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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-233112(P2015-233112A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   H01F17/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-190875(P2014-190875)
(22)【出願日】2014年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-102386(P2014-102386)
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA16
5E070DA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】他部材を用いることなく、フェライトコアに対する導電路の位置を安定させる。
【解決手段】ノイズフィルタは、電線(導電路)40Sを包囲するフェライトコア10と、フェライトコア10を収容するケース20とを備え、ケース20は、フェライトコア10を包囲する周壁部22と、周壁部22における周方向に間隔を空けた複数箇所から径方向内向きに突出し、突出端部(弾性当接部28)が電線40Sの外周に対して弾性的に当接する複数の弾性保持片24とを備えて構成されている。フェライトコア10によって包囲される電線40Sの外径が異なっても、それに応じて複数の弾性保持片24の弾性撓み量が変化することにより、電線40Sは、フェライトコア10に対する位置を安定させた状態で保持される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電路を包囲するフェライトコアと、
前記フェライトコアを収容するケースとを備え、
前記ケースは、
前記フェライトコアを包囲する周壁部と、
前記周壁部における周方向に間隔を空けた複数箇所から径方向内向きに突出し、突出端部が前記導電路の外周に対して弾性的に当接する複数の弾性保持片とを備えて構成されていることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
前記複数の弾性保持片の前記突出端部が、軸線方向において前記周壁部の外側に配されていることを特徴とする請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
周方向に隣り合う前記弾性保持片の間隔が、前記導電路を収容可能な寸法とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
周方向に隣り合う前記弾性保持片の間隔が、径方向外周側に向かって狭まるように設定されていることを特徴とする請求項3記載のノイズフィルタ。
【請求項5】
前記フェライトコアが複数の挿通孔を有し、
前記複数の挿通孔に、複数の前記導電路が個別に挿通されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線を包囲するフェライトコアと、フェライトコアを包囲するケースとを備えたノイズフィルタが開示されている。フェライトコアの中心には、電線を挿通させるための貫通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−151474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のノイズフィルタでは、フェライトコアの貫通孔の大きさと形状は、貫通孔に挿通される電線の太さに合わせて設定されている。そのため、太さが異なる電線には、適用できない。その対策としては、貫通孔の大きさを、想定される電線の最大径に合わせて設定することが考えられる。しかし、そうすると、小径の電線を使用する場合には、貫通孔内において電線の径方向の位置が定まらないため、フェライトコアのフィルタ機能が不安定となる。フィルタ機能の安定化を図るためには、電線の外周にテープを巻き付けて、貫通孔の内周との隙間を埋め、貫通孔内における電線の位置を安定させる必要がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、他部材を用いることなく、フェライトコアに対する導電路の位置を安定させるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のノイズフィルタは、
