【解決手段】同一位置に回転軸が配置され、文字盤11上を回動可能な複数の指針と、複数の指針を各々独立に駆動する駆動手段と、駆動手段に駆動信号を送信して指針を回動させ、文字盤11上に複数設けられた値表示部に含まれる値のうち一つを一の指針に指示させる駆動制御手段と、を備え、値表示部は、回転軸に対して同心円をなす位置に複数設けられて、値表示部の各々が表示させる数値における所定の桁の値を表し、駆動制御手段は、複数の指針に各々異なる値表示部における一の値を指示させて、この指示された一の値を所定の桁の値として組み合わせることで一の数値を表現させ、複数の指針の形状及び複数の値表示部における値の配置は、複数の指針が各々一の値を指示している場合に他の値を覆い隠さないように定められる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態のアナログ電子時計を図面に基づいて説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のアナログ電子時計1の全体の外観を示す正面図である。
第1実施形態のアナログ電子時計1は、バンド14a、14bによりユーザの腕に装着
可能な腕時計である。このアナログ電子時計1では、ケーシング10と、文字盤11と、
文字盤11の上面を塞ぐ図示略の風防とに覆われた領域に、時針2、分針3、及び、秒針
4(以降、まとめて指針2〜4とも記す)が設けられている。時針2、分針3、及び、秒
針4の回転軸は、何れも文字盤11の中央付近で同一位置となるように設けられている。
また、風防の周縁部には、ベゼル13が設けられ、ケーシング10の側面部には、3個の
ボタンB1〜B3、及び、リュウズC1が設けられている。
【0012】
文字盤11には、周縁部に時刻を表示するための時刻目盛が設けられ、この時刻目盛の
内側には、数値を示す際に用いられる値(数値標章)が配列された値表示部111が回転
軸に対して3列の同心円をなす円環上の一部分に円弧状に設けられている。3列の値表示
部111のうち、一番内側の値表示部1111には、千の位の値を順番に変化させた0か
ら9000までの10個の値が順番に配列されている。値表示部1111の外側に設けら
れた二番目の値表示部1112には、百の位の値を順番に変化させた0から900までの
10個の値が順番に配列されている。そして、一番外側の値表示部1113には、十の位
の値を順番に変化させた0〜90までの10個の値が順番に配列されている。これらの値
は、文字盤11に印刷されたものであっても良いし、彫り込まれて形成された凹部や盛り
上げられた凸部であっても良い。
即ち、値表示部111において、同心円ごとに対応する所定の桁が定められている。
【0013】
これらの値表示部1111〜1113では、12時の方向を基準方向として時計回りに
42度の方向(方位角)から12度の間隔で、それぞれ10個の数値標章が昇順で設けら
れている。
【0014】
本実施形態の時針2は、先端に中空状に設けられた選択窓部202(第1窓部)が一番
内側の値表示部1111における各値と重なる長さとなっている。時針2の選択窓部20
2は、三角形の枠形形状を示しており、この三角形の枠の内部には、値表示部1111の
数値標章のうち1つが収まって上部に露出される。なお、この選択窓部202は、中空状
に限らず、透明部材を設けたものであっても良い。
また、分針3の先端に設けられた選択窓部302は、選択窓部202と同様の形状であ
り、分針3は、選択窓部302が二列目の値表示部1112における各値と重なる長さと
なっている。また、選択窓部302より分針3の根元の部分であって値表示部1111の
値と重なる部分には、選択窓部302と別個に中空構造の透過窓部303(第2窓部)が
設けられており、分針3が値表示部1111の値を覆い隠さない形状となっている。
【0015】
また、秒針4の先端に設けられた選択窓部402は、選択窓部202、302と同様の
形状であり、秒針4は、選択窓部402が外側の値表示部1113の各値と重なる長さと
なっている。また、秒針4の選択窓部402より秒針4の根元の部分であって、値表示部
1111、1112の値と重なる部分には、選択窓部402と別個に中空構造の透過窓部
403が設けられており、秒針4が値表示部1111、1112の値を覆い隠さない形状
となっている。
【0016】
