特開2015-24433(P2015-24433A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エレニックスの特許一覧

特開2015-24433短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法及び装置
<>
  • 特開2015024433-短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法及び装置 図000003
  • 特開2015024433-短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法及び装置 図000004
  • 特開2015024433-短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法及び装置 図000005
  • 特開2015024433-短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法及び装置 図000006
  • 特開2015024433-短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法及び装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-24433(P2015-24433A)
(43)【公開日】2015年2月5日
(54)【発明の名称】短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20150109BHJP
【FI】
   B23K20/00 310A
   B23K20/00 310P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-156387(P2013-156387)
(22)【出願日】2013年7月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000128429
【氏名又は名称】株式会社エレニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】石綿 朋茂
(72)【発明者】
【氏名】石山 正明
(72)【発明者】
【氏名】相馬 宏史
(72)【発明者】
【氏名】東谷 泉
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA01
4E167AA15
4E167AA21
4E167BA02
4E167BA05
4E167BA09
4E167BA10
4E167BA12
4E167BA19
4E167BA22
4E167CB01
4E167DA05
4E167DC05
4E167DC06
(57)【要約】
【課題】接合部の強度が低下せず、接合部外周に溶融物の付着がない均質な接合が短時間で得られる長尺材を製作する接合装置及び方法の提供。
【解決手段】短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法にして、短尺被接合材の接合面を押圧保持し、前記接合面の周囲を非接触に包囲する加熱治具を設け、該加熱治具を通電加熱して接合面を接合可能な温度に間接的に加熱し、被接合材に接合用電源から通電して前記接合面において放電をさせ、該接合面を活性化させると共に通電によるジュール熱で該接合面を接合させることを特徴とする短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法にして、2本の短尺被接合材を水平に対向保持し、該2本の短尺被接合材における対向する接合面を係合させると共に押圧保持し、前記接合面の周囲を非接触に包囲する上下に分割可能な黒鉛製の上部加熱治具と下部加熱治具とを設け、該上下の加熱治具に加熱用電源から通電して前記接合面を間接的に加熱し、該接合面の温度が接合可能な温度に到達したか否かを検出し、前記接合面の温度が接合可能な温度に到達したことを検出したら、前記被接合材に接合用電源から通電して前記接合面において放電をさせ、該接合面を活性化させると共に通電によるジュール熱で該接合面を接合させることを特徴とする短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法において、前記加熱用電源と接合用電源はそれぞれ互いに独立していて、両電源共に矩形波パルス通電とパルスを重畳した直流通電とを切り替え可能に設けてなることを特徴とする短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法。
【請求項3】
請求項1に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法において、前記2本の短尺被接合材の接合面を係合させて押圧保持する圧力が1〜60MPaであることを特徴とする短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法。
【請求項4】
