【発明を実施するための形態】
【0021】
1.本発明のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩
本発明の新規ピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩は、上記一般式(1)で表される化合物である。
【0022】
本願明細書において「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基(ただし、R
1又はR
2が置換基を有しても良い炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である場合のアルキル基である置換基を除く)、ハロゲノアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル-アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルキル−アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル−アルキルチオ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、シクロアルキル−アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、オキソ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、飽和若しくは不飽和複素環基、芳香族炭化水素基、飽和複素環オキシ基等が挙げられ、前記置換基が存在する場合、その個数は典型的には1個、2個又は3個である。
【0023】
本明細書において、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味し、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0024】
アルキル基としては、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などのC
1-6アルキル基が挙げられる。
【0025】
ハロゲノアルキル基は、ハロゲン原子を1〜13個有する炭素数1乃至6の直鎖状又は分枝鎖状アルキル基であり、ハロゲノアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロエチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、モノフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロイソプロピル基などのハロゲノC
1-6アルキル基、好ましくはハロゲノC
1-3アルキル基が挙げられる。
【0026】
シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどのC
3-7シクロアルキル基が挙げられる。
【0027】
シクロアルキル−アルキル基としては、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基及びシクロヘプチルメチル基などのC
3-7シクロアルキル置換C
1-4アルキル基が挙げられる。
【0028】
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルオレニルメチル基などのC
7-13アラルキル基が挙げられる。
【0029】
アルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれでもよく、二重結合を少なくとも1個有する不飽和炭化水素基を意味し、アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−、2−若しくは3−ブテニル基、2−、3−若しくは4−ペンテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、5−ヘキセニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、3−メチル−3−ブテニル基などのC
2-6アルケニル基が挙げられる。
【0030】
アルキニル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれでもよく、三重結合を少なくとも1個有する不飽和炭化水素基を意味し、アルキニル基としては、例えばエチニル基、1−若しくは2−プロピニル基、1−、2−若しくは3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基などのC
2-6アルキニル基が挙げられる。
【0031】
アルコキシ基としては、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基及びヘキシルオキシ基などのC
1-6アルコキシ基が挙げられる。
【0032】
ハロゲノアルコキシ基は、ハロゲン原子を1〜13個有する炭素数1乃至6の直鎖状又は分枝鎖状アルコキシ基であり、ハロゲノアルコキシ基としては、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、フルオロエトキシ基、1,1,1-トリフルオロエトキシ基、モノフルオロ−n−プロポキシ基、パーフルオロ−n−プロポキシ基、パーフルオロ−イソプロポキシ基などのハロゲノC
1-6アルコキシ基、好ましくはハロゲノC
1-3アルコキシ基が挙げられる。
【0033】
シクロアルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びシクロヘプチルオキシ基などのC
3-7シクロアルコキシ基が挙げられる。
【0034】
シクロアルキルアルコキシ基としては、シクロプロピルメトキシ基、シクロブチルメトキシ基、シクロペンチルメトキシ基、シクロヘキシルメトキシ基及びシクロヘプチルメトキシ基などのC
3-7シクロアルキル置換C
1-4アルコキシ基が挙げられる。
【0035】
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、フルオレニルメチルオキシ基などのC
7-13アラルキルオキシ基が挙げられる。
【0036】
アルキルチオ基としては、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ヘキシルチオ基などのC
1-6アルキルチオ基が挙げられる。
【0037】
シクロアルキル−アルキルチオ基としては、シクロプロピルメチルチオ基、シクロブチルメチルチオ基、シクロペンチルメチルチオ基、シクロヘキシルメチルチオ基及びシクロヘプチルメチルチオ基などのC
3-7シクロアルキル置換C
1-4アルキルチオ基が挙げられる。
【0038】
モノアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基などの直鎖状又は分枝鎖状のC
1-6アルキル基でモノ置換されたアミノ基が挙げられる。
【0039】
ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、ジtert−ブチルアミノ基、ジn−ペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基などの直鎖状又は分枝鎖状のC
1-6アルキル基でジ置換されたアミノ基が挙げられる。
【0040】
シクロアルキル−アルキルアミノ基としては、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロブチルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基及びシクロヘプチルメチルアミノ基などのC
3-7シクロアルキル置換C
1-4アルキルアミノ基が挙げられる。
【0041】
アシル基は、アルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基を意味する。
【0042】
アルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ヘキシルカルボニルなどの直鎖状又は分枝鎖状の(C
1-6アルキル)カルボニル基が挙げられる。
【0043】
アリールカルボニル基としては、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、フルオレニルカルボニル、アントリルカルボニル、ビフェニリルカルボニル、テトラヒドロナフチルカルボニル、クロマニルカルボニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルカルボニル、インダニルカルボニル及びフェナントリルカルボニルなどの(C
6-13アリール)カルボニル基が挙げられる。
【0044】
アシルオキシ基は、アルキルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基を意味する。
【0045】
アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、n−プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシなどの直鎖状又は分枝鎖状の(C
1-6アルキル)カルボニルオキシ基が挙げられる。
【0046】
アリールカルボニルオキシ基としては、フェニルカルボニルオキシ、ナフチルカルボニルオキシ、フルオレニルカルボニルオキシ、アントリルカルボニルオキシ、ビフェニリルカルボニルオキシ、テトラヒドロナフチルカルボニルオキシ、クロマニルカルボニルオキシ、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルカルボニルオキシ、インダニルカルボニルオキシ及びフェナントリルカルボニルオキシなどの(C
6-13アリール)カルボニルオキシ基が挙げられる。
【0047】
アルコキシカルボニル基としては、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基及びヘキシルオキシカルボニル基などの(C
1-6アルコキシ)カルボニル基が挙げられる。
【0048】
アラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ナフチルメチルオキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基などの(C
7-13アラルキル)オキシカルボニル基が挙げられる。
【0049】
