【実施例1】
【0016】
本発明に係る吸音構造体1は、
図1(A),(B)に示すように、空洞部2aが細長い有底筒体2bと、該筒体2bの一端側開口部2cに設けた吸音材3と、該筒体2bの一端側開口部2cの端面と、前記室内構成体の表面4との間に所要の隙間5を設ける間隙維持手段とで、吸音体2が構成されている。
【0017】
前記筒体2bは、その大きさが、一例として、直径200mm、長さ700mm、材質は、塩化ビニル製、紙、溶融亜鉛メッキ鋼板、としている。この筒体2bの両側端の開口部は、その片方が厚さ9mmのベニヤ板で密閉、閉蓋されていて、他方は、開口部2cである。
【0018】
前記間隙維持手段は、図示していないが、金属製、若しくは、合成樹脂製の硬質のブロックで、一例として、その高さが30mmである。
【0019】
前記吸音体2が、
図1(A)に示すように、その空洞部2aの長手方向の軸aと、前記室内構成体の表面4とが直交するように配置されるとともに、前記筒体2bの一端側開口部2cの端面と、該開口部2cが向けられた前記室内構成体の表面4との間に、例えば、所望高さ(一例として30mm)の介在物などによる前記間隙維持手段で隙間5が設けられ、例えば、室内の床の中央部や壁際に配設されて、吸音構造体1が形成されている。
【0020】
前記吸音材3は、
図1(A)に示すように、筒体2bの一端側開口部2cを、筒体2bの底面と平行に閉蓋するように、配設されている。
【0021】
上記吸音構造体1の構造に至る前に、前記吸音体2の気柱共鳴による吸音力を、
図2−A(A)〜(C)に示す残響室(容積313m
2、表面積273m
2)9で、吸音体2の配置や向きによる吸音力の変化を予め検証する。残響室法吸音率の測定には、試験体、試験体(吸音体2)の設置方法、測定周波数を除いてJIS A 1409 に準拠して行う。尚、試験体(吸音体2)同士の距離は1m以上、残響室9の中央に6体、中央に12体、外周に6体とした。
【0022】
前記試験体である吸音体2の大きさは、長さ700mm、直径200mm、材質は、塩化ビニル製(厚さ、7.0mm、重さ4.6kg)、紙(厚さ4.0mm、重さ1.4kg)、溶融亜鉛メッキ鋼板(厚さ0.5mm、重さ2.3kg)、である。
【0023】
また、前記吸音材3の材質は、例えば、2種類用意し、材料aが、流れ抵抗(Ns/m
3)が、約300、厚さが1.7mm、面密度(Kg/m
2)が2.6であり、材料bが、流れ抵抗(Ns/m
3)が、約100、厚さが1.4mm、面密度(Kg/m
2)が1.9である。
【0024】
その結果、
図3−A,
図3−Bに示すように、試験体(吸音体2)は、共鳴器の材質や開口部2cの状態によらず、100Hz付近にピークを有する吸音特性であり、試験体(吸音体2)を、
図2−A(C)に示すように、床の外周部(壁際)に配置した場合が、中央部に配置するよりも、ピークが0.1〜0.4程度大きくなっている。試験体(吸音体2)の材質(塩化ビニル、紙、溶融亜鉛メッキ鋼板)の相違は、一部を除いて殆ど見られない。
【0025】
また、吸音材3の有無による吸音力の差は、前記材料aの場合では殆ど見られないが、上向きの開口部2cに前記材料bを付加した場合は、吸音力のピークが0.1〜0.3程度増加し、更に、下向きの開口部2cに材料bを付加した場合には、条件によって吸音力のピークが0.2〜0.4程度増加した。これにより、材料aよりも材料bの方が吸音力が大きく、試験体(吸音体2)の材質が吸音力に及ぼす影響は小さく、吸音体2の設置位置や、開口部2cの向きによって吸音力が大きく異なるものである。
【0026】
更に、前記吸音体2の開口部2cにおける粒子速度を測定したところ、前記開口部2cを室内構成体の表面4に近接させた場合に、粒子速度レベルが顕著に増大する。
【0027】
上記のような結果から、本発明に係る吸音構造体1として、
図1(A),(B)に示すように、塩化ビニル製(直径200mm,長さ700mm)の吸音体2の開口部2cを、室内構成体の一つである床の表面4に向かって下向きにし、間隙維持手段で約30mmの隙間5を設け、吸音材3の材料を、前記材料b(流れ抵抗(Ns/m
3)が、約100、厚さが1.4mm、面密度(Kg/m
2)が1.9である)とする。
【0028】
尚、
図2−B(A),(B)に示すように、比較用の試験例として、吸音体10の開口部11cを上向きにして前記吸音材3を設けない場合と、前記開口部11cに吸音材3(上記の材料b)を設けた場合とを構成して比較する。試験条件は、残響室9の壁際(
図2−A(C))に配置して、設置方法や測定周波数の他は前記JIS A 1409の試験と同様である。
【0029】
その結果、
図3−Cに示すように、低周波数帯域における吸音力(m
2)を測定すると、開口部2cを上に向けるとともに、開口部2cに吸音材3を付加しない場合(
図2−B(A)に示すタイプAでは吸音力が0.3であり、開口部2cに吸音材3を付加した場合のタイプB(
図2−B(B))では吸音力が0.55であり、本発明に係るタイプC1(
図1(A))では吸音力が約0.75であり、本発明に係る吸音構造体1の方が明らかに、吸音力が大きい結果となっている。