することなく、てこクランク機構ごとの出力トルクのばらつきを小さくすることができる車両用動力伝達装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る第1の形態は、駆動源から駆動力が入力される入力軸(2)と、前記入力軸(2)と平行に配置された出力軸(3)と、前記入力軸(2)に対して偏心回転する入力側支点(P3)と、前記出力軸(3)に対して揺動する出力側支点(P5)と、前記入力側支点(P3)と前記出力側支点(P5)とを連結する連結部材(15)と、前記入力側支点(P3)の偏心量(R1)を可変とする偏心量調節機構(4)と、前記出力側支点(P5)を前記出力軸(3)に対して固定または空転させるワンウェイクラッチ(17)と、を有し、前記入力側支点(P3)、前記出力側支点(P5)、前記偏心量調節機構(4)、前記連結部材(15)および前記ワンウェイクラッチ(17)から構成されるてこクランク機構が軸方向に複数配置され、前記連結部材(15)がそれぞれ、前記偏心量(R1)に応じて前記入力軸(2)の回転運動を前記出力側支点(P5)の揺動運動に変換する車両用動力伝達装置(1)であって、前記出力軸(3)は、前記ワンウェイクラッチ(17)を介して前記出力側支点(P5)から駆動力が伝達される第1の出力軸(3A)と、当該第1の出力軸(3A)に結合されてトルク伝達方向下流側に延びる第2の出力軸(3B)とを有し、前記出力軸(3)の回転中心(P4)から前記出力側支点(P5)までの揺動半径(R2)を、前記第1の出力軸(3A)と前記第2の出力軸(3B)の結合部(3A1)からの距離に応じて異ならせる。
【0008】
また、本発明に係る第2の形態は、上記第1の形態において、前記複数のてこクランク機構(20)のうち、前記第1の出力軸(3A)と前記第2の出力軸(3B)の結合部(3A1)に近い位置にある前記出力側支点(P5)の揺動半径(R2)を大きくし、前記結合部(3A1)から遠い位置にある前記出力側支点(P5)の揺動半径(R2)を小さくする。
【0009】
また、本発明に係る第3の形態は、上記第1または第2の形態において、前記第1の出力軸(3A)と前記第2の出力軸(3B)の結合部(3A1)が、前記第1の出力軸(3A)の軸方向の中央部に設けられ、前記複数のてこクランク機構(20)のうち、前記第1の出力軸(3A)の軸方向の中央部に位置する前記出力側支点(P5)の揺動半径(R2)を大きくし、前記第1の出力軸(3A)の軸方向の端部に位置する前記出力側支点(P5)の揺動半径(R2)を小さくする。
【0010】
また、本発明に係る第4の形態は、上記第1または第2の形態において、前記第1の出力軸(3A)と前記第2の出力軸(3B)の結合部(3A1)が、前記第1の出力軸(3A)の軸方向の一方側の端部に設けられ、前記複数のてこクランク機構(20)のうち、前記第1の出力軸(3A)の軸方向の一方側の端部に位置する前記出力側支点(P5)の揺動半径(R2)を大きくし、前記第1の出力軸(3B)の軸方向の他方側の端部に位置する前記出力側支点(P5)の揺動半径(R2)を小さくする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、てこクランク機構の部品の形状や強度を変更することなく、てこクランク機構ごとの出力トルクのばらつきを小さくすることができる。
【0012】
詳しくは、本発明に係る第1の形態によれば、出力側支点の揺動半径をてこクランク機構のトルク伝達特性に応じて変化させることで、出力側支点の揺動速度が変化し、てこクランク機構間での出力トルクのばらつきを小さくすることができる。
【0013】
また、本発明に係る第2ないし第4の形態によれば、出力軸の結合部の位置に応じててこクランク機構ごとの出力トルクを均一化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。なお、本発明の無段変速機は、自動車以外の他の用途にも適用できることは言うまでもない。
【0016】
<無段変速機の構造>まず、
図1から
図4を参照して、本実施形態の無段変速機の構造について説明する。
【0017】
本実施形態の無段変速機1は、変速比i(i=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)を無限大(∞)にして出力軸の回転速度を「0」にできる変速機、いわゆるIVT(Infinity Variable Transmission)の一種である。
【0018】
本実施形態の無段変速機1は、入力軸2と、出力軸3と、複数(6個)のてこクランク機構20とが変速機ケース100の内部に収容されている。てこクランク機構20はそれぞれ、偏心量調節機構4と、コネクティングロッド15と、揺動リンク18とを有する。
【0019】
