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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232470(P2015-232470A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】グロー放電発光分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/67 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   G01N21/67 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-118952(P2014-118952)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(72)【発明者】
【氏名】高原 晃里
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA07
2G043BA09
2G043BA11
2G043BA14
2G043CA01
2G043EA09
2G043FA06
2G043FA07
2G043JA01
2G043LA01
2G043NA05
2G043NA06
2G043NA11
(57)【要約】
【課題】校正試料を用いず検量線を校正するグロー放電発光分析方法を提供する。
【解決手段】本発明のグロー放電発光分析方法は、希ガスG1を放電ガスとして用いて、複数の標準試料5を測定して原検量線を作成して記憶する第1工程と、希ガスG1と分析対象元素ガスとの混合ガスG2を放電ガスとして用い、混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、原検量線から分析対象元素を定量し、その定量値をみなし標準試料定量値として記憶する第2工程と、第2工程の後に原検量線の校正のために、混合ガスG2中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度および第2工程で記憶した混合ガス中の分析対象元素のみなし標準試料定量値に基づいて原検量線を校正して校正検量線を作成する第3工程と、未知試料5を測定し、校正検量線から分析対象元素を定量する第4工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をグロー放電でスパッタリングして試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度に基づいて試料中の分析対象元素を定量するグロー放電発光分析方法であって、
希ガスを放電ガスとして用いて、分析対象元素の定量値が既知で相異なる複数の標準試料を測定して、標準試料における分析対象元素の既知の定量値と分析対象元素から発生する発光強度との相関関係である検量線を作成し、その検量線を原検量線として記憶する第1工程と、
分析対象元素を含む分析対象元素ガスと前記希ガスとの混合ガスを放電ガスとして用い、放電ガスとして用いた前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記原検量線に適用して、分析対象元素を定量し、その定量値をみなし標準試料定量値として記憶する第2工程と、
前記第2工程の後に前記原検量線の校正のために、前記第2工程で用いた前記混合ガスを放電ガスとして用い、前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度および前記第2工程で記憶した前記混合ガス中の分析対象元素のみなし標準試料定量値に基づいて前記原検量線を校正して校正検量線を作成する第3工程と、
前記希ガスを放電ガスとして用いて、未知試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記校正検量線に適用して未知試料中の分析対象元素を定量する第4工程と、
を有するグロー放電発光分析方法。
【請求項2】
試料をグロー放電でスパッタリングして試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度に基づいて試料中の分析対象元素を定量するグロー放電発光分析方法であって、
希ガスを放電ガスとして用いて、分析対象元素の定量値が既知で相異なる複数の標準試料を測定して、標準試料における分析対象元素の既知の定量値と分析対象元素から発生する発光強度との相関関係である検量線を作成し、その検量線を原検量線として記憶する第1工程と、
分析対象元素を含む分析対象元素ガスと前記希ガスとの混合ガスを放電ガスとして用い、放電ガスとして用いた前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記原検量線に適用して、分析対象元素を定量し、その定量値をみなし標準試料定量値として記憶する第2工程と、
