(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-233228(P2015-233228A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】眼鏡型通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/08 20060101AFI20151201BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20151201BHJP
H01Q 19/32 20060101ALI20151201BHJP
H01Q 19/24 20060101ALI20151201BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
H04B1/08 K
H01Q3/26 Z
H01Q19/32
H01Q19/24
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-119567(P2014-119567)
(22)【出願日】2014年6月10日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 忠彦
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5K016
【Fターム(参考)】
5J020BA04
5J020BC04
5J021AA10
5J021AB06
5J021DB01
5J021EA03
5K016BA06
5K016CA01
5K016CA09
5K016CC00
5K016JA09
(57)【要約】
【課題】 使用者の頭部の動きに伴って、アンテナのビームの指向方向を連動させることができる眼鏡型通信装置を提供する。
【解決手段】 使用者の頭部に装着される眼鏡型通信装置1であって、装着時に使用者の頭部を左右両側から挟むように配置される一対のテンプル2a、2bと、一対のテンプル2a、2bの一端側が接続されるフレーム3と、外部と電波による無線通信を行うためのアンテナ4,5とを備え、アンテナ4,5は、使用者の装着時にフレーム3の前面方向に指向性を有するようにそれぞれテンプル2a及びフレーム3に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に装着される眼鏡型通信装置であって、
前記使用者の装着時に前記使用者の頭部を左右両側から挟むように配置される一対のテンプルと、
前記一対のテンプルの一端側が接続されるフレームと、
外部と電波による無線通信を行うためのアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記使用者の装着時に前記フレームの前面方向に指向性を有するように前記テンプル又は/及び前記フレームに配置されていることを特徴とする眼鏡型通信装置。
【請求項2】
前記使用者の視線方向を検出する視線検出手段と、
前記視線検出手段によって検出された視線方向の検出結果に基づいて、前記アンテナのビーム方向を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡型通信装置。
【請求項3】
前記アンテナとして、前記一対のテンプルの少なくとも一方側のテンプルにエンドファイア型のアンテナが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡型通信装置。
【請求項4】
前記アンテナは、平板状の導体からなる地板上に設けられる誘電体基板内にスルーホールで形成されていることを特徴とする請求項3に記載の眼鏡型通信装置。
【請求項5】
前記地板は、前記テンプルを前記フレームに対して折り畳み自在に接続するための接続部材よりも外側に位置し、且つ、一端側が前記接続部材よりも前面側へ張り出すように前記テンプルの側面に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の眼鏡型通信装置。
【請求項6】
前記アンテナのビームチルト角を前記使用者の装着時の前記テンプルの開き角と一致させることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の眼鏡型通信装置。
【請求項7】
前記アンテナとして、更に前記フレームにブロードサイド型のアンテナが配置されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の眼鏡型通信装置。
【請求項8】
前記アンテナの放射素子として折り返し構造を持つことを特徴とする請求項7に記載の眼鏡型通信装置。
【請求項9】
外部と電波による無線通信を行うために、前記使用者の頭部又は視線の移動回転を促す表示を行う画像表示部又は音声を出力する音声出力部を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の眼鏡型通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の頭部に装着した状態で無線通信を行うための眼鏡型通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信システムの超高速化が急速に進んでいる。この原因は、モバイル環境における大規模な動画情報の交換にあり、電波資源の急速な不足が大きな問題となっている。また、人間の情報収集の手段には、聴覚、触覚、味覚、視覚等があるが、視覚の占める情報収集の割合は全体の約70%を占めており、次世代のモバイル端末として、動画を主要コンテンツとして扱う眼鏡型マルチメディア端末が注目されている。
【0003】
一方で、人体は損失性媒質であり、アンテナに対する近接人体の影響は、その入力インピーダンス、放射特性に影響を与えることが知られている。本発明者らは、これまでに人体への装着を想定するアンテナとして、人体指部や人体腕部への装着を想定して、誘電体基板内に構成した複数のスルーホールによりアンテナ放射素子を形成したスルーホール型八木・宇田アンテナを提案している(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。また、モバイル端末の分野においては、今後、高速・大容量通信が必要となるコンテンツは動画像情報であり、これに対応するためにミリ波帯を利用することが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】野々山律男、若林孝行、前田忠彦、「人体指部に装着したプリント基板内に構成したスルーホール型八木・宇田アンテナ」、信学論(B)、vol.J92-B、no.9、pp.1440-1448、Sep. 2009.
