【解決手段】圧電振動片120は、第1主面と第1主面の反対側の第2主面とを有し、振動部124と、振動部と離間して振動部の周りを囲む枠部122と、振動部と枠部とを連結する連結部126と、を有する。振動部の第1主面及び第2主面にはそれぞれ励振電極128が形成され、各励振電極から枠部の第2主面にまではそれぞれ引出電極130が引き出される。また、枠部の第2主面に形成される引出電極は、最下層に形成されるクロム(Cr)膜191Aと、クロム(Cr)膜の表面に形成されるニッケルタングステン(NiW)膜191Bと、ニッケルタングステン(NiW)膜の表面に形成される金(Au)膜191Cと、金(Au)膜の表面に形成される酸化クロム(Cr
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、当該水晶振動子が、ハンダによって基板に実装された場合、ハンダが引出電極を浸食して、励振電極まで到達するおそれがあった。特に、電子機器の製造のために、当該水晶振動子を実装した基板を複数回加熱することが必要な場合がある。また、ハンダを構成する金属と引出電極を構成する金属とが合金を形成しやすい場合がある。このような場合に、ハンダが励振電極まで到達するおそれが顕著になるという問題があった。
【0006】
以上のような事情に鑑みて、本発明は圧電デバイスをハンダで基板に実装した場合に、ハンダが励振電極まで浸食することを回避できる圧電デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の圧電振動片は、第1主面と第1主面の反対側の第2主面とを有し、圧電材料により形成される圧電振動片である。また、圧電振動片は、所定の周波数で振動する振動部と、振動部と離間して振動部の周りを囲む枠部と、振動部と枠部とを連結する連結部と、を有する。圧電振動片の振動部の第1主面及び第2主面にはそれぞれ励振電極が形成され、さらに各励振電極から枠部の第2主面にまではそれぞれ引出電極が引き出される。また、枠部の第2主面に形成される引出電極は、最下層に形成されるクロム(Cr)膜と、クロム(Cr)膜の表面に形成されるニッケルタングステン(NiW)膜と、ニッケルタングステン(NiW)膜の表面に形成される金(Au)膜と、金(Au)膜の表面に形成される酸化クロム(Cr
2O
3)膜と、により形成される。
【0008】
第2観点の圧電振動片は、第1観点において、枠部の第2主面には、一方の引出電極に形成される酸化クロム(Cr
2O
3)膜を含む第1の酸化クロム(Cr
2O
3)膜と、他方の引出電極に形成される酸化クロム(Cr
2O
3)膜を含む第2の酸化クロム(Cr
2O
3)膜と、第1の酸化クロム(Cr
2O
3)膜及び第2の酸化クロム(Cr
2O
3)膜の間に形成され枠部の第2主面の外周から内周へ伸びる絶縁領域と、が形成される。
【0009】
第3観点の圧電振動片は、第2観点において、絶縁領域が、枠部の外周から内周への幅よりも長く伸びる。
【0010】
第4観点の圧電振動片は、第1観点から第3観点において、枠部の第1主面の全面に酸化クロム(Cr
2O
3)膜が形成される。
【0011】
第5観点の圧電デバイスは、第1観点から第4観点の圧電振動片と、枠部の第2主面に低融点ガラスにより接合され、枠部に接合される面とは反対側の面に実装端子が形成されるベース板と、枠部の第1主面に低融点ガラスにより接合されるリッド板と、を有する。
【0012】
第6観点の圧電デバイスは、ベース板の側面にはベース板の内側に凹む切欠き部が形成され、実装端子が切欠き部に形成される側面電極を介して枠部の第2主面に形成される引出電極に電気的に接合され、実装端子及び側面電極が、最下層にスパッタにより形成されるスパッタ膜と、スパッタ膜の表面にスクリーン印刷により印刷されるハンダ膜と、により形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電デバイスによれば、圧電デバイスをハンダで基板に実装した場合に、ハンダが励振電極まで浸食することを回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
<圧電デバイス100の構成>
図1は、圧電デバイス100の分解斜視図である。圧電デバイス100は