前記第2工程の後に前記原検量線の校正のために、前記希ガスを放電ガスとして用い、前記希ガスから発生する分析対象元素の分析線の発光強度を測定して、その発光強度をブランク値として記憶するとともに、前記第2工程で用いた前記混合ガスを放電ガスとして用い、前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定して、その発光強度を記憶し、記憶した前記ブランク値および記憶した前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度ならびに前記第2工程で記憶した前記混合ガス中の分析対象元素のみなし標準試料定量値に基づいて前記原検量線を校正して校正検量線を作成する第3工程と、
前記希ガスを放電ガスとして用いて、未知試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記校正検量線に適用して未知試料中の分析対象元素を定量する第4工程と、
を有するグロー放電発光分析方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のグロー放電発光分析方法において、
前記分析対象元素ガスは、水素ガス、酸素ガス、窒素ガス、メタンガス、アセチレンガス、四フッ化炭素ガス、四塩化炭素ガスおよび六フッ化硫黄ガスの少なくとも1つを含むガスであるグロー放電発光分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料をグロー放電でスパッタリングして試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度に基づいて試料中の分析対象元素を定量するグロー放電発光分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グロー放電発光分析方法においては、予め標準試料を用いて検量線を作成し、測定時のスパッタリング時間に対する強度に基づいて試料中の分析対象元素を定量している。この標準試料には、鉄、亜鉛、アルミニウムなどを基材とした標準物質が一般に用いられている。さまざまな原因により検量線作成時と未知試料測定時とで分析感度が変動し、この感度変動を補正する必要がある。そこで、検量線作成時に用いた標準試料を用いて分析装置の感度ドリフトを補正するグロー放電発光分析方法がある(特許文献1)。また、検量線作成時に用いた標準試料のうちの1〜2個を検量線校正用の校正試料として測定し、その測定値に基づいて校正した検量線を用いて未知試料を定量して分析感度の変動を補正することが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−243844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グロー放電発光分析方法は試料をスパッタリングする、いわゆる破壊分析であるため、同じ標準試料を長期間にわたって使用することができない。校正試料は検量線を校正する時に用いる必要があるが、容易に入手できない、あるいは高価であるため日常的に使用できない校正試料(標準試料)がある。
【0005】
そこで本発明は、容易に入手できない、あるいは高価であるため日常的に使用できない校正試料(標準試料)を使用しないで検量線を簡易に校正して、試料中の分析対象元素を高精度に定量するグロー放電発光分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成のグロー放電発光分析方法は、試料をグロー放電でスパッタリングして試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度に基づいて試料中の分析対象元素を定量するグロー放電発光分析方法であって、希ガスを放電ガスとして用いて、分析対象元素の定量値が既知で相異なる複数の標準試料を測定して、標準試料における分析対象元素の既知の定量値と分析対象元素から発生する発光強度との相関関係である検量線を作成し、その検量線を原検量線として記憶する第1工程と、分析対象元素を含む分析対象元素ガスと前記希ガスとの混合ガスを放電ガスとして用い、放電ガスとして用いた前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記原検量線に適用して、分析対象元素を定量し、その定量値をみなし標準試料定量値として記憶する第2工程と、を有する。
【0007】
本発明の第1構成のグロー放電発光分析方法は、さらに、前記第2工程の後に前記原検量線の校正のために、前記第2工程で用いた前記混合ガスを放電ガスとして用い、前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度および前記第2工程で記憶した前記混合ガス中の分析対象元素のみなし標準試料定量値に基づいて前記原検量線を校正して校正検量線を作成する第3工程と、前記希ガスを放電ガスとして用いて、未知試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記校正検量線に適用して未知試料中の分析対象元素を定量する第4工程と、を有する。
【0008】
本発明の第1構成のグロー放電発光分析方法によれば、容易に入手できない、あるいは高価であるため日常的に使用できない校正試料(標準試料)を使用しないで、分析対象元素を含む分析対象元素ガスと希ガスとの混合ガスを放電ガスとして用い、放電ガスとして用いた前記混合ガスの分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記原検量線に適用して、分析対象元素を定量し、その定量値をみなし標準試料定量値として検量線を校正するので、検量線を簡易に校正でき、試料中の分析対象元素を高精度に定量することができる。