【非特許文献2】辻尾良太、池井慎弥、前田忠彦、「人体腕部に装着することを想定したスルーホール型八木・宇田アンテナの配列化」、信学論(B)、vol.J94-B、no.9、pp.1122-1132、Sep. 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ミリ波帯の伝送では伝播損失の増加に伴って単向性で利得の高いアンテナの使用が想定され、通信を行うことができる方向が限られるため、アンテナのビームの指向方向を適切に合わせることが容易ではないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、使用者の頭部の動きに伴って、アンテナのビームの指向方向を連動させることができる眼鏡型通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の眼鏡型通信装置は、使用者の頭部に装着される眼鏡型通信装置であって、前記使用者の装着時に前記使用者の頭部を左右両側から挟むように配置される一対のテンプルと、前記一対のテンプルの一端側が接続されるフレームと、外部と電波による無線通信を行うためのアンテナと、を備え、前記アンテナは、前記使用者の装着時に前記フレームの前面方向に指向性を有するように前記テンプル又は/及び前記フレームに配置されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の眼鏡型通信装置は、前記使用者の視線方向を検出する視線検出手段と、前記視線検出手段によって検出された視線方向の検出結果に基づいて、前記アンテナのビーム方向を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の眼鏡型通信装置は、前記アンテナとして、前記一対のテンプルの少なくとも一方側のテンプルにエンドファイア型のアンテナが配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の眼鏡型通信装置は、前記アンテナが、平板状の導体からなる地板上に設けられる誘電体基板内にスルーホールで形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の眼鏡型通信装置は、地板が、前記テンプルを前記フレームに対して折り畳み自在に接続するための接続部材よりも外側に位置し、且つ、一端側が前記接続部材よりも前記面側へ張り出すように前記テンプルの側面に配置されていることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の眼鏡型通信装置は、前記アンテナのビームチルト角を前記使用者の装着時の前記テンプルの開き角と一致させることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の眼鏡型通信装置は、前記アンテナとして、更に前記フレームにブロードサイド型のアンテナが配置されていることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の眼鏡型通信装置は、前記アンテナの放射素子として折り返し構造を持つことを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の眼鏡型通信装置は、外部と電波による無線通信を行うために、前記使用者の頭部又は視線の移動回転を促す表示を行う画像表示部又は音声を出力する音声出力部を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の眼鏡型通信装置によれば、装着時に使用者の頭部を左右両側から挟むように配置されるテンプル又は/及びこのテンプルの一端側が接続されるフレームに、装着時、フレームの前面方向に指向性を有するようにアンテナが配置されているので、使用者の頭部の動きに伴って、アンテナのビームの指向方向を連動させることができる。これにより、使用者が大容量の動画像情報等を発信する外部の基地局や通信機器等の方向を向くように頭部を動かすことで、当該基地局等から指向性の高いミリ波であっても適切に受信して無線通信を行うことができるので、大容量の動画像情報等を適切に取得することができる。
【0017】
請求項2に記載の眼鏡型通信装置によれば、使用者の視線方向を検出する視線検出手段によって検出された視線方向の検出結果に基づいて、アンテナのビーム方向を制御することができるので、より利得の高いアンテナを使用することが可能となり、視線だけを外部の基地局等に向けて動かした場合でも、当該基地局等からミリ波を適切に受信して無線通信を行うことができる。
【0018】
請求項3に記載の眼鏡型通信装置によれば、アンテナとして、前記一対のテンプルの少なくとも一方側のテンプルにエンドファイア型のアンテナを配置しているので、眼鏡の形状を有効に利用して、装置全体の小型化を図ることができる共に、外部の基地局等からミリ波を適切に受信して無線通信を行うことができる。
