【解決手段】吸収性物品に設けられる吸収性積層体10であって、吸収性積層体10は、上側吸収層11と下側吸収層31とこれらの間に配された中間吸収層21とを有し、上側吸収層11と中間吸収層21と下側吸収層31はそれぞれ、上側のシート部材と下側のシート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成され、上側吸収層11と中間吸収層21と下側吸収層31は、シート部材どうしが接合されない非封止部に吸水性樹脂が配された吸収領域18,28,38とそれ以外の領域として緩衝領域19,29,39とを有し、上側吸収層11と下側吸収層31は中間吸収層21よりも吸収領域が広い面積で設けられている。
前記中間吸収層は、長手方向の中央50%かつ幅方向の中央50%の領域の少なくとも一部に緩衝領域が設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性積層体。
前記上側吸収層は、長手方向の中央50%かつ幅方向の中央50%の領域の少なくとも一部に、緩衝領域が設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性積層体。
前記中間吸収層は、幅方向に分割されて形成された右側中間吸収層と左側中間吸収層から構成され、前記右側中間吸収層と前記左側中間吸収層の間に緩衝領域が形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性積層体。
前記上側吸収層と前記中間吸収層は、シート部材間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない1つのシート状吸収体が、緩衝領域で幅方向の両端部が折り返されることにより形成され、
前記中間吸収層が折り返された前記両端部から形成され、前記上側吸収層が前記両端部の間の中央部から形成されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収性積層体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の吸収性積層体は、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に設けられるものである。吸収性積層体は吸収性物品が受けた尿等を吸収し固定し、例えば、吸収性物品のトップシートとバックシートの間に設けられる。
【0019】
吸収性積層体は、長手方向と幅方向とを有する。「長手方向」とは、吸収性積層体が設けられた吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。「幅方向」とは、吸収性積層体と同一面上にあり、長手方向と直交する方向を意味する。また、長手方向と幅方向から形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。また本発明において、「上側」とは、吸収性物品を着用した際の着用者側を意味し、「下側」とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側、すなわち外側を意味する。上側から下側に延びる方向を、上下方向と規定する。
【0020】
吸収性積層体の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収性積層体の形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等が挙げられる。
【0021】
本発明の吸収性積層体は、上側吸収層と、下側吸収層と、上側吸収層と下側吸収層の間に配された中間吸収層とを有する。上側吸収層は、中間吸収層と下側吸収層よりも上側に配され、吸収性物品ではトップシート側に配される。上側吸収層は、トップシートを通過し、吸収性積層体に移行した尿等を、中間吸収層と下側吸収層よりも基本的に先に受ける。上側吸収層は、好ましくは吸収性積層体の最上側に配される。また上側吸収層は、好ましくは中間吸収層と隣接して設けられる。下側吸収層は、中間吸収層と上側吸収層よりも下側に配され、吸収性物品ではバックシート側に配される。上側吸収層は、好ましくは吸収性積層体の最下側に配される。また下側吸収層は、好ましくは中間吸収層と隣接して設けられる。中間吸収層は上側吸収層と下側吸収層の間に配される。中間吸収層は、1層のみから構成されてもよく、複数層から構成されてもよい。なお本発明において、上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層をそれぞれ単に「吸収層」と称する場合があるが、「吸収層」は上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層から選ばれる任意の層を意味する。
【0022】
上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層はそれぞれ、上側のシート部材と下側のシート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成される。つまり、上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層は、各吸収層の上側と下側にそれぞれシート部材が配され、これらのシート部材の間に吸水性樹脂が配されるが、これらのシート部材の間にはパルプ繊維は配されない。なお、上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層において、製造上不可避的に混入するパルプ繊維の存在は許容される。上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層は、上側のシート部材と下側のシート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないため、高い吸収容量を有しつつ薄型に形成することができる。
