(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-233293(P2015-233293A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】符号化又は復号化における予測方法、及び予測器
(51)【国際特許分類】
H04N 19/105 20140101AFI20151201BHJP
H04N 19/167 20140101ALI20151201BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20151201BHJP
H04N 19/593 20140101ALI20151201BHJP
【FI】
H04N19/105
H04N19/167
H04N19/176
H04N19/593
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-138736(P2015-138736)
(22)【出願日】2015年7月10日
(62)【分割の表示】特願2013-548734(P2013-548734)の分割
【原出願日】2012年1月16日
(31)【優先権主張番号】201110007743.8
(32)【優先日】2011年1月14日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】504277388
【氏名又は名称】▲ホア▼▲ウェイ▼技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100140534
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】林 永兵
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼ 昌材
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159MA04
5C159PP04
5C159TA01
5C159TB08
5C159TC31
5C159TC42
5C159UA02
5C159UA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】画像ブロックの符号化又は復号化における予測方法を提供する。
【解決手段】予測方法は、現在の画像ブロックの参照ブロックについて有効性情報を取得するとともに、有効性情報に基づいて、参照ブロックが有効であるか否かを決定するステップと、もし、参照ブロックの少なくとも一つが有効であり、かつ、少なくとも一つが無効である場合、有効な参照ブロックの画素値を、現在の画像ブロックの参照画素値として、無効参照ブロックに充当するステップと、参照画素値に基づいて、現在の画像ブロックを予測するステップとを含み、現在の画像ブロックの参照ブロックは、前記現在の画像ブロックの左サイドのブロック、上サイドのブロック及び左上のブロックを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像ブロックの符号化又は復号化の予測方法であって、
現在の画像ブロックの参照ブロックについての有効性情報を取得するステップと、
前記現在の画像ブロックの前記参照ブロックは、現在の画像ブロックの、左サイドのブロックと、上サイドのブロックと、左上のブロックとを含み、前記参照ブロックが前記有効性情報に基づいて、前記参照ブロックが有効であるか否かを決定するステップであって、前記有効性情報は、前記現在の画像ブロックが位置している画像の境界の中に参照ブロックが位置しているか否かと、前記参照ブロックは、前記現在の画像ブロックと同じスライス内に位置しているか否かと、前記参照ブロックは、既に符号化又は復号化されているか否かとを含む、ステップと、
もし、参照ブロックの少なくとも一つが有効であり、かつ、少なくとも一つは無効である場合、前記有効な参照ブロックの画素値を、前記現在の画像ブロックの参照画素値として、前記無効の参照ブロックにコピーするステップであって、前記コピーするステップは、前記有効な参照ブロックにおける隣接する参照サイドの画素値を決定するステップと、前記画素値を、前記無効な参照ブロックにおける隣接する参照サイドの画素値に、前記現在の画素ブロックの前記参照画素値としてコピーするステップとを含む、ステップと、
前記参照画素値に基づいて、前記現在の画像ブロックを予測するステップと、
を含み、
もし、前記参照ブロックは、前記現在の画像ブロックが位置している前記画像の前記境界の中に位置しており、かつ、前記現在の画像ブロックと前記同じスライス内に位置しており、かつ、既に符号化又は復号化がされている場合、前記参照ブロックは有効である、予測方法。
