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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-233219(P2015-233219A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】表面実装水晶振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20151201BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20151201BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   H03H9/02 A
   H03H9/02 K
   H03B5/32 H
   H01L23/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-119316(P2014-119316)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征司
(72)【発明者】
【氏名】上木 健一
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA43
5J079FA01
5J079HA04
5J079HA07
5J079HA28
5J079HA29
5J108BB02
5J108EE03
5J108EE07
5J108FF06
5J108GG03
5J108GG16
5J108JJ03
(57)【要約】
【課題】 ベース裏面の実装半田が拡散して上面に達して接続端子や支持電極下層部に溶融するのを防ぎ、耐熱性を向上させて、特性の劣化を防止することができる表面実装水晶振動子を提供する。
【解決手段】 ベース1の表面に、ベース1の角部において基板の上面と下面とを接続するスルー端子11と、ベース1の下面に形成された実装端子16と、ベース1の上面において、スルー端子11に接し、スルー端子11を囲むように、スルー端子11の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成された半田侵入防止部20とを設けた表面実装水晶振動子としている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形のセラミック基板上に水晶片が搭載される表面実装水晶振動子であって、
前記基板の角部に形成され、前記基板の上面と下面とを接続するスルー端子と、
前記基板の下面に形成され、実装基板に接続する実装端子と、
前記基板の上面において、前記スルー端子に接し、前記スルー端子を囲むように、前記スルー端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されたパターンから成る半田侵入防止部とを備えたことを特徴とする表面実装水晶振動子。
【請求項2】
半田侵入防止部は、スルー端子の周囲に形成された本体パターンと、前記本体パターンから基板の長辺に沿って張り出した第1の張り出しパターンと、前記本体パターンから前記基板の短辺に沿って張り出した第2の張り出しパターンとを備えたことを特徴とする請求項1記載の表面実装水晶振動子。
【請求項3】
基板の上面に形成され、水晶片を保持する支持電極と、前記支持電極の下層に形成される支持電極下層部と、前記支持電極下層部に接続し、前記基板の角部方向に形成された接続端子とを備え、
半田侵入防止部が、前記角部方向に形成された接続端子と当該角部に形成されたスルー端子との間で、前記スルー端子を囲むように、前記スルー端子及び前記接続端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の表面実装水晶振動子。
【請求項4】
半田侵入防止部が、支持電極に接続されないスルー端子を囲むように、前記スルー端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されていることを特徴とする請求項3記載の表面実装水晶振動子。
【請求項5】
スルー端子と、実装端子と、接続端子と、支持電極下層部とが、銀・パラジウムによって形成され、半田侵入防止部がニッケル又はクロムによって形成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の表面実装水晶振動子。
【請求項6】
支持電極に接続されないスルー端子を複数備え、
前記複数のスルー端子の内、特定のスルー端子に一端が接続され、前記特定のスルー端子以外のスルー端子に他端が接続されるよう、基板上に温度センサが搭載されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか記載の表面実装水晶振動子。
【請求項7】
矩形のセラミック基板上に水晶片が搭載される発振器であって、
前記水晶片の下側で前記基板の上面又は下面に空間が形成され、当該空間に発振回路が収納されたものであり、
前記基板の角部に形成され、前記基板の上面と下面とを接続するスルー端子と、
前記基板の上面に形成され、前記水晶片を保持する支持電極と、
