【実施例1】
【0014】
この実施例では、
図1に示すような円形断面の既設管21の内部に、管ユニット10と、可変幅管ユニット11を管長方向に接続した更生管20を構築し、既設管21と更生管20の間の空間22にモルタル等の充填材を充填する例について説明する。管ユニット10は、
図2に示すように、更生管20の断面を複数に、例えば5等分に、分割したセグメント1を周方向に接続して構成されている。可変幅管ユニット11も
図2の管ユニット10と同様の構造であるが、後述するように管長方向に幅を変化させることができる可変幅セグメント2により構成されている。
【0015】
図3は更生管20の平面図である。更生管20は、平面的には既設管21の平面形状に従った形状となっており、直線部23と、所定の半径の円弧状となっている曲線部24を含んでいる。直線部23は管ユニット10のみで構成されているが、曲線部24は管ユニット10と可変幅管ユニット11とが交互に配置されている。なお、可変幅管ユニット11を配置する間隔は、既設管21の曲線半径や内径に応じて適宜定めればよく、例えば、すべて可変幅管ユニット11により構成したり、可変幅管ユニット11の間に2個の管ユニット10を配置したりしてもよい。
【0016】
図4は、可変幅機能を持たない通常のセグメントであるセグメント1の構造を示す斜視図である。セグメント1は、更生管20の内周面を構成する内面板101と、内面板101の管長方向の両端に立設され、周方向の全長にわたって延びる側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる周方向の両端に垂直に立設された端板104、105とを備えたプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。
【0017】
セグメント1は、本実施例では、円周を複数等分する所定角度、例えば5等分する72度の円弧状に湾曲した形状となっている。ただし、セグメントは円弧形ないし扇形に限定されず、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形などにすることもできる。
【0018】
内面板101の上面にはセグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、側板と同様な形状の内部板が複数、この実施例では2個の内部板106と2個の内部板107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。
【0019】
内面板101、側板102、103、端板104、105、内部板106、107は、いずれも透明、半透明あるいは不透明な同じ材質のプラスチックでできており、公知の成形技術を用いて一体に成形される。
【0020】
側板102には、セグメント1を管長方向に連結する金具を通すための穴102aが円周上に等間隔で複数個設けられている。側板102の穴102aと側板103の穴103aは、周方向の位置が一致している。同様に、内部板106には穴106aが、内部板107には溝107aがそれぞれ設けられている。
【0021】
図5(a)は、端板105の詳細図である。以下の説明は、端板105について行うが端板104も端板105と同様の構造となっている。端板105は、側板102と側板103の間に配置される長方形形状の薄板部材で、内面板101の外面からの高さは側板102、103よりもやや低くなっている。端板105の側板102と内部板106の間、内部板106と内部板107の間、2個の内部板107の間、内部板107と内部板106の間、内部板106と側板103の間にはセグメント1を周方向に連結するボルトを通すための円形の挿通穴105aが、それぞれ1個設けられている。
【0022】
可変幅セグメント2もセグメント1と基本的には同様の構造であるが、管長方向に幅を変化させることができるように2個のセグメント半体により構成されている。
図5(b)は、可変幅セグメント2の管長方向の断面図である。
【0023】
可変幅セグメント2は、セグメント半体3とセグメント半体4とから構成されている。セグメント半体3は、内面板301、凸板302、側板303、内部板304、305などから構成され、各板301〜305は、セグメント1と同様なプラスチック材を用いて一体に成形される。凸板302は内面板301に対して段差を設けて内面板301に平行に延びており、側板303、内部板304、305は内面板301に対して垂直に延びている。
【0024】
