【解決手段】再生方法は、対象ブロックの左下参照サンプル位置から開始し、対象ブロックの左、左上、上、右上の探索順で探索を行い、最初に探索された連続した一つ以上の有効な参照サンプルを第1の有効な参照サンプルセット、次に探索された連続した一つ以上の有効な参照サンプルを第2の有効な参照サンプルセットとし、(i)無効な参照サンプルが探索順において第1有効参照サンプルセット位置より前に位置するときは、第1有効参照サンプルセットのうち探索順において最初に位置する有効な参照サンプルの値を、(ii)無効な参照サンプルが第1有効参照サンプルセット位置と第2有効参照サンプルセット位置との間に位置するときは、第1有効参照サンプルセットのうち探索順において最後に位置する有効な参照サンプルの値を、無効な参照サンプルの補完値として用いる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
まず、複数のサイズの可変長符号化単位を用いて、制約付きイントラ予測方式による処理を行った場合の問題点を説明する。
【0036】
図1に、可変長符号化単位が同一の場合の、8×8の符号化対象ブロックに対する制約付きイントラ予測方式による処理の一例を示す。同図において、インター予測されたブロックには斜線をつけている。すなわち、上部及び右上の隣接ブロックがインター予測を用いて符号化されており、左及び左上の隣接ブロックがイントラ予測を用いて符号化されている。イントラ予測を実行するために用いられる参照サンプルは、小さな四角形で示す。
【0037】
この例に対して制約付きイントラ予測方式を用いる場合、8×8のイントラ予測に対して考えられる合計9通りのイントラ予測方法のうち(H.264規格ではイントラ予測モードと称される)、3通りのイントラ予測方法、すなわち、Intra_8x8_Horizontal、Intra_8x8_DC、及びIntra_8x8_Horizontal_Upが使用可能であり、その他の5つの方向のイントラ予測方法は使用することができない。
【0038】
また、次世代のHEVC動画像符号化方式は、4×4、8×8、16×16、32×32、及び64×64の二次元符号化対象ブロックなど、複数の可変長符号化単位を用いる。この方式では、イントラ予測又はインター予測を用いるかは、各符号化単位に対して個別に設定することができる。これにより、HEVCの符号化効率が向上する。また、このように柔軟に符号化単位を分割することは、従来の技術と比較して効果があると文献に記載されている。
【0039】
ここで、イントラ予測及びインター予測された参照サンプルが混在する可変長符号化単位を使用する動画像符号化方式に制約付きイントラ予測方式を適用した場合、符号化効率が不十分であるという課題を有する。
【0040】
図2は、異なるサイズの可変長符号化単位を用いた場合の、制約付きイントラ予測方式による処理の一例を示す図である。この例では、符号化対象ブロックは16×16ブロックである。また、右上隣接ブロックA及びBはイントラ予測されており、上部隣接ブロックCはインター予測されており、上部隣接ブロックD及びEはイントラ予測されており、左上隣接ブロックFはインター予測されており、左隣接ブロックGはイントラ予測されており、左下隣接ブロックJはイントラ予測されており、左下隣接ブロックH及びIはインター予測されている。
【0041】
つまり、
図1に示すようにブロックサイズが一定の場合には、対象ブロックの一方向(左下、左、上又は右上)に隣接するブロックは必ず1つである。一方で、
図2に示すようにブロックサイズが可変の場合には、対象ブロックの一方向に隣接するブロックが複数になる場合がある。さらに、この複数のブロックで用いられた予測タイプが異なる場合が発生する。このように、一方向に隣接するブロックの少なくとも一つがインター予測されている場合、制約付きイントラ予測方式では、当該一方向の参照サンプルを用いるイントラ予測方法を使用できない。これにより、イントラ予測された有効な参照サンプルが存在するにもかかわらず、当該有効な参照サンプルが使用できない場合が発生する。
【0042】
具体的には、HEVCにおける複数の方向でのイントラ予測は、1以上の隣接する参照サンプル(同図において、小さな四角形で示している)が用いられるさまざまなイントラ予測方法の選択に対応している。ここで、先行技術であるH.264の制約付きイントラ予測方式が用いられる場合、ブロックCがインター予測されていることから、上部及び右上の参照サンプルを用いて行うイントラ予測方法は、1つの方法を除いてすべて使用不可である。
【0043】
また、イントラDC予測方法は、H.264の制約付きイントラ予測方式により可能であるが、上部隣接ブロックからの参照サンプルは、イントラ予測された参照サンプルとインター予測された参照サンプルとが混在していることからすべて使用されない。つまり、イントラDC予測サンプル値は、左隣接ブロックからの参照サンプルのみを用いて算出される。従って、エラーを含むイントラ予測に起因する品質低下を解決するための先行技術では、イントラ予測及びインター予測された参照サンプルが混在する場合には最適な符号化効率が得られない。
【0044】
これに対して、本実施の形態では、耐性イントラ(constrained−intra)予測を行う新たな方法を提案する。本実施の形態は、イントラ予測を行う際に信頼性の高い参照サンプルを最大限に利用できるようにする。また、次世代のHEVC動画像符号化方式などの最新の動画像符号化方式は、複数の方向のイントラ予測方式と可変長符号化単位との組み合わせを利用する。本実施の形態は、上記のような動画像符号化方式において、エラー耐性が向上されたイントラ予測を行う手段について説明する。
【0045】
本実施の形態に係る動画像符号化方法は、エラー耐性の効果を得る一方で演算の複雑性を同じレベルに維持するとともに、耐性イントラ予測を最適な効率で行うことができる。これにより、当該動画像符号化方法は符号化効率を向上できる。
【0046】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステッ
プ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0047】
本発明の実施の形態では、イントラ予測されたサンプルのみを用いて画面内予測を行う制約付きイントラ予測を利用する動画像符号化方法及び動画像復号方法を説明する。
【0048】
なお、本明細書全体にわたって、利用可能なサンプル位置という用語は、画像サンプルが物理的に存在している場合を意味する。本発明で考えられる一実施の形態において、画像サンプルがピクチャのエッジの外に位置する場合、そのサンプルは利用不可であると判定され、そうでなければそのサンプルは利用可能であると判定される。
【0049】
また、本発明で考えられる別の実施の形態において、画像サンプルがピクチャのエッジの外に位置するか、対象のピクチャ分割単位とは異なるピクチャ分割単位に位置する場合、その画像サンプルは利用不可であると判定され、そうでなければそのサンプルは利用可能であると判定される。対象のピクチャ分割単位という用語は、符号化又は復号の処理対象のブロック又はサンプルを含むピクチャ分割単位を意味する。
【0050】
また、ピクチャ分割単位とは、例えば、スライスである。なお、このピクチャ分割単位は、HEVCにおける、エントロピースライス(entropy slice)或いはライトウェイトスライス(lightweight slice)、タイル(tile)、又はWPP(Wavefront Parallel Processing unit)であってもよい。
【0051】
エントロピースライスまたはライトウェイトスライスとは、従来のスライスよりも更新する情報を削減したスライスのことである。具体的には、従来のスライスでは、スライス毎にスライスヘッダと呼ばれるヘッダ情報を全て更新する必要があった。一方、ライトウェイトスライスでは、直前の処理済みのブロック結果との依存関係を無くすことを重視し、更新する情報を削減している。
【0052】
タイルとは、符号化順を示す対象の領域を示す単位である。この単位内で予め決められた処理順(例えばラスタスキャン)によって符号化単位(LCU)毎に処理が行われる。
【0053】
WPPとは、符号化順の依存関係を変更することを示す対象の単位である。例えば、従来は直前の処理済みのブロック結果に依存していた処理を、右上の処理済みのブロックの処理結果のみを用いる方法に変更することができる。これにより並列処理を実現できる。
【0054】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1では、参照サンプル値を用いてイントラ予測処理を行う制約付きイントラ予測方式を説明する。この方式では、まず各参照サンプル位置の有効性を判定する。そして、その有効な参照サンプル位置の参照サンプル値を用いて無効な参照サンプル位置の参照サンプル値である補完サンプル値を算出する。その後、有効な参照サンプル値及び補完サンプル値を用いてイントラ予測処理を行う。本発明の一実施の形態において、参照サンプルは、イントラ予測されていない場合に無効と判定され、そうでなければ有効と判定される。また、本発明の一実施の形態において、参照サンプルは、イントラ予測されていないか、利用可能でない場合に無効と判定され、そうでなければ参照サンプルは有効と判定される。
【0055】
なお、以下では、有効な参照サンプルを有効サンプル、その値を有効サンプル値、その位置を有効サンプル位置とも記す。同様に、無効な参照サンプルを無効サンプル、その値を無効サンプル値、その位置を無効サンプル位置とも記す。
【0056】
制約付きイントラ予測方式と比較して、利用可能な参照サンプル位置の有効性を最初に判定せずに利用可能な参照サンプル位置の参照サンプル値を用いる先行技術のイントラ予測方式を指す場合に、本明細書においては、非制約付きイントラ予測方式という用語を用いる。つまり、非制約付きイントラ予測方式とは、参照サンプルが有効であるか(イントラ予測されたか)、無効であるか(非イントラ予測されたか)によらず、全ての利用可能な参照サンプル位置の参照サンプル値を用いてイントラ予測を行う方式である。
【0057】
図3に、本発明の実施の形態1に係る動画像符号化処理を説明するフローチャートを示す。
【0058】
まず、ステップS101では、イントラ予測方式として、制約付きイントラ予測方式及び非制約付きイントラ予測方式のいずれかを選択する。
【0059】