前記支持電極の下層に形成される支持電極下層部と、
前記支持電極下層部に接続する接続端子と、
前記基板の下面に形成され、実装基板に接続する実装端子と、
前記基板の上面において、前記スルー端子と前記接続端子との間で、前記スルー端子を囲むように、前記スルー端子及び前記接続端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されたパターンから成る半田侵入防止部とを備えたことを特徴とする発振器。
【請求項8】
半田侵入防止部は、スルー端子の周囲に形成された本体パターンと、前記本体パターンから基板の長辺に沿って張り出した第1の張り出しパターンと、前記本体パターンから前記基板の短辺に沿って張り出した第2の張り出しパターンとを備えたことを特徴とする請求項7記載の発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装用の水晶振動子に係り、特に実装半田の拡散による特性劣化を防ぎ、耐熱性を向上させて、良好な特性を得ることができる表面実装水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
表面実装水晶振動子は、小型・軽量であることから、特に携帯型の電子機器に、周波数や時間の基準源として内蔵される。
従来の表面実装水晶振動子は、セラミック基板上に水晶片を搭載し、凹状のカバーを逆さにして被せて密閉封入したものがある。
【0003】
特に、従来の表面実装水晶振動子の一般的な構成は、セラミック基板上に例えばAgPd(銀・パラジウム)の金属電極のパターンが形成され、更に、水晶片を支持する部分にAgPdの支持電極が積層され、その支持電極の上に水晶片が搭載されるようになっている。
【0004】
[従来の表面実装水晶振動子の電極パターン:図3
従来の表面実装水晶振動子について図3を使って説明する。図3は、従来の表面実装水晶振動子の電極パターンの平面説明図である。
図3に示すように、従来の表面実装水晶振動子の電極パターンは、セラミック基板から成るベース1の四隅に形成されたスルー端子11,12と、ベース1の上面に形成された支持電極下層部14のパターンと、支持電極下層部14の上に形成され、水晶片に接続する支持電極15と、支持電極15とスルー端子11とを接続する接続端子13とを基本的に有している。
ここでは、接続端子13が接続するスルー端子を11とし、接続端子13が接続しないスルー端子を12として区別している。
【0005】
スルー端子11,12は、個々の水晶振動子に分離する前のセラミックシート状態において、個々の水晶振動子の領域を定めるブレイクラインの交点に設けられたスルーホールの壁面に形成されたものであり、ベース1の表面と裏面とを接続する電極である。
そして、スルー端子11,12と、接続端子13と、支持電極下層部14はAgPdで形成され、支持電極15はAgで形成されている。
【0006】
[従来の表面実装水晶振動子の電極パターンの断面:図4
次に、従来の表面実装水晶振動子の電極パターンの断面について図4を用いて説明する。図4は、図3のB−B′断面説明図である。
図4に示すように、従来の表面実装水晶振動子は、ベース1の上面(表面)に支持電極下層部14と、接続端子13とが形成され、更に支持電極下層部14の上に支持電極15が形成されている。
【0007】
また、ベース1の角部の側面部分(角部のスルーホールの壁面)にはスルー端子11が形成され、ベース1の裏面には、実装基板に接続する実装端子16が形成されている。
尚、図4では示されないが、スルー端子12は、スルー端子11と同様にベース1の角部の側面に形成されているが、接続端子13には接続されていない。
そして、実装時には、実装基板上の端子と、ベース1の実装端子16とが半田によって接続されるものである。
【0008】
[半田の侵入]
ところで、水晶振動子を実装基板に搭載する場合、実装端子16とベース1の下面に設けられた実装基板の端子とを半田付けするが、その際、接合部分において電極金属(AgPd)と半田とが原子レベルで相互に混ざり合って(溶融して)接合される。
【0009】
しかし、運用中の加熱等により、半田がベース1の下面だけでなく、スルー端子11を介してベース1の上面に達して、接続端子13、支持電極下層部14にまで侵入し、溶け込んだ半田成分がAgPd層に拡散して、水晶振動子の特性が劣化して不良が発生することがある。
AgPd配線パターンでは、侵入した半田に銀が溶け込んで(食われて)しまい(半田溶融)、接触不良となる場合もある。
【0010】
[関連技術]
尚、表面実装水晶振動子に関する技術としては、特開2013−70357号公報「表面実装水晶振動子及びその製造方法」(日本電波工業株式会社、特許文献1)がある。
特許文献1には、支持電極下層部の上に水晶片を保持する支持電極が形成され、基板の周囲内側に形成された絶縁膜上にカバーが搭載されて、気密封止される表面実装水晶振動子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−70357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、従来の表面実装水晶振動子では、運用中の加熱等によって実装半田がAgPd層に拡散した場合に、スルー端子を介してセラミック基板上面の接続端子や支持電極下層部にまで侵入して、接触不良が発生したり水晶振動子の特性が劣化するという問題点があった。
