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特開2015-232467ラテラルフロー用テストストリップ、分析システム、及びラテラルフロー用テストストリップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232467(P2015-232467A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ラテラルフロー用テストストリップ、分析システム、及びラテラルフロー用テストストリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   G01N33/543 525G
   G01N33/543 521
   G01N33/543 501M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-118923(P2014-118923)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】新井 憲彰
(57)【要約】
【課題】従来技術と比較して、より強度が高いシグナルを得ることを可能とするラテラルフロー用テストストリップを提供する。
【解決手段】ラテラルフロー用テストストリップ(1)は、毛細管現象を利用して、滴下された試料を、サンプルパッド(11)、結合パッド(12)、メンブレン(13)、吸収パッド(14)の順に浸潤させ、内部に展開する。サンプルパッドは、滴下した試料を一定時間保持可能な部材である。結合パッドは、前記試料に含まれる分析対象物に特異的な検出対象捕捉物質が標識された粒子を乾燥状態で保持する部材である。メンブレンは、分析対象物に特異的親和性を持つ物質が固相化された検出部位を有し、標識粒子を検出する。メンブレンは、ブロッキング溶液中に浸されることなく製造された部材である。吸収パッドは、最終的に試料を吸収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細管現象を利用して試料を内部に展開するラテラルフロー用テストストリップであって、
滴下した試料を一定時間保持可能なサンプルパッドと、
前記サンプルパッドの下流に配置され、前記試料に含まれる分析対象物に特異的な検出対象捕捉物質が標識された粒子を乾燥状態で保持する結合パッドと、
前記結合パッドの下流に配置され、分析対象物に特異的親和性を持つ物質が固相化された部位を有するメンブレンと、
前記メンブレンの下流に配置され、前記試料を吸収する吸収パッドと、を備え、
前記メンブレンは、ブロッキング溶液中に浸されることなく製造された部材であることを特徴とする、ラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項2】
前記結合パッドは、前記粒子として、前記分析対象物に特異的親和性のある第一の検出対象捕捉物質が標識された標識粒子を乾燥固化状態で保持し、
前記メンブレンは、
前記分析対象物に特異的親和性のある第二の検出対象捕捉物質が固相化された部位と、
前記標識粒子の表面の前記第一の検出対象捕捉物質を検出する補足物質が固相化された部位と
を持つことを特徴とする、請求項1に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項3】
前記試料は、アルブミンを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のラテラルフロー用テストストリップを利用する分析システム。
【請求項5】
ラテラルフロー用テストストリップを製造するときに、前記ラテラルフロー用テストストリップを構成する基本部材のうち、検出対象捕捉物質を担持するメンブレンに前記検出対象捕捉物質を塗布し、
前記検出対象捕捉物質の塗布後、前記メンブレンへのブロッキング工程を実施せずに前記メンブレンを作製することを特徴とする、ラテラルフロー用テストストリップの製造方法。
【請求項6】
更に、前記メンブレンへのブロッキング工程を実施しないことで、ブロッキング溶液中への前記検出対象捕捉物質の流出を防止する、請求項5に記載のラテラルフロー用テストストリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の分析対象物の検出や濃度測定に用いられるラテラルフロー用テストストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の分析対象物を検出する従来からの手法として、免疫分析法が知られている。例えば、免疫分析法の1つであるELISA法は、高感度検出が可能であることから広く普及している。しかし、ELISA法は操作時間や反応時間に長時間を要することや、測定操作が煩雑等の問題がある。そこで近年、ELISA法に代わる免疫分析法として、抗体を固相化した支持体(メンブレン)の一端に試験溶液を吸収させて、毛細管現象を利用して、試験溶液を展開するラテラルフロー法や、抗体を固定化した支持体の膜厚方向に試験溶液を通過させるスロースルー法を利用した分析法が注目されている。
