【解決手段】正極電極、負極電極、および隔膜を有する電池ユニットと、前記電池ユニットに供給される正極電解液を貯留する正極用電解液タンクと、前記電池ユニットに供給される負極電解液を貯留する負極用電解液タンクと、を有するレドックスフロー電池を備える電池システムである。この電池システムは、不活性ガスを含むフローガスのガス供給源と、前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相に前記フローガスを導入する導入管、および両電解液タンクの気相から気体を排出する排出管を含むフローガス流路と、前記ガス供給源から前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相に常時、前記フローガスを供給し続けるガス流量調整機構と、を備える。
正極電極、負極電極、および隔膜を有する電池ユニットと、前記電池ユニットに供給される正極電解液を貯留する正極用電解液タンクと、前記電池ユニットに供給される負極電解液を貯留する負極用電解液タンクと、を有するレドックスフロー電池を備える電池システムであって、
不活性ガスを含むフローガスのガス供給源と、
前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相に前記フローガスを導入する導入管、および両電解液タンクの気相から気体を排出する排出管を含むフローガス流路と、
前記ガス供給源から前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相に常時、前記フローガスを供給し続けるガス流量調整機構と、を備える電池システム。
前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相から排出される気体の逆流を防止する逆流防止機構を備える請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電池システム。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化への対策として、太陽光発電、風力発電といった自然エネルギー(所謂、再生可能エネルギー)を利用した発電が世界的に活発に行なわれている。これらの発電出力は、天候などの自然条件に大きく左右される。そのため、電力系統に占める自然エネルギーの割合が増えると、電力系統の運用に際しての問題、例えば周波数や電圧の維持が困難になるといった問題が予測される。この問題の対策の一つとして、大容量の蓄電池を備える電池システムを設置して、出力変動の平滑化、余剰電力の蓄電、負荷平準化などを図ることが挙げられる。
【0003】
電池システムに用いられる大容量の蓄電池の一つに、
図3の動作原理図に示すレドックスフロー電池(以下、RF電池)βがある。RF電池βは、代表的には、交流/直流変換器を介して、発電部(例えば、太陽光発電装置や風力発電装置、その他一般の発電所など)と負荷(需要家など)との間に接続され、発電部で発電した電力を充電して蓄え、又は、蓄えた電力を放電して負荷に供給する。
【0004】
RF電池βには、単数あるいは複数の電池ユニット100が備わっている。電池ユニット100は、正極電極104を内蔵する正極セル部102と、負極電極105を内蔵する負極セル部103と、両セル部102,103を分離すると共にイオンを透過する隔膜101と、を備え、充放電を担う。正極セル部102には、正極電解液を貯留する正極用電解液タンク106が配管108,110を介して接続されている。負極セル部103には、負極電解液を貯留する負極用電解液タンク107が配管109,111を介して接続されている。また、配管108,109にはそれぞれ、各電解液を循環させるポンプ112,113が設けられている。電池ユニット100は、配管108〜111とポンプ112,113によって、正極セル部102(正極電極104)及び負極セル部103(負極電極105)にそれぞれ正極用電解液タンク106の正極電解液及び負極用電解液タンク107の負極電解液を循環供給して、両極における電解液中の活物質となる金属イオン(図示例ではバナジウムイオン)の価数変化に伴って充放電を行う。
【0005】