【0013】
そのため、従来の表面実装水晶振動子は高温環境で使用する場合、耐熱性が低いという問題点があった。
【0014】
尚、特許文献1には、スルー端子と接続端子との間に、半田が溶けにくい材料から成る半田侵入防止部を設けて、支持電極下層部への半田の侵入を阻止することは記載されていない。
【0015】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、実装半田が拡散して接続端子や支持電極下層部に溶融するのを防ぎ、耐熱性を向上させて、特性の劣化を防止することができる表面実装水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、矩形のセラミック基板上に水晶片が搭載される表面実装水晶振動子であって、基板の角部に形成され、基板の上面と下面とを接続するスルー端子と、基板の下面に形成され、実装基板に接続する実装端子と、基板の上面において、スルー端子に接し、スルー端子を囲むように、スルー端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されたパターンから成る半田侵入防止部とを備えたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記表面実装水晶振動子において、半田侵入防止部は、スルー端子の周囲に形成された本体パターンと、本体パターンから基板の長辺に沿って張り出した第1の張り出しパターンと、本体パターンから基板の短辺に沿って張り出した第2の張り出しパターンとを備えたことを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記表面実装水晶振動子において、基板の上面に形成され、水晶片を保持する支持電極と、支持電極の下層に形成される支持電極下層部と、支持電極下層部に接続し、基板の角部方向に形成された接続端子とを備え、半田侵入防止部が、角部方向に形成された接続端子と当該角部に形成されたスルー端子との間で、スルー端子を囲むように、スルー端子及び接続端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記表面実装水晶振動子において、半田侵入防止部が、支持電極に接続されないスルー端子を囲むように、当該スルー端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記表面実装水晶振動子において、スルー端子と、実装端子と、接続端子と、支持電極下層部とが、銀・パラジウムによって形成され、半田侵入防止部がニッケル又はクロムによって形成されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、上記表面実装水晶振動子において、支持電極に接続されないスルー端子を複数備え、複数のスルー端子の内、特定のスルー端子に一端が接続され、特定のスルー端子以外のスルー端子に他端が接続されるよう、基板上に温度センサが搭載されていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、矩形のセラミック基板上に水晶片が搭載される発振器であって、水晶片の下側で基板の上面又は下面に空間が形成され、当該空間に発振回路が収納されたものであり、基板の角部に形成され、基板の上面と下面とを接続するスルー端子と、基板の上面に形成され、水晶片を保持する支持電極と、支持電極の下層に形成される支持電極下層部と、支持電極下層部に接続する接続端子と、基板の下面に形成され、実装基板に接続する実装端子と、基板の上面において、スルー端子と接続端子との間で、スルー端子を囲むように、スルー端子及び接続端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されたパターンから成る半田侵入防止部とを備えたことを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記発振器において、半田侵入防止部は、スルー端子の周囲に形成された本体パターンと、本体パターンから基板の長辺に沿って張り出した第1の張り出しパターンと、本体パターンから基板の短辺に沿って張り出した第2の張り出しパターンとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、矩形のセラミック基板上に水晶片が搭載される表面実装水晶振動子であって、基板の角部に形成され、基板の上面と下面とを接続するスルー端子と、基板の下面に形成され、実装基板に接続する実装端子と、基板の上面において、スルー端子に接し、スルー端子を囲むように、スルー端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されたパターンから成る半田侵入防止部とを備えた表面実装水晶振動子としているので、基板下面においてAgPdから成る実装端子に半田が溶融して、スルー端子を介して基板の上面に達した場合でも、半