図1に示される通り、ベース板140と、圧電振動片120と、リッド板110とが積層された構成になっている。圧電振動片120には、例えばATカットの水晶振動片が用いられる。ATカットの水晶振動片は、主面(XZ面)が結晶軸(XYZ)のX軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶振動片の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、圧電デバイス100において、圧電デバイス100の長手方向をX軸方向、圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X軸方向及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0017】
圧電振動片120は、所定の周波数で振動する矩形形状の振動部124を有する。振動部124の外側には、振動部124と離間して振動部124を囲む枠部122が設けられる。振動部124と枠部122とは、振動部124の−X軸側から−X軸方向に伸びて枠部122に到達する連結部126によって、接続される。
【0018】
振動部124の両主面である+Y’軸側の面及び−Y’軸側の面には、
図1に示される通り、互いに対向する励振電極128が形成される。また、各励振電極128からは、連結部126を介して枠部122に引出電極130が引き出されている。引出電極130は、主に連結部126及び枠部122の+Y’軸側の面に形成される引出電極130aと、枠部122の−Y’軸側の面に形成される引出電極130bと、により構成される。
【0019】
ベース板140は平板状に形成され、枠部122の−Y’軸側の面に接合される。ベース板140は振動部124に対向するように配置される。ベース板140はガラス又は水晶等を基材として形成される。また、ベース板140の−X軸側の+Z’軸側及び+X軸側の−Z’軸側の角には、ベース板140の角が切り取られるように形成される切欠き部148が形成されている。ベース板140には電極が形成されるが、
図1では示されていない。
【0020】
リッド板110は平板状に形成され、枠部122の+Y’軸側の面に接合される。リッド板110は振動部124に対向するように配置される。リッド板110はガラス又は水晶等で形成される。
【0021】
図2は、
図1のA−A断面図である。リッド板110と枠部122とは、ポリイミド等の樹脂接着剤又は低融点ガラス等の非導電性の接合材151で接合される。また、ベース板140と枠部122とに関しても接合材151で接合される。こうして振動部124は、リッド板110、枠部122、及びベース板140で囲まれたキャビティ101に密閉封入される。振動部124は、圧電デバイス100の周波数を調整するため及び振動部124がリッド板110及びベース板140に接触しないように、枠部122よりも薄く形成されている。
【0022】
ベース板140の−Y’軸側の面には一対の実装端子142が形成される。また、切欠き部148の側面には切欠き部電極144が形成され、引出電極130bに接続されるように端部電極146が形成されている。実装端子142の一方はベース板140の+X軸側に形成され、実装端子142の他方はベース板140の−X軸側に形成される。それぞれの実装端子142は切欠き部148まで伸びて切欠き部電極144に接続される。また、切欠き部電極144は、枠部122の−Y’軸側の面に伸びて端部電極146に接続される。これにより、実装端子142は、切欠き部電極144、端部電極146、及び引出電極130を介して励振電極128に電気的に接続される。
【0023】
図3(a)は、圧電振動片120の上面図である。圧電振動片120には、振動部124と枠部122との間に圧電振動片120をY’軸方向に貫通する貫通溝132が形成されている。また、振動部124と枠部122とは連結部126を介して接続されている。振動部124には励振電極128が形成されており、+Y’軸側の面に形成された励振電極128からは連結部126を介して枠部122に引出電極130aが引き出されている。引出電極130aは、貫通溝132の側面134を介して枠部122の−Y’軸側の面に引き出されている。
【0024】
図3(b)は、圧電振動片120の下面図である。振動部124の−Y’軸側の面に形成された励振電極128からは、引出電極130aが引き出されている。引出電極130aは、振動部124の−Y’軸側の面の励振電極128から−X軸方向に伸び、枠部122の−Y’軸側の面に形成される引出電極130bに接続される。引出電極130bは、さらに枠部122の−X軸側及び−Z’軸側の部分を通って、枠部122の−Y’軸側の面であって、−Z’軸側かつ+X軸側の角部まで伸びる。また、振動部124の+Y’軸側の面に形成された励振電極128から引き出される引出電極130aは、貫通溝132の側面134を介して枠部122の−Y’軸側の面の+Z’軸側かつ−X軸側の角部に形成される引出電極130bに接続される。
【0025】
図4(a)は、
図3(a)及び
