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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-233272(P2015-233272A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】電気音響変換器
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/24 20060101AFI20151201BHJP
   H04R 9/04 20060101ALI20151201BHJP
   H04R 7/26 20060101ALI20151201BHJP
   H04R 7/12 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   H04R1/24 B
   H04R9/04 105A
   H04R7/26
   H04R7/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-86309(P2015-86309)
(22)【出願日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-100112(P2014-100112)
(32)【優先日】2014年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】野呂 正夫
【テーマコード(参考)】
5D012
5D016
【Fターム(参考)】
5D012BD01
5D016AA09
(57)【要約】
【課題】1本のスピーカユニットで低音域から高音域までの広い周波数の帯域に亘って広い指向性を有する電気音響変換器を提供する。
【解決手段】円錐面状又は楕円錐面状等の錐形状に形成されたコーン部11と、一対の縦割り筒状面12が並列に形成され、隣接する縦割り筒状面12の一方の側部どうしの間で谷部が形成された翼状部14とを備える振動体1、コーン部の軸に沿う振動体の振動と該振動に対応する電気信号との変換を行う変換部、及び振動体をコーン部の軸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、コーン部の小径側端部及び翼状部における谷部の底部が変換部に固定されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錐形状に形成されたコーン部と、一対の縦割り筒状面が並列に形成され、隣接する前記縦割り筒状面の一方の側部どうしの間で谷部が形成された翼状部とを備える振動体、前記コーン部の軸に沿う前記振動体の振動と該振動に対応する電気信号との変換を行う変換部、及び前記振動体を前記コーン部の軸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、前記コーン部の小径側端部及び前記翼状部における前記谷部の底部が前記変換部に固定されていることを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
前記コーン部と前記変換部との間にローパスフィルタ機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記ローパスフィルタ機構は、前記コーン部の小径側端部の弾性率を前記翼状部よりも小さくすることにより構成されていることを特徴とする請求項2記載の電気音響変換器。
【請求項4】
前記コーン部の小径側端部に開口部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気音響変換器。
【請求項5】
前記小径側端部の振動を制動する制動部材が前記開口部に設けられていることを特徴とする請求項4記載の電気音響変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動体を振動させて音を再生するスピーカ又は音を収集するマイクロホンに好適な電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なダイナミックスピーカは、コーンと呼ばれる円錐面状の振動板をボイスコイルモータで往復駆動するピストンモーションにより音を発するスピーカであり、低い周波数ではほぼ点音源として機能し、広い指向特性を有するが、振動板の口径と再生音の半波長がほぼ同等になる周波数以上の帯域では、指向性が鋭くなる。このため、高音域の再生には、小口径の振動板を使用した小型のスピーカが用いられる。