【0009】
本発明の第2構成のグロー放電発光分析方法は、試料をグロー放電でスパッタリングして試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度に基づいて試料中の分析対象元素を定量するグロー放電発光分析方法であって、希ガスを放電ガスとして用いて、分析対象元素の定量値が既知で相異なる複数の標準試料を測定して、標準試料における分析対象元素の既知の定量値と分析対象元素から発生する発光強度との相関関係である検量線を作成し、その検量線を原検量線として記憶する第1工程と、分析対象元素を含む分析対象元素ガスと前記希ガスとの混合ガスを放電ガスとして用い、放電ガスとして用いた前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記原検量線に適用して、分析対象元素を定量し、その定量値をみなし標準試料定量値として記憶する第2工程と、を有する。
【0010】
本発明の第2構成のグロー放電発光分析方法は、さらに、前記第2工程の後に前記原検量線の校正のために、前記希ガスを放電ガスとして用い、前記希ガスから発生する分析対象元素の分析線の発光強度を測定して、その発光強度をブランク値として記憶するとともに、前記第2工程で用いた前記混合ガスを放電ガスとして用い、前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度を測定して、その発光強度を記憶し、記憶した前記ブランク値および記憶した前記混合ガス中の分析対象元素から発生する発光強度ならびに前記第2工程で記憶した前記混合ガス中の分析対象元素のみなし標準試料定量値に基づいて前記原検量線を校正して校正検量線を作成する第3工程と、前記希ガスを放電ガスとして用いて、未知試料中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記校正検量線に適用して未知試料中の分析対象元素を定量する第4工程と、を有する。
【0011】
本発明の第2構成のグロー放電発光分析方法によれば、容易に入手できない、あるいは高価であるため日常的に使用できない校正試料(標準試料)を使用しないで、希ガスと、分析対象元素を含む分析対象元素ガスと希ガスとの混合ガスとを放電ガスとして用い、放電ガスとして用いた前記混合ガスの分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を前記原検量線に適用して、分析対象元素を定量し、その定量値をみなし標準試料定量値とし、前記希ガスから発生する分析対象元素の分析線の発光強度をブランク値として原検量線を校正するので、検量線を簡易に校正でき、試料中の分析対象元素を高精度に定量することができる。
【0012】
本発明の第1構成および第2構成のグロー放電発光分析方法においては、前記分析対象元素ガスは、水素ガス、酸素ガス、窒素ガス、メタンガス、アセチレンガス、四フッ化炭素ガス、四塩化炭素ガスおよび六フッ化硫黄ガスの少なくとも1つを含むガスであるのが好ましい。この場合には、これらの分析対象元素ガスに含まれる元素である、水素、酸素、窒素、炭素、フッ素、塩素、硫黄を含有する試料の分析において、検量線を簡易に校正でき、試料中の分析対象元素を高精度に定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法に用いる装置の概略構成図である。
図2】同装置のグロー放電管の概略構成図である。
図3】標準試料の測定結果を示す図表である。
図4】本発明の第1実施形態の原検量線を示す図である。
図5】同校正検量線を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態の原検量線を示す図である。
図7】同校正検量線を示す図である。
図8】本発明の第3実施形態の原検量線を示す図である。
図9】同校正検量線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法に用いる装置は、図1に示すように、例えば、アルゴンガスである希ガスG1を導入する希ガス導入路36と、分析対象元素を含む分析対象元素ガスと希ガスG1との混合ガスであって、分析対象元素ガスの混合率が第1の混合率である第1混合ガスG2を導入する第1混合ガス導入路37と、分析対象元素を含む分析対象元素ガスと希ガスG1との混合ガスであって、分析対象元素ガスの混合率が第2の混合率である第2混合ガスG3を導入する第2混合ガス導入路38と、試料5をスパッタリングするグロー放電管1と、グロー放電管1に導入する放電ガスを希ガスG1、第1混合ガスG2、第2混合ガスG3のいずれかに切替えるガス切替バルブ45と、グロー放電管1へ放電ガスを導入する放電ガス導入路46と、グロー放電管1の放電によって試料5から発生する分析対象元素固有の光Lの強度を測定する光検出器28と、光検出器28からの信号を処理する信号処理部31とで構成されている。
【0015】