次に、ステップS102では、対象の原画像を1以上の符号化ブロックに分割する。符号化ブロックの一例は、32×32の原画像サンプルを含む二次元のブロックである。また、このステップS102では、原画像を2種類以上のサイズの複数の符号化ブロックに分割する。
【0060】
次に、ステップS103では、得られた符号化ブロックを符号化することで、符号化動画像ビットストリームを生成する。また、ステップS103において、対象ブロックを、イントラ予測タイプを用いて符号化する場合、ステップS101で選択されたイントラ予測方式が用いられる。
【0061】
次に、ステップS104では、ステップS101で選択された制約付きイントラ予測方式及び非制約付きのイントラ予測方式のいずれかの選択結果を、符号化動画像ストリームのヘッダ内に符号化する。
【0062】
図4A〜
図4Dは、上記動画像符号化方法により生成される符号化動画像ビットストリーム900における、選択情報950が配置される位置を示す図である。この選択情報950は、イントラ予測方式として、制約付きイントラ予測方式及び非制約付きイントラ予測方式のいずれが用いられたかを示す情報である。
【0063】
図4A〜
図4Dに示すように、符号化動画像ビットストリーム900は、シーケンスヘッダ901と、ピクチャ単位の複数のデータ902とを含む。ピクチャ単位の各データ902は、ピクチャヘッダ911と、ピクチャデータ912とを含む。さらに、ピクチャデータ912は、スライス単位の複数のデータ913を含む。また、スライス単位の各データ913は、スライスヘッダ921と、スライスデータ922とを含む。
【0064】
例えば、
図4Aに示すように、選択情報950は、シーケンスヘッダ901に含まれる。
図4Bに示すように、選択情報950は、ピクチャヘッダ911に含まれてもよい。
図4Cに示すように、選択情報950は、スライスヘッダ921に含まれてもよい。例えば、この選択情報950は、非制約付きイントラ予測方式を示す値「0」と、制約付きイントラ予測方式を示す値「1」とを選択的に示すバイナリフラグである。
【0065】
また、
図4Dに示す例では、選択情報950は、シーケンスヘッダ901に含まれるプロファイルパラメータ951及びレベルパラメータ952の一方、又は両方で示される。
具体的には、プロファイルパラメータ951及びレベルパラメータ952の一方、又は両方と、ルックアップテーブルとを用いて、選択情報950を一意に決定できる。
【0066】
このように、本実施の形態に係る動画像符号化方法では、イントラ予測方式として、制約付きイントラ予測方式及び非制約付きイントラ予測方式のいずれが用いられたかを示す選択情報950を、符号化動画像ビットストリーム900のヘッダ内に符号化する。これにより、復号装置は、当該ヘッダ内の選択情報950を用いて、用いられたイントラ予測方式を特定できる。
【0067】
以下、制約付きイントラ予測方式を用いる各ブロックの符号化処理を、
図5及び
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
まず、ステップS201では、対象ブロックに用いる予測タイプを選択する。考えられる予測タイプには、イントラ予測タイプ及び非イントラ予測タイプが含まれる。非イントラ予測タイプの一例は、動き補償された画面間予測タイプ(インター予測タイプ)である。そして、ステップS202では、対象ブロックに用いる予測タイプとして、イントラ予測タイプ及び非イントラ予測タイプのどちらが選択されたかを判定する。
【0069】
イントラ予測タイプが選択された場合(S202でYes)、ステップS203に進む。ステップS203では、分割された複数のブロックのうち対象ブロックにイントラ予測を行うことで予測サンプル値を算出する。具体的には、利用可能な参照サンプルが有効(イントラ予測された)か、無効(非イントラ予測された)かを判定し、有効なサンプルを用いて、イントラ予測を行うことで予測サンプル値を算出する。より具体的には、少なくとも対象ブロックの直上及び直左の一方に位置する複数の参照サンプルの各々の有効性を判定し、当該複数の参照サンプルが有効サンプルと無効サンプルとを共に含む場合でも、当該有効サンプルを用いてイントラ予測を行う。なお、この処理の詳細については後述する。
【0070】
そして、ステップS204では、得られた予測サンプル値を用いてイントラ残差データを算出する。具体的には、対象ブロックの原画像と予測サンプル値との差分である残差データを算出する。
【0071】
一方、ステップS202において非イントラ予測タイプが選択されたと判定された場合(S202でNo)、ステップS206に進む。ステップS206では、非イントラ予測を行うことによって、非イントラ残差データと予測情報とを算出する。
【0072】
ステップS204又はステップS206の後、ステップS205で、残差データと予測情報とを符号化することで符号化動画像ビットストリームを生成する。ここで予測情報は、選択された予測タイプを示す信号を含む。イントラ予測タイプが用いられた場合、予測情報は、さらに、選択されたイントラ予測方法を示す信号(選択情報950)を含む。また、動き補償されたインター予測などの非イントラ予測タイプが用いられた場合、予測情報は、さらに、動きベクトル、参照ピクチャ指標、及び動きベクトル分解能を示す信号を含んでもよい。
【0073】
以下、
図6を用いて、上記ステップS203の処理を詳細に説明する。
図5に示すステップS203は、
図6に示すステップS203A〜S203Dを含む。
【0074】
ステップS203Aでは、参照サンプル位置の有効性を判定する。つまり、各参照サンプルがイントラ予測されたか(有効)、非イントラ予測されたか(無効)を判定する。
【0075】
次に、ステップS203Bでは、無効サンプル位置における参照サンプル値である補完サンプル値を、1以上の有効サンプル値を用いて算出する。
【0076】
以下、この補完サンプル値を算出する処理を詳細に説明する。
【0077】
本発明の一実施の形態では、以下の処理により補完サンプル値を算出する。まず、1以上の有効サンプル値を選択し、選択された有効サンプル値の各々に所定のスケーリング係数を乗算することでスケーリング値を算出する。次に、算出により得られた複数のスケーリング値の総和である第1総和値を求め、求められた第1総和値に所定のオフセット値を加算することで第2総和値を算出する。さらに、それによって得られた第2総和値を所定のシフトステップ値でダウンシフトすることによって、補完サンプル値を求める。
【0078】
ここで、所定のスケーリング係数、オフセット値及びシフトステップ値は、有効サンプル及び無効サンプルの数及び位置などの係数に基づいてルックアップテーブルを用いて求めてもよい。
【0079】
以下、
図2に示す場合を例に、補完サンプル値の演算の一例を示す。
図2に示す無効サンプル位置(12,−1)、(13,−1)、(14,−1)及び(15,−1)の参照サンプル値は、有効サンプル位置(11,−1)及び(16,−1)の参照サンプル値を平均化することによって算出される。つまり、無効サンプル位置を挟み、かつ当該無効サンプル位置に最も近い2つの有効サンプル位置の有効サンプル値の平均値を、当該無効サンプル位置に対する補完サンプル値として算出してもよい。
【0080】
また、2つの参照サンプル値の平均化することは、所定のスケーリング係数を1、オフセット値を1、かつシフトステップ値を1に設定して、以下の(式1)に示す演算により行うことができる。
【0081】
r(12,−1)=r(13,−1)=r(14,−1)=r(15,−1)=(r(11,−1)+r(16,−1)+1)>>1 (式1)
【0082】
また、別の方法として、有効サンプル値の一つを選択し、選択した有効サンプル値を補完サンプル値として算出する。例えば、
図2に示す、無効サンプル位置(12,−1)、(13,−1)、(14,−1)及び(15,−1)の参照サンプル値として、有効サンプル位置(11,−1)の有効サンプル値をコピーすることができる。つまり、無効サンプル位置に最も近い位置の有効サンプル値を、当該無効サンプル位置に対する補完サンプル値として算出してもよい。
【0083】
具体的には、例えば、以下の処理によりコピー元となる有効サンプルを選択できる。
【0084】
まず、全ての参照サンプル位置のうち、左下参照サンプル位置から開始し、右上参照サンプル位置で終わる方向の探索で見つかった、最初の有効サンプル位置を開始参照サンプル位置として識別する。次に、上記探索と同じサンプル順において、無効サンプル位置が、開始参照サンプル位置より前に位置するか後ろに位置するかを判定する。
【0085】
無効サンプル位置が開始サンプル位置より前に位置する場合、開始参照サンプル位置のサンプルをコピー元の有効サンプルとして選択する。一方、無効サンプルの位置が開始サンプル位置より後ろに位置する場合、上記探索と同じサンプル順に従い、当該無効サンプル位置より前であり、かつ当該無効サンプル位置に最も近い有効サンプルをコピー元の有効サンプルとして選択する。
【0086】
さらに、別の方法として、補完サンプル値として、単に所定の値を付与してもよい。この所定の値は、例えば、128である。
【0088】
ステップS203Bにおいて補完サンプル値が算出された後、ステップS203Cでは、有効サンプル値及び補完サンプル値を用いて、複数のイントラ予測方法から1つのイントラ予測方法を選択する。イントラ予測方法の例には、垂直方向及び水平方向等の種々のイントラ予測方向が含まれる。
【0089】
次に、ステップS203Dでは、有効サンプルサンプル値及び補完サンプル値を用いて、ステップS203Cで選択されたイントラ予測方法に従い、予測サンプル値を算出する。選択されたイントラ予測方法に応じて、異なる参照サンプル位置を用いてもよく、異なる演算処理を用いてもよい。
【0090】
また、本発明の一実施の形態において、予測サンプル値を算出するステップS203Dは、参照サンプル値をプレフィルタリングするステップと、プレフィルタリングされた参照サンプル値を用いて予測サンプル値を算出するステップとを含んでもよい。ここで、プレフィルタリングとは、隣接する複数の参照サンプル値に対してフィルタリングを行う処理である。
【0091】
以上より、本発明の実施の形態1に係る動画像符号化方法は、少なくとも対象ブロックの直上及び直左の一方に位置する複数の参照サンプルが有効サンプルと無効サンプルとを共に含む場合に、当該有効サンプルを用いて制約付きイントラ予測を行うことができる。これにより、当該動画像符号化方法は、有効サンプルを、より多く利用することができるので、符号化効率を向上できる。
【0092】