【請求項2】
前記有効性情報に基づいて、前記参照ブロックが有効か否かを決定するステップは、
前記現在の画像ブロックが位置している画像の境界の中に、前記参照ブロックが位置しているか否かを決定するステップと、
前記参照ブロックは、前記現在の画像ブロックと同じスライス内に位置しているか否かを決定するステップと、
前記参照ブロックは、既に符号化又は復号化されているか否かを決定するステップと、を含む、請求項1に記載の予測方法。
【請求項3】
もし、前記参照ブロックの少なくとも一つが有効であり、かつ、少なくとも一つが無効である場合、前記有効な参照ブロックの画素値を、前記現在の画像ブロックの参照画素値として、無効の参照ブロックにコピーするステップは、
もし、前記左サイドのブロックが有効であり、かつ、前記上サイドのブロックが無効である場合、前記左サイドのブロックの前記画素値を、前記上サイドのブロックにコピーするステップと、
もし、前記上サイドのブロックが有効であり、かつ、前記左サイドのブロックは無効である場合、前記上サイドのブロックの前記画素値を、前記左サイドのブロックにコピーするステップと、
もし、前記左上のブロックが無効であり、かつ、前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの一つが有効である場合、前記有効な左サイドのブロック及び上サイドのブロックの一つの前記画素値を、前記左上のブロックにコピーするステップと、
もし、前記左上のブロックが無効であり、かつ、前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの両方が有効である場合、前記左サイドのブロックと上サイドのブロックの画素値の平均値を取得するとともに、左上のブロックに、それをコピーするステップと、
を含む請求項1に記載の予測方法。
【請求項4】
前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの画素値の平均値を取得するとともに、前記左上のブロックにそれをコピーするステップは、
前記現在の画像ブロックの左上角の画素ポイントに最も近い前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックにおける画素ポイントの前記画素値の平均値を取得するステップと、
前記平均値を、左上のブロックの右下角にコピーするステップと、
を含む請求項3に記載の予測方法。
【請求項5】
前記有効な参照ブロックの画素値を前記無効の参照ブロックにコピーするステップは、
前記現在の画像ブロックの左上角の画素ポイントに最も近い前記有効な参照ブロックにおける画素ポイントから、コピーするために使用される画素値を取得するステップと、
コピーするために使用される前記画素値を、前記無効の参照ブロックにコピーするステップと、
を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の予測方法。
【請求項6】
現在の画像ブロックの参照ブロックについて有効性情報を取得し、かつ、前記有効性情報に基づいて前記参照ブロックが有効であるか否かを決定するように構成され、前記有効性情報は、前記現在の画像ブロックが位置している画像の境界の中に参照ブロックが位置しているか否かと、前記現在の画像ブロックと同じスライス内に、前記参照ブロックが位置しているか否かと、前記参照ブロックはすでに符号化又は復号化されているか否かとを含み、前記現在の画像ブロックの前記参照ブロックは、前記現在の画像ブロックの左サイドのブロック、上サイドのブロック、及び左上のブロックを含む、有効性決定モジュールと、
もし、前記参照ブロックの少なくとも一つが有効であり、かつ、少なくとも一つが無効である場合、前記有効な参照ブロックの画素値を前記現在の画像ブロックの参照画素値として、前記無効の参照ブロックにコピーするように構成される画素値コピーモジュールであって、前記コピーすることは、前記有効な参照ブロックにおける隣接する参照サイドの画素値を決定することと、前記画素値を、前記無効な参照ブロックにおける隣接する参照サイドの画素値に、前記現在の画素ブロックの前記参照画素値としてコピーすることとを含む、画素値コピーモジュールと、
前記参照画素値に基づいて、前記現在の画像ブロックを予測するよう構成される、予測モジュールと、
を含み、
もし、前記参照ブロックは、前記現在の画像ブロックが位置している前記画像の前記境界の中に位置しており、かつ、前記現在の画像ブロックと前記同じスライス内に位置しており、かつ、既に符号化又は復号化がされている場合、前記参照ブロックは有効である、符号化又は復号化に使用される予測器。
【請求項7】
前記有効性情報に基づいて、前記参照ブロックが有効か否かを決定することは、