【0003】
これらの分析法の中でも特に、ラテラルフロー法は、装置(ストリップ)が小型で可搬性に優れ、ELSIAに比べて保存安定性、迅速測定、判定の容易さ、付属装置が不要等の様々な点において優れている。ラテラルフロー用テストストリップは、迅速且つ簡易に試料中の分析対象物を検出できるため、例えば、臨床分野、食品分野、環境検査等において広く応用されている。特に、妊娠検査薬におけるホルモン検出、インフルエンザ検査におけるウイルス検出、ウイルス感染おける抗体検出等で利用されている。
【0004】
関連する技術として、特許文献1にイムノクロマトグラフィー用試験片が開示されている。このイムノクロマトグラフィー用試験片は、少なくとも、被検出物と特異的に反応する特異的結合物が担持された不溶性担体と、メンブラン上に固定された被検出物と特異的に反応する特異的結合物から成る。このイムノクロマトグラフィー用試験片では、不溶性担体が牛血清アルブミン(BSA)でブロッキングされ、かつ、メンブランがカゼインでブロッキングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−133740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、従来手法では、抗体をメンブレンに固定化した後、タンパク質の非特異的吸着を防ぐために、ブロッキング工程を行うのが好ましいとされてきた。例えば、ブロッキング工程においては、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等のブロッキング剤の溶液でそのメンブレンを浸潤させた後に乾燥させる。
しかしながら、メンブレンへのブロッキング工程を行う従来手法においては、ブロッキング工程により、抗原の検出のためメンブレンに塗布した抗体がブロッキング溶液中に流出する可能性があった。そのため、分析対象物から得られるシグナル(発色や蛍光等)の強度が低下し、検出感度が低下するという問題があった。分析対象物質の濃度が低い場合、検出感度は極めて重要であり、検出感度を高める為には、得られるシグナルの強度を更に高めることが必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するため、メンブレンへのブロッキング工程を行わずに製造可能であり、ブロッキング工程を行って製造したものと比較して、より高いシグナルを得る事を可能とするラテラルフロー用テストストリップを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様に係るラテラルフロー用テストストリップは、毛細管現象を利用して、滴下された試料を、サンプルパッド、結合パッド、メンブレン、吸収パッドの順に浸潤させ、内部に展開する。サンプルパッドは、毛細管現象を利用して試料を内部に展開するラテラルフロー用テストストリップであって、滴下した試料を一定時間保持可能な部材である。結合パッドは、サンプルパッドの下流に配置され、試料に含まれる分析対象物に特異的な検出対象捕捉物質が標識された粒子を乾燥状態で保持する部材である。メンブレンは、結合パッドの下流に配置され、捕捉物質により粒子を検出する。なお、メンブレンは、ブロッキング溶液中に浸されることなく製造された部材である。吸収パッドは、メンブレンの下流に配置され、最終的に試料を吸収する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ラテラルフロー用テストストリップの製造の際にメンブレンへのブロッキング工程が不要であるため、メンブレンはブロッキング物質を含有せず、メンブレンに塗布した抗体がブロッキング溶液中に流出しない。そのため、分析対象物の検出において、メンブレンへのブロッキング工程を行って製造した従来のラテラルフロー用テストストリップと比較して、より強度が高いシグナルを得る事が可能となる。これにより、より分析対象物の検出感度を高める事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るラテラルフロー用テストストリップの基本構造図である。
図2】本発明の一実施形態に係るメンブレンの基本構造図である。
図3】本発明の一実施形態に係るテストストリップチップの基本構造図である。
図4】実施例におけるBSA試料中のAFP抗原検出結果の目視図である。
図5】実施例におけるBSA試料中のAFP抗原検出結果を定量化した図である。
図6】実施例における市販血清試料中のAFP抗原検出結果の目視図である。
