(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232709(P2015-232709A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】金属素材を弦の振動伝達のための上部構造体に持ち、下部構造に3点の脚を持つ鳴動効果を増幅させるバンジョーブリッジ・駒の構造
(51)【国際特許分類】
G10D 3/12 20060101AFI20151201BHJP
G10D 1/10 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
G10D3/12
G10D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【公開請求】
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-122614(P2015-122614)
(22)【出願日】2015年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】707001344
【氏名又は名称】紺矢 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】紺矢 哲雄
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA07
5D002CC05
5D002CC43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バンジョーのブリッジの木質素材を金属素材に置き換える事により,ブリッジの耐久性と対変形性能を著しく向上させる事でバンジョー演奏者のピッキングが安定し,演奏力及び表現力を向上させる。
【解決手段】弦9の振動をとらえるブリッジの上部構造4に真鍮板等の金属素材を用い,下部構造である木質の脚部5に、ヘッド2の持つ高音域、中音域、低音域に弦振動を伝達させる脚部構造を備える事で、弦9によるブリッジ3の破損や変形を防止するとともに,バンジョーの音質に均質化と金属振動による音色特性を加え、かつ、鳴動性能を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンジョーのヘッドに弦の振動を伝達するブリッジの上部を金属素材とするブリッジの構造
【請求項2】
バンジョーのヘッドに弦の振動を伝達するブリッジの脚をヘッドの高音域,中音域,低音域の3カ所に設けた鳴動効果を増幅させるブリッジの構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,太鼓様の胴を持つ撥弦楽器であるバンジョーヘッド・振動膜(以下ヘッド)に弦の振動を伝えるバンジョーブリッジ・駒(以下ブリッジ)の上部構造に金属素材を持ち、下部構造である木製脚部分の弦振動伝達ポイントを3点として,従来のブリッジと比して、鳴動効果を改善し、音質を高め、かつ弦交換による破損を解消する、ブリッジの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスティック若しくは天然皮を素材とするヘッドに高い張力を加え,そこに三味線同様に可動式のブリッジを立て,そのブリッジに4本若しくは5本若しくは6本の弦を巡らせて調音し,その弦の振動を音源として,ブリッジによる増幅作用による弦振動をヘッドに伝達して楽音を鳴動させるという構造が,楽器であるバンジョーの基本構造である。
【0003】
バンジョーの音色は,ヘッド,ブリッジ,ポッド(胴),ネック(棹),テールピース(弦止め),リゾネイター(共鳴胴)の素材と形状によって決定され,バンジョーおよびブリッジの製造者は独自の考案により独特の音色を提供する事を試み,実現させている。
演奏者は,その個別の趣向に応じ,演奏するバンジョーおよびブリッジを選択し,自らの演奏スタイルの模索により,最善とする音色を獲得する。
【0004】
これらのバンジョーのパーツの内,特に音色に最も重要な影響を与えるものが,ブリッジとヘッドであり,ブリッジに関しては普及している従来型の基本構造は天然木の複合構造で,弦を支える上部に硬木の黒檀を用いて,弦の振動をブリッジ全体に伝えるとともに,高張力の弦による溝部分の破損を防止している上部構造と,弦の振動を効率的にヘッドに伝える楓素材を主とする本体部分の二層構造となっており,演奏者はその音色の趣向に応じ,製造者を選び用いていて,演奏者によっては,更に厚みを減じるなどの加工を自ら加えて,その音色を変化させ,自らの演奏スタイルに応じたブリッジを備える等を行っている。
【0005】
一方で,普及している従来型の木質ブリッジは,一様に弦の支持部分である上部構造の厚みは1ミリ程度,ヘッドに接触する下部構造の底部の厚みは5ミリ程度と,全体に薄く,そのため弦の張力によりヘッド方向に対して下方に圧力が加わる事によって,ヘッドをたわませ,かつ,ブリッジ本体も凹型に変形し,手指や手指に装着するピックによる撥弦に対して微妙な高低差を生じさせるために,その演奏に対して難点を生む事となる。
上部構造である弦支持部分は,その厚みが少ないために,調弦操作による摩耗や,弦交換、ブリッジ位置の調整操作,取り外し操作等により破損しやすく,そのブリッジが使用不能となる事がしばしば発生する。また,一般的な木製ブリッジでは,弦振動を効率的にヘッドに伝達させる為の手法として,本体に抉り加工を加え,ブリッジの質量を減じ,そのためにブリッジ底部は3分割された構造を一般的形態としているが,そのために,湾曲変化を増大させ,曲がり,破損などの結果をもたらし,かつ,各弦の振動伝達は不均質な結果が生じる。