飽和複素環基は、N、O及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5又は6員の単環系の飽和複素環基を意味し、飽和複素環基としては、例えば、モルホリノ基、1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、4−メチル−1−ピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフェニル基、チアゾリジニル基、オキサゾリジニル基が挙げられる。
【0050】
不飽和複素環基は、N、O及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5又は6員のヘテロ芳香環を含むからなる単環又は多環系の基を意味し、不飽和複素環基としては、多環系の場合には少なくとも1つの環がヘテロ芳香環であればよい。具体例としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾ[b]チエニル及びベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基が挙げられる。
【0051】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、テトラヒドロナフチル基が挙げられる。
【0052】
飽和複素環オキシ基は、N、O及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5又は6員の単環系の飽和複素環オキシ基を意味し、飽和複素環オキシ基としては、例えば、モルホリニルオキシ基、1−ピロリジニルオキシ基、ピペリジノ基、ピペラジニルオキシ基、4−メチル−1−ピペラジニルオキシ基、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、テトラヒドロチオフェニルオキシ基、チアゾリジニルオキシ基、オキサゾリジニルオキシ基が挙げられる。
【0053】
一般式(1)中、R
1及びR
2で示される「置換基を有しても良い炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基」の「炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基である。
【0054】
「置換基を有しても良い炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基」の「置換基」としては上記の置換基が例示され、前記置換基が存在する場合、その個数は典型的には1個、2個又は3個である。
【0055】
「置換基を有しても良い炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基」としては、好ましくは、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基である。
【0056】
一般式(1)中、R
1及びR
2で示される「置換基を有しても良い炭素数3乃至7の環状アルキル基」の「炭素数3乃至7の環状アルキル基」としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。好ましくは、シクロプロピル基又はシクロヘキシル基である。
【0057】
「置換基を有しても良い炭素数3乃至7の環状アルキル基」の「置換基」としては上記の置換基が例示され、前記置換基が存在する場合、その個数は典型的には1個、2個又は3個である。
【0058】
「置換基を有しても良い炭素数3乃至7の環状アルキル基」としては、好ましくは、シクロプロピル基、又はシクロヘキシル基である。
【0059】
一般式(1)中、R
1及びR
2で示される「置換基を有しても良い炭素数6乃至14のアリール基」の「炭素数6乃至14のアリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくは、フェニル基である。
【0060】
「置換基を有しても良い炭素数6乃至14のアリール基」の「置換基」としては上記の置換基が例示され、前記置換基が存在する場合、その個数は典型的には1個、2個又は3個である。
【0061】
「置換基を有しても良い炭素数6乃至14のアリール基」としては、好ましくは、フェニル基である。
【0062】
一般式(1)中、R
3及びR
4で示される「置換基を有しても良い炭素数7乃至15のアラルキル基」の「炭素数7乃至15のアラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。好ましくは、ベンジル基である。
【0063】
「置換基を有しても良い炭素数7乃至15のアラルキル基」の「置換基」としては上記の置換基が例示され、前記置換基が存在する場合、その個数は典型的には1個、2個又は3個である。好ましい置換基はハロゲン原子であり、さらに好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、更に好ましくは塩素原子である。置換基が塩素原子の場合は、その個数は、好ましくは1個又は2個であり、さらに好ましくは1個である。置換基が臭素原子の場合は、その個数は、好ましくは1個である。
【0064】
「置換基を有しても良い炭素数7乃至15のアラルキル基」としては、好ましくは、ベンジル基、4−クロロベンジル基、3,4−ジクロロベンジル基又は4−ブロモベンジル基である。
【0065】
一般式(1)中のA
1及びA
2は、好ましくは、A
1がR
2−CO−で表される基であって、A
2が水素原子である場合;A
1が水素原子であって、A
2がR
2−CO−で表される基である場合;A
1がR
1−CO−で表される基であって、A
2がR
2−CO−で表される基である場合;A
1がR
4−(O−CH
2)
n−で表される基であって、A
2が水素原子である場合;又は、A
1がR
3−(O−CH
2)
m−で表される基であって、A
2がR
4−(O−CH
2)
n−で表される基である場合である。
【0066】
A
1がR
2−CO−で表される基であって、A
2が水素原子である場合は、R
2は、好ましくは、置換基を有しても良い炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基もしくは置換基を有しても良い炭素数3乃至7の環状アルキル基である。さらに好ましくは、R
2は炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基もしくは炭素数3乃至7の環状アルキル基である。さらに好ましくは、R
2はエチル基、イソプロピル基、又はシクロヘキシル基である。
【0067】
A
1が水素原子であって、A
2がR
2−CO−で表される基である場合は、R
2は、好ましくは、置換基を有しても良い炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、置換基を有しても良い炭素数3乃至7の環状アルキル基、もしくは置換基を有しても良い炭素数6乃至14のアリール基である。さらに好ましくは、R
2は炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数3乃至7の環状アルキル基、もしくは炭素数6乃至14のアリール基である。さらに好ましくは、R
2はエチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基又はフェニル基である。
【0068】
A
1がR
1−CO−で表される基であって、A
2がR
2−CO−で表される基である場合は、R
1及びR
2は、好ましくは同一又は相異なって、置換基を有しても良い炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、さらに好ましくは、R
1及びR
2は、同一又は相異なって、炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。さらに好ましくは、R
1及びR
2は、同一又は相異なってメチル基、エチル基、又はイソプロピル基である。最も好ましくは、R
1及びR
2は同一で、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基である。
【0069】
A
1がR
4−(O−CH
2)
n−で表される基であって、A
2が水素原子であって、nは0である場合は、R
4は、好ましくは、置換基を有しても良い炭素数7乃至15のアラルキル基である。さらに好ましくは、R
4は炭素数7乃至15のアラルキル基である。さらに好ましくは、R
4はベンジル基である。
【0070】
A
1がR
4−(O−CH
2)
n−で表される基であって、A
2が水素原子であって、nは1である場合、R
4は、好ましくは、置換基を有しても良い炭素数7乃至15のアラルキル基である。さらに好ましくは、R
4は炭素数7乃至15のアラルキル基又は置換基としてハロゲン原子を有しても良い炭素数7乃至15のアラルキル基である。さらに好ましくは、R
4はベンジル基又は置換基としてハロゲン原子を有しても良いベンジル基である。さらに好ましくは、R
4はベンジル基、4−クロロベンジル基、3,4−ジクロロベンジル基又は4−ブロモベンジル基である。
【0071】
A
1がR
3−(O−CH
2)
m−で表される基であって、A
2がR
4−(O−CH
2)
n−で表される基である場合は、R
3及びR
4は、好ましくは同一又は相異なって、置換基を有しても良い炭素数7乃至15のアラルキル基である。さらに好ましくは、R
3及びR
4は、同一又は相異なって、炭素数7乃至15のアラルキル基である。さらに好ましくは、R
3及びR
4はいずれもベンジル基である。m及びnは、好ましくは0である。
【0072】
本発明の具体的な化合物として好ましくは、以下の(1)〜(16)に記載のピリミジンヌクレオシド化合物が挙げられる。