また、ダイナミックスピーカの動作原理と逆の動作原理を有するダイナミックマイクロホンでも、上記と同様のことが言える。即ち、広い指向性で高音域を収集するには、小口径の振動板を使用した小型のマイクロホンが用いられる。
【0003】
これに対してリッフェル型スピーカは、一対の長方形の湾曲板により振動板が構成され、中高音域での指向性が広く、また、振動板の湾曲方向に沿う横方向に音が広がり、縦方向にはほとんど広がらないという特性を有する。
【0004】
このようなリッフェル型スピーカとして、従来、例えば特許文献1又は特許文献2に開示されたものがある。
特許文献1には、高分子樹脂フィルムの中央部分にボイスコイルとしての導電体パターンをプリント形成し、その中央部分を折り返し加工して接着することによって、導電体パターンを有する平板状の部分と、湾曲形状の第1,第2の振動部とを一体化して備える振動板が形成されており、この振動板の平板状の部分は磁気回路内の磁気ギャップ内に配置され、両振動部の先端は支持部材に固定された構造のスピーカが開示されている。
特許文献2には、振動板中央部が凹部を形成した状態で折り返され、その凹部内に、長円の環状に巻回された偏平なボイスコイルが配置され、そのボイスコイルを上下に離間した二つの磁気ギャップ内に配置した構造のスピーカが開示されている。このスピーカにおいても、振動板の外周部は、環状のフレーム上に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−78079号公報
【特許文献2】特開2007−174233号公報
【特許文献3】特開平8−140175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この種のリッフェル型スピーカは、低音域での再生には適さないため、可聴帯域の全域を再生するためには、別途、低音域用のスピーカ(ウーハー)を用いたマルチスピーカシステムとする必要がある。
また、例えば特許文献3に示されるようにダイナミックスピーカのメインコーンの前方に小径のサブコーンを同軸に取り付けて広い帯域の再生を狙ったダブルコーン型のスピーカもあるが、マルチスピーカシステムを代替できるほどの改善効果は認められない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、1本のスピーカユニットで低音域から高音域までの広い周波数の帯域に亘って広い指向性を有する電気音響変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
今回発明者らがリッフェル型スピーカのような一対の湾曲形成された振動面を有するスピーカの動作原理の解析を行うにあたり、その指向性の広さが、高音域での振動領域が線音源に集中することに起因するのではなく、振動板の形状そのものに依るものであることを見出した。そこで、この形状の振動板と低音域用コーン部とを組み合わせることにより、低音域から高音域までの再生が可能なスピーカユニットが実現可能であるとの結論に到達し、以下の解決手段とした。
【0009】
本発明の電気音響変換器は、錐形状に形成されたコーン部と、一対の縦割り筒状面が並列に形成され、隣接する前記縦割り筒状面の一方の側部どうしの間で谷部が形成された翼状部とを備える振動体、前記コーン部の軸に沿う前記振動体の振動と該振動に対応する電気信号との変換を行う変換部、及び前記振動体を前記コーン部の軸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、前記コーン部の小径側端部及び前記翼状部における前記谷部の底部が前記変換部に固定されていることを特徴とする。
【0010】
この電気音響変換器は、振動体に縦割り筒状面を有する翼状部とコーン部とを備えているので、本発明をスピーカに適用した場合、翼状部の振動により、リッフェル型スピーカと同様に中高音域で広い指向性を有するとともに、コーン部の振動により、ダイナミックスピーカと同様に低音域においても高い音圧を有する。
したがって、1本のスピーカユニットにより低音域から中高音域までの可聴帯域の全域で広い指向性で再生可能なフルレンジスピーカユニットを実現することができる。