ここで、指針2〜4は、時計本体への取り付け時に、回転方向に微妙な取り付け誤差が
生じ得る。従って、選択窓部202〜402の枠形形状一杯の大きさの数値標章が文字盤
11に設けられると、取り付け誤差によって値の一部が選択窓部202〜402の枠と重
なって隠されてしまう虞がある。
【0017】
図2は、指針の形状と数値標章の配置との関係を説明する図である。
【0018】
例えば、時針2が「4」の値を指し示している場合に、時針2の取り付け誤差により時
針2が回転方向の前後に時針2f、時針2sの範囲でずれ得るとすると、「4」の値が時
針2の選択窓部202、時針2fの選択窓部202f、及び時針2sの選択窓部202s
の何れにも含まれる領域202wの内部に設けられることで、「4」の値が時針2によっ
て覆い隠されてしまうことを防ぐことができる。
【0019】
図3は、アナログ電子時計1の指針2〜4により数値が表示されたときの文字盤11の
平面図である。
【0020】
図3(a)に示すように、時針2の選択窓部202が値表示部1111における「10
00」の値を包含し、分針3の選択窓部302が値表示部1112における「400」の
値を包含し、また、秒針4の選択窓部402が値表示部1113における「80」の値を
包含している。これら3つの選択窓部202、302、402により選択された値を加算
することで、計測値「1480」を読み取ることが出来る。
【0021】
一方、
図3(b)に示すように、時針2、分針3、及び、秒針4がそれぞれ3時の方向
を向いており、時針2の選択窓部202が値表示部1111における「4000」の値を
包含し、分針3の選択窓部302が値表示部1112における「400」の値を包含し、
秒針4の選択窓部402が値表示部1113における「40」の値を包含している。この
とき、「400」の値及び「4000」の値は、いずれも秒針4の透過窓部403に包含
され、「4000」の値は、更に、分針3の透過窓部303に包含される。このような中
空構造によって、指針2〜4が重なった場合であっても、ユーザは、容易に表示された数
値「4440」を読み取ることが出来る。
【0022】
図4は、アナログ電子時計1の内部構成を示すブロック図である。
【0023】
アナログ電子時計1は、時針2、分針3、及び、秒針4と、時針2を輪列機構32を介
して駆動する時針駆動部40と、分針3を輪列機構33を介して駆動する分針駆動部41
と、秒針4を輪列機構34を介して駆動する秒針駆動部42と、発振回路48と、分周回
路49と、計時回路50と、CPU(Central Processing Unit)45(駆動制御手段)
と、ROM(Read Only Memory)46と、RAM(Random Access Memory)47と、電源
部51と、操作部52と、計測手段としての圧力センサ53とを備えている。
【0024】
このアナログ電子時計1は、CPU45から出力される駆動制御信号に基づいて、別個
の駆動部により独立に指針2〜4が駆動される3針独立駆動の電子時計である。時針駆動
部40、分針駆動部41、及び、秒針駆動部42(以降、複数の指針2〜4の駆動手段と
しての各駆動部をまとめて駆動部40〜42のように記す)は、それぞれ、指針2〜4を
前進又は逆進させることが可能である。駆動部40〜42が各々指針2〜4を前進させる
最高速度の設定値は、逆進させる最高速度の設定値の2倍となっている。
【0025】
秒針4は、6度毎、一周60ステップの各位置に離散的に移動可能である。秒針駆動部
42は、時刻表示状態では、1秒ごとに秒針4を1ステップずつ前進移動させる。時針2
、及び、分針3は、1度毎、一周360ステップの各位置を指し示すことが可能である。
分針駆動部41は、時刻表示状態では、10秒ごとに分針3を1ステップずつ前進移動さ
せる。時針駆動部40は、時刻表示状態では、2分ごとに時針2を1ステップずつ前進移
動させる。
【0026】
発振回路48は、所定の周波数、例えば、1.6384MHzの周波数信号を発生して
分周回路49に出力する。分周回路49は、発振回路48から入力された周波数信号を設
定された分周比で分周して、1秒信号を計時回路50に出力すると共に、CPU45によ
り利用される設定周波数の信号をCPU45に出力する。
【0027】
計時回路50は、1秒信号をカウントして時刻を計数するカウンタである。また、計時