(1)1−[2’−デオキシ−3’−O−シクロヘキサンカルボニル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(2)1−[2’−デオキシ−3’−O−プロピオニル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(3)1−[2’−デオキシ−3’−O−イソブチリル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(4)1−[5’−O−シクロヘキサンカルボニル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(5)1−[5’−O−シクロプロパンカルボニル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(6)1−[5’−O−ベンゾイル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(7)1−[5’−O−プロピオニル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(8)1−[2’−デオキシ−3’,5’−O−ジ−アセチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(9)1−[2’−デオキシ−3’,5’−O−ジ−イソブチリル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(10)1−[2’−デオキシ−3’,5’−O−ジ−プロピオニル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(11)1−[2’−デオキシ−3’−O−ベンジル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(12)1−[2’−デオキシ−3’,5’−O−ジベンジル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(13)1−[2’−デオキシ−3’−O−ベンジルオキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(14)1−[2’−デオキシ−3’−O−(4−クロロベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(15)1−[2’−デオキシ−3’−O−(3,4−ジクロロベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
(16)1−[2’−デオキシ−3’−O−(4−ブロモベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル
本発明のピリミジンヌクレオシド化合物の塩としては、薬学的に許容される塩であればいずれでもよく、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩を形成することができる。また、本発明のピリミジンヌクレオシド化合物は、置換基の種類によって光学異性体又は幾何異性体を生じることがあるが、本発明はそのいずれも包含するものである。そして、それらの異性体は、分割しても、混合物のままでも利用することができる。さらに、本発明のピリミジンヌクレオシド化合物は、水和物に代表される溶媒和物、無晶形(アモルファス)又は結晶多形も包含する。
2.本発明のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩の製造方法
本発明のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩は、種々の方法により製造することができ、例えば下記に従い製造することができる。
I.化合物A
1−Z又はA
2−Zの製造
【0074】
[Vは置換基を有しても良い炭素数7乃至15のアラルキル基を表す。]
反応工程式1によって、一般式(1)中のA
1、A
2が、一方が水素原子又はR
3−(O−CH
2)
m−で表される基であって他方がR
4−(O−CH
2)
n−で表される基であるか、又は一方がR
1−CO−で表される基であって他方がR
3−(O−CH
2)
m−で表される基であり、m又はnが1の場合の本発明のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩の製造に使用する、A
1−Z又はA
2−Z(Zはハロゲン原子を示す)を製造できる。
(工程1)
本工程は、一般式(AR1)で示されるアラルキルアルコールのアルコール部位をメチルチオメチルクロリドと塩基存在下反応させ、一般式(AR2)で示される化合物を製造できる。一般式(AR2)で表される化合物は、通常公知の方法に準じて製造できる(例えばTetrahedron Lett., 1975, 3269)。本反応により製造される一般式(AR2)で表される化合物は、必要に応じ単離精製することができるが、精製することなく次工程に用いることもできる。
(工程2)
本工程では一般式(AR2)で示される化合物と塩化スルフリルを反応させ、一般式(AR3)で示される化合物(すなわちA
1−Z又はA
2−Z)を製造できる。一般式(AR3)で表される化合物は、通常公知の方法に準じて製造できる(例えばSynthesis, 1983, 762)。本反応により製造される一般式(AR3)で表される化合物は、必要に応じ単離精製することができるが、精製することなく次工程に用いることもできる。
II.本発明のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩の製造方法
【0076】
(A
1及びA
2は、一方が水素原子又はR
1−CO−で表される基であって他方がR
2−CO−で表される基を示すか、一方が水素原子又はR
3−(O−CH
2)
m−で表される基であって他方がR
4−(O−CH
2)
n−で表される基を示すか、又は一方がR
1−CO−で表される基であって他方がR
3−(O−CH
2)
m−で表される基を示す。ただしA
1及びA
2の一方が水素の場合、n=1とする。)
本反応工程式2によって、本発明のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩を製造することができる。
【0077】
以下、各反応工程式において、Yは水酸基の保護基であり、その保護基が酸性又は中性条件下で除去できるものであれば特に制限はなく、ヌクレオシドの保護基として通常使用されるものが例示される。好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等のトリ置換シリル基、トリフェニルメチル基、4−メトキシトリフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシフェニルメチル基等の置換基を有してもよいトリアリールメチル基が挙げられる。
(工程3)
本工程では、一般式(2)で表される公知のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩と水酸基の保護化試薬を反応させて、選択的に5’位のみを保護し、一般式(3)で表わされる化合物を製造できる。
【0078】
一般式(2)で表される化合物は通常公知の方法に準じて製造できる(特許文献1、2)。
【0079】
一般式(3)で表される化合物は、通常公知の方法に準じて製造できる(例えば、J.Med.Chem., 2010, 53, 4130、CarbohydrateRes, 2007,259)。
【0080】
本反応に用いる保護化試薬としては、5’位のみを選択的に保護でき、酸性、中性条件下除去できるものであれば特に制限はないが、Y−Z(Zはハロゲン原子を示す)で表されるトリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、ジメチルテキシルクロロシラン等のトリ置換ハロゲン化シラン、又はトリチルクロリド、モノメトキシトリチルクロリド、ジメトキシトリチルクロリド等のトリアリールメチルハライドが挙げられる。本反応に用いる溶媒としては、反応に関与しないものであれば、特に制限はなく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、それらを単独あるいは混合して用いることができる。反応に際しては、必要に応じ塩基を用いてもよい。塩基としては、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾール、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機アミン類や炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられ、塩基のみを溶媒として使用しても良い。この反応において、一般式(2)で表される化合物1モルに対し、前記のY−Zを1〜20モル量程度、好ましくは1〜10モル量程度使用し、塩基を1〜100モル量程度、好ましくは1〜20モル量程度使用する。反応温度は−30〜100℃、好ましくは−10〜60℃であり、反応時間は0.1〜100時間、好ましくは1時間〜24時間である。本反応により製造される一般式(3)で表される化合物は、必要に応じ単離精製することができるが、精製することなく次工程に用いることもできる。
(工程4)
本工程では、一般式(3)で表されるピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩とA
1−Z(Zはハロゲン原子を示す)又はA
1−O−A
1を塩基存在下反応させ、一般式(4)で表わされる化合物が製造できる。A
1がR
1−CO−で表される基又はR
2−CO−で表される基である場合は、A
1−Zとして例えば塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化イソブチリル、塩化バレリル等の酸クロライド、A
1−O−A
1として例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸等の酸無水物を用いることができる。A
1がR
3−(O−CH
2)
m−で表される基又はR
4−(O−CH
2)
n−で表される基であって、m又はnが0の場合は、A
1−Zとして例えばベンジル化剤、m又はnが1の場合は、A
1−Zとして例えば反応工程式1で製造したAR3等を用いることができる。
【0081】
本反応に用いる溶媒としては、反応に関与しないものであれば、特に制限はなく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、それらを単独あるいは混合して用いることができる。反応に際しては、必要に応じ塩基を用いてもよい。塩基としては、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾール、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機アミン類や炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられ、塩基のみを溶媒として使用しても良い。この反応において、
(1)A
1がR
1−CO−で表される基又はR
2−CO−で表される基である場合;
一般式(3)で表される化合物1モルに対し、前記のA
1−ZもしくはA
1−O−A
1を1〜20モル量程度、好ましくは1〜2モル量程度使用し、塩基を0.5〜100モル量程度、好ましくは1〜10モル量程度使用する。反応温度は−30〜100℃、好ましくは0〜30℃であり、反応時間は0.1〜100時間、好ましくは1時間〜24時間である。
(2)A
1がR
3−(O−CH
2)
m−又はR
4−(O−CH
2)
n−で表される基である場合であってm又はnが0の場合;
一般式(3)で表される化合物1モルに対し、前記のA