このグロー放電管1は図2に示すように、支持ブロック(試料5が当接される支持部)2と陽極ブロック3とが、Oリングなどのシール部材11を介して接合されている。陽極ブロック3は、放電ガスを供給する放電ガス供給孔3aを有しており、グロー放電空間Vが放電ガス雰囲気とされる。導入された放電ガスは、マスフローなどのガス流量調節手段39(図1)で所定の流量に調節されてグロー放電管1に導入される。グロー放電管1に導入された放電ガスによるスパッタリングにより試料5から発生する分析対象元素固有の光Lが分光器22に入射する。光検出器28からの信号を処理する信号処理部31によって、検量線の作成、未知試料中の分析対象元素の定量が行われる。
【0016】
次に、本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法について説明する。このグロー放電発光分析方法は、試料5をグロー放電でスパッタリングして試料5中の分析対象元素である水素から発生する発光強度を測定し、その発光強度に基づいて試料5中の水素を定量する分析方法である。
【0017】
本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法において原検量線を作成する第1工程について説明する。第1工程においては、ガス切替バルブ45を切り替えて、希ガス導入路36から、例えばアルゴンガスである希ガスG1をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用いて、シリコンウエーハに既知量の水素が注入された5つの標準試料5(A、B、C、D、E)を順に測定する。その測定結果を図3に示す。信号処理部31が標準試料5における水素の定量値と水素から発生する発光強度との相関関係である検量線を作成し、その検量線を原検量線として記憶する。記憶した原検量線を図4に示す。原検量線の横軸は面密度(10−8g/cm)で表された水素量(H量)であり、縦軸は水素の発光強度(GD−OES H強度)である。図4の黒色四角形印が5つの標準試料5(A、B、C、D、E)のプロット点を示している。図4の丸印については後記する。
【0018】
本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法においてみなし標準試料定量値を記憶する第2工程について説明する。第2工程においては、標準試料5に換えて、例えば、純銅のスパッタ材50を試料取付位置に配置する。スパッタ材50は分析対象元素がグロー放電発光分析方法によって検出されないものが望ましい。次に、ガス切替バルブ45を切り替えて、第1混合ガス導入路37から、希ガスG1と分析対象元素ガスである水素ガスとの混合ガスであって、水素ガスの混合率が1.0体積%である第1混合ガスG2をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用い、放電ガス中の水素から発生する発光強度0.25を測定し、その発光強度0.25を第1工程で記憶した原検量線に適用して水素を定量し、その定量値を第1みなし標準試料定量値2.55×10−8g/cmとして信号処理部31に記憶する。水素ガスの混合率は放電ガスを100体積%とした混合率である。
【0019】
続いて、ガス切替バルブ45を切り替えて、第1混合ガス導入路38から、水素ガスの混合率が2.0体積%である第2混合ガスG3をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用い、放電ガス中の水素から発生する発光強度0.51を測定し、その発光強度0.51を第1工程で記憶した原検量線に適用して水素の定量値を求め、その定量値を第2みなし標準試料定量値5.26×10−8g/cmとして信号処理部31に記憶する。図4に示す原検量線上の丸印は第1、第2みなし標準試料定量値を示している。
【0020】
本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法において校正検量線を作成する第3工程について説明する。第3工程においては、第2工程と同様にスパッタ材50を試料取付位置に配置して、第2工程で用いた混合ガスと同じ混合率である第1混合ガスG2および第2混合ガスG3を用いて校正検量線を作成する。第1混合ガスG2をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用い、放電ガス中の水素から発生する発光強度0.17を測定し、その発光強度0.17を第1混合ガスG2の発光強度として信号処理部31に記憶する。次に、第2混合ガスG3をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用い、放電ガス中の水素から発生する発光強度0.34を測定し、その発光強度0.34を第2混合ガスG3の発光強度として信号処理部31に記憶する。
【0021】
記憶した第1混合ガスG2の発光強度0.17、第2混合ガスG3の発光強度0.34、第2工程で記憶した第1みなし標準試料定量値2.55×10−8g/cmおよび第2みなし標準試料定量値5.26×10−8g/cmを用い、第1混合ガスG2と第2混合ガスG3との測定点をプロットして校正検量線を作成する。作成した校正検量線を図5に示す。この校正検量線において、2つの丸印は第1混合ガスG2と第2混合ガスG3とのプロット点である。
【0022】