導電路を包囲するフェライトコアと、
前記フェライトコアを収容するケースとを備え、
前記ケースは、
前記フェライトコアを包囲する周壁部と、
前記周壁部における周方向に間隔を空けた複数箇所から径方向内向きに突出し、突出端部が前記導電路の外周に対して弾性的に当接する複数の弾性保持片とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
フェライトコアによって包囲される導電路の外径が異なっても、それに応じて複数の弾性保持片の弾性撓み量が変化することにより、導電路は、フェライトコアに対する位置を安定させた状態で保持される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のノイズフィルタの正面図
図2図1のX−X線断面図
図3】ノイズフィルタの一使用形態をあらわし、テープを省略した状態の正面図
図4図3のY−Y線断面図
図5】ノイズフィルタの別の使用形態をあらわす正面図
図6】ノイズフィルタの更に別の使用形態をあらわす正面図
図7】実施例2のノイズフィルタの正面図
図8】電線が取り付けられていない状態のフェライトコアとケースをあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明のノイズフィルタは、前記複数の弾性保持片の前記突出端部が、軸線方向において前記周壁部の外側に配されていてもよい。
この構成によれば、弾性保持片の突出端部と、導電路のうち突出端部から露出している領域とに亘ってテープを巻き付けることができるので、ノイズフィルタと導電路を固定する際の作業性が良い。
【0010】
(2)本発明のノイズフィルタは、周方向に隣り合う前記弾性保持片の間隔が、前記導電路を収容可能な寸法とされていてもよい。
この構成によれば、フェライトコアに挿通した導電路をフェライトコアの外周に沿って何重にも巻き付ける場合に、隣り合う弾性保持片の間に導電路を挟み込むようにすれば、導電路を周方向においてほぼ均等ピッチで配置することができる。
【0011】
(3)本発明のノイズフィルタは、(2)において、周方向に隣り合う前記弾性保持片の間隔が、径方向外周側に向かって狭まるように設定されていてもよい。
この構成によれば、外径寸法の異なる複数種類の導電路を、隣り合う弾性保持片の間で安定して位置決めすることができる。
【0012】
(4)本発明のノイズフィルタは、前記フェライトコアが複数の挿通孔を有し、前記複数の挿通孔に、複数の前記導電路が個別に挿通されていてもよい。
この構成によれば、1つのフェライトコアで複数本の導電路のノイズを除去できるので、ノイズフィルタの大型化と部品点数の削減を図ることができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図6を参照して説明する。本実施例1のノイズフィルタFaは、円筒状のフェライトコア10と、フェライトコア10を同心状に収容するケース20と、ケース20に形成された複数の弾性保持片24とを備えて構成されている。ノイズフィルタFaは、芯線41を絶縁被覆42で包囲した形態の電線40S,40T(請求項に記載の導電路)のノイズを除去する。また、ノイズフィルタFaは、外径寸法が異なる複数種類の電線40S,40Tをノイズ除去対象としている。但し、複数本の電線40S,40Tを一括してノイス除去するのではなく、1本の電線40S,40Tに対して1つのノイズフィルタFaを取り付けてノイズ除去を行う。
【0014】
<フェライトコア10>
フェライトコア10は、半円筒形をなす一対の対称なコア構成体11を合体させて構成され、電線40S,40Tに対し包囲するように取り付けられる。フェライトコア10の内径は、ノイズ除去対象となる複数種類の電線40S,40Tのうち、最も太い電線40Tの外径寸法よりも大きい寸法に設定されている。
【0015】
<ケース20>
ケース20は、合成樹脂製であり、全体として概ね半円筒形をなす一対のケース構成体21を略円筒形に合体して構成されている。合体状態のケース20は、円筒形をなす周壁部22と、周壁部22の軸線方向における両端縁部から片持ち状に延出した形態の6つの弾性保持片24とを備えて構成されている。