1−Zを1〜20モル量程度、好ましくは1〜1.2モル量程度使用し、塩基を0.5〜100モル量程度、好ましくは1〜10モル量程度使用する。反応温度は−30〜100℃、好ましくは0〜30℃であり、反応時間は0.1〜100時間、好ましくは1時間〜24時間である。
(3)A
1がR
3−(O−CH
2)
m−又はR
4−(O−CH
2)
n−で表される基である場合であってm又はnが1の場合;
一般式(3)で表される化合物1モルに対し、前記のA
1−Zを1〜20モル量程度、好ましくは1〜10モル量程度使用し、塩基を1〜100モル量程度、好ましくは1〜20モル量程度使用することができる。反応温度は−30〜100℃、好ましくは−10〜60℃であり、反応時間は0.1〜100時間、好ましくは1時間〜24時間である。
【0082】
本反応により製造される一般式(4)で表される化合物は必要に応じ単離精製することができるが、精製することなく次工程に用いることもできる。
(工程5)
本工程では、一般式(4)で表されるピリミジンヌクレオシド化合物に脱保護化試薬を反応させて、5’位のみを脱保護し、一般式(1a)で表される本発明化合物を製造できる。使用される溶媒としては、反応に関与しないものであれば、特に制限はなく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、それらを単独あるいは混合して用いることができる。使用される脱保護試薬としては、Yにトリ置換シリル基を用いた場合には、Yのみを除去でき、通常シリル基の脱保護に用いられるものであれば特に制限はないが、例えばテトラブチルアンモニウムフロリド、フッ化水素、フッ化カリウム等のフッ化物イオン試薬、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、又はトリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。Yにトリアリールメチル基を用いた場合には、Yのみが除去できるものであれば特に制限はなく、上記の鉱酸又は有機酸が挙げられ、これらの酸を水と混合して用いても良い。この反応において、一般式(4)で表される化合物1モルに対し、前記脱保護化試薬を0.5〜200モル量程度、好ましくは1〜100モル量程度使用する。反応温度は−30〜150℃、好ましくは−10〜50℃であり、反応時間は0.1〜100時間、好ましくは0.5〜24時間である。
(工程6)
本工程では、一般式(2)で表されるピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩とA
2−Z(Zはハロゲン原子を示す)又はA
2−O−A
2を塩基存在下反応させ、一般式(1b)で表わされる本発明化合物が製造できる。A
2はR
1−CO若しくはR
1−CO−で表される基、又はR
1−(O−CH
2)
m−若しくはR
1−(O−CH
2)
n−で表される基である。本工程は工程4と同様にして行うことができる。
(工程7)
本工程では、A
1とA
2が同一である場合、一般式(2)で表されるピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩とA
1−Z(Zはハロゲン原子を示す)又はA
1−O−A
1を塩基存在下反応させ、一般式(1)で表わされる本発明化合物が製造できる。A
1及びA
2は、同一又は相異なって、R
1−CO若しくはR
1−CO−で表される基、又はR
1−(O−CH
2)
m−若しくはR
1−(O−CH
2)
n−で表される基である。本工程は工程4と同様にして行うことができる。なお、工程7は工程6と比較してA
1−Z又はA
1−O−A
1のモル量を多くし、反応時間を長く、かつ反応温度を高くすることが好ましい。例えば、工程6では好ましくはA
1−Z又はA
1−O−A
1を1モル、反応時間を1〜2時間、反応温度を0℃とするのに対し、工程7では好ましくはA
1−Z又はA
1−O−A
1を2モル、反応時間を12〜24時間、反応温度を25〜30℃とする。
(工程8)
本工程では、A
1とA
2が相異なる場合、一般式(1b)で表される本発明化合物とA
1−Z(Zはハロゲン原子を示す)又はA
1−O−A
1を塩基存在下反応させ、一般式(1)で表わされる本発明化合物が製造できる。A
1は工程7に定義した通りである。
本工程は工程4と同様にして行うことができる。
(工程9)
本工程では、一般式(1a)で表される本発明化合物とA
2−Z(Zはハロゲン原子を示す)又はA
2−O−A
2を塩基存在下反応させ、一般式(1)で表わされる本発明化合物が製造できる。A
2は工程6に定義した通りである。本工程は工程4と同様にして行うことができる。
【0083】
反応工程式2には、必要に応じてN
3位を保護する工程とN
3位を脱保護する工程を含めることができる。A
1、A
2の一方が水素原子又はR
3−(O−CH
2)
m−で表される基、他方がR
4−(O−CH
2)
n−で表される基であってm又はnが1の場合(ただしA
1及びA
2の一方が水素の場合、n=1)には、これらの工程を含めることが好ましい。
【0084】
N
3位を保護する工程は、例えば工程3の前に行うことができる。すなわち、一般式(2)で表される公知のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩とアミノ基の保護化試薬を反応させて、選択的にN
3位のみが保護された化合物を製造できる。
【0085】
選択的にN
3位のみが保護された化合物は、通常公知の方法に準じて製造できる(例えば、J.Med.Chem., 1989, 32, 136)。本反応に用いる保護化試薬としては、アミノ基を保護でき、塩基性条件下除去できるものであれば特に制限はないが、X−Z(Zはハロゲン原子を示す)で表されるアセチルクロリド、プロピオニルクロリド、ブチリルクロリド、ペンタノイルクロリド、イソバレリルクロリド、ヘプタノイルクロリド等のハロゲン化アシル基、またはベンゾイルクロリド、トルオイルクロリド、ナフトイルクロリド等のハロゲン化アリールオイル基等が挙げられる。本反応に用いる溶媒としては、反応に関与しないものであれば、特に制限はなく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、それらを単独あるいは混合して用いることができる。反応に際しては、必要に応じ塩基を用いてもよい。塩基としては、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾール、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機アミン類や炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられ、塩基のみを溶媒として使用しても良い。この反応において、一般式(2)で表される化合物1モルに対し、前記のX−Zを1〜20モル量程度、好ましくは1〜10モル量程度使用し、塩基を1〜100モル量程度、好ましくは1〜20モル量程度使用する。反応温度は−30〜100℃、好ましくは−10〜60℃であり、反応時間は0.1〜100時間、好ましくは1時間〜24時間である。本反応により製造される化合物は、必要に応じ単離精製することができるが、精製することなく次工程に用いることもできる。
【0086】
N
3位を脱保護する工程は、例えばN
3位が保護された一般式(4)で表される化合物について工程5を行う前に含めることができる。
【0087】
すなわち、N
3位が保護された一般式(4)で表される公知のピリミジンヌクレオシド化合物に脱保護化試薬を反応させて、N
3位のみを脱保護した化合物(すなわち一般式(4)で表される公知のピリミジンヌクレオシド化合物)を製造できる。
【0088】
使用される溶媒としては、反応に関与しないものであれば、特に制限はなく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、それらを単独あるいは混合して用いることができる。使用される脱保護試薬としては、Xのみが選択的に除去できるものであれば特に制限はなく、例えばアンモニア、メチルアミン等の有機塩基、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシ、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム水素化ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。この反応において、N
3位が保護された一般式(4)で表される公知のピリミジンヌクレオシド化合物1モルに対し、前記脱保護化試薬を0.5〜200モル量程度、好ましくは1〜100モル量程度使用する。反応温度は−30〜150℃、好ましくは−10〜50℃であり、反応時間は0.1〜100時間、好ましくは0.5〜24時間である。反応により製造されるN
3位のみを脱保護した化合物(すなわち一般式(4)で表される公知のピリミジンヌクレオシド化合物)は、必要に応じ単離精製することができるが、精製することなく次工程に用いることもできる。
【0089】
上記のごとく得られた本発明化合物及びその他の各化合物は通常公知の方法で塩、とりわけ薬学的に許容される塩を形成することができる。
【0090】
本発明化合物もしくはその塩、又はその他化合物もしくはその塩は、通常公知の分離精製手段、例えば濃縮、溶媒抽出、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等を用いることにより単離精製可能である。
3.本発明のピリミジンヌクレオシド化合物又はその塩の使用方法
本発明は、一般式(1)で表される本発明化合物の少なくとも1種又はその薬学的に許容される塩の有効量を含有する医薬組成物を提供するものである。
【0091】
本発明の化合物を医薬として用いるにあたっては、薬学的担体と配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能であり、該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等のいずれでもよく、好ましくは、経口剤が採用される。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0092】
薬学的担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
【0093】