このように、本実施の形態に係る動画像符号化方法は、エラー耐性の効果を得る一方で演算の複雑性を同じレベルに維持するとともに、耐性イントラ予測を最適な効率で行うことができる。これにより、当該動画像符号化方法は符号化効率を向上できる。
【0093】
以下、上記動画像符号化方法により生成された符号化動画像ビットストリームを復号する動画像復号方法について説明する。
【0094】
図7に、本発明の実施の形態1における動画像復号処理を示すフローチャートを示す。
【0095】
まず、ステップS301では、符号化動画像ビットストリームのヘッダを解析することにより、制約付きイントラ予測方式又は非制約付きイントラ予測方式の選択結果を取得する。
【0096】
次に、ステップS302では、画像における符号化ブロックを復号する。このとき、イントラ予測された符号化ブロックは、ステップS301で取得された選択結果により示されるイントラ予測方式を用いて復号される。
【0097】
以下、制約付きイントラ予測方式を用いた各ブロックの復号処理を、
図9に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0098】
まず、ステップS401では、符号化動画像ビットストリームを解析することにより、処理対象の符号化ブロック(以下、対象ブロック)の予測タイプ(イントラ予測又は非イントラ予測)を取得する。
【0099】
次に、ステップS402では、ステップS401で取得された予測タイプがイントラ予測タイプ及び非イントラ予測タイプのいずれを示しているのかを判定する。
【0100】
イントラ予測タイプが用いられていた場合(S402でYes)、ステップS403に進む。
【0101】
ステップS403では、対象ブロックにイントラ予測を行うことで、対象ブロックの予測サンプル値を算出する。具体的には、利用可能な参照サンプル位置が有効(イントラ予測された)か、無効(非イントラ予測された)かを判定し、イントラ予測された参照サンプル位置を用いて、イントラ予測を行うことで予測サンプル値を算出する。より具体的には、少なくとも対象ブロックの直上及び直左の一方に位置する複数の参照サンプルの各々の有効性を判定し、当該複数の参照サンプルが有効サンプルと無効サンプルとを共に含む場合でも、当該有効サンプルを用いてイントラ予測を行う。なお、この処理の詳細については後述する。
【0102】
そして、ステップS404では、算出された予測サンプル値及びイントラ残差データを用いて、再構築されたイントラサンプル値を算出する。
【0103】
一方、ステップS402において非イントラ予測タイプが用いられている判定された場合(S402でNo)、ステップS405に進む。ステップS405では、非イントラ予測を行うことによって、再構築サンプル値を算出する。
【0104】
以下、
図9を用いて、上記ステップS403及びS405の処理を詳細に説明する。
図8に示すステップS403は、
図9に示すステップS403A〜S403Dを含む。
図8に示すステップS405は、
図9に示すステップS405A及びS405Bを含む。
【0105】
ステップS403Aでは、符号化動画像ビットストリームを解析することにより、対象ブロックのイントラ残差データ及びイントラ予測方法を取得する。
【0106】
次に、ステップS403Bでは、ステップS403Aで取得されたイントラ予測方法に従ってイントラ予測処理を行うために必要な参照サンプル位置の有効性を判定する。
【0107】
次に、ステップS403Cでは、有効サンプル値を用いて、無効サンプル位置における参照サンプル値(補完サンプル値)を算出する。
【0108】
次に、ステップS403Dは、有効サンプル値位置及び補完サンプル値を用いて、予測サンプル値を算出する。
【0109】
また、ステップS402で非イントラ予測タイプが用いられたと判定された場合(S402でNo)、ステップS405Aに進む。ステップS405Aでは、符号化された動画像ビットストリームを解析することにより、非イントラ残差データと予測情報とを得る。そして、ステップS405Bでは、解析された非イントラ残差データと予測情報とを用いて、非イントラ再構築サンプル値を算出する。
【0110】
以上より、本発明の実施の形態1に係る動画像復号方法は、上述した動画像符号化方法により生成された動画像符号化ビットストリームから再構築データを生成できる。
【0111】
以下、上記動画像符号化方法及び動画像復号方法を用いた動画像符号化装置及び動画像復号装置について説明する。
【0112】
まず、上記動画像符号化方法を用いた動画像符号化装置について説明する。
【0113】
図10は、本発明の実施の形態1に係る動画像符号化装置100の一例を示すブロック図である。この動画像符号化装置100は、分割部101と、選択部102と、スイッチ部103と、第1符号化部104と、第2符号化部105と、ヘッダ符号化部106と、ゲート部107と、ビットストリーム生成部108とを備える。
【0114】
分割部101は、原画像D101を取得し、当該原画像D101を可変長符号化ブロックD103に分割する。
【0115】
第1選択部601は、制約付きイントラ予測方式及び非制約付きイントラ予測方式のいずれかを選択し、その選択結果を示す選択情報D102を出力する。
【0116】
スイッチ部103は、この選択情報D102を使用して、可変長符号化ブロックD103を、第1符号化部104又は第2符号化部105に送る。具体的には、スイッチ部103は、選択情報D102により制約付きイントラ予測方式が選択されたことが示される場合には、可変長符号化ブロックD103を可変長符号化ブロックD104として第1符号化部104へ出力する。また、スイッチ部103は、選択情報D102により非制約付きイントラ予測方式が選択されたことが示される場合には、可変長符号化ブロックD103を可変長符号化ブロックD105として第2符号化部105へ出力する。
【0117】
第1符号化部104は、可変長符号化ブロックD104を、制約付きイントラ予測又は非イントラ予測を用いて符号化することにより符号化ビットストリームD106を生成する。
【0118】
第2符号化部105は、可変長符号化ブロックD105を、非制約付きイントラ予測又は非イントラ予測を用いて符号化することにより、符号化ビットストリームD107を生成する。
【0119】
ゲート部107は、第1符号化部104で生成された符号化ビットストリームD106、及び第2符号化部105で生成された符号化ビットストリームD107のうち、どちらのデータが存在するかに従って、存在するデータを符号化ビットストリームD108として、ビットストリーム生成部108に導く。
【0120】
ヘッダ符号化部106は、選択情報D102を符号化することで符号化ビットストリームD109を生成する。
【0121】
ビットストリーム生成部108は、符号化ビットストリームD108と符号化ビットストリームD109とを混合することで、符号化動画像ビットストリームD110を生成する。
【0122】
図11は、本発明の実施の形態1による動画像符号化装置100において、制約付きイントラ予測方式を用いる第1符号化部104の一例を示すブロック図である。この第1符号化部104は、第1選択部201と、スイッチ部202と、イントラ予測部220と、残差データ算出部207と、ゲート部208と、符号化部209と、再構築部210と、メモリ部211と、非イントラ予測部212とを備える。
【0123】
第1選択部201は、サンプルブロックD201(可変長符号化ブロックD104)を取得し、当該サンプルブロックD201に基づき、イントラ予測タイプ及び非イントラ予
測タイプの一方を選択し、選択結果を示す予測タイプD202を出力する。または、第1選択部201は、既に符号化されたサンプルに対して格納されている符号化情報D215を取得し、取得した符号化情報D215に基づき、イントラ予測タイプ及び非イントラ予測タイプの一方を選択してもよい。符号化情報D215は、例えば、予測タイプ、量子化パラメータ、及びブロックの次元などである。この予測タイプD202は、スイッチ部103を制御するために用いられる。
【0124】
イントラ予測タイプが選択された場合、スイッチ部202は、サンプルブロックD201をサンプルブロックD203として有効性判定部203に送る。
【0125】
イントラ予測部220は、分割された複数のブロックのうち対象ブロックにイントラ予測を行うことで予測サンプル値を算出する。また、イントラ予測部220は、少なくとも対象ブロックの直上及び直左の一方に位置する複数の参照サンプルの各々の有効性を判定し、複数の参照サンプルが有効サンプルと無効サンプルとを共に含む場合でも、当該有効サンプルを用いてイントラ予測を行う。このイントラ予測部220は、有効性判定部203と、参照サンプル算出部204と、第2選択部205と、予測サンプル算出部206とを備える。
【0126】
有効性判定部203は、サンプルブロックD203と、参照サンプル位置に対して格納されている予測タイプD214とを用いて、参照サンプル位置の有効性を判定する。そして、有効性判定部203は、元のサンプルブロックD203と参照サンプル位置の有効性とを含むデータD204を、参照サンプル算出部204に出力する。
【0127】
参照サンプル算出部204は、データD204と、有効サンプル値D213とを用いて、無効サンプル位置における参照サンプル値である補完サンプル値を算出する。参照サンプル算出部204は、元のサンプルブロックと補完サンプル値とを含むデータD205を、第2選択部205に出力する。
【0128】
第2選択部205は、データD205を用いて、複数のイントラ予測方法の中からイントラ予測方法D206を選択する。または、第2選択部205は、既に符号化されたサンプルに対して格納されている符号化情報D215を用いて、イントラ予測方法D206を選択してもよい。
【0129】
予測サンプル算出部206は、選択されたイントラ予測方法D206に基づき、入力参照サンプル値(有効サンプル値及び補完サンプル値)を用いて予測サンプル値を算出する。また、予測サンプル算出部206は、元のサンプルブロックと、選択されたイントラ予測方法と、算出された予測サンプル値とを含むデータD207を、残差データ算出部207に出力する。
【0130】
残差データ算出部207は、予測サンプル値と元のサンプルブロックとを用いてイントラ残差データを算出し、選択されたイントラ予測方法と算出されたイントラ残差データとを含むデータD208を出力する。
【0131】
一方、非イントラ予測タイプが選択された場合、スイッチ部202は、元のサンプルブロックD201をサンプルブロックD216として非イントラ予測部212に送る。