図7】実施例における市販血清試料中のAFP抗原検出結果を定量化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
(ラテラルフロー用テストストリップの基本構造)
図1に示すように、本実施形態に係るラテラルフロー用テストストリップ1は、サンプルパッド11と、結合パッド12と、メンブレン13と、吸収パッド14の4種の部材を有し、これらの4種の部材がバッキングシート10を介して直列に連結され、一体化したものである。例えば、ラテラルフロー用テストストリップの幅は、1.5mm以上5mm以下である。
【0012】
サンプルパッド11は、滴下した試料を一定時間保持可能な試料滴下部材である。例えば、サンプルパッド11に滴下する分析対象物を含む試料の体積は、25μL以上100μL以下である。また、試料は、アルブミン又はこれに相当するタンパク質を含有する。
結合パッド12は、サンプルパッド11の下流(試料が流れる方向)に配置され、試料に含まれる分析対象物に特異的な検出対象捕捉物質が標識された粒子を乾燥状態で保持する。ここでは、試料に含まれる分析対象物に特異的親和性のある第一の検出対象捕捉物質が標識された粒子(標識粒子)を乾燥固化状態で保持する。例えば、標識粒子は、平均粒径20nm以上100nm以下の金コロイド粒子である。
【0013】
メンブレン13は、結合パッド12の下流に配置され、検出対象捕捉物質が固相化された判定部を持つメンブレンである。図2に示すように、メンブレン13は、判定部として、テストライン13aと、コントロールライン13bを持つ。
テストライン13aは、抗原を検出する検出対象捕捉物質が固相化された部位である。ここでは、分析対象物に特異的親和性のある第二の検出対象捕捉物質が固相化されている。例えば、第二の検出対象捕捉物質は、線状に固定化されている。
【0014】
コントロールライン13bは、粒子表面に備わる抗体を検出する検出対象捕捉物質が固相化された部位である。ここでは、標識粒子の表面の検出対象捕捉物質を検出する補足物質が固相化された部位である。
吸収パッド14は、メンブレン13の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を最終的に吸収する。
【0015】
図3に示すように、本実施形態に係るラテラルフロー用テストストリップ1は、テストストリップチップ2に組み込むことが可能である。テストストリップチップ2は、ラテラルフロー用テストストリップ1の他に、サンプル滴下部20を有する。サンプル滴下部20は、サンプルパッド11に試料を滴下するための開口部である。例えば、テストストリップチップ2においてサンプル滴下部20に滴下した試料は、ラテラルフロー用テストストリップ1において毛細管現象によりサンプルパッド11、結合パッド12、メンブレン13の順に浸潤して、テストライン13a及びコントロールライン13bで、検出対象捕捉物質との抗原抗体反応等により標識粒子が検出される。テストライン13aにおいては、分析対象物と第一の検出対象捕捉物質と第二の検出対象捕捉物質との複合体が形成されることにより、検出強度が分析対象物の濃度依存的に上昇する。また、コントロールライン13bにおいては、標識粒子が毛細管現象にて流れてきたときに、標識粒子の表面に結合した第一の検出対象捕捉物質を検出する。このように、テストライン13aとコントロールライン13bは、メンブレン13における判定部となる。
【0016】
標識粒子が判定部へ集積する事により、集積した標識粒子に由来する発色や蛍光等のシグナルの強度を指標として分析対象物の有無や濃度を判定することが可能となる。例えば、標識物質が金コロイドの場合、赤色の呈色として観察され、被検物質の有無、若しくは濃度等を把握することができる。なお、標識物質としては、金コロイドに限らず、各種発色物質や発光物質、蛍光物質等を用いることができる。
【0017】
標識粒子は、金コロイド、銀コロイド、鉄コロイド、アルミニウムコロイド、又は白金コロイドを含む金属コロイド粒子、又は高分子化合物を材料とする粒子であることとしても良い。例えば、粒子が金コロイドの場合、赤色の呈色として観察され、分析対象物の有無、若しくは濃度等を把握することができる。また、濃度測定方法において、高分子化合物を材料とする粒子は、蛍光色素内包粒子又は可視色素内包粒子であることとしても良い。すなわち、標識粒子として、各種発色物質や発光物質、蛍光物質を用いることもできる。
【0018】
また、蛍光色素内包粒子に内包された蛍光色素は、二価のマンガン、鉛、アンチモン、セリウム、三価のセリウム、三価のクロム、二価又は三価の鉄、三価又は四価のチタン、銅、銀、二価のサマリウム、二価又は三価のユーロピウム、三価のテルビウム、三価のジスプロシウム、三価のホルミウム、三価のエルビウム、ウラニル化合物、ルテニウム化合物、錫化合物、タリウム化合物、ビスマス化合物、タングステン酸化合物、モリブデン酸化合物、硫黄、バナジウム化合物、ランタン化合物、プラセオジム化合物、ネオジム化合物、プロメチウム化合物、ガドリニウム化合物、ツリウム化合物、イッテルビウム化合物、ルテチウム化合物の群から選ばれる少なくとも1つの物質を含んだ色素とする事ができる。