短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置にして、Z軸方向の昇降軸を昇降位置決め自在の上部電極を設けると共に、該上部電極に離隔して対向する下部固定電極を設け、前記昇降軸を挟んでその両側に左右一対の可動電極を前記Z軸に直交するX軸方向に互いに接近離反自在に設け、該左右一対の可動電極のそれぞれに前記被接合材を通電可能に把持する把持手段を設け、前記下部固定電極に前記可動電極に把持された一対の前記被接合材の先端の当接係合部である接合面を非接触で包囲可能な黒鉛製の上部加熱治具と下部加熱治具からなる加熱治具を設け、前記左右一対の可動電極を互いに接近する方向へ移動させ、前記被接合材における対向する接合面を係合させると共に押圧保持し、前記加熱治具に加熱用電源から通電して前記接合面を間接的に加熱し、該接合面の温度が接合可能温度近傍に到達したか否かを検出し、前記接合面の温度が接合可能な所定の温度に到達したことを検出したら、前記被接合材に接合用電源から通電して前記接合面において放電をさせ、該接合面を活性化させると共に通電によるジュール熱で該接合面を接合させることを特徴とする短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置。
【請求項5】
請求項4に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置において、前記加熱用電源と接合用電源とは互いに独立していて、両電源共に矩形波パルス通電とパルスを重畳した直流通電とを切り替え可能に設けてなることを特徴とする短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置。
【請求項6】
請求項4に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置において、前記被接合材の先端の当接係合部である接合面を係合させて押圧保持する圧力が1〜60MPaであることを特徴とすることを特徴とする短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の短い棒やパイプを接合して長尺材を製作するには、電気溶接、摩擦圧接、レーザ溶接または電子ビーム溶接などにより接合部を溶解して接合する技術を使用するのが一般的であった。これらの接合方法では、接合部近傍の結晶が粗大化し、素材の強度が低下するという欠点がある。また、接合部の周囲に溶解して押出された付着物を除去しなければならなかった。
【0003】
また、接合部に溶解付着物が出ない長尺材の製作装置としては、粉末原料から細長い長尺材を製作する「長尺材の焼結装置」がある(特許文献1)。
【0004】
上述の「長尺材の焼結装置」は、通電焼結法を利用して粉末原料の焼結と焼結溶接とを連続的に行うことによって長尺材を製作するものである。
【0005】
しかしながら、粉末原料を焼結して製作された短い焼結体を順次に焼結接合しながら長尺材を製作するには多くの時間を必要とする。また、粉末を使用する焼結法においては、粉末を焼結型へ充填する際に重力を利用しているため、前記長尺材の焼結装置は必然的に縦長の装置となり、数メートルを越える長尺材を製作する焼結装置の場合には、地下深くピットを掘らなければならないという問題がある。
【0006】
ところで、前述の「長尺材の焼結装置」において実施されている粉体同士或いは固体と粉体との接合では、粉体間の接触点は直列的接触と並列的接触が入り乱れて存在しているので放電と通電は分散し易くなり粉体は均質に昇温する。
【0007】
しかしながら、固体同士の接触は、微視的には点接触になり易く不均質な放電と通電が起こり均質な接合を得るのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第1085515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の如き問題を解決するために成されたものであり、本発明の課題は、接合部近傍の強度が低下せず、かつ接合部外周に溶融物の付着がない均質な接合が短時間で得られる金属材、半導体又はセラミックス等の長尺材を製作する接合装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法は、短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法にして、2本の短尺被接合材を水平に対向保持し、該2本の短尺被接合材における対向する接合面を係合させると共に押圧保持し、前記接合面の周囲を非接触に包囲する上下に分割可能な黒鉛製の上部加熱治具と下部加熱治具とを設け、該上下の加熱治具に加熱用電源から通電して前記接合面を間接的に加熱し、該接合面の温度が接合可能な温度に到達したか否かを検出し、前記接合面の温度が接合可能な温度に到達したことを検出したら、前記被接合材に接合用電源から通電して前記接合面において放電をさせ、該接合面を活性化させると共に通電によるジュール熱で該接合面を接合させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法は、請求項1に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法において、前記加熱用電源と接合用電源はそれぞれ互いに独立していて、両電源共に矩形波パルス通電とパルスを重畳した直流通電とを切り替え可能に設けてなることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合方法は、請求項1に記載の短尺の被接合材から長尺の接合材を製作する接合方法において、前記2本の短尺被接合材の接合面を係合させて押圧保持する圧力が1〜60MPaであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