【0016】
周壁部22は、半円筒形をなす一対の半割部材23を合体させて構成されている。周壁部22は、その合わせ目の近傍に形成した周知形態の撓み係止片(図示省略)と係止突起(図示省略)との係止により、合体状に保持されるようになっている。周壁部22の内径は、フェライトコア10の外径とほぼ同じ寸法である。したがってケース20内に収容されたフェライトコア10は、その外周面を周壁部22の内周面にほぼ密着させることにより、径方向において相対移動することなく安定した位置に保持される。
【0017】
6つの弾性保持片24は、全て形状と寸法が同一であり、3つずつ分かれて夫々ケース構成体21の半割部材23に一体に形成されている。ケース構成体21(半割部材23)を合体した状態では、6つの弾性保持片24が周方向に等角度ピッチで配置される。また、各弾性保持片24は、ケース20の軸心から径方向に延ばした仮想対称軸に関して対称な形状をなしている。
【0018】
各弾性保持片24は、夫々、周壁部22の軸線方向両端縁部から径方向内方へ延出する基板部25と、基板部25の延出端部から更に径方向内方へ片持ち状に延出する弾性当接部28とから構成されている。
【0019】
図2に示すように、基板部25は、周壁部22及びフェライトコア10の軸線と直角な板状をなす。軸線と直角に見た基板部25の形状は、概ね台形をなしている。そして、図1に示すように、周方向に隣り合う基板部25同士の間には、径方向に延びるスリット状空間26が存在している。また、基板部25の径方向の突出端部は、フェライトコア10の内周よりも僅かに内側(中心寄り)の位置まで延びている。
【0020】
基板部25は、弾性当接部28よりも肉厚であり、殆ど弾性変形しない。また、周壁部22の軸線方向の長さ寸法は、フェライトコア10の軸線方向の長さ寸法と同じである。そして、基板部25の延出端部の内面には、抜止め突起27が形成されている。したがって、ケース20内に収容されたフェライトコア10は、その軸線方向両端部を基板部25に当接させるとともに抜止め突起27に係止させることにより、軸線方向及び径方向において相対移動することなく安定した位置に保持される。
【0021】
基板部25の延出端部から延出する弾性当接部28は、基板部25とは異なり、細長い形状をなしている。弾性当接部28は、基板部25に連なる略四半円弧状の湾曲部29と、弧状部の延出端部に連なる棒状部30とから構成されている。弾性当接部28は、軸線方向において、周壁部22の両端よりも外方へ延出した形態である。そして棒状部30は、軸線方向とほぼ平行をなしている。
【0022】
6本の棒状部30は、周方向に等角度ピッチで、且つケース20と同心の円周上に配置されている。そして、弾性当接部28(弾性保持片24)が弾性撓みしていない状態において、6本の棒状部30の内面に内接する仮想内接円(図示省略)の直径は、ノイズフィルタFaによるノイズ除去対象となる複数種類の電線40S,40Tのうち、最も細い電線40Sの外径よりも少し小さい寸法に設定されている。この6本の弾性当接部28は、径方向外方へ変位するように弾性撓みし得るようになっている。
【0023】
軸線方向に見たときに、弾性当接部28の幅寸法は基板部25の幅寸法よりも小さいので、周方向に隣り合う弾性当接部28の間には、周方向に隣り合う基板部25同士のスリット状空間26よりも幅広の保持空間31が構成されている。また、弾性当接部28の基端部と基板部25の延出端部とは、その幅寸法の相違により段差状をなしているので、基板部25の延出端縁のうち弾性当接部28を挟む一対の領域は、ガイド縁部32として機能する。ガイド縁部32は、径方向と周方向の両方向に対して斜め方向を向いた状態で保持空間31に臨んでいる。そして、1つの保持空間31に臨む2つのガイド縁部32は、双方の周方向の間隔が径方向外方に向かって次第に狭まるような位置関係となっている。一方、周方向に隣り合う弾性当接部28の幅寸法は、径方向内方に向かって次第に狭まっている。
【0024】