【0019】
本実施形態で使用される試料は、生体物質、合成物質等あらゆる物質を分析対象物とする事ができる。分析対象物を含む試料溶液としては、例えば、血液、血清、尿等の生体由来の溶液、自然環境から採取した水や土壌を含む溶液、これらを用いて調整して得た溶液等、任意の物を用いることができる。
従来、メンブレン13の製造時にブロッキングする工程が必要であった。メンブレンへのブロッキング工程では、ブロッキング溶液中にメンブレン13を浸漬していた。そのため、工程中で、メンブレン13に塗布してあった抗体がブロッキング溶液中に流出している可能性があった。このため、従来のラテラルフロー用テストストリップでの感度が低くなっている可能性があった。
【0020】
本実施形態では、メンブレンへのブロッキング工程を行わずにラテラルフロー用テストストリップを作製したところ、従来よりも高感度に検出することができた。
(ラテラルフロー用テストストリップの形状)
ラテラルフロー用テストストリップの形状は、滴下する試料がラテラルフロー用テストストリップ中を毛細管現象により移動することができる限り、特に制限を受けない。例えば、サンプルパッド11、結合パッド12、メンブレン13、吸収パッド14の4種の部材が、基板となるバッキングシート10上にこの順番で一方向に直列連結して固定化された構造が代表的である。各部材をバッキングシート10に固定化した後、そのバッキングシート10を裁断機で2mm以上5mm以下の幅に裁断してラテラルフロー用テストストリップとするのが好ましい。
【0021】
(4種の部材及びシートの詳細)
以下、本実施形態に係るラテラルフロー用テストストリップを構成する上記4種の部材及びシートの詳細について説明する。
(1)サンプルパッド
サンプルパッド11は、滴下された分析対象物を含む液体試料を一定時間保持する部材である。サンプルパッド11としては、セルロースを素材としたものを使用するのが好ましい。例えば、サンプルパッド11として、「Cellulose Fiber Sample Pad」(Millipore社製)等が挙げられる。また、滴下された試料によりpHが異なることを鑑み、サンプルパッド11に緩衝液を浸潤させて乾燥させた後に、そのサンプルパッド11を使用するのが好ましい。
【0022】
(2)結合パッド
結合パッド12は、分析対象物に対する標識粒子が乾燥固化された部材であり、サンプルパッド11から毛細管現象により移動してきた試料に含まれる分析対象物が抗原抗体反応等の特異的認識反応で標識粒子と結合される部分である。結合パッド12の材質は、ガラス繊維で不織状のものが好ましい。例えば、結合パッド12として、「Glass Fiber Pad」(Millipore社製)等が挙げられる。なお、上述の分析対象物と標識粒子に備わる検出対象捕捉物質との反応は、物理的親和性、化学的親和性、化学結合、免疫学的方法のいずれか1つを利用して行われるものである。
【0023】
結合パッド12における単位面積(cm)当たりの標識粒子の含有量は、特に制限はないが、1μg以上4μg以下であることが好ましい。また、結合パッド12への標識粒子の浸潤方法としては、例えば、標識粒子を懸濁させ分散させた液体を、結合パッド12に塗布、滴下又は噴霧した後に、その結合パッド12を乾燥させる方法が好ましい。また、標識粒子に備わる検出対象捕捉物質としては、例えば抗体が挙げられ、中でも、マウスIgG、ヤギIgGの他、例えば、ウサギIgG、ニワトリIgY、マウスIgE、ヒトIgG、ヒトIgE等が好ましい。
【0024】
(3)メンブレン
メンブレン13は、標識粒子と分析対象物との複合体、標識粒子及び試料が毛細管現象によって移動する部材であり、固定化抗体−分析対象物−標識粒子からなる免疫反応が行われる判定部(テストライン13a)と、固定化抗体−標識粒子からなる免疫反応が行われる判定部(コントロールライン13b)を有している。上述の分析対象物と検出対象捕捉物質との反応は、物理的親和性、化学的親和性、化学結合、免疫学的方法のいずれか1つを利用して行われるものである。
【0025】
メンブレン13は、タンパク質を物理吸着可能な素材で構成されたもの、特にニトロセルロースで構成されたものが好ましい。例えば、メンブレン13として、「Hi−Flow Plus HF120」(Millipore社製)等が挙げられる。上記メンブレン13における判定部の形状としては、局所的に捕捉用抗体が固定化されている限り特に制限はなく、例えば、ライン状、円状、帯状等が挙げられる。その形状の中でも、幅0.5以上2.0mm以下のライン状であることが好ましく、また、1cmにつき抗体量が0.1以上2μg以下であることが好ましい。