ところで、RF電池では、電解液中に混入している不純物の影響等によって電解液循環路でガスが発生する場合がある(以降、電解液中で発生したガスを発生ガスと呼ぶ)。例えば、正極電解液では、酸化反応によって酸素、一酸化炭素、二酸化炭素等が発生する可能性があり、負極電解液では、還元反応によって水素や硫化水素等が発生する可能性がある。これらの発生ガスは、電解液タンク106,107の気相の圧力を増加させ、電解液タンク106,107を損壊させる可能性がある。
【0006】
上記問題点に鑑み、本出願人は、特許文献1において電解液循環路中に溜まった気体の圧力が所定の圧力以上(大気圧よりも高い正圧)になったときに気体を排出する排出弁を設けたRF電池を提案した。また、上述した電解液中で発生する発生ガスが有害である可能性もあることから、この特許文献1のRF電池では上記発生ガスを除去するガス除去装置が設けられている。さらに、特許文献1のRF電池では、温度変化などによって電解液中の圧力が大気圧を下回る負圧とならないように、必要に応じて電解液循環路中に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置が設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明に係る実施形態の内容を列記して説明する。
【0015】
[1]実施形態に係る電池システムは、正極電極、負極電極、および隔膜を有する電池ユニットと、前記電池ユニットに供給される正極電解液を貯留する正極用電解液タンクと、前記電池ユニットに供給される負極電解液を貯留する負極用電解液タンクと、を有するレドックスフロー電池を備える電池システムである。この電池システムは、不活性ガスを含むフローガスのガス供給源と、前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相に前記フローガスを導入する導入管、および両電解液タンクの気相から気体を排出する排出管を含むフローガス流路と、前記ガス供給源から前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相に常時、前記フローガスを供給し続けるガス流量調整機構と、を備える。
【0016】
ここで、『常時』とは、電池システムを運用する間中との意味である。つまり、電池システムに備わるレドックスフロー電池を動作させているとき(即ち、電解液を電池ユニット内に循環させて充電あるいは放電を行っているとき)はもちろん、充電あるいは放電に備えてレドックスフロー電池を停止しているとき(即ち、電解液を電池ユニット内に循環させていないとき)も、『常時』に含まれる。逆に、『常時以外』とは、例えばレドックスフロー電池を含む電池システムのメンテナンスを行うときなどである。
【0017】
上記構成のように、電解液タンクの気相に常時、フローガスを供給し続けることで、電解液タンク内の発生ガス(電解液循環路で発生したガス)を希釈し、発生ガスを低濃度の状態で大気中に放出することができる。このように、電解液タンク内を換気し、電解液タンク内に有害な発生ガスが滞留することを抑制することで、安全性に優れる電池システムとすることができる。
【0018】
[2]実施形態に係る電池システムとして、前記フローガス流路は、前記正極用電解液タンクの気相と前記負極用電解液タンクの気相とを繋ぐ気相連通管を備え、前記ガス供給源から供給される前記フローガスを、前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相のいずれか一方に導入する形態を挙げることができる。
【0019】
両電解液タンクの気相を繋ぐ気相連通管を設けることで、両電解液タンクの気相を一体に扱うことができる。即ち、正極用電解液タンクの気相、もしくは負極用電解液タンクの気相のいずれかにフローガスを導入すれば、両電解液タンクの換気を行うことができる。このような構成は、正極用電解液タンクの気相と負極用電解液タンクの気相に個別にフローガスを供給する構成よりも簡便で、メンテナンスも容易であるため、好ましい。
【0020】
[3]気相連通管を備える実施形態に係る電池システムとして、前記ガス供給源から供給される前記フローガスを、前記正極用電解液タンクの気相に導入する形態を挙げることができる。
【0021】
上記構成によれば、ガス供給源から供給されるフローガスがまず正極用電解液タンクに導入される。そのフローガスを含む正極用電解液タンク内の気体は、気相連通管を介して負極用電解液タンクに導入され、次いでフローガスを含む負極用電解液タンク内の気体が大気に排出される。レドックスフロー電池では、正極用電解液タンクよりも負極用電解液タンクで有害な発生ガスが比較的発生し易い傾向にあるため、上記構成によれば有害な発生ガスが正極用電解液タンクに導入されることを回避することができる。
