(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232413(P2015-232413A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】床吹出し式の空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20151201BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
F24F5/00 K
F24F13/068 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-118956(P2014-118956)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390031978
【氏名又は名称】株式会社テクネット
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】福村 貴司
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸生
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080BA02
3L080BB04
(57)【要約】
【課題】従来と比較し、低コスト化を図ることを可能にするとともに、床下圧力を上げて単位面積当たりの風量を増加させることを可能にする床吹出し式の空調システムを提供する。
【解決手段】支持部材2上に床パネル4a、4bを設置して形成された二重床の床下空間6をチャンバーとして利用し、床パネル4a、4b及び床パネル4a、4b上に敷設した通気性カーペットを通じて室内に空調用空気を供給するように構成された床吹出し式の空調システムAにおいて、床パネルとして通気孔3を備えた孔あき床パネル4aと孔なし床パネル4bを設置して二重床が形成され、且つ通気性カーペットとしての通気性ロールカーペット5aと、非通気性ロールカーペット5bを敷設して構成し、孔あき床パネル4aに、少なくとも孔あき床パネル4aの外周に沿って通気孔3を囲繞するように塗布した接着剤7で通気性ロールカーペット5aを予め一体に固着する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材上に床パネルを設置して形成された二重床の床下空間をチャンバーとして利用し、前記床パネル及び該床パネル上に敷設した通気性カーペットを通じて室内に空調用空気を供給するように構成された床吹出し式の空調システムにおいて、
前記床パネルとして通気孔を備えた孔あき床パネルと孔なし床パネルを設置して二重床が形成され、且つ前記通気性カーペットとしての通気性ロールカーペットと非通気性ロールカーペットを敷設して構成され、
前記孔あき床パネルには、少なくとも前記孔あき床パネルの外周に沿って前記通気孔を囲繞するように塗布した接着剤によって前記通気性ロールカーペットが予め一体に固着されていることを特徴とする床吹出し式の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床の内部空間をチャンバーとして利用し、床から室内に空調用空気を供給する床吹出し式の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床吹出し式の空調システムは、例えば、床スラブ上に根太や支持柱などの支持部材を設置し、複数(多数)の通気孔が形成された床パネルを支持部材で支持させて縦横に配置し二重床を形成するとともに、床パネル上に通気性タイルカーペットを載置して構成されている。
【0003】
そして、この種の床吹出し式の空調システムでは、二重床で形成された床下空間(内部空間)をチャンバーとして利用し、このチャンバーから床パネルの通気孔、さらに通気性タイルカーペットを通じて空調用空気(給気OA)を室内に吹出して供給し空調を行う。これにより、空調空気を床全面から室内へゆるやかに且つ均一に送気することができ、このような床吹出し式の空調システムは置換空調システムとも呼ばれている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−291543号公報
【特許文献2】特許第3317468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この一方で、上記従来の床吹出し式の空調システムにおいては、通気孔を備えた床パネル及び通気性タイルカーペットを床全面に設けて二重床を形成するようにしている。しかしながら、複数の通気孔を形成した床パネルや通気性タイルカーペットはコストが高いため、空調システムが高コストになる。このため、床吹出し式の空調システムの低コスト化を図る手法が強く望まれていた。