回路50が計数する時刻データは、CPU45からの修正命令に基づいて修正可能となっ
ている。
【0028】
CPU45は、アナログ電子時計1の動作全体を統括制御し、また、種々の演算処理を
行う。CPU45は、時刻表示状態では、計時回路50から入力された時刻データ信号に
基づいて駆動部40〜42に駆動制御信号を出力する。また、各種物理量の計測を行う場
合には、後述する圧力センサ53から入力された計測値に基づいて、指針2〜4の移動先
位置を決定し、当該移動位置へ指針2〜4を移動させるための駆動制御信号を駆動部40
〜42に出力する。
【0029】
ROM46には、CPU45が実行する各種制御プログラム、機能プログラムや設定デ
ータが格納されている。機能プログラムには、計測された気圧に基づいて算出された高度
の値を指針2〜4により表示させたる計測値表示処理プログラムが含まれている。CPU
45は、必要に応じてROM46からプログラムや設定データを読み出し、RAM47に
展開して実行する。また、ROM46には、気圧と高度との間のデフォルト換算テーブル
を示す高度テーブル46aが格納されている。
RAM47は、CPU45に作業用のメモリ空間を提供する。CPU45は、制御プロ
グラムや機能プログラムの実行により取得された値、設定や算出された値を一時的に記憶
する。また、RAM47には、高度センサ利用時の気圧状態に基づく高度テーブル46a
の補正データや、高度表示の際の単位設定(メートル、フィートなど)といったユーザ操
作に基づいて定められたユーザ設定テーブル47a記憶されている。
【0030】
電源部51は、CPU45の駆動に必要な電力を供給する。この電源部51は、特に限
られないが、例えば、太陽電池と二次電池とを組み合わせたものである。
【0031】
圧力センサ53は、例えば、ピエゾ素子を用いて大気圧を測定する半導体センサである
。
【0032】
操作部52は、ボタンB1〜B3、及び、リュウズC1の操作に基づく電気信号を入力
信号としてCPU45へ送る。例えば、ボタンB2が押下されると、CPU45は、時刻
表示状態から高度表示状態に変更して、圧力センサ53に測定させた気圧データに基づい
て指針2〜4に高度を表示させる。また、ボタンB3が押下されると、CPU45は、時
刻表示状態から順番に各モードに変更させていく。リュウズC1が操作されると、CPU
45は、手動で時刻を変更したり、高度テーブルの補正を行ったりする。
【0033】
次に、本実施形態のアナログ電子時計1において高度表示動作を行う動作手順について
説明する。
図5は、CPU45による高度表示動作の制御手順を示すフローチャートである。
【0034】
高度表示処理は、ユーザによりボタンB2が押下されるか、ボタンB3が押下されて、
高度計測動作が選択された場合に開始される。
高度表示処理が開始されると、CPU45は、先ず、圧力センサ53に指令を送り、気
圧の計測を行わせる(ステップS11)。また、CPU45は、秒針駆動部42に指令を
送り、秒針4を0時の方向に移動させる。また、CPU45は、分針駆動部41、及び、
時針駆動部40への駆動命令を中止し、分針3及び時針2を一時停止させる(ステップS
12)。
【0035】
圧力センサ53から気圧の計測値がCPU45に入力されると、CPU45は、高度テ
ーブル46a及びユーザ設定テーブル47aを読み出して、気圧の値を高度の値に変換す
る。CPU45は、変換された高度の値に基づいて、指針2〜4の移動先位置をそれぞれ
決定する(ステップS13)。
【0036】
それから、CPU45は、時針駆動部40に指令を送り、時針2を移動先位置へ移動さ
せる(ステップS14)。続いて、CPU45は、分針駆動部41に指令を送り、分針3
を移動先位置へ移動させる(ステップS15)。最後に、CPU45は、秒針駆動部42
に指令を送り、秒針4を移動先位置へ移動させる(ステップS16)。そして、CPU4
5は、高度表示処理を終了する。なお、このアナログ電子時計1では、圧力センサ53か
ら入力された気圧の計測値により、高度表示だけでなく、気圧表示も同様に可能である。
気圧表示処理は、例えば、ユーザによりボタンB1が押下されるか、ボタンB3が押下さ
れて、気圧計測動作が選択された場合に開始される。指針2〜4がそれぞれ値表示部11
11〜1113に含まれる値を選択して指示することで、同様に、気圧値を表す。
【0037】