田侵入防止部によって半田が拡散するのを防ぐことができる効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、上記表面実装水晶振動子において、半田侵入防止部は、スルー端子の周囲に形成された本体パターンと、本体パターンから基板の長辺に沿って張り出した第1の張り出しパターンと、本体パターンから基板の短辺に沿って張り出した第2の張り出しパターンとを備えた表面実装水晶振動子としているので、接続端子のAgPdパターンがベースの端面に露出しないようにして、基板下面からベースの側面を介して半田が接続端子に侵入するのを防ぐことができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、上記表面実装水晶振動子において、基板の上面に形成され、水晶片を保持する支持電極と、支持電極の下層に形成される支持電極下層部と、支持電極下層部に接続し、基板の角部方向に形成された接続端子とを備え、半田侵入防止部が、角部方向に形成された接続端子と当該角部に形成されたスルー端子との間で、スルー端子を囲むように、スルー端子及び接続端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されている表面実装水晶振動子としているので、基板下面においてAgPdから成る実装端子に半田が溶融して、スルー端子を介して基板の上面に達した場合でも、半田侵入防止部において半田が拡散するのを防ぐことができ、支持電極下層部に半田が侵入して水晶振動子の特性が劣化するのを防ぐことができ、水晶振動子の耐熱性を向上させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、上記表面実装水晶振動子において、半田侵入防止部が、支持電極に接続されないスルー端子を囲むように、当該スルー端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されている表面実装水晶振動子としているので、基板4つの角部の構成を同じにして、製造を容易にすることができる効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、矩形のセラミック基板上に水晶片が搭載される発振器であって、水晶片の下側で基板の上面又は下面に空間が形成され、当該空間に発振回路が収納されたものであり、基板の角部に形成され、基板の上面と下面とを接続するスルー端子と、基板の上面に形成され、水晶片を保持する支持電極と、支持電極の下層に形成される支持電極下層部と、支持電極下層部に接続する接続端子と、基板の下面に形成され、実装基板に接続する実装端子と、基板の上面において、スルー端子と接続端子との間で、スルー端子を囲むように、スルー端子及び接続端子の材料よりも半田が溶融しにくい材料で形成されたパターンから成る半田侵入防止部とを備えた発振器としているので、基板下面においてAgPdから成る実装端子に半田が溶融して、スルー端子を介して基板の上面に達した場合でも、半田侵入防止部において半田が拡散するのを防ぐことができ、支持電極下層部に半田が侵入して水晶振動子の特性が劣化するのを防ぐことができ、発振器の耐熱性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の電極パターンの平面説明図である。
図2図1のA−A′断面説明図である。
図3】従来の表面実装水晶振動子の電極パターンの平面説明図である。
図4図3のB−B′断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子は、セラミック基板の上面において、スルー端子のパターンと接続端子のパターンとの間に、半田が溶融しにくいCr(クロム)又はNi(ニッケル)から成る半田侵入防止部を備え、AgPdから成る基板下面の実装端子に半田が溶融したとしても、半田侵入防止部によって接続端子や支持電極下層部に半田が拡散して溶け込むのを防ぐことができ、特性の劣化を防止することができるものである。
【0031】
[実施の形態の表面実装水晶振動子の電極パターン:図1
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の電極パターンについて図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の電極パターンを示す平面説明図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子(本水晶振動子)の電極パターンは、図3に示した従来の水晶振動子と同様の部分として、セラミック基板から成るベース1の四隅に形成されたスルー端子11,12と、ベース1の表面に形成された支持電極下層部14と、支持電極下層部14の上に形成された支持電極15とを備えている。
【0032】
スルー端子11,12は、四隅の孔の壁面部分だけでなく、ベース1の上面及び下面において他の電極と接続しやすいように、上面及び下面の孔(スルーホール)の周りを取り囲む扇形(扇面形、円弧状)のパターンを備えている。つまり、扇形のパターンは、中心にスルーホールが形成された円形パターンの4分割領域の形状である。