前記現在の画像ブロックが位置する画像の境界の中に前記参照ブロックが位置しているか否かを決定するステップと、
前記現在の画像ブロックと同じスライス内に、前記参照ブロックが位置しているか否かを決定するステップと、
前記参照ブロックはすでに符号化又は復号化されているか否かを決定するステップとを含む、請求項6に記載の予測器。
【請求項8】
もし、前記参照ブロックの少なくとも一つが有効であり、かつ、少なくとも一つが無効である場合、前記有効な参照ブロックの画素値を前記現在の画像ブロックの参照画素値として、前記無効の参照ブロックにコピーすることは、
もし、前記左サイドのブロックが有効であり、かつ、前記上サイドのブロックが無効である場合、前記左サイドのブロックの画素値を、前記上サイドのブロックにコピーし、
もし、前記上サイドのブロックが有効であり、かつ、前記左サイドのブロックが無効である場合、前記上サイドのブロックの画素値を、前記左サイドのブロックにコピーし、
もし、前記左上のブロックが無効であり、かつ、前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの一つが有効である場合、前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの有効な一つの前記画素値を、前記左上のブロックにコピーし、
もし、前記左上のブロックが無効であり、かつ、前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの両方が有効である場合、前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの画素値の平均値を取得し、かつ、前記左上のブロックにそれをコピーすることである、
請求項6に記載の予測器。
【請求項9】
前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの画素値の平均値を取得し、かつ、前記左上のブロックにそれをコピーすることは、
前記現在の画像ブロックの左上角にある画素ポイントの位置に最も近い、前記左サイドのブロックと上サイドのブロックにおける画素ポイントの前記画素値の平均値を取得するステップと、
前記左上のブロックの右下角に前記平均値をコピーするステップと、
を含む請求項8に記載の予測器。
【請求項10】
前記有効な参照ブロックの画素値を、前記無効の参照ブロックにコピーすることは、
前記現在の画像ブロックの左上角にある画素ポイントに最も近い、前記有効な参照ブロックにおける画素ポイントから、コピーするために使用される画素値を取得することと、
コピーするために使用される前記画素値を、前記無効の参照ブロックにコピーすることと、
を含む、請求項6から8のいずれか1項に記載の予測器。
【請求項11】
前記有効性情報に基づいて、前記参照ブロックが有効か否かを決定するステップは、
もし、前記現在の画像ブロックが位置する前記画像の前記境界の中に、前記参照ブロックが位置しない場合に、前記参照ブロックは無効であり、前記現在の画像ブロックが位置する画像の境界の中に前記参照ブロックが位置しているか否かを決定するステップ、又は
もし、前記参照ブロックが、前記現在の画像ブロックと同じスライス内にない場合に、前記参照ブロックは無効であり、前記現在の画像ブロックと同じスライス内に、前記参照ブロックが位置しているか否かを決定するステップ、又は
もし、前記参照ブロックがすでに符号化又は復号化されていない場合に、前記参照ブロックは無効であり、前記参照ブロックはすでに符号化又は復号化されているか否かを決定するステップ、
を含む、請求項1に記載の予測方法。
【請求項12】
前記有効性情報に基づいて、前記参照ブロックが有効か否かを決定することは、
もし、前記現在の画像ブロックが位置する前記画像の前記境界の中に、前記参照ブロックが位置しない場合に、前記参照ブロックは無効であり、前記現在の画像ブロックが位置する画像の境界の中に前記参照ブロックが位置しているか否かを決定すること、又は
もし、前記参照ブロックが、前記現在の画像ブロックと同じスライス内にない場合に、前記参照ブロックは無効であり、前記現在の画像ブロックと同じスライス内に、前記参照ブロックが位置しているか否かを決定すること、又は
もし、前記参照ブロックがすでに符号化又は復号化されていない場合に、前記参照ブロックは無効であり、前記参照ブロックはすでに符号化又は復号化されているか否かを決定すること、
