【解決手段】排気浄化装置は、排気管3内において排気ガスの流れ方向に沿って並んで配置された熱交換器10A〜10Eを備えている。熱交換器10A〜10Eは、排気ガスの流路となる複数のセル12aが形成された熱交換部12を有している。熱交換器10A〜10Eは、各熱交換部12の位相を排気管3の周方向に沿ってずらすことで、各熱交換部12のセル12aを形成する隔壁13の一部が排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないように構成されている。また、排気浄化装置1は、排気管3を挟んで熱交換器10A〜10Eの周囲に配置され、NH
前記複数の熱交換器のうち前記各隣接する2つの熱交換器は、前記配管の周方向に前記熱交換部の位相がずれるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の熱媒体流通装置。
前記複数の熱交換器のうち前記各隣接する2つの熱交換器は、前記熱交換部の前記セルの形状または密度が異なるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の熱媒体流通装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明に係る熱媒体流通装置の一実施形態として排気浄化装置を示す概略構成図である。同図において、排気浄化装置1は、車両のディーゼルエンジン2(以下、単にエンジン2という)の排気系に設けられ、エンジン2から排出される熱媒体である排気ガスに含まれる有害物質(環境汚染物質)を浄化する。
【0014】
排気浄化装置1は、エンジン2と接続され、排気ガスが流れる排気管3と、排気管3内に配設された熱交換器群4、ディーゼル酸化触媒(DOC:DieselOxidation Catalyst)5、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)6、選択還元触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)7及びアンモニアスリップ触媒(ASC:Ammonia Slip Catalyst)8とを備えている。排気管3は、例えばステンレス鋼(SUS)等で形成されている。熱交換器群4、DOC5、DPF6、SCR7及びASC8は、排気ガスの流れ方向の上流側(排気上流側)から排気ガスの流れ方向の下流側(排気下流側)に向けて順に配置されている。
【0015】
熱交換器群4は、排気管3内を流れる排気ガスと後述する反応器16との間で熱交換を行う。熱交換器群4については、後で詳述する。DOC5は、排気ガス中に含まれるHC及びCO等を酸化して浄化する触媒である。DPF6は、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集して取り除くフィルタである。SCR7は、尿素またはアンモニア(NH
3)によって、排気ガス中に含まれるNOxを還元して浄化する触媒である。ASC8は、SCR7をすり抜けたNH
3を酸化する触媒である。
【0016】
熱交換器群4は、
図2に示すように、排気管3内において排気ガスの流れ方向に沿って並んで配置された複数(ここでは5つ)の熱交換器10A〜10Eに分割されている。熱交換器10A〜10Eは、排気上流側から排気下流側に向けて順に配置されている。熱交換器10A〜10Eのうち各隣接する熱交換器同士は、互いに接触している。
【0017】
熱交換器10A〜10Eは、
図3に示すように、外周壁11と、この外周壁11の内部に配置され、排気ガスの流路となる複数のセル12aを有するハニカム構造の熱交換部12とからなっている。ハニカム構造とは、正方形、正六角形、菱形等の多角形を隙間無く並べた構造のことであり、網目構造ともいう。ここでは、熱交換部12は、断面正方形状(断面格子状)のハニカム構造を有している。つまり、熱交換部12の各セル12aの形状は、正方形状となっている。熱交換部12の各セル12aは、正方形筒状の隔壁13によって区画形成されている。
【0018】
熱交換器10A〜10Eは、例えばSiSiC(非酸化物系セラミックス・シリコン・カーバイド)で形成されている。SiSiCは、SiCにSiを含浸させたものである。なお、熱交換器10A〜10Eを形成する材料としては、SiSiCの他にも、SiC、セラミック鋼、コージェライト等のように熱伝導性が高く且つ排気ガスに対する耐腐食性を有する材料であれば使用可能である。なお、熱交換器10A〜10Eを形成する材料として、セラミック鋼等の金属を使用する場合は、製造上の理由により、排気管3が外周壁としての機能を果たす。
【0019】
熱交換器10A〜10Eは、
図4に示すように、排気管3の周方向に沿って熱交換部12の位相を順次ずらした状態で排気管3内に配置されている。熱交換器10Bの熱交換部12は、熱交換器10Aの熱交換部12に対して排気管3の周方向に所定角度(ここでは22.5度)だけ位相がずれている(