置は、短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置にして、Z軸方向の昇降軸を昇降自在の上部電極を設けると共に、該上部電極に離隔して対向する下部固定電極を設け、前記昇降軸を挟んでその両側に左右一対の可動電極を前記Z軸に直交するX軸方向に互いに接近離反自在に設け、該左右一対の可動電極のそれぞれに前記被接合材を通電可能に把持する把持手段を設け、前記下部固定電極に前記可動電極に把持された一対の前記被接合材の先端の当接係合部である接合面を非接触で包囲可能な黒鉛製の上部加熱治具と下部加熱治具からなる加熱治具を設け、前記左右一対の可動電極を互いに接近する方向へ移動させ、前記被接合材における対向する接合面を係合させると共に押圧保持し、前記加熱治具に加熱用電源から通電して前記接合面を間接的に加熱し、該接合面の温度が接合可能温度近傍に到達したか否かを検出し、前記接合面の温度が接合可能な所定の温度に到達したことを検出したら、前記被接合材に接合用電源から通電して前記接合面において放電をさせ、該接合面を活性化させると共に通電によるジュール熱で該接合面を接合させることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置は、請求項4に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置において、前記加熱用電源と接合用電源はそれぞれ互いに独立していて、両電源共に矩形波パルス通電とパルスを重畳した直流通電とを切り替え可能に設けてなることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置は、請求項4に記載の短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置において、前記被接合材の先端の当接係合部である接合面を係合させて押圧保持する圧力が1〜60MPaであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、短尺棒状の被接合材から接合部近傍の強度が低下せず、かつ接合部外周に溶融物の付着がない均質な接合部を有する長尺棒状の接合材を短時間で製作することができる。
【0017】
また、本発明によれば、焼結法でなければ製作できない高融点の焼結体やセラミックスからなる焼結体、又は成形圧の関係から短尺のものしか作れない半導体の焼結体等を被接合材として長尺棒状の接合材を製作することができる。
【0018】
また、本発明によれば、接合面の周囲を非接触に包囲する黒鉛からなる上部加熱治具と下部加熱治具とを設け、この上下の加熱治具に通電して被接合材の接合面を接合可能温度に加熱するようにしたので、接合面を均等な温度に短時間で加熱することができ生産効率をより向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明に係る接合装置の全体図。
図2図1の接合装置の左右可動電極に被接合材を装着した状態の説明図。
図3図1の接合装置において、上下の加熱治具に上下電極から通電加熱している状態と被接合材の接合部を当接係合した状態の説明図。
図4図3におけるA−A断面図。
図5】種々の化合物の導電率と温度との関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0021】
図1は、本願発明に係る短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作する接合装置1の全体の概要図を示してある。
【0022】
総括的に示す接合装置1は、機台3上に一体的に設けた真空チャンバ5内に突出した上部電極7と、この上部電極7に離隔して対向する下部固定電極9とを備えている。
【0023】
前記上部電極7は、前記機台3に設けたガイド機構(図示省略)により、Z軸方向(上下方向)の昇降軸19に沿って昇降自在に設けてある。この上部電極7の昇降駆動手段としては、例えば、油圧シリンダ11が設けてあり、この油圧シリンダ11のピストンロッド13が前記上部電極7の上部に接続してある。
【0024】
したがって、前記油圧シリンダ11を適宜に制御することにより、前記上部電極7はZ軸方向の昇降軸19上を昇降自在である。
【0025】
また、前記上部電極7の下端部には、上部電極7を熱的に保護するカーボンブロックからなる電極保護部材15が、上部電極7に設けた複数個の固定部材17を介して着脱可能に装着してある。
【0026】
前記下部固定電極9は前記機台3に一体的に設けてある。そして、この下部固定電極9の軸心は前記上部電極7の昇降軸19と同軸に設けてある。
【0027】
図2図4によく示されている様に、下部固定電極9の上面には、下部固定電極9を熱的に保護するカーボンブロックからなる電極保護部材21が定位置に装着してある。
【0028】
また、電極保護部材21の上面には、短尺棒状の被接合材W1とW2の当接係合部である接合面Sを非接触で包囲可能な上部加熱治具23aと下部加熱治具23bとに分割可能な加熱治具23が定位置に載置してある。
【0029】
なお、前記加熱治具23には、前記被接合材W1とW2の当接係合部である接合面Sの温度を検出する温度センサ(図示省略)が設けてある。
【0030】
前記上下電極7、9の昇降軸19を挟んでその両側には、左右一対の可動電極25、27が設けてあり、かつ、この可動電極25、27の軸心28上を前記Z軸に直交するX軸方向に互いに接近離反自在に設けてある。