セグメント半体4は、内面板401、側板403、内部板402、404、405などから構成され、各板401〜405は、セグメント1と同様なプラスチック材を用いて一体に成形される。側板403、内部板404、405は内面板401に対して垂直に延びており、内部板402は内面板401と平行に延びている。
【0025】
側板403には、セグメント1の側板102、103の穴102a、103a、あるいはセグメント半体3の穴303aに嵌合する突起403aが形成される。
【0026】
内部板402、405と内面板401によってセグメント半体3の凸板302と嵌合する凹部407が形成される。
【0027】
凹部407における凸板302と内面板401との重なり量を
図5(b)のd+αと
図5(c)のdとの間で変化させることにより、可変幅セグメント2の管長方向の幅をDとD+αとの間で変化させることができる。この幅は、一つの可変幅セグメント2内でも変化させることができ、
図3に示すようにカーブの内側から外側に向かって徐々に管長方向の幅が増大する管ユニット11を構成することができる。
【0028】
図6に可変幅セグメントの別の構成例を示す。可変幅セグメントは、既設管と更生管との間に充填される充填材により一体化して固定されるので、
図5(b)、(c)に図示したように、必ずしもセグメント半体3、4を嵌合させて結合する必要はなく、
図6に示したように、セグメント半体6、7を重ね合わせて可変幅セグメント5を構成することができる。
【0029】
図6において、セグメント半体6は、内面板601、凸板602、側板603、内部板604、605などから構成され、各板601〜605は、セグメント1と同様なプラスチック材を用いて一体に成形される。凸板602は内面板601に対して段差を設けて内面板601に平行に延びており、側板603、内部板604、605は内面板601に対して垂直に延びている。
【0030】
セグメント半体7は、内面板701、側板703、内部板704、705などから構成され、各板701〜705は、セグメント1と同様なプラスチック材を用いて一体に成形される。側板703、内部板704、705は内面板701に対して垂直に延びている。
【0031】
このように構成されたセグメント半体6、7は、凸板602の凸条602aをセグメント半体7の凹部701a内でスライドさせることにより、セグメント半体6の凸板602とセグメント半体7の内面板701が重なり合うように移動される。つまり、
図6の重なり幅d2を変化させることによりセグメント5の幅D2が可変となっている。
【0032】
なお、セグメント半体6、7は単に重ね合わされているだけなので、径方向に移動して離反する恐れがある。従って、セグメント幅方向の位置を調整した後に、セグメント半体6、7を重ね合わせた状態で仮接着ないし仮止めしておくのが好ましい。既設管と更生管が、その間に充填される充填材により一体化されると、セグメント半体6、7は不動となるので、径方向に移動する恐れは無くなる。
【0033】
このように構成されたセグメント1、及び可変幅セグメント2、5を用いて既設管を更生する方法を説明する。まず、
図7に示すように、マンホール25を介して既設管21の内部にセグメント1等を搬入し、既設管21内でセグメント1等を周方向に順次連結して管ユニット10、可変幅管ユニット11を組み立てる。
【0034】
続いて、管ユニット10、可変幅管ユニット11を、順次管長方向に連結し既設管21内に更生管20を構築する。
【0035】
あるいは、更生管の径が大きい場合には、搬入されたセグメント1等を、実際に設置される位置まで運搬し、そこで、周方向及び管長方向の連結を行うようにしてもよい。
【0036】
続いて、更生管20と既設管21間の空間22(
図1参照)にモルタルなどの充填材を充填し、充填材を固化させる。空間22の両端部はレジンパテ、モルタル等のシール剤で塞いでおく。充填材は、例えば内部板101に穿孔された注入孔から注入を行い、更生管20の全体に行き渡り管長方向の両端のセグメント1等の側板102等に設けられた穴から流出し始めるまで行う。
【0037】
この充填を行うことにより、既設管21と更生管20が充填材により堅固に結合された複合管を構築することができる。
【0038】
充填材が固化するまでの間、更生管20を支持する支保工の構造を
図8(a)、(b)に示す。更生管20は中心が既設管21の中心に対して下方にずれた位置に構築される。そのため、側板102等の先端(更生管20の外周)と既設管21の内面との間隔が大きくなる部分にはスペーサー35を入れて、充填材の浮力に対して更生管20と既設管21との位置関係を保持する。
【0039】