を含む、請求項6に記載の予測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像の符号化又は復号化技術に関するものであり、かつ、特に符号化又は復号化における画素予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像コード圧縮の基本原理は、空間領域、時間領域及びコード文字の間の相関性を用いて、できるだけ多くの冗長性を取り除くことである。現在、有名な方法は、映像コード圧縮を実行するために、例えば予測、変換、量子化及びエントロピー符号化のようなステップを介して、ブロックベース混合映像符号化フレームワーク(block−based mixed video coding framework)を使用する。そのような、符号化フレームワークは、盛んに活用されている。初期のMPEG−1から最新の映像符号化規格H.264/AVCまで、及び、JCTVCワークグループ(a joint workgroup founded by MPEG and VECG)による定式化の下での次世代映像コード圧縮規格HEVCですら、全ては、そのようなブロックベース混合映像符号化フレームワークを用いている。
【0003】
映像の符号化又は復号化において、前記ブロックベースの空間領域予測符号化技術は、一般的に用いられており、かつ、前記基本原理は隣接ブロックの間の相関性を使用することにより、空間領域の冗長性を取り除く。つまり、隣接ブロックは、現在のブロックを予測するための参照(reference)ブロックとして使用される。現在、ラスター走査方式は、映像画像符号化において一般的に使用されている。一般的に、そのプロセスは、画像又はスライスの左上角から始まり、かつ、上下及び左右のシークエンスに基づいて、進行する。現在のブロックの参照ブロックは、主に左サイドのブロック、上サイドのブロック及び左上のブロックを含む。
【0004】
明らかなように、前記空間領域が境界ブロックを予測する際に、無効の参照ブロックをどのように扱うかという問題、つまり、隣接ブロックが無効なとき、参照画素に対応するものをどのように取得するかという問題は、必然的に含まれるはずである。一般的に言えば、いわゆる「無効」というのは、一般的に以下の場合を含む。
【0005】
第一の場合においては、参照ブロックは、実際は存在しない。現在、画像符号化のサイズユニットは64×64に規定されている。もし、現在の画像が、この次元の規定を満たさない場合、64×64の規定まで前記画像の次元を拡大するために、画像の境界で一致している部分を補正することが必要である。この時、前記画像の境界に位置しているオリジナルの画像ブロックは、「存在すべきではない」隣接ブロック(参照ブロック)を有するはずである。もし、現在の画像ブロックの画素値が、「存在すべきではない」これらの隣接ブロックに基づいて予測される場合、明らかに極端に大きいエラーが発生することになる。
【0006】
第二の場合においては、参照ブロックは存在するが、前記参照ブロック及び現在の画像ブロックは、異なるスライス内にある。例えば、スライスの前記境界に位置している現在のブロックにとって、その隣接ブロックは他のスライス内に位置してもよい。この場合、前記隣接ブロック及び前記現在の画像ブロックは、お互いに参照することができない。
【0007】
第三の場合においては、前記隣接ブロックは、まだ処理(復号化又は再構築)されず、参照ブロックとして機能できない。
【0008】
もし、左サイドのブロック、上サイドのブロック、及び左上のブロックの任意の一つが、前記無効な場合に該当する場合、従来技術の解決策は、参照ブロックの画素ポイントとして不変の参照画素値(例えば128)を直接割り当て、かつ、前記不変の値に基づいて現在のブロックを予測する。明らかに、無効の参照ブロックに不変な値を割り当てることは、画像ブロックの画素の本質を変えてしまうこととコンフリクトを起こし、かつ、前記予測結果は実際の要求をほとんど満たさなくなる可能性がある。
【0009】
図1に示されているように、UDI予測技術がさらに、従来技術において提案されている。画像予測において、33個の予測方向の中から1つの方向を選択することになる。現在の画像ブロックにおける、全ての画素ポイントの予測は、予測方向によって示される参照ブロックに基づいて実行され、予測のフレキシビリティを大きく改善する。しかし、前記33個の予測方向はまた、前記予測手順を、場合によっては、多数の「無効の」参照ブロックに直面させる可能性がある。もし、それらの全てが、無効な値で充当されている場合、予測の正確さは大きく影響を受けるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−166133号公報
【特許文献2】国際公開第2009/051419号
【特許文献3】特開2005−318497号公報