本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法において未知試料5中の分析対象元素を定量する第4工程について説明する。第4工程においては、ガス切替バルブ45を切り替えて、希ガス導入路36から希ガスG1をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用いて、例えば、DLC膜(ダイアモンドライクカーボン膜)である未知試料5を測定し、未知試料5中の水素から発生する発光強度0.45を校正検量線に適用して、未知試料5中の水素の定量値、7.03×10−8g/cmを求める。
【0023】
本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法によれば、容易に入手できない、あるいは高価であるため日常的に使用できない校正試料を使用しないで、分析対象元素を含む分析対象元素ガスと希ガスG1との混合ガスG2、G3を放電ガスとして用い、混合ガスG2、G3について、混合ガスG2、G3中の分析対象元素から発生する発光強度を測定し、その発光強度を原検量線に適用して、分析対象元素を定量し、その定量値をみなし標準試料定量値として検量線を校正するので、検量線を簡易に校正でき、試料中の分析対象元素を高精度に定量することができる。
【0024】
原検量線で測定した未知試料5の定量値と校正検量線で測定した未知試料5の定量値との一致度の検証を行った。その結果について以下に説明する。第1工程の直後に、ガス切替バルブ45を切り替えて、希ガス導入路36から、第1工程で用いた同じ希ガス(アルゴンガス)G1をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用いて、第4工程で測定した未知試料5と同じ未知試料5を測定し、未知試料5中の水素から発生する発光強度0.67を原検量線に適用して、未知試料5中の水素の定量値、6.92×10−8g/cmを求めておいた。未知試料5の水素の定量値について、原検量線での定量値6.92×10−8g/cmと校正検量線での定量値7.03×10−8g/cmとはよく一致しており、校正検量線によって正しく校正されたことが分かる。
【0025】
本発明の第1実施形態のグロー放電発光分析方法においては、校正検量線の作成に水素ガスの混合率が1.0体積%である第1混合ガスG2と混合率が2.0体積%である第2混合ガスG3とを用いたが、これらの混合率に限らず、所望の混合率の混合ガスを用いてもよい。また、2種類の混合ガスに限らず、混合率の相異なる3種類以上の混合ガスを用いてもよい。
【0026】
次に、本発明の第2実施形態のグロー放電発光分析方法について説明する。まず、第1実施形態のグロー放電発光分析方法の第1工程と同様にして5つの標準試料5(A、B、C、D、E)を順に測定し、それらの測定点と原点とによって原点を通る検量線を作成し、その検量線を原検量線として記憶する。記憶した原検量線を図6に示す。
【0027】
第2工程においては、第1実施形態のグロー放電発光分析方法の第2工程と同様にして純銅のスパッタ材50を試料取付位置に配置する。次に、水素ガスの混合率が2.0体積%である第2混合ガスG3を放電ガスとして用い、放電ガス中の水素から発生する発光強度0.51を測定し、その発光強度0.51を第1工程で記憶した原検量線に適用して水素の定量値を求め、その定量値を第3みなし標準試料定量値5.26×10−8g/cmとして信号処理部31に記憶する。図6に示す原検量線上の丸印は第3みなし標準試料定量値を示している。
【0028】
第3工程においては、第2工程と同様にスパッタ材50を試料取付位置に配置して第2工程で用いた混合ガスと同じ混合率である第2混合ガスG3を用いて校正検量線を作成する。第2混合ガスG3をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用い、放電ガス中の水素から発生する発光強度0.34を測定し、その発光強度0.34を第2混合ガスG3の発光強度として信号処理部31に記憶する。
【0029】
記憶した第2混合ガスG3の発光強度0.34と第2工程で記憶した第3みなし標準試料定量値5.26×10−8g/cmとを用い、原点と第2混合ガスG3の測定点とをプロットして校正検量線を作成する。作成した校正検量線を図7に示す。この校正検量線において、1つの丸印は第2混合ガスG3のプロット点である。
【0030】
第4工程においては、第1実施形態のグロー放電発光分析方法の第4工程と同様にしてDLC膜である未知試料5を測定し、未知試料5中の水素から発生する発光強度0.45を校正検量線に適用して、未知試料5中の水素の定量値、7.03×10−8g/cmを求める。
【0031】
第1実施形態のグロー放電発光分析方法と同様に、原検量線で測定した未知試料5の定量値と校正検量線で測定した未知試料5の定量値との一致度の検証を行った。第1実施形態のグロー放電発光分析方法と同様にして求めておいた未知試料5の水素の定量値は6.92×10−8g/cmであり、校正検量線での定量値は7.03×10−8g/cmであり、良好な一致度を示した。
【0032】
本発明の第2実施形態のグロー放電発光分析方法においては、校正検量線の作成に水素ガスの混合率が2.0体積%である第2混合ガスG3を用いたが、この混合率に限らず、所望の混合率の混合ガスを用いてもよい。また、1種類の混合ガスに限らず、混合率の相異なる2種類以上の混合ガスを用いてもよい。
【0033】
次に、本発明の第3実施形態のグロー放電発光分析方法について説明する。まず、第1実施形態のグロー放電発光分析方法の第1工程と同様にして5つの標準試料5(A、B、C、D、E)を順に測定して検量線を作成し、その検量線を原検量線として記憶する。記憶した原検量線を図8に示す。