更生管20の可変幅管ユニット11が配置される位置には、内面の全周にわたってリング状の形状保持部材40が配置されている。形状保持部材40は、例えば角形鋼管等の形鋼を更生管20の内面の形状に合わせて曲げ加工して製作したもので、この例では施工性を考慮して周方向に4分割としてある。なお、形状保持部材40は、必ずしも全周にわたって配置する必要はなく、更生管20の断面形状等から予想される充填材が漏れやすい部分にのみ配置してもよい。
【0040】
形状保持部材40の内面に当接して、腹起こし36が管長方向に配置されている。この例では、腹起こし36は、更生管20の断面の中心に対して対象となる位置に2本ずつ2組、合計4本が配置されている。各組の腹起こし36は、パイプ断面等の棒状部材である支持部材33の両端で支持されている。すなわち、支持部材33は腹起こし36を介して間接的に形状保持部材40を支持している。支持部材33の両端にはジャッキベース34が接続され、長さが調整できるように構成されている。形状保持部材40の支持方法は、
図8の例には限定されず、更生管20の断面形状や径に応じて適宜設計すればよい。たとえば、更生管20を可変幅セグメント2だけで構成する場合には、複数の形状保持部材40を腹起こし36でまとめて支持するために形状保持部材40と腹起こし36との間に隙間調整部材(図示せず)を挟んでもよい。
【0041】
図9(a)に可変幅セグメント2と形状保持リング40とが当接する部分の詳細図を示す。この例では、形状保持リング40の断面形状を角管としてあり、管を構成する4枚の板部材のうち1枚40aが、可変幅セグメント2の内面板、すなわち、セグメント半体301の内面板301とセグメント半体4の内面板401に当接している。形状保持部材40の管長方向の位置については、二つのセグメント半体3、4が重なりあう部分(以下「重畳部」という)、例えば
図9(a)で符号51で示したセグメント半体3の凸板302とセグメント半体4の内面板401が重なり合う部分、またはその近傍で内側となる部材(
図9(a)では内面板401)に当接するように配置する。これは、径方向で内側になる部材を、外側になる部材(
図9(a)では凸板302)に押しつける力が働くようにするためである。このような作用を確実にするため、形状保持部材40が重畳部の一部または全部と当接するようにするのが望ましい。
【0042】
また、
図9(a)で符号50で示した内面板301の右端部と内面板401の左端部との間の部分、言い換えると凸板302のうち内面板401と重なり合っていない部分(以下「隙間部」という)、のように充填材が漏出する出口となり得る部分の全体を覆うように配置すれば、万一、上記の内面板401を凸板302に押しつける作用が不十分な場合でも、充填材が漏れ出す出口をふさぐことができるため、充填材の漏出を抑制することができる。さらに、
図9(a)に示したように、隙間部50を埋めるクッション材43を配置すれば充填材の漏出防止効果がより確実となる。クッション材43は、周方向の全周にわたって配置される板状の部材で、隙間部50の幅の変化に対応できるように合成ゴム等の軟質の材料で作成するのが好ましい。
【0043】
形状保持部材40の断面形状は、
図9(b)に示した山形や、
図9(c)に示した溝形とすることもできる。これらの場合も、断面を構成する板部材のうち1枚が可変幅セグメント2の内面板301、401のうち少なくとも内面板401に面的に当接するように配置する。また、管長方向の位置についても、上記の角管断面の場合と同様である。
【0044】
また、形状保持部材40の断面形状は、
図9(d)に示すように円管断面としてもよい。この場合、可変幅セグメント2との当接は線状となるため、形状保持部材40の位置を
図9(d)のように重畳部51に当接する位置とするのがよい。
【0045】
本実施例によれば、形状保持部材40が半体3、4(6、7)のうち少なくとも半体4(7)の内面板401(701)に当接するように配置されているので、内面板401(701)が凸板302(602)に押しつけられる。そのため、内面板401(701)と凸板302(602)とが密着して両者の間の隙間が小さくなり、充填材が漏出しにくくなる。形状保持部材40は、リング状に構成されており、可変幅管ユニット11の内面の全周に当接しているから、上記の効果が全周で得られる。
【0046】
形状保持部材40の位置は内面板401(701)の重畳部51に限定されないが、形状保持部材40を重畳部51に当接させると、内面板401(701)を凸板302(602)に押しつける作用が確実となる。
【0047】
また、隙間部51をふさぐような位置に形状保持部材40を配置すると、充填材が漏出する出口となり得る部分をふさぐことになるので、より確実に充填材の漏出を防止することができる。