【特許文献4】特願2012−550737号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、画像ブロックの符号化又は復号化における予測方法を提供し、現在の画像ブロックの参照ブロックについて有効性情報を取得するステップと、前記有効性情報に基づいて、前記参照ブロックが有効か否かを決定するステップと、もし、参照ブロックの少なくとも一つが有効な場合、かつ、少なくとも一つが無効な場合、有効な参照ブロックにおける画素値を、前記現在の画像ブロックの参照画素値として、前記無効の参照ブロックに充当するステップと、前記現在の画像ブロックを前記参照画素値に基づいて予測するステップとを含み、前記現在の画像ブロックの前記参照ブロックは前記現在の画像ブロックの、左サイドのブロックと、上サイドのブロックと、左上のブロックを含む。
【0012】
従って、本発明はさらに、前記予測方法を使用する予測器を提供し、現在の画像ブロックの参照ブロックについての有効性情報を取得し、かつ、前記有効性情報に基づいて前記参照ブロックが有効か否かを決定するように構成され、前記現在の画像ブロックの前記参照ブロックは、前記現在の画像ブロックの左サイドのブロック、上サイドのブロック、及び左上のブロックを含む、有効性決定モジュールと、もし、前記参照ブロックの少なくとも一つが有効、かつ、少なくとも一つが無効である場合、前記有効な参照ブロックの画素値を、前記現在の画像ブロックの参照画素値として、前記無効の参照ブロックに充当するように構成される画素値充当モジュールと、前記参照画素値に基づいて、前記現在の画像ブロックを予測するように構成される予測モジュールと、を含む。
【0013】
本発明は、さらに予測方法を提供し、予測方向を取得するステップと、もし、前記予測方向が前記現在の画像ブロックの右上のブロックを指示し、かつ、前記右上のブロックは無効であり、かつ、前記現在の画像ブロックの前記左サイドのブロックは有効である場合、前記現在の画像ブロックの前記左サイドのブロックの画素値を前記現在の画像ブロックの下サイドのブロックに充当するとともに、充当した後に逆方向延伸(reverse extension)において前記予測方向によって指示される前記下サイドのブロックの画素値を取得するステップと、かつ、充当した後に逆方向延伸において前記予測方向によって指示される前記下サイドのブロックの画素値及び前記予測方向に基づいて、前記現在の画像ブロックの画素値を予測するステップと、を含む。
【0014】
従って、本発明はさらに、前記予測方法を使用する予測器を提供し、予測方向を取得するように構成される予測方向取得モジュールと、前記予測方向が現在の画像ブロックの右上のブロックを指示し、かつ、前記右上のブロックが無効であり、かつ、前記現在の画像ブロックの前記左サイドのブロックが有効であるとき、前記現在の画像ブロックの左サイドのブロックの画素値を前記現在の画像ブロックの下サイドのブロックに充当するとともに、充当した後に逆方向延伸において前記予測方向によって指示される前記下サイドのブロックの画素値を取得するように構成される画素値充当モジュールと、充当した後に逆方向延伸における前記予測方向によって指示される前記下サイドのブロックの前記画素値及び前記予測方向に基づいて、前記現在の画像ブロックの画素値を予測するように構成される予測モジュールと、を含む。
【0015】
本発明で提供される前記予測方法と予測器に基づいて、無効の画素ブロックは、有効な参照ブロックの画素値を用いることにより充当され、その結果、画素予測は常に前記現在のブロックに隣接する前記参照ブロックの前記画素値に基づいて行われ、前記予測の正確さを改善する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施形態における技術的解決策を、より明瞭に説明するために、本発明の実施形態を説明するために必要な添付図面を、以下に簡潔に説明する。明らかに、以下の説明における前記添付図面は、本発明の単なるいくつかの実施形態であり、当業者は創造的な努力なしで、これらの添付図面から他の図面を導き出すことができる。
【0017】
【
図1】H.264標準によって提供されるUDI予測方法のアプリケーション図である。
【
図2】画像予測における、画像ブロックの配列の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に基づく予測方法の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に基づく予測方法のアプリケーション図である。
【
図5】本発明の別の実施形態に基づく予測方法の概略図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に基づく予測方法のアプリケーション図である。
【