【0022】
[4]実施形態に係る電池システムとして、前記正極用電解液タンクの気相および前記負極用電解液タンクの気相から排出される気体の逆流を防止する逆流防止機構を備える形態を挙げることができる。
【0023】
逆流防止機構を設けることで、大気が電解液タンクに流入することを抑制できる。その結果、大気に含まれる酸素によって電解液が劣化することを抑制することができる。
【0024】
[5]実施形態に係る電池システムとして、前記レドックスフロー電池を複数備え、前記ガス供給源から複数の前記レドックスフロー電池に前記フローガスを分配する分岐供給管を備え、前記ガス流量調整機構は、各レドックスフロー電池への前記フローガスの供給量を一定以上に維持する形態を挙げることができる。
【0025】
一つのガス供給源から複数のレドックスフロー電池にフローガスを供給する構成とすることで、複数のレドックスフロー電池のそれぞれに対してガス供給源を設ける必要がなく、電池システムの構成をシンプルにすることができる。また、各レドックスフロー電池に対するフローガスの供給量を調節することで、レドックスフロー電池の気相に有害なガスが滞留することを抑制することができる。
【0026】
[6]実施形態に係る電池システムとして、前記レドックスフロー電池への前記フローガスの供給量が、0.1リットル/分以上である形態を挙げることができる。
【0027】
レドックスフロー電池へのフローガスの供給量が0.1リットル/分以上であれば、レドックスフロー電池の気相の換気を十分に行うことができる。発明者の検討の結果、上記フローガスの供給量であれば、両電解液タンクの気相内の水素濃度を4体積%以下とできることが明らかになっている。水素は、電解液中で発生する発生ガスの一種であって、その爆発下限が約4.1体積%である気体である。従って、気相内の水素濃度を4体積%以下とできれば、爆発の危険を回避することができる。電池システムが複数のレドックスフロー電池を有する場合、各レドックスフロー電池へのフローガスの供給量を0.1リットル/分以上とする。
【0028】
[7]実施形態に係る電池システムとして、前記ガス供給源は、前記不活性ガスを貯留する貯留部材を備える形態を挙げることができる。
【0029】
貯留部材を用いることで、簡便にガス供給源を構築することができる。不活性ガスの貯留形態は液体であっても構わない。
【0030】
[8]実施形態に係る電池システムとして、前記ガス供給源は、前記不活性ガスを発生させるガス発生装置を備える形態を挙げることができる。
【0031】
ガス発生装置によれば、不活性ガスを含むフローガスを補充する手間を低減することができる。
【0032】
[9]実施形態に係る電池システムとして、前記不活性ガスは窒素ガスである形態を挙げることができる。
【0033】
窒素は、容易に入手可能で、無害であるため好ましい。また、窒素ガスは大気中に大量に含まれるため、大気中から窒素ガスを取り出すガス発生装置を用いれば、半永久的にフローガスをレドックスフロー電池に供給することができる。
【0034】
[10]実施形態に係る電池システムとして、前記フローガスにおける前記不活性ガスの割合が99.9体積%以上である形態を挙げることができる。
【0035】
フローガスにおける不活性ガスの割合が高いほど、フローガスにより電解液の劣化を抑制することができる。特に、フローガスにおける不活性ガスの割合が99.9体積%以上であると、理論上、10年以上に渡って電解液の劣化が抑制される可能性がある。
【0036】
[本発明の実施形態の詳細]
本実施形態に係る電池システムを図面に基づいて説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0037】
<実施形態1>
図1に示す電池システム1は、複数のレドックスフロー電池(RF電池)αを備える。各RF電池αは、
図3の動作原理図を用いて説明したRF電池βと同様の構成を有するため、その詳細な説明を省略する。この
図1では、簡略化したRF電池αの具体的な部分構成を一つだけ図示し、他のRF電池αは具体的構成を省略している。また、RF電池αの構成のうち、正極用電解液タンク106と負極用電解液タンク107のみが図示されているが、RF電池αには
図3にRF電池βに示す電池ユニットや循環機構が備わっている。