【0019】
請求項4に記載の眼鏡型通信装置によれば、アンテナが、平板状の導体からなる地板上に設けられる誘電体基板内にスルーホールで形成されているので、人体やテンプルに使用される金属等の影響を軽減することができる。
【0020】
請求項5に記載の眼鏡型通信装置によれば、地板は、前記テンプルを前記フレームに対して折り畳み自在に接続するための接続部材よりも外側に位置し、且つ、一端側が前記接続部材よりも前面側へ張り出すように前記テンプルの側面に配置されているので、接続部材が金属性の材質で形成されている場合でも、その影響を受け難くすることができる。
【0021】
請求項6に記載の眼鏡型通信装置によれば、アンテナのビームチルト角を使用者の装着時のテンプルの開き角と一致させているので、一般的な眼鏡の形状のように開き角を有する場合でも、ビームがフレームの前面方向を向くように補正することができる。
【0022】
請求項7に記載の眼鏡型通信装置によれば、アンテナとして、更にフレームにブロードサイド型のアンテナを配置しているので、眼鏡の形状を有効に利用して、装置全体が大型化することを抑制しつつ、無線通信の信頼性及び通信容量を向上させることができる。
【0023】
請求項8に記載の眼鏡型通信装置によれば、ブロードサイド型の前記アンテナの放射素子として折り返し構造を有しているので、アンテナを小型化することができ、厚みの薄いフレームに対しても好適に配置させることができる。
【0024】
請求項9に記載の眼鏡型通信装置によれば、外部と無線通信を行うために、使用者の頭部又は視線の移動回転を促す表示を行う画像表示部又は音声を出力する音声出力部を備えているので、使用者は、効率的に外部の基地局や通信機器等の方向を向くように頭部や視線を動かすことができ、ミリ波帯域での無線通信を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る眼鏡型通信装置の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る眼鏡型通信装置の一例を示す要部拡大平面図である。
【
図3】エンドファイア型のアンテナの構造の一例を示す概略模式図である。
【
図4】エンドファイア型のアンテナの指向性の一例を示すグラフである。
【
図5】エンドファイア型のアンテナの利得の一例を示すグラフである。
【
図6】ブロードサイド型のアンテナの構造の一例を示す概略模式図であって、(a)は上面側を示しており、(b)は底面側を示している。
【
図7】視線移動に伴う指向性制御について説明するための概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る眼鏡型通信装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る眼鏡型通信装置1は、眼鏡型の形状を有しており、使用者の頭部に装着して使用されるものであって、
図1に示すように、一対のテンプル2a,2bと、この一対のテンプル2a、2bの一端側が接続されるフレーム3と、一方側のテンプル2aに配置されるエンドファイア型のアンテナ4と、フレーム3に配置されるブロードサイド型のアンテナ5と、装着時に使用者の左右それぞれの目の前に位置し、動画像等を表示するための画像表示部6と、使用者の視線方向を検出するための視線検出部7と、アンテナ4,5による無線通信や視線検出部7によって検出された視線方向の検出結果に基づくアンテナ4やアンテナ5のビーム方向の制御等、各部の制御を行うための制御ユニット8とを備えている。
【0027】
一対のテンプル2a、2bは、装着時に使用者の頭部を左右両側から挟むように配置されるものであって、一端側は、それぞれ蝶番(接続部材)9を介してフレーム3に対して折り畳み自在に接続されており、他端側には装着時に使用者の耳に掛けるためのモダン21が形成されている。尚、モダン21は、使用者の掛け心地を良くするようにプラスチック樹脂等の被覆部材により形成するようにしても良い。
【0028】
フレーム3は、使用者の左右の目の前方にそれぞれ配置される画像表示部6を保持するための枠体であって、画像表示部6の外周を覆うように設けられている。また、フレーム3の中央には、左右の画像表示部6を連結するためのブリッジが設けられている。尚、フレーム3は、必ずしも画像表示部6の外周全体を覆うように設けられている必要はなく、上側又は下側半分を覆うようにして画像表示部6を保持するもの等、画像表示部6を保持できるように設けられていれば良い。
【0029】
画像表示部6は、眼鏡レンズ面の一部あるいは全面を占有して設置され、アンテナ4やアンテナ5による無線通信によって取得した映像信号等に基づく動画像等を表示するためのものであって、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)や使用者の網膜に画像を投影する網膜走査ディスプレイ等、従来公知の光学手段等を用いたものを利用することができる。