図4(a),(b)参照)。熱交換器10Cの熱交換部12は、熱交換器10Bの熱交換部12に対して同じ方向に同じ角度だけ位相がずれている(
図4(b),(c)参照)。つまり、熱交換器10Cの熱交換部12は、熱交換器10Aの熱交換部12に対して排気管3の周方向に45度だけ位相がずれている。熱交換器10Dの熱交換部12は、熱交換器10Cの熱交換部12に対して同じ方向に同じ角度だけ位相がずれている(
図4(c),(d)参照)。熱交換器10Eの熱交換部12は、熱交換器10Dの熱交換部12に対して同じ方向に同じ角度だけ位相がずれている(
図4(d),(e)参照)。つまり、熱交換器10Eの熱交換部12は、熱交換器10Aの熱交換部12と同位相である。
【0020】
このように熱交換器10A〜10Eの各熱交換部12の位相を排気管3の周方向に沿って順次ずらすことにより、熱交換器10A〜10Eにおける各熱交換部12のセル12aを形成する隔壁13の一部のみが排気ガスの流れ方向に対して重なり合い、隔壁13の他の一部は排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないようになる。
【0021】
熱交換器10A〜10Eは、例えば焼き嵌めによって排気管3内に挿入される。具体的には、
図5に示すように、排気管3を加熱することで排気管3を径方向に膨張させた後、上記のように熱交換器10A〜10Eの各熱交換部12の位相を排気管3の周方向に沿って順次ずらした状態で、熱交換器10A〜10Eを排気管3内に挿入する。その後、排気管3を冷却することで、排気管3が径方向に収縮するため、熱交換器10A〜10Eの外周壁11が排気管3の内周面に密着するようになる。なお、熱交換器10A〜10Eを形成する材料としてセラミック鋼を用いる場合は、焼き嵌め又はロウ付けによって熱交換器10A〜10Eを排気管3内に挿入することができる。
【0022】
図1に戻り、排気浄化装置1は、熱交換器群4(熱交換器10A〜10E)を加熱する化学蓄熱ユニット15を備えている。化学蓄熱ユニット15は、通常は排気ガスの熱(排熱)を蓄えておき、必要なときに排熱を使用することにより、エネルギーレスで熱交換器群4を加熱する。
【0023】
化学蓄熱ユニット15は、
図1〜
図3に示すように、排気管3を挟んで熱交換器10A〜10Eの周囲に配置された反応器16と、この反応器16とNH
3供給管17を介して接続された吸着器18とを備えている。NH
3供給管17には、反応器16と吸着器18との間の流路を開閉させるバルブ19が設けられている。
【0024】
反応器16は、排気管3を取り囲むように設けられたリング状のケース20と、このケース20内に収容されたペレット状または粉末状の蓄熱材21とを有している。蓄熱材21は、反応媒体であるNH
3(アンモニア)との化学反応により発熱すると共に、排熱の蓄熱によりNH
3を脱離させる。ケース20には、NH
3供給管17が連結されている。
【0025】
蓄熱材21は、排気管3の外周面に接触するようにケース20内に収容されている。蓄熱材21は、熱交換器群4に対応する領域、つまり熱交換器10Aの前端面(排気上流側の端面)に対応する位置から熱交換器10Eの後端面(排気下流側の端面)に対応する位置までの領域に存在している。
【0026】
蓄熱材21としては、ハロゲン化物のMXaという組成を持つ材料が用いられる。ここで、Mは、Mg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の遷移金属である。Xは、Cl、Br、I等である。aは、2〜3である。
【0027】
吸着器18は、NH
3の物理吸着による保持及び脱離が可能な吸着材22(
図1参照)を含んでいる。吸着材22としては、活性炭、カーボンブラック、メソポーラスカーボン、ナノカーボン及びゼオライト等の何れかが用いられる。吸着器18は、NH
3を吸着材22に物理吸着させることで、NH
3を貯蔵する貯蔵器である。
【0028】
以上のような排気浄化装置1において、エンジン2から排出される排気ガスの温度が低いときは、バルブ19を開くことで、吸着器18から反応器16にNH
3がNH
3供給管17を介して供給され、反応器16の蓄熱材21(例えばMgBr
2)とNH
3とが化学反応して化学吸着(配位結合)し、蓄熱材21から熱が発生する。つまり、下記の反応式(A)における左辺から右辺への反応(発熱反応)が起こる。そして、蓄熱材21から発生した熱が排気管3を介して熱交換器10A〜10Eに伝わる。これにより、熱交換器10A〜10Eが加熱され、これに伴って熱交換器10A〜10Eを流れる排気ガスが加熱される。つまり、熱交換器10A〜10Eにより排気ガスが熱交換されて加熱される。そして、暖められた排気ガスによってDOC5が汚染物質の浄化に適した活性温度まで上昇する。