図3(b)のB−B断面図である。励振電極128及び引出電極130aは、スパッタ又は蒸着等により形成される電極膜190により構成されている。引出電極130bも励振電極128及び引出電極130aと同様の電極膜190を有するが、さらにその表面に酸化クロム(Cr
2O
3)膜191Dが形成される。このような酸化クロム(Cr
2O
3)膜191Dは、例えば電極膜190を形成した後に圧電振動片120の−Y’軸側の面の全面にクロム(Cr)膜を形成し、枠部122以外のクロム(Cr)膜を除去した後に、枠部122に形成されるクロム(Cr)膜を酸化させることにより形成される。クロム(Cr)膜の酸化はクロム(Cr)膜を大気中に開放することにより行われる。
【0026】
図4(b)は、圧電振動片120の部分断面図である。
図4(b)は
図4(a)の点線182で囲まれた部分の断面が示されている。電極膜190は、例えば、ベース板140の基材に接する層である第1層191A、当該第1層191Aの表面に形成される第2層191B、及び当該第2層191Bの表面に形成される第3層191Cの3つの層により形成される。第1層191Aはクロム(Cr)膜の層として形成され、第2層191Bはニッケル(Ni)及びタングステン(W)の合金であるニッケルタングステン(NiW)膜の層として形成され、第3層191Cは金(Au)膜の層として形成される。枠部122の−Y’軸側の面に形成される引出電極130bでは電極膜190の表面に、さらに酸化クロム(Cr
2O
3)膜191Dが形成される。
【0027】
図5は、圧電デバイス100の部分断面図である。
図5は、
図2の点線181で囲まれる領域の部分断面が示されている。また、
図5は、圧電デバイス100がプリント基板160に実装された状態の部分断面として示されている。プリント基板160の+Y’軸側の面には電極161が形成されており、圧電デバイス100はハンダ152を介して電極161に実装される。
【0028】
圧電デバイス100に形成される実装端子142、切欠き部電極144、及び端部電極146は、スパッタなどで形成されるスパッタ膜192Aと、スパッタ膜192Aの表面に無電解メッキで形成される無電解メッキ膜192Bと、により形成される。スパッタ膜192Aは、例えば、ベース板140の基材の表面に形成されるクロム(Cr)層、クロム(Cr)層の表面に形成されるニッケルタングステン(NiW)層、ニッケルタングステン(NiW)層の表面に形成される金(Au)層の3層により形成される。また、無電解メッキ膜192Bは、例えば、スパッタ膜192Aの表面に形成されるニッケル(Ni)層及びニッケル(Ni)層の表面に形成される金(Au)層の2層により形成される。実装端子142、切欠き部電極144、及び端部電極146は、無電解メッキ膜192Bを含んで形成されることで全体として厚く形成され、これにより、実装端子142、切欠き部電極144、及び端部電極146の断線が防止され、導通が確保される。
【0029】
また、引出電極130bでは、酸化クロム膜191Dの厚さT1が1000オングストローム(Å)以下の厚さに形成されることが望ましい。厚さT1が1000オングストローム(Å)以下であれば酸化クロム膜191Dの下層に形成される金(Au)層の金(Au)が酸化クロム膜191Dに拡散することなどにより酸化クロム膜191Dの電気導電性を保つことができる。しかし、厚さT1が1000オングストローム(Å)より厚くなると電気抵抗が高くなり、引出電極130bと端部電極146との導通が妨げられる。
【0030】
圧電デバイス100が実装される場合には、ハンダ152は切欠き部電極144を這い上がり、端部電極146に到達する。ここで、ハンダ152は鉛(Pb)及びスズ(Sn)を主成分とした合金であり、ハンダ152の主成分であるスズ(Sn)は、金(Au)と合金を形成しやすい性質があることが知られている。そのため、スズ(Sn)と金(Au)とが接触した状態で加熱されると、スズ(Sn)は金(Au)を浸食する。
【0031】
端部電極146ではスパッタ膜192A又は無電解メッキ膜192Bにハンダ152の浸食が遅いクロム(Cr)層、ニッケルタングステン(NiW)層、及びニッケル(Ni)層を有するため、端部電極146は、簡単にはハンダ152によって浸食されない。しかし、スパッタ膜192A又は無電解メッキ膜192Bがそれぞれ金(Au)層を有すること及び電子機器の製造のために圧電デバイスを実装するプリント基板が複数回加熱されうること等により、ハンダ152のスズ(Sn)が端部電極146を浸食して引出電極に到達する可能性がある。引出電極に酸化クロム膜が形成されない従来の圧電デバイスでは、この様な場合、ハンダ152のスズ(Sn)が引出電極の金(Au)層を介して圧電振動片の励振電極に到達し、励振電極をも浸食することで圧電振動片の周波数をずらし、又は圧電振動片の発振を妨げる場合があった。