本発明をマイクロホンに適用する場合も、縦割り筒状面の振動により中高音域、コーン部の振動により低音域をそれぞれ収音することができ、低音域から中高音域まで広い指向性で収音することができる。
【0011】
本発明の電気音響変換器において、前記コーン部と前記変換部との間にローパスフィルタ機構が設けられているとよい。
ローパスフィルタ機構が設けられているので、高音域におけるコーン部の振動を抑制して、翼状部による高音域の再生又は収音をコーン部が干渉することを防止することができる。
【0012】
本発明の電気音響変換器において、前記ローパスフィルタ機構は、前記コーン部の小径側端部の弾性率を前記翼状部よりも小さくすることにより構成されているとよい。
コーン部の小径側端部の弾性率を小さくする構成として、前記コーン部の前記小径側端部に開口部が形成された構成としてもよい。
開口部が形成されることによりコーン部の小径側端部の固さ(スチフネス)が小さくなるので弾性率も小さくなる。開口部の数、大きさ、形状、配置等を適宜設定することにより、機械的ローパスフィルタとしてのカットオフ周波数を調整することができ、所望の音質の電気音響変換器を得ることができる。
【0013】
コーン部の小径側端部に開口部を形成する場合、前記小径側端部の振動を制動する制動部材を前記開口部に設けてもよい。
制動部材としては、樹脂フィルム、ゴム膜等を用いることができ、その材質等を選択することにより、機械的ローパスフィルタとしてのQ値を調整することができ、所望の音質の電気音響変換器を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気音響変換器をスピーカに適用した場合、このスピーカは、低音域においてはコーン部により高い音圧を有し、中高音域においては縦割り筒状面からの再生音の放射により広い指向性を有しており、1本のスピーカユニットにより低音域から中高音域までの広い範囲で広い指向性を有するフルレンジスピーカユニットを実現することができる。また、本発明の電気音響変換器をマイクロホンに適用した場合も、このマイクロホンは、低音域から高音域まで広い周波数帯域に亘って広い指向性で収音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態のスピーカを示す分解斜視図である。
図2図1のスピーカの組立状態を示す斜視図である。
図3図2のスピーカの正面図である。
図4図3のA−A線に沿う矢視断面図である。
図5図2の半分を断面にした斜視図である。
図6】第1実施形態のスピーカに用いられている振動体を拡大した分解斜視図である。
図7図6の振動体の組立状態を示す斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態のスピーカを示す分解斜視図である。
図9図8のスピーカの組み立て状態を示す斜視図である。
図10図8のスピーカの断面図である。
図11】本発明の第3実施形態のスピーカを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電気音響機器をスピーカに適用した実施形態について図面を参照して説明する。
1.全体の構成
図1図7は、本発明の第1実施形態のスピーカ(電気音響機器)100を示す。
この実施形態のスピーカ100は、振動体1と、この振動体1を往復駆動するアクチュエータ(変換部)2と、これら振動体1及びアクチュエータ2を支持するための支持枠3と、振動体1を支持枠3に往復移動自在に支持するエッジ部4とを備えている。
なお、図2において、エッジ部4が設けられている側を上、アクチュエータ2が設けられている側を下とするように上下方向を設定し、この上下方向と直交し、後述する振動体1の谷部13の延在方向をx方向、このx方向と直交する方向をy方向とする。このx方向及びy方向に対して、上下方向をz方向と称する場合もある。また、上方を向く面を表面、下方を向く面を裏面とする。
【0017】
2.各部の構成
(1)振動体の構成
振動体1は、図2及び図3等に示したように、円錐面状に形成されたコーン部11と、このコーン部11の中央部の表面側に設けられた正面視で矩形状の翼状部14とを備えている。
翼状部14は、一対の縦割り筒状面12が並列に形成されるとともに、隣接する縦割り筒状面12の一方の側部どうしの間で谷部13を形成した構成とされている。
なお、上述の縦割り筒状面12とは、筒状の面の一部を縦割りにして切り取った面のことである。また、上述の縦割り筒状面12の側部とは、縦割り筒状面12において、前記筒状の面の湾曲する方向の側の部位のことである。