【0038】
実施形態の電池システム1は、ガス供給源2と、フローガス流路3と、ガス流量調整機構4と、逆流防止機構5と、を備える。以下、各構成2,3,4,5を詳細に説明する。
【0039】
≪ガス供給源≫
ガス供給源2は、不活性ガスを含むフローガスを貯留又は発生させ、各RF電池αに供給する構成である。不活性ガスとしては、例えばアルゴンやネオンなどの希ガスや、窒素などを挙げることができる。特に、窒素は、容易に入手可能で、安価であるため、好ましい。
【0040】
ガス供給源2は、例えば不活性ガスを貯留する貯留部材(ボンベ、タンクなど)を備える構成としても良いし、あるいは不活性ガスを発生させるガス発生装置を備える構成としても良い。前者の構成は、簡単に構築することができ、好ましい。後者の構成は、不活性ガスの補充の手間を低減できる。特に、窒素を発生させるガス発生装置の場合、大気中から窒素を取り出すことができるので、半永久的にフローガスを供給することができる。
【0041】
ガス供給源2から供給されるフローガスにおける不活性ガスの割合は、99.9体積%以上であることが好ましい。フローガスにおける不活性ガスの割合が高いほど、フローガスによる電解液の劣化を抑制することができる。特に、フローガスにおける不活性ガスの割合が99.9体積%以上であると、理論上、10年以上に渡って電解液の劣化が抑制される可能性がある。
【0042】
≪フローガス流路≫
フローガス流路3は、正極用電解液タンク106の気相および負極用電解液タンク107の気相に常時、フローガスを供給し続けるための流路である。本実施形態では、フローガス流路3は、分岐供給管30と、正極用導入管31と、正極用排気管32と、負極用導入管33と、負極用排出管34と、集合排出管35と、を備える。
図1では、フローガスの流れを黒矢印で示している。これらの管30〜35には、メンテナンスなどに用いるバルブ(図示せず)を設けることが好ましい。
【0043】
分岐供給管30は、ガス供給源2から伸びる一本の配管と、その配管から枝分かれする複数の分岐配管と、で構成されており、複数のRF電池αにフローガスを分配する機能を持つ。
【0044】
正極用導入管31は、正極用電解液タンク106の気相に開口し、その気相にガス供給源2から供給されるフローガスを導入する配管である。本例では、分岐供給管30の分岐配管によって正極用導入管31が構成されている。この正極用導入管31には、後述するガス流量調整機構4が設けられている。ガス流量調整機構4の詳しい構成については後述する。
【0045】
正極用排気管32は、正極用電解液タンク106の気相から気体を排出する配管である。本例では、正極用排気管32の端部に、後述する逆流防止機構5が設けられている。逆流防止機構5の詳しい構成については後述する。
【0046】
負極用導入管33は、負極用電解液タンク107の気相にフローガスを導入する配管である。本例では、正極用電解液タンク106の気相と、負極用電解液タンク107の気相と、を連通させる気相連通管によって負極用導入管33が構成されている。即ち、正極用導入管31を介して正極用電解液タンク106の気相に導入されたフローガスが、負極用導入管(気相連通管)33を介して負極用電解液タンク107の気相に導入される構成となっている。ここで、本例における負極用導入管33は、その構造上、正極用電解液タンク106の気相から気体を排出する正極用排出管でもある。
【0047】
負極用排出管34は、負極用電解液タンク107の気相から気体を排出する配管である。この負極用排出管34の端部にも、正極用排気管32の端部と同様に、逆流防止機構5が設けられている。
【0048】
集合排出管35は、正極用排気管32から排出された気体と、負極用排出管34から排出された気体をまとめて大気へ放出する配管である。本例では、各RF電池αの集合排出管35が一つに集合しており、各RF電池αから排出された気体が一つにまとめられて大気へ放出される構成となっている。
【0049】
以上説明した管30〜35によって構成されるフローガス流路3によれば、ガス供給源2から正極用電解液タンク106の気相および負極用電解液タンク107の気相を介して大気に至るフローガスの流路が形成される。
【0050】
≪ガス流量調整機構≫