本水晶振動子では、ベース1の上面及び下面のスルー端子11,12は、従来に比べて幅が狭く形成されている。
【0033】
また、上面及び下面のスルー端子の形状を、中心にスルーホールが形成された四角形パターンの4分割領域の形状としてもよい。
尚、ここでは、ベース1の一方の対角線上にあり、後述する接続端子13aに接続するスルー端子をスルー端子11とし、他方の対角線上にあり、接続端子13aに接続しないスルー端子をスルー端子12としている。スルー端子12は、支持端子15にも接続しない。
【0034】
また、ベース1の裏面には、スルー端子11,12に接続すると共に、実装基板の端子に接続する実装端子16が形成されている。
そして、スルー端子11,12、接続端子13a,13b、支持電極下層部14、実装端子16は酸化されにくいAgPdで形成され、支持電極15はAgで形成されている。
【0035】
[接続端子13a,13b]
本水晶振動子では、接続端子13は、後述する半田侵入防止部20と支持電極下層部14とを接続するものであり、支持電極下層部14に接続し、ベースの一方の対角線上の角部に向かって形成された直線状の接続端子13aと、半田侵入防止部20に接続する扇形(扇面形、円弧状)の接続端子13bとで構成されている。
【0036】
[ダミー端子13b′]
また、スルー端子12側には、接続端子13bと同一形状で半田侵入防止部20に接続して形成されたダミー端子13b′が設けられている。ダミー端子13b′は、接続端子13a、支持電極下層部14及び支持電極15には接続しない。
【0037】
[半田侵入防止部20]
そして、本水晶振動子は、ベース1の上面に半田侵入防止部20を備えている。
半田侵入防止部20は、本水晶振動子の特徴部分であり、Ni(ニッケル)又はCr(クロム)で形成され、ベース1の一方の対角線上のスルー端子11と接続端子13bとの間を埋めるように、スルー端子11と接続端子13bの円弧状のパターンに密着して形成されている。
同様に、半田侵入防止部20は、他方の対角線上のスルー端子12とダミー端子13b′との間を埋めるように、スルー端子12とダミー端子13b′の円弧状のパターンに密着して形成されている。
【0038】
更に、半田侵入防止部20は、3つのパターンから成り、スルー端子11の周囲に設けられた本体パターン20aと、本体パターン20aからベース1の長辺に沿って張り出した張り出しパターン20bと、短辺に沿って張り出した張り出しパターン20cとから構成されている。
張り出しパターン20bは、請求項に記載した第1の張り出しパターンに相当し、張り出しパターン20cは、請求項に記載した第2の張り出しパターンに相当する。
【0039】
図1に示すように、半田侵入防止部20の本体パターン20aは、扇形のパターンであり、スルー端子11,12を囲むように、スルー端子11,12の外周(外側の円弧)全体に接すると共に、接続端子13b又はダミー端子13b′の内周(内側の円弧)全体に接するように形成されている。
また、張り出しパターン20b,20cは矩形のパターンで、接続端子13b(又はダミー端子13b′)とベース1の端面との間に設けられ、それぞれベース1の長辺、短辺に接するように形成されている。
【0040】
つまり、本水晶振動子では、支持電極15に接続するか否かに関わらず、スルー端子11,12、半田侵入防止部20、接続端子13b又はダミー端子13b′をベース1の全ての角部に設けた構成としている。
角部の構成を共通とすることにより、複数のベースがマトリクス状に配列されたシート状で製造する際のパターニングを容易にすることができるものである。
【0041】
また、半田侵入防止部20のNi及びCrは、導電性を備えると共に、スルー端子11,12や接続端子13a,13b及びダミー端子13b′に用いられるAgPdに比べて半田と相互に溶融しにくい材料であり、半田と接しても半田が内部に拡散しにくく、半田溶融が発生しにくい金属である。
【0042】
すなわち、本水晶振動子の構成は、従来、AgPdの同一材料で一体に形成されていたスルー端子と接続端子との間を分断して広げ、その隙間に半田溶融が発生しにくい半田侵入防止部20を設けた構成とみなすことができ、スルー端子11から接続端子13への半田の拡散を阻止する構成としたものである。但し、実際の製造方法はこれとは異なる。
【0043】
そして、本水晶振動子では、ベース1の裏面においてAgPdから成る実装端子16に半田が溶融して、スルー端子11を介して半田がベース1の上面にまで拡散した場合でも、半田侵入防止部20によって半田の更なる拡散を防ぎ、接続端子13a,13b、支持電極下層部14に侵入しないようにして、特性の劣化を防ぐことができるものである。
【0044】
また、これにより、従来に比べて高温の環境、つまり半田が拡散し易い環境においても不良が発生するのを防ぐことができ、水晶振動子の耐熱性を向上させることができるものである。
【0045】
更に、半田侵入防止部20が、ベース1の端面に沿って張り出しパターン20b、20cを備えることにより、接続端子13b及びダミー端子13b′のAgPdがベース1の端面に露出しないようにして、裏面からの半田が、ベース1の側面を介して接続端子13b、ダミー端子13b′に侵入するのを防ぐことができるものである。
【0046】