【0032】
圧電デバイス100では、端部電極146と引出電極130を構成する電極膜190との間に酸化クロム膜191Dが形成されている。酸化クロム(Cr
2O
3)の膜はスズ(Sn)の浸食を防ぐことが出来る不動態膜になり得るため、圧電デバイス100では、酸化クロム膜191Dがスズ(Sn)の浸食を防ぐことにより、ハンダ152のスズ(Sn)が引出電極130の金(Au)層に到達することが防がれている。
【0033】
また、従来の圧電デバイスにおいて、接合材151に低融点ガラスが使用される場合には、低融点ガラスと引出電極の最表面に形成される金(Au)層との接合が弱く、圧電振動片の枠部とベース板との接合強度が弱い場合があった。これにより、キャビティ101の密封が破れやすい場合があった。
【0034】
低融点ガラスと酸化膜とは強く接合するため、圧電デバイス100では、電極膜190の金(Au)層の表面に酸化クロム膜191Dが形成されることにより、引出電極130bと接合材151を構成する低融点ガラスとの接合強度が強くなる。そのため、圧電振動片120の枠部122とベース板140とが強く接合し、キャビティ101の密封が破れることが防がれている。
【0035】
また、ニッケルタングステン(NiW)は、金(Au)に接触している状態で湿気(水)に触れると、湿気により浸食されやすい性質がある。そのため従来の圧電デバイスでは、圧電振動片のニッケルタングステン(NiW)層が外気の湿気により浸食されて除去されてしまう場合があり、さらに、ニッケルタングステン(NiW)層の除去と共に圧電振動片に形成されるクロム(Cr)層も除去されてしまう場合があった。この場合、枠部を形成する水晶との接合強度が弱い金(Au)層が枠部に直接接触することになるため、圧電デバイス内のキャビティの気密が確保できず、耐湿性が悪くなる場合があった。また、圧電振動片のクロム(Cr)層が除去されないようにクロム(Cr)層を厚く形成したとしても、クロム(Cr)層のクロム(Cr)がニッケルタングステン(NiW)層に拡散することによりクロム(Cr)層の厚さが薄くなるためその効果が小さく、また、クロム(Cr)層を厚く形成する場合にはクリスタルインピーダンス(CI)が悪化するという問題が生じる。
【0036】
これに対して圧電デバイス100では、第1層191Aを構成するクロム(Cr)層の厚さをクリスタルインピーダンス(CI)が許容範囲内に収まる厚さに形成されても、酸化クロム(Cr
2O
3)膜191Dが第3層191Cを構成する金(Au)層、及び第2層191Bを構成するニッケルタングステン(NiW)層を介して第1層191Aを構成するクロム(Cr)層にまで拡散することにより第1層191Aを構成するクロム(Cr)層の全てが除去されることを防ぐことができる。そのため、圧電デバイス100では、第3層191Cを構成する金(Au)層が枠部122に直接接触することが防がれ、キャビティ101内の気密を確保でき、耐湿性が悪化することを防ぐことができる。
【0037】
(第2実施形態)
圧電デバイスでは、引出電極又はベース板に形成される電極を様々な形状又は構成に形成することができる。以下に、引出電極又はベース板に形成される電極が圧電デバイス100とは異なる圧電デバイス100の変形例を示す。また、以下の実施形態では、第1実施形態と同様の部分については第1実施形態と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
<圧電デバイス200の構成>
図6(a)は、圧電振動片220の下面図である。圧電振動片220は、圧電振動片120(
図3(b)参照)において、枠部122の−Y’軸側の面に引出電極130bの代わりに引出電極230bが形成されている。これ以外の圧電振動片220の構成は圧電振動片120と同様である。引出電極230bでは、電極膜190が枠部122の−Y’軸側の面の最外周に接しないように形成されている。また、電極膜190の表面には酸化クロム膜191Dが形成されるが、酸化クロム膜191Dは枠部122の−Y’軸側の面の最外周に接するように形成されている。
【0039】
図6(b)は、圧電デバイス200の部分断面図である。圧電デバイス200は主に、ベース板140と、圧電振動片220と、リッド板110と、により構成されている。圧電デバイス200では、圧電デバイス100において引出電極130bの代わりに引出電極230bが形成され、端部電極146の代わりに端部電極246が形成される。これ以外の圧電デバイス200の構成は圧電デバイス100と同様である。また、