【0023】
吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂;デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体等のデンプン系の吸水性樹脂;ポリビニルアルコール架橋体等のポリビニルアルコール系の吸水性樹脂等を用いることができる。吸水性樹脂としては、高い液吸収量を有する点で、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
シート部材は液透過性であり、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたものを用いることができる。また、シート部材として、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。好ましくは、シート部材として、不織布製シート部材(不織布シート)を用いる。
【0025】
上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層は、上側のシート部材と下側のシート部材が別々に設けられてもよく、1つのシート部材を折り返し、折り返された一方側を上側のシート部材とし、他方側を下側のシート部材としてもよい。また、上側吸収層の下側のシート部材が中間吸収層の上側のシート部材を兼ねてもよく、下側吸収層の上側のシート部材が中間吸収層の下側のシート部材を兼ねてもよい。好ましくは、上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層はそれぞれ、各吸収層の上側に配される第1シート部材と下側に配される第2シート部材を有し、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂が配される。この場合、各吸収層が独立して(分離可能に)形成されることとなる。
【0026】
上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層はそれぞれ、シート部材どうしが接合された封止部と、シート部材どうしが接合されない非封止部とを有する。封止部は、シート部材どうしを接着剤で接合したり、ヒートシール(熱融着)や超音波接着することにより形成される。
【0027】
封止部は、吸水性樹脂が配された部分を挟んだ両側に設けられることが好ましく、このように封止部が設けられることにより吸収層から吸水性樹脂が脱落しにくくなる。封止部は、吸水性樹脂が配された部分を挟んで、幅方向の両側に設けられてもよく、長手方向の両側に設けられてもよく、幅方向と長手方向の両側にそれぞれ設けられてもよい。好ましくは、封止部は、吸水性樹脂が配された部分を挟んで幅方向の両側に少なくとも設けられる。
【0028】
封止部は、吸水性樹脂が配された部分を分割するように設けられてもよい。このように封止部が設けられれば、尿等が各吸収層を平面方向に拡散しやすくなったり、封止部を通って各吸収層を上下方向に透過しやすくなる。その結果、吸収性積層体での尿等の拡散性が高められ、また、尿等が吸収性積層体によって速やかに吸収されるようになる。
【0029】
封止部は、各吸収層が吸水しても、シート部材どうしの接合が維持されることが好ましい。吸収層が吸水すると、シート部材の間に配された吸水性樹脂が膨潤して、封止部においてシート部材どうしの接合が解けるおそれがある。この場合、吸水性樹脂が各吸収層から脱落したり、吸収性積層体の尿等の拡散性が低下することが想定される。従って、封止部は、吸収層が吸水しても、シート部材どうしの接合が維持されることが好ましい。封止部でシート部材どうしの接合が維持されやすくするためには、シート部材どうしを、ゴム系接着剤(例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等)やスチレン系エラストマー(例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等)で接着したり、熱融着あるいは超音波融着することが好ましい。
【0030】
非封止部は、各吸収層においてシート部材どうしが接合されない部分として規定され、封止部以外の部分が非封止部に相当する。非封止部では、例えば、各吸収層において上側に配されたシート部材と下側に配されたシート部材の間に空間が形成され、当該空間には吸水性樹脂が配されてもよく、配されなくてもよい。本発明では、非封止部に吸水性樹脂が配された領域を吸収領域と称する。また各吸収層において、吸収領域以外の領域を緩衝領域として規定する。すなわち吸収性積層体は、各吸収層が、非封止部に吸水性樹脂が配された吸収領域と、吸収領域以外の領域として緩衝領域とを有する。なお、吸収領域と緩衝領域は、各吸収体を平面視した状態で規定される。
【0031】
吸収領域は、吸水性樹脂がシート部材間に配されて構成される。吸収領域は、封止部または各吸収層の外縁によって囲まれて形成されることが好ましい。なお、非封止部に形成され得る緩衝領域において、製造上不可避的に混入する吸水性樹脂の存在は許容され、また封止部での吸水性樹脂の存在も許容される。吸収領域は、各吸収層において尿等を吸収し固定する領域として機能する。一方、緩衝領域は、吸収性積層体において尿等を拡散させる通路として機能する。緩衝領域はまた、吸収領域の吸水性樹脂が吸水して膨潤した際に広がるスペースとしても機能し得る。
【0032】
吸収領域は、吸水性樹脂が吸水して膨潤することにより、吸収性積層体の上下方向に広がるように形成されていることが好ましい。このように吸収領域が形成されていれば、吸収性積層体が尿等を吸収した際、吸収層が吸収領域で上下方向に膨潤することにより、吸収層間に隙間が形成されやすくなり、尿等が吸収性積層体内で拡散しやすくなる。