尚、図1の例では、張り出しパターン20b,20cの形状を矩形状としているが、接続端子13bがベース1の端面に露出するのを防ぐ形状であれば、三角形や台形等の別の形状であってもよい。
【0047】
半田侵入防止部20の寸法は適宜調整可能であるが、水晶振動子の小型化等のため、扇形のパターンの幅は半田の侵入を防止できる範囲でなるべく細く形成することが望ましい。
また、ここでは、スルー端子11,12の周囲に半田侵入防止部20を形成しているが、スルー端子11側のみに半田侵入防止部20を形成した構成としてもよい。
尚、図1では、発明の特徴を理解しやすいよう、半田侵入防止部20の寸法をやや大きめに描いている。
【0048】
更に、従来のベース1の表面におけるスルー端子11の一部を同心円の扇形に切り取って形成される隙間部分に、半田侵入防止部20の本体パターン20aをはめ込むように形成してもよく、このように形成した場合には、スルー端子11と本体パターン20aと接続パターン13bとを合わせた幅(扇形の直径方向の長さ)が、従来のスルー端子11とほぼ同等となる。
【0049】
[本水晶振動子の電極パターンの断面:図2
次に、本水晶振動子の電極パターンの断面について図2を用いて説明する。図2は、図1のA−A′断面説明図である。
図2に示すように、本水晶振動子の電極パターンは、従来と同様に、ベース1の上面にAgPdから成る支持電極下層部14と接続端子13(13a,13b)とが形成され、支持電極下層部14の上にAgから成る支持電極15が形成されている。支持電極15の上に水晶片が搭載される。
更に、ベース1の側面にはスルー端子11が形成され、裏面には実装端子16が形成されている。
【0050】
そして、ベース1の上面において、スルー端子11と接続端子13(接続端子13a,13b)との間に、Ni又はCrから成る半田侵入防止部20が形成されている。
半田侵入防止部20は、スルー端子11や接続端子13、支持電極下層部14と同じ厚さに形成され、スルー端子11、半田侵入防止部20、接続端子13の表面はほぼ平坦になっている。
【0051】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子によれば、ベース1の上面において、スルー端子11と接続端子13bとの間に、スルー端子11を囲むように、半田と相互に溶融しにくいNi又はCrから成る半田侵入防止部20のパターンを形成した構成としているので、ベース1の下面にある実装端子16の半田付け部分から拡散した半田が、スルー端子11を介してベース1の上面に達した場合でも、半田侵入防止部20で拡散を阻止して、半田が接続端子13、支持電極下層部14に侵入してAgが溶融するのを防ぐことができ、水晶振動子の特性の劣化を防ぐことができる効果がある。
【0052】
また、本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子によれば、半田侵入防止部20は、スルー端子11の周囲に設けられた本体パターン20aから、ベース1の短辺及び長辺に沿って張り出して形成された張り出しパターン20b,20cを備えているので、接続端子13b及びダミー端子13b′のAgPdパターンがベース1の端面に露出するのを防ぎ、ベース1の側面から半田が接続端子13b,13a、支持電極下層部14、及びダミー端子13b′に侵入するのを防ぐことができる効果がある。
【0053】
また、本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子によれば、半田侵入防止部20を設けたことにより、従来よりも高温の環境で使用した場合でも、不良の発生を抑えることができ、製品の耐熱性を向上させることができる効果がある。
【0054】
[発振器への応用]
ここまでは、水晶振動子について説明したが、水晶片の下側にキャビティ(空間)を形成して、そのキャビティに発振回路ICを収納した発振器に適用してもよい。
また、基板の裏面(下面)にキャビティを形成し、そのキャビティに発振回路ICを搭載して、基板に形成されたスルーホールを介して表面の水晶片と電気的に接続する構成としてもよい。
【0055】
[サーミスタ付き水晶振動子への応用]
また、別の応用例として、カバー内でベース上に水晶片と温度センサ(サーミスタ)を搭載したサーミスタ一体型の構造がある。
具体的には、ベース1上において、支持電極下層部14及び支持電極15に電気的に接続しないスルー端子12の内、一方のスルー端子12にサーミスタの一端を接続し、他方のスルー端子12にサーミスタの他端を接続したものである。
この場合、いずれか一方のスルー端子12に電源電圧を印加し、他方のスルー端子12をグランドレベルに接続する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、実装半田の拡散による特性劣化を防ぎ、耐熱性を向上させて、良好な特性を得ることができる表面実装水晶振動子に適している。
【符号の説明】
【0057】
1...ベース、 11,12...スルー端子、 13...接続端子、 13b′...ダミー端子、 14...支持電極下層部、 15...支持電極、 16...実装端子、 20...半田侵入防止部
図1
図2
図3
図4