【0026】
メンブレン13に備わる抗体としては、上述の抗体の中でも、マウスIgG、ヤギIgGの他、例えば、ウサギIgG、ニワトリIgY、マウスIgE、ヒトIgG、ヒトIgE等が好ましい。例えば、標識粒子にマウスIgGが表面修飾されている場合は、ヤギ抗マウスIgG抗体が固定化された判定部をコントロールライン13bとして用いることができる。
【0027】
テストライン13aにおいては、固定化抗体−分析対象物−標識粒子からなる免疫反応により、形成された複合体(分析対象物−標識粒子)が捕捉される。そして、このテストライン13aで、捕捉された標識粒子に由来する発色や蛍光等(具体的には、蛍光、発光、呈色、着色等)のシグナルの強度により分析対象物の有無を判定、すなわち陽性・陰性を判定する。一方、コントロールライン13bにおいては、固定化抗体−標識粒子からなる免疫反応により、試料の移動を確認できる。こうして、判定部に標識粒子が濃縮され、シグナルを目視的に又は検出機器を用いて検出、判定できる。
【0028】
(4)吸収パッド
吸収パッド14は、毛細管現象でメンブレン13を移動してきた試料及び標識粒子を吸収し、常に一定の流れを生じさせるための部材である。吸収パッド14の材質としては、セルロース素材の繊維状のものが好ましい。例えば、吸収パッド14として、「Cellulose Absorbent Pad」(Pall社製)等が挙げられる。
【0029】
(5)バッキングシート
バッキングシート10は、上記のサンプルパッド11、結合パッド12、メンブレン13、吸収パッド14の4種の部材を固定化させるための粘着性を有したシートである。例えば、バッキングシート10として、「AR9020」(Adhesives Research社製)等が挙げられる。
【0030】
(シグナルの検出方法)
以下、上記のテストライン13aで、捕捉された標識粒子に由来するシグナルの検出方法について説明する。
上記のラテラルフロー用テストストリップにおいて、分析対象物と、標識粒子との反応で生じるシグナルは、光学的な方法で検出するのが好ましい。光学的な方法としては、例えば反射光度又は蛍光検出、発光検出、若しくは電気化学発光等が挙げられる。より詳しくは、赤色系/青色系を経時的に検出できる装置としては、「イムノクロマトリーダC10066−10」(浜松ホトニクス社製)等が挙げられる。
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
【実施例】
【0031】
以下、本実施形態について、実施例及び比較例を示して詳細に説明する。但し、実際には、本実施形態は、下記の実施例に限定されるものではない。
(1)抗体調整
例えば分析対象物をAFP(α―fetoprotein:肝臓癌特異抗原)とした場合について、このAFPを検出する為、メンブレン固相化抗体としてマウスモノクローナル抗AFP抗体(Fitzgerald社製)を使用した。また、コントロールラインには、抗マウスイムノグロブリン抗体(Dako社製)を使用した。この2種の抗体を50mMのリン酸緩衝液(pH:7.4)で透析カートリッジを用いて4℃で透析した。透析後の抗体濃度を測定し、抗AFP抗体は1mg/mL、抗マウスイムノグロブリン抗体は0.1mg/mLとなるようそれぞれ調整した。
【0032】
(2)金コロイド溶液の調整
前述とはエピトープの異なるマウスモノクローナル抗AFP抗体(Fitzgerald社製)を透析し、リン酸緩衝液(pH:7.4)で60μg/mLに調整した。次に、金コロイド(粒子径40nm、田中貴金属工業社製)溶液9mLとリン酸二水素カリウム溶液(pH:8.0)1mLとの混合液に本抗体溶液を加え、ピペッティングの後、室温で15分間静置し、1%PEG20,000溶液及び10%BSA溶液を加えて混合した。この混合溶液を遠心力RCF8000×gで15分間遠心分離した後に上清(上澄み)を廃棄し、結合パッド塗布液を加えて攪拌・超音波処理し、再び遠心分離した後に廃棄した。この操作を2回繰り返し金コロイド溶液とした。
【0033】
(3)結合パッドの作製
1.5mLのチューブに結合パッド塗布液と金コロイド溶液とを加え、28kHzで超音波処理した後、計900μLの金コロイド塗布溶液を10mm×150mmのガラスファイバーパッド「Glass Fiber Pad」(Millipore社製)に滴下し、そのガラスファイバーパッドを真空減圧ポンプで減圧した環境下で18時間乾燥させた。
【0034】
(4)サンプルパッドの作製
セルロースを素材としたサンプルパッド「CFSP203000」(Millipore社製)を1.8mm×150mmに断裁し、50mMのTris−HCl(pH:7.4)を1mL滴下して、50℃で1時間乾燥させた。
(5)メンブレンの作製