上記のように、周方向の隣り合う弾性保持片24の間に構成された6つの保持空間31は、径方向外方に向かって幅狭となる外周側領域と、幅方向内方に向かって幅狭となる内周側領域とによって構成されている。この保持空間31は、ノイズ除去対象となる複数種類の電線40S,40Tのうち最も太い電線40Tを収容することが可能な広さを有している。また、保持空間31の外周側端部はスリット状空間26に連通しているが、スリット状空間26の幅寸法は、ノイズ除去対象となる複数種類の電線40S,40Tのうち最も細い電線40Sの外径寸法よりも小さい寸法である。さらに、保持空間31は、フェライトコア10によって包囲された挿通空間12(電線40S,40Tが挿通される空間)と、ケース20の外部空間とを連通させている。また、軸線方向に見たときに、フェライトコア10は保持空間31よりも外周側に位置している。
【0025】
<実施例1の作用及び効果>
図3,4は、ノイズ除去対象の電線40S,40Tのうち最も細い電線40Sを、単純にノイズフィルタFaの挿通空間12に貫通させた形態を示す。電線40SにノイズフィルタFaを取り付ける際には、まず、一対のコア構成体11を個別に半割部材23内にセットする。このとき、コア構成体11の外周面を半割部材23の内周面に密着させるとともに、コア構成体11の軸線方向両端面を基板部25の内面に当接させ、コア構成体11の軸方向両端部における内周縁を抜止め突起27に係止させる。これにより、コア構成体11が、ケース構成体21に組み付けられた状態に保持される。
【0026】
この後、コア構成体11が一体化された一対のケース構成体21を、電線40Sに対し挟み込むように組み付けるとともに、両ケース構成体21と両コア構成体11を合体させる。ケース構成体21を電線40Sに取り付ける際には、6本の弾性当接部28が電線40Sの外周に当接することにより、径方向外方へ弾性撓みする。そして、撓み係止片(図示省略)と係止突起(図示省略)との係止によって、ケース構成体21を合体状態に保持されると、電線40Sへの取付けとノイズフィルタFaの組付けが同時に完了する。
【0027】
フェライトコア10の内径は電線40Sの外径よりも大きいので、ノイズフィルタFaを電線40Sに取り付けた状態では、電線40Sの外周とフェライトコア10の内周との間に円筒状の空間が存在する。しかし、電線40Sの外周に当接している6本の弾性当接部28の弾性撓み量は、ほぼ均一となるので、電線40Sはフェライトコア10(ノイズフィルタFa)に対して同心の位置関係となるように保持される。外径寸法の異なる別の電線40TにノイズフィルタFaを取り付けた場合には、弾性当接部28の弾性撓み量が異なるが、この場合でも、6本の弾性当接部28の弾性撓み量は、ほぼ均一になるので、電線40Tはフェライトコア10と同心状の位置に保持される。したがって、電線40S,40Tに対するノイズ除去が安定して行われる。
【0028】
電線40SにノイズフィルタFaを取り付けた後は、図4に示すように、周壁部22の外周に粘着性を有するテープ50を巻き付けてケース構成体21が分離しないように固定する。これとともに、周壁部22の軸線方向外方に突出して電線40Sを同心状に包囲する6本の弾性当接部28の外周にも、テープ50を巻き付け、その6本の弾性当接部28が径方向に拡開しないように固定する。また、弾性当接部28に巻き付けたテープ50は、そのまま切らずに、電線40Sのうち弾性当接部28の近傍に露出している領域の外周にも巻き付ける。これにより、ノイズフィルタFaと電線40Sとが、ノイズフィルタFaの軸線方向両端部において軸線方向に相対移動しないように固定される。
【0029】
次に、本実施例1のノイズフィルタFaの別の使用形態を、図5を参照して説明する。この使用形態は、図3,4の使用形態と同じく最も細い電線40Sを、フェライトコア10に巻き付けたものである。この使用形態では、予め組み付けられたノイズフィルタFaに電線40Sを取り付ける。電線40Sの配索経路は、次の通りである。電線40Sは、ノイズフィルタFaの一方の端部において6本の弾性当接部28の間を通過してフェライトコア10の挿通空間12内に進入し、6つの保持空間31のうちいずれか1つの保持空間31(便宜上、第1保持空間31Aと定義する)を貫通し、ノイズフィルタFaの他方の端部から外部へ突出し、径方向外方へ転向し、ケース20の外周に沿うように反転する(折り返す)ことにより、ノイズフィルタFaの一方の端部に戻る。
【0030】
次に、周方向において第1保持空間31Aに対し120°の角度で変位している別の保持空間31(便宜上、第2保持空間31Bと定義する)を貫通してフェライトコア10の挿通空間12内に進入し、ノイズフィルタFaの他方の端部において第2保持空間31Bと対応する位置関係の保持空間31(便宜上、第2保持空間31Bと定義する)を貫通し、ノイズフィルタFaの外部に突出する。そして、径方向外方へ転向し、ケース20の外周に沿うように反転する(折り返す)ことにより、ノイズフィルタFaの一方の端部に戻る。