【0132】
非イントラ予測部212は、元のサンプルブロックD216と、以前に符号化されたサンプルについて格納された符号化情報D215とを用いて非イントラ予測を行うことで、非イントラ残差データと非イントラ予測情報とを含むデータD217を生成する。
【0133】
ゲート部208は、データD208とデータD217とのうちいずれのデータが利用可能であるかに応じて、利用可能なデータをデータD209として符号化部209に送る。
【0134】
符号化部209は、データD209に含まれる残差データを処理するとともに、入力データに対してエントロピー符号化を行うことで、符号化動画像ビットストリームD210(符号化ビットストリームD106)を生成する。残差データの処理の例には、変換処理及びスケーリング処理などが含まれる。また、符号化部209は、予測情報と処理された残差データとを含むデータD211を再構築部210に出力する。ここで予測情報は、選択された予測タイプを含み、イントラ予測の場合にはその選択されたイントラ予測方法も含む。
【0135】
再構築部210は、データD211と、格納されている符号化情報D215とを用いて再構築サンプル値を算出し、再構築サンプル値と予測情報とを含むデータD212をメモリ部211へ格納する。
【0136】
次に、上記動画像復号方法を用いた動画像復号装置について説明する。
【0137】
図12は、本発明の実施の形態1に係る動画像復号装置300の一例を示すブロック図である。この動画像復号装置300は、解析部301と、スイッチ部302と、第1復号部303と、第2復号部304と、ゲート部305と、画像生成部306とを備える。
【0138】
解析部301は、符号化動画像ビットストリームD301のヘッダを解析することにより、制約付きイントラ予測方式又は非制約付きイントラ予測方式の選択結果を示す選択情報D302を取得する。
【0139】
スイッチ部302は、選択情報D302で示される、選択されたイントラ予測方式に基づいて、符号化動画像ビットストリームD301を、第1復号部303又は第2復号部304に送る。具体的には、スイッチ部302は、選択情報D302により制約付きイントラ予測方式が示される場合には、符号化動画像ビットストリームD301をビットストリームD303として第1復号部303へ出力する。一方、スイッチ部302は、選択情報D302により非制約付きイントラ予測方式が示される場合には、符号化動画像ビットストリームD301をビットストリームD304として第2復号部304へ出力する。
【0140】
第1復号部303は、制約付きイントラ予測及び非イントラ予測を用いて、ビットストリームD303を復号することによりブロック単位の再構築サンプル値D305を生成する。第2復号部304は、非制約付きイントラ予測及び非イントラ予測を用いて、ビットストリームD304を復号することによりブロック単位の再構築サンプル値D306を生成する。
【0141】
ゲート部305は、再構築サンプル値D305及びD306のいずれの信号が存在するかに応じて、存在する信号を再構築サンプル値D307として画像生成部306へ送る。
【0142】
画像生成部306は、当該ブロックの再構築サンプル値D307を、再構築画像内のそれぞれの位置に書き込むことにより、再構築画像D308を生成する。
【0143】
図13は、本発明の実施の形態1における制約付きイントラ予測方式を用いる第1復号部303の一例を示すブロック図である。この第1復号部303は、第1解析部401と、スイッチ部402と、第2解析部403と、イントラ予測部420と、再構築サンプル算出部407と、第1ゲート部408と、第2ゲート部409と、メモリ部410と、非イントラ再構築部411とを備える。
【0144】
第1解析部401は、符号化動画像ビットストリームD401を解析することにより、イントラ予測タイプ又は非イントラ予測タイプの選択結果を示す選択情報D402を取得する。
【0145】
解析された選択結果がイントラ予測タイプを示す場合、スイッチ部402は、符号化動画像ビットストリームD401をビットストリームD403として第2解析部403に送る。
【0146】
第2解析部403は、ビットストリームD403を解析することにより、残差データとイントラ予測方法とを取得する。そして、第2解析部403は、解析された残差データと解析されたイントラ予測方法とを含む解析データD404を出力する。
【0147】
イントラ予測部420は、対象ブロックにイントラ予測を行うことで、当該対象ブロックの予測サンプル値を算出する。また、イントラ予測部420は、少なくとも対象ブロックの直上及び直左の一方に位置する複数の参照サンプルの各々の有効性を判定し、複数の参照サンプルが有効サンプルと無効サンプルとを共に含む場合でも、当該有効サンプルを用いてイントラ予測を行う。このイントラ予測部420は、有効性判定部404と、参照サンプル算出部405と、予測サンプル算出部406とを備える。
【0148】
有効性判定部404は、解析データD404と、参照サンプル位置に対して格納されている予測タイプD416とを入力として取得し、解析されたイントラ予測方法に必要な各参照サンプル位置の有効性を判定する。有効性判定部404は、解析された残差データと、解析されたイントラ予測方法と、参照サンプル位置の有効性とを含むデータD405を、参照サンプル算出部405に出力する。
【0149】
参照サンプル算出部405は、この入力データD405及び有効サンプル値D415を用いて、無効サンプル位置における参照サンプル値(補完サンプル値)を算出する。そして、参照サンプル算出部405は、解析された残差データと、解析されたイントラ予測方法と、参照サンプル位置の有効性とを含むデータD406を予測サンプル算出部406に出力する。
【0150】
予測サンプル算出部406は、このデータD406を用いて、解析されたイントラ予測方法に従って予測サンプル値を算出する。そして、予測サンプル算出部406は、解析された残差データと、解析されたイントラ予測方法と、予測サンプル値とを含むデータD407を、再構築サンプル算出部407へ出力する。
【0151】
再構築サンプル算出部407は、データD407を用いて、符号化対象ブロックに対応するイントラ再構築サンプル値D408を算出する。また、再構築サンプル算出部407は、イントラ再構築サンプル値と、解析されたイントラ予測タイプと、解析されたイントラ予測方法とを含むデータD410を出力する。
【0152】
一方、解析された選択結果が非イントラ予測タイプを示す場合、スイッチ部402は、符号化動画像ビットストリームD401をビットストリームD411として非イントラ再構築部411に送る。
【0153】
非イントラ再構築部411は、ビットストリームD411と既に符号化されたサンプルに対して格納されている符号化情報D417とを用いて、解析された非イントラ予測タイプに従って再構築サンプル値D412を算出する。また、非イントラ再構築部411は、非イントラ再構築サンプル値と、解析された非イントラ予測情報とを含むデータD413
を出力する。
【0154】
第1ゲート部408は、再構築サンプル値D408及びD412のうち利用可能なデータを出力ブロックの再構築サンプルD409として送る。同様に、第2ゲート部409は、データD410及びデータD413のうち利用可能なデータをデータD414としてメモリ部410に格納する。
【0155】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2では、上記制約付きイントラ予測方式として選択的イントラDC予測方式が用いられる場合について説明する。
【0156】
具体的には、選択的イントラDC予測方式は、隣接クラスタの複数の参照サンプル位置から、イントラ予測された参照サンプル位置の参照サンプル値のみを用いる。つまり、当該方式は、隣接クラスタが非イントラ予測参照サンプルを含むか否かを考慮したイントラDC予測処理を実行する。
【0157】
本明細書全体にわたって、イントラDC予測方式とは、符号化対象ブロックにおける全ての予測サンプルとして、1つの予測サンプル値を用いるイントラピクチャ予測方式のことを指す。隣接クラスタの参照サンプルとは、対象ブロックに対して、隣接する、同じ方向に配置されているサンプル群のことを指す。対象ブロックに対して4つの隣接クラスタがあり、これらを、上部隣接クラスタ、右上隣接クラスタ、左隣接クラスタ、及び左下隣接クラスタと称する。
図2に示す例では、ブロックA及びBに属する参照サンプル(16,−1)から(31,−1)が右上隣接クラスタの参照サンプルである。同様に、ブロックC、D、及びEに属する参照サンプル(0,−1)から(15,−1)が上部隣接クラスタの参照サンプルである。ブロックGに属する参照サンプル(−1,0)から(−1,15)が左隣接クラスタの参照サンプルである。ブロックJ、H、及びIに属する参照サンプル(−1,16)から(−1,31)が左下隣接クラスタの参照サンプルがある。
【0158】
また、本発明の選択的イントラDC予測方式に対して、イントラ予測された参照サンプル値及び非イントラ予測された参照サンプル値の両方を用いるイントラDC予測処理を行う先行技術のイントラDC予測方式を、本明細書において非選択的イントラDC予測方式と称する。
【0159】
図14は、本発明の実施の形態2に係る動画像復号処理を示すフローチャートを示す。
【0160】
まず、ステップS501では、イントラDC予測方式として、非選択的イントラDC予測方式及び選択的イントラDC予測方式の一方を選択する。
【0161】
次に、ステップS502では、対象の原画像を1以上の符号化対象ブロックに分割する。符号化対象ブロックの一例は、32×32の原画像サンプルを含む2次元ブロックである。
【0162】
次に、ステップS503では、得られた符号化対象ブロックを符号化することで、符号化動画像ビットストリームを生成する。また、ステップS503において、対象ブロックを、イントラDC予測方法を用いて符号化する場合、ステップS501で選択されたイントラDC予測方式が用いられる。
【0163】
最後に、ステップS504では、ステップS501で選択された非選択的イントラDC予測方式及び選択的イントラDC予測方式のいずれかの選択結果を、符号化動画像ビットストリームのヘッダ内に符号化する。
【0164】
図15A〜
図15Dは、上記動画像符号化方法により生成される符号化動画像ビットストリーム900において、選択情報960が配置される位置を示す。この選択情報960は、イントラDC予測方式として、非選択的イントラDC予測方式及び選択的イントラDC予測方式のいずれが用いられたかを示す情報である。