メンブレン「Hi−Flow Plus HF120」(Millipore社製)に抗体塗布機「XYZ3060」(BioDot社製)で、上記(1)で調整した抗体(メンブレン固相化抗体)を1μL/cmで塗布した。メンブレンへのブロッキング工程を行わない場合には、抗体塗布後、50℃にて30分間乾燥させた。反対に、メンブレンへのブロッキング工程を行う場合には、抗体塗布後、50℃にて30分間乾燥させた後、ブロッキング工程として、0.5%乳性カゼイン溶液中でブロッキングし、スクロースや界面活性剤を含む洗浄液で洗浄、安定化した後、一晩室温にて乾燥させた。
【0035】
(6)テストストリップチップの作製
乾燥させたメンブレン、吸収パッド「Cellulose Absorbent Pad #111」(Pall社製)、結合パッド、サンプルパッドのそれぞれをバッキングシート(Adhesive Research社製)に貼り付けた。そのバッキングシートをカッティング機器「CM4000」(Bio Dot社製)にて5mm幅で切断してラテラルフロー用テストストリップとした。更に、そのラテラルフロー用テストストリップをハウジングケースに収めてテストストリップチップとした。
【0036】
(7)試料の調整
分析対象物であるAFPはAFPキャリブレータ(sysmex社製)を使用した。この抗原溶液を5%BSA溶液若しくは市販血清にて希釈し、測定用試料とした。
(8)分析対象物の測定
上記(6)で作製したテストストリップチップを水平に置き、上記(7)で調整した試料溶液を1つのテストストリップチップにつき100μL滴下した。滴下後、「イムノクロマトリーダC10066−10」(浜松ホトニクス社製)を用いて試料滴下後20分時点でのデータを取得した。測定データは、ラテラルフロー用テストストリップの展開方向にスキャニングして得られたピークにおけるシグナル強度を測定データとした。
【0037】
(実施例1)
メンブレンへのブロッキング工程を行わずに作製したラテラルフロー用テストストリップを収納したテストストリップチップを使用し、5%BSAにて調整したAFP抗原を含む試料を用いて、測定を実施した。なお、AFP抗原の濃度は0ng/mL、50ng/mLでそれぞれ実施した。
【0038】
(比較例1)
既存方法に従い、メンブレンへのブロッキング工程を行って作製したラテラルフロー用テストストリップを収納したテストストリップチップを使用し、5%BSAにて調整したAFP抗原を含む試料を用いて、測定を実施した。なお、AFP抗原の濃度は0ng/mL、50ng/mLでそれぞれ実施した。実施例1及び比較例1の結果について、図4に目視概観写真を示し、図5に測定数値を示す。
【0039】
(実施例2)
メンブレンへのブロッキング工程を行わずに作製したラテラルフロー用テストストリップを収納したテストストリップチップを使用し、市販血清にて調整したAFP抗原を含む試料を用いて、測定を実施した。なお、AFP抗原の濃度は0ng/mL、50ng/mLでそれぞれ実施した。
【0040】
(比較例2)
メンブレンへのブロッキング工程を行って作製したラテラルフロー用テストストリップを収納したテストストリップチップを使用し、市販血清にて調整したAFP抗原を含む試料を用いて、測定を実施した。なお、AFP抗原の濃度は0ng/mL、50ng/mLでそれぞれ実施した。実施例2及び比較例2の結果について、図6に目視概観写真を示し、図7に測定数値を示す。
【0041】
上記の結果、メンブレンへのブロッキング工程を行わずに作製したラテラルフロー用テストストリップを収納したテストストリップチップを使用することにより、メンブレンへのブロッキング工程を行って作製したラテラルフロー用テストストリップを収納したテストストリップチップを使用した場合よりも、擬似血清として用いたBSA溶液、血清中の分析対象物の測定において、より強度が高いシグナルを得られていることが明らかになった。なお、0ng/mLの値(バックグラウンド)についても大きな値の上昇は見られず、S/N比の観点からも本手法が有効である事が言える。また、S/N比が良好であり、分析対象物から得られるシグナルの強度が上昇したことを鑑みると、検出感度の観点からも、より定量分析に適する手法であるということが言える。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本実施形態に係るラテラルフロー用テストストリップやテストストリップチップは、試料の判定を行う分析システムや診断システム等において利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1… ラテラルフロー用テストストリップ
10… バッキングシート
11… サンプルパッド
12… 結合パッド
13… メンブレン
13a… テストライン
13b… コントロールライン
14… 吸収パッド
2… テストストリップチップ
20… サンプル滴下部
図1
図2
図3
図5
図7
図4
図6