入力軸2は複数のカムディスク5と連結されてカムシャフト51を構成し、エンジンやモータ等の走行駆動源からの駆動力を受けて回転中心軸線P1を中心として回転駆動される。
【0020】
出力軸3は、入力軸2から離間した位置に入力軸2と平行に配置され、前後進切替機構やデファレンシャルギヤ等を介して自動車の車軸に駆動力を伝達する。
【0021】
偏心量調節機構4は、入力軸2の回転中心軸線P1を中心として偏心回転するように設けられ、カムディスク5と、偏心ディスク6と、ピニオンシャフト7とを有する。
【0022】
カムディスク5は、円盤形状であり、入力軸2の回転中心軸線P1から偏心すると共に、1つの偏心量調節機構4に対して2個1組で入力軸2と一体的に回転するように設けられている。各1組のカムディスク5は、それぞれ入力軸2の回転中心軸線P1まわりに位相が60°ずれるように設けられ、6組のカムディスク5で入力軸2の軸まわりを一回転するように配置されている。2個1組のカムディスク5は、同じ外径を有する部材が一体成型または溶接などにより連結され、各1組のカムディスク5がボルトなどにより軸方向に締結されて長尺のカムシャフト51となる。
【0023】
偏心ディスク6は、円盤形状であり、入力側支点となる中心P3から偏心した位置に受入孔6aが設けられ、その受入孔6aを挟むように、1組のカムディスク5が回転可能に支持されている。
【0024】
偏心ディスク6の受入孔6aは、その中心が、入力軸2の回転中心軸線P1からカムディスク5の中心P2(受入孔6aの中心)までの距離Raとカムディスク5の中心P2から偏心ディスク6の中心P3までの距離Rbとが同一となるように形成されている。また、偏心ディスク6の受入孔6aには、1組のカムディスク5に挟まれた内周面に、内歯6bが形成されている。
【0025】
ピニオンシャフト7は、カムシャフト51の内部を貫通する貫通孔5aに、入力軸2の回転中心軸線P1と同心に配置され、ピニオン軸受7bを介してカムシャフト51の貫通孔5aの内周面に相対回転可能に支持されている。また、ピニオン軸受7bの間のピニオンシャフト7の外周面には、外歯7aが設けられている。さらに、ピニオンシャフト7には、差動機構8が接続されている。
【0026】
カムシャフト51には、ピニオンシャフト7の外歯7aが露出するように切欠孔2aが形成されており、この切欠孔2aを介して、ピニオンシャフト7の外歯7aは、偏心ディスク6の受入孔6aの内歯6bと噛合している。
【0027】
差動機構8は、遊星歯車機構であり、サンギヤ9と、カムシャフト51に連結された第1リングギヤ10と、ピニオンシャフト7に連結された第2リングギヤ11と、サンギヤ9及び第1リングギヤ10と噛合する大径部12aと、第2リングギヤ11と噛合する小径部12bとからなる段付きピニオン12を自転及び公転可能に軸支するキャリア13とを有している。また、差動機構8のサンギヤ9は、ピニオンシャフト7駆動用の電動機からなる偏心量調節用駆動源14の回転軸14aに連結されている。
【0028】
この偏心量調節用駆動源14は、不図示のコントローラにより制御され、偏心量調節機構4の偏心量R1を設定する。
【0029】
そして、この偏心量調節用駆動源14の回転速度を入力軸2およびカムシャフト51の回転速度と同一にした場合、サンギヤ9と第1リングギヤ10とが同一速度で回転することとなり、サンギヤ9、第1リングギヤ10、第2リングギヤ11及びキャリア13の4つの要素が相対回転不能なロック状態となって、第2リングギヤ11と連結するピニオンシャフト7が入力軸2およびカムシャフト51と同一速度で回転する。
【0030】
また、偏心量調節用駆動源14の回転速度を入力軸2およびカムシャフト51の回転速度よりも遅くした場合、サンギヤ9の回転数をNs、第1リングギヤ10の回転数をNR1、サンギヤ9と第1リングギヤ10のギヤ比(第1リングギヤ10の歯数/サンギヤ9の歯数)をjとすると、キャリア13の回転数が(j・NR1+Ns)/(j+1)となる。また、サンギヤ9と第2リングギヤ11のギヤ比((第2リングギヤ11の歯数/サンギヤ9の歯数)×(段付きピニオン12の大径部12aの歯数/小径部12bの歯数))をkとすると、第2リングギヤ11の回転数が{j(k+1)NR1+(k−j)Ns}/{k(j+1)}となる。
【0031】
偏心ディスク6は、カムディスク5に対して距離Raと距離Rbとが同一となるように偏心されているため、偏心ディスク6の中心P3を入力軸2の回転中心軸線P1と同一線上に位置させて、入力軸2の回転中心軸線P1と偏心ディスク6の中心P3との距離、すなわち偏心量R1を「0」にすることもできる。
【0032】
偏心ディスク6の外縁部には、コネクティングロッド15が回転可能に支持されている。コネクティングロッド15は、一方の端部に大径の大径環状部15aを有し、他方の端部に小径の小径環状部15bを有している。コネクティングロッド15の大径環状部15aは、コンロッド軸受16を介して偏心ディスク6の外縁部に支持されている。