【0048】
また、形状保持部材40により更生管20の断面形状が保持されるため、既設管21と更生管20との間に挿入するスペーサー35の効きが良くなる。特に、更生管が矩形などの非円形の断面形状の場合に、スペーサーの効きを確実なものとし、スペーサーの位置ずれを防止することが可能となる。
【0049】
形状保持部材は、リング状以外の形状とすることができる。
図10は、形状保持部材を2枚の板状部材41と2枚の板状部材42で構成した例である。板状部材41は弓形の板状部材でその円弧状の端面41aが更生管20の内面に当接するように配置されている。板状部材42は弓形の両端を切り落とした形状の板状部材で、その円弧状の端面42aが、更生管20の内面のうち板状部材41と当接していない部分に当接するように配置されている。すなわち、4枚の板状部材41、42の円弧状の端面41a、42aでセグメント11の内面板を全周にわたって押さえる構成となっている。この場合も
図8と同様に、対向する2枚の板状部材41、42をそれぞれ支持部材33で突っ張る形で支持する。また、板状部材41、42の管長方向の好ましい位置は
図9で説明したリング状の形状保持部材40の場合と同様である。作用効果も、リング状の形状保持部材40を用いた場合と同様である。
【実施例2】
【0050】
第1の実施例では、既設管の曲がりに対応するために可変幅セグメントを用いる例について説明したが、第2の実施例として更生管の耐震性を高めるために可変幅セグメントを用いる例について説明する。更生管の構成は、第1の実施例と基本的には同じであるため、第1の実施例と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
図11に更生管20の平面図を示す。既設管21は平面的に直線であるため、構成管20は基本的には通常の管ユニット10により構成されている。ただし、耐震性を高めるために既設管21の継ぎ目26部分には可変幅管ユニット12が配置されている。
【0052】
図12(a)に可変幅管ユニット12を構成する可変幅セグメント8の断面図を示す。可変幅セグメント8は、
図5(b)に示した可変幅セグメント2と同様の構成となっており、二つの半体81、82から成り、これらが管長方向に相対的に移動することにより管長方向の幅が変化できるようになっている。半体81の内面板811と半体82の内面板821は同一の平面に配置され、内面板821と内部板822により形成される凹部823に凸板812が挿入される。そして、凹部823内の凸板812と内部板822との間には制動部材9が挿入されている。制動部材9は、例えば合成ゴム、プラスチック等の弾性体から成る平板状の部材で、可変幅セグメント8の周方向の全長にわたって配置されている。
【0053】
地震時に既設管21に大きな引張力が作用し継ぎ目26が離間すると
図12(b)に示すように、半体81と半体82は管長方向に互いに離れるように移動し可変幅セグメント8の幅は大きくなる。このとき、凸板812の先端に設けられた凸条812aが制動部材9に食い込んで半体81、82の離間に制動がかかる。この制動力よりも引張力が大きければ、半体81、82は継ぎ目26の離間量に対応して互いに離れる。しかし、制動部材9と凸条812aとの当接が外れない限り、継ぎ目26から更生管20内に土砂等が流入することはない。
【0054】
図13に
図11の更生管20を施工する際の支保工の構造を示す。既設管21の継ぎ目26以外の部分で管ユニット10が配置される部分については、
図14(a)、(b)に示した従来の支保工と同様に、更生管の内側に腹起こし206を管長方向に沿って配置し、これを両端にジャッキベース204を接続した支持部材203で受けている。既設管21の継ぎ目部26で可変幅管ユニット12が配置される部分は、
図8(a)、(b)に示したものと同様に、更生管20の内面に形状保持部材40を当接させるが、その形状保持部材40の内側に腹起こしを配置することなく、形状保持部材40を両端にジャッキベース34を接続した支持部材33で直接受けている。なお、
図13では既設管1本に支持部材203を3カ所配置しているが、この数は腹起こし206に作用する荷重の大きさに応じて適宜定めればよい。
【0055】
この実施例の場合も、第1の実施例と同様の効果が得られる。すなわち、形状保持部材40によって、内面板821が凸板812に押しつけられ、さらに凸板812は制動部材9に、制動部材9は内部板822に押しつけられる。そのため、内面板821と凸板812、凸板812と制動部材9、制動部材9と内部板822はそれぞれ密着し、充填材の漏出を防止することができる。