【0018】
縦割り筒状面12は、一方向(縦割り筒状面12の周方向である横方向)に湾曲し、その一方向と直交する方向(縦割り筒状面12の縦方向)へは直線状となっている。そして、一対の縦割り筒状面12が、その凸となる方向を同じ表面側に向けて並列に配置されるとともに、隣接する側部どうしが、縦割り筒状面12の周方向に沿う断面において、谷部13の底部16での縦割り筒状面12の接線方向をほぼ平行に配置して接合されている。図4に示すように、谷部13の底部16では、両縦割り筒状面12がわずかに間隔をあけて接合されており、したがって、その谷部13の底部16における接線L1,L2が平行に配置される。
【0019】
なお、縦割り筒状面12の断面形状は、必ずしも単一円弧面でなくてもよく、複数の曲率を連続させたもの、縦割り筒状面12の周方向(横方向)に沿う断面が放物線形状やスプライン曲線など曲率が一定ないし連続的に変化するもの、角筒状面としたもの、階段状に複数の段差部を有する形状としたものなどを採用することができる。
また、均一な音響特性(周波数特性、指向特性)を得るために、各縦割り筒状面12は、その谷部13の底部16における接線L1,L2の間の中心で谷部13に沿う平行な面Mを中心として面対称に形成することが好ましい。ただし、本発明においては、必ずしも面対称でなくてもよい。
この面Mにおいて翼状部14の谷部13の長手方向の中心位置を翼状部14の中心軸Mcとする(図6参照)。
【0020】
そして、図6及び図7に示すように、円錐面状のコーン部11の小径側端部11aに、翼状部14がその谷部13を下方向にして重ね合わせられる。更に、コーン部11の中心軸C(図6参照)上に翼状部14の中心軸Mcを一致させて固定されており、振動体1の下端部において、翼状部14の谷部13がコーン部11の小径側端部11aの径方向に配置される。
【0021】
また、図6及び図7に示すように、コーン部11の小径側端部11aには、翼状部14における谷部13の底部16の両端部を収容する切欠部17が形成されている。この切欠部17内に谷部13の底部16の両端部を収容して、その底部16がコーン部11の小径側端部11aに接着等により固定される。更に、この谷部13の底部16の両端には、谷部13を塞ぐように端板18が配設されている。これにより、コーン部11の切欠部17内に翼状部14における谷部13の底部16の両端部を収容したときに、谷部13がコーン部11の裏面側に開口しないようにされ、コーン部11の表面側と裏面側との間での音波の通り抜けが防止され、翼状部14の前面の全面から音波を効率よく放射することができる。
【0022】
上述の端板18が設けられた谷部13の両端部を除き、翼状部14における縦割り筒状面12の横方向及び縦方向の周縁には、コーン部11との間の隙間を塞ぐように、薄膜の支持部材41が設けられる。この支持部材41は、翼状部14を往復移動自在に支持するとともに、翼状部14から放射される音波が裏面側に回り込まないように空間を区画し、かつコーン部11及び翼状部14のそれぞれの振動を妨げないように、エッジ部4と同様の柔軟な材料で構成される。また、支持部材41は、例えば、1〜2mm程度の厚さの発泡材などで構成されてもよい。
【0023】
更に、コーン部11の小径側端部11aにおいて、翼状部14が重ねられて支持部材41により囲まれた領域内には、複数の丸い開口部42が貫通して形成されるとともに、これら開口部42を塞ぐように、樹脂フィルム、ゴム膜等からなる薄膜の制動部材43がコーン部11上に貼り付けられる。これら開口部42は、コーン部11の小径側端部11aの周にわたって適宜の間隔をおいて配置される。また、制動部材43は、帯状に形成され、小径側端部11aに周方向に沿ってコーン部11上に貼付される。なお、制動部材43にも、翼状部14における谷部13の底部16を配置・収容させる溝部44が形成されている。
なお、前述の開口部42は丸穴に限らない。長円や細長い穴、螺旋状の開口でもよい。開口部42の数も、複数ではなく一つでもよい。また、開口部42に替えて、薄肉に形成した薄肉部でもよいし、ヒダ状(蛇腹状)に形成したヒダ部でもよい。
【0024】
この振動体1のコーン部11及び翼状部14は、その材質が限定されるものではなく、スピーカの振動板として一般的に用いられる合成樹脂、紙、金属等の材料を用いることができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなるフィルムを真空成形することにより、比較的容易に成形することができる。