【0033】
出力軸3には、ワンウェイクラッチ17を介して、出力側支点となる揺動リンク18が連結されている。ワンウェイクラッチ17は、出力軸3の回転中心軸線P4を中心として一方側に回転しようとする場合に出力軸3に対して揺動リンク18を固定し、他方側に回転しようとする場合に出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる。
【0034】
揺動リンク18には、揺動端部18aが設けられ、揺動端部18aには、コネクティングロッド15の小径環状部15bを軸方向で挟み込むことができるように形成された一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、コネクティングロッド15の小径環状部15bの内径に対応する貫通孔18cが穿設されている。貫通孔18c及び小径環状部15bに連結ピン19が挿入されることによって、コネクティングロッド15と揺動リンク18とが連結されている。
【0035】
本実施形態では、揺動リンク18の揺動端部18aが、ケース100の下方に貯留された潤滑油に油没するように、出力軸3の下方に配置されている。これにより、揺動リンク18の揺動運動により潤滑油を掻き上げて、無段変速機1の各部を潤滑させることができる。
【0036】
次に、本実施形態の無段変速機1のてこクランク機構20について説明する。
【0037】
てこクランク機構20は、偏心量調節機構4と、コネクティングロッド15と、揺動リンク18とを有する。
【0038】
本実施形態の無段変速機1は、クランク機構20によって、入力軸2の回転運動が、出力軸3の回転中心軸線P4を中心とする揺動リンク18の揺動運動に変換される。
【0039】
てこクランク機構20は、偏心量調節機構4の偏心量R1が「0」でない場合に、入力軸2およびカムシャフト51とピニオンシャフト7を同一速度で回転させると、各コネクティングロッド15が60度ずつ位相を変えながら、入力軸2と出力軸3との間で出力軸3側に押したり、入力軸2側に引いたりを交互に繰り返して、揺動リンク18を揺動させる。
【0040】
そして、揺動リンク18と出力軸3との間にはワンウェイクラッチ17が設けられているので、揺動リンク18が押された場合には、揺動リンク18が固定されて出力軸3に揺動リンク18の揺動運動によるトルクが伝達されて出力軸3が回転し、揺動リンク18が引かれた場合には、揺動リンク18が空回りして出力軸3に揺動リンク18の揺動運動によるトルクが伝達されない。6個の偏心量調節機構4は、それぞれ60度ずつ位相を変えて配置されているので、出力軸3は6個の偏心量調節機構4により順に回転駆動される。
【0041】
また、本実施形態の無段変速機1では、
図5に示すように、偏心量調節機構4によって偏心量R1が調節可能である。
【0042】
図5(a)は、偏心量R1を「最大」とした状態を示し、入力軸2の回転中心軸線P1とカムディスク5の中心P2と偏心ディスク6の中心P3とが一直線に並ぶように、ピニオンシャフト7と偏心ディスク6とが位置する。この場合の変速比iは最小となる。
図5(b)は、偏心量R1を
図5(a)よりも小さい「中」とした状態を示し、
図5(c)は、偏心量R1を
図5(b)よりも更に小さい「小」とした状態を示している。変速比iは、
図5(b)では
図5(a)の変速比iよりも大きい「中」となり、
図5(c)では
図5(b)の変速比iよりも大きい「大」とした状態を示している。
図5(d)は、偏心量R1を「0」とした状態を示し、入力軸2の回転中心軸線P1と、偏心ディスク6の中心P3とが同心に位置する。この場合の変速比iは無限大(∞)となる。
【0043】
図6は、本実施形態の偏心量調節機構4による偏心量R1の変化と、揺動リンク18の揺動運動の揺動角度範囲の関係を示している。
【0044】
図6(a)は偏心量R1が
図5(a)の「最大」である場合(変速比iが最小である場合)、
図6(b)は偏心量R1が
図5(b)の「中」である場合(変速比iが中である場合)、
図6(c)は偏心量R1が
図5(c)の「小」である場合(変速比iが大である場合)の、偏心量調節機構4の回転運動(回転角度θ1)に対する揺動リンク18の揺動範囲θ2を示している。ここで、出力軸3の回転中心軸線P4からコネクティングロッド15と揺動端部18aの連結点、すなわち、連結ピン19の中心P5までの距離が、揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2である。
【0045】
図6から明らかなように、偏心量R1が小さくなるのに伴い、揺動リンク18の揺動角度範囲θ2が狭くなり、偏心量R1が「0」になった場合には、揺動リンク18は揺動しなくなる。