【0031】
さらに、周方向において第1保持空間31A及び第2保持空間31Bに対し120°の角度で変位している保持空間31(便宜上、第3保持空間31Cと定義する)を貫通して挿通空間12内に進入し、ノイズフィルタFaの他方の端部において第3保持空間31Cと対応する位置関係の保持空間31(便宜上、第3保持空間31Cと定義する)を貫通し、ノイズフィルタFaの外部に突出する。そして、径方向外方へ転向し、ケース20の外周に沿うように反転する(折り返す)ことにより、ノイズフィルタFaの一方の端部に戻る。
【0032】
さらに、第1保持空間31A、第2保持空間31B及び第3保持空間31Cとは異なる保持空間31(便宜上、第4保持空間31Dと定義する)を貫通して挿通空間12内に進入し、ノイズフィルタFaの他方の端部において6本の弾性当接部28の間を通過してノイズフィルタFaの外部へ突出する。電線40Sは、以上の経路により、フェライトコア10に3回巻き付けられた状態でノイズフィルタFaに挿通される。電線40Sの挿通が完了したら、上記と同様にテープ50を巻き付けることにより、ノイズフィルタFaと電線40Sを、軸線方向への相対移動を規制した状態で固定するとともに、電線40Sの巻回部43の弛みを防止する。
【0033】
保持空間31A,31B,31Cを通過する電線40Sは、緊張させた状態で巻き付けられ、ノイズフィルタFaの外周側(径方向外方)へ引っ張られるので、一対のガイド縁部32に押し付けられる。一対のガイド縁部32は、径方向外方に向かって間隔が狭まっているので、電線40Sは、保持空間31内で周方向に移動することは殆どない。そして、電線40Sのうち保持空間31A,31B,31Cを通過してフェライトコア10に巻き付けられた3つの巻回部43は、周方向においてほぼ等角度ピッチで配置されている。したがって、電線40Sに対するノイズ除去機能が安定する。
【0034】
図6は、本実施例1のノイズフィルタFaの更に別の使用形態を示す。この使用形態で使用される電線40Tは、図5で使用された細い電線40Sよりも太い電線40Tである。したがって、弾性当接部28の径方向外方への弾性撓み量が、図5の場合よりも大きい。これ以外の構成は、電線40Sの巻き付け経路を含めて図5の場合と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0035】
上述のように、本実施例1のノイズフィルタFaは、電線40S,40Tを包囲するフェライトコア10と、フェライトコア10を収容するケース20とを備えたものであって、電線40S,40Tの外周に巻き付ける他部材を用いることなく、フェライトコア10に対する電線40S,40Tの位置を安定させることを課題としたものである。その課題解決の手段として、ケース20は、フェライトコア10を包囲する周壁部22と、周壁部22における周方向に間隔を空けた6箇所から径方向内向きに突出し、突出端部(棒状部30)が電線40S,40Tの外周に対して弾性的に当接する複数の弾性保持片24とを備えている。この構成によれば、フェライトコア10によって包囲される電線40S,40Tの外径が異なっても、それに応じて6つの弾性保持片24の弾性撓み量が変化することにより、電線40S,40Tは、フェライトコア10に対する位置を安定させた状態で保持される。
【0036】
また、本実施例1では、6つの弾性保持片24の突出端部(弾性当接部28)が、軸線方向において周壁部22の外側に配されている。この構成によれば、弾性保持片24の突出端部(弾性当接部28の棒状部30)と、電線40S,40Tのうち突出端部(棒状部30)から露出している領域とに亘ってテープ50を巻き付けることができるので、ノイズフィルタFaと電線40S,40Tを固定する際の作業性が良い。
【0037】