この実施形態の振動体1においては、コーン部11は一般的なコーン紙により形成され、翼状部14は合成樹脂からなる1枚のフィルムを真空成型等により一体成形して形成されており、翼状部14における谷部13の底部16は、フィルムの中央部が断面U字状に折り返されることにより形成されている。そして、前述したようにコーン部11に開口部42が形成されていることにより、コーン部11の小径側端部11aの弾性率が、コーン部11の他の部分に比べて小さくされている。薄膜の制動部材43も、材質が限定されるものではないが、コーン部11を構成しているコーン紙よりもさらに機械的な抵抗が大きいものが用いられる。
【0025】
このように構成された振動体1は、翼状部14とコーン部11との形状の異なる二つの振動面(放音面)を有することになるが、図2及び図7に示すように、翼状部14は、振動面となる縦割り筒状面12の全面が前方(上方であるz方向)に向けられているのに対して、コーン部11は、その小径側端部11aに翼状部14が重ねられていることから、この翼状部14が重ねられている部分を除いて露出する上部の表面が前方(上方であるz方向)に向けられた振動面(放音面)となる。
【0026】
(2)振動体以外の各部の構成
アクチュエータ2は、例えばボイスコイルモータが用いられ、振動体1における翼状部14の谷部13の底部16及びコーン部11の小径側端部11aに設けられたボイスコイル20と、支持枠3に固定された磁石機構21とにより構成される。
ボイスコイル20は、円筒状のボビン20aの回りにコイル20bが巻回されたものであり、その軸方向と振動体1のコーン部11の軸方向とを一致させ、直径方向に翼状部14の谷部13の底部16が配置されるように、ボイスコイル20の上端と振動体1の下端とが接着剤等を介して固着されている。この場合、図4及び図5に示すように、ボイスコイル20の上端部がコーン部11の小径側端部11aから挿入され、その挿入端が翼状部14の谷部13の底部16に当接しており、これにより、ボイスコイル20の上端部に、コーン部11の小径側端部11a及び翼状部14の谷部13の底部16の両方が固定されている。
【0027】
そして、このボイスコイル20の外周部がダンパー22を介して支持枠3に支持されており、ボイスコイル20は支持枠3に対してボイスコイル20の軸方向に沿って往復移動自在である。ダンパー22は一般的なダイナミックスピーカに用いられる材料のものを適用することができる。
磁石機構21は、環状の磁石23と、この磁石23の一方の極に固定されたリング状のアウターヨーク24と、他方の極に固定されたインナーヨーク25とを備えており、インナーヨーク25の中心のポール部25aの先端部がアウターヨーク24内に配置されることにより、これらアウターヨーク24とインナーヨーク25との間に、環状に磁気ギャップ26が形成され、この磁気ギャップ26内にボイスコイル20の端部が挿入状態に配置されている。
【0028】
支持枠3は、例えば金属材により成形され、図示例では、矩形の枠状に形成されたフランジ部30と、フランジ部30の下方に延びる複数のアーム部31と、これらアーム部31の下端に形成された環状フレーム部32とを備えている。そして、そのフランジ部30の内周面は円周面に形成されており、その内側に、コーン部11の小径側端部11a及び翼状部14における谷部13の底部16を下方に向けて振動体1が配置され、振動体1のコーン部11の大径側端部11bがエッジ部4を介してフランジ部30の上面に支持されている。したがって、エッジ部4は、振動体1のコーン部11に対応して円形リング状に形成される。このエッジ部4も、一般的なダイナミックスピーカに用いられている材料のものを適用することができる。
本発明において、振動体1をコーン部11の軸方向(谷部13の深さ方向であるz方向)に振動可能に支持する支持部35は、この実施形態では、支持枠3とエッジ部4によって構成されている。
【0029】
この支持枠3に振動体1を取り付けた状態において、縦割り筒状面12は、図4に示すように、縦割り筒状面12の湾曲方向に沿って最も外側の先端どうしを結ぶ線(図示例では、谷部13の底部16とは反対側の側部の先端と支持部材41との接続点どうしを結ぶ線)を境界線Hとするとき、先端から谷部13に向かうにしたがって境界線Hから漸次離間する方向に湾曲する。