【0033】
緩衝領域は、封止部が形成された領域と、非封止部で吸水性樹脂が配されない領域を含んで形成される。緩衝領域は、吸収層に開口が形成されたり、吸収層が分割されることにより形成されてもよい。この場合、開口または分割された吸収層の間の空間が緩衝領域を形成する。例えば、中間吸収層はこのように形成された緩衝領域を有していてもよい。なお上側吸収層と下側吸収層は、吸収性積層体の保形性を高めるために、緩衝領域が、封止部が形成された領域と非封止部で吸水性樹脂が配されない領域のみから構成されることが好ましい。すなわち、上側吸収層と下側吸収層では、シート部材が各吸収層の全面に配されていることが好ましい。
【0034】
吸収領域および緩衝領域の配置態様は特に限定されない。吸収領域は、例えば、吸収層のほぼ全面に設けられてもよく、吸収層に部分的に設けられてもよい。また、1つの吸収層に1つの吸収領域のみが設けられてもよく、吸収領域が複数設けられてもよい。なお、少なくとも上側吸収層と中間吸収層では、吸収領域がストライプ状または島状に配置されることが好ましい。吸収領域がこのように設けられていれば、吸収性積層体に収容された尿等が上側吸収層と中間吸収層を透過して下側吸収層まで移行しやすくなり、吸収性積層体の吸収能力が向上する。
【0035】
吸収領域がストライプ状に配置される場合は、吸収領域が一方向に延びるように少なくとも2つ設けられ、それぞれの吸収領域の両側に緩衝領域が設けられることが好ましい。この場合、緩衝領域は少なくとも3つ設けられることとなる。吸収領域がストライプ状に配置される場合、封止部もストライプ状に配されることが好ましい。好ましくは、吸収領域は幅方向または長手方向に延びるストライプ状に配置され、より好ましくは長手方向に延びるストライプ状に配置される。吸収領域が長手方向に延びるストライプ状に配置されれば、尿等が吸収層の長手方向に拡散しやすくなり、それぞれの吸収層において尿等が速やかに吸収されやすくなる。また、吸収領域を比較的広い面積で設けることができ、吸収層の吸収量を高めやすくなる。
【0036】
吸収領域が島状に配置される場合は、吸収領域が少なくとも2つ設けられ、それぞれの吸収領域を囲むように緩衝領域が設けられることが好ましい。吸収領域が島状に配置されれば、尿等が吸収層の平面方向に拡散しやすくなり、それぞれの吸収層において尿等が速やかに吸収されやすくなる。
【0037】
吸収領域に配される吸水性樹脂の量は特に限定されないが、100g/m
2以上が好ましく、150g/m
2以上がより好ましく、また400g/m
2以下が好ましく、385g/m
2以下がより好ましい。吸収領域に吸水性樹脂が100g/m
2以上の量で配されていれば、吸収層の吸収容量を高めやすくなる。一方、吸収領域に吸水性樹脂が400g/m
2以下の量で配されていれば、吸水性樹脂が吸水しても、封止部でシート部材どうしの接合が維持されやすくなる。
【0038】
吸収領域では、吸水性樹脂は接着剤によりシート部材に固定されていることが好ましい。すなわち、吸収層のシート部材には接着剤が塗布されて接着剤層が設けられ、吸収領域において吸水性樹脂は接着剤層でシート部材に固定されていることが好ましい。接着剤層は、吸水性樹脂の上側または下側に配される少なくとも一方のシート部材に設けられればよいが、好ましくは、接着剤層は上側と下側の両方のシート部材に設けられる。吸収領域に配された吸水性樹脂は、少なくとも一部が接着剤層に固定されていればよく、例えば、接着剤層に接する吸水性樹脂が接着剤層に固定されていればよい。吸水性樹脂が接着剤層によりシート部材に固定されていれば、吸水性樹脂の吸水前においては、吸水性樹脂がシート部材の間で移動しにくくなり、吸収層における尿等の吸収能力が確保されやすくなる。吸水性樹脂の吸水後においても、ゲル化した吸水性樹脂がシート部材間で移動しにくくなる結果、吸水性樹脂が塊になって着用者に違和感を与えにくくなる。
【0039】
接着剤層は、吸収領域において、吸水性樹脂を固定しつつ、吸水性樹脂による吸水や膨潤を阻害しないことが好ましい。この点から、接着剤層は、網状に形成されることが好ましい。接着剤層を網状に形成する方法としては、カーテンスプレー法、スパイラルコーティング法、オメガコーティング法等を採用すればよい。
【0040】
接着剤層によって、封止部が形成されてもよい。この場合、シート部材に接着剤が塗布されることにより設けられた接着剤層によってシート部材どうしが接合され、これにより封止部が形成されることとなる。
【0041】
接着剤層に用いる接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系エラストマー;エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリオレフィン系エラストマー等を用いることができる。これらの接着剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴム系接着剤やスチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0042】
吸収層の構成例について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1および
図2には、吸収領域がストライプ状に配置された吸収層の例を示し、
図1は吸収層の幅方向断面図を表し、
図2は吸収層の一部切欠き平面図を表す。図面において、矢印x、y、zはそれぞれ吸収性積層体の幅方向、長手方向、上下(厚み)方向を表す。
図1および
図2に示した吸収層は、上側吸収層、中間吸収層、下側吸収層に適用可能であるが、吸収領域や緩衝領域の配置や大きさは各吸収層で適宜調整すればよい。
【0043】