経口用固形製剤を調製する場合は、本発明化合物に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されるものでよく、例えば、賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等を、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が用いられ、崩壊剤としては、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等を、滑沢剤としては、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等を、着色剤としては、酸化チタン、酸化鉄等を、矯味・矯臭剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等を例示できる。
【0094】
経口用液体製剤を調製する場合は、本発明化合物に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合矯味・矯臭剤としては、上記に挙げられたものでよく、緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム等が、安定剤としては、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0095】
注射剤を調製する場合は、本発明化合物にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤及び緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が例示できる。
【0096】
坐剤を調製する場合は、本発明化合物に当業界において公知の製剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセリド等を、さらに必要に応じてツイーン(登録商標)のような界面活性剤等を加えた後、常法により製造することができる。
【0097】
軟膏剤を調製する場合は、本発明化合物に通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。基剤としては、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0098】
貼付剤を調製する場合は、通常の支持体に前記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すればよい。支持体としては、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布や軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルムあるいは発泡体シートが適当である。
【0099】
上記の各投与単位形態中に配合されるべき本発明化合物又はその塩の量は、これを適用すべき患者の症状により、あるいはその剤形等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり、経口剤では約0.05〜1000mg、注射剤では約0.01〜500mg、坐剤では約1〜1000mgとするのが望ましい。また、上記投与形態を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人1日あたり約0.05〜5000mg、好ましくは0.1〜1000mgとすればよく、これを1日1回又は2〜4回程度に分けて投与するのが好ましい。尚、本発明において、一般式(1)で表される化合物又はその塩は、一種単独または複数種を組み合わせて用いられる。
【0100】
本発明化合物を含有する薬剤を投与することにより治療できる疾病としては、例えば悪性腫瘍の場合、頭頚部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍等が挙げられる。
【0101】
本発明の化合物及び抗腫瘍剤は、癌又は腫瘍の予防・治療および/または再発予防に有用である。従って、本発明は癌又は腫瘍の予防・治療剤、再発予防剤を提供する。ここで、再発予防とは、外科手術、放射線療法、化学療法などで癌又は腫瘍組織がいったん消失又は認識できなくなった後で癌又は腫瘍の再発を予防することを意味する。癌又は腫瘍の再発予防には、通常成人1日あたり約0.05〜5000mg、好ましくは0.1〜1000mgの本発明化合物を投与すればよい。本発明化合物は、1日1回又は2〜4回程度に分けて投与するのが好ましい。再発予防のための投与期間は、通常1ヶ月から1年程度、特に3ヶ月から6ヶ月程度である。この期間本発明化合物の服用を続けることで、癌又は腫瘍の再発を予防することができる。
【実施例】
【0102】
以下に比較例、実施例、薬理試験例及び製剤例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。なお、
1H−NMRスペクトルは、TMS(テトラメチルシラン)を内部標準として測定し、δ値(ppm)で化学シフトを示した。化学シフトは、かっこ内に吸収パターン、カップリング定数(J値)、プロトン数を示した。
【0103】
また、吸収パターンに関して、次の記号を使用する。s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=クワルテット、dd=ダブルダブレット、m=マルチプレット、br=ブロード、brs=ブロードシングレット。
また、化合物の構造式に関して、次の記号を使用する。Me=メチル、Et=エチル。
実施例1
1−[2’−デオキシ−3’−O−シクロヘキサンカルボニル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(1)の合成
(1)1−[5’−O−tert−ブチルジメチルシリル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(1a)の合成
4’−Thio−FdUrd(440mg)をピリジン(5.0mL)に溶解し、0℃氷冷下で4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(10mg)、t−ブチルジメチルシリルクロリド(300mg)を加え、室温で終夜撹拌を行った。メタノール(0.4mL)を加えて1時間撹拌後、濃縮して溶媒を留去した後に酢酸エチル及び蒸留水で分液抽出を行い、有機層を濃縮して溶媒を留去した。残渣を50%酢酸エチル/ヘプタンで懸濁洗浄後に濾取することにより精製し、化合物1a(600mg,95%)を白色固体として得た。物性値を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d
6)δ 11.9(1H,brs),8.20(1H,d,J=4.0Hz),6.22(1H,dd,J=8.0&8.0Hz),5.31(1H,d,J=3.7Hz),4.32(1H,m),3.79(2H,m),3.31(1H,m),2.20(2H,m),0.88(9H,s),0.12(6H,s);ESI−MS m/z 375(M−H)
-.
(2)化合物1の合成
化合物1a(185mg)をピリジン(2.0mL)に溶解し、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(6mg)、シクロヘキサンカルボニルクロリド(101mg)を加えて氷冷下1時間撹拌を行った。メタノール(0.5mL)を加えて反応を停止後に反応液を濃縮して溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40%酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。得られた化合物をエタノール(3.0mL)に溶解し、(±)−10−カンファースルホン酸(130mg)を加え、70℃で2時間加熱撹拌を行った。反応終了後に濃縮して溶媒を留去し、酢酸エチル及び飽和重曹水で分液洗浄を行い、濃縮して溶媒を留去した後に乾固して、化合物1(121mg,88%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例2
1−[2’−デオキシ−3’−O−プロピオニル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(2)の合成
化合物1a(150mg)に対し、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(11mg)、プロピオニルクロリド(52mg)、及び(±)−10−カンファースルホン酸(130mg)(139mg)を用い、化合物1と同様にして化合物2(105mg,83%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例3
1−[2’−デオキシ−3’−O−イソブチリル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(3)の合成
化合物1a(200mg)に対し、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(15mg)、イソブチリルクロリド(79mg)、及び(±)−10−カンファースルホン酸(185mg)を用い、化合物1と同様にして化合物3(159mg,90%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例4
1−[5’−O−シクロヘキサンカルボニル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(4)の合成
4’−Thio−FdUrd(269mg)をピリジン(5.0mL)に溶解し、氷冷下でシクロヘキサンカルボニルクロリド(180mg)を加え、室温で3時間撹拌を行った。酢酸エチル及び塩酸を加えて分液洗浄を行い、有機層を濃縮して溶媒を留去した後に50%酢酸エチル/ヘプタンで懸濁洗浄を行い、懸濁物を濾取後、乾燥して化合物4(306mg,80%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例5
1−[5’−O−シクロプロパンカルボニル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(5)の合成
4’−Thio−FdUrd(240mg)をピリジン(5.0mL)に溶解し、氷冷下でシクロプロパンカルボニルクロリド(110mg)を加え、室温で3時間撹拌を行った。酢酸エチル及び塩酸を加えて分液洗浄を行い、有機層を濃縮して溶媒を留去した後に50%酢酸エチル/ヘプタンで懸濁洗浄を行い、懸濁物を濾取後、乾燥して化合物5(208mg,65%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例6
1−[5’−O−ベンゾイル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(6)の合成