【0006】
また、この種の床吹出し空調システムは、床面に敷設される通気性タイルカーペットが十分な通気性、耐久性を備えることに加え、空調時に通気性タイルカーペットに浮き・剥離が生じにくく、且つ、例えば室内の机の配置などのレイアウト変更時に床下の配線をやり直す場合に容易に剥がすことができるピールアップ性を有することが重要である。
【0007】
これに対し、従来の床吹出し式の空調システムにおいては、通気性タイルカーペットに浮き・剥離が発生することを防止するため、例えば1cm/秒程度の低速で空調用空気を吹き出すように構成されている。すなわち、単位面積当たりの風量を増加させようとすると、床下圧力(チャンバー内圧力)が大きくなって通気性タイルカーペットが剥離するなどの不都合が生じるおそれがあった。
【0008】
すなわち、従来の床吹出し式の空調システムでは部分的に複数の通気孔を形成した床パネルを用いるようにして空調システム全体としてのコストを低減させることが困難で、さらに、空調負荷が大きな室に適用する場合などにおいては、風量を確保するため、床吹出口を別途増設するなどの対策が必要になってしまう。
【0009】
このようなことから、床吹出し式の空調システムの低コスト化を図り、さらに通気性カーペットの浮きや剥離等が生じることなく、風量を増加させることを可能にする手法が強く望まれていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、従来と比較し、低コスト化を図ることを可能にするとともに、床下圧力を上げて単位面積当たりの風量を増加させることを可能にする床吹出し式の空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0012】
本発明の床吹出し式の空調システムは、支持部材上に床パネルを設置して形成された二重床の床下空間をチャンバーとして利用し、前記床パネル及び該床パネル上に敷設した通気性カーペットを通じて室内に空調用空気を供給するように構成された床吹出し式の空調システムにおいて、前記床パネルとして通気孔を備えた孔あき床パネルと孔なし床パネルを設置して二重床が形成され、且つ前記通気性カーペットとしての通気性ロールカーペットと非通気性ロールカーペットを敷設して構成され、前記孔あき床パネルには、少なくとも前記孔あき床パネルの外周に沿って前記通気孔を囲繞するように塗布した接着剤によって前記通気性ロールカーペットが予め一体に固着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床吹出し式の空調システムにおいては、まず、非通気性ロールカーペットと通気性ロールカーペットを採用するようにしたことで、従来の通気性タイルカーペットのような形状安定性(強度)が不要で、カットも必要なく、コストダウンを図ることが可能になる。
【0014】
また、従来の空調システムと比較し、割高な通気性ロールカーペットと孔あき床パネルの使用量、割合が少なくなり、且つ非通気性ロールカーペットと孔なし床パネルに通常品を使用できるため、低コスト化を図ることが可能になる。さらに、孔あき床パネル4aの割合を少なくするほどに低コストにすることができる。
【0015】
また、孔あき床パネル上の通気性ロールカーペットの外周や、孔あき床パネルの周囲の通気性ロールカーペットの端部側を、例えば接着剤や一般のロールカーペットで用いられるスパイクなどの固着手段で孔あき床パネルや孔なし床パネルに固着し、確実に通気性ロールカーペットの浮き・剥離を防止でき、床下圧力を増大することが可能になるとともに、空調用空気OAの通気孔からの風速、空気量を増大させることが可能になる。
【0016】
さらに、孔あき床パネルに対し、通気孔を除いた部分において通気性ロールカーペットを接着剤で強固に固着させることにより、通気孔上の通気性ロールカーペットと孔あき床パネルとの間(隙間)に空調用空気OAを流入させながら吹き出し給気することができ、大幅に通気抵抗を下げることができる。
【0017】
また、あらかじめ、ロールカーペットを床パネルと同じ大きさにカットしておけば、一体の孔あき床パネルと通気性ロールカーペットを個別に取り外すことができるため、床下空間に配設された空調機器の配線や支持部材などのメンテナンス、点検、床下のケーブル工事などを容易に行うことができる。
【0018】