【0031】
また、この可動電極25、27のそれぞれには、可動電極25、27をX軸方向に駆動する駆動手段動として、前記上部電極7の昇降駆動手段と同様に、左右の可動電極25、27のそれぞれに油圧シリンダ29、31が設けてある。
【0032】
そして、前記油圧シリンダ29のピストンロッド30と、油圧シリンダ31のピストンロッド32が、それぞれ前記可動電極25と可動電極27の後部に接続してある。
【0033】
したがって、前記油圧シリンダ29、31を適宜に制御することにより、前記可動電極25、27をX軸方向の所望の位置に移動位置決めすることができる。
すなわち、前記被接合材W1とW2の当接係合部である接合面Sを前記昇降軸19上に位置決めすることができる。
【0034】
図2に良く示されている様に、前記左右の可動電極25、27の前端部には、それぞれ、前記短尺棒状の被接合材W1とW2を通電可能に把持する把持手段33が導電性スペーサ35を介して設けてある。
【0035】
前記把持手段33は左右対称の構成であるので、同一構成要素には同一の符号を付し、図2における左側の把持手段33について説明する。
【0036】
把持手段33には、コレットチャック37を着脱可能に把持するコレットチャックホルダ39が設けてある。
【0037】
前記コレットチャック37は、コレットホルダ41とコレット43とからなり、コレットホルダ41には前方に開放するテーパ穴41aを有し、このテーパ穴41aにコレット43が係合させてある。
【0038】
前記コレット43の根元には雄ねじ部が形成してあり、この雄ねじ部が前記コレットホルダ41のテーパ穴41aの底部に設けた雌ねじ部に螺合するようになっている。
【0039】
したがって、コレット43の前端部を作業者が回転させることにより、コレット43を開放または締め付けることができる。
【0040】
前記図2の左右の把持手段33を構成するコレットホルダ41、コレット43、コレットチャックホルダ39および導電性スペーサ35には、可動電極25、27の内部へ連通する同軸の貫通穴が設けてある。したがって、コレットチャック37を弛めれば、把持されていた被接合材W1、W2を可動電極25、27の内部へ押し出すことができる。
【0041】
なお、図2の可動電極25、27内部に挿通する穴は接合装置1の外部へ開放して設けてあり、接合が完了した長尺棒状の接合材を機外へ取り出すことができるようになっている。
【0042】
なお、前記コレットチャックホルダ39およびコレットチャック37を構成する部品は全て導電性を有し、かつ耐熱性の高い黒鉛からなっている。
【0043】
したがって、前記コレットチャック37に把持された短尺棒状の被接合材W1とW2に前記可動電極25、27から通電することができる。
【0044】
図1を参照するに、前記上部電極7とこの上部電極7に離隔して対向する下部固定電極9には加熱用電源部45が接続してある。また、この加熱用電源部45には、矩形波パルス通電又はパルスを重畳した直流を通電するための切り替え手段47を備えている。
【0045】
また、前記可動電極25、27には、接合用電源部49が接続してあり、切り替え手段51によって矩形波パルス通電又はパルスを重畳した直流を通電することができる
【0046】
次に、上記構成の接合装置1において、長さL1の棒状の被接合材W1と、長さL1の棒状の被接合材W2とから長さ「L1+L2」の長尺棒状の接合材を製作する手順を説明する。
【0047】
(1)例えば、前記加熱治具23の幅がw[mm]であるとき、可動電極25側のコレットチャック37に被接合材W1を装着する際には、被接合材W1の先端が((w/2)+5)[mm]だけ突出した状態になるようにコレットチャック37に装着固定する。
【0048】
(2)被接合材W2も被接合材W1と同様に可動電極27側のコレットチャック37に装着固定する。
【0049】
(3)下部固定電極9の電極保護部材21の上面に下部加熱治具23bを定位置に固定する。
【0050】
(4)次に、加熱治具23の中央に被接合材W2の先端(接合面S)が来るように右側の可動電極27を前進させてその位置に固定する。
【0051】
(5)次に、左側の可動電極25を前進させて被接合材W1の先端と被接合材W2の先端とを接触させる。
【0052】
(6)接触させた被接合材W1とW2の上に上部加熱治具23aを載置する。
【0053】
(7)上部電極7を下降させて上部加熱治具23aに接触させる。
【0054】
(8)加熱用電源を入れ、加熱治具23(23a、23b)に、先ずパルス電流を流し両者の接触面をクリーンにして、接触面での局部発熱を抑えるようにする。次に直流電流を通電して、加熱治具23(23a、23b)を被接合材W1とW2が接合可能な温度まで上昇させる。
【0055】
(9)被接合材W1とW2が接合可能な所定の温度になったことを温度センサが検出したら、左右の可動電極25、27から設定された矩形波パルス電流およびパルスを重畳した直流電流を通電する。
【0056】
(10)被接合材W1とW2の接合面Sの凹凸が潰れ、被接合材W1とW2の軸方向の変位が所定値に達したとき、加熱用電源と接合電源を同時に切断する。ただし、徐冷を要するときには、加熱用電源を制御して被接合材W1、W2を徐冷する。
【0057】
(11)接合が完了した接合材は、コレットチャック37を開放して、右側の可動電極27側へ押し出し、再度新しい被接合材を左側可動可動電極25セットし、工程(1)から(10)を繰り返すことにより、短尺棒状の被接合材から長尺棒状の接合材を製作することができる。