図7】本発明の一実施形態に基づく予測器の概略図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に基づく予測器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2は、画像ブロックの配列の概略図である。ブロックEは、現在の画像ブロックであり、ブロックAは前記現在の画像ブロックの左サイドのブロックであり、ブロックBは前記現在の画像ブロックの上のブロックであり、ブロックDは前記現在の画像ブロックの左上のブロックであり、ブロックCは前記現在の画像ブロックの右上のブロックである。ブロックA、B、及びDの中の参照ブロックのいずれか一つが無効であるとき、この実施形態において提供される前記予測方法は、解決策を提供する。
図3に示されているように、この実施形態に基づく前記予測方法は、以下のステップを含む。
【0019】
ステップ101:現在の画像ブロックの参照ブロックの有効性情報を取得し、かつ、前記有効性情報に基づいて、前記参照ブロックが有効であるか否かを決定し、前記現在の画像ブロックの前記参照ブロックは、前記現在の画像ブロックの左サイドのブロックと、上サイドのブロックと、左上のブロックと、を含む。
【0020】
この実施形態において、前記有効性情報は、参照ブロックが、前記現在の画像ブロックが位置している画像の境界の中に位置しているか否かと、前記参照ブロックが、前記現在の画像ブロックと同じスライス内に位置しているか否かと、前記参照ブロックは、すでに符号化又は復号化されているか否かという情報を含む。もし、前記参照ブロックが前記3つの条件を満たす場合、前記参照ブロックは有効であり、そうでなければ、前記参照ブロックは無効である。別の視点から、前記現在の画像ブロックが位置している画像の境界の中に、参照ブロックが位置しているか否かは、前記参照ブロックが、前記画像の前記境界に位置している、さらに補完された画像ブロックであるか否かを決定することを意味している。符号化又は復号化の前記画像の規定は、64×64である。ある画像は、この規定の要求を満たさなくてもよい。この場合、存在しないある仮想の画像ブロックが前記画像の前記境界の外に存在するはずである。明らかに、これらの存在しない画像ブロックは、現在の画像ブロックの画素値を予測するために使用されることはできない。
【0021】
ステップ102:もし、前記参照ブロックの少なくとも一つが有効であり、かつ、少なくとも一つが無効である場合、前記有効な参照ブロックの画素値を、前記現在の画像ブロックの参照画素値として、前記無効の参照ブロックに充当する。
【0022】
ステップ103:前記参照画素値に基づいて、前記現在の画像ブロックを予測する。
【0023】
例として、
図4について説明する。前記左サイドのブロックが有効であるが、前記上サイドのブロックが無効であるとき、前記左サイドのブロックの前記画素値は、参照ブロックとして、前記上サイドのブロックに充当される。前記上サイドのブロックが有効であるが、前記左サイドのブロックが無効であるとき、それに応じて実行される。
【0024】
この実施形態における前記予測方法に基づいて、前記現在の画像ブロックの左サイドのブロック、上サイドのブロック及び左上のブロックのいずれか一つが無効であるとき、他の有効な参照ブロックの前記画素値は前記無効の参照ブロックに充当され、前記現在のブロックの隣接ブロックに基づいて、画素予測がさらに実行されるように確保し、画素予測の正確さを改善する。
【0025】
勿論、画素予測の正確さをさらに改善するために、有効な参照ブロックの前記画素値が、前記無効の参照ブロックに充当されるとき、前記無効の参照ブロックと前記有効な参照ブロックの中の前記現在のブロックとに最も近い画素ポイントの画素値が取得されてもよい。
図1に示されている画像ブロックの配置に見られるように、前記左サイドのブロックと、上サイドのブロックと、左上のブロックとが全て、前記現在の画像ブロックの左上角に接近している。それゆえに、充当することに使用される画素値は、前記有効な参照ブロック内の前記現在の画像ブロックの前記左上角にある前記画素ポイントに最も近い前記画素ポイントから取得されてもよく、充当することに使用される前記画素値は、前記無効の画素ブロックに充当される。
【0026】
前記左サイドのブロック及び上サイドのブロックの一つが無効であるとき、通常のラスター走査シーケンスに基づいてスライスが分割される場合、その左上のブロックもまた無効であることに注目すべきである。それゆえに、前記左上のブロック及び上サイドのブロックが有効であるとともに、前記左サイドのブロックが無効である場合、かつ、前記左上のブロック及び左サイドのブロックが有効であるとともに、前記上サイドのブロックが無効である場合は、発生する見込みはなく、ここで説明しない。
【0027】