【0006】
また、従来型のブリッジでは,弦の振動をヘッドに伝達させるための長さ70ミリ前後、高さ15ミリ前後、厚さ上部1ミリ・底部5ミリの可動式ブリッジをネックの長さにより決定される唯一のポジションに配置して,弦の振動をヘッドの1点に伝え,共鳴させるものであった。
【0007】
そのブリッジの配置位置は弦止めに近い,円形ヘッドの中心点とヘッドの縁との中間位置であり,この事は,ヘッドにかかる張力の半ば付近の1点に弦の振動を伝達する事を意味している。太鼓の音色を例にとると,撥の打点により中心部分は低音域でありその音量が大きく音色は柔らかい。その縁近くは高音域であり音量は減るものの,音色は固い。そしてその中間位置は中音域であって音量,音質は中心部分と縁部分との半ばであるという様に,打点によって音色と音量が変化するのであるが,同じような太鼓胴を持つバンジョーでは,その音色は楽器による個体差は多少あるものの,その配置位置は一定であるために,ヘッドの音響特性を余すところなく引き出しうるものでは無かった。
このような,ブリッジのもつ破損・変形要件と音色決定要件とを同時に満たす事が本発明の背景である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は,ブリッジの上部構造体に金属素材を用いる事によって,従来型のブリッジで画一的に用いられている木質素材特有の破損やヘッドのたわみによるブリッジの変形を解消し,かつ、ヘッドへの弦振動伝達を均質にし,金属質の音色を加え、音質と鳴動効果を高める事を、解決しようとする課題の1とし、かつ従来型のブリッジでは,配置するポジションがヘッドの持つ高音域,中音域,低音域の内,唯一中音域部分の1点であるためにブリッジが弦の振動を直接ヘッドの高音域と低音域に伝達させる事は不可能であり,ヘッドの持つ全ての音響特性を活用出来なかった事を,解決しようとする課題の2とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
弦の振動をとらえる上部構造に真鍮板等の金属プレートを採用し,この金属プレートでブリッジの主体の主部を構成させる事を,高張力の4本から6本の弦によるブリッジの破損や変形を防止し,かつ各弦の撥弦による音質に均質化と金属振動による音響効果をもたらす手段とし、かつ、ヘッドの持つ高音域、中音域、低音域全ての音響特性をバンジョーの演奏に活かす為,撥弦された弦の振動をヘッドの高音域,中音域,低音域の3音域に伝達させるブリッジの脚を設け,鳴動効果を増大させる手段とするブリッジを提供する事を課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の効果は,従来のブリッジの木質素材を金属素材に置き換える事により,ブリッジの耐久性と対変形性能を著しく向上させる事でバンジョー演奏者のピッキングが安定し,演奏力および表現力の向上を提供する事。
第2の効果として,金属による振動伝達がヘッドにもたらされる事となり,結果として各弦の振動がヘッドに均質に伝達され,かつ長い共鳴効果や金属性の音色を,従来のバンジョーの演奏に加わる事。
第3の効果として,ブリッジがヘッドの持つ高音域,中音域,低音域全てに弦振動を伝達する事を可能とする3点の脚を持つ事で、ヘッドの持つ音響特性すべてを同時に引き出す事を可能とし,従来のバンジョーの音色を音響的に改善し,バンジョー演奏の表現力および音楽性を向上させる事。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は鳴動効果を増幅させるブリッジの装着図(実施例)
【
図2】
図2は金属素材を上部構造とし、3点鳴動方式をもつ下部構造をもち、鳴動効果を増幅させるブリッジの構造図
【
図3】
図3は金属素材を上部構造とし、3点鳴動方式をもつ下部構造をもつブリッジの断面図
【
図4】
図4は従来、一般的に普及しているバンジョーとブリッジの形状図
【発明を実施するための形態】
【0012】
ブリッジの上部に金属プレートを持ち、下部の木質の脚を持ち、その木質の脚は、ヘッドの高音域、中音域、低音域の3カ所に配置される構造を持つ事で、弦の振動がヘッドの音響特性すべてを用いる鳴動音とする事を実現した。
【実施例】
【0013】
図1は本発明の金属素材を弦の振動伝達のための上部構造体に持ち、下部構造に3点の脚を持つ鳴動効果を増幅させるブリッジの実施例であり、バンジョーのブリッジ(3)の上部に(4)の金属素材によるブリッジの上部構造を設ける。バンジョーのブリッジ(3)の下部に(5)の木質素材によるブリッジの下部構造を設ける。(2)のヘッドに(9)の弦による圧力が(3)のブリッジにより加わる。
(9)の弦による振動は、(4)の金属素材によるブリッジの上部構造 から(5)の木質素材によるブリッジの下部構造に伝達され、増幅され、更に(6)の 高音域弦振動伝達部 、(7)中音域弦振動伝達部、(8)の低音域弦振動伝達部の3点から(2)のヘッドに伝導される。
この事によって、バンジョーの発する音質に均質性、金属性を与え、音量の増幅効果をもたらし、バンジョー演奏の表現性、音楽性を向上させる事を可能とする。
【符号の説明】
【0014】
1 バンジョーの本体
2 ヘッド
3 ブリッジ
4 金属素材によるブリッジの上部構造
5 木質素材によるブリッジの下部構造
6 高音域弦振動伝達部
7 中音域弦振動伝達部
8 低音域弦振動伝達部
9 弦
10 締め付けリング
11 弦止め