【0030】
アンテナ4は、例えば、外部に設けられる基地局10等と電波による無線通信を行うことにより、基地局10から供給される映像信号等を受信するためのものであって、テンプル2aに配置されている。このアンテナ4としては、例えば、
図3に示すように、平板状の導体からなる地板41と、この地板41上に積層されて設けられる誘電体基板42と、誘電体基板42内に形成されたスルーホール43に導体箔の広がりを有するキャパシタハットを設けて等価的な素子長を変化させている放射素子44等を設けて構成しているスルーホール型の八木・宇田アンテナを用いる。
【0031】
このアンテナ4は、誘電体基板42の長手方向に平行な方向に放射を行う単向性の指向性を有するエンドファイア型アンテナであって、
図2に示すように、テンプル2aの外面側に埋め込まれた状態で配置されており、誘電体基板42の長手方向がテンプル2aに沿うように地板41がテンプル2aの外面に取り付けられているので、テンプル2aが向く方向と略同方向に指向性を有することになる。従って、使用者が眼鏡型通信装置1を頭部に装着した際には、
図1及び
図2に示すように、フレーム3の前面方向に指向性を有するようになる。これにより、使用者が眼鏡型通信装置1を頭部に装着した状態で、頭部を動かすことで、それに伴って、アンテナ4のビームの指向方向も自動的に連動させることができる。
【0032】
通常、人間が視点移動せずに見ることのできる視野角度は10度程度であり、それ以上の角度範囲の場合には眼球あるいは頭部の回転による補足動作が行われる。また、頭部を回転させず違和感なく眼球の回転により視点の移動を行う角度範囲は30度程度であり、これを超えた角度領域では頭部の回転を伴なう補足動作が行われる。従って、使用者の頭部に装着する眼鏡型通信装置1のアンテナ4として、半値角が30度程度であるものを用いれば、後述する視線検出部7によって検出された視線方向の検出結果に基づいてアンテナ4のビーム方向を走査しなくても、使用者が取得したい映像信号等を供給する基地局10の方向を向くように頭部を動かすことで、その指向方向にある基地局10と無線通信を行うことができ、取得したい映像信号等を受信することができる。また、このような半値角が30度程度のアンテナ4は、指向性利得で16dB程度となる。そのため、視線検出部7を設けない場合には、アンテナ4として、半値角が25〜35度程度、指向性利得が14〜16dB程度となるエンドファイア型のアンテナを用いることが好ましい。
【0033】
このような半値角と指向性利得を有し、一般的な構造のテンプル2aに配置することができるアンテナ4としては、例えば、
図3に示すように、地板41の幅Wgを9mm、地板41の長さLgを39mmとし、誘電体基板42の幅Wdを1.8mm、誘電体基板42の長さLdを地板長Lgと同一の39mmに設計しているものを用いることができる。このアンテナ4では、動作周波数を60GHz帯として設計しており、誘電帯基板41の厚さ:0.16mm、比誘電率:2.2、誘電正接:0.001としている。また、誘電体基板42の幅Wdを1.8mmとする場合には、誘電体基板42が設けられている中央の部分を除く部分の地板41がむき出しの状態になる。また、地板41とテンプル2aの外面との間に空隙を設けることは機械的強度の観点から望ましくない。そのため、詳しくは図示しないが、誘電体基板42の幅方向両側の部分に複数の略正方形状のエアーホールを形成することにより、機械的強度を維持しつつ、等価的な比誘電率を低下させて電気特性を満足するような構造に構成しても良い。
【0034】
図4及び
図5は、上記のように設計されたそれぞれのアンテナ4の指向性及び指向性利得の結果を示すグラフである。このようなアンテナ4では、
図4に示すように、約10度程度ビームチルトしている。一方で、一般的な眼鏡のテンプル2a(2b)では、
図2に示すように、人体頭部の形状に合わせるため、約10度程度の開き角θを有する。従って、このアンテナ4では、ビームチルト角θ’とテンプル2aの開き角θとが略一致することにより、ビームがフレーム3の前面方向を向くように補正される。また、アンテナ4は、地板41上に誘電体基板42が設けられて形成されているので、装着される人体の影響やテンプル2aに使用される金属の影響を軽減することができる。また、地板41の一端側は、
図2に示すように、テンプル2aとフレーム3を折り畳み自在に接続する蝶番9よりも前面側に張り出すように設けられているので、接続部材が金属性の材質で形成されている場合でも、その影響を受け難くすることができる。尚、ここで示しているアンテナ4のサイズ等は、一例を示すものであり、特にこれに限定されるものではなく、テンプル2aのサイズや形状等に応じて適宜設計することは可能である。また、本実施形態では、アンテナ4は、使用者の頭部の右側に位置するテンプル2aに配置されている例を示しているが、テンプル2aと使用者の頭部の右側に位置するテンプル2bの両方又はテンプル2bのみに配置するようにしても良い。テンプル2a及びテンプル2bの双方にアンテナ4を配置した場合には、無線通信の信頼性を向上させることができると共に、通信容量を増やすことができ、伝送速度を向上させることができる。