このように、第1実施形態のアナログ電子時計1によれば、文字盤11における同心円
状に3列に亘り算出された高度値の表示に用いられる値表示部1111〜1113が設け
られ、指針2〜4がそれぞれ値表示部1111〜1113に含まれる値を選択して指示す
ることで、それぞれ、千の位、百の位、十の位の値を表す。従って、ユーザは、各桁の値
を読み取って加算することで、容易に数値を読み取ることが出来る。
【0038】
特に、計測値の上位桁を時針2により示し、中位桁を分針3により示し、下位桁を秒針
4により示すことで、ユーザが直感的に数値を認識しやすく構成されている。
【0039】
また、指針2〜4には中空状の選択窓部202〜402が設けられて、指針2〜4は、
指し示す値を選択窓部202〜402の内部に包含するように位置するので、選択窓部2
02〜402により露出された値を容易に認識することが出来る。
【0040】
また、値表示部1111と交差する分針3や、値表示部1111、1112と交差する
秒針4には、当該交差部分に透過窓部303、403がそれぞれ設けられているので、時
針2と分針3又は秒針4とが重なった場合や、分針3と秒針4とが重なった場合でも、選
択窓部202〜402に包含された値が他の指針によって覆い隠されることなく全て確実
に認識することが出来る。
【0041】
また、長方形の透過窓部303、403に対して、選択窓部202〜402の形状が三
角形に設定されているので、透過窓部に包含された値と選択された値とを容易に識別でき
ると共に、三角形の頂点により時刻表示の際にも時刻を容易に認識することが出来る。
【0042】
また、圧力センサ53などの計測器による計測値をデジタル値化して指針2〜4により
離散的に各桁の値に分けて表示するので、アナログ表示を見るときの目盛の粗密などを気
にすることなく明確且つ容易に計測値を読み取ることが出来る。
【0043】
[変形例1]
図6は、第1実施形態の文字盤11における値表示部の変形例1を示す平面図である。
【0044】
変形例1の値表示部111aでは、値表示部1111における百の位以下の「0」の表
示、値表示部1112における十の位以下の「0」の表示、及び、値表示部1113にお
ける一の位の「0」の表示を全て省略し、各列の値を何れも「0」〜「9」の一桁値とし
ている。その他の構成は第1実施形態の文字盤11と同一であり、同一の符号を付して説
明を省略する。
【0045】
このように、変形例1における値表示部111aでは、各数値標章が表す値における下
位桁の「0」の表示を省略して一の数字ずつを表示させることにより一文字当たりの表示
サイズを大きくすることで、指し示された値を容易に読み取り可能としている。特に、各
指針2〜4の示す桁が明確な場合には、文字盤11の構成がより簡潔になる。
【0046】
[変形例2]
図7(a)は、第1実施形態の文字盤11における値表示部の変形例2を示す平面図で
ある。
【0047】
変形例2の文字盤11には、変形例1の値表示部111aの一端に、各値表示部111
1〜1113が表す桁を明示するための標章が配列された桁表示部112が設けられてお
り、それ以外の構成については第1実施形態の文字盤11と同一であるので、同一の符号
を付して説明を省略する。
【0048】
この桁表示部112では、値表示部1111における「0」の値に隣接して標章「×1
000」が設けられ、値表示部1111の値「0」〜「9」がそれぞれ千の位の値を示し
ていることを表している。また、値表示部1112における「0」の値に隣接して標章「
×100」が設けられ、値表示部1112の値「0」〜「9」がそれぞれ百の位の値を示
していることを表している。また、値表示部1113における「0」の値に隣接して標章
「×10」が設けられ、値表示部1113の値「0」〜「9」がそれぞれ十の位の値を示
していることが表されている。
【0049】
このように、変形例2における文字盤11では、値表示部1111〜1113から値が
1つずつ選択された場合に、選択された値が何れの桁の値であるかが桁表示部112によ
って明示的にまとめて示されることにより、値表示部1111〜1113において「0」
の表示を繰り返すことなくより簡便且つ明確に指針によって計測値を表示することが出来
る。
【0050】
[変形例3]
図7(b)には、第1実施形態の文字盤11における値表示部の変形例3を示す平面図