図2に示されるように、実際のアプリケーションにおいて、もし、前記左サイドのブロックAが有効であり、かつ、前記上サイドのブロックBが無効である場合、前記左サイドのブロックAの前記画素値を前記上サイドのブロックBに充当する。もし、前記上サイドのブロックBが有効であり、かつ、前記左サイドのブロックAが無効である場合、前記上サイドのブロックBの前記画素値を前記左サイドのブロックAに充当する。もし、前記左上のブロックDが無効であり、かつ、前記左サイドのブロックA及び上サイドのブロックBのうち一つが有効である場合、前記左サイドのブロックA及び上サイドのブロックBの有効な一つの前記画素値を前記左上のブロックに充当する。もし、前記左上のブロックDが無効であり、かつ、前記左サイドのブロックA及び上サイドのブロックBの両方が有効である場合、前記左サイドのブロックAと上サイドのブロックBの前記画素値の平均を取得し、前記左上のブロックにそれを充当する。予測の前記正確さを改善するために、充当する場合においては、ブロックA、B及びDの中の前記ブロックの前記画素ポイントの前記画素値は、選択されてもよく、前記画素ポイントは、前記現在のブロックの前記左上角に最も近く、例えば、前記左サイドのブロックAの前記右上角の前記画素ポイントの前記画素値と、上サイドのブロックBの前記左下の角の前記画素ポイントの前記画素値と、前記左上のブロックDの前記右下の角の前記画素ポイントの前記画素値とは、選択されてもよい。
図1及び
図2に示されているように、この実施形態に基づく前記予測方法はまた、UDI予測方法に応用される。この実施形態に基づく前記予測方法が、前記現在の画像ブロックの左上のブロック、左サイドのブロック及び上サイドのブロックの中の前記無効のブロックを充当するために使用された後、UDI予測の正確さは、すでにある程度まで改善される可能性がある。UDI予測での、前記右サイドの前記右上のブロックを指示すいくつかの予測方向においては、もし、前記右上のブロックが、無効である場合、無効である値、又は、前記右上の角に最も近い画素値が、充当のためにさらに使用される。しかし、予測の正確さをさらに改善するために、本発明の一実施形態はさらに、
図4に示されているような、以下のステップを含む予測方法を提供する。
【0028】
ステップ201:予測方向を取得する。
【0029】
前記予測方向は、前記現在の画像ブロックの、ある画素ポイントの予測方向である。前記UDI技術に基づいて、前記現在の画像ブロックのそれぞれの画素ポイントは、33予測方向が指示す前記参照ブロックの画素ポイントに基づいて、画素予測を実行する必要があることが分かる。
【0030】
ステップ202:もし、前記予測方向が、前記現在の画像ブロックの右上のブロックを指示し、前記右上のブロックが無効、かつ、前記現在の画像ブロックの前記左サイドのブロックが有効である場合、前記現在の画像ブロックの前記左サイドのブロックの画素値を前記現在の画像ブロックの下サイドのブロックに充当し、かつ、充当した後、逆方向延伸(reverse extension)において、前記予測方向によって指示された前記下サイドのブロックの画素値を取得する。
【0031】
ステップ203:充当した後の逆方向延伸における、前記予測方向によって指示される前記下サイドの前記画素値及び前記予測方向に基づいて、前記現在の画像ブロックの画素値は予測される。
【0032】
この実施形態において、前記右上のブロックはまた、実際、前記現在の画像ブロックの参照ブロックである。それゆえに、前記右上のブロックが無効であるか否かを決定する方法は、前出の実施形態に基づいて、参照ブロックが有効であるか否かを決定する方法と同じである。前記方法は、前記右上のブロックが、前記現在の画像ブロックが位置している画像の境界の外側に位置しているか否かを決定するステップと、前記右上のブロックが、前記現在の画像ブロックと異なるスライスに位置している否かを決定するステップと、前記右上のブロックが符号化又は復号化されていないか否かを決定するステップとを含み、もし、前記右上のブロックが前記条件のいずれか一つを満たす場合、前記右上のブロックは無効である。
【0033】
具体的な応用についての説明は、
図5にされている。前記UDI予測方法が使用されるとき、前記現在の画像ブロックの前記上サイドのブロック及び左サイドのブロックは、両方共、予測のための前出の実施形態に基づいて、前記予測方法を使用する。前記無効の右上のブロックについて、前記方向は直接的に反転し、かつ、前記現在の画像ブロックに隣接した画素ポイントの前記画素値に基づいて予測は行われ、反転の後に前記予測方向に指示され、かつ、前記下サイドのブロックに存在する。勿論、もし、前記下サイドのブロックが無効である場合、前記下サイドのブロックに対応する画素ポイントの画素値は、前記左サイドのブロックの画素値に基づいて、充当される。