また、応接室など、大掛かりな配線工事などが不要な場所に適用する場合には、床パネルとして例えば住宅用などの安価な床パネルを用いるようにしてもよい。これにより、さらなるコストダウンを図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る床吹出し式の空調システムを示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る床吹出し式の空調システムを示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る床吹出し式の空調システムの孔あき床パネル(通気性ロールカーペット付の孔あき床パネル)を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る床吹出し式の空調システムの孔あき床パネルを示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る床吹出し式の空調システムによる給気状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1から
図5を参照し、本発明の一実施形態に係る床吹出し式の空調システムについて説明する。
【0021】
本実施形態の床吹出し式の空調システムAは、
図1及び
図2に示すように、例えば床スラブ1上に根太や支持柱などの支持部材2を設置し、床パネル4(4a、4b)を支持部材2で支持させて縦横に配置し二重床を形成するとともに、床パネル4上にカーペット5(5a、5b)を載置して構成されている。また、二重床の床スラブ1と床パネル4の間が、空調用空気OAが流通する床下空間(床下チャンバー)6とされている。
【0022】
一方、本実施形態の床吹出し式の空調システムAでは、まず、室の床を形成する床パネル4として、複数の通気孔3を備えた孔あき床パネル4aと、通気孔3が形成されていない孔なし床パネル4bとが使用されている。例えば、本実施形態では、室の床全体の面積に対し1/10〜1/2の面積分が孔あき床パネル4aを用い、その他の面積分に孔なし床パネル4bを用いて構成されている。
【0023】
また、孔あき床パネル4aは、所定の間隔をあけて列状、格子状に配置したり、パッチ状に配置するなどして、室の床全体に対して部分的に、且つある程度均等に配置されている。さらに、孔あき床パネル4aには、例えば孔あき床パネル4aの面積に対して開口率が14%程度となるように通気孔3が貫通形成されていることが好ましい。
【0024】
さらに、本実施形態の床吹出し式の空調システムAでは、孔あき床パネル4aの上に載置するカーペット5として、従来のように通気性タイルカーペットではなく、通気性ロールカーペット5aを用いている。また、孔なし床パネル4bの上には、カーペット5として、比較的安価な非通気性ロールカーペット5bが載置されている。
【0025】
また、
図1、
図2、
図3及び
図4に示すように、孔あき床パネル4aには、外周側に接着剤7を用いて通気性ロールカーペット5aが予め強固に固着されている。すなわち、通気孔3から吐出する空調用空気OAの流通を阻害しないように孔あき床パネル4aの通気孔3周辺は接着せず、外周縁側など他の部分を接着剤7で接着して、孔あき床パネル4aに通気性ロールカーペット5aが一体に固着されている。
【0026】
一方、孔なし床パネル4b上には、隙間が生じないように非通気性ロールカーペット5bが載置されるとともに、ずれたり、浮いたりしないように、非通気性ロールカーペット5bが適宜孔なし床パネル4bに着脱可能に固着されている。
すなわち、孔なし床パネル4bには、非通気性ロールカーペット5bをグリップと接着剤で固定するなどの従来の施工方法で設置する。
【0027】
ここで、孔なし床パネル4bに対して非通気性ロールカーペット5bを着脱可能に固着する固着手段8としては、例えばピールアップセメントやピールアップ接着剤、ピールアップテープ、カーペット用のスパイク、面ファスナー(マジックテープ:登録商標)などが挙げられる。
【0028】
さらに、孔なし床パネル4b上に載置される非通気性ロールカーペット5bは、その端部側に固着手段8を配置し、この端部側を確実に着脱可能に固定し、特に、孔あき床パネル4aに固着した通気性ロールカーペット5aと隣接する端部側を固着手段8で固定しておく。
【0029】
そして、上記構成からなる本実施形態の床吹出し式の空調システムAにおいては、
図5に示すように、空調機から二重床の床下空間(床下チャンバー)6に空調用空気OAが供給されるとともに、床面に部分的に設けられた孔あき床パネル4aの複数の通気孔3から空調用空気OAが吹出す。