である。
【0051】
変形例3の文字盤11における値表示部111b及び桁表示部112bは、変形例2の
値表示部111a及び桁表示部112とは反対に、6時〜12時の側に設けられている。
また、文字盤11の周縁部の側に設けられた値表示部1111aが千の位の値を示し、文
字盤11の中心側に設けられた値表示部1113aが十の位の値を示し、値表示部111
1aと値表示部1113aとの間に設けられた値表示部1112aが百の位の値を示すこ
とが桁表示部112bにより表されている。その他の構成は、変形例2の構成と同様であ
り、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
変形例3の文字盤11では、上記のように、上位桁の値が指針2〜4の回転軸からより
離れた位置となる。従って、千の位の値が秒針4によって指し示され、百の位の値が分針
3によって指し示され、また、十の位の値が時針2によって指し示される。
【0053】
このように、アナログ電子時計1の文字盤11に変形例3の値表示部111b及び桁表
示部112bを配置することで、他の機能に係る表示上の制約条件などにあわせて値表示
部111bを配置させることができる。また、値表示部111bの配置場所によって各桁
の値の表示順番を入れ替えることで、計測値を左側の上位桁から順番に容易に読み取るこ
とが出来る。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のアナログ電子時計について説明する。
図8は、第2実施形態のアナログ電子時計の内部構成を示すブロック図である。
【0055】
第2実施形態のアナログ電子時計1は、第1実施形態のアナログ電子時計の構成に加え
て、更に、他の計測手段として温度センサ54を備えている。また、後述するように、第
1実施形態のアナログ電子時計において指針2〜4の先端に設けられた選択窓部202〜
402、及び、指針3、4に設けられた透過窓部303、403は、指針ごとにまとめら
れて、選択透過部204〜404(窓部)が設けられている(
図9参照)。その他の構成
については、第1実施形態のアナログ電子時計と同一であり、同一の符号を付して説明を
省略する。
【0056】
図9は、第2実施形態のアナログ電子時計における文字盤の値表示部と指針とを示す平
面図である。
【0057】
図9(a)に示すように、第2実施形態のアナログ電子時計1の文字盤11aには、上
述の変形例2において値表示部111aの一端に設けられた桁表示が測定単位と共に3通
り設けられている。即ち、桁表示部112iでは、温度の単位である摂氏温度「℃」とと
もに、温度表示の場合には、値表示部111aを構成する3列の値表示部1111〜11
13のうち、値表示部1111が十の位の値を表し、値表示部1112が一の位の値を表
し、値表示部1113が小数第一位の値を表すことが示されている。一方、桁表示部11
2j、112kでは、それぞれ、気圧の単位「hPa」、高度の単位「m」とともに、値
表示部1111が千の位の値を表し、値表示部1112が百の位の値を表し、値表示部1
113が十の位の値を表すことが示されている。従って、温度表示の場合には、
図9(a
)に示した指針位置により、計測値が14.8℃であることが表されている。
【0058】
また、選択透過部204〜404は、第1実施形態の指針2〜4における選択窓部20
2〜402に対応する部分が五角形の形状となっている。この選択される値を示す部分の
形状は、五角形に限られるものではなく、他の閉曲線から構成される図形や、「コ」の字
型や「C」型などの一部が開いた図形であってもよい。ここで、当該図形を指針2〜4の
軸の延長線上に頂点が設けられた形状とすることで、三角形の場合と同様時刻表示の際の
読み取り容易性が向上する。
【0059】
図10は、第2実施形態のアナログ電子時計1における計測値表示処理の動作手順を示
すフローチャートである。
【0060】
この第2実施形態のアナログ電子時計1において、CPU45が実行する計測値表示処
理の動作手順は、第1実施形態のアナログ電子時計においてCPU45が実行した高度表
示処理にステップS10の処理が追加され、ステップS11、S12の処理がステップS
11a、S12aの処理にそれぞれ変更されたものである。その他の同一の処理は、同一
の符号を付して説明を省略する。
【0061】