【0166】
例えば、
図15Aに示すように、選択情報960は、シーケンスヘッダ901に含まれる。
図15Bに示すように、選択情報960は、ピクチャヘッダ911に含まれてもよい。
図15Cに示すように、選択情報960は、スライスヘッダ921に含まれてもよい。例えば、この選択情報960は、非選択的イントラDC予測方式を示す値「0」と、選択的イントラDC予測方式を示す値「1」とを選択的に示すバイナリフラグである。
【0167】
また、
図15Dに示す例では、選択情報960は、シーケンスヘッダ901に含まれる、プロファイルパラメータ961及びレベルパラメータ962の一方、又は両方で示される。具体的には、プロファイルパラメータ961及びレベルパラメータ962の一方、又は両方と、ルックアップテーブルとを用いて、選択情報960を一意に決定できる。
【0168】
このように、本実施の形態に係る動画像符号化方法では、イントラDC予測方式として、選択的イントラDC予測方式及び非選択的イントラDC予測方式のいずれが用いられたかを示す選択情報960を、符号化動画像ビットストリーム900のヘッダ内に符号化する。これにより、復号装置は、当該ヘッダ内の選択情報960を用いて、用いられたイントラ予測方式を特定できる。
【0169】
以下、選択的イントラDC予測方式を用いた各ブロックの符号化処理を、
図16に示すフローチャートを用いて説明する。
【0170】
まず、ステップS601では、対象ブロックに用いる予測方法を選択する。考えられる予測方法には、イントラDC予測方法と非イントラDC予測方法とが含まれる。さらに、非イントラDC予測方法には、イントラDC以外の他のイントラ予測方法と、さまざまな画面間予測方法とが含まれる。そして、ステップS602では、イントラDC予測方法又は非イントラDC予測方法のどちらが選択されたかを判定する。
【0171】
イントラDC予測方式が選択された場合(S602でYes)、ステップS603に進む。ステップS603では、イントラ予測された参照サンプル位置をいくつか選択する。
【0172】
次に、ステップS604では、選択された参照サンプル位置を用いて、イントラDC予測サンプル値を算出する。そして、ステップS605では、イントラDC予測サンプル値を用いて残差データを算出する。
【0173】
本発明の選択的イントラDC予測方式の一実施の形態において、イントラDC予測サンプル値を算出するために、全ての隣接クラスタの参照サンプル値のうちイントラ予測された参照サンプル値が全て選択される。
図2の例に示す例では、(16,−1)から(31,−1)、(0,−1)から(11,−1)、及び(−1,0)から(−1,23)の52個の参照サンプルを全て用いて、イントラDC予測サンプル値が算出される。
【0174】
なお、選択的イントラDC予測方式の別の実施の形態においては、上部参照サンプル及び左参照サンプルから、イントラ予測された参照サンプル値が選択された後、イントラD
C予測サンプル値が算出される。同じ
図2の例では、(0,−1)から(11,−1)、及び(−1,0)から(−1,15)の28個の参照サンプルを全て用いて、イントラDC予測サンプルが算出される。
【0175】
本発明の一実施の形態では、予測サンプル値は以下の処理により算出される。
【0176】
まず、1以上の有効サンプルを選択サンプルとして選択する。次に、選択サンプルの数を特定する。次に、ルックアップテーブルを用いて、選択サンプルの数に従って、スケーリング係数と、オフセット値と、シフトステップ値とを選択する。次に、選択サンプルの値の総和である第1総和値を算出する。次に、第1総和値に上記選択されたスケーリング係数を乗算することでスケール値を算出する。次に、上記選択されたオフセット値と、スケール値との和である第2総和値を算出する。最後に、第2総和値を、上記選択されたシフトステップ値でダウンシフトすることで、対象ブロックの全ての予測サンプル値を生成する。
【0177】
また、選択的イントラDC予測方式の別の実施の形態においては、1つの参照サンプル位置における参照サンプル値、例えば、
図2に示す(0,−1)のような参照サンプル値を、対象ブロックの全てのイントラDC予測サンプル値とする。
【0178】
また、選択的イントラDC予測方式のさらに別の実施の形態においては、所定の一定値(例えば、128)を対象ブロックの全てのイントラDCサンプル値とする。
【0179】
一方、ステップS602で非イントラDC予測方法が選択されたと判定された場合(S602でNo)、ステップS607に進む。ステップS607では、非イントラDC予測処理を行うことによって、非イントラ残差データと予測情報とが得られる。
【0180】
最後に、ステップS606では、ステップS605又はS607で生成された残差データと予測情報とを符号化動画像ビットストリームに符号化する。ここで予測情報は、選択された予測方法を示す信号を含む。
【0181】
以上より、本発明の実施の形態2に係る動画像符号化方法は、少なくとも対象ブロックの直上及び直左の一方に位置する複数の参照サンプルが有効サンプルと無効サンプルとを共に含む場合に、当該有効サンプルを用いて選択的イントラDC予測を行うことができる。これにより、当該動画像符号化方法は、有効サンプルを、より多く利用することができるので、符号化効率を向上できる。
【0182】
このように、本実施の形態に係る動画像符号化方法は、エラー耐性の効果を得る一方で演算の複雑性を同じレベルに維持するとともに、耐性イントラ予測を最適な効率で行うことができる。これにより、当該動画像符号化方法は符号化効率を向上できる。
【0183】
以下、上記動画像符号化方法により生成された符号化動画像ビットストリームを復号する動画像復号方法について説明する。
【0184】
図17に、本発明の実施の形態2に係る動画像復号処理を説明するフローチャートを示す。
【0185】
まず、ステップS701では、符号化動画像ビットストリームのヘッダを解析することにより、非選択的イントラDC予測方式及び選択的イントラDC予測方式のいずれかの選択結果を取得する。次に、ステップS702では、画像における符号化ブロックを復号する。このとき、イントラDC予測された符号化ブロックは、ステップS701で取得され
た選択結果により示されるイントラDC予測方式を用いて復号される。
【0186】
以下、選択的イントラDC予測方式を用いた各ブロックの復号処理を、
図18に示すフローチャートを用いて説明する。
【0187】
まず、ステップS801では、符号化動画像ビットストリームを解析することにより、符号化対象ブロックの予測方法を取得する。そして、ステップS802では、解析された予測方式がイントラDC予測方法又は非イントラDC予測方法のどちらを示しているのかを判定する。
【0188】
イントラDC予測方法が用いられた場合(S802でYes)、ステップS803に進む。ステップS803では、符号化動画像ビットストリームを解析することにより、対象符号化ブロックのイントラDC残差データを取得する。次に、ステップS804では、イントラ予測された参照サンプル位置をいくつか選択する。
【0189】
次に、ステップS805では、選択された参照サンプル位置を用いて、イントラDC予測サンプル値を算出する。そして、ステップS806では、イントラDC予測サンプル値と、解析された残差データとを用いて再構築サンプル値を算出する。
【0190】
一方、非イントラDC予測方法が用いられた場合(S802でNo)、ステップS807に進む。ステップS807では、符号化動画像ビットストリームを解析することにより、非イントラDC残差データ及び予測情報を取得する。そして、ステップS808では、解析された非イントラDC残差データ及び予測情報を用いて、再構築サンプル値を算出する。
【0191】
以上より、本発明の実施の形態2に係る動画像復号方法は、上述した動画像符号化方法により生成された動画像符号化ビットストリームから再構築データを生成できる。
【0192】
以下、上記動画像符号化方法及び動画像復号方法を用いた動画像符号化装置及び動画像復号装置について説明する。
【0193】
まず、上記動画像符号化方法を用いた動画像符号化装置について説明する。
【0194】
図19は、本発明の実施の形態2に係る動画像符号化装置500の一例を示すブロック図である。この動画像符号化装置500は、分割部501と、選択部502と、スイッチ部503と、第1符号化部504と、第2符号化部505と、ヘッダ符号化部506と、ゲート部507と、ビットストリーム生成部508とを備える。
【0195】
分割部501は、原画像D501を取得し、取得した原画像D501を可変長符号化ブロックD503に分割する。
【0196】
選択部502は、非選択的イントラDC予測方式及び選択的イントラDC予測方式のいずれかを選択し、その選択結果を示す選択情報D502を出力する。
【0197】
スイッチ部503は、この選択情報D502を使用して、可変長符号化ブロックD503を、第1符号化部504又は第2符号化部505に送る。具体的には、スイッチ部503は、選択情報D502により選択的イントラDC予測方式が選択されたことが示される場合には、可変長符号化ブロックD503を可変長符号化ブロックD504として第1符号化部504へ出力する。また、スイッチ部503は、選択情報D502により非選択的イントラDC予測方式が選択されたことが示される場合には、可変長符号化ブロックD5
03を可変長符号化ブロックD505として第2符号化部505へ出力する。
【0198】
第1符号化部504は、可変長符号化ブロックD504を、選択的イントラDC予測又は非イントラDC予測を用いて符号化することにより符号化ビットストリームD506を生成する。
【0199】
第2符号化部505は、可変長符号化ブロックD505を、非選択的イントラDC予測又は非イントラDC予測を用いて符号化することにより、符号化ビットストリームD507を生成する。
【0200】
ゲート部507は、第1符号化部504で生成された符号化ビットストリームD506、及び第2符号化部505で生成された符号化ビットストリームD507のうち、どちらのデータが存在するかに従って、存在するデータを符号化ビットストリームD508として、ビットストリーム生成部508に導く。
【0201】
ヘッダ符号化部506は、選択情報D502を符号化することで符号化ビットストリームD509を生成する。
【0202】
ビットストリーム生成部508は、符号化ビットストリームD509と符号化ビットストリームD508とを混合することで、符号化動画像ビットストリームD510を生成する。