吸収層1は、第1シート部材2と第2シート部材3を有し、第1シート部材2が吸収層1の上側に配され、第2シート部材3が吸収層1の下側に配される。第1シート部材2と第2シート部材3の間に吸水性樹脂5が配され、第1シート部材2と第2シート部材3の間にパルプ繊維は配されていない。第1シート部材2と第2シート部材3にはそれぞれ接着剤が塗布されて接着剤層4が形成され、吸水性樹脂5が接着剤層4により第1シート部材2と第2シート部材3に固定されている。吸収層1は、第1シート部材2と第2シート部材3とが接合された封止部6と、第1シート部材2と第2シート部材3とが接合されない非封止部7を有する。
図1では、接着剤層4により第1シート部材2と第2シート部材3とが接合され、封止部6が形成されている。吸収層1は、非封止部7に吸水性樹脂5が配された吸収領域8と、吸収領域8以外の領域として緩衝領域9とを有している。
図1および
図2では、緩衝領域9は、封止部6が形成された領域と、非封止部7の吸水性樹脂が配されない領域とから構成されている。
【0044】
本発明の吸収性積層体は、上側吸収層と下側吸収層が中間吸収層よりも吸収領域が広い面積で設けられている。本発明の吸収性積層体はこのように各吸収層が構成されているため、吸収性積層体に収容された尿等が吸収性積層体内で拡散しやすくなり、尿等が上側吸収層と中間吸収層と下側吸収層のそれぞれの吸収層に好適に吸収されやすくなる。すなわち、中間吸収層は吸収性積層体の内部に存在するために、例えば中間吸収層を上側吸収層や下側吸収層と同じように構成すると、中間吸収層に配された吸水性樹脂が尿等の吸収に十分寄与しにくくなるところ、中間吸収層を上側吸収層と下側吸収層よりも緩衝領域を広い面積で設けることにより、中間吸収層の緩衝領域が尿等の拡散通路として機能し、尿等が吸収性積層体の平面方向および上下方向に拡散しやすくなる。また、中間吸収層は緩衝領域が広い面積で設けられているため、中間吸収層の緩衝領域が、各吸収層の吸収領域の吸水性樹脂が吸水して膨潤した際に広がるスペースとして機能できるようになる。その結果、各吸収層の吸収領域で尿等を好適に吸収できるようになり、吸収性積層体の吸収容量を高めることが可能となる。
【0045】
吸収性積層体は、上側吸収層と下側吸収層が中間吸収層よりも吸収領域が広い面積で設けられる限り、各吸収層の吸収領域および緩衝領域の配置態様は特に限定されない。なお、中間吸収層の緩衝領域は、上側吸収層の吸収領域と下側吸収層の吸収領域に重なって設けられていることが好ましい。このように吸収性積層体が構成されることにより、上側吸収層と下側吸収層の吸収領域が吸水して膨潤した際に、中間吸収層の緩衝領域に広がりやすくなる。中間吸収層の緩衝領域は、少なくとも一部が上側吸収層の吸収領域と下側吸収層の吸収領域に重なって設けられればよい。
【0046】
中間吸収層の緩衝領域は、上側吸収層の緩衝領域に重なって設けられることも好ましい。中間吸収層の緩衝領域が上側吸収層の緩衝領域に重なって設けられれば、吸収性積層体が受けた尿等が上側吸収層の緩衝領域を透過して中間吸収層に移行しやすくなるとともに、中間吸収層の緩衝領域を通ってさらに下側吸収層にも移行しやすくなる。その結果、吸収性積層体によって尿等が速やかに吸収されやすくなる。
【0047】
中間吸収層の緩衝領域は、上側吸収層の吸収領域と緩衝領域の両方に跨って重なって設けられてもよい。このように中間吸収層と上側吸収層が設けられていれば、吸収性積層体が受けた尿等が上側吸収層の緩衝領域を透過して中間吸収層に移行し、さらに中間吸収層の緩衝領域で平面方向に拡散しやすくなる。つまり、吸収性積層体が受けた尿等が、吸収性積層体の内部で平面方向に広く拡散しやすくなり、吸収性積層体の各吸収層によって尿等が好適に吸収されるようになる。
【0048】
中間吸収層の緩衝領域は、下側吸収層の緩衝領域に重なって設けられてもよい。中間吸収層の緩衝領域が下側吸収層の緩衝領域に重なって設けられれば、尿等が中間吸収層の緩衝領域を通って下側吸収層に移行しやすくなり、さらに下側吸収層の緩衝領域で平面方向に拡散しやすくなる。その結果、下側吸収層の吸収領域が尿等を効率的に吸収できるようになる。
【0049】
中間吸収層の緩衝領域は、下側吸収層の吸収領域と緩衝領域の両方に跨って重なって設けられてもよい。このように中間吸収層と下側吸収層が設けられていれば、中間吸収層の緩衝領域で尿等が平面方向に広い範囲にわたって拡散しやすくなる。また、下側吸収層においては、尿等の吸収性と拡散性の両方が好適に発揮されやすくなる。
【0050】
上側吸収層には、長手方向の中央50%かつ幅方向の中央50%の領域の少なくとも一部に、緩衝領域が設けられることが好ましい。このように上側吸収層に緩衝領域が設けられれば、吸収性積層体が受けた尿等を、上側吸収層の緩衝領域を通じて中間吸収層に速やかに移行させやすくなり、尿等の横漏れが起こりにくくなる。この場合、上側吸収層の長手方向の中央50%かつ幅方向の中央50%以外の領域の少なくとも一部には、吸収領域が設けられることが好ましい。
【0051】
上側吸収層は、例えば、緩衝領域が、長手方向または幅方向に延びるストライプ状に配置されることが好ましい。上側吸収層の緩衝領域が長手方向に延びるストライプ状に配置される場合、緩衝領域の少なくとも一部は、上側吸収層の幅方向の中央50%の領域の少なくとも一部を長手方向に延びるように設けられることが好ましい。そして、上側吸収層の幅方向の中央50%以外の領域の少なくとも一部には、吸収領域が設けられることが好ましい。上側吸収層の緩衝領域が幅方向に延びるストライプ状に配置される場合は、緩衝領域の少なくとも一部は、上側吸収層の長手方向の中央50%の領域の少なくとも一部を幅方向に延びるように設けられることが好ましい。そして、上側吸収層の長手方向の中央50%以外の領域の少なくとも一部には、吸収領域が設けられることが好ましい。このように上側吸収層に緩衝領域を設けることにより、上側吸収層の吸収領域の面積を確保しつつ、上側吸収層での尿等の拡散性を高めることができる。また、上側吸収層から中間吸収層に尿等を速やかに移行させやすくなる。より好ましくは、上側吸収層は、緩衝領域が長手方向に延びるストライプ状に配置される。