この計測値表示処理は、温度、気圧、又は、高度の何れかの値の計測命令が入力される
ことで開始される。計測値表示処理が開始されると、CPU45は、先ず、何れの値の計
測を行うかを判別する(ステップS10)。CPU45は、判別結果に基づいて圧力セン
サ53又は温度センサ54に計測を行わせる指令を送る(ステップS11a)とともに、
指針2〜4を所定の初期位置に移動させる(ステップS12a)。CPU45は、温度計
測値の表示を行う場合には、駆動部40〜42に指令を送り、指針2〜4を駆動させて、
図9(b)に示すように、桁表示部112iの位置に移動させる。また、CPU45は、
気圧計測値の表示を行う場合には、駆動部40〜42に指令を送り、指針2〜4を駆動さ
せて、桁表示部112jの位置に移動させる。また、CPU45は、高度値の表示を行う
場合には、駆動部40〜42に指令を送り、指針2〜4を駆動させて桁表示部112kの
位置に移動させる。
【0062】
このように、第2実施形態のアナログ電子時計1によれば、桁表示部112i〜112
kを設けることで、同一の値表示部を用いて計測値範囲の異なる複数のセンサについての
計測値を容易に読み取り可能に表示することが出来る。また、センサによる計測中に桁表
示部112i〜112kの何れかを指針2〜4で指し示させることで、何れの値を計測、
算出しているのかを確認することが出来るので、ユーザの操作ミスなどによる混乱や読み
取りミスを防ぐことが出来る。
【0063】
また、選択窓部と透過窓部とを選択透過部204、304、404としてまとめる一方
で、選択された値を示す部分と、その他の透過させる値を示す部分とでは枠の形状が異な
るので、必要に応じて複数の値の透過性を維持しながら、選択された値を容易に識別する
ことが出来る。
【0064】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のアナログ電子時計について説明する。
図11は、第3実施形態のアナログ電子時計1の平面図である。
【0065】
この第3実施形態のアナログ電子時計1は、文字盤11bに設けられた値表示部111
cにおける値の配置及び指針2〜4の形状を除いて第2実施形態のアナログ電子時計と構
成要素が同一であるので、同一の符号を付して説明を省略する。また、第3実施形態のア
ナログ電子時計1における計測値表示動作の処理手順は、第2実施形態のアナログ電子時
計1における計測値表示動作の処理手順と同一であるので、説明を省略する。
【0066】
図11に示すように、本実施形態の文字盤11bに設けられた値表示部111cは、3
列の値表示部1114〜1116により構成される。値表示部1114〜1116に含ま
れる各値を示す数値標章は、全て異なる方位角に配置されている。
図11の例では、値表
示部1114における「0」から「9」までの各値を示す数値標章は、12時の方向を基
準として、時計回りに30度の位置から18度間隔(即ち、秒針4の3ステップ分)で設
けられている。また、値表示部1115、1116における「0」から「9」までの各値
を示す数値標章は、それぞれ36度、42度の位置から18度間隔で設けられている。従
って、値表示部1114〜1116の各値は、順番に6度間隔で配置され、数値が表示さ
れる際に、指針2〜4の位置が重なることはない。
【0067】
本実施形態の分針3及び秒針4には、透過窓部又は選択透過部が設けられていない一方
で、値表示部1114〜1116において指針2〜4が指し示す値に隣接する値を覆い隠
さないために、指針の幅が狭く形成されている。
図11(a)の例では、温度計測値の表
示の場合には、指針2〜4の選択窓部202〜402により包含された3個の値が示す値
に基づき温度が14.8℃であることが読み取り可能となっている。
【0068】
文字盤11bには、第2実施形態における桁表示部112i〜112kと同様の標章が
、例えば、12時の方向から時計回りに12度(2秒)、18度(3秒)、24度(4秒
)の方向にそれぞれ設けられている。このとき、
図11(b)に示すように、計測値の単
位を示す標章「℃」、「hPa」、「m」をそれぞれ指針2〜4の届かない位置に配置し
ても良いし、センサの計測時に時針2のみを桁表示部112i〜112kの何れかの位置
に移動させ、分針3及び秒針4を他の位置、例えば、0時方向に移動させることとしても
よい。