また、周方向に隣り合う弾性保持片24の間隔(弾性保持片24の間に構成される保持空間31の幅寸法)を、電線40S,40Tを収容可能な寸法としている。この構成によれば、フェライトコア10に挿通した電線40S,40Tをフェライトコア10の外周に沿って何重にも巻き付ける場合に、隣り合う弾性保持片24の間に電線40S,40Tを挟み込むようにすれば、電線40S,40Tを周方向においてほぼ均等ピッチで配置することが可能である。しかも、周方向に隣り合う弾性保持片24の間隔(保持空間31のうち径方向外側の領域の幅寸法)が、径方向外周側に向かって狭まるように設定されており、保持空間31内の電線40S,40Tがフェライトコア10と干渉することもない。したがって、外径寸法の異なる複数種類の電線40S,40Tを、隣り合う弾性保持片24の間(保持空間31内)に安定して位置決めすることができる。
【0038】
<実施例2>
以下、本発明を具体化した実施例2を図7,8を参照して説明する。本実施例2のノイズフィルタFbは、円筒状のフェライトコア60と、フェライトコア60を収容するケース70と、ケース70に形成された複数の弾性保持片77とを備えて構成されている。尚、本実施例2において、上下の方向及び左右の方向に関しては、図7にあらわれる向きを、そのまま、上下方向及び左右方向と定義する。
【0039】
<電線40S,40T>
ノイズフィルタFbによるノイズ除去対象は、実施例1と同じく、芯線41を絶縁被覆42で包囲した形態の細い電線40S(請求項に記載の導電路)と、芯線41を絶縁被覆42で包囲した形態であって電線40Sよりも太い電線40T(請求項に記載の導電路)である。ノイズフィルタFbは、この外径寸法が異なる複数種類の電線40S,40Tのうち任意の2本をノイズ除去対象としている。ノイズ除去対象となる組み合わせは、外径寸法の小さい1本の電線40Sと外径寸法の大きい1本の電線40Tとの組み合わせ、外径寸法の小さい2本の電線40Sの組み合わせ、外径寸法の大きい2本の電線40Tの組み合わせのいずれも可能である。
【0040】
<フェライトコア60>
電線40S,40Tの軸線と平行に見た正面視において、フェライトコア60は長円形をなしている。即ち、フェライトコア60の外周は、2つの半円を2つの直線で結んだ形状である。そして、フェライトコア60は、その外周の直線領域と平行な面を合せ面62とする上下対称な一対のコア構成体61を合体させて構成されている。
【0041】
フェライトコア60には、前後方向に貫通する左右2つの挿通孔63が、左右対称に形成されている。各挿通孔63は、一方のコア構成体61の合せ面62に形成した半円形の凹部64と、他方のコア構成体61の合せ面62に形成した半円形の凹部64とによって円形に構成されている。右側の挿通孔63は、フェライトコア60の外周を構成する右側の半円と同心の円形をなし、左側の挿通孔63は、フェライトコア60の外周を構成する左側の半円と同心の円形をなす。この2つの挿通孔63の内径は、互いに同じ寸法であり、外径寸法の大きい電線40Tの外径よりも充分に大きい寸法に設定されている。
【0042】
<ケース70>
ケース70は、合成樹脂製である。電線40S,40Tの軸線と平行に見た正面視において、ケース70は長円形をなしている。即ち、ケース70の外周は、2つの半円を2つの直線で結んだ形状である。そして、ケース70は、その外周の直線領域と平行な面を合せ面72とする上下対称な一対のケース構成体71を合体させて構成されている。合体状態のケース70は、フェライトコア60を包囲する周壁部73と、周壁部73から片持ち状に延出した形態の弾性保持片77とを一体成形して構成されている。
【0043】
周壁部73は、フェライトコア60の前面(図7にあらわれる面)と後面に対して接触又は接近して対向する前後対称な一対の板状の端面覆い部74と、前後両端面覆い部74の外周縁を連結する形態の周面覆い部75とを備えて構成されている。端面覆い部74の外周縁と周面覆い部75は、フェライトコア60の外周面に沿った形状、即ち長円形である。端面覆い部74には、フェライトコア60の挿通孔63と同心状の円形をなす左右対称な一対の開口部76が形成されている。
【0044】
ケース70内に収容されたフェライトコア60は、その外周面を周面覆い部75の内面にほぼ密着させることにより、上下及び左右方向において相対移動することなく安定した位置に保持されるとともに、合体状態に保持される。また、ケース70内に収容されたフェライトコア60は、その前後両端面を端面覆い部74の内面にほぼ密着させることにより、前後方向において相対移動することなく安定した位置に保持される。
【0045】