4’−Thio−FdUrd(200mg)をピリジン(5.0mL)に溶解し、氷冷下でベンゾイルクロリド(129mg)を加え、室温で3時間撹拌を行った。酢酸エチル及び塩酸を加えて分液洗浄を行い、有機層を濃縮して溶媒を留去した後に50%酢酸エチル/ヘプタンで懸濁洗浄を行い、懸濁物を濾取後、乾燥して化合物6(196mg,70%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例7
1−[5’−O−プロピオニル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(7)の合成
4’−Thio−FdUrd(240mg)をピリジン(5.0mL)に溶解し、氷冷下でプロピオニルクロリド(102mg)を加え、室温で3時間撹拌を行った。酢酸エチル及び塩酸を加えて分液洗浄を行い、有機層を濃縮して溶媒を留去した後に50%酢酸エチル/ヘプタンで懸濁洗浄を行い、懸濁物を濾取後、乾燥して化合物7(178mg,61%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例8
1−[2’−デオキシ−3’,5’−O−ジ−アセチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(8)の合成
4’−Thio−FdUrd(203mg)をピリジン(5.0mL)に溶解し、0℃氷冷下で4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(180mg)、無水酢酸(316mg)を加えて、室温で3時間撹拌を行った。メタノール(2.0mL)を加えて1時間撹拌した後に濃縮して溶媒を留去し、酢酸エチル、1N塩酸水を加えて分液洗浄をした後に有機層を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/クロロホルム)により精製し化合物8(249mg,93%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例9
1−[2’−デオキシ−3’,5’−O−ジ−イソブチリル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(9)の合成
4’−Thio−FdUrd(200mg)をピリジン(5.0mL)に溶解し、0℃氷冷下で4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(186mg)、無水イソ酪酸(482mg)を加えて、室温で3時間撹拌を行った。メタノール(2.0mL)を加えて1時間撹拌した後に濃縮して溶媒を留去し、酢酸エチル、1N塩酸水を加えて分液洗浄をした後に有機層を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/クロロホルム)により精製し化合物9(270mg,88%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例10
1−[2’−デオキシ−3’,5’−O−ジ−プロピオニル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(10)の合成
4’−Thio−FdUrd(202mg)をピリジン(5.0mL)に溶解し、0℃氷冷下で4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(180mg)、無水プロピオン酸(200mg)を加えて、室温で3時間撹拌を行った。メタノール(2.0mL)を加えて1時間撹拌した後に濃縮して溶媒を留去し、酢酸エチル、1N塩酸水を加えて分液洗浄をした後に有機層を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/クロロホルム)により精製し化合物10(262mg,91%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例11
1−[2’−デオキシ−3’−O−ベンジル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(11)の合成
Shakya,N.et al.,J.Med.Chem.,53(10) 4130−4140(2010)に準じて、4’−Thio−FdUrdをトリチル化することにより得られる1−[5’−O−ジメトキシトリチル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(以下、5’−O−DMTr−4’−Thio−FdUrd)(4.12g)をテトラヒドロフラン(40mL)に溶解し、0℃氷冷下でパラフィンオイル含有60%水素化ナトリウム(1.27g)、臭化ベンジル(1.1mL)を加え、室温で終夜撹拌を行った。飽和重曹水を加えて1時間撹拌後、濃縮して溶媒を留去した後に酢酸エチル及び飽和重曹水で分液抽出を行い、有機層を濃縮して溶媒を留去した。残渣に酢酸エチル(10mL)、エタノール(70mL)、1N−塩酸水(10mL)を加えて60℃で2時間撹拌を行った。冷却後に2N−苛性ソーダ水(6mL)を加えて反応停止後に生成した懸濁物を濾取および乾燥することにより、化合物11(2.1g,80%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例12
1−[2’−デオキシ−3’,5’−O−ジベンジル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(12)の合成
化合物11(1.0g)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、パラフィンオイル含有60%水素化ナトリウム(520mg)、臭化ベンジル(3.5mL)を加えて60℃で終夜撹拌を行った。酢酸(1mL)、蒸留水を加えて反応を停止後に濃縮して溶媒を留去し、酢酸エチル、飽和重曹水を加えて分液抽出を行い、飽和食塩水で有機層を洗浄後に有機層を濃縮して溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%クロロホルム/酢酸エチル)で精製する事により、化合物12(970mg,75%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例13
1−[2’−デオキシ−3’−O−ベンジルオキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(13)の合成
(1)N3−トルオイル−1−[5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(T)の合成
Junichi Y.et al.,J.Med.Chem.,32(1) 136−139(1989)に準じて4’−Thio−FdUrdをトルオイル化することにより得られるN
3−トルオイル−1−[2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(以下、N
3−toloyl−4’−Thio−FdUrd)(1.05g)をN,N−ジメチルホルムアミド(11mL)に溶解し、イミダゾール(469mg)及びt−ブチルジフェニルシリルクロリド(788mg)を加えて室温下終夜撹拌を行った。メタノール(2mL)を加えて反応を停止後にトルエン、蒸留水を加えて分液抽出を行い、有機層を蒸留水で再度洗浄した後に濃縮して溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製する事により、化合物T(1.24g,73%)を白色固体として得た。
1H−NMR(DMSO−d
6)δ 8.34(1H,d,J=7.0Hz),7.97(2H,d,J=8.4Hz),7.68−7.38(12H,m),6.15(1H,dd,J=6.8&5.7Hz),5.37(1H,d,J=4.1Hz),4.41(1H,m),4.10−3.81(2H,m),3.42(1H,m),2.41(3H,s),2.26(2H,m),1.02(9H,s).
(2)N3−トルオイル−1−[5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−デオキシ−3’−O−ベンジルオキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(13a)の合成
化合物T(250mg)をテトラヒドロフラン(5.0mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(417mg)、ベンジルオキシメチルクロリド(253mg)、テトラブチルアンモニウムヨージド(29.8mg)を加えて70℃で終夜撹拌を行った。冷却後に酢酸エチル、飽和重曹水を加えて分液洗浄を行った後に濃縮して溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチル/ヘキサン)で精製する事により、化合物13a(288mg,95%)を油状物質として得た。
1H−NMR(DMSO−d
6)δ 8.36(1H,d,J=7.0Hz),7.98(2H,d,J=8.4Hz),7.66−7.21(17H,m),6.18(1H,dd,J=7.8&6.8Hz),4.77(2H,s),4.49(3H,m),4.01−3.59(3H,m),2.47(5H,m),0.99(9H,s).
(3)化合物13の合成
化合物13a(288mg)をテトラヒドロフラン(1.0mL)、メタノール(3.0mL)に溶解し、7N−アンモニア/メタノール溶液(3.0mL)を加えて室温下3時間撹拌を行った。反応溶液を濃縮して溶媒を留去した後に、残渣をテトラヒドロフラン(4.0mL)に溶解し、1N−テトラブチルアンモニウム/テトラヒドロフラン溶液(0.85mL)を加えて、室温下1時間撹拌を行った。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(70%酢酸エチル/ヘキサン溶液)で精製する事により、化合物13(12mg,8%)を泡状物質として得た。物性値を表1に示す。
実施例14
1−[2’−デオキシ−3’−O−(4−クロロベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(14)の合成
(1)(4−クロロベンジル)クロロメチルエーテル(14a)の合成
Corey E.J.et al.,Tetrahedron Lett.,3269(1975)に準じて市販の4−クロロベンジルアルコールをメチルチオメチル化することにより得られる(4−クロロベンジル)メチルチオメチルエーテル(3.16g)をジクロロメタン(50mL)に溶解し、塩化スルフリル(2.11g)を加えて室温で30分間撹拌した。反応溶液を濃縮して溶媒を留去する事によりことにより、化合物14a(2.95g,99%)を液状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ 7.32(4H,m),5.52(2H,s),4.70(2H,s).