図6(b)では、
図5と同様の部分に相当する圧電デバイス200の部分断面図が示されている。
【0040】
圧電デバイス200の引出電極230bは、
図6(b)に示されるように、電極膜190が枠部122の−Y’軸側の面の外側端部にまで形成されておらず、酸化クロム膜191Dのみが枠部122の−Y’軸側の面の外側端部にまで形成されている。これにより、引出電極230bでは酸化クロム膜191Dが電極膜190の側面をも覆うように形成される。また、端部電極246は、引出電極230bの酸化クロム膜191Dの表面に接合するように形成され、端部電極146と同様にスパッタ膜192A及び無電解メッキ膜192Bにより構成される。
【0041】
引出電極の金(Au)層が圧電デバイスの表面に露出する圧電デバイスでは、引出電極の金(Au)層にハンダ152が付着した場合にハンダ152のスズ(Sn)が引出電極の金(Au)層を介して圧電振動片の励振電極に到達し、励振電極をも浸食することで圧電振動片の周波数をずらし、又は圧電振動片の発振を妨げる場合がある。圧電デバイス200では、圧電デバイス200の表面に引出電極230bの金(Au)層が露出しない。これにより、ハンダ152が引出電極230bの金(Au)層に接触することが防がれている。
【0042】
<圧電デバイス300の構成>
図7(a)は、圧電振動片320の下面図である。圧電振動片320は、圧電振動片120(
図3(b)参照)において、枠部122の−Y’軸側の面に引出電極130bの代わりに引出電極330bが形成されている。これ以外の圧電振動片320の構成は圧電振動片120と同様である。引出電極330bは、引出電極130bと同様に電極膜190と電極膜190の表面に形成される酸化クロム膜191Dとにより構成されている。しかし、引出電極330bの酸化クロム膜191Dは、枠部122の−Y’軸側の面の電極膜190が形成されていない領域にも形成されている。酸化クロム膜191Dは枠部122の−Y’軸側の面をほぼ覆うように形成されるが、+Y’軸側の面の励振電極128に接続される引出電極330bと+Y’軸側の面の励振電極128に接続される引出電極330bとの間の絶縁性を保つために、互いの引出電極330bの間に酸化クロム膜191Dが形成されない絶縁領域183a及び絶縁領域183bが形成される。
【0043】
絶縁領域183a及び絶縁領域183bは、枠部122の−Y’軸側の面の内側の辺と外側の辺とを繋ぐように形成されている。これにより、各引出電極330b間の絶縁が保たれる。また、絶縁領域183a及び絶縁領域183bにおける枠部122の−Y’軸側の面の内側の辺と外側の辺との間の経路の長さは、枠部122の−Y’軸側の面の内側の辺と外側の辺との幅よりも長く形成されている。
図7(a)では、絶縁領域183aが枠部122の−Y’軸側の面の+Z’軸側の中央付近、絶縁領域183bが枠部122の−Y’軸側の面の−X軸側の中央付近に形成されているが、絶縁領域183a及び絶縁領域183bの形成される位置はこの位置に限られない。
【0044】
図7(b)は、圧電デバイス300の部分断面図である。圧電デバイス300は主に、ベース板140と、圧電振動片320と、リッド板110と、により構成されている。
図7(b)では、圧電デバイス300の
図7(a)のC−C断面を含む部分断面図が示されており、リッド板110が省略されている。酸化クロム膜191Dの厚さT1は、1000オングストローム(Å)又はそれ以下となるように形成される。また、ベース板140と枠部122との間の距離T2は、例えば300μmに形成される。
【0045】
圧電デバイスでは、接合材151として用いられる低融点ガラスを水晶により形成される枠部122に直接接合させる場合には、低融点ガラスと枠部122との間の接合面を介して湿気等がキャビティ101内に入り、キャビティ101内の湿度が上昇し易い。これにより、圧電振動片の周波数変化が起こり易くなるという問題が生じる。
【0046】
圧電デバイス300では、