ガス流量調整機構4は、ガス供給源2から正極用電解液タンク106の気相および負極用電解液タンク107の気相に常時、フローガスを供給し続けるための機構である。本例では、ガス流量調整機構4は、各RF電池αに設けられ、ガス供給源2から各RF電池αに供給されるフローガスの供給量を所定値以上に調整する。例えば、ガス流量調整機構4は、流量計40とバルブ41とを備える構成とすることができる。ガス流量調整機構4は、流量計40で計測した正極用導入管31におけるフローガスの流量に基づいてバルブ41の開度を調整する。流量に基づく開度の決定や、バルブ41の動作は、図示しない制御部(例えば、コンピュータなど)によって行う。
【0051】
各RF電池αへのフローガスの供給量は、0.1リットル/分以上とすることが好ましい。そうすることで、電解液タンク106,107の気相の換気、即ちRF電池αの気相の換気を十分に行うことができる。本例の場合、両電解液タンク106,107を一体に扱い、正極用電解液タンク106にフローガスを流した後、その一部を負極用電解液タンク107に導入する構成となっている。そのため、負極用電解液タンク107の気相へのフローガスの供給量が0.1リットル/分以上となるように、各RF電池αへのフローガスの供給量を調整することが好ましい。
【0052】
さらに、電解液タンク106,107の気相の換気が十分に行われているかを監視するために、フローガス流路3の各所に流量を測定する流量計を設けることが好ましい。例えば、負極用導入管33や、集合排出管35に追加の流量計を設け、その測定結果も加味して、バルブ41の開度を調整しても良い。もちろん、シミュレーションや実機を使った実験によって、例えば、流量計40の測定値がXリットル/分以上であれば、電解液タンク106,107の気相の換気が十分に行われるといった相関データが得られているのであれば、
図1のガス流量調整機構4の位置にのみ流量計40を設ける構成であっても全く問題ない。
【0053】
≪逆流防止機構≫
逆流防止機構5は、排出管32,34に設けられ、電解液タンク106,107への気体の逆流を防止する。本実施形態では、逆流防止機構5として、
図2に示す水封弁5Aを利用している。
【0054】
図2に示す水封弁5A(逆流防止機構5)は、容器50と、その内部に貯留される調圧液50Lと、を備える。容器50には、正極用排出管32(負極用排出管34)と集合排出管35とが繋がっている(
図1を合わせて参照)。正極用排出管32(負極用排出管34)は、その一端が
図1に示すように正極用電解液タンク106(負極用電解液タンク107)の気相に繋がっており、
図2に示すように容器50内の気相を通って、容器50内の液相内に開口している。一方、集合排出管35は、その一端が
図2に示すように容器50の気相に開口し、複数の配管が集合する他端が
図1に示すように大気に開口している。
【0055】
容器50は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂で構成することができる。ポリ塩化ビニルは、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性に優れると共に、安価であるため、好ましい。一方、調圧液50Lは、安価で入手が容易な水もしくは水溶液を用いることができる。水溶液としては、例えば希硫酸溶液などを挙げることができる。希硫酸溶液は、低温環境下であっても凍結し難いため、好ましい。
【0056】
上記水封弁5Aで構成される逆流防止機構5によれば、電解液タンク106(107)への気体の逆流を防止することができる。それは、電解液タンク106(107)の気相に繋がる排出管32(34)の端部が調圧液50L中に開口しており、集合排出管35を介して大気に連通する容器50の気体が、排出管32(34)に流入しないようになっているからである。この水封弁5Aはまた、電解液タンク106(107)が負圧(大気圧よりも低い圧力)になったときに電解液タンク106(107)の内部の圧力を大気圧に近づける機能も合わせ持つ。電解液タンクが106(107)負圧になったとき、排出管32(34)に調圧液10Lが吸い込まれて、その分だけ排出管32(34)内の気相の容積が減少する。その結果、電解液タンク106(107)の内部の圧力が上昇し、当該圧力が大気圧に近づき、電解液タンク106(107)の凹みが抑制される。
【0057】
一方、電解液タンク106(107)へのフローガスの供給により電解液タンク106(107)の気相が正圧(例えば大気圧よりも0.2kPa〜10kPa高い圧力)となった場合、電解液タンク106(107)の気相の気体は、排出管32(34)を通って容器50内の液相に排出される(