【0030】
ここで、冷房空調を行う場合は、孔あき床パネル4aの通気孔3から吹き上がった冷風が周囲に流れ出し、部屋全体にいきわたる。また、暖房空調を行う場合においても、孔あき床パネル4aの通気孔3から吹き上がった温風が周囲に流れ出し、部屋全体にいきわたる。このため、床全面に孔あき床パネルを用いた従来の空調システムとほぼ同一の空調環境が得られる。すなわち、冷・暖を問わず、従来と同じ空調環境を得ることができる。
【0031】
一方、本実施形態の床出し式の空調システムAでは、孔あき床パネル4a上に、通気タイルカーペットではなく、通気性ロールカーペット5aが載置されるとともに、この通気性ロールカーペット5aが孔あき床パネル4aに接着剤7で強固に固着されている。
さらに、孔あき床パネル4aに隣接する孔なし床パネル4b上の非通気性ロールカーペット5bの端部が固着手段8で固定されている。
【0032】
そして、通気性ロールカーペット5aは最も剥離しやすいが、端部が機械的に固定されているため、床面に部分的に設けられた孔あき床パネル4aの複数の通気孔3から空調用空気OAを吹き出させる際に、例えば2cm/sec〜15cm/secにしても、各床パネル4a、4bに載置された通気性ロールカーペット5a(及び非通気性ロールカーペット5b)に大きな浮きが生じたり、剥離が生じることがない。また、通気性ロールカーペット5aは最も剥離しやすい端部が機械的に固定されているため、この通気性ロールカーペット5aに剥離が発生することが確実に防止される。
【0033】
また、本実施形態の床吹出し式の空調システムAでは、大面積のロールカーペット5a、5bにおいて、通気性ロールカーペット5aが他と分離し、孔あき床パネル4aに別途接着剤7で強固に固着されている。これにより、一体の孔あき床パネル4aと通気性ロールカーペット5aを個別に取り外すことができる。このため、床下空間6に配設された空調機器の配線や支持部材2などのメンテナンス、点検等が容易に行える。
【0034】
したがって、本実施形態の床吹出し式の空調システムAにおいては、まず、非通気性ロールカーペット5bと通気性ロールカーペット5aを採用するようにしたことで、従来の通気性タイルカーペットのような形状安定性(強度)が不要で、カットも必要なく、コストダウンを図ることが可能になる。
【0035】
また、従来の空調システムと比較し、割高な通気性ロールカーペット5aと孔あき床パネル4aの使用量、割合が少なくなり、且つ非通気性ロールカーペット5bと孔なし床パネル4bに通常品を使用できるため、低コスト化を図ることが可能になる。さらに、孔あき床パネル4aの割合を少なくするほどに低コストにすることができる。
【0036】
また、孔あき床パネル4a上の通気性ロールカーペット5aの外周や、孔あき床パネル4aの周囲の通気性ロールカーペット5aの端部側を、強固な接着剤7や固着手段8で孔あき床パネル4aや孔なし床パネル4bに固着するようにしている。且つ、大面積の通気性ロールカーペット5aの剥離しやすい端部を固着手段(グリップ)8で固定するようにしている。このため、確実に通気性ロールカーペット5aの浮き・剥離を防止できる。これにより、床下圧力を増大することが可能になるとともに、空調用空気OAの通気孔3からの風速、空気量を増大させることが可能になる。
【0037】
さらに、孔あき床パネル4aに対し、通気孔3を除いた部分において通気性ロールカーペット5aを接着剤7で強固に固着させることにより、通気孔3上の通気性ロールカーペット5aと孔あき床パネル4aとの間(隙間)に空調用空気OAを流入させながら吹き出し給気することができ、大幅に通気抵抗を下げることができる。
【0038】
また、一体の孔あき床パネル4aと通気性ロールカーペット5aを個別に取り外すことができるため、床下空間6に配設された空調機器の配線や支持部材2などのメンテナンス、点検、床下のケーブル工事などを容易に行うことができる。
【0039】
また、応接室など、大掛かりな配線工事などが不要な場所に適用する場合には、床パネルとして例えば住宅用などの安価な床パネルを用いるようにしてもよい。これにより、さらなるコストダウンを図ることが可能になる。
【0040】
以上、本発明に係る床吹出し式の空調システムの一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 床スラブ
2 支持部材
3 通気孔
4a 孔あき床パネル
4b 孔なし床パネル
5a 通気性ロールカーペット
5b 非通気性ロールカーペット
6 床下空間
7 接着剤
8 固着手段(グリップ、ピールアップセメントなど)
A 床吹出し式の空調システム