【0069】
このように、第3実施形態のアナログ電子時計1によれば、指針2〜4について各々文
字盤11b上に設けられた値表示部1114〜1116の各値が方位角方向に全て異なる
位置に配置されているので、秒針4や分針3が値表示部1114、1115の値を覆い隠
して計測値を読み難くすることがない。また、指針3、4に中空構造を設けるために指針
を太くする必要がないので、指針のデザインが容易且つ多様になる。
【0070】
[変形例4]
図12には、第3実施形態のアナログ電子時計1における文字盤11bに設けられた値
表示部の変形例を示す。
【0071】
この変形例4の値表示部111dは、3列の値表示部1114a〜1116dによって
構成されている。これらの値表示部1114a〜1116aでは、各値表示部に含まれる
10個の値がそれぞれ一纏まりに配置されている。
図12(a)、(b)の例では、値表
示部1116aにおける「0」から「9」までの各値は、12時の方向を基準として、時
計回りに30度の位置から6度間隔(秒針4の1ステップ毎)で設けられている。また、
値表示部1114a、1115aにおける「0」から「9」までの各値は、それぞれ90
度、150度の位置から6度間隔で設けられている。
【0072】
また、
図12(a)の例では、指針2〜4に設けられた選択窓部202〜402の形状
が方形であるとともに、指針2〜4の先端部には、更に、針状の構造が延長され、時刻表
示の際の読み取りを容易にしている。
【0073】
更に、
図12(b)に示すように、第3実施形態のアナログ電子時計1では、指針2〜
4がそれぞれ示す値が明白であることから、各指針2〜4に選択窓部を設けずに単に指針
で指し示させることとしても良い。
【0074】
このように、第3実施形態のアナログ電子時計1によれば、文字盤11bに設けられた
値表示部1114〜1116、1114a〜1116aにおける各値が各々異なる方位に
設けられているので、指針2〜4が重なる場合を考慮する必要がなく、従来の針状の指針
、或いは、選択窓部202〜402のみを設けた指針により、容易且つ明確に数値を表示
させることが出来る。
【0075】
また、変形例4の文字盤11bを備えたアナログ電子時計1によれば、値表示部111
4a〜1116aがそれぞれ異なる方位角の範囲に設けられているので、それぞれの指針
により指示されている値がどの桁の値であるか容易に認識することが出来る。
【0076】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、3本の指針により有効数字3桁の値を表示させることと
したが、2本の指針により有効数字2桁の数字を表示させ、残りの1本で桁表示部112
i〜112kの何れかを示すこととしても良い。
或いは、気圧の表示の際に、3本の指針により一の位から百の位の値を示すこととして
、百の位の値によって千の位の値を自動的に決定させることとしてもよい。例えば、百の
位の値が「1」以上であれば、千の位の値が「0」であり、百の位が「0」であれば、千
の位の値が「1」とすることで、3本の指針により100〜1099hPaの範囲内の気
圧を表示させることが出来る。
【0077】
また、反対に、機能針を更に備え、有効数字4桁の値を表示させたり、機能針によって
計測値の種別や測定値の単位を表示させたりしても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、指針2〜4のみを用いて全てのデータを表示させることとし
たが、例えば、液晶表示部といったデジタル表示部を備え、指針2〜4による計測値の表
示中に、デジタル表示部に現在時刻や計測値の種別を表示させることとしても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、アナログ電子時計として腕時計を例に挙げて説明したが、置
時計、壁掛け時計や懐中時計であっても良い。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成や数値、配置などは、本発明の趣旨を逸
脱しない範囲において適宜修正可能である。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定
するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通り