【0203】
図20は、本発明の実施の形態2に係る動画像符号化装置500における第1符号化部504の一例を示すブロック図である。この第1符号化部504は、第1選択部601と、スイッチ部602と、イントラDC予測部620と、残差データ算出部607と、ゲート部608と、符号化部609と、再構築部610と、メモリ部611と、非イントラDC予測部612とを備える。
【0204】
第1選択部601は、サンプルブロックD601(可変長符号化ブロックD504)を取得し、当該サンプルブロックD601に基づき、イントラDC予測方法及び非イントラDC予測方法の一方を選択し、選択結果を示す予測タイプD602を出力する。または、第1選択部601は、既に符号化されたサンプルに対して格納されている符号化情報D615を取得し、取得した符号化情報D615に基づき、イントラDC予測方法及び非イントラDC予測方法の一方を選択してもよい。符号化情報D615は、例えば、予測方法、量子化パラメータ、及びブロックの次元などである。この予測タイプD602は、スイッチ部602を制御するために用いられる。
【0205】
イントラDC予測方法が選択された場合、スイッチ部602は、元のサンプルブロックD601をサンプルブロックD603として第2選択部605に送る。
【0206】
イントラDC予測部620は、分割された複数のブロックのうち対象ブロックにイントラDC予測を行うことで予測サンプル値を算出する。また、イントラDC予測部620は、少なくとも対象ブロックの直上及び直左の一方に位置する複数の参照サンプルの各々の有効性を判定し、複数の参照サンプルが有効サンプルと無効サンプルとを共に含む場合でも、当該有効サンプルを用いてイントラDC予測を行う。このイントラDC予測部620は、第2選択部605と、予測サンプル算出部606とを備える。
【0207】
第2選択部605は、参照サンプル位置に対して格納された予測タイプD614を用いて、イントラ予測された有効サンプル位置をいくつか選択する。予測タイプD614は、イントラ予測タイプ及び非イントラ予測タイプのいずれかの選択結果のことである。そし
て、第2選択部605は、元のサンプルブロックと、選択された有効サンプル位置とを含むデータD606を、予測サンプル算出部606に出力する。
【0208】
予測サンプル算出部606は、入力データD606と、選択された有効サンプル位置における有効サンプル値D613とを用いて、イントラDC予測サンプル値を算出する。そして、予測サンプル算出部606は、元のサンプルブロックとイントラDC予測サンプル値とを含むデータD607を残差データ算出部607へ出力する。
【0209】
残差データ算出部607は、イントラDC予測サンプル値と元のサンプルブロックとを用いてイントラDC残差データを含むデータD608を算出する。
【0210】
一方、非イントラDC予測方法が選択された場合、スイッチ部602は、元のサンプルブロックD601をサンプルブロックD616として非イントラDC予測部612に送る。
【0211】
非イントラDC予測部612は、元のサンプルブロックD616と、既に符号化されたサンプルについて格納されている符号化情報D615とを用いて、非イントラDC残差データと非イントラDC予測情報とを含むデータD617を生成する。
【0212】
ゲート部608は、データD608及びデータD617のうち、いずれのデータが利用可能であるかに応じて、利用可能なデータをデータD609として符号化部609に送る。
【0213】
符号化部609は、データD609に含まれる残差データを処理するとともに、入力データに対してエントロピー符号化を行うことで、符号化動画像ビットストリームD610(符号化ビットストリームD506)を生成する。残差データの処理の例には、変換処理及びスケーリング処理などが含まれる。また、符号化部609は、予測情報と処理された残差データとを含むデータD611を再構築部610に出力する。ここで予測情報は、対象ブロックの予測タイプを含む。
【0214】
再構築部610は、データD611と、格納されている符号化情報D615とを用いて再構築サンプル値を算出し、再構築サンプル値と予測情報とを含むデータD612をメモリ部611に格納する。
【0215】
次に、上記動画像復号方法を用いた動画像復号装置について説明する。
【0216】
図21は、本発明の実施の形態2に係る動画像復号装置700の一例を示すブロック図である。この動画像復号装置700は、解析部701と、スイッチ部702と、第1復号部703と、第2復号部704と、ゲート部705と、画像生成部706とを備える。
【0217】
解析部701は、符号化動画像ビットストリームD701のヘッダを解析することにより、非選択的イントラDC予測方式及び選択的イントラDC予測方式のいずれかの選択結果を示す選択情報D702を取得する。
【0218】
スイッチ部702は、選択されたイントラDC予測方式に基づき、符号化動画像ビットストリームD701を、第1復号部703又は第2復号部704に送る。具体的には、スイッチ部702は、選択情報D702により選択的イントラDC予測方式が示される場合には、符号化動画像ビットストリームD701をビットストリームD703として第1復号部703へ出力する。一方、スイッチ部702は、選択情報D702により非選択的イントラDC予測方式が示される場合には、符号化動画像ビットストリームD701をビッ
トストリームD704として第2復号部704へ出力する。
【0219】
第1復号部703は、選択的イントラDC予測及び非イントラDC予測を用いて、ビットストリームD703を復号することによりブロック単位の再構築サンプル値D705を生成する。第2復号部704は、非選択的イントラDC予測及び非イントラDC予測を用いて、ビットストリームD704を復号することによりブロック単位の再構築サンプル値D706を生成する。
【0220】
ゲート部705は、再構築サンプル値D705及びD706のいずれの信号が存在するかに応じて、存在する信号を再構築サンプル値D707として画像生成部706に送る。
【0221】
画像生成部706は、当該ブロックの再構築サンプル値D707を、再構築画像内のそれぞれの位置に書きこむことにより、再構築画像D708を生成する。
【0222】
図22は、本発明の実施の形態2における選択的イントラDC予測方式を用いた第1復号部703の一例を示すブロック図である。この第1復号部703は、第1解析部801と、スイッチ部802と、第2解析部803と、イントラDC予測部820と、再構築サンプル算出部807と、第1ゲート部808と、第2ゲート部809と、メモリ部810と、非イントラDC再構築部811とを備える。
【0223】
第1解析部801は、符号化動画像ビットストリームD801を解析することにより、イントラDC予測方法及び非イントラDC予測方法のいずれかの選択結果を示す選択情報D802を取得する。
【0224】
解析された選択結果がイントラDC予測方法を示す場合に、スイッチ部802は、符号化動画像ビットストリームD801をビットストリームD803として第2解析部803に送る。
【0225】
第2解析部803は、ビットストリームD803を解析することにより、符号化対象ブロックに対するイントラDC残差データD804を取得する。
【0226】
イントラDC予測部820は、分割された複数のブロックのうち対象ブロックにイントラDC予測を行うことで予測サンプル値を算出する。また、イントラDC予測部820は、少なくとも対象ブロックの直上及び直左の一方に位置する複数の参照サンプルの各々の有効性を判定し、複数の参照サンプルが有効サンプルと無効サンプルとを共に含む場合でも、当該有効サンプルを用いてイントラDC予測を行う。このイントラDC予測部820は、選択部804と、予測サンプル算出部806とを備える。
【0227】
選択部804は、参照サンプル位置に対して格納された予測タイプD816を用いて、イントラ予測された有効サンプル位置をいくつか選択する。ここで予測タイプD816とは、イントラ予測タイプ又は非イントラ予測タイプのいずれかの選択結果である。そして、選択部804は、解析された残差データD804と選択された有効サンプル位置とを含むデータD805を、予測サンプル算出部806に出力する。
【0228】
予測サンプル算出部806は、入力データD805と、選択された有効サンプル位置における有効サンプル値D815とを用いて、イントラDC予測サンプル値を算出する。そして、予測サンプル算出部806は、解析された残差データと、イントラDC予測サンプル値とを含むデータD807を再構築サンプル算出部807へ出力する。
【0229】
再構築サンプル算出部807は、データD807を用いて、符号化対象ブロックに対す
るイントラDC再構築サンプル値D808を算出する。また、再構築サンプル算出部807は、イントラ再構築サンプル値と、解析された予測方法とを含むデータD810を出力する。
【0230】
一方、解析された選択結果が非イントラDC予測方法を示す場合、スイッチ部802は、符号化動画像ビットストリームD801をビットストリームD811として非イントラDC再構築部811に送る。
【0231】
非イントラDC再構築部811は、ビットストリームD811と、既に符号化されたサンプルに対して格納されている符号化情報D817とを用いて、解析された非イントラDC予測方法に従って、再構築サンプル値D812を算出する。また、非イントラDC再構築部811は、非イントラDC再構築サンプル値と解析された非イントラDC予測情報とを含むデータD813を出力する。
【0232】
第1ゲート部808は、再構築サンプル値D808又はD812のうち利用可能なデータを、出力ブロックの再構築サンプルD809として送る。同様に、第2ゲート部809は、データD810又はデータD813のうち利用可能なデータをデータD814としてメモリ部810に格納する。
【0233】
以上、本発明の実施の形態に係る動画像符号化方法、動画像復号方法、動画像符号化装置及び動画像復号装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0234】
例えば、本発明は、上記動画像符号化装置及び上記動画像復号装置を含む動画像符号化復号装置として実現してもよい。
【0235】
また、上記各実施の形態に係る、動画像符号化方法、動画像復号方法、動画像符号化装置及び動画像復号装置、並びにそれらの変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