【0052】
中間吸収層には、長手方向の中央50%かつ幅方向の中央50%の領域の少なくとも一部に、緩衝領域が設けられることが好ましい。このように中間吸収層に緩衝領域が設けられれば、尿等が吸収性積層体の内部で拡散しやすくなり、吸収性積層体の内部に配された吸収領域が尿等の吸収に好適に寄与できるようになる。また、中間吸収層の緩衝領域が、各吸収層の吸収領域が膨潤した際に広がるスペースとして効果的に機能しやすくなる。この場合、中間吸収層は、長手方向の中央20%かつ幅方向の中央15%の領域が緩衝領域のみから構成されることがより好ましい。なお、中間吸収層の長手方向の中央50%かつ幅方向の中央50%の領域の少なくとも一部に緩衝領域が設けられる場合、中間吸収層の長手方向の中央50%かつ幅方向の中央50%以外の領域の少なくとも一部には、吸収領域が設けられることが好ましい。
【0053】
中間吸収層は、例えば、緩衝領域が、長手方向または幅方向に延びるストライプ状に配置されることが好ましい。中間吸収層の緩衝領域が長手方向に延びるストライプ状に配置される場合、緩衝領域の少なくとも一部は、中間吸収層の幅方向の中央50%の領域の少なくとも一部を長手方向に延びるように設けられることが好ましい。そして、中間吸収層の幅方向の中央50%以外の領域の少なくとも一部には、吸収領域が設けられることが好ましい。中間吸収層の緩衝領域が幅方向に延びるストライプ状に配置される場合は、緩衝領域の少なくとも一部は、中間吸収層の長手方向の中央50%の領域の少なくとも一部を幅方向に延びるように設けられることが好ましい。そして、中間吸収層の長手方向の中央50%以外の領域の少なくとも一部には、吸収領域が設けられることが好ましい。このように中間吸収層に緩衝領域を設けることにより、中間吸収層での拡散性が高められるとともに、中間吸収層からの尿等の横漏れも防止しやすくなる。より好ましくは、中間吸収層は、緩衝領域が長手方向に延びるストライプ状に配置される。
【0054】
中間吸収層は、吸収領域が島状に配置されるように緩衝領域が形成されてもよい。この場合、緩衝領域を広い面積で設けやすくなり(すなわち、吸収領域の面積を狭く形成しやすくなり)、中間吸収層における尿等の拡散性が高められる。また、各吸収層の吸収領域が膨潤した際に中間吸収層の緩衝領域に広がりやすくなり、各吸収層の吸収領域で尿等が好適に吸収されるようになる。
【0055】
上記に説明した実施態様とは逆に、中間吸収層は、例えば、少なくとも長手方向の中央20%かつ幅方向の中央15%の領域が吸収領域のみから構成されてもよい。この場合、中間吸収層は、吸収領域が幅方向の中央15%の領域を長手方向に延びるように配置されることが好ましい。このように中間吸収層に吸収領域を設けることにより、中間吸収層の吸収領域が吸水して上下方向に膨潤しても、例えば女性の着用者の排尿部にフィットして着用感を向上させることができる。この場合、吸収領域の幅方向の両側が緩衝領域から構成されることが好ましく、その結果、中間吸収層の幅方向の両側部が各吸収層の吸収領域が膨潤した際に広がるスペースとして効果的に機能して、吸収性積層体の幅方向の両側部での吸収性能が向上しやすくなる。そのため、尿等の横漏れ防止効果が高められる。
【0056】
中間吸収層は、幅方向または長手方向に分割して形成されてもよい。例えば、中間吸収層は、幅方向に分割されて形成された右側中間吸収層と左側中間吸収層から構成され、右側中間吸収層と左側中間吸収層の間に緩衝領域が形成されてもよい。また中間吸収層は、長手方向に分割されて形成された前側中間吸収層と後側中間吸収層から構成され、前側中間吸収層と後側中間吸収層の間に緩衝領域が形成されてもよい。このように中間吸収層が形成されれば、吸収性積層体の内部に尿等が拡散するための空間が広く形成され、各吸収層の吸収領域が膨潤した際に広がるスペースが十分確保されやすくなる。中間吸収層が幅方向または長手方向に分割して形成される場合、緩衝領域は長手方向または幅方向に延びるストライプ状に配置されることが好ましく、また吸収領域も長手方向または幅方向に延びるストライプ状に配置されることが好ましい。中間吸収層が分割して形成される場合、中間吸収層は幅方向に分割して形成されることがより好ましい。
【0057】
下側吸収層は、中間吸収層よりも吸収領域が広い面積で設けられる限り、吸収領域および緩衝領域の配置態様は特に限定されない。なお下側吸収層は、できるだけ広範囲にわたって尿等を吸収できるように構成されることが好ましく、上側吸収層よりも吸収領域が広い面積で設けられることが好ましい。この点から、下側吸収層はほぼ全面を吸収領域から構成してもよい。具体的には、下側吸収層は、少なくとも長手方向の中央75%かつ幅方向の中央75%の領域(好ましくは、長手方向の中央80%かつ幅方向の中央80%の領域)を吸収領域のみから構成してもよい。このように下側吸収層に吸収領域を設けることにより、下側吸収層の剛性を高めることができ、吸収性積層体が縒れたり歪んだりするのを防止しやすくなる。
【0058】
下側吸収層において尿等の拡散性を確保したい場合は、緩衝領域を、長手方向または幅方向に延びるストライプ状に配置すればよい。この場合、緩衝領域を長手方向に延びるストライプ状に配置することが好ましく、このように緩衝領域を形成することにより下側吸収層における尿等の拡散性が高められる。
【0059】
図3(a)〜(d)には、吸収層の吸収領域と緩衝領域の配置例を示した。
図3(a)〜(d)では、吸収領域が塗りつぶされて表示されている。
【0060】
図3(a)は、吸収領域が島状に配置された例を表す。
図3(a)に示した吸収層を中間吸収層に用いれば、吸収領域の配置面積を少なく形成しやすくなる。また