前述したように、縦割り筒状面12は、単一円弧面だけでなく、複数の曲率を連続させたもの、断面が放物線形状やスプライン曲線など曲率が一定ないし連続的に変化するもの、角筒状面としたもの、階段状に複数の段差部を有する形状としたものなどを採用することができるが、その先端どうしを結ぶ境界線Hを超えない形状の凸面とするのが好ましい。
なお、図1及び図2等において符号33は、ボイスコイル20を外部に接続するための端子を示している。
【0030】
3.動作
このように構成されたスピーカ100は、振動体1に固定されたアクチュエータ2のボイスコイル20に音声信号に応じた駆動電流が流れると、その駆動電流によって生じる磁束変化と、磁気ギャップ26内の磁界とにより、ボイスコイル20に駆動電流に応じた駆動力が作用し、磁界と直交する方向(ボイスコイル20の軸方向、図4では矢印で示す上下方向であるz方向)にボイスコイル20を振動させる。これにより、このボイスコイル20に接続されている振動体1が、コーン部11の軸方向(谷部13の深さ方向)に沿って振動し、表面から再生音が放射される。
【0031】
この場合、振動体1は、翼状部14とコーン部11とを有しており、いずれも振動面を形成しているが、前述したように、翼状部14は縦割り筒状面12から再生音が放射されるので、リッフェル型スピーカに用いられている振動板と同様に中高音域での指向性が広く、一方、コーン部11は、その円錐表面のピストンモーションによって音が再生されるので、低い周波数で広い指向性を有している。
また、コーン部11の小径側端部11aには、開口部42が形成されていることにより、その開口部42の形成領域の弾性率が小さく設定されており、アクチュエータ2のボイスコイル20の振動の周波数が低い場合は、コーン部11の全体がボイスコイル20と一体に振動するが、周波数が高くなると、コーン部11の上部への振動の伝達が小径側端部11aにおける開口部42の形成領域で抑制される結果、コーン部11の上部の振動が抑制される。つまり、コーン部11の小径側端部11aに形成した開口部42が、コーン部11の上部の振動面とアクチュエータ2のボイスコイル20との間で伝達される振動に対してローパスフィルタとして機能するフィルタ機構を構成している。このため、翼状部14による高音域の再生をコーン部11が干渉することを防止することができる。
したがって、このスピーカは、1本のスピーカユニットにより低音域から中高音域までの可聴帯域の全域で広い指向性で再生可能なフルレンジスピーカユニットを実現することができる。
【0032】
この場合、開口部42の数、大きさ、形状、配置等を適宜設定することにより、機械的ローパスフィルタとしてのカットオフの周波数を設定することができる。また、開口部42に制動部材43が貼付されているので、この制動部材43の材質や厚さ等を適宜選択することにより、機械的ローパスフィルタとしての共振のQ値(Quality factor)を設定することができる。以上、開口部42及び制動部材43の構成により、機械的ローパスフィルタの周波数特性を最適に設定することができるので、所望の音響特性の電気音響変換器が得られる。
【0033】
なお、翼状部14は、その縦割り筒状面12の周縁をコーン部11に支持している支持部材41が縦割り筒状面12の周縁を囲むように配置され、また、谷部13の底部16の両端も端板18により塞がれた状態となっているので、表面側から放射された音波が翼状部14の裏面側に抜けていくことが防止され、翼状部14の縦割り筒状面12の全体から前方に効率的に放音することができる。
また、この実施形態では、振動体1の外周部が円錐面状のコーン部11により形成されているので、エッジ部4を円形リング状の単純形状とすることができる。さらに、アクチュエータ2のボイスコイル20も円筒状に形成して、その上端部を振動体1のコーン部11と翼状部14との両方に固着したので、このアクチュエータ2としても、通常のダイナミックスピーカに用いられているものを適用することができ、したがって、エッジ部4、支持枠3、アクチュエータ2等として、通常のコーン状振動板のみからなるダイナミックスピーカと共通の部品を適用することができ、安価に製造することができる。
【0034】
また、以上の第1実施形態では、図3に示すように、振動体1は、コーン部11に正面視で矩形状に形成した翼状部14を組み合わせた形状としたが、他の形状の翼状部を組み合わせることもできる。例えば図8図10に示す第2実施形態のスピーカ(電気音響変換器)200のように、振動体50の翼状部54を正面視で円形としてもよい。なお、この図8図10に示す第2実施形態のスピーカ200において、第1実施形態のスピーカ100と共通要素には同一符号を付して説明を簡略化する(第3実施形態においても同様とする)。