【0236】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0237】
また、上記のステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0238】
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)または動画像復号化方法(画像復号方法)の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
【0239】
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)や動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例とそれを用いたシステムを説明する。当該システムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、及び画像復号方法を用いた画像復号装置からなる画像符号化復号装置を有することを特徴とする。システムにおける他の構成につ
いて、場合に応じて適切に変更することができる。
【0240】
図23は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
【0241】
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
【0242】
しかし、コンテンツ供給システムex100は
図23のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
【0243】
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband−Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long
Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
【0244】
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い(即ち、本発明の画像符号化装置として機能する)、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号化処理して再生する(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)。
【0245】
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号化処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
【0246】
また、これら符号化・復号化処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有す
るLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号化処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
【0247】
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
【0248】
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号化し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
【0249】
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、
図24に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)または動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した動画像符号化方法により符号化されたデータである(即ち、本発明の画像符号化装置によって符号化されたデータである)。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号化して再生する(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)。
【0250】
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号化する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した動画像復号化装置または動画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に動画像復号化装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に動画像復号化装置を組み込んでもよい。
【0251】
図25は、上記各実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
【0252】
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号化する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305(本発
明の画像符号化装置または画像復号装置として機能する)を有する信号処理部ex306と、復号化した音声信号を出力するスピーカex307、復号化した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
【0253】
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号化し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号化し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号化方法を用いて復号化する。復号化した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
【0254】
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号化処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
【0255】
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号化処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
【0256】
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/
記録部ex400の構成を
図26に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
【0257】
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
【0258】
図27に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
【0259】
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
【0260】
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば
図25に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
【0261】
図28Aは、上記実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号化されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号化されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
【0262】
さらに、携帯電話ex114の構成例について、
図28Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
【0263】
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
【0264】
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
【0265】
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
【0266】
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し(即ち、本発明の画像符号化装置として機能する)、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
【0267】
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
【0268】
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号化するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって復号化することにより映像信号を復号し(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
【0269】
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号化器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
【0270】
このように、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法あるいは動画像復号化方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
【0271】
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0272】