【0034】
第2工程においては、第1実施形態のグロー放電発光分析方法の第2工程と同様にして純銅のスパッタ材50を試料取付位置に配置する。第1混合ガス導入路38から、水素ガスの混合率が2.0体積%である第2混合ガスG3をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用い、放電ガス中の水素から発生する発光強度0.51を測定し、その発光強度0.51を第1工程で記憶した原検量線に適用して水素の定量値を求め、その定量値を第4みなし標準試料定量値5.26×10−8g/cmとして信号処理部31に記憶する。図8に示す原検量線上の丸印は第4みなし標準試料定量値を示している。
【0035】
第3工程においては、第2工程と同様にスパッタ材50を試料取付位置に配置して、希ガスG1と、第2工程で用いた混合ガスと同じ混合率である第2混合ガスG3とを用いて校正検量線を作成する。ガス切替バルブ45を切り替えて、希ガスG1を放電ガスとして用い、希ガスG1から発生する分析対象元素の分析線の発光強度0.004を測定して、その発光強度をブランク値として信号処理部31に記憶する。また、第2混合ガスG3をグロー放電管1に導入し放電ガスとして用い、放電ガス中の水素から発生する発光強度0.34を測定し、その発光強度0.34を第2混合ガスG3の発光強度として信号処理部31に記憶する。
【0036】
記憶したブランク値0.004および記憶した第2混合ガスG3の発光強度0.34ならびに第2工程で記憶した第4みなし標準試料定量値5.26×10−8g/cmを用い、ブランク値と第2混合ガスG3との測定点をプロットして校正検量線を作成する。作成した校正検量線を図9に示す。この校正検量線において、2つの丸印はブランク値と第2混合ガスG3とのプロット点である。
【0037】
第4工程においては、第1実施形態のグロー放電発光分析方法の第4工程と同様にしてDLC膜である未知試料5を測定し、未知試料5中の水素から発生する発光強度0.45を校正検量線に適用して、未知試料5中の水素の定量値、7.03×10−8g/cmを求める。
【0038】
第1実施形態のグロー放電発光分析方法と同様に、原検量線で測定した未知試料5の定量値と校正検量線で測定した未知試料5の定量値との一致度の検証を行った。第1実施形態のグロー放電発光分析方法と同様にして求めておいた未知試料5の水素の定量値は6.92×10−8g/cmであり、校正検量線での定量値は7.03×10−8g/cmであり、良好な一致度を示した。
【0039】
本発明の第3実施形態のグロー放電発光分析方法においては、校正検量線の作成に、水素ガスの混合率が2.0体積%である第2混合ガスG3を用いたが、この混合率に限らず、所望の混合率の混合ガスを用いてもよい。また、1種類の混合ガスに限らず、混合率の異なる2種類以上の混合ガスを用いてもよい。
【0040】
本発明の第1〜第3実施形態のグロー放電発光分析方法における校正検量線を作成する第3工程において、原検量線の校正のための時期は、原検量線の作成後であって、測定者が、数時間後、数日後、数か月後など検量線の校正が必要と考えるいずれかの場合であればよい。
【0041】
本発明の第1〜第3実施形態のグロー放電発光分析方法においては、定量値として、面密度を用いたが、これに限らず体積密度、含有量、含有率など試料に適合した表示方法であればよい。本発明の第1〜第3実施形態のグロー放電発光分析方法においては、希ガスG1としてアルゴンガスを用いたがアルゴンガスに限らず、ネオン、クリプトンなどの単独ガスでも、ネオン、クリプトンとアルゴンの混合物、ネオンとアルゴンの混合物、クリプトンとネオンの混合物などであってもよい。
【0042】
分析対象元素を含む分析対象元素ガスとして水素ガスを用いたが単独の水素ガスに限らず、水素ガス、酸素ガス、窒素ガス、メタンガス、アセチレンガス、四フッ化炭素ガス、四塩化炭素ガスおよび六フッ化硫黄ガスの少なくとも1つを含むガスであればよい。これらの分析対象元素ガスに含まれる元素である、水素、酸素、窒素、炭素、フッ素、塩素、硫黄の分析において、検量線を簡易に校正でき、試料5中の分析対象元素を高精度に定量することができる。希ガスG1と水素ガスとの混合ガスとして、水素ガスの混合率がそれぞれ1.0体積%と2.0体積%の混合ガスG2、G3を用いたが、混合率は0.1体積%〜4.0体積%が好ましい。
【0043】
本発明の第1〜第3実施形態のグロー放電発光分析方法においては、図1に示すグロー放電発光分析装置を用いたが、このグロー放電発光分析装置に限ったものではなく、グロー放電発光分析装置が備える混合ガス生成手段により、希ガスと分析対象元素を含む分析対象元素ガスとを所望の混合率で混合して混合ガスを生成し、その混合ガスを放電ガスとして用いて校正検量線を作成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 グロー放電管
5 試料
22 分光器
31 信号処理部
36 希ガス導入路
37 第1混合ガス導入路
38 第2混合ガス導入路
50 スパッタ材
G1 希ガス
G2 第1混合ガス
G3 第2混合ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9