図7(a)に示されるように、電極膜190が形成されない枠部122の−Y’軸側の面の領域にも酸化クロム膜191Dが形成されることにより、接合材151として用いられる低融点ガラスと枠部122とが直接接合される領域が少なくなるように形成されている。低融点ガラスは水晶よりも酸化クロムと接合する方が接合強度が強いため、低融点ガラスと酸化クロムとが接合される領域では低融点ガラスと枠部122とが直接接合される領域よりも湿気を通し難くなる。そのため、圧電デバイス300では、低融点ガラスと枠部122との間の接合面を介してキャビティ101に侵入する湿気等の量を減らすことができる。また、低融点ガラスと枠部122とが直接接合されている絶縁領域183a及び絶縁領域183bでは、キャビティ101の内外を繋ぐ経路の長さが枠部122の−Y’軸側の面の内側の辺と外側の辺との幅よりも長く形成されることにより、低融点ガラスと枠部122との間の接合面を介してキャビティ101内に湿気等が侵入し難くなっている。これらのことにより、圧電デバイス300では、圧電デバイス100と同様に酸化クロム膜191Dが電極膜190を覆うことによりキャビティ101内の気密を確保して耐湿性の悪化を防ぐと共に、低融点ガラスと枠部122とが直接接合される領域が少なくなるように形成されることでキャビティ101内の湿度が上昇して圧電振動片の周波数変化が起こる等の問題の発生が防がれている。
【0047】
<圧電デバイス400の構成>
図8(a)は、圧電振動片420の上面図である。圧電振動片420は、圧電振動片120(
図3(a)参照)において、枠部122の+Y’軸側の面に引出電極130aの代わりに引出電極430aが形成されている。これ以外の圧電振動片420の構成は圧電振動片120と同様である。引出電極430aは、引出電極130aと同様に電極膜190を有するが、さらに電極膜190の表面を含む枠部122の+Y’軸側の面の全面に酸化クロム膜191Dが形成されることにより構成される。
【0048】
図8(b)は、圧電デバイス400の部分断面図である。圧電デバイス400は主に、ベース板140と、圧電振動片420と、リッド板110と、により構成されている。圧電デバイス400では、圧電デバイス100において引出電極130aの代わりに引出電極430aが形成される。これ以外の圧電デバイス400の構成は圧電デバイス100と同様である。また、
図8(b)では、
図5と同様の部分に相当する圧電デバイス400の部分断面図が示されている。
【0049】
従来では、電極膜190の第3層191Cの金(Au)膜に低融点ガラスが直接接合されていたが、金(Au)と低融点ガラスとは接合が弱いため、圧電振動片の枠部とベース板との接合強度が弱くなる場合があった。圧電デバイス400では、電極膜190の金(Au)層の表面に酸化クロム膜191Dが形成されることにより、引出電極130bと接合材151を構成する低融点ガラスとの接合強度が強くなる。そのため、圧電振動片420の枠部122とベース板140とが強く接合し、キャビティ101の密封が破れることが防がれている。
【0050】
<圧電デバイス500の構成>
図9は、圧電デバイス500の部分断面図である。圧電デバイス500は、圧電デバイス100において実装端子142、切欠き部電極144、及び端部電極146の代わりに実装端子542、切欠き部電極544、及び端部電極546が形成された圧電デバイスである。実装端子542、切欠き部電極544、及び端部電極546は、スパッタ膜192Aがスパッタ又は蒸着などにより形成され、スパッタ膜192Aの表面にハンダ膜192Cが形成されている。ハンダ層192Cは、スパッタ層192Aの表面にハンダを印刷することにより形成される。このハンダ膜の形成では、他にハンダ槽に浸すことによりハンダ膜を形成するDIP方式が考えられる。しかし、圧電デバイスはウエハに多数の圧電デバイスが形成された後にウエハを切断して個々の圧電デバイスが形成されるが、DIP方式ではウエハにかかる熱衝撃が大きくなるため採用することができない。印刷によるハンダ膜の形成ではこの様な熱衝撃がウエハにかかることがないため好ましい。
【0051】
実装端子は、スパッタにより膜が形成されるが、スパッタによる膜のみでは導通保証が困難であるため、スパッタ膜の表面に無電解メッキが形成される。しかし、無電解メッキでは材料費及び工数がかかり、メッキの条件管理も厳しいという問題がある。圧電デバイス500では、無電解メッキ膜を形成する代わりにハンダ印刷を行うことでハンダ膜192Cを形成し、実装端子の導通を確保している。また、圧電デバイス500では無電解メッキの工程が無いことにより、無電解メッキの材料費等を削減することが出来るため好ましい。
【0052】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。また、各実施形態の特徴を様々に組み合わせて実施することができる。
【0053】
また、上記の実施形態では、圧電振動片がATカットの水晶であったが、Zカット又はBTカットなどの水晶を用いてもよい。また、圧電デバイスは水晶振動子であったが、発振回路を備えたICを搭載した圧電発振器であってもよい。また、圧電振動片は水晶で形成されたが、水晶以外の圧電材料、例えばタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム又は圧電セラミックを用いてもよい。