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置と、MPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
【0273】
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
【0274】
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG−2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
【0275】
図29は、多重化データの構成を示す図である。
図29に示すように多重化データは、
ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC−3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS−HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
【0276】
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
【0277】
図30は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
【0278】
図31は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。
図31における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。
図31の矢印yy1,yy2, yy3, yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time−Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time−Stamp)が格納される。
【0279】
図32は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD−ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには
図32下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり
、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
【0280】
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
【0281】
図33はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
【0282】
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
【0283】
多重化データ情報ファイルは、
図34に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
【0284】
多重化データ情報は
図34に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
【0285】
ストリーム属性情報は
図35に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコー
ダの初期化などに利用される。
【0286】
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
【0287】
また、本実施の形態における動画像復号化方法のステップを
図36に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した動画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
【0288】
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号化方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、または、動画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
【0289】
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法および装置、動画像復号化方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、
図37に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
【0290】
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した
符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
【0291】
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
【0292】
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
【0293】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0294】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field
Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0295】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【0296】
(実施の形態6)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
【0297】
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号化装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。
図38は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そ
して、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
【0298】
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、
図37のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、
図37の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態4で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態4で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、
図40のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
【0299】
図39は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
【0300】
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
【0301】
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4−AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
【0302】
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映
像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
【0303】
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
【0304】
(実施の形態7)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
【0305】
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した動画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を
図41Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した動画像復号方法と、MPEG4−AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4−AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4−AVC規格に対応しない、本発明特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。特に、本発明は、イントラ予測処理に特徴を有していることから、例えば、イントラ予測処理については専用の復号処理部ex901を用い、それ以外のエントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償のいずれか、または、全ての処理については、復号処理部を共有することが考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4−AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
【0306】
また、処理を一部共有化する他の例を
図41Bのex1000に示す。この例では、本発明に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の動画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他
の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
【0307】
このように、本発明の動画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。