【0035】
第2実施形態のスピーカ200では、翼状部54が、図8図10に示すように、一対の縦割り筒状面52が並列に形成され、隣接する縦割り筒状面52の一方の側部どうしの間で谷部53を形成するとともに、この谷部53の延在方向の両端部を谷部塞ぎ部51により閉塞した構成とされる。そして、この谷部塞ぎ部51は、全体として円錐面状に形成され、縦割り筒状面52の外側から延びて設けられる。つまり、この翼状部54は、図10に断面を示したように、谷部53を下側とすると、この谷部53から上側方向の大部分の面が縦割り筒状面52とされると共に、谷部53の両端では谷部塞ぎ部51が円錐面の一部をなすように形成される。また、翼状部54の下端は、谷部53の底部56により直線状に構成されるが、翼状部54の上端は正面視で円形に形成される。
【0036】
この第2実施形態のスピーカ200の翼状部54以外の構成は、第1実施形態のものと同じ構造であり、振動体50は、円錐面状のコーン部11の小径側端部11aに、翼状部54が谷部53を下方向にして重ね合わされることにより構成される。そして、翼状部54は、コーン部11の中心C上に中心軸Mcを一致させて固定される。したがって、振動体50の下端部において、翼状部54の谷部53の底部56がコーン部11の小径側端部11aの径方向に配置される。
【0037】
また、コーン部11の小径側端部11aには、翼状部54の底部56の両端部を収容する切欠部17が形成されており、この切欠部17に翼状部54の底部56の両端部を収容して、その底部56がコーン部11の小径側端部11aに接着等により固定される。また、ボイスコイル20の上端と振動体50の下端とは接着剤等を介して固着されている。この場合、図10に示すように、ボイスコイル20の上端部がコーン部11の小径側端部11aから挿入され、その挿入端が翼状部54の谷部53の底部56に当接しており、これにより、ボイスコイル20の上端部に、コーン部11の小径側端部11a及び翼状部54の谷部53の底部56の両方が固定される。
【0038】
一方、翼状部54の上端は、円形リング状に形成された薄膜の支持部材55を介してコーン部11の円錐面の途中に接続される。この支持部材55は、翼状部54の上端とコーン部11との間の隙間を塞ぐように設けられるとともに、翼状部54を往復移動自在に支持する。また、支持部材55は、翼状部54から放射される音波が裏面側に回り込まないように空間を区画し、かつ、コーン部11及び翼状部54のそれぞれの振動を妨げないように、第1実施形態の場合と同様、エッジ部4と同様の一般的なダイナミックスピーカに用いられている柔軟な材料により構成される。
【0039】
さらに、第2実施形態のスピーカ200においても、第1実施形態のスピーカ100と同様に、コーン部11の小径側端部11aに複数の開口部42を形成することにより、アクチュエータ2とコーン部11との間にローパスフィルタ機構を設けている。また、開口部42を塞ぐように、薄膜の制動部材43をコーン部11上に貼付けており、これら開口部42及び制動部材43の構成により、機械的ローパスフィルタの周波数特性が調整される。
【0040】
このように構成される第2実施形態のスピーカ200においては、第1実施形態のスピーカ100と同様に、振動体50が翼状部54とコーン部11とを組み合わせて構成されていることから、翼状部54の縦割り筒状面52から再生音が放射されて、リッフェル型スピーカに用いられている振動板と同様に中高音域での指向性が広く、一方、コーン部11は、その円錐表面のピストンモーションによって音が再生されるので、低い周波数で広い指向性を有する。したがって、スピーカ200は、1本のスピーカユニットにより低音域から中高音域までの可聴帯域の全域で広い指向性で再生可能なフルレンジスピーカユニットを実現することができる。
【0041】