図3(a)に示した吸収層では、長手方向の中央20%かつ幅方向の中央15%の領域が緩衝領域のみから構成されており、中間吸収層に用いることにより、吸収性積層体の内部での尿等の拡散性が高められる。
【0061】
図3(b)は、吸収領域および緩衝領域が長手方向に延びるストライプ状に配置された吸収層の例を表す。
図3(b)に示した吸収層は、幅方向の中央部に緩衝領域が形成されており、中間吸収層に好適に用いられる。
図3(b)に示した吸収層を中間吸収層に用いることにより、吸収性積層体の内部での尿等の拡散性が高められる。
【0062】
図3(c)に示した吸収層は、
図3(b)に示した吸収層とは反対に、幅方向の中央部に吸収領域が形成され、幅方向の両側が緩衝領域から構成されている。
図3(c)に示した吸収層を中間吸収層に用いれば、吸収領域が吸水して膨潤することにより女性の着用者の排尿部へのフィット性が高められる。
【0063】
図3(d)には、ほぼ全面が吸収領域から構成された吸収層の例が示されている。
図3(d)に示した吸収層は、下側吸収層に好適に用いられる。
【0064】
本発明の吸収性積層体では、上側吸収層と中間吸収層で、緩衝領域が長手方向に延びるストライプ状に配置されていることが好ましい。この場合、上側吸収層と中間吸収層は、幅方向の両端部に緩衝領域(端部緩衝領域)が設けられるとともに、これらの緩衝領域の間にさらに別の緩衝領域(内方緩衝領域)が少なくとも1つ設けられることが好ましい。この場合、上記に説明したように、中間吸収層の内方緩衝領域が上側吸収層の吸収領域と下側吸収層の吸収領域に重なって設けられることが好ましい。また、中間吸収層の内方緩衝領域が上側吸収層の内方緩衝領域に重なって設けられることが好ましい。さらに、中間吸収層の内方緩衝領域が上側吸収層の吸収領域と内方緩衝領域の両方に跨って重なって設けられることが好ましい。
【0065】
下側吸収層は、上記に説明したように、ほぼ全面が吸収領域から構成されたり、緩衝領域が長手方向に延びるストライプ状に配置されることが好ましい。なお、下側吸収層の緩衝領域がストライプ状に配置される場合は、下側吸収層は、幅方向の両端部に緩衝領域(端部緩衝領域)が設けられるとともに、これらの緩衝領域の間にさらに別の緩衝領域(内方緩衝領域)が少なくとも1つ設けられることが好ましい。そして上記と同様に、中間吸収層の内方緩衝領域が下側吸収層の内方緩衝領域に重なって設けられることが好ましい。さらに、中間吸収層の内方緩衝領域が下側吸収層の吸収領域と内方緩衝領域の両方に跨って重なって設けられてもよい。
【0066】
上側吸収層と中間吸収層は、シート部材間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない1つのシート状吸収体が折り返されることにより形成されてもよい。この場合、上側吸収層と中間吸収層は、シート状吸収体の幅方向の両端部が折り返されることにより形成され、折り返された両端部から中間吸収層が形成され、両端部の間の中央部から上側吸収層が形成されることが好ましい。このように上側吸収層と中間吸収層が形成されれば、上側吸収層を透過した尿等が中間吸収層の緩衝領域に好適に導かれ、尿等が吸収性積層体の内部で拡散しやすくなるとともに、尿等の横漏れも起こりにくくなる。また、吸収性積層体を簡単に製造することができる。
【0067】
また、下側吸収層と中間吸収層が、シート部材間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない1つのシート状吸収体が折り返されることにより形成されてもよい。この場合、下側吸収層と中間吸収層は、シート状吸収体の幅方向の両端部が折り返されることにより形成され、折り返された両端部から中間吸収層が形成され、両端部の間の中央部から下側吸収層が形成されることが好ましい。このように下側吸収層と中間吸収層が形成されれば、中間吸収層の緩衝領域に尿等が一度に大量に移行したりして、下側吸収層で尿等が広範囲に広がっても、尿等の横漏れが起こりにくくなる。また、吸収性積層体を簡単に製造することができる。
【0068】
上記のように、上側吸収層と中間吸収層または下側吸収層と中間吸収層が1つのシート状吸収体から構成される場合、シート状吸収体は緩衝領域で折り返されることにより、上側吸収層と中間吸収層または下側吸収層と中間吸収層が形成されることが好ましい。緩衝領域でシート状吸収体が折り返されることによりシート状吸収体を折り返しやすくなる。また、シート状吸収体が折り目部分で嵩張りにくくなり、吸収性積層体を薄く形成しやすくなる。より好ましくは、シート状吸収体は、ストライプ状に配置された緩衝領域でシート状吸収体が折り返されることにより、上側吸収層と中間吸収層または下側吸収層と中間吸収層が形成される。
【0069】
上側吸収層と中間吸収層、および/または、中間吸収層と下側吸収層は、互いに接合(固定)されていることが好ましい。すなわち、上側吸収層を構成する下側のシート部材と中間吸収層を構成する上側のシート部材は、接合手段により互いに接合されていることが好ましく、中間吸収層を構成する下側のシート部材と下側吸収層を構成する上側のシート部材が、接合手段により互いに接合されていることが好ましい。接合手段としては、接着剤、ヒートシール(熱融着)、超音波接着等の公知の接合手段を用いればよく、吸収性積層体の製造容易性の点から、接合手段としては接着剤を採用することが好ましい。接着剤としては、上記に説明したようなゴム系接着剤やスチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0070】
上側吸収層と中間吸収層、および/または、中間吸収層と下側吸収層は、互いに部分的に接合されていることが好ましい。このように各吸収層が接合されることにより、吸収層を越えて尿等が移行しやすくなり、吸収性積層体での尿等の拡散性が高められる。
【0071】