(2)N3−トルオイル−1−[5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−デオキシ−3’−O−(4−クロロベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(14b)の合成
化合物T(360mg)に対し、化合物14a(555mg)、ジイソプロピルエチルアミン(602mg)、テトラブチルアンモニウムヨージド(42.9mg)を用いて、化合物13a同様にして化合物14b(435mg,97%)を得た。
1H−NMR(DMSO−d
6)δ 8.36(1H,d,J=7.0Hz),7.98(2H,d,J=8.1Hz),7.65−7.27(16H,m),6.19(1H,dd,J=7.6&7.3Hz),4.80(2H,s),4.48(3H,m),4.06−3.60(3H,m),2.41(5H,m),0.99(9H,s).
(3)化合物14の合成
化合物14b(225mg)に対して、7N−アンモニア/メタノール溶液(3.0mL)、1N−テトラブチルアンモニウム/テトラヒドロフラン溶液(1.00mL)を用いて、化合物13同様にして化合物14(21mg,17%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例15
1−[2’−デオキシ−3’−O−(3,4−ジクロロベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(15)の合成
(1)(3,4−ジクロロベンジル)クロロメチルエーテル(15a)の合成
Corey E.J.et al.,Tetrahedron Lett., 3269(1975)に準じて市販の3,4−ジクロロベンジルアルコールをメチルチオメチル化することにより得られる(3,4−ジクロロベンジル)メチルチオメチルエーテル(4.97g)をジクロロメタン(80mL)に溶解し、塩化スルフリル(2.83g)を用いて、化合物14aと同様にして化合物15a(4.70g,99%)を液状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ 7.45(2H,m),7.17(1H,m),5.52(2H,s),4.69(2H,s).
(2)N3−トルオイル−1−[5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−デオキシ−3’−O−(3,4−ジクロロベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(15b)の合成
化合物T(306mg)をテトラヒドロフラン(3.0mL)に溶解し、化合物15a(557mg)、ジイソプロピルエチルアミン(640mg)、テトラブチルアンモニウムヨージド(36.5mg)を用いて、化合物13a同様にして化合物15b(395mg,99%)を得た。
1H−NMR(DMSO−d
6)δ 8.37(1H,d,J=7.0Hz),7.97(2H,d,J=8.1Hz),7.66−7.26(15H,m),6.19(1H,m),4.83(2H,s),4.56(3H,m),4.04−3.60(3H,m),2.43(5H,m),0.99(9H,s).
(3)化合物15の合成
化合物15b(395mg)に対して、7N−アンモニア/メタノール溶液(3.0mL)、1N−テトラブチルアンモニウム/テトラヒドロフラン溶液(0.80mL)を用いて、化合物13同様にして化合物15(44mg,20%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
実施例16
1−[2’−デオキシ−3’−O−(4−ブロモベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(16)の合成
(1)(4−ブロモベンジル)クロロメチルエーテル(16a)の合成
Corey E.J.et al.,Tetrahedron Lett., 3269(1975)に準じて市販の4−ブロモベンジルアルコールをメチルチオメチル化することにより得られる(4−ブロモベンジル)メチルチオメチルエーテル(4.67g)をジクロロメタン(80mL)に溶解し、塩化スルフリル(2.55g)を用いて、化合物14aと同様にして化合物16a(4.40g,99%)を液状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ 7.46(2H,d,J=8.4Hz),7.22(2H,d,J=8.4Hz),5.45(2H,s),4.67(2H,s).
(2)N3−トルオイル−1−[5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−デオキシ−3’−O−(4−ブロモベンジル)オキシメチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(16b)の合成
化合物T(280mg)をテトラヒドロフラン(3.0mL)に溶解し、化合物16a(532mg)、ジイソプロピルエチルアミン(584mg)、テトラブチルアンモニウムヨージド(33.4mg)を用いて、化合物13a同様にして化合物16b(369mg,99%)を得た。
1H−NMR(DMSO−d
6)δ 8.37(1H,d,J=7.3Hz),7.98(2H,d,J=8.1Hz),7.65−7.27(16H,m),6.19(1H,dd,J=7.3&7.0Hz),4.81(2H,s),4.52(3H,m),4.02−3.59(3H,m),2.43(5H,m),1.00(9H,s).
(3)化合物16の合成
化合物16b(369mg)に対して、7N−アンモニア/メタノール溶液(4.0mL)、1N−テトラブチルアンモニウム/テトラヒドロフラン溶液(0.9mL)を用いて、化合物13同様にして化合物16(44mg,20%)を白色固体として得た。物性値を表1に示す。
比較例1
1−[2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(以下、4’−Thio−FdUrd)(17)の合成
特許第3207852号公報の方法に準じて合成した。物性値を表1に示す。
比較例2
1−[2’−デオキシ−3’−O−シクロペンチルアミノカルボニル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(18)の合成
Horton,D.et al.,Carbohydr.Res.,342(2),259−267(2007)に準じて、4’−Thio−FdUrdをシリル化することにより得られる1−[5’−O−(t−ブチルジフェニルシリル)−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(以下、5’−O−TBDPS−4’−Thio−FdUrd)(3.39g)をピリジン(70.0mL)に溶解し、シクロペンチルイソシアネート(6.02g)を加えて100℃で3日間加熱撹拌した。反応液を濃縮して溶媒を留去した後に、残渣をテトラヒドロフラン(以下、THF)(20.0ml)に溶解し、1.0M−テトラブチルアンモニウムフルオリド/THF溶液(13.5ml)を加えて室温で2時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80%酢酸エチル/クロロホルム)により精製し、化合物18(1.76g,70%)を白色泡状物質として得た。物性値を表1に示す。
比較例3
1−[2’−デオキシ−3’−O−シクロヘキシルアミノカルボニル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(19)の合成
5’−O−TBDPS−4’−Thio−FdUrd(4.72g)に対し、シクロヘキシルイソシアネート(9.40g)及び1.0M−テトラブチルアンモニウムフルオリド/THF溶液(18.8ml)を用いて、化合物18と同様にして化合物19(3.09g,85%)を白色泡状物質として得た。物性値を表1に示す。
比較例4
1−[2’−デオキシ−3’−O−(2,2−ジメチルアミノプロパン−1−イルアミノカルボニル)−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(20)の合成