また、この第2実施形態では、翼状部54の谷部53の両端部は、あらかじめ谷部塞ぎ部51により閉塞された形状とされていることから、コーン部11の切欠部17内に谷部53の底部56の両端部を収容したときに、谷部53がコーン部11の裏面側に開口することがなく、コーン11の表面側と裏面側との間で音波の通り抜けが防止され、翼状部54の前面の前面から音波を効率良く放射することができる。さらに、谷部13の両端部を谷部塞ぎ部51で閉塞した翼状部54を形成し、その翼状部54の上端、すなわち外周部を正面視で円形に設けていることから、支持部材55を円形リング状の単純な形状とすることができる。したがって、エッジ部4、支持枠3、アクチュエータ2等の部品に加えて、支持部材55も、通常のコーン状振動板のみからなるダイナミックスピーカと共通の部品を適用することができ、安価に製造することができる。
【0042】
なお、第2実施形態のスピーカ200では、図10に示すように、翼状部54の底部56を、ボイスコイル20の上端、すなわち円筒状のボビン20aの上端と当接する二箇所で固定することとしていたが、翼状部54とボイスコイル20との固定位置はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示す第3実施形態のスピーカ300のように、ボイスコイル60のボビン60aを縦割り筒状面52の裏面側まで延長した形状とし、翼状部14の底部56だけではなく、縦割り筒状面52の裏面とも接着剤等を介して固着することも可能である。この場合、翼状部54とボイスコイル20とが広い面積で強固に高い耐久性を持って接続されることから、これらの間の振動の伝達ロスが小さくなり、翼状部54とボイスコイル20との間で振動を確実に伝達することができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、コーン部11を円錐面状に形成し、エッジ部4を円形のリング状に形成したが、コーン部を楕円錐面状に形成し、エッジ部も楕円形のリング状に形成してもよい。また、コーン部11は、一般的なダイナミックスピーカとして用いられる振動板であれば、円錐面状や楕円錘面状以外の形状でもよく、正面視で丸型や角型、あるいは角型に丸型を組み合わせた形状でもよく、全体として錐形状に形成されていればよい。
また、翼状部14,54は、1枚のフィルムから一体成形した例を示したが、2枚のフィルムの一側部どうしを接着した形態等としてもよい。また、翼状部の裏面に補強用のリブやブロック等を固着してもよい。翼状部の表面に対しては、縦割り筒状面にその周方向に沿って板状又は棒状のリブを設けることが可能である。このスピーカは、前述したように、縦割り筒状面を再生音の放射面としているので、その縦割り筒状面の周方向に沿う方向への指向性は広いが、これと直交する方向には狭いという特性を有しており、このため、縦割り筒状面の放射面に周方向に沿って板状又は棒状のリブを設けたとしても、音響的な影響は少ない。
【0044】
また、上記実施形態では、翼状部を、一対の縦割り筒状面を有する構成としたが、このような対の縦割り筒状面を、これらの谷部を交差させて複数対組み合わせた構成としてもよい。
さらに、振動体を往復駆動する変換部として、ボイスコイルモータを適用したが、ボイスコイルモータに代えて、圧電素子等を用いてもよい。
また、上記実施形態ではいずれも本発明をスピーカに適用したが、本発明をマイクロホンに適用することも可能である。本発明をスピーカに適用する場合は、ボイスコイルモータ等の変換部が、音声信号に基づく電気信号を振動体の振動に変換するが、本発明をマイクロホンに適用する場合も、変換部としてボイスコイルモータ等を用いることができ、その場合の変換部は、音波を受けて振動する振動体の振動を電気信号に変換する。そして、本発明を適用したマイクロホンは、コーン部により低音域、翼状部により中高音域を収音するとともに、高音域におけるコーン部の振動の伝達が抑制され、感度を維持しながら指向性が良好となり、低音域から高音域まで広い周波数帯域に亘って広い指向性で収音することができる。
【符号の説明】
【0045】
1,50…振動体、2…アクチュエータ(変換部)、3…支持枠、4…エッジ部、11…コーン部、11a…小径側端部、12,52…縦割り筒状面、13,53…谷部、14,54…翼状部、16,56…底部、17…切欠部、18…端板、20,60…ボイスコイル、21…磁石機構、22…ダンパー、23…磁石、24…アウターヨーク、25…インナーヨーク、25a…ポール部、26…磁気ギャップ、30…フランジ部、31…アーム部、32…環状フレーム部、33…端子、41…支持部材、42…開口部、43…制動部材、44…溝部、51…谷部塞ぎ部、55…支持部材、100,200,300…スピーカ(電子音響変換器)
図1
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図11