MgBr
2+
xNH
3 ⇔ Mg(NH
3)
xBr
2+熱 …(A)
【0029】
一方、エンジン2から排出される排気ガスの温度が高くなると、排気ガスの熱(排熱)が排気管3を介して反応器16の蓄熱材21に与えられることで、蓄熱材21とNH
3とが分離する。つまり、上記の反応式(A)における右辺から左辺への反応(再生反応)が起こる。そして、蓄熱材21から脱離したNH
3は、NH
3供給管17を介して吸着器18に戻り、吸着器18の吸着材22に物理吸着(回収)される。
【0030】
以上のように本実施形態にあっては、熱交換器10A〜10Eを排気管3内に排気ガスの流れ方向に沿って並ぶように配置すると共に、熱交換器10A〜10Eの各熱交換部12の位相を排気管3の周方向に沿って順次ずらすことで、熱交換器10A〜10Eにおける各熱交換部12のセル12aを区画形成する隔壁13の一部が排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないように構成したので、熱交換部12のセル12aを通る排気ガスが隔壁13に当たりやすくなり、排気ガスの乱流が促進される。従って、排気ガスが熱交換器群4に留まる時間が長くなるため、反応器16の蓄熱材21から発生した熱が熱交換器群4を介して排気ガスに十分に伝わるようになる。これにより、熱交換器10A〜10Eによる排気ガスの熱交換効率を上げることができる。
【0031】
その結果、排気ガスの加熱効率を向上させることが可能となる。また、熱交換器群4の単位体積当たりの熱交換効率が高くなるため、排気ガスの流れ方向に沿った熱交換器群4及び反応器16の長さを短くし、熱交換器群4及び反応器16の小型化を図ることが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、熱交換器10A〜10Eの各熱交換部12は全て同じ構造を有しているので、使用する熱交換器としては1種類あれば足り、熱交換部の構造が異なる複数種類の熱交換器を製作しなくて済む。
【0033】
なお、本実施形態では、熱交換器10A〜10Eの各熱交換部12は断面正方形状のハニカム構造を有しているが、熱交換器10A〜10Eの各熱交換部12のハニカム構造としては特にそれには限られず、断面正六角形状または断面菱形等であってもよい。
【0034】
図6は、熱交換器群4を構成する熱交換器10A〜10Eの変形例を示す正面図である。なお、
図6は、
図4に対応する図である。
【0035】
図6において、熱交換器10A,10C,10Eは、上記の外周壁11の内部に配置され、複数のセル25aをもった熱交換部25を有している。熱交換器10B,10Dは、上記の外周壁11の内部に配置され、複数のセル26aをもった熱交換部26を有している。熱交換部25,26は、何れも断面正方形状のハニカム構造を有している。つまり、セル25a,26aの形状は、正方形状となっている。
【0036】
熱交換器10B,10Dにおける熱交換部26のセル26aを形成する隔壁28の隙間の寸法は、熱交換器10A,10C,10Eにおける熱交換部25のセル25aを形成する隔壁27の隙間の寸法よりも小さくなっている。つまり、熱交換器10B,10Dにおける熱交換部26のセル26aの密度(孔密度)は、熱交換器10A,10C,10Eにおける熱交換部25のセル25aの密度よりも高くなっている。
【0037】
このように熱交換器10A,10C,10Eにおける熱交換部25のセル25aの密度と熱交換器10B,10Dにおける熱交換部26のセル26aの密度とを変えることにより、熱交換器10A〜10Eにおける熱交換部25,26のセル25a,26aを区画形成する隔壁27,28の一部のみが排気ガスの流れ方向に対して重なり合い、隔壁27,28の他の一部は排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないようになる。
【0038】
本実施形態においても、熱交換器10A〜10Eにおける熱交換部25,26のセル25a,26aを区画形成する隔壁27,28の一部が排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないように構成したので、上述したように排気ガスの乱流を促進し、熱交換器10A〜10Eによる排気ガスの熱交換効率を高めることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、熱交換器10A,10C,10Eにおける熱交換部25のセル25aの密度と熱交換器10B,10Dにおける熱交換部26のセル26aの密度とが異なるようにしたが、特にそれには限られず、全ての熱交換器10A〜10Eにおける熱交換部のセルの密度が異なるようにしても勿論よい。
【0040】
図7は、熱交換器群4を構成する熱交換器10A〜10Eの他の変形例を示す正面図である。