図2の太線矢印参照)。液相に排出された気体は気泡となって液相中を上昇し、容器50内の気相に移行する。容器50の気体は、
図1の太線矢印で示すように集合排出管35を介して大気に放出される。このように電解液タンク106(107)内の気体は、水封弁5A(
図2参照)によって外部に放出され、電解液タンク106(107)の内部の圧力が大気圧付近に調整される。その結果、電解液タンク106(107)の破裂を防止することができる。
【0058】
ここで、逆流防止機構5は、水封弁1Aを用いた構成に限定されるわけではない。逆流防止機構5は、電解液タンク106(107)への気体の逆流を防止できる構成であれば良く、例えば流量計とバルブを用いた構成であっても構わない。この構成では、流量計で排出管32(34)内の流量を計測し、その計測結果に基づいてバルブを閉鎖することで、電解液タンク106(107)への気体の逆流を防止することができる。
【0059】
≪その他≫
電池システム1において、両電解液タンク106,107内が負圧となることを抑制する構成を設けることが好ましい。そのような構成として、例えば、
図1に示す呼吸袋6を用いることができる。呼吸袋6は、電解液タンク106,107内に垂下され、その内部が大気中に連通される部材である(例えば、特開2002−175825号公報を参照)。呼吸袋6は、電解液タンク106,107内が負圧になったときに、その内部に大気を吸い込んで、電解液タンク106,107の内容積(呼吸袋6を除く)を減じ、電解液タンク106,107内の圧力を上昇させる。この呼吸袋6は、電解液タンク106,107内が正圧になったときにも機能する。具体的には、呼吸袋6の内部の気体を大気に放出し、電解液タンク106,107の内容積(呼吸袋6を除く)を増やし、電解液タンク106,107内の圧力を低下させる。
【0060】
≪電池システムの効果≫
上述した電池システム1によれば、簡便な構成で電池システム1の安全性を確保することができる。上記電池システム1では、電解液タンク106,107の気相に常にフローガスが供給され、電解液で発生した発生ガスが低濃度の状態で大気に排出されているため、電解液タンク106,107内に発生ガスが高濃度に滞留することが抑制されているからである。
【0061】
なお、集合排出管35の末端にガス除去装置を設けて、大気に排出される発生ガスの濃度をさらに低下させても良い。ガス除去装置としては、例えば特許文献1に記載されるガス除去装置(酸化銅を用いたフィルターなど)を利用することができる。ガス除去装置を設けることで、電池システム1の安全性をより向上させることができる。
【0062】
<実施形態2>
各電解液タンク106,107にそれぞれ、ガス供給源2から伸びる導入管を繋げても構わない。その場合、両電解液タンク106,107の気相を確実に換気することができる。その結果、両電解液タンク106,107の気相に有害なガスが滞留することをより低減することができる。両電解液タンク106,107に個別にフローガスを供給する構成では、気相連通管33は設けなくても構わない。
【0063】
<実施形態3>
実施形態1とは逆向きにフローガスを流す構成、即ち負極用電解液タンク107から正極用電解液タンク106にフローガスを流す構成とすることもできる。
図1を参照して実施形態3の構成を説明すれば、正極用電解液タンク106と負極用電解液タンク107とを入れ換えた構成と考えて良い。
【0064】
<実施形態4>
さらに、
図1に示す構成を一つの単位構成としたとき、その単位構成が複数並んでいる電池システムとすることができる。その場合、各単位構成に設けられるガス供給源2が他の単位構成に設けられるガス供給源2のバックアップとして機能するようにしても構わない。例えばある単位構成のガス供給源を他の単位構成にフローガスを供給できるように配管を繋いでおく。そうすることで、上記他の単位構成のガス供給源が故障したとしても、他の単位構成へのフローガスの供給が停止することがない。
【0065】
<試験例1>
図1に示す電池システム1を構築し、各RF電池αへのフローガスの供給量を0.1リットル/分として各RF電池αを動作させた。その際、各RF電池αの電解液タンク106,107の気相における水素濃度を測定したところ、水素濃度は、0.5体積%以下であった。この水素濃度は、水素の爆発下限(約4.1体積%)よりも大幅に小さかった。