【0046】
<てこクランク機構ごとの出力トルクのばらつきを低減する構造>次に、
図7から
図13を参照して、本実施形態の出力トルクのばらつきを低減する構造について説明する。
【0047】
本実施形態の無段変速機1は、
図8や
図11に示すように、出力軸3が、第1の出力軸3Aと第2の出力軸3Bとを備える。第1の出力軸3Aは、ワンウェイクラッチ17のインナー部材として機能する中空状の部材であり、アウター部材として機能する揺動リンク18からワンウェイクラッチ17を介して駆動力が伝達される。第2の出力軸3Bは、第1の出力軸3Aの中空孔3A2にスプライン嵌合される軸体であり、トルク伝達方向下流側に駆動力を伝達する。すなわち、第2の出力軸3Bの外周面の軸方向に形成された第2のスプライン部3B1が、第1の出力軸3Aの内周面に軸方向に形成された第1のスプライン部3A1に結合されて一体的に回転することで、前後進切替機構やデファレンシャルギヤなどを介して自動車の車軸に駆動力を伝達する。
【0048】
そして、本実施形態は、出力軸3の回転中心軸線P4から出力側支点となる揺動リンク18の連結ピン19の中心P5までの距離、すなわち、揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2を、第1の出力軸3Aの第1のスプライン部3A1からの距離に応じててこクランク機構ごとに異ならせることで、6個のてこクランク機構20の出力トルクのばらつきを低減するものである。すなわち、6個のてこクランク機構20の揺動リンク18のうち、出力側支点P5が第1のスプライン部3A1から遠い位置にあるほど、揺動半径R2が小さくなるように構成している。換言すると、第1のスプライン部3A1から遠い位置にある揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2を、第1のスプライン部3A1に近い位置にある揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2よりも小さくなるように構成している。
【0049】
図7は、コネクティングロッド15の長さLを変えた場合(a)と揺動半径R2を変えた場合(b)の入力軸2の回転角度に対する出力側支点P5の揺動角速度の変化を示している。
【0050】
てこクランク機構20は、
図7(a)からわかるように、コネクティングロッド15の長さ、すなわち、入力側支点P3から出力側支点P5までの長さLをてこクランク機構20ごとに変化させても、揺動リンク18の揺動角速度に変化が生じにくい。これに対して、
図7(b)に示すように、揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2をてこクランク機構20ごとに変化させると、揺動リンク18の出力側支点P5の揺動角速度が揺動半径R2に応じて変化が生じやすい。なお、
図7において、Xの値はYの値より大きいものとする(X>Y)。
【0051】
また、以下の式から、出力側支点P5の揺動半径R2を大きくすると揺動角速度が低下し、軸体のねじれの影響によりトルク伝達特性が低下するため出力トルクは減少する。一方、出力側支点P5の揺動半径R2を小さくすると揺動角速度が増加し、軸体のねじれの影響が小さくなってトルク伝達特性が増加するため出力トルクは増加する。
【0052】
V=R2・ω
ただし、V、ωはそれぞれ、出力側支点P5の揺動速度、揺動角速度
そして、本実施形態のように、第1のスプライン部3A1からの距離に応じててこクランク機構20ごとに揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2を変化させることで、トルク伝達特性の違いによる出力トルクのばらつきが相殺されて、てこクランク機構20ごとの出力トルクの差を小さくすることができる。
【0053】
(第1の構成例)
第1の構成例を示す
図8では、第1の出力軸3Aの第1のスプライン部3A1を軸方向の中央部に設け、第1のスプライン部3A1に対応する位置であって、かつ下流側に近い部分に位置する3番の揺動リンク18_3thの出力側支点P5の揺動半径R2を最も大きくし(出力トルクを減少させ)、第1のスプライン部3A1からの距離が遠い位置にあるほど、出力側支点P5の揺動半径R2が小さくなるように(出力トルクが増加するように)設定している。この場合、6番の揺動リンク18_6thの出力側支点P5の揺動半径R2が最も小さくなり、次に小さいものから順に、揺動リンク18_1th、5th、4th、2thとなる。
【0054】
このように構成すると、各てこクランク機構20のトルク伝達特性が、