3,3−ジメチル酪酸(6.49g)をトルエン(30ml)に溶解し、ジフェニルフォスフォリルアジド(15.3g)及びトリエチルアミン(14.1g)を加えて100℃で3時間加熱撹拌した。その後に5’−O−TBDPS−4’−Thio−FdUrd(3.50g)とピリジン(30ml)を加えさらに100℃で終夜撹拌を行った。反応液を濃縮して溶媒を留去した後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。得られた化合物をTHF(50.0ml)に溶解し、1.0M−テトラブチルアンモニウムフルオリド/THF溶液(16.9ml)を加えて室温で2時間撹拌を行った。反応液を濃縮して溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80%酢酸エチル/クロロホルム)により精製し化合物20(2.12g,81%)を白色泡状物質として得た。物性値を表1に示す。
比較例5
1−[2’−デオキシ−3’−O−エチル−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(21)の合成
Shakya,N.et al.,J.Med.Chem.,53(10),4130−4140(2010)に準じて、4’−Thio−FdUrdをトリチル化することにより得られる1−[5’−O−モノメトキシトリチル−2’−デオキシ−4’−チオ−1−β−D−リボフラノシル]−5−フルオロウラシル(400mg)をテトラヒドロフラン(8.0ml)に溶解し、パラフィンオイル含有60%水素化ナトリウム(119.7mg)及びヨードエタン(1.16g)を加えて55℃で終夜加熱撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液及び酢酸エチルを加えて分層し、有機層を濃縮して溶媒を留去した後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。得られた化合物を80%トリフルオロ酢酸水溶液(6.0ml)に溶解し室温で2時間撹拌を行った。反応液を濃縮して溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80%酢酸エチル/クロロホルム)により精製し化合物21(119mg,55%)を白色泡状物質として得た。物性値を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
試験例1
ヌードマウス皮下腫瘍移植系、経口投与における抗腫瘍試験
BALB/cA Jcl−nuマウス(日本クレア(株))に皮下継代したヒト大腸癌株KM20Cを2mm角のフラグメントにし、6又は7週齢のBALB/cA Jcl−nuマウスの背部皮下に移植した。群分け後の平均腫瘍体積が100mm
3を超える時期に、腫瘍の長径及び短径を測定し、下記の式にて腫瘍体積を算出後、各群の腫瘍体積にばらつきの無いように群分けを行った(1群当たり5匹又は6匹)。
(式1) Vt=1/2(Vl)×(Vs)
2
[式中、Vtは腫瘍体積を示し、Vlは腫瘍長径を、Vsは腫瘍短径を示す。]
0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液に本発明化合物及び比較例1〜5の化合物をそれぞれ溶解あるいは懸濁し、群分けの翌日より1日1回14日間連日経口投与した。投与量は比較例1の50mg/kg/dayと等モル数となる投与量に設定した。
【0106】
群分けから15日後に、各群のマウスの皮下移植腫瘍の長径及び短径を測定し、腫瘍体積比(relative tumor volume,RTV)、腫瘍増殖抑制率(inhibition rate,IR)を下記の式から算出し、抗腫瘍効果の判定を行った。試験結果を表2に示した。
(式2) RTV=Vt1/Vt2
[式中、RTVは腫瘍体積比を示し、Vt1は判定日の腫瘍体積、Vt2は群分け日の腫瘍体積を示す。]
(式3) IR(%)=[1−(RTVtest)/(RTVcont)]×100
[式中、IRは腫瘍増殖抑制率を示し、RTVtestは薬剤投与群の平均RTV値、RTVcontは無処置群の平均RTV値を示す。]
【0107】
【表2】
【0108】
表2の結果より、本発明化合物の腫瘍増殖抑制率は比較例1の化合物の腫瘍増殖抑制率と同等もしくはそれ以上であり、優れた抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。また比較例2〜5の化合物に比較しても、本発明化合物が優れた抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。
試験例2
ヌードマウス皮下腫瘍移植系、経口投与における治療係数の算出
BALB/cA Jcl−nuマウス(日本クレア(株))に皮下継代したヒト大腸癌株KM20Cを2mm角のフラグメントにし、6又は7週齢のBALB/cA Jcl−nuマウスの背部皮下に移植した。群分け後の平均腫瘍体積が100mm
3を超える時期に、腫瘍の長径及び短径を測定し、下記の式にて腫瘍体積を算出後、各群の腫瘍体積にばらつきの無いように群分けを行った(1群当たり5匹又は6匹)。
(式1) Vt=1/2(Vl)×(Vs)
2
[式中、Vtは腫瘍体積を示し、Vlは腫瘍長径を、Vsは腫瘍短径を示す。]
0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液に本発明化合物及び比較例1の化合物をそれぞれ溶解あるいは懸濁し、群分けの翌日より1日1回14日間連日経口投与した。投与量は比較例1の3.13、6.25、12.5、25、50、100及び200mg/kg/dayと等モル数となる投与量に設定した。
【0109】
群分けから15日後に、各群のマウスの皮下移植腫瘍の長径及び短径を測定し、腫瘍体積比(relative tumor volume,RTV)、腫瘍増殖抑制率(inhibition rate,IR)を下記の式から算出し、抗腫瘍効果の判定を行った。更に、抗腫瘍効果の判定後においても群分けから29日後までの期間における動物の生死について観察を行った。
(式2) RTV=Vt1/Vt2
[式中、RTVは腫瘍体積比を示し、Vt1は判定日の腫瘍体積、Vt2は群分け日の腫瘍体積を示す。]
(式3) IR(%)=[1−(RTVtest)/(RTVcont)]×100
[式中、IRは腫瘍増殖抑制率を示し、RTVtestは薬剤投与群の平均RTV値、RTVcontは無処置群の平均RTV値を示す。]
50%腫瘍増殖抑制用量(ED50)は各用量を投与した際の腫瘍増殖抑制率より算出した。
【0110】
また、群分けから29日後までの期間において死亡例が生じない用量を各化合物のMTDとして下記の式から治療係数を算出した。
(式4) 治療係数=MTD/ED50
試験結果を表3に示した。
【0111】
【表3】
【0112】
表3の結果に示したように、本発明化合物の治療係数は比較例1の化合物と比較した場合、約2倍以上であり、より効果と毒性とのバランスに優れる化合物であることが明らかとなった。
試験例3
ヌードマウス皮下腫瘍移植系、経口投与における延命効果
BALB/cA Jcl−nuマウス(日本クレア(株))に皮下継代したヒト大腸癌株KM20Cを2mm角のフラグメントにし、6又は7週齢のBALB/cA Jcl−nuマウスの背部皮下に移植した。群分け後の平均腫瘍体積が100mm
3を超える時期に、腫瘍の長径及び短径を測定し、下記の式にて腫瘍体積を算出後、各群の腫瘍体積にばらつきの無いように群分けを行った(1群当たり5匹又は6匹)。
(式1) Vt=1/2(Vl)×(Vs)
2
[式中、Vtは腫瘍体積を示し、Vlは腫瘍長径を、Vsは腫瘍短径を示す。]
0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液に本発明化合物及び比較例1の化合物をそれぞれ溶解あるいは懸濁し、群分けの翌日より1日1回14日間連日経口投与した。投与量は比較例1の100mg/kg/dayと等モル数となる投与量に設定した。
【0113】
群分けから29日後までの各化合物投与時のマウスの生死を確認した。各化合物投与時の生存率を下記の式から算出し、試験結果を
図1に示した。
(式2) 生存率(%)= 生存している動物数 / 1群当たりの動物数×100
図1の結果において、比較例1の化合物の投与群においては群分けから17日目(投与終了後3日目)以降に死亡する動物がみられ、群分けから19日目(投与終了後6日目)までに全例が死亡した。一方、実施例2、3、6、7、11、12及び14の化合物を投与した群においては群分けから29日後まで全例の生存が確認された。以上の結果より、本発明化合物は、比較例1の化合物と比べて優れた延命効果をもたらす化合物であることが明らかとなった。