周壁部73を構成する前側の端面覆い部74には、12片の弾性保持片77が形成されている。全ての弾性保持片77は、形状と寸法が同一である。12の弾性保持片77は、前側の端面覆い部74の前方(外面側)へ片持ち状に延出した形態である。12の弾性保持片77のうち6つの弾性保持片77は、右側の開口部76の開口縁から周方向に等角度間隔を空けて延出している。残りの6つの弾性保持片77は、左側の開口部76の開口縁から周方向に等角度間隔を空けて片持ち状に延出している。
【0046】
後側の端面覆い部74にも、12片の弾性保持片77が形成されている。全ての弾性保持片77は、形状と寸法が同一である。12の弾性保持片77は、後側の端面覆い部74の後方(外面側)へ片持ち状に延出した形態である。12の弾性保持片77のうち6つの弾性保持片77は、右側の開口部76の開口縁から周方向に等角度間隔を空けて延出している。残りの6つの弾性保持片77は、左側の開口部76の開口縁から周方向に等角度間隔を空けて片持ち状に延出している。
【0047】
各弾性保持片77は、端面覆い部74に連なる湾曲部78と、湾曲部78の延出端から更に延出した弾性当接部79とから構成されている。図8に示すように、挿通孔63の軸線を含む切断面における湾曲部78の断面形状は、開口部76の開口縁から径方向内向きに延出する略四半円弧形をなしている。同じ切断面における弾性当接部79の断面形状は、挿通孔63の軸線と略平行な直線状をなしている。
【0048】
1つの開口部76の開口縁から延出している6つの弾性保持片77が弾性撓みしていない状態において、これら6つの弾性当接部79の内面に内接する仮想内接円(図示省略)の直径は、外径寸法の小さい電線40Sの外径よりも小さい寸法に設定されている。6つの弾性当接部79は、湾曲部78の弾性変形を伴いながら、径方向外側へ弾性的変位し得るようになっている。
【0049】
<実施例2の作用及び効果>
図7は、ノイズ除去対象の電線40S,40Tのうち細い電線40Sを、左側の挿通孔63に挿通し、太い電線40Tを右側の挿通孔63に挿通した形態を示す。電線40S,40TにノイズフィルタFbを取り付ける際には、まず、一対のコア構成体61を個別にケース構成体71内にセットする。このとき、コア構成体61の外周面を周面覆い部75の内周面に密着させるとともに、コア構成体61の前後両端面を端面覆い部74の内面に当接させる。
【0050】
そして、一方のケース構成体71において、合せ面62を上に向けたコア構成体61の2つの凹部64に電線40S,40Tを収容し、その上に他方のケース構成体71とコア構成体61を被せるようにして合体させる。これにより、フェライトコア60が、2本の電線40S,40Tを挿通させた状態でケース70内に収容される。以上により、ノイズフィルタFbの組付けが完了する。
【0051】
ノイズフィルタFbが組み付けられた状態では、各電線40S,40Tの外周に対し、夫々、6本の弾性当接部79が径方向外方へ弾性撓みした状態で当接する。このとき、周方向において等角度間隔で配置されている6片の弾性保持片77が、同じ寸法だけ弾性撓みするので、各電線40S,40Tは、夫々、周方向において均等な力で径方向内側へ押圧される。したがって、各電線40S,40Tは、夫々、貫通している挿通孔63と同軸状に位置決めされる。
【0052】
各電線40S,40Tが挿通孔63と同軸状に位置決めされるということは、各電線40S,40Tの外周面と挿通孔63の内周面との間の径方向の距離が、全周に亘って一定となることを意味する。したがって、本実施例2のノイズフィルタFbによれば、細い電線40Sと太い電線40Tのいずれに関しても、フェライトコア60によるノイズ除去が安定して行われる。
【0053】
また、電線40S,40TにノイズフィルタFbを取り付けた後は、弾性当接部79の外面と電線40S,40Tの外周面に、粘着性を有するテープ(図示省略)を巻き付ける。これにより、電線40S,40Tと弾性保持片77とが相対変位しないように固定されるので、電線40S,40Tと挿通孔63との同心状の位置関係が保持される。
【0054】
上述のように、本実施例2のノイズフィルタFbは、電線40S,40Tを包囲するフェライトコア60と、フェライトコア60を収容するケース70とを備えたものであって、電線40S,40Tの外周に巻き付ける他部材を用いることなく、フェライトコア60に対する電線40S,40Tの位置を安定させることを課題としたものである。その課題解決の手段として、ケース70は、フェライトコア60を包囲する周壁部73と、周壁部73の開口部76における周方向に間隔を空けた6箇所から径方向内向きに突出し、突出端部(弾性当接部79)が電線40S,40Tの外周に対して弾性的に当接する複数の弾性保持片77とを備えている。