【0035】
アンテナ5は、アンテナ4と同様に、外部に設けられる基地局10等と電波による無線通信を行うことにより、基地局10から供給される映像信号等を受信するためのものであって、
図1に示すように、使用者の左目側前方に位置するフレーム3の上部の外周面に配置され、フレーム3の前面方向に指向性を有する所謂ブロードサイド型のアンテナである。このアンテナ5としては、例えば、
図6に示すように、誘電体基板51に水平に形成する八木・宇田アンテナを用いる。
【0036】
このアンテナ5では、一般的なフレーム3の数ミリ程度の厚みに配置できるように、放射素子と平衡・不平衡変換部の縮小化と軸方向の縮小化を合わせて実現するために、誘電帯基板51の厚さ:0.1mm、比誘電率ε
γ:2.2、誘電正接tanδ:0.009とし、スルーホールによる折り返し型放射素子を構成している。
図6中のハッチングを施している部分52は、地板であり、ハッチングを施していない部分は、誘電体基板51により構成されている。また、53は、スルーホールである。このアンテナ5の寸法は、
図6に示すように、a1=0.22mm、a2=1.14mm、a3=1.48mm、a4=0.1mm、a5=1.11mm、a6=1.1mm、a7=0.1mm、a8=1.8mm、b1=2.5mm、b2=0.69mm、b3=1.14mm、b4=0.69mm、b5=0.3mm、b6=0.1mm、b7=1.11mmに形成している。このような折り返し構造を有するアンテナ5では、折り返し構造を用いない場合に比べて約20%の縮小化を実現することができる。また、このアンテナ5の最大動作利得は8.4dBであり、ブロードサイド方向の20〜35mm(4〜7波長)の領域に8個配列させることで、指向性利得が15dB程度となる。尚、ここで示しているアンテナ5の寸法等は、一例を示すものであり、特にこれに限定されるものではなく、フレーム3のサイズや形状等に応じて適宜設計することは可能である。また、アンテナ5を配列させる場合には、給電方式として、並列及び直列給電が適用できる。ここで、各単体アンテナの折り返し構造による放射素子の構成要素である一次線(給電線路が接続される側)と二次線(給電線路が接続されない側)のそれぞれの導体幅及び一次線と二次線の間隔を調整することで各単体アンテナの入力インピーダンスを調整することが可能である。これにより、配列された各アンテナへの電力分配比率を制御することが可能である。また、必要に応じて、折り返し構造には放射素子の一部だけを折り返した構造である、一部折り返し型放射素子を用いても良い。
【0037】
また、本実施形態に係る眼鏡型通信装置1では、アンテナ5が、
図1に示すように、フレーム3の上部に配置されている例について説明しているが、アンテナ5の配置される位置はこれに限定されるものではなく、フレーム3の前面方向に指向性を有するようにフレーム3に配置されていれば良く、例えば、フレーム3の下部の外周面に配置されていても良い。また、本実施形態に係る眼鏡型通信装置1では、エンドファイア型のアンテナ4とブロードサイド型のアンテナ5の双方を設けることにより、無線通信の信頼性を向上させる共に、通信容量を向上させているが、これに限定されるものではなく、アンテナ4又はアンテナ5のいずれか一方のみを設けたものであっても良い。
【0038】
視線検出部7は、眼鏡型通信装置1を装着した状態の使用者の視線方向を検出するためのものである。眼鏡型通信装置1では、
図1に示すように、視線検出部7は、使用者の右目側の視線方向を検出するように、右目側の前方に位置するフレーム3の上部に取り付けられている。この視線検出部7としては、例えば、赤外発光ダイオード等から赤外光を目に照射し、その反射した赤外光をイメージセンサ等で検出して視線方向を検出する方式や、レーザー光を走査し、このレーザー光の目からの反射光をイメージセンサ等で検出して視線方向を検出する方式等、従来公知の視線検出手段を用いることができる。
【0039】
眼鏡型通信装置1では、使用者が眼鏡型通信装置1を頭部に装着した状態で、頭部を動かすことで、それに伴って、アンテナ4及びアンテナ5のビームの指向方向も自動的に連動させることができる。一方で、人間が視点移動せずに見ることができる視野角度は10度程度であり、この角度範囲は指向性利得で26dB程度に相当する。そのため、例えば、このような更に高い指向性利得を有するアンテナ4やアンテナ5を用いる場合には、使用者の視線方向を検出し、ビーム方向を走査させる必要がある。尚、人間の頭部を回転させず違和感なく眼球の回転により視点の移動を行う角度範囲は30度程度であるので、指向性利得で26dBであるアンテナ4やアンテナ5を用いる場合には、そのビームの走査角度範囲は、少なくとも±20度程度であれば、使用者が取得したい映像信号等を供給する基地局10の方向を向くように頭部を動かすことで、指向性を適切に合わせることができ、無線通信を行うことができる。