上側吸収層と中間吸収層、および/または、中間吸収層と下側吸収層は、スパイラル状あるいはストライプ状に塗工した接着剤により互いに接合されることが好ましい。このように各吸収層が接合されることにより、各吸収層の吸収領域が吸水した際に、膨潤して、緩衝領域に広がりやすくなる。接着剤をストライプ状に塗工する場合は、長手方向に延びるストライプ状に塗工することが好ましく、これにより各吸収層間で尿等が長手方向に拡散しやすくなり、尿等の横漏れが起こりにくくなる。
【0072】
吸収性積層体の構成例について、
図4〜
図7を参照して説明する。
図4〜
図7は、吸収性積層体の幅方向断面図を表しており、各吸収性積層体は図面に示した断面形状で長手方向に延在しているものとする。なお、本発明の吸収性積層体は、図面に示した実施態様に限定されるものではない。
【0073】
図4〜
図7に示した吸収性積層体10は、上側吸収層11と、下側吸収層31と、上側吸収層11と下側吸収層31の間に配された中間吸収層21とを有する。上側吸収層11と中間吸収層21と下側吸収層31の詳細な構成は、
図1および
図2に示した吸収層の構成例に基づき理解される。
図4〜
図7に示した吸収性積層体10はいずれも、上側吸収層11と下側吸収層31が中間吸収層21よりも吸収領域が広い面積で設けられている。そのため、尿等が中間吸収層21の緩衝領域29で拡散しやすくなり、尿等が吸収性積層体10に好適に吸収されやすくなる。また、中間吸収層21の緩衝領域29が、上側吸収層11と中間吸収層21と下側吸収層31のそれぞれの吸収領域18,28,38が吸水して膨潤した際に広がるスペースとして機能しやすくなり、各吸収層の吸収領域で尿等が好適に吸収されるようになる。
【0074】
図4に示した吸収性積層体10では、上側吸収層11と中間吸収層21と下側吸収層31が互いに独立して構成され、上側吸収層11と中間吸収層21と下側吸収層31の緩衝領域19,29,39がそれぞれ、長手方向に延びるストライプ状に配置されている。吸収性積層体10は、中間吸収層21の幅方向xの中央15%の領域が緩衝領域29から構成されており、その結果、吸収性積層体10の内部での尿等の拡散性が高められ、また中間吸収層21からの横漏れも防止されやすくなる。さらに、下側吸収層31の緩衝領域39が長手方向に延びるストライプ状に配置されているため、下側吸収層31における尿等の拡散性も高められる。
【0075】
吸収性積層体10は、中間吸収層21の緩衝領域29が、上側吸収層11の吸収領域18と下側吸収層31の吸収領域38に重なって設けられている。そのため、上側吸収層11と中間吸収層21と下側吸収層31のそれぞれの吸収領域18,28,38が吸水して膨潤した際に中間吸収層21の緩衝領域29に広がりやすくなる。さらに、中間吸収層21の緩衝領域29が上側吸収層11の緩衝領域19と重なって設けられているため、尿等が上側吸収層11から中間吸収層21を通って下側吸収層31に移行しやすくなる。また
図4に示した吸収性積層体10では、中間吸収層21の緩衝領域29が、上側のシート部材と下側のシート部材との間に吸水性樹脂が配されないことにより構成されているため、中間吸収層21での平面方向へ尿等の拡散性も高められる。
【0076】
図5に示した吸収性積層体10は、下側吸収層31において吸収領域38がほぼ全面にわたって設けられている点で、
図4に示した吸収性積層体とは異なる。そのため、
図5に示した吸収性積層体10では、尿等の吸収容量が向上するとともに、下側吸収層31の剛性を高めることができ、吸収性積層体10が縒れたり歪んだりしにくくなる。
【0077】
図6に示した吸収性積層体10は、中間吸収層21が、上側吸収層11の幅方向xの両端部が下側に折り返されることにより形成されている点で、
図5に示した吸収性積層体とは異なる。すなわち、
図6に示した吸収性積層体10では、シート部材間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない1つのシート状吸収体41が、緩衝領域49で幅方向xの両端部41Eが折り返されることにより、中間吸収層21が折り返された両端部41Eから形成され、上側吸収層11が両端部41Eの間の中央部41Cから形成されている。
図6に示した吸収性積層体10では、中間吸収層21が幅方向xに分割されて形成され、分割された中間吸収層21の間に中間吸収層21の緩衝領域29が形成されることとなる。このように吸収性積層体10が構成されていれば、上側吸収層11を透過した尿等が中間吸収層21の緩衝領域29に好適に導かれ、尿等が吸収性積層体10の内部で拡散しやすくなる。
【0078】
図7に示した吸収性積層体10は、中間吸収層21が、下側吸収層31の幅方向xの両端部が上側に折り返されることにより形成されている点で、
図5に示した吸収性積層体とは異なる。すなわち、
図7に示した吸収性積層体10では、シート部材間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない1つのシート状吸収体41が、緩衝領域49で幅方向xの両端部41Eが折り返され、中間吸収層21が折り返された両端部41Eから形成され、下側吸収層31が両端部41Eの間の中央部41Cから形成されている。
図7に示した吸収性積層体10では、中間吸収層21の緩衝領域29に尿等が一度に大量に移行して下側吸収層31で尿等が広範囲に広がっても、尿等の横漏れが起こりにくくなる。
【0079】
次に本発明の吸収性物品について説明する。本発明の吸収性物品は、本発明の吸収性積層体が設けられている点に特徴を有する。吸収性物品は、トップシートとバックシートとこれらの間に設けられた吸収性積層体とを有することが好ましい。吸収性物品の態様としては、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等が示される。本発明の吸収性物品は、本発明の吸収性積層体が設けられているため、着用者から排泄された尿等を吸収性積層体で好適に吸収することができ、高い吸収容量を実現できる。