【0055】
この構成によれば、フェライトコア60によって包囲される電線40S,40Tの外径が異なっても、それに応じて6つの弾性保持片77の弾性撓み量が変化することにより、電線40S,40Tは、フェライトコア60の挿通孔63に対する位置を安定させた状態で保持される。
【0056】
また、本実施例2では、フェライトコア60が複数の挿通孔63を有し、複数の挿通孔63に、複数の電線を個別に挿通するようにしているので、1つのフェライトコア60で複数本の電線のノイズを除去できる。したがって、ノイズフィルタFbの大型化と部品点数の削減を図ることができる。
【0057】
また、本実施例2では、6つの弾性保持片77の突出端部(弾性当接部79)が、軸線方向において端面覆い部74(ケース70)の外側に配されている。この構成によれば、弾性保持片77の突出端部(弾性当接部79)と、電線40S,40Tのうち弾性保持片77の前方又は後方へ露出している領域とに亘ってテープを巻き付けることができるので、ノイズフィルタFbと電線40S,40Tを固定する際の作業性が良い。
【0058】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1,2では、弾性保持片の突出端部が、軸線方向において周壁部の外側に配されるようにしたが、弾性保持片の突出端部は軸線方向において周壁部の内側に隠れるように配されていてもよい。
(2)上記実施例1では、ケースを半円形をなす一対のケース構成体を合体させて構成したが、ケースを構成するケース構成体の数は、3つ以上であってもよい。
(3)上記実施例1,2では、ケースを一対のケース構成体で構成したが、ケースは、単一部品であってもよい。
(4)上記実施例1では、フェライトコアを半円形のコア構成体を合体させて構成したが、フェライトコアを構成するコア構成体の数は、3つ以上であってもよい。
(5)上記実施例1,2では、フェライトコアを一対のコア構成体で構成したが、フェライトコアは、単一部品であってもよい。
(6)上記実施例1では、導電路をフェライトコアに巻き付ける際に、隣り合う弾性保持片の間に導電路を挟み込むようにしたが、隣り合う弾性保持片の間隔を狭め、導電路をフェライトコアに巻き付ける際に隣り合う弾性保持片の間に導電路が挟み込まれないようにしてもよい。
(7)上記実施例1では、周方向に隣り合う弾性保持片の間に導電路を収容可能な空間を設け、導電路をフェライトコアに巻き付けることができるようにしたが、周方向に隣り合う弾性保持片の間隔が導電路を収容できない程に狭められ、導電路をフェライトコアに巻き付けられないようになっていてもよい。
(8)上記実施例1,2では、1本の導電路に当接する弾性保持片の数を6つとしたが、弾性保持片の数は、5つ以下でも、7つ以上でもよい。
(9)上記実施例1,2では、導電路を1本の電線としたが、導電路は、複数本の電線を束ねたワイヤーハーネスであってもよい。
(10)上記実施例1,2では、導電路を構成する電線に弾性保持片が直接、当接するようにしたが、導電路が電線をコルゲートチューブで包囲した形態である場合には、コルゲートチューブの外周に弾性保持片を当接させてもよい。
(11)上記実施例2では、フェライトコアに挿通する導電路を2本としたが、フェライトコアに挿通する導電路の本数は、3本以上でもよい。
(12)上記実施例2では、2本の導電路が並列配置した状態でフェライトコアに挿通されているが、導電路が3本以上の場合は、導電路を俵積み状や多段状に配置してもよい。
(13)上記実施例2に、実施例1の導電路をフェライトコアに巻き付ける構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
Fa…ノイズフィルタ
10…フェライトコア
20…ケース
22…周壁部
24…弾性保持片
28…弾性当接部(弾性保持片の突出端部)
40S,40T…電線(導電路)
Fb…ノイズフィルタ
60…フェライトコア
63…挿通孔
70…ケース
73…周壁部
77…弾性保持片
79…弾性当接部(弾性保持片の突出端部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8