である。
【0081】
[付記]
<請求項1>
同一位置に回転軸が配置され、文字盤上で回動可能に設けられた複数の指針と、
前記複数の指針を各々独立に駆動する駆動手段と、
前記駆動手段に駆動信号を送信して前記複数の指針を回動させ、前記文字盤上に設けら
れた値表示部に含まれる値のうち一つを一の指針に指示させる駆動制御手段と、
を備え、
前記値表示部は、前記回転軸に対して同心円をなす位置に複数設けられて、当該値表示
部の各々が、表示させる数値における所定の桁の値を表し、
前記駆動制御手段は、前記複数の指針に各々異なる前記値表示部における一の値を指示
させて、当該指示された一の値を前記所定の桁の値として組み合わせることで一の数値を
表現させ、
前記複数の指針の形状及び複数の前記値表示部における値の配置は、前記複数の指針が
各々一の値を指示している場合に、当該複数の指針が他の値を覆い隠さないように定めら
れる
ことを特徴とするアナログ電子時計。
<請求項2>
前記複数の指針には、対応する前記値表示部における一の値と当該指針とが重なった際
に、当該一の値を露出させる第1窓部が各々設けられ、
前記駆動制御手段は、前記複数の指針を回動させて各々一の値を前記第1窓部から露出
させることで、当該一の値が指示されたことを示す
ことを特徴とする請求項1に記載のアナログ電子時計。
<請求項3>
前記値表示部における値のうち少なくとも一部は、他の前記値表示部における値と同一
の指針方向に設けられ、
最も内側の前記同心円に係る前記値表示部に対応する指針を除く指針には、当該指針に
対応する前記値表示部より内側の前記同心円に係る前記値表示部において、当該指針が指
示する値と同一の指針方向に設けられた他の値と当該指針とが重なった際に、当該他の値
を露出させる第2窓部が更に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のアナログ電子時計。
<請求項4>
前記複数の指針には、当該指針が指示する一の値と、当該一の値を含む前記値表示部よ
り内側の前記同心円に係る前記値表示部において前記一の値と同一の指針方向に設けられ
た他の値とが、当該指針と重なった際に、前記一の値と前記他の値とを露出させる窓部が
設けられ、
当該窓部は、前記指針が指示する値を露出させる部分と、他の値を露出させる部分とが
異なる形状で形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
<請求項5>
前記文字盤には、前記値表示部の各々に対応付けられた前記所定の桁を示す桁表示部が
設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のアナログ電子時計。
<請求項6>
前記桁表示部には、表示させる数値の種別ごとに各々設定された単位系と桁とを示す標
章が設けられ、
前記駆動制御手段は、当該設定に基づいて前記複数の指針の移動先を決定する
ことを特徴とする請求項5に記載のアナログ電子時計。
<請求項7>
前記複数の指針は、秒針、分針、及び、時針であり、表現される数値のうち最上位桁の
値が前記時針によって表され、当該表現される数値のうち最下位桁の値が前記秒針によっ
て表される
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のアナログ電子時計。
<請求項8>
前記複数の値表示部における複数の値は、全て互いに異なる前記指針方向に設けられて
いる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアナログ電子時計。
<請求項9>
前記複数の値表示部は、それぞれ異なる前記指針方向の範囲に設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載のアナログ電子時計。
<請求項10>
計測手段を備え、
前記駆動制御手段は、当該計測手段による計測値に基づいて前記複数の指針を駆動させ
る
ことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載のアナログ電子時計。
しかしながら、アナログ電子時計において、時刻表示に用いられる数値範囲と、計測値などの種々の数値を表示させる場合の数値範囲との間では、計測した物理量や表示する単位系によって大きな差が生じる場合が