図7は、
図4に対応する図である。
【0041】
図7において、熱交換器10A,10C,10Eは、上記の熱交換部25を有している。熱交換器10B,10Dは、上記の外周壁11の内部に配置され、複数のセル30aをもった熱交換部30を有している。熱交換部30は、断面正六角形状のハニカム構造を有している。つまり、セル30aの形状は、正六角形状となっている。
【0042】
このように熱交換器10A,10C,10Eにおける熱交換部25のセル25aの形状と熱交換器10B,10Dにおける熱交換部30のセル30aの形状とを変えることにより、熱交換器10A〜10Eにおける熱交換部25,30のセル25a,30aを区画形成する隔壁27,31の一部のみが排気ガスの流れ方向に対して重なり合い、隔壁27,31の他の一部は排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないようになる。
【0043】
本実施形態においても、熱交換器10A〜10Eにおける熱交換部25,30のセル25a,30aを区画形成する隔壁27,31の一部が排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないように構成したので、上述したように排気ガスの乱流を促進し、熱交換器10A〜10Eによる排気ガスの熱交換効率を高めることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、熱交換器10A,10C,10Eにおける熱交換部25のセル25aの形状と熱交換器10B,10Dにおける熱交換部30のセル30aの形状とが異なるようにしたが、特にそれには限られず、全ての熱交換器10A〜10Eにおける熱交換部のセルの形状が異なるようにしても勿論よい。このとき、熱交換器10A〜10Eにおける熱交換部のセルの形状は、特に限定されない。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは無い。例えば、上記実施形態では、複数の熱交換器における熱交換部の位相をずらしたり、複数の熱交換器における熱交換部のセルの密度を変えたり、複数の熱交換器における熱交換部のセルの形状を変えるようにしたが、これらを組み合わせた構成としてもよい。
【0046】
例えば、複数の熱交換器における熱交換部のセルの密度を変えると共に、複数の熱交換器における熱交換部の位相をずらしてもよい。また、複数の熱交換器における熱交換部のセルの形状を変えると共に、複数の熱交換器における熱交換部の位相をずらしてもよい。さらに、複数の熱交換器における熱交換部のセルの形状を変えると共に、複数の熱交換器における熱交換部のセルの密度を変えてもよい。何れの場合も、排気ガスの乱流がより促進されるため、複数の熱交換器による排気ガスの熱交換効率を一層高めることができる。
【0047】
このとき、複数の熱交換器における熱交換部のセルを区画形成する隔壁の少なくとも一部が排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないように構成すればよい。つまり、複数の熱交換器における熱交換部のセルを区画形成する隔壁の一部のみが排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないように構成してもよいし、或いは複数の熱交換器における熱交換部のセルを区画形成する隔壁が全体的に排気ガスの流れ方向に対して重なり合わないように構成してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、反応媒体であるNH
3と組成がMXaである蓄熱材とを化学反応させて熱を発生させるようにしたが、反応媒体としては、特にNH
3には限られず、例えばCO
2またはH
2O等を使用しても良い。反応媒体としてCO
2を使用する場合、CO
2と化学反応する蓄熱材としては、MgO、CaO、BaO、Ca(OH)
2、Mg(OH)
2、Fe(OH)
2、Fe(OH)
3、FeO、Fe
2O
3、Fe
3O
4等を使用することができる。反応媒体としてH
2Oを使用する場合、H
2Oと化学反応する蓄熱材としては、CaO、MnO、CuO、Al
2O
3等を使用することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、化学蓄熱ユニット15により熱交換器群4を加熱するようにしたが、本発明は、DOC5等といったハニカム構造の熱交換機能を有する触媒を加熱するものにも適用可能である。
【0050】
また、上記実施形態は、排気管3内に熱交換器群4が配設された排気浄化装置1についてであるが、本発明は、エンジンの排気系以外にも、例えば熱媒体としてのオイルが流れる配管内に熱交換器が配設された熱媒体流通装置にも適用可能である。