【0040】
本実施形態に係る眼鏡型通信装置1では、視線検出部7によって使用者の視線方向が検出されると、その検出信号は制御ユニット8へと送られる。制御ユニット8は、アンテナ4及びアンテナ5による無線通信や無線通信によって得られた映像信号等を画像表示部6に表示させるための変換処理等の各種の制御を行うためのものであって、詳しくは図示しないが、例えば、CPU(Central Proceessing Unit)、ハードディスク、演算処理部、RAM(Random Access Memory:記憶部)9等を有するマイクロコンピュータ等により構成されている。また、これら各部は、互いにシステムバスに接続され、このシステムバスを介して種々のデータ等が入出力されて、CPUの制御の下、種々の処理が実行される。
【0041】
また、ハードディスクには、視線検出部7によって検出された使用者の視線方向の測定結果に基づいて、アンテナ4及びアンテナ5のビームの指向方向を制御するための処理プログラム等が格納されている。尚、各種の処理プログラムをハードディスクの代わりに、読み取り可能な記憶媒体に格納しておき、この記録媒体から処理プログラムを読み出すように構成することも可能である。演算処理部では、ハードディスクに格納される処理プログラムに基づいて、CPUの制御の下、視線検出部7によって検出された使用者の視線方向の測定結果に基づく、アンテナ4及びアンテナ5のビーム走査のための演算処理等が行われる。
【0042】
このような制御ユニット8では、視線検出部7によって使用者の視線方向が検出され、その検出信号が送られてくると、この検出信号に基づいて、演算処理部によりアンテナ4及びアンテナ5のビーム走査を行うための制御信号を生成し、アンテナ4及びアンテナ5を、この制御信号に基づいて、
図7に示すように、ビームの指向方向を使用者の視線方向と一致するように走査させる。アンテナ4及びアンテナ5では、例えば、この制御ユニット8によって生成された制御信号に基づいて、給電される電圧や電流の位相が制御され、それぞれのビームの指向方向が所定角度範囲にわたって電気的に走査される。尚、アンテナ4及びアンテナ5のビームの走査方法は特に限定されるものではなく、例えば、アンテナ4では、地板41の長さを可変にすることにより、ビームチルトさせるように構成したり、別途アンテナ4の傾きを変えるためのスイッチ等を設けておくようにしても良い。
【0043】
このような眼鏡型通信装置1では、使用者が当該眼鏡型通信装置1を頭部に装着した状態で、取得したい映像信号等を供給する基地局10の方向を向くように頭部又は眼球を動かすだけで、その指向方向にある基地局10と適切に無線通信を行うことができ、取得したい映像信号等を受信することができる。ここで、使用者の周囲に複数の無線基地局10が利用できる場合には、使用者がビームの振り向けに必要となる頭部の移動・回転が少ない基地局10を選択し、ミリ波帯域の通信を行うことが合理的である。これを実現するために、画像表示部6に使用者に対して頭部の移動・回転を指示する表示を行うようにしても良い。このような機能を効率良く実現するためには、常時基地局10側と眼鏡型通信装置1の間で低速のデータを交換できる低速制御回路をミリ波帯域の高速通信回路とは別に設けておくことが好ましい。また、このような環境化では、頭部や視線の方向・状態から、ミリ波帯域での高速通信が困難な状況でも、無線基地局10側から眼鏡型通信装置1に対して、頭部あるいは視線の移動・回転を促す指示を画像表示部6に表示することで、ミリ波帯域での通信路を確立することができる。これは、画像表示部6とアンテナ4や5を眼鏡型のデバイスとして一体化することで実現できる大きな特徴である。尚、画像表示部6の代わりに、スピーカやイヤホーン等の音声出力部(不図示)によって音声で、使用者に頭部の移動・回転を指示するようにしても良い。また、本実施形態に係る無線通信装置1では、アンテナ4及びアンテナ5と基地局10との無線通信により得られた動画像情報等を画像表示部6に表示させる例について説明しているが、これに限定されるものではなく、得られた動画像情報等を制御ユニット8のRAM等に記憶させておき、別の画像表示装置等で再生させても良い。
【0044】
また、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 眼鏡型無線装置
2a、2b テンプル
3 フレーム
4 アンテナ(エンドファイア型アンテナ)
41 地板
42 誘電体基板
43 スルーホール
5 アンテナ(ブロードサイド型アンテナ)
6 画像表示部
7 視線検出部(視線検出手段)
8 制御ユニット(制御手段)
9 蝶番(接続部材)
10 基地局