【0058】
以下、いくつかの具体的な接合例を説明する。
【0059】
実施例1:タングステンパイプの接合
【0060】
(1)外径5φ、内径6φ、長さ200mmのタングステンパイプを右側の可動電極に取付け、左側の可動電極に外径5φ、内径6φ、長さ100mmタングステンパイプをセットし、真空雰囲気中で接合を行った。
【0061】
(2)加熱治具23(23a、23b)に3,000Aの電流を流し、この加熱治具23を1,500°Cに加熱した。なお、予備実験においてタングステンは1,800°C近辺で接合することが確認されている。
【0062】
(3)加熱治具23(23a、23b)が1,500°Cに達したとき、タングステンパイプにパルス幅が1,000msのパルス電流200Aと、パルス重畳の直流電流500Aを同時に流した。
【0063】
(4)タングステンパイプには左右方向に30MPaの圧力がかかっており、接合部は常に加圧状態になっている。接合部が1,800°C前後で0.5mm変位したとき、加熱用電源および接合用電源を同時に切断した。被接合材への通電時間は約2分であった。
【0064】
接合後に接合材を引張り試験をしたところ、接合部以外の場所が220[N/mm]で破断したが接合部には何の変化も見られなかった。
【0065】
実施例2:酸化アルミニュウム(Al)棒の接合
【0066】
(1)6φ×150mmの酸化アルミニュウムの棒を右側の可動電極に固定し、左側の可動電極には4φ×50mmの酸化アルミニュウムの棒を固定し、加熱治具23(23a、23b)の中央で接触させた。通電する左右のコレットチャックの先端は接合面からそれぞれ15mmの位置になるように固定した。雰囲気は大気中で、接合面には20MPaの圧力をかけた。
【0067】
(2)酸化物は、一般に温度が上昇すると電気抵抗が低下することは、図5のグラフに示すとおりであり、酸化アルミニュウムは、400°C位でカーボンと同程度の導電性を持つが、接合温度が高いので加熱治具を1,200°Cまで加熱した。次に、酸化アルミニュウムの棒にパルス電流50Aを30秒間流し、続けてパルス重畳の直流電流100A流した。約3分後、被接合材が50μm収縮したので接合電源を切断した。加熱用電源はプログラム制御で徐冷させた。
【0068】
(3)接合体の6φの部分をバイスで固定し、4φ棒の境界から10mmの個所をハンマーで叩いたところ、酸化アルミニュウム棒は折れたが接合部はしっかりついていた。セラミックスは加工しにくい材料である。特に本件のように細い棒が太い棒の中央、あるいは非対称な部位にあれば加工は不可能に近いが、それが簡単にできればそのメリットは極めて大きいものである。
【0069】
実施例3:シリコンカーバイト(SiC)棒の接合
【0070】
シリコンカーバイト(SiC)は半導体なので、常温では電気抵抗が高く大電流は流せない。導電性も1,200°Cを越えないと出てこない。また、接合温度も2,000°C以上と高温である。
【0071】
(1)5φ×200mmのシリコンカーバイト(SiC)の棒を右側の可動電極に固定し、5φ×100mmのシリコンカーバイト(SiC)の棒を左側の可動電極に固定し、加熱治具23(23a、23b)の中央で先端を接触させた。
通電する左右のコレットチャックの先端は接合面からそれぞれ20mmの位置になるように設定した。シリコンカーバイト(SiC)は酸化を嫌うので、アルゴンガス(Ar)雰囲気中で行った。接触面の圧力は10MPaである。
【0072】
(2)上下電極から加熱治具23(23a、23b)に3,500Aの電流を流し、この加熱治具を1,800°Cに加熱した。
【0073】
(3)加熱治具が1,800°Cに達したときに、左右の可動電極から100Aのパルス電流を30秒間流し、続けてパルス重畳の直流電流150Aを流した。
【0074】
(4)被接合材が0.1mm収縮したとき、加熱用電源と接合用電源を同時に切断した。
【0075】
(5)接合後に接合材の引張り試験をしたところ、250[N/mm]で母材が破断し接合部は母材より強くなっていた。
【0076】
上述の接合試験結果から、接合時における接触面の最適な圧力範囲について検討した。
【0077】
被接合材の形状を棒状、パイプ状および異経材にして、材質を金属、酸化物、半導体と種々試みた結果、接触圧力が1MPa以下では接合面に痕が残り好ましくなかった。また、接触圧力が60MPa以上では、被接合材が全体的に変形し、しかも接合強度が弱くなり好ましくないと結論した。
【0078】
以上の試験データから、接合時に使用する接触圧力は材料の強度、太さおよび接合温度によって異なるが、最適な圧力範囲は1MPa〜60MPaの範囲内にあることが判明した。
【符号の説明】
【0079】
1 接合装置
3 機台
5 真空チャンバ
7 上部電極
9 下部固定電極
11 油圧シリンダ
13 ピストンロッド
15 電極保護部材
17 固定部材
19 昇降軸
21 電極保護部材
23 加熱治具
23a 上部加熱治具
23b 下部加熱治具
25、27 可動電極
28 可動電極の軸心
29 油圧シリンダ
30 ピストンロッド
31 油圧シリンダ
32 ピストンロッド
33 把持手段
35 導電性スペーサ
37 コレットチャック
39 コレットチャックホルダ
41 コレットホルダ
41a テーパ穴
43 コレット
45 加熱用電源部
47 切り替え手段
49 接合用電源部
51 切り替え手段
S 接合面
W1、W2 被接合材
図1
図2
図3
図4
図5