【0034】
この実施形態で提供される前記予測方法に基づいて、前記予測方向によって指示された前記右上のブロックが無効であるとき、逆方向に指示された前記下サイドのブロックの画素ポイントの画素値は、予測のために取得される。勿論、前記下サイドのブロックは、一般的に無効である。この場合、前記左サイドのブロックの前記画素値は、前記下サイドのブロックに充当される。さらに、前記現在の画像ブロックは、前記予測方向及び前記充当された画素値に基づいて予測される。
【0035】
図6に示されているように、本発明の実施形態はさらに、前述の実施形態に提供される前記予測方法を実行するように構成される予測器を提供し、現在の画像ブロックの参照ブロックについて有効性情報を取得し、前記有効性情報に基づいて前記参照ブロックが有効であるか否かを決定するように構成され、前記現在の画像ブロックの前記参照ブロックは、前記現在の画像ブロックの左サイドのブロック、上サイドのブロック及び左上のブロックを含む有効性決定モジュール601と、もし、前記参照ブロックの少なくとも一つが有効であり、かつ、少なくとも一つが無効である場合、前記有効な参照ブロックの画素値を、前記現在の画像ブロックの参照画素値として、前記無効の参照ブロックに充当する画素値充当モジュール602と、前記参照画素値に基づいて、前記現在の画像ブロックを予測するように構成される予測モジュール603とを含む。
【0036】
この実施形態において、前記有効性情報は、前記現在の画像ブロックが位置している画像の境界の中に参照ブロックが位置しているか否かと、前記現在の画像ブロックと同じスライス内に前記参照ブロックが位置しているか否かと、前記参照ブロックは、既に符号化又は復号化されているか否かと、を含む。もし前記参照ブロックが前記3つの条件を満たす場合、前記参照ブロックは有効であり、そうでない場合は、前記参照ブロックは無効である。別の視点から、前記現在の画像ブロックが位置している画像の境界の中に参照ブロックが位置しているか否かは、前記参照ブロックが、前記画像の前記境界に位置しているさらに補完された画像ブロックであるか否かを決定することを意味する。符号化又は復号化における前記画像の規定は、64×64である。ある画像はこの規定の要求を満たさない可能性がある。この場合、存在しない、ある仮想画像ブロックは、前記画像の前記境界の外側に存在するはずである。明らかに、存在しないこれらの画像ブロックは、前記現在の画像ブロックの画素値を予測するために使用することはできない。
【0037】
図7に示されているように、前記UDI予測技術に関連して、本発明の別の実施形態はさらに予測器を提供し、予測方向を取得するように構成される予測方向取得モジュール701と、前記予測方向が、前記現在の画像ブロックの右上のブロックを指示し、かつ、前記右上のブロックは無効であり、かつ、前記現在の画像ブロックの前記左サイドのブロックが有効であるとき、前記現在の画像ブロックの前記左サイドのブロックの画素値を、前記現在の画像ブロックの下サイドのブロックに充当し、かつ、充当した後の逆方向延伸における前記予測方向によって指示される前記下サイドのブロックの画素値を取得するように構成される画素値充当モジュール702と、充当した後の逆方向延伸における前記予測方向によって指示される前記下サイドのブロックの前記画素値及び前記予測方向に基づいて、前記現在の画像ブロックの画素値を予測するように構成される予測モジュール703と、を含む。
【0038】
前記実施形態の説明に基づいて、当業者は、本発明は必要な一般的ハードウェアプラットフォームに加えられたソフトウェアによって、又は、ハードウェアのみによって実装されることを明瞭に理解することができる。多くの場合、前者が好ましい。そのような状況に基づいて、本発明の本質的な技術的解決策、又はその一部を従来技術へ提供することによって、ソフトウェア製品の形で実現されてもよい。前記コンピュータソフトウェア製品は、例えば、ROM/RAM、磁気ディスク、又は光ディスクのような記憶媒体に記憶され、コンピュータデバイス(パーソナルコンピュータ、サーバ、ネットワークデバイス等であってよい)に、本発明の実施形態の全て又は一部において説明された方法を実行するように命令するいくつかの命令を含む。
【0039】
上述したことは、本発明の単なる例示的な実施形態に過ぎない。本発明の原理の範囲内でいくつかの改良及び修正は、当業者によって行われることが可能であり、かつ、本発明の保護範囲であることに留意すべきである。
【符号の説明】
【0040】
601 有効性判断モジュール
602 画素値充当モジュール
603 予測モジュール
701 予測方向取得モジュール
702 画素値充当モジュール
703 予測モジュール