【0080】
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が例えば、尿パッド、生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、略長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等が示される。
【0081】
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、左右に一対の止着部材が備えられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するオープン型使い捨ておむつであってもよく、ウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつであってもよい。
【0082】
トップシートは、吸収性物品の着用の際、着用者側に位置するシートであり、液透過性であることが好ましい。バックシートは、吸収性物品の着用の際、着用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートであり、液不透過性であることが好ましい。
【0083】
トップシートやバックシートは、例えば、不織布、織布、編布、プラスチックフィルム、プラスチックフィルムと不織布との積層体等から構成される。積層体としては、例えば、不織布とプラスチックフィルムとが一層ずつ重ねられたものや、プラスチックフィルムを不織布で挟んで重ねられたものが示される。なお、プラスチックフィルムやプラスチックフィルムを含む積層体をトップシートに用いる場合は、プラスチックフィルムには液を通過させるための孔が形成されていることが好ましい。トップシートは、好ましくは不織布から構成される。バックシートは、好ましくは不織布またはプラスチックフィルムから構成される。
【0084】
吸収性物品には、幅方向の両側に、一対の立ち上がりフラップが設けられることが好ましい。立ち上がりフラップが設けられることにより、尿等の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、例えば、トップシートの幅方向両側に、長手方向に延在するサイドシートを接合し、サイドシートの幅方向内方に弾性部材を設けることにより形成される。このようにサイドシートと弾性部材とを設けることにより、弾性部材の収縮力によりサイドシートの幅方向内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップが形成される。立ち上がりフラップまたはサイドシートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
【0085】
弾性部材としては、ポリウレタン糸、ポリウレタンフィルム、天然ゴム等の通常の使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる弾性伸縮材料を用いることができる。各弾性部材は、伸張状態で、ホットメルト接着剤で固定されることが好ましい。例えば、繊度100〜2,500dtexのポリウレタン糸を、倍率1.1〜5.0倍に伸張して配設し、固定する。接合手段としては、好ましくは、ゴム系のホットメルト接着剤が用いられる。
【0086】
本発明の吸収性物品について、尿パッドを例に挙げ、
図8および
図9を参照して説明する。なお、本発明の吸収性物品は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
図8および
図9では、
図5に示した吸収性積層体を備えた吸収性物品を示した。
図8は、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た平面図を表す。
図9は、
図8の吸収性物品のA−A断面図を表す。
【0087】
吸収性物品51は、トップシート52とバックシート53とこれらの間に設けられた吸収性積層体10とを有する。トップシート52は、着用者の肌に面するように配され、尿等の体液を透過する。トップシート52を透過した体液は、吸収性積層体10に収容される。バックシート53は、体液が外部へ漏れるのを防ぐ。
【0088】
吸収性積層体10は、上側吸収層11と下側吸収層31とこれらの間に配された中間吸収層21とを有する。吸収性積層体の詳細な説明は上記の通りである。吸収性積層体10に移行した体液は、まず上側吸収層11により吸収され、上側吸収層11を透過した尿等は中間吸収層21とさらに下側吸収層31に移行し、各吸収層に固定される。
【0089】
トップシート52と吸収性積層体10(上側吸収層11)との間には上側台紙54が設けられることが好ましい。また、バックシート53と吸収性積層体10(下側吸収層31)との間には下側台紙55が設けられることが好ましい。上側台紙54と下側台紙55は、尿等の体液の拡散性を向上させたり、吸収性物品51が型くずれしにくくするために設けられる。上側台紙54は液透過性であることが好ましく、下側台紙55は、液透過性であっても液不透過性であってもよい。上側台紙54と下側台紙55としては、ティッシュペーパーやクレープ紙等を用いることもできる。
【0090】
吸収性物品51には、トップシート52の幅方向xの両側に、長手方向yに延在するサイドシート56が設けられることが好ましい。サイドシート56は、接合部57でトップシート52に接合されている。
図8および
図9では、サイドシート56には、各々、幅方向xの内方に起立用弾性部材58が3本設けられている。吸収性物品51の使用時には、起立用弾性部材58の収縮力によりサイドシート56の内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより尿等の排泄物の横漏れが防止される。