図9(a)に示すように軸方向の中央部より端部の方が小さくなる、すなわち、第1のスプライン部3A1から遠いほど軸体のねじれの影響が大きくなってトルク伝達特性が低下する。そして、本実施形態では、図示のようなてこクランク機構20ごとのトルク伝達特性の分布に対して、第1のスプライン部3A1からの距離が遠い位置にあるほど、揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2が小さくなるように設定して出力トルクを増加させる。このように構成することで、
図10(b)に示す全てのてこクランク機構20_1th〜6thの出力側支点P5の揺動半径R2が同一の場合の出力トルクT12に比べて、
図10(a)に示すように各てこクランク機構20_1th〜6thの出力トルクT11のばらつきが小さくなり、てこクランク機構20ごとの出力トルクを均一化できる。
【0055】
なお、
図9(b)に示すように、各てこクランク機構20_1th〜6thにおいて、軸方向の中央部と端部の間での出力側支点P5の揺動半径R2の最大値と最小値の差は、±数mm程度で十分である。
【0056】
(第2の構成例)
第2の構成例を示す
図11では、第1の出力軸3Aの第1のスプライン部3A1を第1の出力軸3Aの軸方向のトルク伝達方向下流側の一端部に設け、第1のスプライン部3A1に近い部分に位置する揺動リンク18_1thの出力側支点P5の揺動半径R2を最も大きくし、第1のスプライン部3A1からの距離が遠い位置にあるほど、出力側支点P5の揺動半径R2が小さくなるように(出力トルクが増加するように)設定している。つまり、揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2は、1番の揺動リンク18_1thから6番の揺動リンク18_6thの順番で、トルク伝達方向上流側の端部に近づくほど小さくなる。
【0057】
このように構成すると、各てこクランク機構20のトルク伝達特性が、
図12(a)に示すようにトルク伝達方向の下流側より上流側の端部の方が小さくなる、すなわち、第1のスプライン部3A1から遠いほど軸体のねじれの影響が大きくなってトルク伝達特性が低下する。そして、本実施形態では、図示のようなてこクランク機構20ごとのトルク伝達特性の分布に対して、第1のスプライン部3A1からの距離が遠い位置にあるほど、揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2が小さくなるように設定して出力トルクを増加させる。このように構成することで、
図13(b)に示す全てのてこクランク機構20_1th〜6thの出力側支点P5の揺動半径R2が同一の場合の出力トルクT22に比べて、
図13(a)に示すように各てこクランク機構20_1th〜6thの出力トルクT21のばらつきが小さくなり、てこクランク機構20ごとの出力トルクを均一化できる。
【0058】
なお、
図12(b)に示すように、各てこクランク機構20_1th〜6thにおいて、軸方向の両端部間での出力側支点P5の揺動半径R2の最大値と最小値の差は、±数mm程度で十分である。
【0059】
なお、上記第2の構成例では、第1の出力軸3Aの内周面に第1のスプライン部3A1を形成し、第2の出力軸3Bの外周面に第2のスプライン部3B1を形成したが、第1の出力軸3Aの外周面に第1のスプライン部3A1を形成し、第2の出力軸3Bの内周面に第2のスプライン部3B1を形成してもよい。
【0060】
また、上記第2の構成例において、第1の出力軸3Aの両端部に第1のスプライン部3A1を形成し、それぞれに第2の出力軸3Bを連結した構成としても良い。
【0061】
また、上記第1および第2の構成例では、スプライン部を中央部およびトルク伝達方向下流側端部に形成したが、スプライン部の位置はこれらに限らず、第1の出力軸3Aにおける任意の位置に形成できる。この場合、スプライン部からの距離に応じたてこクランク機構20ごとのトルク伝達特性に応じて出力側支点P5の揺動半径R2を変化させることで出力トルクを均一化することができる。
【0062】
また、第1の出力軸3Aと第2の出力軸3Bをスプライン結合ではなく、フランジや溶接などで接合してもよい。
【0063】
なお、てこクランク機構20ごとに揺動リンク18の出力側支点P5の揺動半径R2を異ならせるためには、てこクランク機構20ごとに出力側支点P5の揺動半径R2が異なる専用の部品(揺動リンク18のアウター部材)を作製したり、揺動リンク18の貫通孔18cに内径の異なるリング状の部材を装着するなどして調節すればよい。また、てこクランク機構20の間で(例えば、隣接するてこクランク機構の)トルク伝達特性があまり変わらない場合は、部品を共通化することもできる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、てこクランク機構20の部品の形状や強度を変更することなく、てこクランク機構20ごとの出力トルクのばらつきを小さくすることができる。